2月9日

●小口泰與
春雪や小犬まろびて鼻白き★★★
春雪の尺の嵩越ゆ小犬かな★★★
春雪に鳥影映す朝かな★★★

●下地鉄
日に透きて高みにそよぐミモザかな★★★★
夕日伸びゆたりゆたりと春の海★★★
波の穂の吹かれて飛沫く春嵐★★★

●河野啓一
冴え返る列島すっぽり雪景色★★★
早春の鳥越漏れ来る木々の枝★★★
早春の歓び朝のコーヒーに★★★

●多田有花
何かしら華やぐ心地春の大雪★★★
早春の雪野を鉄路は伸びゆけり★★★★
春淡し雪の甍の連なりて★★★

●桑本栄太郎
野と空の境目見えず春の雪★★★
ほつほつと頬に降りいて風花す★★★
<故郷の追憶より>
引き潮の寄せて遠のき磯菜摘む★★★★

●古田敬二
春の花舗赤橙黄緑青藍紫★★★
春の雪米寿を祝いに行くときに★★★
春の雪大洋へゆっくり長良川★★★

●小西 宏
音消えて人ひとり行く雪の朝★★★
雪を掻く青き光をもろ共に★★★★
雪橇に子ら雪だらけ春の土手★★★

●高橋秀之
春浅し小鳥の声で目が覚める★★★
真っ白な雲を纏いて春の富士★★★

薄氷踏みしめ歩く子らの列★★★★

●川名ますみ
陽も風も去りけり春の粉雪に★★★

仰臥してカーテン越しの雪明り★★★★
室内に届く雪明りは意外と明るいもの。雪明りが届けば、仰臥にも心が弾む。(高橋正子)

室内に届く雪明りは、意外に明るいもの。

帰りには二個に増えたる雪だるま★★★

2月9日(日)

★梅の香を息に吸い込みあるきけり   正子
梅咲く中、馥郁と清らかな香りを「息に吸い込み」つつ、可憐な花と香りに春を感じる作者を思います。その心身の快さと自然との一体感に、早春のみずみずしさ、季節の喜びが感じ取れます。(藤田洋子)

○今日の俳句
街筋の昼月ほっと梅開く/藤田洋子
街筋の空を見上げれば、白く透明感のある昼の月が浮かんでいる。昼月を遠く梅が開いて、昼月と梅との美しい出会いがある。(高橋正子)

○満作

[ニシキマンサク/東大・小石川植物園]   [アテツマンサク/東大・小石川植物園]

★まんさくに水激しくて村静か/飯田龍太
★満作咲く丘の麓の空晴れて/高橋信之
★満作のひらひら咲くや寒波来て/高橋正子
★森に咲く満作の枝横伸びに/高橋句美子

 ニシキマンサク(錦満作、学名:Hamamelis japonica var. obtusata forma flavo-purpurascens)は、マンサク科 マンサク属の落葉小高木。分布:北海道の西南部、本州の東北地方から鳥取県の日本海側、樹高:5~6m、花期:2~3月仲間:マンサク、シナマンサク、マルバマンサク、アカバナマンサク、アテツマンサク等、同科トキワマンサク属:ベニバナトキワマンサク。多雪地の山地に生える日本在来種マルバマンサクの変種で、日本海側の山地に自生する。前年枝の葉腋から花柄を伸ばし黄色い花を咲かせる。他のマンサクの仲間と同様に、葉の展開より先に開花する。冬芽の表面は、褐色の毛で覆われている。葉は単葉で互生し、葉身は菱形状円形または広卵形で基部は左右の形がちがう。長さ5~11cm。葉縁の先端側に粗い波状の鋸歯があり、基部側は全縁。果実は果で、毛が生えた直径1cmほどの卵状球形、熟すと2つに裂け、光沢のある黒い種子を2個はじき出す。黄色い花弁の基部が、煤けたような、黒ずんだ赤色を帯びる。花弁は4枚あり、長さ1~1.5cm。
 アテツマンサク(阿哲満作、学名:Hamamelis japonica var. glauca)は、マンサク科 マンサク属の落葉小高木。アテツマンサクは中国地方から四国・九州に分布する落葉の小高木。暖帯の中・上部からブナ帯にかけての急傾斜地に生育する。雪の消えた頃から咲き始め、場所によっては2月の中頃から落葉樹林の中で、黄色い花を咲かせて、春の訪れを知らせている。花はおもしろい形であり、4枚のリボン状の花弁がよれて広がっている。アテツは最初に発見された岡山県阿哲地方を意味しており、マンサクは最初に咲くので、「まず咲く」であるともいうが、どうであろうか。満作とか、万作などの漢字をあてると、豊作を期待させるイメージになる。基本種であるマンサクは関東以西から九州に広く分布し、若葉の星状毛は早期に脱落するが、アテツマンサクは褐色の毛が残る点で区別される。

◇生活する花たち「クリスマスローズ・木瓜の蕾・枝垂れ梅」(横浜日吉本町)

2月8日(土)

★梅の花遠きに咲きて白さ満つ   正子
遠くの梅の木が、花を咲かせました。その白さは、遠景の中、発光するような耀きを以ち立っています。浅き春、白梅に満ちた汚れなさ、逞しさに、離れていても力を分かたれる感触を抱くこと、深く共感いたします。向こうに望む白梅は、希望そのものです。(川名ますみ)

○今日の俳句
水仙の低きに咲くを見つけたり/川名ますみ
この句の生命は「低きに咲く」にある。低いところは、木の下か、道の下か、幾分の湿りもあるだろう。そういったところに咲く水仙には、日向の水仙よりも陰影を帯びた魅力がある。(高橋正子)

○三椏の花蕾

[三椏の花蕾/横浜・四季の森公園]

★三椏や英国大使館鉄扉/佐藤鬼房
★三椏の花三三が九三三が九/稲畑汀子
★三椏の花に暈見て衰ふ眼/宮津昭彦
★三椏の花じやんけんを繰り返す 大串章
★いかるがの草は低さに花蕾/伊藤敬子
★花蕾立春の音たてている/ぽちこ

★三椏の花の蕾のその勢い/高橋信之

▼ブログ「古い日記の続きの日記 by kokoro-usasan」
 きょうもいい天気。庭では、すっかり葉を落とした三椏の木に、白い花蕾がたくさんの小さなぼんぼりのように愛らしくついている。これは不思議だったよ。だって、この木は暮れのある日まで、大ぶりの葉っぱがたくさん茂っていて、芽生え始めた花蕾を覆い隠すようにしていたのだもの。毎年、そういう営みをしているはずなのに、わたしは、そのへんの流れを記憶していなくて、あれぇ、三椏って、常緑樹だったけかなぁ、おかしいなぁ、葉っぱ落ちるよねぇ、これじゃ、花が咲いても見えないよねぇ、なんて訝しく思ってた。そうしたら、それから程ない年明けのある朝、あれだけたくさん茂っていた葉が一枚残らず、地面に落ちて、可愛い蕾たちだけが、裸木にいっぱい残されてたの。なんじゃ、こりゃ、だよ、ほんとに。笑。
 花芽が小さいうちは、大事に葉っぱで守っていたんだろか。葉っぱたちは、寒さのなか我慢に我慢を重ねて、花芽が、もう充分成形できてきたかねっていうころを見計らって、お日様の光が思う存分当たるように、一斉に落ちていったってことかな。ねぇ、ねぇ、そういうこと?って、霜柱の立った地面の上に落ちてる葉っぱを一枚拾い上げて訊いてみたけれど、何にも言わなかった。自然は人間と違って謙虚だからね。ふふ。
 三椏は地味な木だけれど、とてもユニークな花を咲かせる。色合いの変化も中々面白くて、おや、そうきますか?なんて、ちょっとからかいたくなっちゃう。この木は、以前は我が家にはなくて、父が亡くなる前年くらいに、まだしっかりしていた母が、ホームセンターで苗木を頼んで植樹したものだった。三椏を植えるんだと母に聞いたとき、わたしは内心、わ、うれしいなって思ったんだよね。なんでかっていうと・・・。(2013-01-25記)

◇生活する花たち「菜の花」(横浜日吉本町)

2月8日

●小口泰與
おおらかな朝の日輪春の湖★★★
利根川の波おらびけりしみ返る★★★
がはと起く四更の地震や冴返る★★★

●迫田和代
野火走り青空の隅を汚しけり★★★
代かわり海苔の風味の無くなって★★★
陽もあたり風も優しく野梅咲く★★★

●桑本栄太郎
雲去れば峰に現わる斑雪かな★★★
くいくいと天に反りおり桜芽木★★★★
三茱萸の赤き実乾ぶ余寒かな★★★

●小川和子
雪積る紅色に咲く椿へも★★★
こんもりと春雪被り暮るる★★★★
こんもりと春雪を被った街が暮れて、民話のような、柔らかく、静かな世界が眼前にあらわれた。その感動。(高橋正子)

春の雪軋ませ深く踏みしめる★★★★

●小西 宏
窓ガラス密かに叩き牡丹雪★★★
春吹雪わたしの街を流れゆく★★★

雪風や五右衛門風呂の小さき窓★★★★
鄙びた家の五右衛門風呂。風呂の窓も小さく風呂に入ればほっこりとした気分。外の雪風を耳に聞けばなおさらのこと、湯のあたたかさが肌身にしみる。(高橋正子)

2月7日(金)

 東山・法然院
★春寒し木を打ち人を呼び出せり   正子
暦の上では春になったとはいえ、まだ肌に感じる空気は冷たい初春に、木を打つ音が山に響いています。今まで家のなか中心に静かに暮らしていた人々が、その音を聞き外に出てみようかという気持ちになっている情景でしょうか?これから、日に日に暖かくなり人々の暮らしにも活気が出てくることでしょう。(井上治代)

○今日の俳句
早も咲ける菜の花の丈低かりし/井上治代
春も暦ばかりと思えるのに、早も菜の花が咲いて黄色い光を返している。先駆けの菜の花らしく「丈低かりし」であって、実在感がある花となっている。(高橋正子)

○芽柳

[芽柳/横浜・四季の森公園(2012年1月26日)]_[芽柳/横浜・四季の森公園(2012年3月22日)]

★古川にこびて芽を張る柳かな 芭蕉
★ほつかりと黄ばみ出でたり柳の芽 暁台
★芽柳のおのれを包みはじめたる/後藤比奈夫
★芽柳や鶏飼ふ艀菜をきざむ/皆川盤水
★芽柳の色となりつゝ風と合ふ/稲畑汀子
★芽柳や傘さし上げてすれ違ふ/満田春日
★退屈なガソリンガール柳の芽/富安風生
★芽柳や声やはらかく遊びをり/遠藤千鶴羽
★東京の石神井恋し柳の芽/清水淑子

 めやなぎ(芽柳)とは、早春、芽の出始めた柳。芽吹き柳。芽張り柳。[季]春。《―の奥たのもしき風情かな/鬼貫》(三省堂 大辞林)
 ヤナギ(柳、英語: Willow)は、ヤナギ科 Salicaceae ヤナギ属 Salix の樹木の総称。世界に約350種あり、主に北半球に分布する。日本では、柳と言えば一般にシダレヤナギを指すことが多い。落葉性の木本であり、高木から低木、ごく背が低く、這うものまである。葉は互生、まれに対生。托葉を持ち、葉柄は短い。葉身は単葉で線形、披針形、卵形など変化が多い。雌雄異株で、花は尾状花序、つまり、小さい花が集まった穂になり、枯れるときには花序全体がぽろりと落ちる。冬芽は1枚のカバーのような鱗片に包まれ、これがすっぽりと取れたり、片方に割れ目を生じてはずれたりする特徴がある。これは、本来は2枚の鱗片であったものが融合したものと考えられる。果実はさく果で、種子は小さく柳絮(りゅうじょ)と呼ばれ、綿毛を持っており風に乗って散布される。 なお、中国において5月頃の風物詩となっており、古くから漢詩等によく詠み込まれる柳絮だが、日本には目立つほど綿毛を形成しない種が多い。
 日本では、柳といえば、街路樹、公園樹のシダレヤナギが代表的であるが、生け花では幹がくねったウンリュウヤナギや冬芽から顔を出す花穂が銀白色の毛で目立つネコヤナギがよく知られている。

◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)

2月7日

●小口泰與
渓流の魚の魚拓や春浅し★★★
春めくや大きく動くチワワの尾★★★
春めくや榛名の嶺に雲流る★★★

●下地鉄
花椿落ちて咲きいる重さかな★★★
うっすらと濡れるほどに蕗の薹★★★

吹く風に茅花の揺れ従わず★★★★
茅花は晩春のころ花穂をつけるが、沖縄の今はそんな気候かと思いつつ読んだ。丈の低い茅花は、風の方向に靡くとも限らない。それぞれに揺れる白くふんわりした茅花が魅力だ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
風花の青にゆだねる乱舞かな★★★
ものの芽の青き枝先のびにけり★★★
声そろえ部活少女や寒戻る★★★

●多田有花
森歩く早春の雪降る中を★★★
飛行機雲余寒の空へ鮮やかに★★★★
背景は若草色に冴返る★★★

●佃 康水
春雪や朱の回廊の屋根清め★★★

黄をふふみ三椏銀の蕾解く★★★★
早春の花である三椏は銀色の蕾をつけてから開くまでが長い。蕾がはじけると黄色い手毬のような可憐な花となる。今蕾にその黄色が見えた。
春の便りでもあり、うれしいことだ。(高橋正子)

抜糸終え試歩へゆく友草萌ゆる★★★

●小西 宏
竹の葉の触れ合う音や春浅し★★★★
竹の葉の触れ合う音は春寒い風の音をよく感じさせてくれる。陽射しは明るくなったものの、吹く風はまだ冷たい。春は名のみ。(高橋正子)

早春の空に張る枝鳥の声★★★
早春を走る身体を温めつつ★★★

●古田敬二
冴え返る西空に月尖りおり★★★
カレンダーに大きな赤丸今日立春★★★
ポケットから手を出し歩く今日立春★★★

2月6日(木)

★おしばなの紅梅円形にて匂う   正子

○今日の俳句
水音して箕面連山春浅し/河野啓一
「水音して・・春浅し」の感覚がいい。箕面連山を行くと、ころころと水音が絶えずしている。自然に身を入れると、確かに春が来ている。(高橋正子)

○横浜市の大倉山は梅林で有名。それほど広い梅林ではないが、東横線の日吉駅から二駅目にあるので、昨日2月5信之先生と散歩気分で出かけた。大倉山の梅林は北側にあるので、期待はしなかったが、木によっては満開になっていた。紅梅と白梅があって、そのまざり具合が快い絵のようになっている。梅見の人はほどんどいなく、熱心に写真を撮る人が数人いた程度で、静かに楽しめた。

大倉山へは以前は句会や吟行でよく出かけたが、しばらく来ていない。坂道の途中にベーカリーが出来ていて、「今日も元気にがんばっています!」とポップがあったので、入ってみた。若い人数人が楽しそうに働いて、作業場も見える。入口の吹きさらしのテーブルでは、コーヒーを飲みながら買ったパンを食べている人もいる。聞くとコーヒーは無料とのこと。みんなに倣ってコーヒーをいただいて、買ったパンを食べた。親切にも、ひざ掛けが置いてある。買ったパンは、粒あんパン、メロンパン、クロックムッシュ一個ずつ。二人分で、お土産の紅茶クッキー2枚も入れて720円。

○福寿草「秩父紅」

[福寿草「秩父紅」/横浜日吉本町]     [福寿草「秩父紅」/埼玉県皆野町「ムクゲ自然公園」(ネットより)]

★小さくても昇殿すなり福寿草 一茶
★暖炉たく部屋暖かに福寿草 子規
★一日の温さに開く福寿草/高橋正子
★福寿草紅色がちな花は光り/高橋正子

 フクジュソウ(福寿草、学名:Adonis ramosa)は、キンポウゲ科の多年草。春を告げる花の代表である。そのため元日草(がんじつそう)の別名を持つ。福寿草という和名もまた新春を祝う意味がある。正月にはヤブコウジなどと寄せ植えにした植木鉢が販売される。花言葉は永久の幸福、思い出、幸福を招く、祝福。

▼幻の福寿草「秩父紅」を訪ねて(ブログ「いったりきたり日記/2010年2月27日」より:
父からの誘いで埼玉県皆野町のムクゲ自然公園というところに行く。西武秩父駅前で午前10時に待ち合わせ、車で皆野町へ。とはいえムクゲは夏の花なので当然いま咲いているわけがない。今日の目的は「秩父紅」というここだけに咲く幻の福寿草。雨模様だったがしだいに晴れてきた。秩父紅は陽が当たらないと開かないそうだ。母がしきりに「わたしは晴れ女だから」と自慢する。ロウバイが咲いている。マンサクも咲いている。その先の山腹に一万株の秩父紅が植わっている。セイヨウミツバチがちらほら来ていた。半透明のデリケートな花弁と華やかな雄しべ。一般種の福寿草は目の覚めるような強烈イエロー。材木に生えていたきのこ。池で鳴いていたカジカガエル。カジカガエルの卵。公園案内所に戻って甘酒と目薬の木のお茶をごちそうになった。ここでは園内のハーブ園で栽培したハーブや、花の種や鉢植えの販売もしている。母は目薬の木のお茶を、私は古代米をおみやげに買い求めた。

◇生活する花たち「さんしゅゆの花蕾・節分草・満作」(横浜・四季の森公園)

2月5日(水)

★水掛けて春水かがやく仏なる  正子
温かい春の日、観音様をお訪ねになられ、柄杓で水を掛けお参りなされたのでしょうか。観音様は水に濡れる度に益々春の光りに輝きを増されて来ます。私達のこころまで洗われる様な光り輝くお姿を想像致します。(佃 康水)

○今日の俳句
野に覚めし淡きみどりや蕗のとう/佃 康水
「野に覚めし」によって、淡い蕗のとうのみどりが目に強く焼きつく。初めて見つけた蕗の董であろう。驚きと嬉しさを隠せない。(高橋正子)

○蕗の薹

[蕗の薹/横浜日吉本町]

★莟とはなれもしらずよ蕗のたう  蕪村
★ほろ苦き恋の味なり蕗の薹/杉田久女
★蕗の薹おもひおもひの夕汽笛/中村汀女
★猪を炙り蕗の薹まぶしかな/長谷川櫂
 
 蕗は菊科の多年草で山野に自生する。早春、新葉が出る前に根茎から卵の形をした緑色の花茎を出す。花茎は数枚の大きな鱗のような葉で包まれ、特有の香気とほろ苦い風味が喜ばれる。花がほうけたものを蕗の姑(ふきのしゅうとめ)という。 学名:Petasites japonicus、Petasites(ペタシテス)は、ギリシャ語の「petasos(つば広の帽子)」が語源で、葉が広く大きいところから。
 蕗の薹(ふきのとうは、蕗の花芽のことで、天ぷらにするとおいしい。花が咲く前の柔らかいうちがベスト(地面から出てきた直後ぐらいの状態のもの)。春の代表的な山菜。花が咲いてから、地下茎を通じてつながっている葉が大きく伸びて広がってくる。(花と葉が別々につく)。この”葉柄”(葉の茎の部分)がいわゆる「フキ」として食用になる。市販されているものはほとんどが「秋田フキ」と呼ばれる、葉柄2mほどの大型のもの。葉自体は円形。

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

2月5日-6日

2月6日

●小口泰與
下萌や牧舎の牛の高き声★★★★
蕗の芽や利根の支流に毛鉤打つ★★★★
蕗の芽が出はじめ、利根川の支流の愛着の川だろうが、春を待ちかねて毛鉤を打った。川の水にも蕗の芽にもある早春の息吹が何よりも嬉しい。(高橋正子)

早春の風を呼びたる黒き雲★★★

●多田有花
春早しブログ始めて十周年★★★
春の雪日当たりながら降ってくる★★★★
寒戻る冷たき頬に触れてみる★★★

●河野啓一
雪山に遊ぶ雷鳥銀世界★★★
北摂の野を飾りたる牡丹雪★★★★
「北摂」を静かで明るい眼差しで詠んでいる。北摂に降る牡丹雪がはなやかだ。(高橋正子)

霜の下芽生え逞し春田かな★★★

●桑本栄太郎
雨だれの紅のしずくや梅一輪★★★
西山の峰の雲晴れ春の虹★★★

土手に群れ線路華やぐ野水仙★★★★
野水仙の咲き乱れる土手に線路が通っている。線路も、電車も、その乗客も野水仙に飾られて絵になっている。楚々とした中にも華やぎが
ある。(高橋正子)

●小西 宏
ほつほつと梅開きいて谷戸澄めり★★★★
「谷戸澄めり」に実感があって、読み手にも景色が鮮明に浮かぶ。梅の開きはじめは、あたりの空気も冷たさのなかに清潔さが感じられる。(高橋正子)

紅梅と白梅並ぶ畑の道★★★
迷子猫探すポスター春浅し★★★

2月5日

●小口泰與
春時雨農婦に道問う夕べかな★★★

春なれやシャッター音の快し★★★★
シャッターを上げ下げする音も、春の暖かさで滑りがよくなったのか、快い音を立てる。生活のこんなところも春が来ている。(高橋正子)

菜の花や羽音高らか群雀★★★

●多田有花
早春の霰の中へ歩きだす★★★★
灰色の雲飛ぶ空よ冴返る★★★
春北風に木の軋みあう音響く★★★

●桑本栄太郎
春雪の山河一気に覆いけり★★★

【原句】風花の日射す青空ちりばめて
【添削】青空に風花ちりばめ日射したり★★★★
元の句は、「ちりばめ」(他動詞)の使い方に問題があります。

ひるがえる干し物入れるしまき雲★★★

●古田敬二
五弁という約束守りて梅開花★★★
梅開花花弁に薄き蕊の影★★★
数えられる程の開花や白梅林★★★

2月4日(火)/立春

★立春のピアノの弦のすべてが鳴る/高橋正子
春を迎える日の窓に聞こえてくるピアノ曲の軽やかな旋律を想像いたします。音階を緩急自在に走りゆき、和音をのびやかに膨らませて、すべての弦がふるえ響き、春到来を喜んでいるようです。(小西 宏)

○今日の俳句
枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
枝に止まった鳥が、枝移りをするのか枝が揺れる。それを見ていると、光も揺らしているのだ。枝を張る陽光に満ちた木、枝移りする鳥が、なんと早春らしいことよ。(高橋正子)

○立春
★立春の米こぼれをり葛西橋/石田波郷
★立春の海よりの風海見えず/桂 信子

★立春の夜道どこからか水の匂い/高橋信之(昭和四十八年作)
「立春」と聞くと、それだけで気持ちがほぐれる。厳しい冬の寒さと別れ、いよいよ春になる。夜道を歩けば、どこからか水の匂いがする。小川の流れか、水はいち早く温み始めたのだろう。夜道の暗さに水の匂いが春のはなやぎのように感じられる。(高橋正子)

陰暦では、1年360日を二十四気七十二候に分けたが、立春はその二十四気の一つで、陽暦では2月4日か5日、節分の翌日に当たる。節分は冬の季語となっている。節分を境に翌日は春となる。あくまでも暦の上だが、この切り替えがまた、人の心の切り替えにも役立って、立春と聞くと見るもの聞くものが艶めいて感じられる。冬木もいよいよ芽を動かすのだろうと思う。寒禽と呼ばれていた鳥も鳴き声がかわいらしく聞こえる。

★立春の朝は襖の白に明け/高橋正子
★立春の朝のデージー鉢いっぱい/高橋句美子

○梅

[白梅/横浜日吉本町(2013年2月3日)]_[紅梅/横浜日吉本町(2013年2月3日)]

★梅白しきのふや鶴をぬすまれし 芭蕉
★白雲の竜をつつむや梅の花 嵐雪
★とぼとぼと日は入切て梅の花 杉風
★からからと猫のあがるやむめの花 許六
★山里や井戸のはたなる梅の花 鬼貫
★手折らるる人に薫るや梅の花 千代女
★此村に一えだ咲きぬ梅の華 也有
★二もとの梅に遅速を愛す哉 蕪村

 梅の開花前線
 和歌山県南部に位置する月向農園では、1月下旬~2月に梅が開花します。南北になが~い日本列島!あなたの処ではいつ頃かな?梅は百花に先駆けて咲き、桜などに比べ休眠が浅いために開花時期が天候によって大きく左右されます。
 高温・適湿・多照の年は開花時期が早まり、乾燥の激しい年や気温の低い年はやや遅くなります。また、品種によって多少差があります。寒い中、いち早く春の訪れを知らせる梅の花は、1月下旬~5月上旬まで、約3ヶ月間かけて、ゆっくりと日本列島を北上します。

◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)