★撒き水の虹を生みつつ樫ぬらす 正子
暑かった夕方、撒き水をしていたら虹を生み出した喜び。周辺の樫にも水気があたり余計に涼しくなったようです。(祝恵子)
○今日の俳句
家裏に立てかけられてゴムプール/祝恵子
カラフルなゴムプールが、ひっそりとした家裏に立てかけられて、目に楽しく映る。家裏が涼しそうである。(高橋正子)
○紫式部の花

[ムラサキシキブ/横浜・四季の森公園] [コムラサキ/東京・新宿御苑園]
★慈雨来る紫式部の花にかな/山内八千代
★紫式部添木に添わぬ花あまた/神部 翠
★光悦垣色あはあはと花式部/高瀬亭子
★紫式部咳くやうに咲き初めし/河野絇子
★夢辿る紫式部の花の香に/石地まゆみ
★花式部見つけたり日の輝きに/高橋信之
紫式部の実は、熟れると美しい紫色となる。しだれるような枝に小さな紫色の実がつき、小鳥が好んで食べる。一度私も食べてみたが、棗に似た味がする。この美しい実がつく前には花が咲くのはとうぜんだが、6月、今ちょうどその紫式部の花が咲いている。実より少し淡い紫色である。その花の通りに実がつく。山野に自生したのを見るが、庭木に植えているものと見かけが多少ちがうように思う。私が見た限りでは、庭木に植えているもは、葉が黄緑がかっているが、自生種は葉が大ぶりで、緑色が濃い。花よりも実が美しい木の一つである。
★登り来てふと見し花は花式部/高橋正子
ムラサキシキブ(紫式部、Callicarpa japonica)はクマツヅラ科の落葉低木で、日本各地の林などに自生し、また果実が紫色で美しいので観賞用に栽培される。高さ3m程度に成長する。小枝はやや水平に伸び、葉を対生する。葉は長楕円形、鋭尖頭(先端が少し突き出すこと)、長さ6-13cm。細かい鋸歯がある。葉は黄緑で洋紙質、薄くて表面につやはない。初めは表側に細かい毛があることもある。花は淡紫色の小花が散房花序をつくり葉腋から対になって出て、6月頃咲く。秋に果実が熟すと紫色になる。果実は直径3mmで球形。栽培品種には白実のものもある。名前の由来は平安時代の女性作家「紫式部」だが、この植物にこの名が付けられたのはもともと「ムラサキシキミ」と呼ばれていたためと思われる。「シキミ」とは重る実=実がたくさんなるという意味。スウェーデンの植物学者のカール・ツンベルクが学名を命名した。北海道から九州、琉球列島まで広く見られ、国外では朝鮮半島と台湾に分布する。低山の森林にごく普通に見られ、特に崩壊地などにはよく育っている。ムラサキシキブ(コムラサキ、シロシキブ)の名所として、京都・嵯峨野の正覚寺が有名である。
コムラサキ(C. dichotoma)も、全体に小型だが果実の数が多くて美しいのでよく栽培される。別名コシキブ。ムラサキシキブとは別種であるが混同されやすく、コムラサキをムラサキシキブといって栽培していることが大半である。全体によく似ているが、コムラサキの方がこじんまりとしている。個々の特徴では、葉はコムラサキは葉の先端半分にだけ鋸歯があるが、ムラサキシキブは葉全体に鋸歯があることで区別できる。また、花序ではムラサキシキブのそれが腋生であるのに対して、コムラサキは腋上生で、葉の付け根から数mm離れた上につく。岩手県で絶滅、その他多数の都道府県でレッドリストの絶滅寸前・絶滅危惧種・危急種・準絶滅危惧の種に指定されている。
◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

●小口泰與
滝しぶき浴びて茅の輪をくぐりけり★★★
夏越しの祓いにくぐる茅の輪。そこには滝しぶきがとどく。あおあおとした萱に滝しぶきが清冽。子どもも大人も一様に無事に夏が越せるだろう。(高橋正子)
妹もまねて脚立や袋掛★★★
上州の雷を凌ぎし小犬かな★★★
●祝恵子
夏休み学童鉢を持ち帰る★★★
夏芝の花の小道を杖二人★★★
ふうわりと白雲に浮き合歓の花★★★
●小西 宏
波に跳び潮被って貸ボート★★★
ゴーグルの跡だけ白い日焼けの子★★★
夏海の暮れて明るき珊瑚礁★★★
●桑本栄太郎
<朝の四条大橋~祇園界隈>
高瀬川木々の水面の影涼し★★★
朝涼の花見小路や通り雨★★★
川風の空の高みにさるすべり★★★
●下地鉄
残照にしずかに暮れる夏の海★★★
夕凪や蒼海い揺れる茜雲★★★
碧線の夏空斬って直線に★★★
7月31日(水)
●小口泰與
浅間嶺の西日呑み込む火口かな★★★
夕さりの瀞の坩堝へ投網打つ★★★
びしょぬれの子犬や夕立上がりたり★★★
●渋谷洋介
夾竹桃上り急行通過せり★★★★
じりじりと灼熱の陽が照りつける頃に咲く夾竹桃。その花を次々と人を乗せてきた上りの急行列車が通過する。ただそれだけのことなのに、その風景に、上り急行は復員列車かもしれないという思いが重なる。(高橋正子)
何時からか通らぬ路に栗の花★★★
葉隠れに彩を深むや青蜜柑★★★
●迫田和代
青田風色を伴いあちらから★★★
日傘閉じ川風そよぐ木陰へと★★★
向こうから架け橋のごと夏の虹★★★
●藤田裕子
朝蝉の四方つぎつぎ湧き出づる★★★
遠花火おそめの夕餉始まれり★★★
光りつつ天空ゆるがす遠花火 ★★★
●桑本栄太郎
緑蔭の樟の大樹や医大前★★★
追い越して青田突き抜け新幹線★★★
父も子も背中にリュックや夏休み★★★★
●小西 宏
守礼門ガシャガシャと蝉かがやかし★★★
洞窟の青にゆらめく熱帯魚★★★
夏海の果てに雲おき夕暮れる★★★★
7月30日(火)
●小口泰與
薄情な風の散らせる百日紅★★★
あけぼのの石から草へ糸とんぼ★★★
ひまわりや笠懸の的綾藺傘★★★
●桑本栄太郎
うすき黄のオクラの花の朝涼し★★★★
あじさいの蒼色残し朽ちにけり★★★
冷奴ブランドネームは”男まえ★★★
●佃 康水
開け放ち仏具磨けば蝉時雨★★★★
お盆の支度であろう。朝まだ涼しいうち、襖や戸も開け放ち、仏具を磨く。すると蝉時雨が押し寄せる。先祖のこと、敗戦にまつわる記憶など、さまざまな思いがよぎる。(高橋正子)
蹲踞へ置かれ涼やか瑠璃茉莉★★★
旧家解く匂い立ちたる炎暑かな★★★
●小西 宏
夕立の煙の重し竹林★★★
夕立に清らとなりぬ蝉の声★★★
木の下に夕立を聞くとき優し★★★
★冬瓜にさくっという音のみありぬ 正子
冬瓜は形も大きくグロテスクで、切るときに身体を乗せて切りますが「さくっという音のみありぬ」に冬瓜の本質そのままを詠まれて居り、納得!と思わず笑ってしまいました。しかし、事と次第によっては重宝で、保存方法も工夫して我が家では夏から冬にかけて何度か食卓に上る美味しい食材です。リアルで面白く台所に立つ主婦として共感の一句です。(佃 康水)
○今日の俳句
噴水のしぶきや児らを走らせる/佃 康水
噴水のしぶきを避けながらも、喜々として水に濡れたり、水から逃げたりする幼い子たちの無邪気な姿がよく詠めている。(高橋正子)
○風船葛

[風船葛/横浜日吉本町]
★あそび仲間ふやし風船葛かな/宮津昭彦
★風船葛色づき風のなき日かな/宮津昭彦
★風船葛花の微細の夜に溶けず/宮津昭彦
★風筋の風船葛狂ふがごと/松崎鉄之介
★フランスヘ行かう風船かづらの唄/豊田都峰
★風が来て風船かづら少し浮く/島谷征良
★風吹けば吹かれ風船葛かな/大橋敦子
★離れ住む吾子や風船蔓揺れ/伊藤とら
★風船葛逝きしばかりの人の垣/二瓶洋子
★孫去りて風船かずら揺れやまず/長瀬節子
★風船かづら風知るほどに育ちけり/水谷芳子
★生家跡垣に風船かづら揺れ/早水秀久
★風船葛われ青空を一人じめ/竹内悦子
★透明の朝風に揺れ風船かづら/岸本林立
★帰りにも触るる風船葛かな/森清堯
★吹かるるは風船かずらと子の髪と/高橋正子
★風船かずら割れて飛び出すみどりの空気/〃
★風船かずら夜空の星をきらめかす/〃
フウセンカズラ(風船葛、学名:Cardiospermum halicacabum)とはムクロジ科の植物の一種。花を観賞するためよりむしろ、風船状の果実を観て楽しむために栽培される。北米原産。つる性の植物で一年草。葉は三出複葉、小葉は草質で柔らかく、あらい鋸歯がある。7月~9月頃に白い5mmくらいの花を咲かせる。花は葉腋からでる長い柄の先に数個付き、巻きヒゲを共につける。果実は風船状に大きく膨らみ、緑色。後に茶色く枯れる。種子は球形で大粒、なめらかな黒でハート形の白い部分がある。ちょうど栃の実を小さくした姿に見える。よく茂ったときは非常に涼しげで、家庭の壁面緑化にも使われる。種子は、白っぽいハート形の部分をサルの顔に見立てて遊ぶこともある。属名は「ハートの種」の意。
◇生活する花たち「蓮の花」(横浜市港北区箕輪町・大聖院)

★月見草の大きな花にさよならを 正子
黄色の花弁を開く大輪の月見草。その際立つ明るさに佇み、身に添うような親しさを覚え「さよならを」告げ立ち去られたのでしょう。凛と野に立ち健気に開く月見草の大きな存在感が感じられます。(藤田洋子)
○今日の俳句
山の雨上り茅の輪の列に入る/藤田洋子
山の雨が、一句の雰囲気を作り出し、夏越し祭の茅の輪の緑が生き生きしている。茅の輪をくぐる順番の列に入って、無事に夏を越せることを祈る。(高橋正子)
○秋葵(オクラ)の花

[秋葵(オクラ)の花/横浜市緑区北八朔町]_[トロロアオイ(黄蜀葵)/ネットより]
★秋葵川は南へ流れ去る/高橋信之
★秋葵花は黄色を澄ましきる/高橋正子
オクラ(秋葵、Okra、学名:Abelmoschus esculentus)は、アオイ科トロロアオイ属の植物、または食用とするその果実。和名をアメリカネリと言い、ほかに陸蓮根(おかれんこん)の異名もある。英名okraの語源はガーナで話されるトウィ語 (Twi) のnkramaから。沖縄県や鹿児島県、伊豆諸島など、この野菜が全国的に普及する昭和50年代以前から食べられていた地域では「ネリ」という語で呼ばれていた。今日では当該地域以外では「オクラ」という英語名称以外では通じないことが多い。以前はフヨウ属(Hibiscus)に分類されていたが、現在ではトロロアオイ属に分類されている。短期間で50cm-2mほどに生長し、15-30cmの大きさの掌状の葉をつけ、黄色に中央が赤色のトロロアオイに非常に似た花をつける。開花は夜から早朝にかけてで、昼にはしぼんでしまう。開花後、長さ5-30cmの先の尖った形の五稜の果実をつけ、表面に短毛が生えており、熟すと木質化する。原産地はアフリカ北東部(エチオピアが有力)で、熱帯から温帯で栽培されている。エジプトでは、紀元前元年頃にはすでに栽培されていた。アメリカ州では、主に西アフリカから移住させられた奴隷によって栽培が始まり、現在でもアメリカ合衆国南部、西インド諸島、ブラジル北部など、アフリカ系住民の多い地域でよく栽培されている。熱帯では多年草であるが、オクラは少しの霜で枯れてしまうほどに寒さに弱いために、日本では一年草となっている。日本に入って来たのは明治初期である。従来「ネリ」と呼んでいたトロロアオイの近縁種であるため、アメリカネリと名付けられた。現在の日本で主流を占めるのは、稜がはっきりしていて断面は丸みを帯びた星型になる品種だが、沖縄や八丈島などでは大型で稜がほとんどなく、断面の丸いものが栽培されている。他にも莢が暗紅色になるもの(赤オクラ)など亜種は多い。大きくなりすぎると繊維が発達して食感が悪くなるので、角オクラは10cm、丸オクラは15-20cmくらいに成長した段階で収穫される。
トロロアオイ(黄蜀葵、学名:Abelmoschus manihot )は、アオイ科トロロアオイ属の植物。オクラに似た花を咲かせることから花オクラとも呼ばれる。原産地は中国。この植物から採取される粘液はネリと呼ばれ、和紙作りのほか、蒲鉾や蕎麦のつなぎ、漢方薬の成形などに利用される。高さは1.5メートル以上に達し、葉は掌状に五から九裂する。茎には細くて堅い棘がある。8月から9月に開花する。花の色は淡黄からやや白に近く、濃紫色の模様を花びらの中心につける。花は綿の花に似た形状をしており、花弁は5つ。花の大きさは10から20センチで、オクラの倍近い。朝に咲いて夕方にしぼみ、夜になると地面に落ちる。花びらは横の方向を向いて咲くため、側近盞花(そっきんさんか)とも呼ばれる。果実はオクラに似ているが太くて短く、剛毛が多いうえ固いため食用にはならない。熟すると褐変して割れ、種子を散らす。根は太くて長く、温暖地では多年草となる。
主に根部から抽出される粘液を「ネリ(糊)」と呼び、紙漉きの際にコウゾ、ミツマタなどの植物の繊維を均一に分散させるための添加剤として利用される。日本ではガンピ(雁皮)という植物を和紙の材料として煮溶かすと粘性が出て、均質ないい紙
現在、機械抄き和紙はもちろん、手すき和紙の中でも古来の方法でネリを使用しているところは少なく、ポリアクリルアミドなどの化学薬品を合成ネリとして使用しているところが増えている。
同属植物であるオクラと異なり、実は不味で食用に適さないが、紙漉きのためにトロロアオイを栽培する地域では、ネリには不要な花を食用に供することもある。花野菜(エディブル・フラワー)として家庭菜園などで栽培されることもあり、花弁を生のままサラダにしたり、天婦羅、湯がいて三杯酢などで酢の物として食される。特有のぬめりがあり美味であるが、一日花であるため市場にはほとんど流通しない。
◇生活する花たち「蓮の花・のうぜんかずら・ブラックベリー」(横浜市港北区箕輪町)

★わが視線揚羽の青に流さるる 正子
この揚羽はアオスジアゲハでしょうか?きっとそうだろうと思いました。軽快にきびきびと飛ぶこの蝶は、翅のブルーの線が美しく目を引きます。思わず目を奪われてその姿を追っていかれた、そのことに共感いたします。 (多田有花)
○今日の俳句
雲の峰四方八方立ち上がる/多田有花
ぐるりと空を見渡すと、四方八方から雲の峰が立ちあがり、まさに夏をそれに感じる。四方八方の雲の峰は勇壮なことである。(高橋正子)
○屁糞葛(へくそかずら)

[屁糞葛/横浜・四季の森公園]
「へくそかずら」は、埃っぽい真夏の暑さにも負けず道路わきの草に巻きついたり、涼しそうな竹藪の下草に巻きついたり、結構あちこちで見かける。初めてへくそかずらの名前を知ったのは、小学生の時だった。そのころは、夏休みの宿題は夏休み帳だけ。夏休み帳だけやるのは少な過ぎると考えたのだろう。上級生から夏休みには、漢字の百字練習と、計算ドリル、絵を2,3枚。工作1点、押し花か昆虫採集、これらをそろえて新学期に持ってゆくものと教えらえていた。一緒に勉強したり、絵を描いたり、工作をしたりすることもあった。押し花は小学3年生のころから始めた。毎夏のことで、家の周りのいわゆる雑草を採集して押し花にし、画用紙に貼り付けた。10枚から20枚くらいを綴じた。植物の名前は、図鑑で調べるののではなく、上級生や大人に聞いた。わからないものは何も書かないで提出。「へくそかずら」の名前は、夏休みの植物採集で知った。かわいい花だと思ったが、それが花にはかわいそうな名前であることなどちっとも思わなかった。実際、意味を考えもしなかったのだろう。
★へくそかずら涙を溜めし目に映る/高橋正子
ヘクソカズラ (屁糞葛, Paederia scandens) とはアカネ科ヘクソカズラ属の植物の一種。別名ヤイトバナ、サオトメバナ。古名はクソカズラ(糞葛・屎葛)。日本各地、東アジアに分布する蔓性の多年草で、至る所に多い雑草。葉や茎に悪臭があることから屁屎葛(ヘクソカズラ)の名がある。葉は蔓性の茎に対生し、形は披針形から広卵形で、縁は全縁。花期は7月から9月頃で、花弁は白色、中心は紅紫色であり、その色合いが灸を据えた跡のようなのでヤイトバナ(灸花)の別名がある。果実は黄褐色。干して水分を飛ばした果実、または生の実を薬用とする。ただ、生の果実はかなりの臭気を放つのに対して、乾燥したものは不思議と臭いが消えるため、乾燥したものを使うことのほうが多い。劇的ではないが効用は認められており、しもやけ、あかぎれなどの外用民間薬のほか、生薬の鶏屎藤果としてもしられている。「ヘ」の上に「クソ」までつく気の毒な名をもつヘクソカズラは、荒れた雑木林などに生える。名前のとおりに花などをもむといやなにおいがするが、芯の部分は落ちついたアズキ色でしゃれている。冬になれば枯れたつるで素敵なリースができる。
◇生活する花たち「鬼百合・コムラサキ・藪茗荷」(東京・新宿御苑)

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●小口泰與
萱草の花や赤城のちぎれ雲★★★★
ざわざわとざわつく草や雷近し★★★
青蛙赤城より雨走り来る★★★
●桑本栄太郎
廃屋の屋根に盛りやさるすべり★★★
白花の朝の静寂ダリア咲く★★★★
小松菜の畝の数多や朝涼し★★★
●多田有花
夕立のあがりし街へ戻りけり★★★★
夕立が降った時はよその街にいたか。帰ってみると街は夕立があがって、さっぱりとした涼しさがある。洗いたての街はいいものだ。(高橋正子)
中空に高く日を浴び入道雲★★★
にわか雨あがれば蜩の森へ★★★
●高橋秀之
真ん丸い夕日の前に富士の山★★★
雨上がりの夏空夕日が染めあげる★★★★
浅漬けの胡瓜一皿夕の膳★★★
●藤田洋子
公園の木々を繋いで蝉の声★★★
一斉に蝉の沸き立つ山に入る★★★
少年ら蝉を鳴かせて手の中に★★★★
ドイツの旅平成2年夏
★ラインのぼる巨船の人の裸かな 正子
中部ヨーロッパ最大の川で大型船はハーゼルまでの可航でローレライなどの伝説や河岸の古城が多くの観光客を楽しましている。大型船で上半身裸になり夏の太陽をのんびりと当りながら河岸の名所を見学している観光客の素敵な景ですね。(小口泰與)
○今日の俳句
湖へ虎杖の花咲きいそぎ/小口泰與
湖のほとりに虎杖の花が咲き急いでいる。夏が短い北国を思わせる。虎杖の花は小さく白い。散れば葉に埃がかかるように散る。夏の短さも、花のもろさも、みな移ろいやすさでえある。(高橋正子)
○万両の花

[万両の花/横浜日吉本町]
★向き合って万両の花の確かさに/高橋信之
センリョウと一緒の所に、マンリョウの普通葉のものと斑入り葉のものを植えていたが、何故か其処の場所ではセンリョウだけが元気が良く、マンリョウの株は細り、今では痩せて1本だけとなり花付きも侘しい。だが、何年か前から庭の2箇所に鳥の落し物からか実生苗が生えてきて、やっと去年から花が咲き実が生り、今年初めて写真を撮ってみた。
センリョウ、ヤブコウジの花と違ってマンリョウの蕾は尖ってしっかりとしており、開いた花も1センチ位と小さいながらも随分とはっきりとして造花のような5弁が美しい。真っ白だと思っていたが、どうも斑点が入っているようにも見える。花も下向きに咲き、雨風に散ることなく実もしっかりと生り、恐らく鳥も食べないものだろうと思っていた。しかし庭のあちこちに実生苗が生えてくるって事は、センリョウより大き目の実が鳥にとってはご馳走なのかも知れない。
マンリョウの実には、赤、白、黄色があるが、花は何れも同じ色なのであろうか?
さて、人間にとっては毒の植物があるが、鳥にとっては植物の実は総て無害なのであろうか?そして何れが美味しいものかと鳥達も選別するものなのか?今年初めて見たマンリョウの花、結構花付きも去年より殖えてくれたようだが、このまま実も豊作で秋に朱美がたわわになってくれることを期待したい。(ブログ「一花一葉」より)
<マンリョウ(万両)>
ヤブコウジ科ヤブコウジ属、学名:Ardisia crenata、花期:7月、分布:関東以西、四国、九州、沖縄、アジア東南部、実の色:赤、黄、白、性状:常緑小低木
◇生活する花たち「桔梗・風船かずら・芹の花」(横浜都筑区ふじやとの道)

●小口泰與
梔子の香のおりおりの朝かな★★★
夕さりの赤城をかくす雲の嶺★★★
低く咲くねじ花の風低きかな★★★★
●桑本栄太郎
白粉の花の黄色や朝の辻★★★★
白粉花は、夕方から咲く花であるが、朝まだ早いうちは咲きの残っている。朝の辻に黄色い白粉花を見つけた。赤や白い花ではなく、黄色なので、月の色の名残のようでもある。「朝の辻」が涼しい。(高橋正子)
米の香のほのと乗り来る青田波★★★
菜園の朝のしじまやカンナの黄★★★
●多田有花
ひぐらしの木陰抜け六甲最高峰★★★
額紫陽花夏の終わりの六甲山★★★
六甲の汗を有馬の湯に流す★★★
●高橋秀之
夜が更けてそっと片手に夏帽子★★★
大皿に溢れんばかり冷奴★★★★
風呂上り団扇ふたつで風送る★★★
●古田敬二
一本の曲がるものなき木賊かな★★★
名刹の木賊一本も曲がらずに★★★
蝶舞えり入道雲の伸びる空★★★