★チューリップ剪り集めれば虹の色 正子
チューリップは、花々の中でも色の種類や模様を最も多く楽しむことができるものの一つではないでしょうか。そんなチューリップを切り花にしていっぱいに活けてみれば、まるでそこに虹が生まれたように明るさが広がるのでしょう。(小西 宏)
○今日の俳句
子ら池に足入れ遊び花楓/小西 宏
楓の花は、新緑の季節に先駆けて、暗紅色の花を開きかけた葉の先につける。遠目には、小さな丸い暗紅色の点に見え、かわいらしい。子どもたちは、子どもたちで、ようやく暖かくなったと思うと、はやも水を喜び、浅い池に入って、ザリガニや小さい魚など追いかけて遊ぶ。花楓も子どもたちの遊びも、季節を先駆けた新鮮さがある。(高橋正子)
○藤
[藤/横浜日吉本町(2013年4月13日)]_[芹の花/横浜・四季の森公園(2010年5月1日)]
★草臥て宿かる比や藤の花 芭蕉
★月に遠くおぼゆる藤の色香哉 蕪村
★春の日の入所なり藤の花 一茶
★藤の花長うして雨ふらんとす/正岡子規
★天心にゆらぎのぼりの藤の花 沢木欣一
★藤房に山羊は白しと旅すぎゆく/金子兜太
★遠つ世へゆきたし睡し藤の昼/中村苑子
★勤めの途中藤の真下の虚空抜ける/堀 葦男
★藤房の中に門灯点りけり/深見けん二
★肩触れて肩かゆくなる藤の花/能村登四郎
★いちにちにゆふべのありて藤の花/鷹羽狩行
★杉あらば杉の高さに藤の花/朝妻力
★縄電車停車す藤の花かげに/増田富子
フジ(藤、学名: Wisteria floribunda)は、マメ科フジ属のつる性落葉木本。ノダフジ(野田藤)ともいう。ノダフジ(野田藤)の名は、この種が植物学者の牧野富太郎により命名されるきっかけとなった、フジの名所であった大阪市福島区野田にちなんでいる(同区玉川の春日神社には、野田の藤跡碑が建立されている)。
開花時期は、 4/15 ~ 5/ 5頃。花序は長くしだれて、20cmから80cmに達する。花は紫色。蔓(つる)は他の木などに右巻き(上から見て中心から外側へ時計回りに見える巻き方)に巻きつき、かなり太くなる。2mぐらいの長さの蔓になることもある。蔓はとても強く、古墳時代の巨大な石棺も、木ぞりに載せて、この藤縄で運んだらしい。夏になると新しい枝先からまた少し花が咲くことがある。これに似ている山藤(やまふじ)は左巻きに巻きつく。
日本原産、日本固有種。本州・四国・九州の温帯から暖帯に分布する。一才藤(いっさいふぢ)として園芸用に流通する鉢がある。樹高50cmくらいの、鉢植えや盆栽にして愉しむための一才物のフジ。花枝はしだれるが、支柱などは不要。
◇生活する花たち「藤・しゃが・菜の花」(横浜市緑区・四季の森公園)

●小口泰與
白雲の棚引く山や桃の花★★★★
棚引く白雲と桃の花の取り合わせが、のどかな景色を見せてくれている。(高橋正子)
ばらの芽のほどけてあえか風の中★★★
桜散る老後の貯えありしかな★★★
●河野啓一
斑鳩の野にやさしきや春の風★★★
南国の海のほとりや豆の花★★★★
ベランダに開く五色のチューリップ★★★
●桑本栄太郎
<同期会旅行高遠~富士五湖めぐりより>
天竜の大河に沿いぬ桃の花★★★★
春景の真中にながれ笛吹川★★★
芽吹き初めうすき茶色やぶどう棚★★★
●小西 宏
樟の新芽が赤い囀りに★★★★
タンポポがモンシロチョウを呼び止める★★★
庭よりは道に傾れて芝桜★★★
●多田有花
桜散り野山全き明るさに★★★★
桜が散った後の野山は、さまざまなの新緑色と初夏へと向かう日差しに、「全き明るさ」となる。
「全き明るさ」が桜のあとの景色をよく捉えている。(高橋正子)
風通り過ぎればしばし花吹雪★★★
一画に残りし大き山桜
●古田敬二
リラの花仰げば香り降りて来る★★★★
残雪の御岳遠望友病めり★★★
里桜薄暮に満開空に月★★★
●小口泰與
ゆさゆさと千本桜風の中★★★★
桜蘂ふる山風荒き朝かな★★★
雉鳴くや長き裾野のとの曇★★★
●小西 宏
朝に座し浅利味噌汁白ご飯★★★★
浅利の味噌汁が美味しいのは、春の小寒い朝。それに湯気のたつ白いご飯があれば、申し分なし。
そして、朝食に座るという行為。すっきりとした幸せな朝の食事だ。(高橋正子)
一つまた桜花びら舞いきたる★★★
若き葉の内より躑躅吹き出ずる★★★
●桑本栄太郎
<同期会旅行高遠~富士五湖めぐりより>
上流の霞み立ちおり木曽大河★★★
残雪の恵那山見上ぐバスの窓★★★
ハイウェイの眼下みどりや春の田に★★★★
富士五湖を巡るハイウェイ。平地より少し遅れた春であるが、眼下に木々の緑、草が萌える春の田。心軽やかなよい眺めだ。(高橋正子)
●高橋秀之
手を合わす実家の仏前桜餅★★★★
車窓から東の大空春の虹★★★
飯蛸が丸ごと露店のたこ焼き屋★★★
●古田敬二
まみれんと桜落花に立ち止まる★★★
この一年も元気でいよう桜散る★★★
桜散る空に蜂のホバリング★★★
★はこべらの花を撮りつつバスを待つ 正子
春の七草のひとつ、はこべらも花の季節を迎えました。小さくて鄙びた白花は、知らなければ雑草の花ほどにしか思わないところ、やはり俳人正子先生の感性は、バス待ちのひと時も惜しまれるようですね。春の野草を愛でるひと時が大変嬉しい、好きな句です。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
揚ひばり田ごとに天のありにけり/桑本栄太郎
雲雀は田よりまっすぐに揚がって天に囀る。こちらの田の上にもあちらの田の上にも雲雀が鳴き、田ごとに天がある。実にうまく詠んでいる。(高橋正子)
○梨の花

[梨の花/横浜市緑区北八朔(左:2013年4月12日・右:2012年4月19日)]
○梨の花
★両岸の梨花にラインの渡し船/高濱虚子
★能登けふは海の濁りの梨の花/細見綾子
★梨棚の白とも言えぬ花咲けり/高橋正子
正子の日記/2012年4月20日より
昨日の午後、信之先生と2人で吟行兼写真撮影。横浜緑区北八朔町の果樹園の梨の花を目的とした。自宅がある港北区から都筑区川和町までを地下鉄に乗った。電車を降りたときは、田園のいい香りがした。菜の花の匂いに、なにか花の匂いが混じっている。歩くところ、歩くところ、花が噴きだしたように一斉に咲いているためであろう。
川和町を鶴見川に沿って東側の土手を川上に向かって歩いた。鶴見川の土手は、すぎな、いたどりが群生し、菜の花が方々に咲いている。すいばは、穂を伸ばしかけ、桜は葉桜となりながらもまだ花が咲いている。豌豆の花、蚕豆の花、苺の花、ほうれん草の花、葱坊主、桃の花、林檎の花、木蓮、いちはつ、山吹、石楠花、シャクヤクの花蕾、土手の斜面にはすかんぽやいたどり等も。のどかな田園地帯で、八十を越えたかのような老人が農作業にいそしんでいた。
1時間半ばかり歩いたところの天神橋は、都筑区川和町と横浜緑区北八朔町と青葉区下谷本町との3町の境となる。天神橋を通って鶴見川の西側へ渡る。そこが緑区北八朔町の梨の果樹園で花盛りであった。梨は、初秋には「はまなし」として売られる。梨の花は、白い。採果しやすいように枝は横に這うように伸ばせた樹形となっているが、枝には意外にも大きな花がびっしりとついている。随分摘果しなければならないだろうと思った。
梨の花を撮り、天神橋を渡って都筑区川和町へ戻る。少し歩くと青葉区市ヶ尾町になる。市ヶ尾駅からあざみ野駅までを田園都市線で、そこから横浜市営地下鉄に乗り、日吉本町駅で下車、帰宅は、午後3時過ぎ。帰るや川土手で取ってきたいたどり二本を水道水で洗って、藻塩をつけて少々食べる。ぽきっと折れて瑞々しかったが、残念ながら、二本とも埃臭い味。山の沢などのいたどりは、こんな味ではない。鑑賞用にコップに挿した。
梨の花弁は通常白色、5枚の離弁が基本であるが、色や花弁数には変異がある。また、おしべは約20本、花柱は5本である。梨は本来虫媒花であるが、自家不和合性(同じ品種間では結実しない性質)が強く、栽培される場合には経済的な理由から他品種の花粉によって人工受粉が行われる。めしべの柱頭に付着した花粉は発芽し、花粉管を伸長して胚珠に到達、重複受精を行う。果実の育成は植物ホルモンの影響を受ける為、人工的にこれを添加する事も行われる。また、結実数が多すぎる(着果過多)場合には、商品となる果実の大きさを維持する為に摘果が行われる。
◇生活する花たち「あおいすみれ・錨草・山吹草」(東京白金台・自然教育園)

★木苺の花が咲くなり森といい 正子
木苺には私も愛着があります。よく熟れた実は種のつぶつぶといい、甘ずっぱい味がして忘れられないのです。そのような木苺が今はよく管理された森の一角に白い花をつけている。木苺の花をみつけた喜びが伝わります。(小川和子)
○今日の俳句
高々と花満つ校舎の外窓へ/小川和子
校舎の高い窓に触れて桜が咲き満ちている。窓の内から見れば窓は桜に埋め尽くされている。今年は早い桜であるが、卒業や入学に重なる桜の花は、生徒たちの胸にいろんな思い出を残すことだろう。
○著莪(しゃが)

[著莪/横浜日吉本町(2013年4月4日)][著莪/東京・関口芭蕉庵(2010年5月9日)]
★紫の斑の仏めく著莪の花/高浜虚子
★著莪の花白きにわきて雲絶えず/加藤楸邨
★姫著莪の花に墨する朝かな/杉田久女
★著莪叢のとどく木洩れ日濡れてをり/稲畑汀子
★譲ることのみ多き日々著莪の花/塙 義子
シャガ(射干、著莪、胡蝶花、学名:Iris japonica)は、アヤメ科アヤメ属の多年草である。人家近くの森林周辺の木陰などの、やや湿ったところに群生する。開花期は4 – 5月ごろで、白っぽい紫のアヤメに似た花をつける。花弁に濃い紫と黄色の模様がある。根茎は短く横に這い、群落を形成する。草丈は高さは50 – 60 センチ・メートル程度までになり、葉はつやのある緑色、左右から扁平になっている。いわゆる単面葉であるが、この種の場合、株の根本から左右どちらかに傾いて伸びて、葉の片面だけを上に向け、その面が表面のような様子になり、二次的に裏表が生じている。
学名の種小名はjaponica(「日本の」という意味)ではあるが、シャガは中国原産で、かなり古くに日本に入ってきた帰化植物である[1]。三倍体のため種子が発生しない。このことから日本に存在する全てのシャガは同一の遺伝子を持ち、またその分布の広がりは人為的に行われたと考えることができる。したがって、人為的影響の少ない自然林内にはあまり自生しない。スギ植林の林下に見られる場所などは、かつては人間が住んでいた場所である可能性が高い。そういう場所には、チャノキなども見られることが多い。中国には二倍体の個体があり花色、花径などに多様な変異があるという。東京都でレッドリストの準絶滅危惧種に指定されている。
◇生活する花たち「やまるりそう・すみれ・楓の花」(東京白金台・自然教育園)

●小口泰與
子雀の横樋に落つ日照雨かな★★★
春蝉や名もなき山の松林★★★
花冷の朝や榛名の嶺定か★★★★
●古田敬二
我が街の遠望に立てば桜散る★★★★
見なれたところを、遠くから見ればまた違った印象になる。我が街が遠くに見えるところに立てば、はなはらと桜が散る。行く春に少し感傷的な気持ちが湧く。(高橋正子)
朝の陽に天井地上芽吹きけり★★★
春蘭の寄りそいて咲く藪の奥★★★
●桑本栄太郎
<同期会旅行高遠城跡の桜見物>
花冷えの風に数多のつぼみかな★★★
空堀の浅きめぐりや草青む★★★★
高遠の城跡をあとに花の雲★★★
●多田有花
一羽また飛んで入りにし花の中★★★★
一羽がなんの鳥かわからないが、鵯の感じだ。花の蜜を吸うために花の中に潜り込む。一羽が入って、さほどもしないうちに、また一羽が入る。鳥と花のよい風景だ。(高橋正子)
見渡せば山晩春の色を成す★★★
ため池に姿を映し桜並木★★★
●小口泰與
春風に帽子さらわる園児かな★★★
上州は山風荒む弥生かな★★★
花冷や足湯に浸る山の駅★★★★
●河野啓一
ムスカリのかたまり青く日溜まりに★★★★
ムスカリは白や薄水色などもあるが、青い色がかたまって咲いているのをよく見かける。日溜まりに咲き揃っているのを見るとかわいらしい。(高橋正子)
花韮のそよと揺れつつそこかしこ★★★
新樹へと霧吹き付けし庭の朝★★★
●祝恵子
青空や旧舎に桜影やさし★★★
知事室より望む叡山春の窓★★★
友と居てふと振り仰ぐ楓の芽★★★★
●多田有花
駐車場いっぱいに散り花吹雪★★★
楓の芽影成す頃となりにけり★★★
日の当たる森ゆく花びら降る中を★★★★
●小西 宏
裏山の笛や燃え立つ桃の花★★★
花蕊の色春長けて空の蒼★★★
水音の棚田に近し雪柳★★★★
●佃 康水
厳島どの道行くも花の中★★★★
厳島神社を祀る厳島は秋は紅葉で有名だが、春には春で桜が島を彩る。どの道をとっても桜に出会う。厳島の花らんまんの春である。(高橋正子)
夕映えの紅まんさくに立ちつくす★★★
山日和一気に辛夷花開く★★★
●桑本栄太郎
さみどりの激しく光り木の芽風★★★★
風が強い日には、芽吹いたさみどりの木の芽も、光を「激しく」反す。「激しく」には、風や日の強さ、さみどりの木の芽の勢いが感じ取れる。(高橋正子)
リード解け歩む子犬や春の朝★★★
紅白の咲き分け源平桃の花★★★
●古田敬二
時告げに春の筍土破る★★★★
丈という高さへどんぐり芽を伸ばす★★★
春の陽に走り根太く潜りけり★★★
●小口泰與
あえかなるばらの新芽や風の中★★★★
ばらの新芽に「あえか」な表情を見た。かわいらしく、やわらかく、傷つきそうな新芽が風の中に伸びてきた。(高橋正子)
山風に帽子とられし春の川★★★
揚ひばり榛名へ夕日急ぐかな★★★
●多田有花
よく晴れし菫咲く道を歩く★★★
風吹けば我に注ぎし花吹雪★★★
藪椿手にして男戻りけり★★★★
花を手にした男の人を目にすれば、その人の意外な面を覗いたような気になる。花好きは概してやさしい。「藪椿と男」の取り合わせがよい。(高橋正子)
●黒谷光子
満開の桜めぐらす天守閣★★★
人の列絶えぬ濠端花満開★★★
会食の造りに旬の桜鯛★★★
●河野啓一
信濃路や安曇の里の豆の花★★★
山焼きの煙は風に明日香村★★★
遠霞花散り終えて山裾に★★★★
●小西 宏
そよ風に子ら手をつなぎ雪柳★★★★
陽を散らしツバメ旋回高く消ゆ★★★★
広々と芽吹く欅に昼の月★★★
●古田敬二
春蘭のすっくと立てり藪の奥★★★
春の日の走り根深く潜りけり★★★
豊かなり木々それぞれに芽吹く色★★★★
清洲橋
★ケルンの橋青く塗られて春の橋 正子
隅田川に架かる有名な橋の一つにケルンの橋を燃して架けられた清洲橋と云うのがあると聞く。見たことをありませんが青く塗られていて爽やかな春らしい色が目に浮かぶようです。(河野啓一)
○今日の俳句
レンギョウの明るくはじけ雨上がり/河野啓一
「明るくはじけ」は、レンギョウのつやつやした花びらを的確に描写している。雨上がり、レンギョウの花は弾けたように黄色い花を咲かせる。(高橋正子)
○4月9日に、白金台の自然教育園に出かけた。桜はほぼ終わり、はや、初夏の雰囲気となっていた。水生植物園のミツガシワの花が咲いて、涼しげであった。ミツガシワは、これまでずっと葉だけ見てきた。ようやく花が見れた。浦島草、武蔵鐙もちょうど花時。花といっても、仏炎苞で、暗紫色のところがグロテスク。浦島草は、釣り糸に見える部分が、5、60センチもありそうだ。一夜にしてそれだけ伸びたのかどうかは知らないが。そのほかでは、にわとこのはな、貝母の花、一輪草、二輪草、ひとりしずか、羅生門蔓、草山吹、山吹、花楓などが見ごろ。珍しいものでは、猩々袴を見た。むくろじの花と実も見た。イロハモミジが新緑の葉を広げてよい眺めであった。
○接骨木(にわとこ)の花

[接骨木の花/東京白金台・自然教育園]
★接骨木の花咲けり何かにまぎれんと/加倉井秋を
★にはとこの花や余震のまたもきて/819maker
ニワトコ(接骨木、庭常、学名:Sambucus racemosa subsp. sieboldiana)はスイカズラ科ニワトコ属の落葉低木または小高木。ニワトコ属は、新しいAPG植物分類体系ではレンプクソウ科に移されている。
樹形は下部からよく分枝し、枝は独特な弧形を描き、高さは2-6mになる。幹の古い樹皮は黒褐色で厚いコルク質があり、深いひび割れが入る。枝は褐灰色で皮目があり、若い枝は緑色。枝に太い髄があり褐色になる。
葉は対生し、奇数羽状複葉で長さ8-30cm、花のつかない枝の葉は長さ8cmの葉柄を含めて45cmになる。小葉は長さ3-10cm、幅1-3.5cmの楕円形、卵状披針形、広披針形、まれに披針形で、先端は鋭くとがり、基部は円形か円いくさび形になり、短い小葉柄があり、縁には細鋸歯がある。花のつく枝の小葉は2-3対、つかない枝のものは3-6対となる。
花期は3-5月。今年枝の先端に長さ幅とも3-10cmになる円錐花序をだし、小さい花を多数つける。花冠は径3-5mmで5深裂し、ふつう黄白色ときに淡紫色で、かすかに匂いがある。雄蘂は5個で花弁より短い。子房は鐘状で3室からなる。果実は長さ3-4mmになる球卵形の核果となり、6-8月に暗赤色に熟す。中に3個の種子が入る。
日本では、本州、四国、九州(対馬・甑島・種子島・奄美大島を含む。)に分布し、山野の林縁にふつうにみられ、湿気があって日当たりのよい所に多い。世界では、朝鮮南部、中国に分布する。
魔除けにするところも多く、日本でも小正月の飾りやアイヌのイナウ(御幣)などの材料にされた。若葉を山菜として食用にすることもある。果実は焼酎に漬け、果実酒の材料にされる。 果実の中には3個の種子があるが、成熟するのは1-2個で、残りは不稔となる。民間薬として使われ、接骨木(セッコツボク)の名は、枝や幹を煎じて水あめ状になったものを、骨折の治療の際の湿布剤に用いたためといわれる。また、古代エジプトでは糖尿病の症状である多尿の治療のために、ニワトコの実や新鮮なミルクを混ぜたものが飲まれていたという記録が残されている。
◇生活する花たち「みつがしわ・ばいも・二輪草」(東京白金台・自然教育園)

★豌豆の花の飛び立つとの曇り 正子
少し風が吹き出したのでしょうか、曇りだした空へ豌豆の花が飛び出しそうに見えているのでしょう。(祝恵子)
○今日の俳句
シャボン玉子ら追いかける大広野/祝恵子
大広野がいい。シャボン玉も子らも広野に、広野の空に解放されて自由で、生き生きしている。
○チュ-リップ

[チュ-リップ/横浜日吉本町]
★ベルギーは山なき国やチューリップ/高浜虚子
★チューリップ喜びだけを持つてゐる/細見綾子
★チューリップ日向の色に加はりぬ/稻畑汀子
★すれ違ふどこかで見た子チューリップ/今井千鶴子
★チューリップ散って一茎天を指す/貞弘 衛
★チューリップ一輪挿せる夜の黙/金澤明子
★晴れ渡る日や正直にチューリップ/犬塚芳子
★チューリップ駅の未来図張り出され/高村洋子
チューリップはユリ科チューリップ属の植物。球根ができ、形態は有皮鱗茎。和名は鬱金香(うこんこう、うっこんこう)、中近東ではラーレと呼ばれる。アナトリア、イランからパミール高原、ヒンドゥークシュ山脈、カザフスタンのステップ地帯が原産。
多様な園芸品種が存在する。外観は、花弁の先端が丸いもの・尖ったもの・フリル状のものもある。咲き方は一重から八重。一つの球根から複数の花がつくもの。すぼまった状態で開花するものや花弁が外側へ反り返り全開して開花するものなど。花色も青以外の赤・黄・オレンジ・白・緑・紫などの単色や複数の色のものなど、数百品種のチューリップが存在する。青バラと同様に多くの育種家によって青いチューリップの開発が進められているが、花弁全体が青い品種は発表されていない。 チューリップの花を上から覗くと、花弁の根元に青い部分が存在する。その部分には青い色素がみられ、その青い部分を増やすことで青いチューリップを作る研究がされている。
繁殖は主に分球で、実生(タネ)からは開花までに5年以上かかる。実生は品種改良の際に行われる。人気のある花だけに花形・花色・草姿・葉の模様・ブルームの有無・香り・早晩性・耐暑性・耐湿性・多花性・繁殖力、切花では切花寿命・無花粉化・花茎の硬さなど改良されるべき性質が多く、特に日本の高温多湿に強い品種が望まれる。ただし、野生種をはじめ交配に使える素材も多いため、時間は掛かるが品種改良は比較的容易である。
開花前に裁縫に用いる針等を用いてチューリップの花の根元部分を貫通させ傷つけるとエチレンが発生し開花期間を長引かせることができ、開花後に同様のことを行なうと開花期間が短縮することがチューリップのみで確認されている。
◇生活する花たち「三葉躑躅(みつばつつじ)・葱坊主・繁縷(はこべ)」(横浜日吉本町)
