7月26日(金)

●小口泰與
あけぼのの空やダリアの雨しずく★★★★
雲の湧く浅間のすそ野田水沸く★★★
山に沿い夏雲沸くや佐久平★★★

●藤田裕子
蝉の声はたと止む午後風とおる★★★
ごちそうは茄子の漬け物白ごはん★★★★
星もなく熱帯夜の街鎮もれり★★★

●桑本栄太郎
 神戸六甲アイランドへ
夏潮の耀く眼下やモノレール★★★★
眼下に夏潮が耀いているのを眼のあたりにした爽快感がよい。また、モノレールという乗り物の特徴で、眼下というより、夏潮の真上にいる愉快があってよい。(高橋正子)

出港の二隻の白波夏の潮★★★
夏霞はるか高みに臨海線★★★

●多田有花
明け方の夢より醒めて蝉涼し★★★
紅白が交互に植わり百日紅★★★★
大辛のカレー一皿夏の昼★★★

5月25日(木)


●小口泰與
八方へ水打ちにけり鳥の声★★★★
八方に水を打ち、あたりは静まり涼しくなった。鳥の声が降って来る。気持ちが爽やかになる。(高橋正子)

白靴の先の濡るるや朝まだき★★★
田水沸く音ひとつ無き里の午後★★★

●佃 康水
 宮島管弦祭
神事果て夏満月の海となる★★★★
厳島神社の管弦祭の神事が終わり、海はなにか改まったように小さな波音を立てている。それを夏の満月が照らして安らかさが広がっている。(高橋正子)

大太鼓町へ轟く管弦祭★★★
曳き船の男(おのこ)ら踊る管弦祭★★★

●多田有花
朝食の窓辺に沸き立つ蝉の声★★★
蓮池に蜻蛉すいすい夏の朝★★★
朝曇去り木の陰のくっきりと★★★★

●桑本栄太郎
空蝉のまなこ哀しく語りけり★★★
いつせいに鳴き止む黙や蝉しぐれ★★★
炎熱のコンテナ赤き貨物基地★★★★

●古田敬二
妻の留守自分ひとりに胡瓜揉む★★★
朝粥に梅干し一つ光明寺★★★
陽の温み残したままの梅漬ける★★★★

7月26日(金)

★白すぎて花おおらかに泰山木  正子
いつも見る梅雨空は、雨が降り星が見えません。今日見る梅雨空には、星が瞬いています。じめじめしたうっとおしい日が続く梅雨の季節、ひとときほっとされ、明日の晴天を期待しながら眠りに就かれました。(藤田裕子)

○今日の俳句
朝を歩く吾にポピーの揺れやさし/藤田裕子
何かの用事で、朝、戸外を歩くことがあった。歩く傍にはポピーがそよ風を受けてやさしく揺れている。日常の中にもふっとした小さな詩の世界がある。(高橋正子)

○クィーン・ネックレス

[クィーン・ネックレス/横浜日吉本町]

★夕涼に行き遇うクィーン・ネックレス/高橋正子

 「クィーン・ネックレス」という花がある。「女王様の首飾り」。女王様は、エリザベス女王以外には考えられない。わざわざ「クィーン」がつくところが、メルヘン的。この花のピンクが英国女王に似合っているようにも思う。蔓性の花、案外丈夫で、いったん咲いて、剪定して、また咲いてを、しばらく繰り返しているようだ。ちょうど角の家にあるし、ピンクの小花がネックレスのように10センチほど連なっていて、珍しいので、通る人がよく名前を尋ねるらしい。
 クイーンネックレスは、タデ科アンティゴノン属で、学名はAntigonon leptopus。メキシコ原産の熱帯つる性で、7月~10月にかけて、ピンク色の花を咲かす。耐暑性はあるが、耐寒性(5度以上)は弱い。日あたりのよい場所、また水はけ、水もちのよい土で育て、フェンス・トレリス等に這わせ、ベランダからも垂らしたりする。別名をアサヒカズラ、アンティゴノン、ニトベカズラという。

◇生活する花たち「月見草・大賀蓮・のうぜんかずら」(横浜・四季の森公園)

7月24日(水)

●小口泰與
嘴で羽根を掻きけり通し鴨★★★
た走るや横谷渓谷乙女滝★★★
野を分けて利根迸る夕立かな★★★★

●多田有花
段ボール畳んで捨てる大暑の日★★★
蓮の葉の裏より蜻蛉生まれけり★★★
午後の部屋通り抜けたる大南風★★★★

●桑本栄太郎
昇降機を降りてひぐらし鳴き初むる★★★★
ビルの高層階では聞こえなかったひぐらしの声が、地上階で昇降機を下りると、とたんに聞こえ始めた。 気密的なビルも地上に通じればひぐらしの声も聞こえるのだ。(高橋正子)

空蝉の虚空の果てを見つめけり★★★
池の辺の風をさえぎり蘆茂る★★★

●祝恵子
家裏に立てかけられてゴムプール★★★★
カラフルなゴムプールが、ひっそりとした家裏に立てかけられて、目に楽しく映る。家裏が涼しそうである。(高橋正子)

オクラ採る少しぬめりを感じつつ★★★
子かまきり夏日に足を揺り踏み出す★★★

7月25日(木)

★枇杷の実のあかるさ葉ごと買いにけり  正子
厚手の緑葉の中にかたまって生る輝くような枇杷の実。その姿そのままに買い帰られたのでしょうね。帰路の軽い足取りが目に見えるようです。(小西 宏)

○今日の俳句
金蚊の仰向いて脚生きんとす/小西 宏
金蚊が何かにぶち当たってひっくり返った。起き上がろうとしてか、必死に脚を動かしている。作者はその様子を「生きんとす」と捉えた。金蚊の命を直視しているのがよい。(高橋正子)

○鬼百合

[鬼百合/東京・新宿御苑]          [鬼百合/大船植物園]

★亭寂寞薊鬼百合なんど咲く/夏目漱石
★望岳のころの鬼百合おいらん草/和知喜八
★鬼百合も写ってしまう心電図/岸本マチ子
★鬼百合を闘志の花として残す/柴田悦子
★鬼百合あれは出征前夜の父/石倉夏生
★鬼百合に負けてはならじとぞ思う/高橋正子

オニユリ(鬼百合・学名Lilium lancifolium)とは、ユリ科ユリ属の植物。グアム東部、中国、朝鮮半島、日本に自生する。日本では北海道から九州の平地から低山で普通に見られ、一説には中国からの渡来種と言われている。変種に対馬に自生するオウゴンオニユリ(Lilium lancifolium var. flaviflorum)がある。草丈は1~2m程となる大型のユリ。葉は互生し、小さめの披針形で先端はゆるく尖る。茎は紫褐色で細かい斑点がある。花季は7月から8月で、花弁はオレンジ色、濃褐色で暗紫色の斑点を生じる。花弁は強く反り返る。種子は作らないが、葉の付け根に暗紫色のムカゴを作る。鱗茎はヤマユリと同様、食用となる。 花言葉は「賢者」「愉快」「華麗」「陽気」など。

◇生活する花たち「あさざ・野萱草(のかんぞう)・山百合」(東京白金台・自然教育園)

7月23日(火)

●小口泰與
枝ごとにあふるるほどの百日紅★★★★
百日紅は炎暑にも負けず盛んに花を咲かせる。枝先に「あふるるほど」の花だ。「あふるるほど」の花が百日紅の花の特徴
を言いえている。(高橋正子)

夕さりの風の重さや雨蛙★★★
走り根の雁字搦めや蜘蛛の網★★★

●迫田和代
涼風や中に花咲く氷柱を★★★
朝風に日影を明るく百日紅★★★
白波にぶつかっていく日焼けの子★★★★

●桑本栄太郎
こころなきものの哀れや蝉の殻★★★
つきものの落つや鳴き止む蝉しぐれ★★★
もの影の色濃くなりぬ大暑かな★★★★

●藤田裕子
門しずか夏月丸く鈍く照り★★★
遠目にも百日紅燃ゆ枝先を★★★★
大暑の日家居たのしむ人となり★★★

7月24日(水)

★ゆうすげに月まだ淡くありにけり  正子

○今日の俳句
青葡萄白磁の皿の静かさに/河野啓一
静物画のような静謐な雰囲気がある。マスカットのような青い葡萄と白い皿を思う。(高橋正子)

○蒲の花(蒲の穂)

[蒲の花(穂の下部は雌花、穂の上部は雄花)/日吉本町]

★蒲の穂は剪るべくなりぬ盆の前/水原秋桜子
★蒲の穂に緋の絨緞の見ゆる家/飯田蛇笏
★蒲の穂やはだしのままに子の育つ/池内たけし
★蒲の穂を捧げ自転車向うから/中 ひろし

 蒲の穂に初めて接したのはお花を習っていたとき。はたしてそれが栽培されているものか、水辺に生えているものかあまり考えたこともなかった。面白い形状の花材ではあるが。松山城より西にある衣山に住んだときに蒲が生い茂る湿地があった。近くにある考古館の傍の池にも蒲があった。身近にあることに驚いたが、こどものころは一度も見たことがなく、因幡の白さぎの話で知って、どんなものかと思っていた。
赤茶色の雌蕊の部分とその上に突き出た細い棒状の雄蕊の部分が蒲の特徴であろう。秋になると穂絮が風に千切れて吹かれているのを見るが、国生みのころを想像して、淋しさを感じる。横浜では、四季の森公園の池の辺にある。写真に撮ればそれなりに雰囲気のある写真になるがやはり暗さと淋しさがある。

★蒲の花遊ぶ子どもを透かしたり/高橋正子

 ガマ(蒲、香蒲、学名:Typha latifolia L.)は、ガマ科ガマ属の多年草の抽水植物である。北半球の温暖な地域やオーストラリアと日本の北海道から九州の広範囲に分布する。池や沼などの水辺に生える。葉は高さ1-2 mで、水中の泥の中に地下茎をのばす。夏に茎を伸ばし、円柱形の穂をつける。穂の下部は赤褐色で太く、雌花の集まりでありソーセージに似た形状である。穂の上半分は細く、雄花が集まり、開花時には黄色い葯が一面に出る。風媒花である。雄花も雌花も花びらなどはなく、ごく単純な構造になっている。雌花は結実後は、綿クズのような冠毛を持つ微小な果実になる。この果実は風によって飛散し、水面に落ちると速やかに種子が実から放出されて水底に沈み、そこで発芽する。 また、強い衝撃によって、種が飛び散ることもある。花粉は生薬としては「蒲黄」(ほおう)と呼ばれる。雌花の熟したものは綿状(毛の密生した棒様のブラシ状)になり、これを穂綿と呼ぶ。日本神話の因幡の白兎の説話では、毛をむしり取られた兎に対して大国主は蒲黄を体につけるように助言している。しかし、唱歌の「大黒さま」の中ではそれが「がまのほわた」となっており、両者は混同されていたことがわかる(もっとも、摘みたての「がまのほ」に触ると大量の黄色い花粉がつく)。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

7月23日(火)

★睡蓮の花のひとつが離れ浮き  正子
睡蓮の花のひとつのありのままの描写に、水面に咲く睡蓮の全体のたたずまいまでもが見えてきます。水面に浮かぶ睡蓮の清楚な美しさに心惹かれ、ひとときの涼しさを感じさせていただきました。(藤田洋子)

○今日の俳句
青田から青田をつなぐ水の音/藤田洋子
青田に流れ込む水は、水源から小川へ、そして、それぞれの田へ分けれた水。「つなぐ」が的確で、どの田も青々と育っている。(高橋正子)

○カサブランカ

[カサブランカ/横浜日吉本町]

★カサブランカ咲き特別な日々となる/山崎 杏
★今年またカサブランカの紅の蕊/稲森如風
★風そよぎカサブランカの薫りあり/中居秀童
★カサブランカに風あり白いと思う朝/高橋信之

 カサブランカがブームになって、田舎都市の松山でも愛好者が増えた。大変美しく豪華な百合であると知ったし、花屋でもまず目についた。それを自分で咲かせてみようと思ったのは、加入しているコープのパンフレットでカサブランカの球根の案内があったから。試しに注文して球根が届いた。秋に鉢植えにして花を楽しみにしていた。普通の百合のように芽がでるものとおもっていたが、筍ようような切っ先が伸びてきて驚いた。なんの手入れもなく、カサブランカの花を楽しんだ。翌年は咲かせようとはおもわなかったので、私が咲かせたカサブランカはこのときだけになっている。
 横浜・四季の森公園で山百合を見て、カサブランカほどの大きさだと思ったが、カサブランカのもとは日本の山百合であることを後で知った。私の大きさの認識については間違っていなかったということだろう。

  松山・衣山
★カサブランカ海をうしろに咲く今朝よ/高橋正子

 カサブランカの原産地は北半球の日本を含む亜熱帯~亜寒帯である。ユリ属のうちヤマユリ、タモトユリなどを原種とするオリエンタルハイブリッドの一品種。開花時期は7~8月。1970年代にオランダで作出され、世界的なブームを呼んだ。純白の大輪の花を咲かせ「ユリの女王」と言われる。結婚式の際のブーケをはじめ、主に贈り物の花束として喜ばれる花である。オリエンタル・ハイブリッドは、ヤマユリやカノコユリ、タモトユリなど森林のユリを交配して作られた品種群で、その中の「カサブランカ」が有名であるが、カサブランカを生み出す交配で主要な役割を果たしたトカラ列島口之島原産のタモトユリは、皮肉なことに自然状態ではほぼ絶滅してしまっている。なおカサブランカはモロッコの都市の一つ。なお、映画『カサブランカ(英語: Casablanca)』は、第二次世界大戦にアメリカが参戦した1942年に製作が開始され、同年11月26日に公開されたアメリカ映画で、フランス領モロッコのカサブランカを舞台にした。ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンが出演しており、映画スターベスト100(1999年)の男性1位にハンフリー・ボガート、女性4位にイングリッド・バーグマンが選ばれている。

◇生活する花たち「月見草・大賀蓮・のうぜんかずら」(横浜・四季の森公園)

7月22日(月)

★うっすらと平らに緋鯉の浮いて来し  正子
池を眺めているとやや深い所から、緋鯉が「うっすらと」そして「平らかに」水面に透けて見えてきました。ゆったりとした大きな緋鯉の動きとその様子をじっと眺めている作者の感動が伝わって参ります。水の豊かな広い池を想像します。(佃 康水)

○今日の俳句
園丁の刈り残したる文字摺り草/佃 康水
園丁の優しさで、文字摺り草が刈り残された。小さなピンク色の花がらせん状に巻きあがる文字摺草は目立つ花ではないが、人を心優しくさせる花である。(高橋正子)

○凌霄葛(のうぜんかずら)

[凌霄の花/横浜市港北区箕輪町]     [凌霄の花/横浜・四季の森公園]

○のうぜんかずら

[凌霄の花(のうぜんかずら)/横浜市港北区箕輪町]

★家毎に凌霄咲ける温泉(いでゆ)かな/正岡子規
★のうぜんの花を数へて幾日影/夏目漱石
★凌霄や長者のあとのやれ築土/芥川龍之介
★のうぜんの暮れて色なし山の家/臼田亞浪
★噴井あり凌霄これを暗くせり/富安風生
★凌霄花落ちてかかるや松の上/山口青邨
★凌霄のかづらをかむり咲きにけり/後藤夜半
★凌霄花や子は道の上に絵をかける/星野立子
★のうぜんや海近ければ手狭でも/阿部みどり女
★凌霄花の朱に散り浮く草むらに/杉田久女
★塵とりて凌霄の花と塵すこし/高野素十
★凌霄に井戸替すみし夕日影/西島麦南
★松高き限りを凌霄咲きのぼる/橋本多佳子
★凌霄花や問ふべくもなき門つづき/中村汀女
★今日の日の凌霄花にまで傾きし/中村汀女
★凌霄は妻恋ふ真昼のシヤンデリヤ/中村草田男
★のうぜんや眞白き函の地震計/日野草城
★凌霄花に沈みて上るはね釣瓶/星野立子
★凌霄花の咲き垂れし門父母います/加藤楸邨

 のうぜんかずらを初めて知ったのは、大学2年生の夏。島根県へ注ぐ江川が流れる広島県三次盆地の高台のお寺に咲いていた。当時所属していた松山の俳句結社の吟行に参加させてもらったときのこと。真夏の煙るような空に曙色の大ぶりな花が魅力的だった。
 砥部の家にも植木屋さんが持ってきてくれたが、できつつある庭の雰囲気にあわなかったので、お隣にあげたら見事に花を咲かせて、それを楽しませてもらっていた。その花を向かいの方が植えたがり、隣の方が分けてあげて、向かいの家にもそののうぜんかずらが玄関脇を覆うほど花を咲かせた。夏が来ると、隣と向かいののうぜんの花を我が家の花のごとく楽しんだものである。

★凌霄花の朝(あした)の花と目が合いぬ/高橋正子

 ノウゼンカズラ(凌霄花、紫葳、Campsis grandiflora)はノウゼンカズラ科のつる性木本。夏から秋にかけ橙色あるいは赤色の大きな美しい花をつけ、るつる性の落葉樹。気根を出して樹木や壁などの他物に付着してつるを延ばす。花冠は漏斗状。結実はまれである。日本で栽培されるノウゼンカズラは中国原産で平安時代に渡来したといわれる。ノウゼンというのは凌霄の字音によるといわれる。古くはノウセウカズラと読まれ、これがなまってノウゼンカズラとなった。霄は「空」「雲」の意味があり、空に向かって高く咲く花の姿を表している。夏の暑い時期は花木が少なく、枝を延ばした樹木全体に、ハッとするような鮮やかな色の花を付け、日に日に咲き変るので、よく目立つ。茎の先に房状花序をつける。花冠はラッパ型で先が5片に裂けて開く。葉は奇数羽状複葉。つるは気根を出し固着すしながら伸びる。幹はフジと同じように太くなる。樹勢が非常に強く丈夫な花木であり、地下茎を延ばしひこばえを周囲に芽生えさせ、繁殖する。落花すると、蜜がたれ周りを湿らすほど。その蜜に、メジロが目ざとく感知して集まってくる。蜂も姿を現す。その蜜は毒性があるといわれるが、根拠のない俗説・風評である。花や樹皮は漢方薬では利尿や通経に使われる。園芸品種が複数存在し、ピンクや黄色などの花色もある。新梢に房となって花が枝元から次々に咲き、花は毎日のようにすぐに散る。花が終わった新梢をそのままにしておくと、樹の姿が乱れ、樹勢が衰えるので適切な剪定が必要。ノウゼンカズラ属はノウゼンカズラと、アメリカ合衆国南東部原産のアメリカノウゼンカズラ(C. radicans)、およびこれらの雑種C. x tagliabuana からなる。アメリカノウゼンカズラの花は中国系ノウゼンカズラより小ぶりで細長く、濃い赤橙色。送粉の仕方に特色があり、世界でもっとも小さい鳥といわれるハチドリが空中をホバリングしながら嘴を花の中にさし込んで蜜を吸う。花の形がラッパに似ていることから英語では「トランペット・フラワー」、「トランペット・ヴァイン」あるいは「トランペット・クリーパー」と呼ばれる。

◇生活する花たち「あさざ・野萱草(のかんぞう)・山百合」(東京白金台・自然教育園)

◆今日の秀句/高橋正子選◆

7月16日
★ひんがしの日を真っ向の青田かな/小口泰與
朝日が青田に昇ってくる。青田に昇る朝日はまばゆく、意外にも強烈な光である。青田の青、朝日の強さは、夏の朝の潔さ。(高橋正子)

7月17日
 周防灘秋穂(あいお)湾
★あきつ飛ぶ蒼き海辺や秋穂湾/桑本栄太郎
海辺を飛ぶあきつは、海風を受けて、透明でありながらも力強い飛び方をする。「蒼き海辺」があきつを元気にさせている。(高橋正子)

★マンゴーの丸みの残る古新聞/下地鉄
色あでやかなマンゴーを包んでいた古新聞。マンゴーの形のままの丸みを残している。画になる面白みがある。(高橋正子)

7月18日
★月涼し畳に光投げかけて/多田有花
畳の部屋に月光が射しこむ。月の涼しさが心地よい。畳の間が穏やかである。(高橋正子)

7月19日
★碧海の一線今日も乱れなく/下地鉄
沖に引かれた一本の水平線。碧海はやはり沖縄の夏の海でなければいけないであろう。今日も碧海は穏やかにそして広く緊張をもって横たわる。(高橋正子)

★庭先の風の一樹や白槿/藤田裕子(正子添削)
庭先の白槿が咲いた。その一樹を風がよく吹いている。白い槿の花も涼しそうである。「風の一樹」に涼しさが感じられる。(高橋正子)

7月20日
★採りたてを水に浮かべて夏野菜/祝恵子
夏野菜は、茄子、トマト、胡瓜など色も形も楽しい。水に浮かべて、冷やしたり、洗ったり。生き生きとして、楽しいものに触れることはよいものだ。(高橋正子)

7月21日
★夏木立揺れれば青空広々と/高橋秀之
夏木立が風で揺れる。涼しい風は空へ抜けるのか。見上げる青空は広々として爽快だ。(高橋正子)

★さるすべり瓦の上に青空に/桑本栄太郎
高々と花をつける百日紅は、こんな景色によく咲いている。屋根瓦の色にも、青空にも似合う花である。(高橋正子)

7月22日
★雷に打たれし如く入院す/河野啓一
啓一さんが入院された。それも雷に打たれたように、瞬時の出来ごとに、全く不意をつかれてのこと。そんな気持ちが「雷に打たれし如く」に出ている。(高橋正子)

★水遣りの視線へ大き夏の月/佃 康水
一日の暑さもようやく収まりかけたころ、植物に水遣りをする。水を遣りながら、見上げる視線の先に、大きな夏の月が懸っている。大きな夏の月が涼しい。(高橋正子)