大阪城天守より望む
★冬がすみ生駒の山の青透かし 正子
○今日の俳句
散紅葉少女ばかりが追うており/川名ますみ
紅葉が散るのを少女ばかりが喜んで追っている。子どもは散る紅葉をも遊びにしてしまう。散る紅葉に少女たちが混じった風景はよいものだ。(高橋正子)
○初嵐(椿)

[初嵐/横浜日吉本町]
★慎ましき白き椿の初あらし/高橋信之
★庭の樹の間に咲けり初あらし/高橋正子
今日は比較的穏やかで過ごしやすい一日で、庭仕事で少し動くと汗ばむような日和でした。庭仕事をしていると、白い物が目に止まりましたので、見てみると初嵐がこちらを向いて咲いておりました。色々調べてみますと、「初嵐」は、すでに1847年の「剪花翁伝」には記載されているという古い品種だそうで、白い色で、一重で筒咲き、もしくはラッパ咲きで蕾は尖っております。中輪で10月から3月にかけてが開花期といわれておりますが、我家の初嵐は、毎年炉開きの頃咲き始めます。ところが、今年は太神楽を使ったので忘れておりました。「初嵐」という風雅な名にふさわしく、清楚で優しい雰囲気の花です。(ブログ「tyakoの茶の湯往来」より)
俳句日記/高橋正子 1999年12月17日(金)
雨が降りそうな気配。砥部のわが家をのぞく。ほぼ一年ぶりだが、思ったより雑草が生えてなく、それでも冬らしい庭になっている。ひいらぎは、花が終っていても、かすかな香り。山茶花は、今が盛りだけれど、花数は少なく、椿は、はつあらし。玄関の椿がいつもより早く、白い蕾をふくらませている。早春の黄色い花、さんしゅは、固い蕾を枝先につけている。万両もほうぼうに生えて、赤い実を光らせて、都わすれもだいじょうぶ。客間の机は、さすが、一年のほこりをかぶり、忘却のかなたから、やって来たように鎮座している。はなれに括って置いた本も、傾いてすでに、記憶の残照のようである。こういう光景は、仮の世にまちがいない。
◇生活する花たち「柊・茶の花・錦木紅葉」(横浜日吉本町)
●小口泰與
隼や風の鍛えし里の子等★★★★
子供は風の子ではあるが、赤城颪で有名な上州の子は「風の鍛えし」という表現が当てはまる。隼はその風を受けて飛ぶのだ。(高橋正子)
夕暮れの風にさわだつ落葉かな★★★
電飾や冬夕焼のあかあかと★★★
●祝恵子
城壁の巨石に影を冬紅葉★★★★
「巨石」が効いた。紅葉の枝が城壁の石垣に垂れて影を映しているのだろう。冬紅葉の影が割れることなく趣き深く垂れている。(高橋正子)
鳥居抜け紅葉と幟の七五三★★★
冬ざくら橋より見送る遊覧船★★★
●桑本栄太郎
着水の飛沫耀よう冬の池★★★
朝日背にルアー投げ入れ冬の池★★★
佇めば蘆を抜けゆく冬の風★★★★
佇んで初めてわかること。枯蘆の中を風が抜けている。「冬の風」は、また蘆の冬の姿を想像させてくれる。(高橋正子)
●多田有花
登る足朴の落葉の上に置く★★★
ふかふかと落葉に埋もれ下りけり★★★★
山の路はすっかり落葉に埋もれてしまった。山路を下れば落葉がふかふかとして足を埋めるほどだ。山路もすっかり冬になった。(高橋正子)
冬の昼山下りし身を泡風呂に★★★
●小西 宏
森奥のひと光なり花八手★★★
【原句】午後の日の影長き野に木の葉踏む
【添削】午後の日に木の影長し落葉踏み★★★★
木の影が長々と落葉に映っているところを踏んでゆく午後の静かな明るさがよい。
木の葉旧る小楢の道に癒される★★★
●小口泰與
熱燗や大河を越ゆる風の音★★★★
大河は作者の住いから言えば、利根川であろう。川風の音は颪とはまた違った趣だが、寒々と川を渡り吹く風の音に酒も熱燗が嬉しい。(高橋正子
)
十州の境や山の眠りおり★★★
隼の風袈裟切りに飛びにけり★★★
●河野啓一
冬の川碧く光りて西の方★★★★
西の方に光る碧い静けさに惹かれる。眺めれば、冬の川が水も碧く光って横たわっているのが、西の方なのである。(高橋正子)
年相応不如意続きて師走かな★★★
鳥影の舞うかと見れば柿の葉散る★★★
●桑本栄太郎
紅と黄とみどりの交じる落葉踏む★★★★
落葉といえども、時期が来て同じように散るのではない。紅色や黄色になったもの、中には散るには早い緑の葉もある。色とりどりの紅葉の季節を踏む日常がある。(高橋正子)
ちりちりと満天星つつじの冬紅葉★★★
山襞の夕日に赤し冬の嶺★★★
●多田有花
冬晴れの播丹国境を歩く★★★
冬麗のなかに立ちおり千ヶ峰★★★
小春の山下りゆっくりとぬるめの湯★★★
●黒谷光子
頂上は初冠雪らし伊吹山★★★
洗い終え積めば輝く蕪の白★★★★
抜いてきた蕪を洗い、洗った分を積み上げ、ついに洗い終えると、輝くばかりの真っ白い蕪の山となった。これから漬物などに仕込まれるのだろうが、その見事なみずみずしさに、うれしさも湧く。(高橋正子)
蕪引きて煮物に汁にあちゃら漬け★★★
●小西 宏
セーターを脱いで湯気立つ遊びの子★★★★
遊んでいる子が暑くなってセーターを脱ぐと、体から湯気が立っている。子供の活動量はすざましい。(高橋正子)
枯れ芝をはたき夕日に腰上げる★★★
里山に残る夕日や冬もみじ★★★
●佃 康水
栴檀の実へ青空の近くなり★★★★
栴檀の実は熟れると金色になり、地上よりむしろ青空のものとなる。青空が近くなるのだ。(高橋正子)
藪深くかさり音たて笹子鳴く★★★
浅瀬に餌掘り出す鴨へ砂煙★★★
★鈍行のことこと芽麦を渡りいる 正子
鈍行列車が芽吹きだした麦畑を走りだした。ことことと。麦畑を見たことがない現在、絵を見ているような、幼かった田舎の風景が蘇ります。 (祝恵子)
○今日の俳句
わさわさと大きな蕪の一輪車/祝恵子
一輪車をはみ出して「わさわさと」運ばれる蕪の葉がまことに生き生きしている。(高橋正子)
○冬珊瑚(玉珊瑚)
[冬珊瑚/東京白金台・自然教育園]
★冬珊瑚東海に日は燃えいでぬ/豊長みのる
★冬さんご熟し四十路の悔ばかり/竹内定子
★掌にすくふ水のつめたさたまさんご/久松かつ子
★階段を上るも愉し冬珊瑚/819maker
★御稲荷さん入口の冬珊瑚かな/819maker
茄子(なす)科。学名:Solanum pseudo-capsicum。ブラジル原産。明治中期に渡来。夏から冬にかけて鮮やかな色の丸い実をいっぱいつけるので、その姿を珊瑚に見立て、時期と合わせて「冬珊瑚」という名前になったとのこと。
実の色の遷移がおもしろく、花を咲かせたあとで緑色の実になり、それが「緑 → 黄 → 橙」の順で色づく。いろんな段階の色の実が同居して緑色の実、黄色の実、橙色の実がほぼ同時に楽しめる。実はきれいだが毒があるらしく、食用にはならない。寒さに強い。
別名「ビッグボーイ」「クリスマスチェリー」「玉珊瑚(たまさんご)」。いずれも、実の形からの命名のようだ。12月10日(世界人権デー・三億円事件の日・ノーベル賞授賞式・アロエヨーグルトの日)の誕生花
◇生活する花たち「山茶花・柊・桜黄葉」(横浜日吉本町)

★鴨の池映れるものはみな映り 正子
寒い国から飛来した鴨たちで池が賑わっています。映れるものはみな映っていますので、池を囲む木々や草や花、空、或いはビルなど高い建物も映って居るかも知れません。晴れ渡った青空に池の水面も澄み、伸び伸びと泳ぐ鴨池の情景が見えて参ります。(佃 康水)
○今日の俳句
萩は実になりて山路の豊かさよ/佃 康水
山路を花で飾った萩は、いまはすっかり実になっている。萩の花ではなく、実に着目し、それを「豊かさ」と見たのは、それこそ落ち着いた心の豊かさである。(高橋正子)
○パンパスグラス

[パンパスグラス/東京大学・小石川植物園]
★広々と白銀葭(しろがねよし)の空ありぬ/819maker
★パンパスグラスを描く少女の影伸びぬ/819maker
○シロガネヨシ(パンパスグラス)
シロガネヨシ(学名: Cortaderia selloana)は、イネ科シロガネヨシ属の多年生植物。英名からパンパスグラスとも呼ばれる。高さ2-3m程度と大きく成長し、細長い葉が根元から密生して伸びる。葉は縁が鋭い。8-10月にかけて、垂直に立ち上がった茎に長さ50-70cmの羽毛のような花穂をつける。雄株と雌株があり、雄株の花穂は細長いのに対し、雌株は幅広く綿毛を持つ。色はややピンクがかった白銀色である。種類によっては矮性のものや、穂の色が紫色のものもある。
原産地はブラジル、アルゼンチン、チリなどの南米大陸の草原(パンパス)。各国で観賞用に栽培され、日本には明治時代に入ってきた。大きく成長し、花穂をつけた姿は見栄えがするので、公園・花壇の植栽や道路分離帯の緑化などに用いられる。また、花穂は活花やドライフラワーに使われる。栽培には日当たりのよい場所を選ぶ。葉はススキと同様に皮膚を切りやすく、手入れや伐採時には手足を保護できる服装が望ましい。育成には手間がかからないが、寒さにはやや弱く、葉が茶色になる。ただし、関東地方までなら全体が枯れることはまずなく、翌春に新しい葉が出てくる。主に株分けで増やす。これは、穂の形状に個体差が出やすいので、同じ株から増やしたほうが群生したときに揃うためでもある。
◇生活する花たち「椿・野葡萄・くこ」(横浜市都筑区東山田)


●迫田和代
空からの風も避けるか薔薇園を★★★
今だから色も冴えてる冬紅葉★★★
足湯して輝く空には星月夜★★★★
夜気の寒さを忘れるほどの足湯のぬくもり。いつまでも見上げて居たい、星月夜である。(高橋正子)
●小口泰與
冬の日の山に落ちけり川に落つ★★★★
漠然とはや夕暮れや懐手★★★
息白し雨にカーテン替えており★★★
●祝恵子
渡り越し冬の海橋仰ぎ見る★★★
フグ刺の薄さと美味さを小倉にて★★★
炬燵には兄妹と居る嬉しさよ★★★★
炬燵を囲み、暖かさにくつろいで兄妹といるうれしさ。いつまでも兄の下の妹でいる幸せがある。(高橋正子)
●井上治代
四国八十八カ所86番札所志度寺
九輪塔高くそびえて冬の鵙★★★★
志度寺は香川県にある札所。五重塔の九輪がそびえ、冬の空に鵙がけたたましく鳴く。鵙の小さな命の声が広い境内を圧するようだ。(高橋正子)
紅葉黄葉いけばな展に色あふれ★★★
風の中蜜を求めて冬の蝶★★★
●桑本栄太郎
風吹けば銀杏落葉の道を往く★★★
釣り人の独りの黙や枯尾花★★★
節々の骨のきしみや嵐雪忌★★★
●多田有花
木枯しを踏む心地する山路かな★★★
凩や海金色に輝きぬ★★★★
鵯(ひよ)の声明るく響く霜の朝★★★
●高橋秀之
残る葉はわずかばかりの冬木立★★★
冬木立の上には広く青き空★★★
どこまでも途切れぬ落葉並木道★★★★
●小西 宏
樹をめぐり銀杏落葉の明るい円(まる)★★★★
地に落ちて子ら伸び伸びと銀杏黄葉★★★
風明るし木の葉踊れる大通り★★★
●河野啓一
橙の早やも切られし今朝の庭★★★
焼き芋の香り漂う厨口★★★
白波の海に太刀魚釣り来る★★★★
★芹育て橋を潜れる速き水 正子
○今日の俳句
作品を提げ行く冬の車椅子/河野啓一
「作品」がいい。一つの作品となった画か、書。それを自分で車椅子の膝に載せて、搬入しようとしている。作品は自分自身ともいえる。作品はそうでありたい。(高橋正子)
○野茨の実

[野茨の実/東京白金台・自然教育園] [野茨の花/東京白金台・自然教育園]
★野茨の実赤きまま零れ散る/草花俳句(オレンジスタジオ)
★野いばらの実の熟れすぎて冬曇/写真俳句ブログ
★野茨の実や まんまるな 冬の雨/福田 泉
★野茨ややわらかき陽に色ずく実/小野久子
★鳥飛ぶ空の高さへ赤い実の茨/高橋信之
★野茨の実の赤々と池ほとり/高橋正子
ノイバラ(野茨、学名:Rosa multiflora)は、バラ科の落葉性のつる性低木。日本のノバラの代表的な種。沖縄以外の日本各地の山野に多く自生する。ノバラ(野薔薇)ともいう。高さは2mぐらいになる。葉は奇数羽状複葉で、小葉数は7-9、長さは10cmほど。小葉は楕円形、細かい鋸歯があり、表面に艶がない。花期は5~6月。枝の端に白色または淡紅色の花を散房状につける。個々の花は白く丸い花びらが5弁あり、径2cm程度。雄しべは黄色、香りがある。秋に果実が赤く熟す。同属でやはり身近に出現するもの-にテリハノイバラ (Rosa luciae) があり、こちらは葉の表面にクチクラ層が発達しているため、艶がある。また花は一回り大きく、数が少ない。道端にも多く出現し、棘が多いので雑草としてはいやがられる。刈り入れられても根本から萌芽し、根絶は難しい。北海道から九州までと、朝鮮半島に分布する。野原や草原、道端などに生え、森林に出ることはあまり見ない。河川敷など、攪乱の多い場所によく生え、刈り込まれてもよく萌芽する、雑草的な性格が強い。
果実は営実(エイジツ)と称し瀉下薬、利尿薬になり、日本薬局方にも記載されている。また、バラの園芸品種に房咲き性をもたらした原種であり、日本では接ぎ木の台木に使用される。そのため、しばしば栽培中に根本からノイバラが萌芽し、繁茂してしまうことがある。エイジツエキスは、おでき、にきび、腫れ物に効果があるといわれていて、化粧品成分に利用されています。皮膚の保護作用、収れん作用、抗酸化性、美白性、保湿性、皮膚細胞の活性効果を持ちます。
古くはうまらと呼ばれ万葉集にも歌われている。
道の辺の うまらの末(うれ)に 這(は)ほ豆の からまる君を はなれか行かむ 丈部鳥(はせつかべのとり)巻二十 4352
◇生活する花たち「鶏頭・皇帝ダリア・鈴懸黄葉」(横浜市港北区高田町・早淵川土手)

●高橋秀之
冬の蝶風が吹くまま流れゆく★★★
紅葉散る大川沿いの並木道★★★★
「大川沿い」であるのがよい。爛漫の桜を咲かせた大川沿いも、紅葉を散らす季節となった。紅葉の散る大川沿いの桜並木もまた風情がある。
(高橋正子)
冬の朝遠くの生駒が近く見え★★★
●小口泰與
枯れ切って夕日透け行く薄かな★★★★
枯れ切ってこそ薄は白く透明感が増す。夕日に透けて枯れの美しさを見せている。(高橋正子)
虎落笛静かにさせよ赤城山★★★
声冴ゆる赤城の襞の迫りおり★★★
●河野啓一
日の中にひときわ明るし桐枯葉★★★★
桐の枯葉が、日差しの中にひときわ明るい。その明るさが季節の寂しさを救っている。(高橋正子)
山道を冬のドライブ県境★★★
冬彗星陽に近付きて砕けけり★★★
●桑本栄太郎
<京都四条大橋南座界隈>
四条大橋渡りまねきや京時雨★★★
顔見世のまねき高々あがりけり★★★★
南座の顔見世は、これから一年間興行をする役者の顔を紹介する興行。歌舞伎の新年のようなもの。そのまねきが高々とあがり、見るものの心を逸らせている。(高橋正子)
鴨川のしぶきか顔に時雨降る★★★
●川名ますみ
冬紅葉樹下の二人が三人に★★★★
立冬後の紅葉は、時雨などに傷められ、色もあわれ深さが見える。そうとは知らずか、樹下に二人が話しているのだろう。もう一人加わり話が弾むようだ。(高橋正子)
初菊の花瓶の側にパスタ皿★★★
パスタ巻く菊の花瓶と隣り合い★★★
★芽麦まで遠き夕陽の差しいたり 正子
青々と並ぶ芽麦の畑に注がれる柔らかな夕日の光、まるで印象派の絵画を見るような心豊かな情景です。冬枯れの中、健気に伸びる芽麦の、命の息吹へ寄せるあたたかな心情が感じられます。(藤田洋子)
○今日の俳句
短日の街を灯して書店混む/藤田洋子
短日の街の様子が書店を通してよく見える。短日の人で混む書店に充実感が見える。(高橋正子)
○四季の森吟行
昨日、四季の森へ行った。今回は中山中学校入口のバス停で降り、さくらの園から廻った。桜の園の入口近くに冬桜と十月桜が咲いていた。背景には櫟や楢が黄葉しているので、黄葉のなかに桜を見ることになった。思えば、不思議である。十月桜も冬桜の一種であるが、花の風情から言えば、十月桜が勝る。十月桜は蕾のとき紅色が差している。
さくらの園を出て、ワークセンターのある入口から公園に入る。入口に黒鉄もちの実が赤く熟れている。蓮池は蓮の植えてあるところのコンクリートの囲いの中の水が古色漂ううすい灰色。田んぼは、ひつじ田となり、収穫祭が行われた祭壇が田んぼの中にそのまま残っている。幣のついた笹を立て人参や大根などを供えている。池には鴨が羽繕いをしていた。そこより山路を登る。遊具広場に出たが、皇帝ダリアが数本花を咲かせている。これも黄葉を背景に写真を撮る。今年ほど皇帝ダリアを見た年はない。山路の花は白嫁菜くらいで山はすっかり紅葉している。楓の類はもちろん、万作、桜、櫟、楢、泰山木、辛夷、木五倍子、あきにれ、蔓のものなど。実のものも多い。落葉は朴、泰山木など大木の葉も降り重なっている。
芦原は少しを残して刈り取られている。芦原の水は鉄分を含むらしく、水表面が青光りしている。はす池から芦原周辺では、紫式部、かまずみ、まゆみが実を零しはじめている。いつもは「はす池」のほとりに翡翠を撮る人たちがカメラを構えて十数人はいるが、今日はだれもいない。公園を散策する人も目立たない。芦原の手前までは鴨がしきりに餌をぴしゃぴしゃと食べている。なにか虫の出も食べているのか。初めてみる光景だ。北口(中山駅からの入口)左手には、さんしゅゆの実が見事鈴なりに真っ赤に熟れている。橋があって水の少ない川があるが、ほとりに三椏と蝋梅がある。蝋梅は黄色い蕾を数個見つけた。三椏は花芽が開いた状態で緑の苞がかわいらしい。
公園を出てより、プロムナードでひいらぎの花に出会った。立ち止まれば香しい匂いが届いてきた。ひいらぎの花を撮りおさめに家路についた。土産に泰山木の落葉を一枚持ち帰った。我が家の玄関には朴の落葉と泰山木の落葉2枚になった。
あらぬ方から朴の落葉の降っていし/正子
黄葉して万作その葉を照らしあう/正子
がまずみもまゆみもすでに実を零し/正子
葦刈られ水鉄漿を浮かべたる/正子
冬山路辿れ燦燦日が降りぬ/正子
木の実落つ山路を空の日が温め/正子
○枳殻(からたち)の実

[枳殻の実/東京大学・小石川植物園]
★父母存(ま)せば枳殻の実の数知れず/石田波郷
★この眼いつまでからたちの花月夜/藤田湘子
★嘘ひとつからたちの実は上向きに/中原幸子
★枳殻の実やア・カペラの聞えきて/819maker
★ひたすらに駅より歩き枳殻(きこく)の実/819maker
カラタチはミカンの仲間で、原産地の中国長江上流域から8世紀ごろには日本に伝わっていたと言われています。病気に強い、早く実がなる、樹の高さが低い、接ぎ木品種の味が良いなどの利点からミカンの台木として使われています。果実は生では食べられませんが、果実酒の材料として使われています。未成熟の果実を乾燥させたものは枳実(きじつ)と呼ばれる生薬となっています。健胃、利尿、去痰作用があるとされています。(農研機構果樹研究所)ホームページ)
カラタチ(枳殻、枸橘)はミカン科カラタチ属の落葉低木。学名はPoncirus trifoliata。原産地は長江上流域。日本には8世紀ごろには伝わっていたといわれる。カラタチの名は唐橘(からたちばな)が詰まったもの。樹高は2-4メートルほど。枝に稜角があり、3センチにもなる鋭い刺が互生する。この刺は葉の変形したもの、あるいは枝の変形したものという説がある。葉は互生で、3小葉の複葉。小葉は4-6センチほどの楕円形または倒卵形で周囲に細かい鋸状歯がある。葉柄には翼がある。学名のtrifoliataは三枚の葉の意でこの複葉から。葉はアゲハチョウの幼虫が好んで食べる。春に葉が出る前に3-4センチほどの5弁の白い花を咲かせる。花のあとには3-4センチの球形で緑色の実をつける。秋には熟して黄色くなる。果実には種が多く、また酸味と苦味が強いため食用にならない。花と果実には芳香がある。
◇生活する花たち「茶の花・花八つ手・木瓜」(横浜下田町・松の川緑道)

●小口泰與
夕照の逆光浴びし冬野かな★★★
竹林のかんかん鳴るや冬ごもり★★★★
「かんかん」という竹林の響きが、冬の空気をよく感じさせている。冬ごもりする身には聴力が鋭くなる。(高橋正子)
冬ばらの風の中なる朝日かな★★★
●迫田和代
木枯らしにころころ転がる枯れ落葉★★★
今日もまた庭を明るく緋連雀★★★
何処からかピアノ音色年の暮れ★★★
●多田有花
時雨忌や夜明けの窓に風の音★★★
人はみな時の旅人芭蕉の忌★★★★
芭蕉の奥の細道の「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。」を思い出させる句だが、芭蕉忌の頃は、一年も終わろうとする頃で、時の過ぎる速さを感じ、また来る時を思う。「人は時の旅人」は人間の側から時を捉えた。(高橋正子)
梅の枝剪定されて冬めく日★★★
●桑本栄太郎
綺羅星のごとく山茶花つぼみけり★★★
朝よりも木の葉散り敷く家路かな★★★
綿虫やおまえは寒くないのかい★★★