8月29日

●小口泰與
暾(ひ)を宿す稲穂の波や群雀★★★
天そそる妙義の奇岩瓢かな★★★

とんぼうへ指を立てけり幼き日★★★★
そういえば、こんなこともしたなあと、思い出す。とんぼうは、田や畑の杭などによく止まっている。指だって棒や杭のようなもの。自然のなかで遊んだ幼い日のことだ。すなおな句がよい。(高橋正子)

●桑本栄太郎
うそ寒や二の腕抱き目覚めおり★★★
雲流れ容ながれて秋高し★★★★
真近なる嶺の蒼さよ秋気満つ★★★

●小西 宏
カーテンの白揺れ雲に秋の蝉★★★
団栗の艶が昨日と同じ道に★★★★
高くまで筋なす秋の茜雲★★★

●佃 康水
韮の花摘み休み田に匂い立つ★★★

韮の花浸す畔川音清ら★★★★
韮の花は、8月も終わり、新涼の9月を迎えるころ盛んに花を咲かせる。地味な花ながら白い可憐な花。清らかな水音を立てて流れる畦川に摘んだ花を浸すと生き生き涼やかになってくる。(高橋正子)

朝ぼらけの窓に溢るる鰯雲★★★

8月29日(木)

★稲穂田の隅にごぼごぼ水が鳴り  正子
稲田にも稲穂ができて育ってきている。しかしまだ水の確保が必要な時期なのだろう。田の隅では水音がごぼごぼとしている田園の風景です。(祝恵子)

○今日の俳句
新しき靴の一歩よ秋きたる/祝恵子
新しい靴をおろし、一歩を踏み出す。新しいものを履く快い緊張がある。新しい季節、秋も同時にやって来た。(高橋正子)

○薮茗荷(やぶみょうが)

[薮茗荷/東京新宿御苑]

  新宿御苑
★青い眼の青年子らと薮茗荷/高橋信之

 思えば8月も終わりになった。暑い盛り7月27日、熱中症で病院に運ばれる人も少なくないとき、気を付けて新宿御苑に行った。新宿御苑は、大木が茂り、直射日光を避けようと思えば避けられる。街中より、気温は2,3度低いと聞いた。確かにそうであった。その日見ごろとなっている植物に鬼百合、槿などがあって、それと並んで藪茗荷があった。はじめ、この植物を四季の森公園のプロムナードで目にして茗荷に似ているとは思ったが、名前は知らなかった。茗荷とは科が違うとある。木下などにつやつやした葉を群生して広げている。7月には、すっと伸びた茎の先に白い小さい花を咲かせる。御苑の藪茗荷も一面に、遠くまでと言おうか群生して白い花を咲かせていた。それから8月になって四季の森公園へ行ったが、いつもと違う道を通った。植えたのか、自然に生えたのか民家の庭に藪茗荷が青いきれいな実をつけていた。竜の玉より濃い紺に近い青色で、竜の玉より大きい。ちょっと違う道を通れば、いつもなにか新しいものが見れる。

★木下闇遠く一面藪みょうが/高橋正子
★藪みょうが実が青ければつくづくと/高橋正子

ヤブミョウガ(薮茗荷、学名 Pollia Thunb)は、ツユクサ科ヤブミョウガ属の多年生草本植物である。東アジア(中国、朝鮮半島、台湾、日本)に分布し、日本では関東地方以西の暖地の林縁などに自生するが、湿気の多い土地を好む。5月頃から発芽し、夏にかけて草丈 50cm〜 1m 前後に生長、ミョウガに似た長楕円形の葉を互生させ、葉の根元は茎を巻く葉鞘を形成する。葉は茎の先端部分だけに集中する。なお本種の葉は表面がざらつくところ、葉が2列に出ないことなどでミョウガと区別できる。なお、ミョウガはショウガ科であり、花の構造は全く異なる。8月頃になると茎の先端から花序をまっすぐ上に伸ばし、白い花を咲かせる。花には両性花と雄花があり、前者は白い雌蘂が目立ち、後者は黄色い葯の付いた雄蘂が目立つところで判別できる。白い花弁が 3枚、萼も白く 3枚、雄蘂 6本、雌蘂 1本で、花冠の直径は 8mm 程度である。
花が終わると初秋にかけて直径 5mm 程度の球状の実を付け、じきに葉を落とす。実は若いうちは緑色で、熟すと濃い青紫色になる。この種子のほか、地下茎を伸ばしても殖え、群生する。若芽は、初夏の葉が開ききらないうちに採取し、塩茹でしてそのままで、または炒め物や汁物などにして食用にされる。

◇生活する花たち「桔梗・風船かずら・芹の花」(横浜都筑区ふじやとの道)

8月28日(水)

★一椀の汁に絞りきる酢橘  正子
焼き物や土瓶蒸しによく添えられる酢橘。さらに、お味噌汁やお吸い物など汁物へぎゅっとしぼると、その爽やかな酸味や香りをいっそう堪能できます。一椀に「絞りきる」ご様子、きっとお好きでいらっしゃるのでしょう。わが家も酢橘好きなものですから、御句に食欲をそそられております。秋の食材にぴったりな薬味ですね。(川名ますみ)

○今日の俳句
とんぼとんぼ向う山まで透き通る/川名ますみ
「とんぼとんぼ」のリズムが楽しい。とんぼが飛ぶと、向こう山まで空気が透き通った感じがする。(高橋正子)

秋涼し仏花の束を風に解き/藤田洋子
仏様に花を供えようと花束をほどくと涼しい風が吹く。花束にはリンドウなど秋の花もあってそれも嬉しい。「風に解き」で、いっそうさわやかな句となった。(高橋正子)

○唐糸草

[唐糸草/東京・向島百花園]         [唐糸草/ネットより]

★唐糸草確かに秋が来ておりぬ  正子

向島百花園を訪ねたのは去年の九月八日。晴れであった。百花はあるけれど、どれもたくさん咲いているわけではない。桔梗は花が一つ残り、なでしこは2,3本あったのが、すっかり枯れていた。偶然にも、れんげしょうまが一本、唐糸草がもう終わりかけて、やっとその色と形が残る程度のが二つあった。唐糸草は初めて見たが、山野草の部類に入る。えのころ草の穂よりも少し大きいが、紅色の雄しべが日に透けると大変美しいということである。ちょっと粋な長い紅色の雄しべは雨に濡れると、猫が雨に濡れたようになるそうだ。撮ってきた写真を見ながら「唐糸」はいかにも江戸好みらしいと思う。終わりかけの花のみすぼらしさの中にも、きれいな紅色が想像できるから不思議だ。大いにその名前「唐糸」のお蔭であろう。園内にいる間は、なんと花に勢いのないこと、と思っていたが、写真を見ると、一つの情緒がある。文人好みの庭に造られたせいでもあろう。虫の声を聞く会、月見の会も催されるようだから、暮らしの中の花として、少しを植えて楽しむのもささやかながら、都会人のよい楽しみであろう。

去年向島百花園に行ったのは9月8日だったが、今年は、8月20日に訪ねた。この暑い時にと思われるだろうが、葛飾の社宅に住む息子のところに立ち寄るついでに訪ねた。京成線の曳舟駅で降りて徒歩15分。曳舟駅からはスカイツリーが大きく目の前に見える。園内にはいると、この暑さに、さすがに作業の人が数人と入園者は私を入れて3人。去年唐糸草のある場所へ行ってみたが、葉さえも見つけることができなかった。去年あった花魁草、れんげしょうまは、見つかった。桔梗と女郎花はこの暑さにもかかわらず見ごろ。藤袴は蕾。萩は穂先のような蕾。咲いていてもほんの2,3花。唐糸草や花魁草はちょうどいいころか、少し早いかと期待したが、きたいどおりにはゆかないものだ。

唐糸草は、バラ科ワレモコウ属の多年草で、原産地は日本。学名: Sanguisorba hakusanensis、和名: カライトソウ。Sanguisorba : ワレモコウ属、hakusanensis : 石川県白山の。Sanguisorba(サングイソルバ)は、ラテン語「sanguis(血)+ sorbere(吸収する)」が語源。根にタンニンが多く、止血効果のある薬として利用されることから。開花期は7~9月。夏から秋にかけて、たぬきのしっぽのような形のピンクの花が咲く。絹糸のような花の様子が、まるで外国(唐)からきた糸のように美しいことから「唐糸草」。8月10日の誕生花、花言葉は「深い思い」。

◇生活する花たち「女郎花・葛の花・萩」(四季の森公園)

8月27日(火)

★りんりんと虫音に力のありて闇  正子
いよいよ秋到来の虫の声を聞ける季節になりました。「りんりんと」の措辞には虫の力一杯に鳴く声を表されていると同時に虫たちの棲む叢や茂みの闇の深さをも想起させ周辺の静寂に響いてくる涼やかな虫の音が聞こえて来そうです。(佃 康水)

○今日の俳句
賑わいの漁港の上の鰯雲/佃 康水
出船、入船、魚の水揚げなどで、賑わう漁港。その上の空高くに広がる鰯雲。生き生きとした漁港の美しい景色。(高橋正子)

○竜胆(りんどう)

[竜胆/横浜日吉本町]

★竜胆や風落ち来る空深し 龍之介
★山の声しきりに迫る花竜胆 亞浪
★山ふところの ことしもここに竜胆の花 山頭火
★笹竜胆草馬の脊を滑りけり 普羅
★龍胆の太根切りたり山刀 かな女
★龍膽をみる眼かへすや露の中 蛇笏
★かたはらに竜胆濃ゆき清水かな 風生
★好晴や壺に開いて濃竜胆 久女
★銀婚の妻のみちべに濃竜胆 青邨
★霧に咲く深山りんどう卓に咲きぬ 秋櫻子
★竜胆の花のあいだに立つ葉かな 素十
★子へ供華のりんだう浸す山の瀬に 貞
★一輪の龍膽餐けよ鶴の墓 青畝

野生の竜胆の花を近隣の野原で見ることはほとんどない。それだけに野生の竜胆を自分の目で見つけたときの感激は一入だ。初めて自分の目が見つけた竜胆は、40年ほども前の阿蘇の中の牧の草地であった。中ノ牧の草地は草丈が低く、平地ならばちょうど草を刈り取ってしばらく経ったときのような爽やかな草原である。秋、朝の日が足元にもほど良く差していた。一歩踏み出そうとしたその靴先に竜胆が一輪上を向いて咲いている。踏んでしまうところだった。いまもその一輪の竜胆の色と姿をよく記憶している。阿蘇には、もう一度行ってみたいと思う。

★竜胆の紺一輪が靴先に/高橋正子
★竜胆に日矢が斜めに差し来たり/高橋正子

リンドウ(竜胆、学名Gentiana scabra Bunge var. buergeri (Miq.) Maxim.)とは、リンドウ科リンドウ属の多年生植物である。1変種 Gentiana scabra var. buergeri をさすことが多いが、近縁の他品種や他種を含む総称名のこともある。英名Japanese gentian。古くはえやみぐさ(疫病草、瘧草)とも呼ばれた。本州から四国・九州の湿った野山に自生する。花期は秋。花は晴天の時だけ開き、釣り鐘型のきれいな紫色で、茎の先に上向きにいくつも咲かせる。高さは50cmほど。葉は細長く、対生につく。かつては水田周辺の草地やため池の堤防などにリンドウやアキノキリンソウなどの草花がたくさん自生していたが、それは農業との関係で定期的に草刈りがなされ、草丈が低い状態に保たれていたためだった。近年、そのような手入れのはいる場所が少なくなったため、リンドウをはじめこれらの植物は見る機会が少なくなってしまい、リンドウを探すことも難しくなってしまっている。園芸植物として、または野草としてよく栽培されるが、園芸店でよく売られているのは別種のエゾリンドウの栽培品種のことが多い。生薬のリュウタン(竜胆)の原料の1種である。

◇生活する花たち「葛の花①・葛の花②・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

8月27日-28日

8月28日

●小口泰與
秋光や利根の流れを要とし★★★
戯れに杖を立てけり秋茜★★★
烈風にもてあそばれし野萩かな★★★

●桑本栄太郎
秋雨の車窓滂沱や阪急線★★★
秋雨の上がり嶺の端青空に★★★
ひぐらしの想い出遠き母の里★★★

●多田有花
鳥取より来て初物の梨を売る★★★★
鳥取の梨は薄緑色の上品な味の「二十世紀」。幸水が終わるころ出始めるが、この梨が出ると朝夕はめっきり涼しくなるのだ。新涼のさわやかさがある句だ。(高橋正子)

群れ鴉秋夕焼けを高く帰る★★★
秋涼や森ゆくときも背をのばし★★★

●小西 宏
夏すだれ透けて夜明けの電車の音★★★★
「すだれ(簾)」は、夏の季語なので「夏」は不要。「秋簾」などと使う。夜明け、目を覚ましていると簾の向こうに電車の音が聞こえる。街も動き出している。(高橋正子)

雲高く見上げる谷戸の沢桔梗★★★
緑葉に白き蕾の紅芙蓉★★★

8月27日

●小口泰與
芙蓉咲く上毛三山雲も無し★★★★
上毛三山が見渡せるところ、山の青を背景に咲く芙蓉は、「雲も無し」で秋の気配十分となった。(高橋正子)
丸太橋踏む二の足や稲光★★★
秋ばらの蕾半分喰われけり★★★

●桑本栄太郎
大泣きの子供夜店や夏祭り★★★
とんぼうの編隊飛行や雨後の晴れ★★★
秋蝉の一おし二おし三におし★★★

8月26日

●小口泰與
山外の塔頭さわに実南天★★★
柳散る雨水ためし舫い舟★★★
星空を乗せて雲ゆく竹の春★★★

●祝恵子
猫じゃらしふと思われる故郷のこと★★★★
「猫じゃらし」は、秋草のなかでも風情が楽しく、野道を歩けばどこにでもある。遊びの少なかった時代、猫の鼻先へもっていって猫をじゃらしたこともあるだろう。故郷のことが、ふっと思い出される秋草である。(高橋正子)

地蔵盆張り出しのあり尼の寺★★★
夕月の高し散歩の畔の道★★★

●桑本栄太郎
空腹を覚え目覚めり涼新た★★★
新涼や熱きコーヒー飲んでみる★★★
夕暮れの風を染めおり酔芙蓉★★★

●多田有花
晴れし朝秋めく音に耳を澄ます★★★
秋涼しクレヨンで描くギリシャの絵★★★★
「ギリシャの絵」は、ギリシャの風景を描いた絵か。朝夕はめっきり涼しくなり、クレヨンの力強さ、温かみが懐かしくなる。そこで思い出のギリシャの写真を取り出して絵に描いてみたのだ。(高橋正子)

新涼や窓を細めに開けている★★★

●佃 康水
秋涼し二胡の音遠く夜の茶会★★★
開け放つ茶室へ虫音近づけり★★★
無防備を秋蚊の襲う雨後の庭★★★

●小西 宏
豊満に葡萄膨らみ山遠し★★★
蜩の弦(げん)弾く森を潜り行く★★★
丘越えて風に聞こえる秋祭★★★★

8月26日(月)

★原っぱにえのころぐさの影となる  正子
散策の時の光景のようですね?えのころ草はどのような微風にも反応し揺れているが、自身の歩みに合わせて影も揺れる・・・。作者の立つ位置と情景が鮮明に窺え、爽やかな初秋のひと時である。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
坂道の風を下れば稲の花/桑本栄太郎
「風を下れば」に詩がある。稲の花が咲くころは、暑い暑いと言いながらも、ときに心地よい風が吹く。そんな日に咲く稲の花は爽やかである。(高橋正子)

○犬蓼(赤のまま)

[犬蓼(いぬたで)/横浜下田町・松の川緑道]

★犬蓼の花くふ馬や茶の煙 子規
★犬蓼の花に水落ち石出たり 鬼城
★手にしたる赤のまんまを手向草 風生
★モンペ穿く赤のマンマに笑ひながら かな女
★赤のまま土の気もなき蛇籠より 青畝
★赤のまま摘めるうまごに随へり 亞浪
★道ばたの捨て蚕に赤のまんまかな 石鼎
★人恋へば野は霧雨の赤まんま 鷹女
★赤のまま天平雲は天のもの 青畝
★赤のままそと林間の日を集め 茅舎
★山水のどこも泌み出る赤のまま 汀女
★われ黙り人話しかくあかのまま 立子
★一本を一心に見る赤のまま/大串章
★枯畦に残りて赤しあかのまま/阿部ひろし
★相模野にあるままを活け赤のまま/鷹羽狩行
★暁光を小粒に受けて赤のまま/林翔
★水際の赤のまんまの赤つぶら/高橋正子

イヌタデ(犬蓼、Polygonum longisetum あるいは Persicaria longiseta)は、タデ科の一年草。道ばたに普通に見られる雑草である。茎の基部は横に這い、多く枝分かれして小さな集団を作る。茎の先はやや立ち、高さは20-50cm。葉は楕円形。秋に茎の先端から穂を出し、花を密につける。花よりも、その後に見られる真っ赤な果実が目立つ。果実そのものは黒っぽい色であるが、その外側に赤い萼をかぶっているので、このように見えるものである。赤い小さな果実を赤飯に見立て、アカマンマとも呼ばれる。雑草ではあるが、非常に美しく、画材などとして使われることもある。名前はヤナギタデに対し、葉に辛味がなくて役に立たないために「イヌタデ」と名付けられた。

◇生活する花たち「芙蓉・萩・女郎花」(東京・向島百花園)

8月25日(日)

★葛咲けり一つの花のその奥にも  正子
秋の七草のひとつ。各地の山野に自生し紫紅色で蝶形の花を密集して付ける葛の花は野趣に富み控えめで美しい花ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
きちこうや一朶の雲の生まれけり/小口泰與
「桔梗」と書いて「きちこう」とも「ききょう」とも読む。きちこうの紫色と一朶の雲の白い色のとりあわせが美しい。ただそれだけでなく、きちこうの咲く季節が、ゆったりと爽やかに表現されている。(高橋正子)

○小豆の花

[小豆の花/ネットより]            [野小豆の花/ネットより]

★パソコン画面の小豆の花のさわやかに/高橋信之

小豆の花の記憶はうすいが、小豆が収穫されて、豆の鞘を木槌で打ってなかの小豆を取りだす作業は記憶にある。そういう仕事は、たいてい祖母の仕事であったから、遊びながら手伝った。まずは、ぜんざいになって、それからお餅の餡になった。農村では、店で小豆を売っているのを見たことがないから、それぞれの家で栽培していたのだろうと思う。畑のダイヤとか、小豆相場ということも小さい農村の生活者には無縁の言葉であった。

★海さえも火照りて小豆の花が咲く/高橋正子

アズキ(小豆、Vigna angularis)は、マメ科ササゲ属の一年草。アズキは二千年程の昔に中国から渡来したと考えられている栽培種。和菓子のあん、赤飯等に使われるマメとしてお馴染みである。原産地は東アジア。祖先野生種のヤブツルアズキ (Vigna angularis (Willd.) var. nipponensis) は日本からヒマラヤの照葉樹林帯に分布し、栽培種のアズキは極東のヤブツルアズキと同じ遺伝的特徴をもつ。日本では古くから親しまれ、縄文遺跡から発掘されているほか、古事記にもその記述がある。8月の終わり頃、葉腋に黄色い花を咲かせる。花の中心部にある竜骨弁と呼ばれるものは旋回しており、属は異なるがノアズキとよく似ている。果実は円筒形で細長く、ササゲ属の特徴をよく示している。種子は赤飯などでお馴染みと思うが、膨らんだ円筒形。アズキの約20%はタンパク質で、栄養価が高いほか、赤い品種の皮にはアントシアニンが含まれ、亜鉛などのミネラル分も豊富である。日本における栽培面積の6割以上を北海道が占める。丹波、備中を含めて、日本の三大産地である。 低温に弱く、霜害を受けやすいため、霜の降りなくなった時期に播種する。国産の品種には以下のようなものがある。

大納言(大粒種) – 丹波、馬路、備中、美方、あかね、ほくと、とよみ
中納言、普通小豆 – えりも、しゅまり、きたのおとめ、さほろ
白小豆 – 丹波白小豆・備中白小豆・北海道白小豆
黒小豆

◇生活する花たち「朝顔・芙蓉・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

8月25日

●小口泰與
せんべいの照りの塩梅秋高し★★★
醜草の我が背を越ゆる暑さかな★★★
秋暑し畑のひび割れ定かなり★★★

●桑本栄太郎
小玉とて袋に置かる西瓜かな★★★
夕暮れのひと時惜しみ秋の蝉★★★
土ぼこり匂いて秋の雷雨かな★★★

●多田有花
秋の雲流れる空となりにけり★★★
雨あがり山河いつしか秋めけり★★★
日が落ちて踊りの歌の流れ出す★★★
「踊り」は、俳句では盆踊りのこと。盆踊りは日が落ちてから始まるが、この句は盆踊りの始まる直前の雰囲気が出ている。「日が落ちて」はそぞろ寂しさがあって、盆踊りにふさわしい気持ちだ。(高橋正子)

●小西 宏
翳深くひまわりの垂れ秋めける★★★
この先は人入らぬ崖からす瓜★★★
風なくて地を這う蔦の西の崖★★★