9月17日(火)

★虫籠に風入らせて子ら駈ける  正子
元気に走ると虫かごの中には風が入ってきます。虫かごに入っているであろう秋の虫も突然の揺れと風に驚いていることでしょう。(高橋秀之)

○今日の俳句
涼新た一直線に船が出る/高橋秀之
新涼の季節。港を出てゆく船も、かろやかに一直線に航跡を残して出てゆく。新涼の気分に満ちた句。(高橋正子)

○南蛮煙管(なんばんぎせる)

[南蛮煙管/東京白金台・国立自然教育園]

 ★芒の根方南蛮煙管のすくと伸ぶ/高橋正子

 ナンバンギセル(南蛮煙管、Aeginetia indica)はハマウツボ科ナンバンギセル属の寄生植物。日本を含むアジア東部、アジア南部の温帯から熱帯にかけて生育する。
 イネ科の単子葉植物(イネ、ススキ、サトウキビなど)の根に寄生する。寄主の根から吸収した栄養分に依存して生育するため、寄主の生長は阻害され、死に至ることもある。全長は15-50cm。葉は披卵形、長さ5-10mm、幅3-4mm[3]。花期は7-8月、赤紫色の花を1個つける。花冠は筒型で、唇形になる。花冠裂片の縁は全縁。果は球状で、種子の大きさは0.04mm。染色体数は2n=30。
 同属のオオナンバンギセルに似るが、本種の方が小型である。また、本種の萼の先端は尖るが、オオナンバンギセルの先端は鈍くなるという点も異なる。ヒメナンバンギセル Aeginetia indica L. var. sekimotoana (Makino) Makino
 ススキなどの雑草の生長を阻害するため、ナンバンギセルによる生物的除草効果の可能性が示されている。一方、陸稲にナンバンギセルが寄生することで、イネの収量が減少するという被害が報告されている。

◇生活する花たち「露草・なんばんぎせる・玉珊瑚(たまさんご)」(東京白金台・自然教育園)

9月17日

●小口泰與
ぽたぽたと落ちる点滴良夜かな★★★
ベットよりながむる虚空帰燕かな★★★
虫の音や雲流れ来て榛名富士★★★
※お大事に。

●河野啓一
野分去りこのすがしさや青い空★★★★
すっきりとしたすがすがしい句。率直に詠みがすがすがしい。(高橋正子)

秋澄める隣りの窓は何思う★★★
感謝して土産は口に敬老日★★★

●桑本栄太郎
<四条大橋~高瀬川界隈>
百日紅四条出口は大橋へ★★★
秋日照る京の町家の深き影★★★
せせらぎの岸に茶店や水の秋★★★★
せせらぎのほとりの茶店はいいものだ。ゆっくりとお茶を飲みながら水音を聞き、水を眺める。「水の秋」の爽やかさである。(高橋正子)

9月16日(月)

★萩のトンネル真上ぱらぱら空があり  正子
萩の花は古くから和歌などに詠われている、文学的名花です。それを「萩のトンネル」として現代的センスで取り上げ、下から空を見上げました。「真上ぱらぱら」とはまた、萩の花の形と咲きようをなんと如実に、そして楽しく表現されたものでしょうか。(小西 宏)

○今日の俳句
とんぼうの列なして行く空かろし/小西 宏
とんぼうが列を作って飛んでゆく楽しい空となった。すいすいと飛んでゆくとんぼうに空まで軽くなった感じだ。(高橋正子)

○毬栗(いがぐり)

[毬栗/横浜市緑区北八朔町]

★落栗やなにかと言へばすぐ谺/芝不器男
栗の木があるところは、山静かな里。落ちた栗も拾われずに転がっている。ちょっとした言葉も響いて谺となる。自分の発した声の谺は、もっとも自分の心がよく受け止めているのではないか。(高橋正子)

★毬栗に袋かぶせてありにけり/高橋将夫
★毬栗や身籠りし山羊つながるる/大串章
★毬栗や祖母に優しく叱られし/大串章
★毬栗を蹴つて日暮れの村となる/小澤克己
★毬栗の落ちてすとんと暗くなる/杉浦典子
★毬栗のやや枯れてゐる掌/田畑幸子
★毬栗を剥くに大事や鎌と足/田中英子

栗の季節になった。栗の季節は意外と早い。まだ残暑が残る中、店頭に栗が現れる。農村や山村では、家に栗の木をもっている家も多い。栗には虫がつきやすいので、昨年まで豊作で栗を送ってきてくれていたのに、今年は突然虫にやられて栗の木が枯れたと報告を受けることもある。送ってきた栗は毬が外してあるのだが、数個は毬栗のまま入っている。それをしばらく飾って楽しんだりするが、毬栗も生き物、次第に色艶が失われてくる。そうなると飾りとしてはおしまい。毬を外して食べることになる。毬栗のまだ青いのが、可愛い。まだ暑い中なのに、毬栗が青々と育っているのを見ると、もうすぐ涼しくなる、もうすぐ栗が食べれるとうれしくなる。愛媛の山村の内子町は蝋の生産で財をなした町で、いまでも古い町並みが残っている。ここは、栗の産地。栗の季節、車を運転してこの辺りを通ると、道にあふれるほど収穫した栗が山積みされている。いったいどの位の栗が収穫されているのか。我が家ではよく栗の渋皮煮を作った。好評であったが、これは土井勝著の「今日の料理」の教えの通りに作っていた。土井勝先生の料理の本にはに随分恩恵を受け、感謝もしている。

★毬栗の青々としてまん丸し/高橋正子

 クリ(日本栗・学名Castanea crenata)とはブナ科クリ属の木の一種。日本と朝鮮半島南部原産。中華人民共和国東部と台湾でも栽培されている。クリのうち、各栽培品種の原種で山野に自生するものは、シバグリ(柴栗)またはヤマグリ(山栗)と呼ばれる、栽培品種はシバグリに比べて果実が大粒である。また、シバグリもごく一部では栽培される。落葉性高木で、高さ17m、幹の直径は80cm、あるいはそれ以上になる。樹皮は灰色で厚く、縦に深い裂け目を生じる。葉は長楕円形か長楕円状披針形、やや薄くてぱりぱりしている。表はつやがあり、裏はやや色が薄い。周囲には鋭く突き出した小さな鋸歯が並ぶ。雌雄異花で、いずれも5月から6月に開花する。雄花は穂状で斜めに立ち上がり、全体にクリーム色を帯びた白で、個々の花は小さいものの目を引く。一般に雌花は3個の子房を含み、受精した子房のみが肥大して果実となり、不受精のものはしいなとなる。9月から10月頃に実が成熟すると自然にいがのある殻斗が裂開して中から堅い果実(堅果であり種子ではない)が1 – 3個ずつ現れる。
 果実は単にクリ(栗)、またはクリノミ(栗の実)と呼ばれ、普通は他のブナ科植物の果実であるドングリとは区別される(但し、ブナ科植物の果実の総称はドングリであり、広義にはドングリに含まれるとも言える)。また、毬状の殻斗に包まれていることからこの状態が毬果と呼ばれることもあるが、中にあるクリノミ自体が種子ではなく果実であるため誤りである。毬果とは、松かさのようなマツ綱植物の果実を指す。
 日本のクリは縄文時代人の主食であり、青森県の三内丸山遺跡から出土したクリから、縄文時代にはすでに本種が栽培されていたことがわかっている。年間平均気温10 – 14℃、最低気温氷点下20℃をくだらない地方であれば、どこでも栽培が可能で、国内においてはほぼ全都道府県でみられ、生産量は、茨城、熊本、愛媛、岐阜、埼玉の順に多い。

◇生活する花たち「葛の花①・葛の花②・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

9月16日

●下地鉄
蜩や晩鐘暮れる独りたび★★★
高階に松籟聞いて叉寝かな★★★
秋風が窓の形で入りくる★★★★
「窓の形」に、秋風の透明感とさらさらとした心地よさが読み取れる。(高橋正子)

●河野啓一
 台風18号
列島をつつむがごとく秋台風★★★
渡月橋ひたひた洗う秋の水★★★
台風や人間界には構いなし★★★

●小口泰與
点滴のしずく見上ぐや秋の暮★★★★
点滴の終のしずくや秋の暮★★★
秋ばらを豆皿に乗せ病室へ★★★

佃 康水
鶏頭花幹紅に真っ赤かな★★★★
鶏頭は花だけでなく、茎幹もたくましく赤い色が通っている。そこに目を付けたのが新鮮で、鶏頭全体を生き生きと詠むことになった。(高橋正子)
  
凝らし見るほどに増えゆく秋茗荷★★★
山の湯を出でて吹かるる夕芒★★★

●桑本栄太郎
<台風18号近畿接近>
颱風の緊急警報夜もすがら★★★
雄叫びの風雨に目覚む野分荒れ★★★
水嵩を極め野分の渡月橋★★★

●多田有花
風雨激しく叩く秋の夜の窓★★★
嵐去りはや鳴き始む秋の蝉★★★
ごうごうと野分の名残森に吹く★★★

●高橋秀之
台風一過黒から白へ雲の色★★★
白米とわさび醤油でおくら食う★★★
鳥の群れ高く遠くへ秋の空★★★★
「高く遠くへ」に、秋空の本質が詠まれている。群れて飛んでゆく鳥が静の中の動として印象的だ。(高橋正子)

●小西 宏
秋の洒落けむり楽しき目黒かな★★★
台風の後の木漏れ日靴の音★★★
野分去り西空広き富士裾野★★★★

●黒谷光子
風少しあるらし白き萩たわわ★★★
走り根の隆々として秋の樟★★★
街中の小さき庭に糸瓜垂る★★★

※台風お見舞い申し上げます。
豊橋に上陸した台風18号は進路とは違う大阪京都などにも大きな被害をもたらしておりますが、会員のみな様には被害がなくて安心いたしました。東海地方の皆様がた大丈夫でしたでしょうか。

9月15日(日)

★花オクラ空の次第に澄みてきし  正子
オクラの花がお天気も変えたようで、今までの曇った空もこの花のように澄みて明るく広がってきました。(祝恵子)

○今日の俳句
箱の荷の泥付き芋は地方紙に/祝恵子
届いた箱の荷を開けると、地方紙にくるまれた畑から掘り起こしたばかりの泥つきの芋が入っている。地方の便りも、合わせて届き、懐かしい思いだ。(高橋正子)

○玉珊瑚(たまさんご)

[玉珊瑚/東京白金台・国立自然教育園]

 ★玉珊瑚の実がつやつやと森の陽に/高橋信之

 玉珊瑚(たまさんご、英名:Jerusalem cherry)は、ナス科ナス属の常緑小低木で、学名は Solanum pseudo-capsicum。Solanum : ナス属、pseudo-capsicum : トウガラシに似た。Solanum(ソラナム)は、ラテン古名の「solamen(安静)」が語源。この属の植物に 鎮痛作用を持つものがあることから。
 玉珊瑚は、夏に白い小花を咲かせ、花後に成る小さな赤い球形の果実が ホオズキ(鬼灯) または、ミニトマト(Mini Tomato)” に似た果実を鑑賞する。高さは30~50センチほどになる。葉は披針形から長楕円形で、光沢があり互生する。夏に開花し結実することが多いので、別名の「冬珊瑚」は、違和感があるが、主に寒くなると色づきが良くなることや、冬でも成ることからネーミングされた。
 ブラジルが原産。わが国へは明治時代に渡来している。「リュウノタマ(竜の玉)」とも呼ばれる。

◇生活する花たち「犬蓼・吾亦紅・チカラシバ」(横浜下田町・松の川緑道)

9月15日

●小口泰與
秋ばらをほめそやされし朝かな★★★
吹きてきし湖風硬し秋桜★★★★
「湖風硬し」に、早も季節がこんなにも進んだかと、季節の移り変わりに灌漑深いものがある。(高橋正子)

寄りて来て指舐むチワワ夜長かな★★★

●小西 宏
振り返る金柑の黄の細い道★★★★
松虫の闇に繋がるガラス窓★★★
枝豆を固く茹でいて口唇す★★★

●桑本栄太郎
<夕暮れの散策より>
七段の堰落つ水や秋の川★★★
椋鳥の一斉飛翔の対岸へ★★★★
山里に灯が点き釣瓶落しかな★★★

●川名ますみ
橋を見る悲しいくらい澄む秋に★★★
両の手に茄子丸々と包まるる★★★
丸茄子の小さき畑よりてのひらに★★★★

●多田有花
台風の近づく沖の霞みおり★★★
台風接近少し遅めに起きる朝★★★
台風裡ハンドル握り帰宅する★★★

9月14日

●小口泰與
卓袱台を知らぬ子供ら良夜かな★★★
芙蓉咲く赤城榛名も靄の中★★★
田を囃す雀の羽音初穂かな★★★

●古田敬二
 京都太秦2句
泣き笑い澄まして並ぶ案山子かな★★★
稔田の向こうの遠山雲の影★★★

 書道展
秋の字が黒々生まれる太い筆★★★★
墨痕の鮮やかさが一番引き立つのは季節でいえば、秋ではなかろうか。太筆で黒々と書かれた字が力を得ている。(高橋正子)

●迫田和代
雨止んで庭の桔梗の花開く★★★

花野まで朝の散歩の行き帰り★★★★
花野には、様々な秋草の花が咲いている。すがすがしい朝の散歩を楽しくさせてくれる花野である。花野はやさしい。(高橋正子)

新月の優しい光に言葉なし★★★

●桑本栄太郎
どこまでも散策つつき萩の風★★★
木蔭より青空仰ぎ百日紅★★★
散策の釣瓶落しの家路かな★★★

●小西 宏
法師蝉知らず野分の近きこと★★★
秋暮れるメタセコイアの木々朱なり★★★
清らかな海であれかし秋刀魚焼く★★★★
焼こうとすれば、生き生きと輝きが美しい秋刀魚。清らかな海で育ったのであろう。海を映している。いつまでも海が清らかであれと祈る。(高橋正子)

●黒谷光子
川端に木の椅子二脚柳散る★★★
水澄むや能楽堂へ石の橋★★★
門跡へ石段上がり萩の花★★★

●高橋秀之
鳴き声はわずか一匹法師蝉★★★
虫の声堤防道をどこまでも★★★
延々と露店と子の列秋祭り★★★

9月14日(土)

★青林檎ときに稲妻差しきたる  正子
青林檎はまだ未熟な状態で収穫されるので青(緑)色をしていますが、「青林檎味」として多くの人に親しまれています。厨か何処かの窓辺に置かれた青林檎へ時折稲妻が差して来る。雷鳴の音ではなく、閃く光が青林檎を静かに照らすので神秘的なものを感じると同時に豊穣の秋をも期待させる御句です。(佃 康水)

○今日の俳句
韮の花浸す野川の音澄むへ/佃 康水
韮の花は新涼の季節に先駆けて咲く。摘んだ韮の花は野川に浸すと涼やかな花となる。「清ら」は主情が強いが、「澄む」は写生であっても作者の深い内面が出る。(高橋正子)

○唐辛子

[唐辛子/横浜日吉本町]

★唐辛子男児(おのこご)の傷結ひて放つ 草田男
男の児は、手足に傷などよく負うものだ。 膝でも擦りむいたのだろうか、包帯をして、また遊びに行かせた。唐辛子が熟れるころは、「天高し」ころ。気候もよく、男児はことに日暮れ際までよく遊ぶ。ぴりっとした唐辛子の可愛さは、また男児の元気な可愛さに通じる。(高橋正子)

★青くても有べき物を唐辛子 芭蕉
★鬼灯を妻にもちてや唐がらし 也有
★うつくしや野分のあとのとうがらし 蕪村
★寒いぞよ軒の蜩唐がらし 一茶
★雨風にますます赤し唐辛子 子規
★赤き物少しは参れ蕃椒 漱石
★一莚唐辛子干す戸口かな 碧梧桐
★辛辣の質にて好む唐辛子 虚子
★誰も来ないとうがらし赤うなる 山頭火
★唐がらし熟れにぞ熟れし畠かな 蛇笏
★秋晴れやむらさきしたる唐辛子 夜半
★戸袋の筋にかけあり唐辛 石鼎
★庭園に不向きな赤い唐辛子 鷹女
★唐辛子干して道塞く飛鳥びと 秋櫻子
★秋の日の弱りし壁に唐辛子 みどり女
★炎ゆる間がいのち女と唐辛子 鷹女
★てのひらに時は過ぎゆく唐辛子 不死男
★唐辛子わすれてゐたるひとつかな 楸邨

熟れた唐辛子は可愛い。店で唐辛子の実を束ねて売っているので、それを買い、しばらく台所に飾って楽しんでそれから使う。信之先生は、うどんには、七味唐辛子でなく、この赤い唐辛子を細く輪切りにしたのを入れるのが習慣だ。きんぴらには、辛いというくらい入れたい。すでに輪切りにした唐辛子を売っているが、それではなく、丸のままのを買って、鋏で丹念に切る。
農家には、どこの家の畑の隅に唐辛子を植えていた。熟れると茎ごと抜いて束ね。家の軒下など日陰に吊るして乾燥させた。沢山採れる家は、筵に広げて乾燥させたのだろうが、これは、見たことがない。父も、うどんにはこの唐辛子をたっぷりと入れて食べていた。七味ではない。
唐辛子のなかでも辛くない唐辛子がある。ピーマンも、ししとうも唐辛子の仲間である。父がまだ中年のころ、辛くない唐辛子といって、近所でははじめてピーマンを植えた。子どもにも食べれた。刻んで、油炒めで醤油の味付けだったと思う。唐辛子が食べれたと子どもながら自慢であった。そのせいか、いまでもシシトウや甘唐辛子が沢山手に入ると、油炒めで醤油、鰹節で佃煮のようにして食べる。これが、我が家では、娘にも人気でご飯がすすむ。

唐辛子のことで思い出したが、長野の小諸で花冠(水煙)大会をしたとき、伊那の河野斎さんが来られ、善光寺の名物の七味唐辛子をいただいた。そのとき、善光寺名物が七味唐辛子であることを知ったが、いい香りの七味唐辛子であった。河野さんは、伊那で歯科医院を営んでおられたが、偶然にも、三男のお嫁さんが、私の郷里の福山のご出身と聞いた。縁は異なもの不思議なもの、です。河野さんは急逝されたが、ご家族に林檎の木を残されて、その年の林檎の収穫のおすそわけをいただいた。お孫さんたちが俳句を作って花冠(水煙)に投句されていたので、お孫さんと、そのお母さんのお気持ちだと知った。唐辛子からひょんなところに話がずれたが、思い出したので、書き留めておいた。

★唐辛子真っ赤に熟れしをキッチンに/高橋正子
★唐辛子もう日暮だと子を呼びに/〃

 唐辛子(とうがらし、唐芥子、蕃椒)は、中南米を原産とする、ナス科トウガラシ属 (Capsicum) の果実から得られる辛味のある香辛料。栽培種だけでなく、野生種から作られることもある。トウガラシ属の代表的な種であるトウガラシにはさまざまな品種があり、ピーマン、シシトウガラシ(シシトウ)、パプリカなど辛味がないかほとんどない甘味種(甘唐辛子・あまとうがらし)も含まれる。トウガラシ属は中南米が原産地であり、メキシコでの歴史は紀元前6000年に遡るほど非常に古い。しかし、世界各国へ広がるのは15世紀になってからである。
 唐辛子が日本へ伝わったのは、16世紀後半のことで、南蛮船が運んで来たと言う説から南蛮胡椒、略して南蛮または胡椒とも言う。コロンブスは、唐辛子を胡椒と勘違いしたままだったので、これが後々まで、世界中で唐辛子(red pepper)と胡椒(pepper)の名称を混乱させる要因となった。現在世界中の国で多く使われているが、アメリカ大陸以外においては歴史的に新しい物である。クリストファー・コロンブスが1493年にスペインへ最初の唐辛子を持ち帰ったが忘れられ、ブラジルで再発見をしたポルトガル人によって伝播され、各地の食文化に大きな影響を与えた。ヨーロッパでは、純輸入品の胡椒に代わる自給可能な香辛料として南欧を中心に広まった。16世紀にはインドにも伝来し、様々な料理に香辛料として用いられるようになった。バルカン半島周辺やハンガリーには、オスマン帝国を経由して16世紀に伝播した。
 日本で栽培されているのは主にトウガラシだが、沖縄や伊豆諸島ではキダチトウガラシの品種の島唐辛子が栽培されている。トウガラシ属が自生している南米では、ウルピカなどの野生種も香辛料として使われる。「唐辛子」の漢字は、「唐から伝わった辛子」の意味であるが、歴史的に、この「唐」は漠然と「外国」を指す語とされる。英語では「チリ(chili)」または「チリ・ペッパー (chili pepper)」と言う。胡椒とは関係が無いにも関わらず「ペッパー」と呼ばれている理由は、ヨーロッパに唐辛子を伝来させたクリストファー・コロンブスがインドと勘違いしてアメリカ大陸に到達した際、唐辛子をインドで栽培されている胡椒の一種と見なしたためである。それ以来、トウガラシ属の実は全て「ペッパー」と呼ばれるようになった。沖縄県では島唐辛子や、それを用いた調味料をコーレーグス(コーレーグース)と呼ぶが、これは高麗胡椒の沖縄方言読みとも、「高麗薬(コーレーグスイ)」が訛ったものだともされる。唐辛子の総称として鷹の爪を使う者もいるが、「鷹の爪」はトウガラシ種の1品種である。

◇生活する花たち「女郎花・葛の花・萩」(四季の森公園)

9月13日

●下地鉄
敬老の日赤き寿の字の仏間かな★★★
敬老の日曾孫の声の早々と★★★
薄雲のしずかに過ぎる敬老の日★★★★

●祝恵子
友といて萩に触れては萩を愛で★★★
子規の碑を覆いつくして萩は白★★★★
折しも白萩が真っ盛りのころ子規忌がある。子規の碑を覆い尽くす白萩がこの上なくやさしい。(高橋正子)

菩提樹の木蔭で寛ぐ秋歩き★★★

●小口泰與
稲穂垂れ雫こぼせし朝かな★★★
飛び起ちて羽音ひろげし稲雀★★★
長竿の男の背中下り鮎★★★

●桑本栄太郎
青桐の房のつらなり秋暑し★★★
葛の花をもとめ散策延びにけり★★★
下草の刈られ風呼ぶ萩の花★★★

●多田有花
読みかけの新書に栞秋暑し★★★
少しずつ少なくなりぬ秋の蝉★★★
山へゆく道の辺に咲き彼岸花★★★

●黒谷光子
虫しぐれ中の一つは間近きに★★★★
虫しぐれの中に一つの虫音がはっきり聞こえる。間近に鳴く虫と語り合うようである。(高橋正子)

ついそこに声震わせて夜の虫★★★
虫の音のひときわ高き夜の土間★★★

●小西 宏
数珠玉の丘駆け上るランドセル★★★★
爽やかな季節になると、数珠玉が青い実をつける。ランドセルを背負った子どもが元気で爽やかだ。(高橋正子)

池草の傾ぎに触れて塩蜻蛉★★★
荻の穂の向き一つなり夕迫る★★★

●古田敬二
こおろぎがこおろぎ飛び超え草に消え★★★
秋灯の枕辺に積む俳句本★★★
薄暗き秋の光の弥勒菩薩★★★

9月12日

●小口泰與
今朝はまた物のみごとに芙蓉咲く★★★
上州は鶴舞うかたち渡り鳥★★★
天高し生業ながき菓子問屋★★★★

●桑本栄太郎 
気がつけば秋蝉鳴かぬ朝かな★★★
秋気満つ登校児童の列の声★★★
学校の始業チャイムや秋澄めり★★★★
学校のチャイムは、近隣によく響く。今朝はとくに音色が澄んで聞こえた。生活の中に澄んだ音色が聞こえるのはいいものだ。(高橋正子)

●小西 宏
猫じゃらし色づき風の野に遊ぶ★★★★
猫じゃらしも稲の穂と同じように色づき、秋風に揺れるようになった。「野に遊ぶ」がたのしげだ。(高橋正子)

俳句して少年となるいわし雲★★★
アパートの錆びた階段虫涼し★★★

●黒谷光子
露草のの際立つ朝の土手★★★
水澄むや村の真中を流る川★★★★
村の真ん中を流れる川。一村の生活が川によって支えられている。その水も澄み、村に秋が深まってきた。(高橋正子)

どの家にも洗い場のあり秋の川★★★