5月7日(火)

★白ばらの空気を巻いていて崩る  正子
咲き誇っていた白ばらが、その美しさを崩してゆく姿を、とても優しく詠まれています。辺りに漂っていた気品さ、優雅さなども、白ばらの容姿とともに崩れてゆくようです。「空気を巻いていて」のことばに感銘いたしました。(藤田裕子)

○今日の俳句
ピアノ曲流れ軽やか空五月/藤田裕子
ピアノ曲が流れ、気持ちが軽く明るくなる。空は五月のうるわしさそのもの。よい季節のさわやかな気持ち。(高橋正子)

○ジャーマンアイリス(ドイツアヤメ)

[ジャーマンアイリス/横浜市都筑区ふじやとの道] 

ドイツアヤメ (Iris germanica) はアヤメ科アヤメ属の植物の一種。別名のジャーマンアイリスで呼ばれることが多い。本種は、アヤメ属の植物を交雑して作出されたもので野生のものはない。1800年代の初期にドイツ、フランスで品種改良され、その後、アメリカが多数の品種を出している。花期は5 – 6月ごろである。

◇生活する花たち「山躑躅・武蔵野きすげ・あやめ」(東京白金台・自然教育園)

5月7日(火)

●小口泰與
白藤やくさり樋より雨しずく★★★
チューリップ赤白黄の明るさよ★★★★
明快な句。はっきりした諧調が快い。(高橋正子)

散髪の鋏の音や柿若葉★★★

●桑本栄太郎
<山口、雪舟庭園>
石庭の石に揺れ居り若葉影★★★
つつじ咲く風のみどりや雪舟庭★★★
白藤のみどりの風に揺れ止まず★★★

●河野啓一
連休の旅の土産や風薫る★★★
青空へジャスミンの蔓立ち上がる★★★★
芳香を放ち咲く花のジャスミンの蔓が今伸び盛り。青空へ向かって立がる。南国空にあこがれているのか。(高橋正子)

茉莉花の香りて白き夕べかな★★★

●小西 宏
木漏れ日も新緑の色遊歩道★★★
草刈りの匂いの甘し風の澄み★★★
【原句】丈高きポプラ若葉や雲の行く
【原句】丈高きポプラ若葉よ行く雲よ★★★★
ポプラの若葉と行く過ぎる白い雲。ヨーロッパ的な風景が、爽やか。(高橋正子)

●古田敬二
滑らかな丸さよ青梅葉隠れに★★★
青梅の太るや枝がしなるほど★★★
柔らかに光を透かせて柿若葉★★★

●川名ますみ
菖蒲抱くひと過ぎ菖蒲提ぐるひと★★★
エレベーターホールに菖蒲抱く人ら★★★★
端午の節句。この人の家もあの人の家も菖蒲湯を立てるのだろう。マンションのエレベーターホールは菖蒲を抱く人でいっぱい。今夜の菖蒲湯にわくわくしてくる。(高橋正子)

夫々に菖蒲を抱ける家族過ぐ★★★

5月6日(月)

★豆の花宙に雀が鳴いており  正子
風かおる五月、菜園には今をさかりと蚕豆や豌豆が花を咲かせ、莢も実りはじめています。うららかに晴れた宙には雀がさえずり、いつの時代にも失いたくない田園の原風景が思われます。 (小川和子)

○今日の俳句
茄子苗の影なすほどに確と付く/小川和子
夏野菜の苗を植える季節。茄子苗も植え付けはじめは、心もとない感じだった。しっかりと根付いた今は「影をなすほど」になった。「影なすほど」は、茄子苗の存在感。(高橋正子)

○芹の花

[芹の花/横浜市都筑区緑道ふじやとの道(左:2012年5月1日・右:2013年4月17日)] 

★一と股ぎほどの野川の芹の花/田村いづみ
★法隆寺からの小溝か芹の花/飴山 實
★底見せて流るる川や芹の花/石塚友二
★芹咲いて遠くに群れているを見る/高橋信之

 芹は、セリ科の多年草で、春の季語であるが、芹の花は、季語となっていない。湿地やあぜ道、休耕田など土壌水分の多い場所や水辺の浅瀬に生育することもある湿地性植物である。高さは30cm程度で茎は泥の中や表面を横に這い、葉を伸ばす。葉は二回羽状複葉、小葉は菱形様。全体的に柔らかく黄緑色であるが、冬には赤っぽく色づくこともある。花期は7~8月といわれるが、晩春にも咲く。やや高く茎を伸ばし、その先端に傘状花序をつける。個々の花は小さく、花弁も見えないほどである。北半球一帯とオーストラリアに広く分布する。
★せせらぎはあまたの芹の花揺らす/高橋正子

 芹は、独特の香りを持ち、春先の若い茎を食用とする。春の七草のひとつであるため1月ごろであればスーパーマーケット等で束にして売られる。自生品が出回ることもあるが、最近では養液栽培も盛んである。野草としての性質が強く種子の発芽率が低いため、計画的な生産には発芽率の改善が不可欠である。産地にもよるが、栽培ものと野生のものに、比較的差が少ない種である。観賞用の斑入りの品種もある。無農薬で栽培することで食用にもなる。
 毒草との間違い。野外で採取する場合、小川のそばや水田周辺の水路沿いなどで見られるが有毒なドクゼリとの区別に配慮が必要である。ドクゼリは地下茎は太くタケノコ状のふしがあり、横に這わず、セリ独特の芳香もないので区別できる。また、キツネノボタンも同じような場所に生育する毒草である。葉が細かく裂けないので比較的容易に区別できるが、個々の小葉だけを取ると似ているので間違えるおそれがある。
 和名は、まるで競い合う(競り)ように群生していることに由来する。

◇生活する花たち「野茨・ひとりしずか・ふたりしずか」(東京白金台・自然教育園)

5月6日(月)

●小口泰與
子雀の片羽根傷めひょこたんと★★★
石走る(いわばし)水や山路の花大根★★★
【原句】浅間嶺を仰ぎし里や花通草
【添削】浅間嶺を仰げる里や花通草★★★

●河野啓一
若葉はや青葉となりぬ孫来る★★★
宇治の里訪れてみる茶摘どき★★★
蕾見て石楠花の苗買い求め★★★

●迫田和代
【原句】本当の緑の風吹く苗代や
【添削】本当の緑の風よ苗代吹き★★★★
「本当の緑の風」は、苗代を吹く風と思う。緑色の本質を言った。柔らかで明るい緑。これこそ、だれもが好きな緑であろう。(高橋正子)

チューリップ真っ直ぐ咲いて空を向き★★★
川沿いの木々の緑も春惜しむ★★★

●黒谷光子
確と芽の出るを確かめ芋植える★★★
種芋の数を数えて畝作る★★★
豌豆の初物を採る一掴み★★★

●桑本栄太郎
<山口、サビエル記念大聖堂>
聖堂の鐘粛々と若葉谷★★★★
聖堂の鐘が粛々と谷若葉に響く。谷の中の聖堂である。谷若葉が聖堂の位置と大きさを目に浮かばせて、句を生かしている。(高橋正子)

若葉風椋の大樹の大聖堂★★★
聖堂のステンドグラスに春日かな★★★

●多田有花
朽ちてゆく木にはつ夏の陽があたる★★★
新緑に包まれ歩く山静か★★★
護摩焚きの香がはつ夏の風に乗り★★★★
清潔感がよい。護摩を焚く清らかな火の匂いが、さわやかな初夏の風に乗ってくる。心身を清められる思いだ。(高橋正子)

●高橋秀之
葉桜の色鮮やかに艶やかに★★★
葉桜や井戸端会議の場所決まる★★★
新緑のうねりが青き空隠す★★★★
「新緑のうねり」が力強い。青空を隠すほどの新緑勢いを「うねり」と見たのがよい。(高橋正子)

●古田敬二
草餅に飛騨の緑の濃かりけり★★★
ソプラノの響くわかばの尼僧堂★★★
廃屋の奥の夕暮れ雉鳴く★★★

●川名ますみ
葉桜の影蒼々と帰宅の途★★★★
葉桜の蒼い影を踏んで帰宅する道。葉桜の蒼に染まり、またその影の蒼を踏み、全身蒼に染まった気持ち。(高橋正子)
戸が開けば湯船いっぱいあやめ草★★★
湯に浮きし菖蒲の朱き根を握る★★★

●小西 宏
杉の木に張り渡されて鯉のぼり★★★★
杉の木に渡された鯉のぼり。山里の庭先か。芳しい杉の匂いがしてきそうだ。緑の中の鯉のぼりが鮮やかに目に映る。(高橋正子)

川沿いの杉木漏れ日の著莪の花★★★
雨上がり土匂いする苺畑★★★

5月5日(日)/こどもの日、立夏

★葉桜の蔭は家居のごと安し  正子
満開だったころの桜と違い、葉桜となった家の傍の桜の木。その葉桜の作り出す陰は、家にいてもゆっくりと安らぐ場も作り出してくれているのでしょう。 (高橋秀之)

○今日の俳句
ヨットの帆きらめく海に高々と/高橋秀之
「きらめく」、「高々」の言葉が、ヨットの浮かぶ海の光景に高揚する気持ちをよく述べている。(高橋正子)

○薔薇(ばら)

[薔薇/横浜日吉本町(2012年5月18日)] [薔薇/横浜・港の見える丘公園(2010年5月17日)] 

★夕風や白薔薇の花皆動く/正岡子規
★薔薇剪りに出る青空の谺/河東碧梧桐
★見るうちに薔薇たわたわと散り積る/高濱虚子
★薔薇むしる垣外の子らをとがめまじ/杉田久女
★咲き切つて薔薇の容(かたち)を越えけるも/中村草田男
★手の薔薇に蜂来れば我王の如し/中村草田男
★ばら薫るマーブルの碑に哀詩あり/杉田久女
★退院の抱へきれない薔薇匂ふ/はしもと風里
★白薔薇の含むほのかなベージュ色/高橋正子

 バラ(薔薇)は、バラ科バラ属の種(しゅ)の総称。バラ属の植物は、灌木、低木、または木本性のつる植物で、葉や茎に棘があるものが多い。葉は1回奇数羽状複葉。花は5枚の花びらと多数の雄蘂を持つ(ただし、園芸種では大部分が八重咲きである)。北半球の温帯域に広く自生しているが、チベット周辺、中国の雲南省からミャンマーにかけてが主産地でここから中近東、ヨーロッパへ、また極東から北アメリカへと伝播した。南半球にはバラは自生していない。世界に約120種がある。
 「ばら」の名は和語で、「いばら」の転訛したもの。漢語「薔薇」の字をあてるのが通常だが、この語はまた音読みで「そうび」「しょうび」とも読む。漢語には「玫瑰」(まいかい)の異称もある。 欧米ではラテン語: rosa に由来する名で呼ぶ言語が多く、また同じ語が別義として「ピンク色」の意味をもつことが多い。6月の誕生花である。季語は夏(「冬薔薇」「ふゆそうび」となると冬の季語になる)。
 バラが人類の歴史に登場するのは古代バビロニアの『ギルガメシュ叙事詩』である。この詩の中には、バラの棘について触れた箇所がある。古代ギリシア・ローマでは、バラは愛の女神アプロディテもしくはウェヌス(ヴィーナス)と関係づけられた。また香りを愛好され、香油も作られた。プトレマイオス朝エジプトの女王クレオパトラはバラを愛好し、ユリウス・カエサルを歓待したときもふんだんにバラの花や香油を使用したと伝えられている。ローマにおいてもバラの香油は愛好され、北アフリカや中近東の属州で盛んにバラの栽培が行われた。クレオパトラと同様にバラを愛した人物に、暴君として知られる第5代ローマ皇帝ネロがいる。彼がお気に入りの貴族たちを招いて開いた宴会では、庭園の池にバラが浮かべられ、バラ水が噴き出す噴水があり、部屋はもちろんバラで飾られ、皇帝が合図をすると天井からバラが降り注ぎ、料理にももちろんバラの花が使われていたと伝えられる。
 ナポレオン・ボナパルトの皇后ジョゼフィーヌはバラを愛好し、夫が戦争をしている間も、敵国とバラに関する情報交換や原種の蒐集をしていた。ヨーロッパのみならず日本や中国など、世界中からバラを取り寄せマルメゾン城に植栽させる一方、ルドゥーテに「バラ図譜」を描かせた。このころにはアンドレ・デュポンによる人為交配(人工授粉)による育種の技術が確立された。ナポレオン失脚後、またジョゼフィーヌ没後も彼女の造営したバラ園では原種の蒐集、品種改良が行われ、19世紀半ばにはバラの品種数は3,000を超え、これが観賞植物としての現在のバラの基礎となった。

◇生活する花たち「牡丹」(鎌倉・鶴岡八幡宮)

5月5日(日)

●小口泰與
菜の花や渡し舟より声降ろす★★★
菜の花の中をゆったり渡し舟★★★
菜の花や千曲の水面耀いて★★★

●藤田洋子
麦の穂の揺れはそれぞれ風の中★★★★
それほど強くない風。麦畑の麦の穂は、それぞれに揺れる。穂が透けて緑の色が爽やか。(高橋正子)
見上げればシナミザクラの実のたわわ★★★
園の木々くぐり梅の実桜の実★★★

●河野啓一
庭先の木立の影や春夕べ★★★
パソコンを打つ手を止めて春惜しむ★★★
春は行く夕陽の影の長くして★★★

●黒谷光子
遠目にも薄紫に土手の藤★★★
牡丹の散り蹲踞に浮き沈み★★★
また伸びて見上げる背丈松の芯★★★

●多田有花
歓声が響く広場やこどもの日★★★
快晴の空に緑に夏来る★★★
【原句】水平線青く立夏の頂に
【添削】立夏の頂水平線は青し★★★★
立夏の頂から見える水平線は、くっきりと一本青い。海に夏来たり。(高橋正子)

●桑本栄太郎
<山口大神宮でのお宮参り>
孫と云う神秘なるもの若葉吹く★★★
<記念撮影終了後、菜香亭にて昼食>
風薫る庭の輝く菜香亭★★★
庭手入れの黒き背中や若葉吹く★★★

●川名ますみ
ともしびにそっと応えるさくらんぼ★★★
さくらんぼ摘んだ指先立てたまま★★★
さくらんぼ煮詰めラム酒を二三滴★★★

●佃 康水
開封の茶の粉飛び散る夏初め★★★
陽光の眩しき空へ花楝★★★
堂裏の小流れ澄みて水芭蕉★★★

●小西 宏
竹の子の皮脱ぎ高く青空へ★★★
黒々と鱗おどるや鯉幟★★★
妹もザリガニ探る子供の日★★★★
妹も兄たちに交じって、元気いっぱいザリガニ探し。男の子も女の子もなく、子どもは子ども。好奇心に満ち活発なのがよい。 (高橋正子)

●高橋秀之
葉に力あり粘りあり柏餅★★★
柏餅買い物帰りの妻の手に★★★
大きさにわずかの違い柏餅★★★

●古田敬二
今年竹と呼ばれる高さに尖り揺れ★★★
蒲公英の絮吹く森の静けさに★★★
鐘楼をまっすぐ抜け来る風五月★★★

5月4日(土)/みどりの日

★天城越ゆ春の夕日の杉間より   正子

○今日の俳句
ゆさゆさと百の牡丹も風のまま/黒谷光子
風が来て、百ほどの牡丹の花を揺らす。大きく富貴な花が、花の重みをもって揺れると「ゆさゆさ」となる。「ゆさゆさ」「風のまま」は、牡丹をより自然に捉えている。(高橋正子)

○山躑躅(やまつつじ)

[山躑躅/東京白金台・自然教育園] 

★つつじいけて其陰に干鱈さく女/松尾芭蕉
★百両の石にもまけぬつつじ哉/小林一茶
★近道へ出てうれし野の躑躅かな/与謝蕪村
★つつじ野やあらぬ所に麦畑/与謝蕪村
★死ぬものは死にゆく躑躅燃えてをり/臼田亜浪
★山つつじ照る只中に田を墾く/飯田龍太
★山躑躅そこを明るく道ありぬ/稲畑汀子
★けもの道明るく照らす山躑躅/minmin4221
★山の子となって遊べば山躑躅/高橋正子
★新緑をすずしくさせて山躑躅/高橋正子

 ヤマツツジ(山躑躅、学名:Rhododendron kaempferi)はツツジ科ツツジ属の半落葉低木。高さは1-5mになり、若い枝には淡褐色の伏した剛毛が密生する。葉は互生し、葉柄は長さ1-3mmになる。春葉と夏葉の別があり、春葉は春に出て秋に落葉し、夏葉は夏から秋に出て一部は越冬する。春葉は長さ2-5cm、幅0.7-3cmになり、卵形、楕円形、長楕円形、卵状長楕円形など形状や大きさに変化が多く、先は短くとがり先端に腺状突起があり、基部は鋭形、葉の両面、特に裏面の脈上に長毛が生える。夏葉は春葉より小型で、長さ1-2cm、幅0.4-1cmになり、倒披針形、倒披針状長楕円形で、先は丸く先端に腺状突起があり、基部はくさび形、葉の両面に毛が生える。
 花期は4-6月。枝先の1個の花芽に1-3個の花をつける。花柄は長さ3-4mmになり、花冠の筒はやや太く、色は朱色、まれに紅紫色、白色があり、径3-4cmの漏斗形で5中裂する。花冠の上側内面に濃色の斑点があり、内面に短毛が散生する。雄蘂は5本。花柱は長さ3-4cmになり無毛。果実は果で長さ6-8mmの長卵形で、8-10月に熟し裂開する。
 北海道南部、本州、四国、九州に分布し、低山地の疎林内、林縁、日当たりのよい尾根筋、草原などに生育する。日本の野生ツツジの代表種で、日本の野生ツツジでは分布域がもっとも広い。

◇生活する花たち「かきつばた・踊子草・おへびいちご」(東京白金台・自然教育園)

5月4日(土)

●小口泰與
わなわなと越ゆる畝間の小蝶かな★★★
山肌の春剥落のそこかしこ★★★
種蒔や浅間南面襞さだか★★★

●祝恵子
塔も見え東屋も見えツツジ咲く★★★
ポピー咲くネモフィラ配し風の丘★★★
たけのこのヒョロヒョロ伸びて囲われて★★★

●多田有花
風吹くもやむも続きぬ春落葉★★★
藤の花緑の色の整いぬ★★★
頂に座りしふたり春惜しむ★★★

●桑本栄太郎
<山陽新幹線で山口へ>
見上げれば青空映し若葉山★★★
<お宮参りの山口大神宮>
宮参りのうから笑顔や五月晴れ★★★★
お宮参り、おめでとうございます。一族揃って、笑顔でお宮参り。折しも五月晴れ。五月晴れに祝福されたみどり児の健やかな成長が思われる。(高橋正子)

<菜香亭にて昼食>
若葉吹く庭を眺めつ昼餉かな★★★

●小川和子
踏み入れて蕗の群れいる野に出でぬ★★★
水辺へと黄菖蒲の映ゆ閑けさよ★★★
芍薬に一期一会の珠の色★★★

●黒谷光子
灯篭の傍に石楠花咲き揃う★★★
鐘楼へ石段上がる松の花★★★
一八の白の仄かに夕まぐれ★★★

●下地鉄
青芝にわれ寝そべれば犬もまた★★★
サルビアの汚れて赤の濃さかな★★★
水音に逃げ足速し島水鶏(くいな)★★★

●藤田洋子
朝毎に松は芯立て空へ伸ぶ★★★★
松の芯は、20センチも、30センチも伸びてその生命力には目を見張る。朝毎にその勢いを見せてくれて、清々しい元気をもらう。(高橋正子)

一面に風音しきり麦畑★★★
穂を長く大麦畑匂い立つ★★★

●高橋秀之
道頓堀ネオンに映る春時雨★★★
空焼ける夕暮れ時は夏隣★★★
初蝶や飛行機の音響く朝★★★

5月3日(金)

●小口泰與
雛菊や勉強机ま新し★★★★
入学したばかりの一年生の机。幼い者の机ながらに、一人前の気概が見えるが、庭には雛菊が咲いて可愛らしさも一入。(高橋正子)

たんぽぽや山の雪形くっきりと★★★
つばくろや京漬物の届きたり★★★

●下地鉄
家鳩のくんくんつつく代田かな★★★
ミニ薔薇を髪にかざして少女往く★★★
昼顔の汚れ洗われ又よごれ★★★

●多田有花
幼子の最初に覚えチューリップ★★★★
幼子が最初に覚えた花がチューリップ。「さいたさいたチューリップの花が」の歌も思い出される。たどたどしい口調がチューリップの花の可愛らしに相応しい。(高橋正子)

手水舎の水音とどく八重桜★★★
坂道に木陰の並ぶ夏隣★★★

●小西 宏
メーデーや機械に刈らる春紫�惷★★★
父さんが脛を絡げてザリガニ捕り★★★
春の鴨赤き足もて着水す★★★

●高橋秀之
潮風に吹かれる護岸夏近し★★★
春の波ゆるやかに寄す防波堤★★★
メーデーの朝赤々と組合旗★★★

5月3日(金)/憲法記念日

★森奥のたんぽぽ大方は絮に  正子
鮮やかに飾っていた黄のたんぽぽが森の奥へ入るともう大方はふわふわっとした絮になって居る。辺りの木々は若葉が輝き、初夏に向う季節の移ろいと森の爽やかな情景が浮んで参ります。 (佃 康水)

○今日の俳句
 宮島桃花祭御神能祭
春風を袖に孕みて能舞えり/佃 康水
厳島神社の能舞台は特別なもの。海を渡ってきた春風が能舞台を吹く。能衣装の袖に孕む風が風雅に動きのある新鮮さを呼んでいる。(高橋正子)

○花にら

[花にら/横浜日吉本町]

★足許にゆふぐれながき韮の花/大野林火
★おもてより裏口親し韮の花/水野節子
★天日を豊かに受けて韮の花/久我達子
★花にらはいつも樹のそば垣のそば/高橋正子

 花にらは、春の季節感があるが、俳句の季語ではない。夏の季語の「韮の花」とは違う。ハナニラ(花韮、学名:Ipheion uniflorum (Lindl.) Raf.)は、APG植物分類体系第3版でヒガンバナ科(APG植物分類体系第2版ではネギ科古い分類のクロンキスト体系ではユリ科)に属するハナニラ属の多年草。イフェイオン、ベツレヘムの星とも呼ばれる。原産地はアルゼンチン。日本では、明治時代に園芸植物(観賞用)に導入され、逸出し帰化している。葉にはニラやネギのような匂いがあり、このことからハナニラの名がある。野菜のニラ(学名Allium tuberosum)とは同じ科の植物であるが、属が違うのであまり近縁とは言えない。球根植物であるが、繁殖が旺盛で植えたままでも広がる。鱗茎から10-25cmのニラに似た葉を数枚出し、さらに数本の花茎を出す。開花期は春で、花径約3cmの白から淡紫色の6弁の花を花茎の頂上に1つ付ける。地上部が見られるのは開花期を含め春だけである。 
 

◇生活する花たち「山躑躅・武蔵野きすげ・あやめ」(東京白金台・自然教育園)