★花丈の揃い真白なシクラメン 正子
シクラメンと言えば紅やピンクと思っていましたが白はたいへん珍しく思います。その白いシクラメンがプランターにでも植えられているのでしょう。思い浮かべて清らかな気持ちになりました。(黒谷光子)
○今日の俳句
下萌えの足裏にやさし池巡る/黒谷光子
池の土手を巡りながら、足裏に柔らかさを感じる。土手はもう下萌えている。足裏より全身に伝わる柔らかさが春の訪れを実感させている。
(高橋 正子)
○山茱萸(さんしゅゆ)

[山茱萸/横浜・四季の森公園]
★山茱萸の黄や街古く人親し/大野林火
★さんしゅゆの花のこまかさ相ふれず/長谷川素逝
★山茱萸にけぶるや雨も黄となんぬ/水原秋桜子
★山茱萸やまばたくたびに花ふえて/森澄雄
★池の辺に山茱萸の色きらめけり/信幸
★ねんねこの児にさんしゅゆの花を見す/高橋正子
「庭のさんしゅゆの木に・・」という民謡があるが、山茱萸という言葉を知ったのは、この歌詞によってである。一体どんな木なのか、それに花がつくのか、皆目知らないままでいた。それが、早春肌寒い風のなかに、鮮烈な黄色い花を咲かせるのを知ったのは、庭師さんが我が家の庭隅に山茱萸を植えてくれてから。花展では、大きな枝を惜しげなく切った大作の花を見ることがある。やはり、外の肌寒い空気に置いてみるのが一番いい。子どもが小さいときには、ねんねこでおんぶしていた。早春は、光があふれてはいるが、風が寒い。ねんねこの子は、いろんなものを見たがって、あちこちおんぶして歩いた。さんしゅゆの花の黄色は子どもの目にも、鮮烈だったようだ。ねんねこでおんぶして歩いたのは、造成中の団地とそのあたり。一山を削り、雛段状の造成地を造る。毎日、図鑑に載っているような珍しい車が作業した。鶯が鳴くのを聞きながら、ねんねこの子は、それを飽きることなく、2時間はゆうに見ていた。私は子をおんぶして、2時間突っ立っていたわけなのだが。山茱萸の花が咲く季節になると、そのことを思い出す。
山茱萸(サンシュユ、学名:Cornus officinalis Sieb. et Zucc.)は、ミズキ目ミズキ科の落葉小高木。ハルコガネバナ、アキサンゴ、ヤマグミとも呼ばれる。季語は春。中国及び朝鮮半島の原産地に分布する。江戸時代享保年間に朝鮮経由で漢種の種子が日本に持ち込まれ、薬用植物として栽培されるようになった。日本では観賞用として庭木などにも利用されている。日当たりの良い肥沃地などに生育する。高さ3-15 mになる落葉小高木。樹皮は薄茶色で、葉は互生し長さ4-10 cmほどの楕円形で両面に毛がある。3月から5月にかけ、若葉に先立って花弁が4枚ある鮮黄色の小花を木一面に集めてつける。花弁は4個で反り返り、雄しべは4個。夏には葉がイラガやカナブンの食害を受ける。晩秋に付ける紅色楕円形の実は渋くて生食には向かない。内部にある種子を取り除き乾燥させた果肉(正確には偽果)は生薬に利用され、山茱萸(やまぐみ)という生薬として日本薬局方に収録されており、強精薬、止血、解熱作用がある。果肉は長さ1.4 cm程の楕円形。牛車腎気丸、八味地黄丸等の漢方方剤にも使われる。山茱萸の音読みが、和名の由来である。早春、葉がつく前に木一面に黄色の花をつけることから、「ハルコガネバナ」とも呼ばれる。秋のグミのような赤い実を珊瑚に例えて、「アキサンゴ」とも呼ばれる。
◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

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3月15日
●迫田和代
蓬摘み日除けの帽子籠になり★★★★
あたたかい日差しに誘われて野原や川土手にでかけたのだろう。萌え出た蓬を見つけて思わず積みたくなり、冠っていた帽子を籠代わりに使った。たのしいことだっただろう。(高橋正子)
山歩き崖下に咲く菫かな★★★
何となく春色探して街歩く★★★
●小口泰與
紅梅の白梅よりも際やかに★★★
行くほどにきざはし急ぞ梅の宿★★★
流れ行く水を見つめし柳の芽★★★
●小川和子
中学校同期会(欠席に添えて)
友等みな大志抱きて卒業す★★★
東風光る紅顔の子等古稀となり★★★
春なかばあの頃のこと師よ友よ★★★
●桑本栄太郎
料峭の日差しの雲に傘備う★★★
春ざれやチケットショップの長き列★★★
春眠の想い出つづり夢に会う★★★
●黒谷光子
涅槃図の釈迦に一年ぶりの風★★★
涅槃会に供う霰の色いろいろ★★★★
涅槃会には霰が供えられる。子供のころ、この霰をお寺の奥さんから頂いたことを思い出した。ようやく寒さとも別れらる彼岸、五色の霰はうららかさを誘う。(高橋正子)
足もとに縋る老人涅槃絵図★★★
3月14日
●小口泰與
春霰や日の出の際の山の畑★★★★
春とはいえ、日の出間際の山の畑はさぞ寒いことだろう。霰も転がり降ってくる。春めいてはいるが、わびしい山の畑だ。(高橋正子)
山茱萸の黄や雨粒はじきおり★★★
風光るカメラ精密極まれり★★★
●桑本栄太郎
春雪の風の行方に迷いおり★★★
真青なる空よ甍の梅の花★★★
子供等の走り遊びし日永かな
【添削】子供等の走り遊べる日永かな★★★★
「遊びし」は口語訳すれば「遊んだ」となって過去形。今目の前の子どもたちが遊んでいるほうが、生き生きとして、「日永」の子どもの光景をよく表現できる。(高橋正子)
●河野啓一
いつの間に咲きしや庭の花あしび★★★
小松菜の青葉大きく店先に★★★★
葉物野菜も春になると急に葉っぱが育つようになる。店頭にもこうした青々と大きい葉の小松菜が並ぶ。これも暖かくなってきた証拠。(高橋正子)
春の雨雑木に光る水の珠★★★
★真っすぐな日の差すところ蕗のとう 正子
寒さが残るころ、日の差す方に蕗の薹が見えている。蕗の薹を見つけて春がそこに来ていることを喜んでいる詠者です。(祝恵子)
○今日の俳句
初摘みの土筆を持ちて病室へ/祝恵子
入院していれば、季節のもの、戸外のものがうれしい。初摘みの土筆に春が来たことが共に喜べることであろう。(高橋正子)
○オキザリス(カタバミ科カタバミ属)

[オキザリス/横浜日吉本町(2013年3月10日)]_[かたばみ/横浜日吉本町(2011年5月13日)]
★オキザリス雨の茶房に人在らず/中谷朔風
★オキザリス野生育ちの強きこと/豊岡重翁
★石垣の裾に朝日のオキザリス/高橋正子
★雨降りのオキザリスなりみな蕾/高橋正子
★掘り起こされ芋きらめかすオギザリス/高橋正子
オキザリス(学名:Oxalis corymbosa(紫カタバミ)、Oxalis articulata(芋カタバミ))は、カタバミ科カタバミ属。世界中に800種類以上が分布する植物です。日本にもクローバーとよく間違われるカタバミ〔O.corniculata〕をはじめ、5種ほどが自生しています。花を咲かせて枯れてしまう一年草と、毎年花を咲かせる多年草があります。 球根を作るものや、低木になる種も知られています。世界中の色々な地域に分布しているだけに、地域によって様々な形態や性質をとり、開花期、草姿、花色、大きさなどは様々です。オキザリスだけで一年を途切れさせずに季節ごとに花を楽しむことができそうな気がします。花は筒状で、先端が数枚の花びらに分かれています。花は温度や光に敏感で、つぼみは日が射しているときは開きますが、天気の悪い日や夜は閉じています。また、日が当たっても温度の低いときは開きません。オキザリスの名前はギリシア語で「酸性」を意味するオクシス(oxys)に由来し、葉や茎にシュウ酸を含み酸っぱいところにちなみます。カタバミの葉っぱで10円玉をこすると黒ずみがとれてぴかぴかになるのは、このシュウ酸のせいです。園芸では地中に球根を作る種が主に栽培されており、球根植物として扱われることが多いです。特に南アフリカ原産種が多いです。栽培上は「春植え」と「夏・秋植え」に分けることもあります。
よく見かけるのは「紫カタバミ」と「芋カタバミ」だが、両者区別しにくい。両者ともピンク色の花びらで、紫カタバミは、花びらの中央がうすいピンク、芋カタバミは、花びらの中央が濃いピンク。花言葉は「喜び、母親の優しさ」。似ている花は、現の証拠、酢漿草(かたばみ)。似ている葉は、白詰草(クローバー)。
◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)

3月13日
●小口泰與
芽柳や気散じの歩を湖辺まで★★★
雪解川毛の三山の機嫌かな★★★
声は皆利根に鍛えし新入生 ★★★★
新入生といっても、高校生か、大学生だろう。中学、高校の部活で利根川に向かって張り上げ鍛えた声だ。練習風景を見てきた作者には、新入生になってもその声が耳に残っている。(高橋正子)
●桑本栄太郎
音もなく柳青める今朝の雨★★★★
「音もなく」は、「柳青める」と「今朝の雨」の両方に係っているいると読んだ。「音もなく柳青める」は、しなやかで明るい小さな柳の芽をよく表現してる。それは今朝の雨の静けさともよく呼応している。(高橋正子)
ととととと風に樋落つ春の雨★★★
春雨にけぶる在所の山河かな★★★
●小西 宏
枝に沿い花立つ梅の匂やかさ★★★
葉も若き河津桜の土手を行く★★★★
河津桜の咲く期間は長くひと月ぐらいだそうだ。花が咲きながら、若い葉が出ている。桜と言えば、染井吉野をつい思い浮かべるが、河津桜の世界はまた別だ。(高橋正子)
湖に大き船来る霞かな★★★
●多田有花
ビル街の風やわらかく浪花場所★★★★
浪速場所を楽しみにしておられる関西の方は多い。浪速場所の始まりが浪速の春の始まりなのだ。
ビル街にある場所にも春風がやわらかく吹いている。(高橋正子)
桟敷には舞妓がふたり三月場所★★★
春場所を打ち出され寿司を食べにいく★★★
●河野啓一
春の香を載せて筍ご飯かな★★★
春雨の滴るごとき曇り空★★★
お水とりほぼ終わりなる月半ば★★★
●古田敬二
春の葱抜けば真白な根を持てり★★★
畑を掘る畝に舞い来る春の雪★★★
つかの間の地上の形春の雪★★★★
春の雪は地に触れ、すぐに溶けてしまう。土の上には、触れたつかの間、形としてある。それが「地上の形」。春の雪のはかなさ、やわらかさ。(高橋正子)
3月12日
桑本栄太郎
<春の郷愁>
春日さす西国街道野を山へ★★★
<東日本大震災の鎮魂>
みちのくを想い黙祷春の昼★★★
春なれば陸奥(みちのく)青き海と空★★★
小口泰與
春昼や海豚のショーの水飛沫★★★
水槽の水母ほしいと泣く子かな★★★★
中天を海豚飛びけり春の潮★★★
河野啓一
春光の中を笑顔のバス走る★★★
真似たきや芽吹く気配の並木道★★★
木の芽晴れ丘の辺行けば水の音★★★★
春になって芽吹く木々の芽の総称を季語では「木(こ)の芽」という。そのころ降る雨を「木の芽雨」、そのころ吹く風を「木の芽風」という。それと同じようにその頃の晴れを作者は「木の芽晴れ」と季感をもたせて詠んだ。早春の明るさに満ちた晴天である。そんな丘を行けば水の音がころころと聞こえ、春が来たことを耳からも実感する。(高橋正子)
★春砂をゆきし足跡は浅し 正子
磯遊びなのか?或いは砂浜をお歩きになられたのか?後ろを振り返って見ると足跡の浅さに春の柔らかさを感じ取られたのでしょう。夏は沢山の人達の足跡が交差し賑やかさが有りますが、未だ人影も少なく、渚に打ち返す静かな波の音、さらさらとした美しい浅春の砂浜を想起致します。(佃 康水)
○今日の俳句
包み紙少し濡れいて蕗の薹/佃 康水
蕗の薹を包んでいる紙がうっすらと濡れている。朝早く採られた蕗の薹だろうか。蕗の薹の息吹であろうか。しっとりとした命の、春みずみずしさがある。(高橋正子)
○土佐水木(とさみずき)

[土佐水木/横浜日吉本町]
★土佐みづき山茱萸も咲きて黄をきそふ/水原秋桜子
★峡空の一角濡るる土佐みづき/上田五千石
★重い口開きたるかな土佐水木/遊歩
★大海の荒波見やる土佐水木/かるがも
★花揺らぎ潮の香りや土佐水木/かるがも
★料峭の空気の色に土佐水木/高橋正子
土佐水木(とさみずき、学名:Corylopsis spicata)は、マンサク科トサミズキ属。落葉低木。四国の山中に自生、また庭木とされている高さ2mほどである。高知(土佐)の蛇紋岩地に野生のものが多く見られるため、この名前がついている。また、葉の形がミズキ科の樹木と似てところからミズキといわれている。3-4月に葉に先立って短枝に明るい黄色の花を咲かせ、花穂は長く伸びて7輪前後の花をつける。レンギョウやマンサクと同様、江戸時代から庭木や盆栽、切り花として親しまれている。葉はまるっこい卵円形で、裏面は粉をふったように白っぽく毛がある。実は緑色で、熟すと中から黒い種子が出る。また海外へは19世紀、シーボルトにより紹介された。病害ではうどんこ病、虫害ではカイガラムシ類、テッポウムシなどによる被害がある。日向水木と比べて、一房の花の数が多くて花も大きい。土佐水木の仲間に支那水木がある。
◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)

★片寄せに雪の残りて月おぼろ 正子
道路の除雪跡なのでしょうか。地面には片寄せされた雪が残っているけれど、夜空は、もう、おぼろながらも月があらわれ、幻想的な光景が感じられる夜となりました。(高橋秀之)
○今日の俳句
春暁の新しき水仏前に/高橋秀之
春の暁は、華やいだ感じはするが、空気がしんと冷えている。仏前に線香をあげ、汲みたての水をあげる。そこに充足した緊張感が生まれている。(高橋正子)
雪割一華(ゆきわりいちげ)

[雪割一華/東京白金台・自然教育園(2014年3月11日]
★春浅き一華うすうす紫に/高橋信之
雪割一華(ユキワリイチゲ)はキンポウゲ科イチリンソウ属の多年草である。日本固有種である。本州の滋賀県から九州にかけて分布し、林の中や渓流沿いなどに生える。
「雪割」は早春植物を意味し、「一華」は一茎に一輪の花を咲かせるという意味である。草丈は20から30センチくらいである。根際から生える葉は3小葉からなる。小葉は三角状の卵形でミツバの葉に似ていて、裏面は紫色を帯びる。茎につく葉は茎先に3枚が輪のようになって生える(輪生)。
開花時期は3月から4月である。花の色は白く、淡い紫色を帯びている。花びらは8枚から12枚くらいである。ただし、花弁のように見えるのは萼片である。花の後にできる実はそう果(熟しても裂開せず、種子は1つで全体が種子のように見えるもの)である。
花言葉は「幸せになる」である。属名の Anemone はギリシャ語の「anemos(風)」からきている。種小名の keiskeana は明治初期の植物学者「伊藤圭介さんの」という意味である。圭介はオランダ商館のシーボルトのもとで植物学を学んだ。学名:Anemone keiskeana (「花図鑑・雪割一華/龍 2010年3月14日」より)
◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・猫柳」(東大・小石川植物園)

3月11日
●小口泰與
初蝶のゆったり超ゆる大伽藍★★★★
大伽藍と小さな初蝶の対比、初蝶のういういしさ、可憐さ、うららかさをよく表すことになった。(高橋正子)
木々芽吹く今だ芽吹かぬ葡萄の木★★★
たらの芽や岸辺に数多稚魚のおり★★★★
●河野啓一
早春の晴れわたりたる朝の空★★★
枯枝の根元顔出す蕗のとう★★★
枯枝を揺らす鳥影大きくて★★★★
大きな鳥影からすれば、鳥は鵯だろうか。枝移りするたびに枝が揺れる。鳥の重さ、枯枝のしなやかさが感じ取れる句だ。(高橋正子)
●桑本栄太郎
菜園の背高き菜花明かりかな★★★
もとの樹へ未練の紅の落椿★★★
芽吹く枝のつぼみ宿せりゆきやなぎ★★★
●多田有花
大いなる渓谷へダイブ春の夢★★★
小綬鶏に呼ばれて締める靴の紐★★★
梅が香の真ん中にいて風を聞く★★★★
梅の香の漂うところに立てば、風が吹いている。目に触れる梅の花、鼻に嗅ぐ梅の香り、耳に聞く風の音。それ頬には早春の風も触れてゆくことだろう。感覚の大いに働いた句である。(高橋正子)
●古田敬二
三月の散歩は距離を長くして★★★
いぬふぐり咲きそろいけり陽は十時★★★★
春の日の、午前十時の陽はうらうらと輝き、新鮮である。その陽に照らされて、いぬふぐりの青い小花が咲きそろう。なんとうららかな春の景色だろう。(高橋正子)
畝打てば斜め後ろから春の雪★★★
3月10日
●小口泰與
山風に逆らいつつも麦踏めり★★★
鯉こくや千曲の雪解響きあう★★★★
千曲川の流れる小諸で花冠フェスティバルを行ったとき、鯉こくをいただいた。そのときの千曲川の瀬音を思い出したが、雪解の音で響き合う千曲川、そしてあたたかい鯉こくもいいものだと思う。(高橋正子)
白梅や白鳥北へ帰りおり★★★
●祝恵子
春の池狙うは翡翠カメラマン★★★
少年の釣りし春鯉リリースす★★★★
少年の初々しさが「春鯉」とよくマッチしている。釣った鯉をリリースするのも少年らしいことと思った。(高橋正子)
紅白梅重なり見える丘に立つ★★★
●河野啓一
曇り空晴れて受験子笑顔かな★★★
春場所や力士の汗と雪の花★★★
震災忌春未だしの野山かな★★★
●多田有花
春の雪ちらちらと舞い沖は晴れ★★★★
梅林の上流れ行く雲速し★★★★
リュックより首出す犬や春の山★★★
●桑本栄太郎
春北風や忽ち山河の真っ白に★★★
池めぐる間にも日差しの春の雪★★★
古木とて背の伸びきれず丘の梅★★★
★蕎麦に摺る山葵のみどり春浅し 正子
早春の芽吹くものは殆どさみどりのものが多く、暖かい春への希望の色である。しかし時には寒の戻りの寒さもあり、寒暖定まらぬ早春の気候を山葵を通して情趣豊かに詠われた。 (桑本栄太郎)
○今日の俳句
京都四条~祇園界隈
建仁寺塀の高みの藪椿/桑本栄太郎
建仁寺塀は竹の塀で美しい。丈高く組まれることが多いが、その塀の上に覗く藪椿が自然の様で風趣がある。(高橋正子)
○土筆

[土筆/横浜日吉本町] [土筆/横浜・四季の森公園]
★土筆煮て飯くふ夜の台所/正岡子規
★土筆摘む野は照りながら山の雨/嶋田青峰
★土筆野やよろこぶ母につみあます/長谷川かな女
★子のたちしあとの淋しさ土筆摘む/杉田久女
★土筆伸ぶ白毫寺道は遠いれど/水原秋桜子
★白紙に土筆の花粉うすみどり/後藤夜半
★土ふかき音もたつなる 土筆摘む/皆吉爽雨
★まま事の飯もおさいも土筆かな/星野立子
★土筆なつかし一銭玉の生きゐし日/加藤楸邨
★山姥の目敏く土筆見つけたり/沢木欣一
★土筆摘む強腰にしてひとりもの/青柳志解樹
ツクシは、正しくは「杉菜(すぎな)」の胞子茎(ほうしけい)というもので、「付子」とも書く。
スギナ(杉菜、学名:Equisetum arvense)は シダ植物門トクサ綱トクサ目トクサ科トクサ属の植物の一種。日本のトクサ類では最も小柄である。浅い地下に地下茎を伸ばしてよく繁茂する。生育には湿気の多い土壌が適しているが、畑地にも生え、難防除雑草である。
春にツクシ(土筆)と呼ばれる胞子茎(または胞子穂、胞子体)を出し、胞子を放出する。薄茶色で、「袴(はかま)」と呼ばれる茶色で輪状の葉が茎を取り巻いている。丈は10-15cm程度。
ツクシ成長後に、それとは全く外見の異なる栄養茎を伸ばす。栄養茎は茎と葉からなり、光合成を行う。鮮やかな緑色で丈は10-40cm程度。主軸の節ごとに関節のある緑色の棒状の葉を輪生させる。上の節ほどその葉が短いのが、全体を見るとスギの樹形に似て見える。なお、ツクシの穂を放置すると、緑色を帯びたほこりの様なものがたくさん出て来る。これが胞子である。顕微鏡下で見ると、胞子は球形で、2本の紐(4本に見えるが実際は2本)が1ヵ所から四方に伸びている。これを弾糸という。この弾糸は湿ると胞子に巻き付き、乾燥すると伸びる。この動きによって胞子の散布に預かる。顕微鏡下で観察しながら、そっと息を吹きかけると、瞬時にその形が変化するのをみることが出来る。また、「ツクシ」は春の季語である。
◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

★受験子の髪ふっくらと切り揃う 正子
受験子は女の子でしょう。切り揃えた髪が肩の上で揺れます。清潔なたたずまいが浮かんできます。(多田有花)
○今日の俳句
弁当を誰か広げている梅林/多田有花
「誰か」がいい。梅の花を楽しみながら静かに弁当と広げている。静かに日差している梅林を思う。
○ミモザ(銀葉アカシア)

[ミモザ/横浜日吉本町(左:2014年2月28日)・右:2011年3月27日)]
原義のミモザは、マメ科オジギソウ属の植物の総称(オジギソウ属のラテン語名およびそれに由来する学名がMimosa)。ミモザ(英: mimosa、独: Mimose)は、本来はマメ科の植物であるオジギソウを指すラテン語名。葉に刺激を与えると古代ギリシアの身振り劇ミモス”mimos”(マイム、パントマイムの前身)のように動くことからこの名がついた。ラテン語本来の発音はミモサ、英語発音はマモゥサあるいはマイモゥサとなり、日本語のミモザはフランス語発音に由来する。
ミモザは、フサアカシア、ギンヨウアカシアなどのマメ科アカシア属花卉の俗称。イギリスで、南フランスから輸入されるフサアカシアの切花を”mimosa”と呼んだ事から。アカシア属の葉は、オジギソウ属の葉によく似るが、触れても動かない。しかし花はオジギソウ属の花と類似したポンポン状の形態であることから誤用された。今日の日本ではこの用例がむしろ主流である。鮮やかな黄色で、ふわふわしたこれらのアカシアの花のイメージから、ミモザサラダや後述のカクテルの名がつけられている。
◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)
