4月9日(水)

★雪柳の自由な茎と空気と触れ  正子
それぞれの茎が自由に曲がって咲いている雪柳。植物の個性が「自由な茎」と的確に表現されています。さらに、「空気と触れている」ということで、雪柳と空気とが語り合っているようなやさしいイメージを与えてくれます。(安藤智久)

○今日の俳句
切り出され杉は春野に積み上がる/安藤智久
伐採された杉の木は深い山を出て、今度は、明るい光の溢れる春の野に積まれる。まだまだ杉の香りも紛々として、春野に積まれることに、あらたな喜びを得たようである。(高橋正子)

○白詰草(クローバー)

[白詰草/横浜日吉本町] 

★クローバーに雨すこし降りけふの会/山口青邨
★クローバに青年ならぬ寝型残す/西東三鬼          
★事務服のままクローバに出て憩ふ/内田耕人
★転勤の知らせ四つ葉のクローバー/田崎比呂古
★頬よせて四つ葉のクローバー多感なり/柴田美代子
★クローバ咲き泉光りて十九世紀/加藤かけい

 シロツメクサ(白詰草、学名:Trifolium repens)は、マメ科シャジクソウ属の多年草。別名、クローバー。原産地はヨーロッパ。花期は春から秋。茎は地上を這い、葉は3小葉からなる複葉であるが、時に4小葉やそれ以上のものもあり、特に4小葉のものは「四つ葉のクローバー」として珍重される。花は葉の柄よりやや長い花茎の先につく。色は白。雑草防止、土壌浸食防止等に利用されることもある。
 漢字表記は、「白詰草」。詰め草の名称は1846年 (弘化3年)にオランダから献上されたガラス製品の包装に緩衝材として詰められていたことに由来する。日本においては明治時代以降、家畜の飼料用として導入されたものが野生化した帰化植物。根粒菌の作用により窒素を固定することから、地味を豊かにする植物として緑化資材にも用いられている。
 花は「赤詰草」にそっくりだが、色が白なのと、花茎を伸ばした先に花が咲くことから区別できる。(赤詰草は葉っぱのすぐ上に花が咲く)また、葉っぱ自体も丸っこい。(赤詰草の葉っぱはややとがる)夜になると葉を閉じる。別名:「クローバー」「馬肥(うまごやし)」馬肥は、本来は、黄色いつぶつぶの別の花の名前。白詰草の別名でもある。

◇生活する花たち「菜の花・片栗の花・山桜」(横浜・四季の森公園)

4月9日

●小口泰與
かたくりや山を囃せる鳥の声★★★★
片栗や杖をたよりて三毳山(みかもやま)★★★
雨しずくふふむ杏の紅の色★★★

●古田敬二
美濃路来て蓬を摘めばよく香る★★★★
黄水仙矢作の川風を重たげに★★★
初蝶や白きを見てから黄も見る★★★

●多田有花
くくられて山吹の花咲きにけり★★★★
山吹の枝はかなり奔放に伸びるので、くくられている。くくられたままで花を咲かせているのを見ると、山吹の花と人間の生活のとの身近さがうかがえる。(高橋正子)

山の道たどれば赤き藪椿★★★
青空に大島桜の真白き花★★★

●桑本栄太郎
朝の日にみどり透き居る木の芽かな★★★★
剥きながらふるさと語る春の蕗★★★
パソコンの入れ替え終わり四月来る★★★

●佃 康水
良き音を手元に鳴らし蕨摘む★★★★
蕨を折り取るときの、「ぽきっ」というみずみずしくて軽い音。それが「良き音」。次々にその音が鳴れば、うれしさもそれだけ増してくる。蕨採り、野山に遊ぶ嬉しさがさわやかに詠まれている。(高橋正子)

連翹や友大作の生け花展★★★
手漕ぎして鳥居を潜る花見船★★★

●黒谷光子
ぬめぬめと逃げる構えの花うぐい★★★
さみどりに紅の鮮やか楓の芽★★★
水音を聞き満開の花の土手★★★★

●小西 宏
薄みどり下向き芽吹く楢の道★★★
山桜ときおり散れば鳥の声★★★★
六人で外野を守り紋黄蝶★★★

●河野啓一
散り初めし桜を惜しむバスの窓★★★
醍醐寺の花を見んとて妻出かけ★★★
花吹雪池の面埋めてカーペット★★★

4月8日

●小口泰與
ねぎの花咲くや疾風の在所なり★★★★
紅梅を苛む風となりにけり★★★
菜の花や牛舎に集う鳥の数★★★

●桑本栄太郎
サッカーのボール遊びや木の芽晴れ★★★★
豆の花支柱高きに蔓伸びて★★★
芽吹く木の早もみどりの艶めけり★★★

●古田敬二
落日が影成す斜面に春菜摘む★★★★
一句に多くの言葉が入り過ぎているのが気になる。春菜の育つ山の畑であろうか。落日のころもやはり春の陽、温かみと明るさが残っている。(高橋正子)

草餅を友の数だけ求めけり★★★
山々に桜もこぶしも温泉街★★★

●小西 宏
陽の下に花のトンネル花ちらす★★★★
陽の下の華やかな花のトンネルが、花を散らし始めた。満開を過ぎて散る桜のはかなさ、またその美しさが詠まれている。(高橋正子)

花屑のまばらに白き坂の道★★★
風凪いで残る桜の蕊の色★★★

●黒谷光子
桜満つ八瀬大原に水の音★★★★
京都八瀬の桜は、市内の桜が葉桜になりはじめるころに満開となると聞いている。八瀬駅を出れば川の水音が響く中に、遅がけの桜に巡り合える。静かに味わう桜である。(高橋正子)

青空に浮くかに高き花辛夷★★★
ほのぼのと朱を走らせて花うぐい★★★

4月8日(火)

★花御堂飾る花にも野のげんげ  正子
お寺では4月8日にお釈迦様のご誕生をお祝するために「花祭り」が行われていますが今は野や畑に咲く色んな花を摘んで花御堂を飾ります。子供の頃には、田んぼ一面に咲いていた蓮華草を主体に飾られていたことを鮮明に覚えています。御句より蓮華草の田んぼを泥んこになって遊んだり首飾りを作った子供の頃を懐かしみ、蓮華草を久しく見ていないなぁと花御堂の今昔を思いました。
(佃 康水)

○今日の俳句
黎明の初音に一日気の弾む/佃 康水
朝のはじめに良いことがあると、その日一日よい気持ちで過ごせる。黎明の鶯の澄んだ声には、「気の弾む」思いである。(高橋正子)

○花祭(はなまつり、別名:灌仏会、釈迦の誕生日)
4月8日の花祭りは、仏教の開祖、釈迦の生誕を祝福する仏教行事。潅仏会(かんぶつえ)仏生会(ぶっしょうえ)といい、「花祭り」は明治以降の名称。浴像会、降誕会などともいわれます。古代から釈迦の生まれたインドで行われてきた行事からのもので、日本ではお盆とともに仏教伝来からの歴史があります。推古天皇代(606)、聖徳太子の提唱で元興寺で行われたのが最初とか。この日、各寺には花で飾った小堂、花御堂(はなみどう)がつくられます。金属製の幼仏像をその中にまつり、甘茶が参拝者によってその誕生仏にかけられます。甘茶を潅(そそ)ぐ行事なので「潅仏会」。 花御堂は釈迦が生まれたところルンピニ園の花園を表しています。甘茶とは砂糖入りのお茶というわけではなく、ユキノシタ科のアマチャやウリ科のアマチャヅルを煎じた飲料です。漢方薬店で売っているらしい。お寺で参拝のあとにいただけるところもあります。麦茶に似た色をしていてちょっと甘くちょっとにがく、とろりとした飲みごこちがします。

★稚き葉の白く開きて潅仏会  正子
★石段のゆるびし上の甘茶寺  〃
★甘茶仏甘茶のいろに輝けり  〃
★花御堂飾る花にも野のげんげ  〃

○紫雲英(げんげ)・蓮華草(れんげそう)・れんげ・げんげん

[げんげ/横浜日吉本町]

★十本の指ありげんげ摘んでいる/三橋鷹女
★紫雲英田の沖の白波一つ見ゆ/川崎展宏
★親牛も子牛もつけしげんげの荷/高野素十
★花束になりたい蓮華草の夢/岡村嵐舟
★げんげ咲くコースジョギング続けねば/山本翠公
★何を言わんとして一面の蓮華草/田頭良子

 ゲンゲ(紫雲英、翹揺 Astragalus sinicus)はマメ科ゲンゲ属に分類される越年草。中国原産。レンゲソウ(蓮華草)、レンゲ、とも呼ぶ。春の季語。かつて水田に緑肥として栽培され、現在でもその周辺に散見される。岐阜県の県花に指定されている。
湿ったところに生える。全体に柔らかな草である。茎の高さ10-25cm。根本で枝分かれして、暖かい地方では水平方向に匍匐し、60-150センチまで伸びる場合もある。茎の先端は上を向く。また、根本から一回り細い匍匐茎を伸ばすこともある。葉は一回羽状複葉、小葉は円形に近い楕円形、先端は丸いか、少しくぼむ。一枚の葉では基部から先端まで小葉の大きさがあまり変わらない。花茎は葉腋から出て真っ直ぐに立ち、葉より突き出して花をつける。花は先端に輪生状にひとまとまりにつく。花色は紅紫色だが、まれに白色(クリーム色)の株もある。
 ゲンゲの花のミツは、良い「みつ源」になる。蜂蜜の源となる蜜源植物として利用されている。ゆでた若芽は食用にもなる(おひたし、汁の実、油いため他)。民間薬として利用されることがある(利尿や解熱など)。ゲンゲの花を歌ったわらべ歌もある。「春の小川」などが有名。
ギリシア神話では、祭壇に捧げる花を摘みに野に出た仲良し姉妹の話が有名。ニンフが変身した蓮華草を誤って摘んでしまった姉のドリュオペが、代わりに蓮華草に変わってしまう。「花はみな女神が姿を変えたもの。もう花は摘まないで」、と言い残したという。

◇生活する花たち「三葉躑躅(みつばつつじ)・葱坊主・繁縷(はこべ)」(横浜日吉本町)

4月7日(月)

★花通草みどり透きたる葉のなかに  正子
私は道草の実は見たことがありますが、道草の花は見たことがありません。フェイスブックページ「俳句雑誌花冠」の写真を見ると可愛い花ですね。「みどり透きたる葉の中に」あるからこそいっそう花道草の可憐な姿が引き立って見えるのだと思います。 (井上治代)

○今日の俳句
楓の芽今開かんとして紅し/井上治代
楓の芽のかわいらしさと紅い色の美しさを端的に、みずみずしく詠んだ。「紅し」の言い切りが快い。(高橋正子)

○烏野豌豆(カラスノエンドウ)

[カラスノエンドウ/横浜日吉本町] 

★畦道に豆の花咲く別れかな/星野 椿
★子供よくきてからすのゑんどうある草地/川島彷徨子
★子等帰るからすのゑんどう吹きながら/照れまん
★野球ボール飛び込むからすのえんどうに/高橋正子

 からすのえんどうは、小さいながらも、きっちり豆の花の形をしている。どう見ても豆の花のミニチュア版である。見るたびいつも、こう思う。

 ヤハズエンドウ(矢筈豌豆、Vicia sativa subsp. nigra[1])は、マメ科ソラマメ属の越年草。ヤハズエンドウが植物学的局面では標準的に用いられる和名だが、カラスノエンドウ(烏野豌豆)という名が一般には定着している(「野豌豆」は中国での名称)。
 本州から四国・九州・沖縄の路傍や堤防などのいたるところにごく普通に生育している。秋に発芽し、春になると高さ60 – 150cmに達する。茎には巻きひげがあり、近くのものに絡みつくこともあるが大体は直立する。茎は全体に毛があり四角柱状。花期は3 – 6月でエンドウに似た小型の紅紫色の花を付ける。豆果は熟すると黒くなって晴天の日に裂け、種子を激しく弾き飛ばす。
 原産地はオリエントから地中海にかけての地方であり、この地方での古代の麦作農耕の開始期にはエンドウなどと同様に栽培されて作物として利用された証拠が考古学的資料によって得られているが、その後栽培植物としての利用はほぼ断絶して今日では雑草とみなされている。そのため、若芽や若い豆果を食用にすることができるし、熟した豆も炒って食用にできる。また、未熟な果実の両端を切り落し、草笛にすることができる。一見するとソラマメの仲間とは思えないが、よく見ると、茎が角ばっていることと、豆のへそが長いというソラマメ属の特徴を満たしている。
 史記で伯夷・叔齋が山で餓死する前に食べていた「薇」(び)は、野豌豆の類ともいい、またワラビやゼンマイのことともいう。

◇生活する花たち「菜の花・片栗の花・山桜」(横浜・四季の森公園)

4月7日

●小口泰與
青柳の揺れの隠せる流れかな★★★
山風の素直になりぬ雪柳★★★
牡丹の芽和紙の如くにほぐれけり★★★

●河野啓一
木犀の芽吹き夕日にうす茜★★★★
車椅子そろりそろりと花の下★★★
チューリップ若き彩り開きゆく★★★

●桑本栄太郎
雲を出で雲に入る飛機春の朝★★★★
鳥ならば、雲を出て雲に入ることはないような気がする。飛行機は雲を出てまた雲に入り、そこに物質的、機械的なまっすぐな方向を感じさせる。それも春の朝の高い空での出来事だ。(高橋正子)

グランドの光り長閑や初黄蝶★★★
径ふさぐ白き小枝や雪やなぎ★★★

●黒谷光子
遠かすむ比良を借景式部歌碑★★★

山つつじ左右に京への峠道★★★★
「京にのぼる」という言葉を昔話でよく聞いた。「京への峠道」には、いろんな物語がありそうだ。その峠道も山つつじが明るく咲く季節を迎えた。(高橋正子)

さざ波のままに一群れ春の鴨★★★

●佃 康水
水草生う御手洗川へ日の躍る★★★ 
古民家の釣瓶井跡に壺すみれ★★★★
宮島や花の雲間に海光る★★★★ 

●高橋秀之
夜更かしも終わる春休み最終日★★★
食事会最後の締めは桜餅★★★
傘なくも走って帰る春時雨★★★

●小西 宏
雨やんで濡れたる桜しめやかに★★★
よく晴れて芽吹きの枝に雀たち★★★
はらはらと花散り時の流れゆく★★★★

4月6日(日)

★多摩川の奥へと桜咲き連らぬ  正子
多摩川にかかる橋から川の堤に咲く桜を眺められたものでしょうか。あるいは高い位置から流れる川をごらんになったのか。桜が流れ来る川に沿って咲き誇っています。春のクライマックスです。
(多田有花)

○今日の俳句
朝の陽がまず差すところ桜花/多田有花
陽が昇り、まず差すところが桜の花。清楚でありながら桜花が華やかに浮き立つときだ。(高橋正子)

○勿忘草(わすれなぐさ)

[勿忘草/横浜日吉本町]

★小さう咲いて勿忘草や妹が許/村上鬼城
★まさに瑠璃富士を前なる勿忘草/中村草田男
★奏でる海へ音なく大河勿忘草/中村草田男
★勿忘草わかものの墓標ばかりなり/石田波郷
★勿忘草光りて呼ぶはちさき水面/香西照雄
★勿忘草蒔けり女子寮に吾子を入れ/堀口星眠

ヨーロッパ原産の伝説とロマンに富む多年草。高さ30センチくらいで、春から初夏にかけて咲き、梢頭にかれんな藍色の花をつける。白、桃色等もある。「forget-me-not」と英語で言う。勿忘草は、英語からの翻訳。高校生ぐらいになると、教科書にこういう単語が例語として出てくる。実際の花は知らず、先にこの英語を知って、いろいろと想像を巡らせ、ヨーロッパの風景に憧れもしたものだ。花の藍色も花の形も、まさにヨーロッパ色と形という感じがする。
★植えつけて勿忘草に空映る/高橋正子

 勿忘草(ワスレナグサ)は、広義には、ムラサキ科ワスレナグサ属の種の総称。狭義には、ワスレナグサ属の一種、シンワスレナグサ(学名:Myosotis scorpioides)の和名。ただし、園芸業界でワスレナグサとして流通しているのは、ノハラワスレナグサ (M. alpestris)、エゾムラサキ (M. sylvatica)、あるいはそれらの種間交配種である。一般には、広義の意味で称される。季語は春である。
 ヨーロッパ原産で、北半球の温帯から亜寒帯(ユーラシア大陸・アフリカ大陸・オセアニア)に約50種が分布している。日本に渡来したのは、明治時代に園芸業者がノハラワスレナグサ (M. alpestris) を輸入したのが最初と言われている。しかしワスレナグサ属ということでは、日本には元来、エゾムラサキ (M. sylvatica) 一種が自生分布している。
 野生化して各地に群生しており、日本全国(北海道・本州・四国)に分布している。一般に日当たりと水はけのよい湿性地を好み、耐寒性に優れているが、暑さには弱い。二年生もしくは多年生植物の宿根草であるが、日本で栽培すると夏の暑さに当てられて枯れてしまうことから、園芸上は秋まきの一年生植物として扱われる(北海道や長野県の高地など冷涼地では夏を越すことが可能である)。
 花期は3 – 5月(冷涼地では4月 – 7月)。春から夏にかけて薄青(紫)色・鮮青(紫)色(園芸種はさらに白色・ピンク色など)をした6–9ミリ径の小さい5弁の花を咲かせ、花冠の喉に黄色・白色の目(小斑点)をもつ。花は多数でさそり型花序をなし、開花とともにサソリの尾のような巻きは解けて真っ直ぐになる。高さは20–50センチになり、葉が互生に付く。葉は細長く平らで、長楕円形(葉の中央付近が最も葉の幅が広い)、もしくは倒披針形(葉先近くが最も葉の幅が広い)である。葉から茎まで軟毛に覆われており、属名の Myosotis は、そうした葉の様子(細長く多毛で柔らかい)が、ネズミの耳に似ていることに由来している(ギリシャ語の「二十日鼠 (myos) +耳 (otis)」が語源)。
 別名「フォーゲットミーノット、forget-me-not」は、本来の名前。和名はこれの和訳。”私を忘れないでください”ドイツの伝説で、ドナウ川の岸に咲くこの花を恋人ベルタに贈ろうとして、誤って川に落ちて死んでしまった騎士ルドルフの物語からきている。その後ベルタはその言葉を忘れず、この花を一生髪に飾り続けた。

◇生活する花たち「木苺の花・著莪(しゃが)・姫林檎の花」(横浜日吉本町)

4月6日

●小口泰與
山茱萸の散るや鳥語のあふれおり★★★
山茱萸の褪せて杏の咲く日かな★★★
花辛夷山の獣も目覚めけり★★★

●桑本栄太郎
鈍行の駅のホームや花の雨★★★★
つぎつぎに句の生まれいる春意かな★★★
散り敷きて道に片寄る花の冷え★★★

●河野啓一
さくら背に乱れ咲きおり雪柳★★★
小さき手を広げ芽立ちや柿若葉★★★
霞立つ朝空を行く鳥の群れ★★★★

●高橋秀之
呉線の車窓に桜延々と★★★★
呉線は、山陽本線から分かれて元軍港のあった呉へと回る線路である。トンネルが多いことでも知られるが、それだけ山裾を走るということ。車窓にも桜が延々と咲き続く。(高橋正子)

花マーク桜まつりのシャトルバス★★★
大桜周りの木々を従えて★★★

4月5日(土)

★子らあそばす丘の平地の桃さくら  正子
春の草が萌え出た広い平らな丘に子供たちが駆け回り、ボールを蹴ったり投げっこをしたりと楽しく遊んでいる。丘の周りには桜や桃の花が咲き競い穏やかな春の素晴らしい気候ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
花冷や長き裾野の赤城山/小口泰與
「長き裾野」は、季節によってさまざまな感じをわれわれに与える。花冷えには花冷えの裾野の引く線の緊張感がある。(高橋正子)

○三葉躑躅(みつばつつじ)

[三葉躑躅/横浜日吉本町]

★つゝじいけて其陰に干鱈さく女/松尾芭蕉
★大原や躑躅の中に蔵たてて/与謝野蕪村
★庭芝に小みちはありぬ花つつじ/芥川龍之介
★築地あり小さきつつじを植ゑ並べ/松本たかし

★日は白し三葉躑躅の塊りに/高橋正子
★咲き固まる三葉躑躅が門の内/高橋正子

 ゴールデンウィークごろ、西日本最高峰の石鎚山に登ると、曙躑躅が満開となっている。芽吹き始めた木々の間に鮮やかなピンク色を見せる。山に登った甲斐があるというもの。この曙躑躅とイメージが似ているのが三葉躑躅。日吉に住むようになって、この三葉躑躅をはじめて知った。はじめ見たときは、曙躑躅だと思っていた。私にとっては新しい花である。
 ミツバツツジ(三葉躑躅 Rhododendron dilatatum)はツツジ科ツツジ属の落葉低木。また、近縁のミツバツツジ類の総称でもある。 関東地方から近畿地方東部の太平洋側に分布し、主にやせた尾根や岩場、里山の雑木林などに生育する。古くから庭木としても植えられるが、盗掘の影響もあるせいか野生の個体数は決して多くない。ミツバツツジ類は、4-5月頃に咲く紅紫色の花が美しい。花が終わってから葉が出てくる。枝先に三枚の葉がつくことからこの名がついた。

◇生活する花たち「菜の花・片栗の花・山桜」(横浜・四季の森公園)