★蕗の灰汁つきたる指のきしみがち 正子
蕗の葉や茎が大きく伸びて、料理に最適の季節なのでしょう。下ごしらえをする指に灰汁がついてきしむような感覚です。この時季の主婦の思いをさらりと詠まれました。(河野啓一)
○今日の俳句
隣家の窓に今朝より青簾/河野啓一
隣家の窓を見ると、今朝からは、青簾がかかって目にも涼しげ。隣家も夏支度が整って、夏本番を迎える。(高橋正子)
○金魚草

[金魚草/横浜日吉本町]
★金魚草よその子すぐに育ちけり/成瀬櫻桃子
★裏庭の色を集めて金魚草/稲畑汀子
★金魚草風に溺るることのあり/行方克巳
「金魚草」と聞くだけで、金魚を想像して、かわいらしく、涼しい思いになる。パフスリーブの夏服を着た小学2.3年生の女の子のようだとも思う。ビロードがかった口唇形の花の色も赤、白、黄色などシンプルだし。夏の花壇をかざってくれる、子ども時代の私にとっては、夏休みの花である。夏休みのもろもろを思い出す。絵日記、植物採集、夏休みちょう、海水浴、昼寝、アイスキャンデー、西瓜、まくわうり、井戸水、日向水、打ち水、縁側拭きなど。江戸末期に渡来したようだが、当時はハイカラな花だったに違いない。
★裏庭に洗濯物干し金魚草/高橋正子
★金魚草金魚鉢には金魚いて/高橋正子
キンギョソウ(金魚草 Antirrhinum majus)はゴマノハグサ科(APG分類体系ではオオバコ科に入れる)キンギョソウ属の植物。南ヨーロッパと北アフリカの地中海沿岸部を産地とする。その名の通り金魚のような花を穂状に数多く咲かせる。花の色は赤・桃 ・白 ・橙 ・黄 ・複色。種は微細だが性質は強健で、こぼれ種でよく殖える。一般的には秋蒔きの一年草で、寒冷地では春蒔きにする。本来は多年草の植物であり、年月が経つにつれて茎が木質化する。金魚の養殖で有名な愛知県弥富市の市の花にもなっている。
◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

鎌倉街道
★竹林に夏の真青な水打たれ 正子
竹林」「真青」「水」という語句から涼しい夏の情景を思い浮かべることができました。日本ならではの夏の美しい景色です。(井上治代)
○今日の俳句
何かしら飛び出て楽し草取りも/井上治代
夏になると草が生い茂る。草取りの作業もたいへんだが、バッタがぴょんと飛び出したり、天道虫が飛び立ったりする。それが案外楽しいのだ。(高橋正子)
◆花冠編集長の高橋句美子さんの近作15句が昨日(7月9日)の朝日新聞夕刊に掲載されました。お読みいただければ幸いです。(花冠名誉主宰/高橋信之)
http://www.kakan.info/01/d/asa1379.jpg
○紅蜀葵(こうしょっき・もみじあおい)

[紅蜀葵(もみじあおい)/横浜日吉本町]
★紅蜀葵肘まだとがり乙女達/中村草田男
★沖の帆にいつも日の照り紅蜀葵/中村汀女
★黄蜀葵花雪崩れ咲き亡びし村/加藤楸邨
アメリカ芙蓉という花がある。芙蓉に似て、大ぶり赤い花色が華やかだ。芙蓉に少し似た紅蜀葵もその赤さは、日本の花ではないなと思わせる。調べると北米原産とあるから、さもありなん。近所では、市営アパートのわずかの空地に住人が植えたものがある。通りすがりにちらっと見て、紅蜀葵が咲いているな思うわけであるが、植えた人は昭和を生きた人であろうと想像する。
★市民アパート誰が咲かすか紅蜀葵
モミジアオイ(紅葉葵、学名:Hibiscus coccineus)は、アオイ科の宿根草。別名は、紅蜀葵(こうしょっき)。北米原産。背丈は1.5~2mくらいで、ハイビスカスのような花を夏に咲かせる。茎は、ほぼ直立する。触ると白い粉が付き、木の様に硬い。同じ科のフヨウに似るが、花弁が離れているところがフヨウと違うところ。和名のモミジアオイは、葉がモミジのような形であることから。
トロロアオイ(黄蜀葵、学名:Abelmoschu manihot )は、アオイ科トロロアオイ属の植物。オクラに似た花を咲かせることから花オクラとも呼ばれる。原産地は中国。この植物から採取される粘液はネリと呼ばれ、和紙作りのほか、蒲鉾や蕎麦のつなぎ、漢方薬の成形などに利用される。花の色は淡黄からやや白に近く、濃紫色の模様を花びらの中心につける。花は綿の花に似た形状をしており、花弁は5つで、朝に咲いて夕方にしぼみ、夜になると地面に落ちる。花びらは横の方向を向いて咲くため、側近盞花(そっきんさんか)とも呼ばれる。
◇生活する花たち「あさざ・野萱草(のかんぞう)・山百合」(東京白金台・自然教育園)

愛媛・久万中学校
★教室の窓に夏嶺の高々と 正子
前書きにある久万中学校は全て地元の檜や杉素材で造られているとか。それ程に自然に恵まれ緑溢れる環境に有るようですね。校舎の木の優しさと同時に教室の窓に高々と見える夏嶺はさぞかし清々しく、成長盛りの子供達を心身共に豊かに育んでくれることでしょう。 (佃 康水)
○今日の俳句
浴衣着の少女ら駅に待ち合えり/佃 康水
少女たちは駅で待ち合わせ、夏祭りに出かけるのだろう。浴衣をすがすがしく着て友達が来るのを待っている。楽しそうなこと。(高橋正子)
○合歓の花(ねむのはな)
[合歓の花/横浜・四季の森公園]
★そのすがた人にうつすやねぶの花/加賀千代女
★雨の日やまだきにくれてねむの花/与謝野蕪村
★山風の暁落ちよ合歓の花/芥川龍之介
★花合歓や凪とは横に走る瑠璃/中村草田男
★旅多くなりし合歓咲きそめし頃/稲畑汀子
★雲運び合歓の花吹き風飽きず/宮津昭彦
★合歓の花南瓜の花と呼び交す/大串章
★川の辺に潮上りくる合歓の花/能村研三
★花合歓の光あふるる下に居る/高橋信之
★梅雨出水しぶくをねむの木ねむの花/高橋正子
ネムノキ(合歓木、Albizia julibrissin)はネムノキ科(広い意味でマメ科)の落葉高木。別名、ネム、ネブ。葉は2回偶数羽状複葉。花は頭状花序的に枝先に集まって夏に咲く。淡紅色のおしべが長く美しい。香りは桃のように甘い。果実は細長く扁平な豆果。マメ科に属するが、他のマメ科の植物とは花の形が大きく異なる。イラン、アフガニスタン、中国南部、朝鮮半島、日本の本州・四国・九州に自生する。陽樹であり、荒れ地に最初に侵入するパイオニア的樹木である。河原や雑木林に生え、高さは10mにもなる。芽吹くのは遅いが、成長は他の木と比較すると迅速である。ネムノキ属は主として熱帯に150種ほどが分布するが、その中でネムノキは飛び抜けて耐寒性が強く高緯度まで分布する。温帯で広く栽培され、一部で野生化している。和名のネム、ネブは、夜になると葉が閉じること(就眠運動)に由来する。漢字名の「合歓木」は、中国においてネムノキが夫婦円満の象徴とされていることから付けられたものである。花言葉は「歓喜」。夏の季語であり、万葉集や松尾芭蕉、与謝蕪村の句に登場する。
◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
★子が去りしことも静かや夏の歯朶 正子
帰省中のお子さまが帰られた後の静けさでしょうか。ふと目に映る夏の歯朶が鮮やかなみずみずしさです。一抹の寂しさの中に、母としての安らかな充実さが感じ取れます。(藤田洋子)
○今日の俳句
雨雲の山を離れて合歓の花/藤田洋子
合歓の花を的確に捉えている。愛媛の久万高原などに出かけると、垂れていた雨雲が山を離れていって、合歓の花があきらかに浮かびあがってくるが、このようなところに合歓は自生する。(高橋正子)
○ピーマンの花

[ピーマンの花/横浜市緑区北八朔]
ブログ「ベランダ菜園」より:
ピーマンの花咲く/2010/05/24 (月)
5月1日に定植したピーマン。風が強い日があったり寒くなったりとの散々の天候が続いていましたが、無事一番花が咲きました。支柱がなかったので、とりあえず割り箸で代用。一番花から下の脇芽は取るということなので、早めにせっせと取ました(葉もピーマンの香りがします)。今ピーマンのプランターの隣には、去年から育てている万能ねぎの収穫が次々と出来ます。食べた後の根をパックに植えただけなのに食べても食べてもどんどん収穫させてくれます(収穫のペースが落ちたら新しい根をまた植えます)。狭いベランダでも簡単に収穫できるし、節約にもなるし、万能ねぎはベランダ菜園のエースですね(でもアブラムシはよくつきます)。
話をピーマンに戻すと、その後残念ながら一番花は、黄色くなって落ちてしまいました。 でも、花が次々と咲きます。よく見ると白くてとても可憐な花です。もう中心には、ピーマンらしき緑色のものが見えます。
では、観察してみます。次々花が咲きます(5月17日)2日後には萎れます(5月19日) 4日後、花びらの下から小さなピーマンが出現 。ピーマンらしきものが(5月21日)。 7日後。あまり変化がないような…。ピーマンの大きさは、約1.5センチ。少し大きくなっているかなぁ??(5月24日)
心配なことは、若芽にアブラムシが付き養分を吸っているためなのか大きな立派な葉に成長しません。毎日アブラムシチェックはしているのですが、どこから来るのでしょう??また全体的に主枝が細くヨワヨワしいです。 定植してから24日目。約17センチ成長して、高さは40センチになりました。ピーマンの収穫は花が咲いてから15~20日。無事収穫出来て欲しいです。40センチに成長しました(5月24日)
ウィキペディアより:
ピーマンはナス科の一年草、およびその果実。学名はCapsicum annuum L. ‘grossum’ であり、トウガラシの栽培品種に分類される(’ ‘は栽培品種を表す)。果肉は種子以外ほとんど空洞である。日本の店頭で食用として販売されるものは、明治初頭にアメリカから伝わったイスパニア種を品種改良した中形で緑色のものが多いが、近年はカラーピーマンも出回っている。緑色は未成熟の果実のためであり、成熟すると一般的なものは赤色のほか黄色、橙色に変わるものもある。北米では大形の成熟した様々な色のものが流通する。その他に、未成熟で白色や、黒色(濃い紫色)、紫色のものもある。加熱すると緑色に変化し、熟すると橙色、赤色に変わる。英語では「Green pepper」、「Red pepper」、「Yellow pepper」などと呼ばれる。
日本語における「ピーマン」の由来は、フランス語の「piment」あるいはスペイン語の「pimiento」とされ、いずれも狭義のトウガラシを指す[要出典]。なお、ピーマンを意味するフランス語は「poivrons」である。
●小口泰與
野放図に杏実らせ鳥の声★★★
朝日射す縹の赤城青りんご★★★
遠雷に遠まなざしのチワワかな★★★
●佃 康水
大き夢七夕電車載せ走る★★★★
七夕の日の電車。電車に乗っている子どもも、大人もみんな夢や願をもっている。みんなの夢や願が詰まった七夕の電車が大きく膨らむ。(高橋正子)
昼灯しゴーヤ日除けの理髪店★★★
蛍灯に見立てし和菓子目の前へ★★★
●迫田和代
島の空大きく横切る天の川★★★★
島の空に、島よりもはるかに大きくかかる天の川。天の川の果ては海の向こうに。島の空が快く涼しい。(高橋正子)
傍らに静かに咲ける月見草★★★
七夕の願い山ほど竹撓る★★★
●桑本栄太郎
学び舎の赤き煉瓦や炎暑来る★★★
山の背の峰雲育て天王山★★★
梅雨明けと聞けば四条のコンチキチン★★★
●多田有花
炎昼にリヤカーをひく男あり★★★
梅雨明けの部屋開け放ち風入れる★★★
青空へ風は吹きぬけのうぜん花★★★
●河野啓一
朝顔の紫紺の色を筆につけ★★★★
紫紺の朝顔を描こうとして、その色の絵の具を筆に含ませた。水彩画や墨彩画であろう。筆に含んだ紫紺の色が生き生きとして、涼しそうだ。(高橋正子)
烏賊釣りの船に揺られて若狭湾★★★
打ち水をすれば空にも風流る★★★
●小西 宏
梅雨明けて白輝けるビルの列★★★
蜻蛉生まれ白雲高く羽ばたける★★★
軽鳧の子の水面かすめて初飛行★★★
●小川和子
雷一声街を響かせ土砂降りに★★★
ひたひたと泉水河骨に充てり★★★
蓮池を覆う蓮の葉日を透かす★★★
★学生食堂ひとりの顔に夏日あり 正子
学生食堂のお昼の光景なのでしょう。大勢いる中に一人だけ夏日が当たっている。ああ眩しいだろうなーと思い見ています。 (祝恵子)
○今日の俳句
目の慣れて生まれし目高の数を追う/祝恵子
目高の子は小さく透き通っているので、目を凝らして見る。しばらく目高のいる水を見て目が慣れてようやく目高の子が見つかる。見つかれば、5匹、6匹と目に見え、その数が増えるのだ。(高橋正子)
○半夏生(はんげしょう)

[半夏生/横浜日吉本町]
★湯沸かしてつかはずにゐる半夏生/能村登四郎
★鯉の口朝から強し半夏生/藤田湘子
★半夏生咲けばひろびろ空がある/高橋信之
俳句を始めてしばらくしたころ、「半夏生」という植物があると聞いた。句会では、その半夏生がどこにあるとか、見に行ったとか、見に行こうとかいう話で持ちきりだった。いったいどんな植物なのか、耳には「半化粧」と聞こえる。白粉の半分落ちたお化けでもあるまいが、ちょっと怖いもの見たさの気持ちを起こさせる植物であった。半夏に咲く植物から命名されたと聞いた。
日吉本町に引っ越して、近所を歩いているとき、ちらっと庭を見て、「もしや半夏生」と思った植物があった。帰って、ネットで検索して半夏生に間違いないと確信をもったが、都市の住宅の庭にも植えられている。日吉本町の古刹金蔵寺にも、半夏生がある。下の方の葉は緑だが、上の方の数枚は白い。そこにひも状の花がつく。花より、葉が白いところが面白い。6月24日に訪ねた大船植物園にも半夏生が群生していた。アマチュアカメラマンが半夏生の前に大勢たむろしていた。花菖蒲によりも、睡蓮によりも沢山カメラマンが集まっていた。いったいどんな写真を撮りたいのか、興味があるところだ。幻想的な写真か。
★睡蓮の池をかくして半夏生/高橋正子
半夏生(学名:Saururus chinensis)は、ドクダミ科ハンゲショウ属。 開花時期は、7/1頃~7/20頃。上の方の葉っぱが、ペンキをべったり塗ったように白くなるのがおもしろい。「半化粧」「半夏生」、両方の名前で呼ばれる。葉の半分ほどが白くなることからの別名「片白草」(かたしろぐさ)。「半夏生」の名前の由来は、夏至から数えて11日目頃の日を「半夏生」と呼ぶが、その頃に、花が咲くことからという。 花期に葉が白くなるのは、虫媒花であるために虫を誘う必要から、このように進化したのではないか、といわれている。花は葉と同じく白で、紐状。花が咲き終わって夏の盛りの頃になると、白い葉の白い部分は色落ちして、ふつうの緑色っぽくなる。山の水辺に群生することが多いが、都会でもときどき植えられてるのを見かける。
●小口泰與
畦道や高さ際だつ立葵★★★
火の山の心音たしか夏木立★★★
ありありと朝の赤城や青ぶどう★★★
●小西 宏
金蚊の仰向いて脚生きんとす★★★★
金蚊が何かにぶち当たってひっくり返った。起き上がろうとしてか、必死に脚を動かしている。作者はその様子を「生きんとす」と捉えた。金蚊の命を直視しているのがよい。(高橋正子)
蝉鳴かぬ日にも網持ち子ら走る★★★
笹竹を手折り短冊五つほど★★★
●河野啓一
銀漢に願い届けよ笹飾る★★★
短冊の揺れて蜻蛉の飛ぶごとく★★★
天の川流れの先は那智の滝★★★
●多田有花
草原の輝きはるか小暑なる★★★
買い物の籠にそれぞれ笹飾り★★★
梅雨明けの近づく空を見上げおり★★★
●黒谷光子
畠より帰りて昼餉冷素麺★★★
冷素麺二筋三筋の色交じる★★★
硝子器に盛れば涼しき夕餉かな★★★
●桑本栄太郎
菜園の朝や数多の麦藁帽★★★★
朝まだ涼しいうちに菜園に出て作業をする人たちが大勢いる。夏野菜の収穫や水やりに、みんな麦藁帽子を冠っている。朝の菜園の涼しさを共有できる。(高橋正子)
炎天や室に入れば暗闇に★★★
街道の山滴りし家並みかな★★★
●下地鉄
蝉しぐれ締めの一声しっかりと★★★
暁闇のしじまを破る蝉しぐれ★★★
潮騒に更けゆく夏の浜辺かな★★★
●高橋秀之
初蝉や並んで歩む親子連れ★★★
風呂上り日焼け背中に薬塗る★★★
日焼けしてそれでもサッカーボール蹴る★★★
●小口泰與
きわやかや事に日の出の蓮の花★★★
ねじ花や花にそよぎし低き風★★★
魚止めの滝や朝日を賜わりし★★★
●桑本栄太郎
朽ち居ても香り確かむ夏つばき★★★
眩しさの木洩れ日降りぬ梅雨の晴れ★★★
涼風の立つや忽ち又雨に★★★
●河野啓一
蓮の花競い合うなか朝の風★★★
花南天地に散り敷いて天の星★★★
割り箸でつまむ毛虫よ蝶かもしれず★★★
●多田有花
【原句】夏霧を載せて流れし朝の川
【正子添削】夏霧を載せて流れる朝の川★★★★
夏霧を載せたままに川が流れていく朝の静かでゆったりとした景色がよい。原句の「流れし」の「し」は回想の助動詞「き」の連体形。この句は現在形がよい。(高橋正子)
あの角もこの角ものうぜん花揺れ★★★
梅雨茸一夜に数を増やしおり★★★
●佃 康水
白南風や下船の一歩立ち尽くす★★★★
梅雨が明けて吹く南の風を白南風というが、下船したとたん、足元の不安定さに、大きく吹く白南風に立ち尽くしてしまった。「立ち尽くす」は、また、陽の強さに目が眩んだせいでもあろう。(高橋正子)
広島江田島 茶道の師を訪う
翼張る青鷺の空大きかり★★★
江田島 乗馬場
エンジン音響かせ馬場へ水撒かる★★★
●小西 宏
空に向け伸びす合歓咲く昼下がり★★★
軽鳧の子の羽膨らませ飛ぶ用意★★★
梅雨明けて蝉のそろそろ鳴き初むる★★★
●下地鉄
街の灯のぽつりぽつりと夏暮れる★★★
夏雲や残照やわき海の色★★★
朝凪の浜辺に独り孤老かな★★★
●高橋秀之
夕立に家族そろって雨宿り★★★
夕立を弾く木の葉の瑞々し★★★
一瞬の大雨夕立かばん濡れ★★★
★明け易き時をラジオのミサ合唱 正子
夜明けが早くなってきた今朝、ラジオからミサの合唱曲が聞こえてきました。厳かな美しい歌声に心が洗われるようです。一日の始まりが、とても澄みきった爽やか気持ちになられたことと思います。(藤田裕子)
○今日の俳句
★この地なれば太き絹皮茄子の紺/藤田裕子
この地に住めばこそ食べられる「絹皮茄子」を絶賛する。絹のような肌理といい、太さといい、色といい、茄子として申し分ないのだ。(高橋正子)
○夕菅(ゆうすげ)

[夕菅/大船植物園]
★天が下万のきすげは我をつつむ/阿波野青畝
★夕菅は胸の高さに遠き日も/川崎展宏
★厩までユフスゲの黄のとびとびに/大野林火
★遠きほど夕菅の黄の満つる色/広瀬直人
★夕菅は實になってゐし花野かな/上野一考
★坪庭の暮れのはじめを花黄菅/本田日出登
★ゆうすげに月まだ淡くありにけり/高橋正子
「ゆうすげ」という名前に惹かれる人も多い。夏のまだ明るい夕方の空を背景に開花する黄色いの花は、人を少なからずロマンティックな想いにさせる。花の姿が野かんぞうにも似ているが、野かんぞうの赤みがかった黄色ではなく、レモンに近い黄色である。遠くまで、はかなげなレモン色のゆうすげが咲く高原は、乙女でなくとも魅惑的な風景と思う。
夕菅(ゆうすげ)は、ユリ科ワスレグサ属の種の一つ。山野などに生える。夏の夕方に開花し、翌朝にしぼむ。くっきりしたきれいなレモン色の花。香りあり。別名、黄菅(きすげ)。学名(Hemerocallis citrina var. vespertina)の由来は、Hemerocallisは、ワスレグサ属(ヘメロカリス属)、citrinaは、レモン色、vespertinaは、夕方の、西の、Hemerocallis(ヘメロカリス)は、ギリシャ語の「hemera(一日)+ callos(美)」が語源で、美しい花が一日でしぼむところから、といわれる。