5月7日(水)

★白ばらの空気を巻いていて崩る  正子
白ばらの正に絢爛と盛りある咲きよう。空気の中に広がり、否、大きく巻き込んで濃密な一体となって在り、この期を逃せばあとはただ崩れ去るのみ。(小西 宏)

○今日の俳句
蒲公英の花せめぎあい光りあい/小西 宏
蒲公英が明るい日差しの中に、びっしりの咲いている様子。一つ一つの花は可憐でありながら、せめぎあうほどの花の力。せめぐだけでなく、また、互いに光りあっている。確かな目である。(高橋正子)

○ジャーマンアイリス(ドイツアヤメ)

[ジャーマンアイリス/横浜市都筑区ふじやとの道] 

★ドイツアヤメ咲く青年のジョギング/高橋信之
★学ぶ卓ドイツあやめの香が届き/仙石君子

ドイツアヤメ (Iris germanica) はアヤメ科アヤメ属の植物の一種。別名のジャーマンアイリスで呼ばれることが多い。本種は、アヤメ属の植物を交雑して作出されたもので野生のものはない。1800年代の初期にドイツ、フランスで品種改良され、その後、アメリカが多数の品種を出している。花期は5 – 6月ごろである。

◇生活する花たち「山躑躅・武蔵野きすげ・あやめ」(東京白金台・自然教育園)

5月4日~6日

5月6日

●小口泰與
同胞としばらく会わず春の雷★★★★
春の暮榛名は紺をしぼりけり★★★
夕映えのしみ入る浅間雪消かな★★★

●小西 宏
新緑の欅並木の三車線★★★
地に青き葉の影の揺れ夏初め★★★★
池五月花くっきりと寒枯藺(かんがれい)★★★

●佃 康水
抜きん出て早や陽を弾く今年竹★★★★
  ひろしまフラワーフェスティバル2句
真っ直ぐな若葉の街を鼓笛隊★★★
新緑や流し踊りの連なりて★★★

●多田有花
釣竿を持つ少年の夏近し★★★★
釣竿を持っている少年を見ると、夏が来たことを実感させられる。少年の釣りは水遊びの気持ちがある。(高橋正子)

夏来る緑へ静かな雨連れて★★★
飛行機雲新緑の山の彼方より★★★

●河野啓一
初夏の朝陽さわやか晴れ渡る★★★
軽やかに鳥新緑をくぐり抜け★★★★
鳥もよほどうれしいのだろう。新緑をくぐるときの「軽やか」な身のこなし。新緑のやわらかさのが鳥喜ばせている。おりしも愛鳥週間。(高橋正子)

菊挿して鉢並べたる人の居て★★★

●桑本栄太郎
朴の花見上げ葉影に憩いけり★★★★
朴の花は高いところに咲くので、下からは見上げるだけ。しかし、その大いなる葉影で憩うときの心静かに涼しいこと。(高橋正子)

日を透けば崩れそうなるチューリップ★★★
漫々と日を集めたる浮葉かな★★★

●高橋秀之
新緑の隙間の向こうに大空が★★★
新緑と大空の色だけが見え★★★★
夏来るおはようの声も元気よく★★★

●古田敬二
風の道白くざわめく若葉山★★★
葉桜のざわめきの空明日は晴れ★★★
赤目樫夕日射し来て透き通る★★★★

5月5日

●小口泰與
行く春やしどろに作る小鳥小屋★★★
しなやかに風にしないし柳かな★★★
白波のしばしば起つや緑立つ★★★

●河野啓一
陽を受けて新樹は風にそよぎおり★★★★
蜂が飛び蝶もひらひら昼下がり★★★
鯛釣りの釣果ぞ白き刺身かな★★★

●祝恵子
土準備すれば増えおり春の苗★★★
ふっと揺れ団地に風抜け牡丹咲く★★★
鉄線花おしゃべりする児の愛らしさ★★★★

●小西 宏
子供らのままごと語りハナミズキ★★★
棘少し柵に覗かせ花蜜柑★★★★
蕗焚いて色やわらかき香り噛む★★★

●小川和子
無垢の児の日毎健やか菖蒲の日★★★★
卯の花の真白よ全き容以て★★★
夏近し百合の木新葉濃くなりぬ★★★

●桑本栄太郎
みどり濃き雨の山河や夏は来ぬ★★★
父母ありし頃の想い出こどもの日★★★
乙訓の山すそ火照り竹の秋★★★

●古田敬二
白皿に薄紅色もある春野菜★★★
風来れば葉に見え隠れ豆の花★★★★
忘れ鍬一本立てりネギ坊主★★★

●高橋秀之
銭湯の大きな湯船菖蒲の湯★★★★
銭湯の菖蒲湯はたっぷりとお湯があり、いい気分なものだ。この日は子どもたちもお湯をどぼどぼとかき混ぜたり、まさか泳ぐものはいないだろうか、賑やかであったことだろう。(高橋正子)

軒下の一竿小さな鯉のぼり★★★
葉をめくり手につく香り柏餅★★★

●川名ますみ
あす立夏山椒の苗を植え付ける★★★
汁椀にますます蒼し山椒の芽★★★★
山椒の芽、木の芽は香りがなんといってもよいが、その葉の緑も香りと合わせて楽しめる。汁椀に浮かぶと蒼さが引き立つ。(高橋正子)

青天に一条の影つばくらめ★★★

5月4日

●小口泰與
白藤や今朝の浅間は斑なり★★★★
里山の古木静けき落花かな★★★
山の日の定かに沈む桐の花★★★

●小西 宏
柔らかな五月の風に白躑躅★★★
葉擦れして風香しき薄暑かな★★★
水音の静かに聞こえ若楓★★★★

●多田有花
藤の花下がりし下を女学生★★★★
窓開けてお昼ごはんや夏隣★★★
オートバイ集団でゆく黄金週間★★★

●桑本栄太郎
木洩れ日の大き葉影や朴の花★★★★
降りつもるものの数多の暮春かな★★★
新月の朧となりて雲の影★★★

●高橋秀之
木漏れ日の眩しさの中蝶々舞う★★★★
木漏れ日のちらちらする中にまぎれるように飛ぶ蝶々。すずやかな光景だ。(高橋正子)

店先は花いっぱいの商店街★★★
散歩道葉桜の陰で一休み★★★

●黒谷光子
山峡の茶わん祭りにバスの列★★★
新緑を映す渓流光りつつ★★★★
一瞬の光り残して初燕★★★

●古田敬二
今年竹夕日が当たる高さまで★★★
俎板に新玉ねぎは水こぼす★★★★
ズミの花夕べの風に白く揺れ★★★

●佃 康水
摘みし葉の光り溢るる茶籠かな★★★★
茶籠いっぱいに摘まれた若いお茶の葉はつやつやとして、光を溢れるように反射させる。まぶしいばかりの茶葉の光に接すると気持ちが明るくなる。(高橋正子)

絣の子揉む新茶の香園に満ち★★★
お手植えの菩提樹放つ若葉光★★★

5月1日~3日

5月3日

●小口泰與
入口は連翹明かりの隧道ぞ★★★★
隧道を抜けると青葉若葉かな★★★
門前にしたたか散りし蘇芳かな★★★

●迫田和代
春日傘たたんで木陰の人となる★★★★
日傘がいるような春の日は、初夏のような陽気。木陰に入ればほっとする。一読、さわやかな風が吹く心地。(高橋正子)

目の前の光を裂いた初燕★★★
雨やんで新緑鮮やか森の道★★★

●佃 康水
リュック置き若葉の丘へ子ら散りぬ★★★★
遠足の子どもたちであろう。リュックを置き、一目散に若葉の丘へ散っている。子どもたちも自由で、若葉もまぶしい。(高橋正子)

螺旋坂彩とりどりに躑躅燃ゆ★★★
ハンカチの花や夕日へ揺れ止まず★★★

●黒谷光子
風の出て飛び立ちそうに花豌豆★★★
風の午後花豌豆の揺れどおし★★★
細き蔓宙に巻き上げ貝母百合★★★★

●多田有花
遠足の小学生に風光る★★★★
八十八夜大阪のビルの眩し★★★
急がずに行くことの良し春惜しむ★★★

●桑本栄太郎
木洩れ日の風のみどりや聖五月★★★
葉の裏の白き風ぬけ五月来る★★★
みどり為す山河憲法記念の日★★★★

●河野啓一
初夏のよき日生まれし法(のり)の日ぞ★★★★
日本国憲法が施行された日は5月3日の風薫る初夏のよき日。この日を憲法記念日として祝える日本国民は、幸せである。(高橋正子)

湯上りの団扇なつかし頃となる★★★
干し河豚をあぶり思うは旅のこと★★★

●小西 宏
艶やかに草匂いする薄暑かな★★★
ひとすじの青すがすがし韮の花★★★★
葉桜に一直線の空がある★★★

●古田敬二
アカシアの棘まだやわらかき若葉(信之添削)★★★★
ワサワサと枝ごと揺れる柿若葉★★★
夕暮れの低きに広がるウマゴヤシ★★★

5月2日

●小口泰與
花ふぶき天竜川の満々と★★★
諏訪湖より発する川や桜魚★★★★
鳥鳴くや水田にはゆる桃の花★★★

●河野啓一
茶畑も八十八夜青々と★★★★
八十八夜の茶摘みは唱歌にも歌われて、茶摘みの景色が思い浮かぶ。八十八夜の茶畑が青々として、いよいよ茶摘みのシーズンを迎えて、心地よい5月の風景だ。(高橋正子)

柿若葉透かしてそそぐ陽の光★★★
柿若葉カシューナッツもねじれおり★★★

●祝恵子
藤の花棚にまつわり空青し★★★
店舗みな藤鉢花を咲かせおり★★★
春深し土産に抹茶入りの酒★★★★

●川名ますみ
壕向こう白詰草にけぶる芝★★★★
次の角今年もきっと鯉幟★★★
青空に水木の花の白浮ける★★★

●桑本栄太郎
こでまりの花の小枝や丘の風★★★
見上げれば葉影となりぬ朴の花★★★
赤き穂の高く日当たる酸葉かな★★★★

●小西 宏
裏崖の茂みに明かし藤の花★★★
野良猫の首に躑躅の花飾り★★★

水に立つ緑明るし黄の菖蒲★★★★
黄菖蒲は花菖蒲とはまた別のもので、水から抜け出て立つ葉は、一段と明るい緑だ。そこに単純に黄色の花が咲く。涼しい感じの句だ。(高橋正子)

●古田敬二
半分に分ければ香る蓬餅★★★
ネギ坊主高低ありて風に揺れ★★★
蓬の香強き香りの餅を食う★★★★
蓬餅で一番うれしいのは、やはり蓬の香り。蓬のしっかりと匂う蓬餅は、季節の餅を味わったという満足感がある。その気持ちを正直に詠んでいる。(高橋正子)

5月1日

●小口泰與
あけぼのの野川に沿いし黄水仙★★★
笛の音やみつばつつじの池明かり★★★★
竹林に古木一本八重桜★★★

●多田有花
絵具箱に色のとりどり春深し★★★★
絵具箱にあるとりどりの色は、明るい日差しや光にその色が印象付けられる。「春深し」絵具箱が絵になった。(高橋正子)

空映す川は海へと春惜しむ★★★
パンケーキに蜂蜜とろり暮の春★★★

●桑本栄太郎
駅ごとにつつじ燃えおり阪急線★★★★
八重なれど溝に散り敷く花の屑★★★
軒端まで土堤の明かりの花菜かな★★★

●黒谷光子
青空の光り受け止め花水木★★★
花水木薄紅を刷き空へ向く★★★★
ながながと藤房土手の一木に★★★

●小西 宏
軒潜るツバメ円弧の雨上がり★★★
老農の結びたる棚豆の花★★★
新しき五月や白きハナミズキ★★★★
「新しき五月」が、いかにも新鮮。これは「聖五月」と表現される感覚かもしれないが、自分の感じ取った感覚を吟味している。白いミズキが、光を反射して、「新しき」を印象付けている。(高橋正子)

4月30日

●小口泰與
利根の水まさるや田畑つばくらめ★★★★
うぐいすや靄のおおとつ梓川★★★
黄帝の絆をつぐや鳥雲に★★★★

●祝恵子
チューリップ小雨は森に去りました★★★★
森の近くのチューリップ畑。あまりにもかわいらしいチューリップに雨は少しだけ降って森へ去っていった。ここにメルヘンが生まれた。(高橋正子)

春紫苑ゆっくり水は田に流れ★★★
ポピー揺る丘一周を囲み咲き★★★

●古田敬二
山からの水音聞きつつ摘む蕨★★★★
持ち帰る香る山菜籠いっぱい★★★
山吹に触れて旅ゆく美濃路かな★★★

●黒谷光子
八重桜辻の地蔵の天蓋に★★★★
筍の包まれ湿る新聞紙★★★
到来の春の筍みずみずし★★★

●桑本栄太郎
木洩れ日の葉影に憩い花楓★★★
草むらのからすの豌豆うすき莢★★★
想い出の走り過ぎ往き四月果つ★★★★

●川名ますみ
こでまりの団地にあふれ風白き★★★★
木の芽いろ銀杏並木のどの枝も★★★
川岸に吹き揃いたる銀杏の芽★★★

●河野啓一
雨上がり水滴らせ新樹かな★★★★
ハナミズキ白花ことに輝ける★★★
四月尽リハビリ体操ままならず★★★

4月29日

●小口泰與
さえずりや醜草ふゆる花時計★★★
林泉に群鳥あそぶ花蘇芳★★★
ちょうちょうや棚田に水のまんまんと★★★★

●河野啓一
葉桜の並木つややか風の道★★★★
アイリスの今年もおだやか咲き上る★★★
チャールストン躍るごとくにバラの花★★★

●古田敬二
初蛙田んぼは美濃の山映す★★★★
桜散る一日三度来るバスに★★★
筍のごつりと当たる靴裏に★★★

●上島祥子
鯉のぼり仲良く泳ぐ水鏡★★★★
田水が張られ、その近くに民家があるのか。ま鯉、ひ鯉、子供の鯉とそろって吹かれている様が水に映って気持ちよさそうだ。(高橋正子)

春コートクレープ食べるテラス席★★★
ガレットの焼ける香りや春盛り★★★

●桑本栄太郎
みどり為す雨の山河や昭和の日★★★★
雨音のひと日暮れゆき春惜しむ★★★
黄金週間おとこ厨の留守居かな★★★

●佃 康水
筍を茹でつつ糠を噴き零す★★★★
筍を茹でるとき油断すると灰汁を抜き、柔らかくするために加えた糠が吹きこぼれる。鍋や釜の縁に吹きこぼれた糠がこびりつくこともある。しかし、こういう事に季節の暮らしがある。(高橋正子)

足場組むパイプの音や若葉寺★★★
膨れ寄す波へこぞりて松の芯★★★★

●小西 宏
マンションの庭に鶯こだまする★★★
水の音に小さく揺れて春紫苑★★★
雨雲の垂れ来て躑躅紅の濃し★★★★

●多田有花
にぎやかにラーメンすする春の山★★★
山下りて春の夕べの薬草風呂★★★
緑いきいき晩春の雨上がり★★★★

●高橋秀之
電車待つ夜の駅舎に初燕★★★★
初燕を見かけるのは、たいてい空の下だが、作者はたまたま電車を待っている夜の駅舎で見かけた。さっそうと飛ぶ燕ではないが、駅舎の灯に照らされた燕も初燕である。(高橋正子)

とんとんと窓を打つ音春の雨★★★
春寒し小雨の通夜の帰り道★★★

●黒谷光子
仰向けもうつ伏せもあり落椿★★★
足止める三つ葉躑躅の花に葉に★★★
久に繰る古きアルバム春の夜★★★

4月28日

●古田敬二
蕨摘む朝露繁き野に入りて★★★★
蕨採りもそれに詳しい人は、朝露がびっしりと降りた時間帯に摘み取るのだろう。蕨には初夏のすがすがしさがある。(高橋正子)

蕨すくっと馬頭観音苔むして★★★
朝露をこぼして蕨手折りけり★★★

●小口泰與
初つばめ浅間雪解となりにけり★★★
高嶺雪映す水田や桃の花★★★★
百千鳥捨てかねている座椅子かな★★★

●河野啓一
朝採りのレタスサラダも新緑に★★★★
街角を曲がれば眩し花ミズキ★★★
春雨の窓辺に持ち出す碁盤かな★★★

●桑本栄太郎
歌声の園の垣根や木香薔薇★★★★
木香薔薇の垣根をめぐらす園。その園から聞こえる歌声が木香に越えてきて、優しくきよらかだ。(高橋正子)

藤色の風を浴び居り藤の棚★★★
すかんぽの想い出つなぐ赤き穂よ★★★

●黒谷光子
椿落つ戦国城主の自刃の地★★★
古戦場眼下に霞む竹生島★★★
のどけしや水車の廻る宿場町★★★

●祝恵子
牡丹咲く雑木林を抜けた寺★★★
朝は粥窓辺に二本のチューリップ★★★★
鯉のぼり空も水面も泳ぎおり★★★

4月27日

●高橋秀之
尾びれ張り生簀に一尾桜鯛★★★★
一陣の風とともに草芳しく★★★
春の草踏んでも踏んでもやわらかく★★★

●小口泰與
花よりも土にしたしき里人よ★★★
したたかに池に落ちたる椿かな★★★
青空に七堂伽藍初つばめ★★★★

●上島祥子
咲き始む牡丹置るる誕生会★★★★
牡丹の季節に生まれた人の誕生日。牡丹の似合う年齢の人だろう。華やぎと落ち着きのある誕生会。(高橋正子)

アネモネのうきうき揺れる代休日★★★
八重桜花びら散り散り坂の先 ★★★

●桑本栄太郎
陸橋の下はバス道胡桃咲く★★★★
陸橋に上れば、胡桃の花がすぐそばに見える。バス通りの並木の胡桃だろうが、洒落た街並みだ。(高橋正子)

木洩れ日の揺れる葉影や夏隣★★★
生垣の日蔭となりぬ著我の花★★★

●多田有花
遠き田に水の光りし遅桜★★★
頂まで日陰躑躅のトンネルを★★★
チューリップいつも日差しの真ん中に★★★★

●黒谷光子
雑木山芽吹きの時をはなやかに★★★★
前栽の名なき草の芽毟らるる★★★
娘の家の近づき背の山笑う★★★

●小西 宏
坂道に色替え躑躅咲き満つる★★★★
大開の躑躅にもぐる蜂の尻★★★
春風の糸に青虫腰屈む★★★

4月26日

●小口泰與
うぐいすや山を賜わる水鏡★★★
蘇芳咲くしじまの中の羽音かな★★★★
おちこちの畑に人居る百千鳥★★★

●迫田和代
春潮や終生想う馬関の海★★★
山道の花御堂前花少し★★★
遠くから春風吹いて波静か★★★★

●黒谷光子
湖よりの風野漆の低きにも★★★★ 野漆は、漆のように木ではなく草。湿り加減の土地に群生して育つ。花は若葉のような黄緑色で花よりも葉のような印象を受ける。湖の色を分けてもらったような野漆の花が風のそよぐ、湖のほとりの光景。(高橋正子)

野漆の触れてはならぬ黄のいとし★★★
野漆の湖辺の森のここかしこ★★★

●桑本栄太郎
降りつもるものの数多や春惜しむ★★★
竹筒の花壇に五色やチューリップ★★★
春暑し午後の始業のチャイムかな★★★

●河野啓一
四月尽季の過ぎゆくを惜しむかな★★★
葱坊主葉先にそれぞれ宿るとは★★★
蛍烏賊ざっと煮汁に投げ入れて★★★★

4月26日(土)

★囀りに子の片言の鳥を呼び  正子
鳥たちの明るい囀りのもと、何とも愛らしいお子様の姿に、母としての幸せを感じます。心あたたまる和やかな光景に、春の喜びがあふれます。(藤田洋子)

○今日の俳句
春光につつまれし身のときめきよ/藤田洋子
この句を読むと、もの静かで明るい若い母親の姿が浮かぶ。うす紫の丸いヨークのセーターが、春光の中で、肩までの黒髪に映えていた。(高橋正子)

○石楠花(しゃくなげ)

[石楠花/横浜日吉本町・金蔵寺]      [石楠花/横浜箕輪町・大聖院]

★石楠花や朝の大気は高嶺より/渡辺水巴
★空の深ささびし石楠花咲きそめぬ/角川源義
★石南花や水櫛あてて髪しなふ/野沢節子
★ほぐれんとして石南花の大蕾/岡田日郎
★石楠花の頃は過ぎたり咲き残り/清崎敏郎
★石楠花の色濃くなりぬ朝の雨/緒方 輝

 シャクナゲ (石楠花、石南花) は、ツツジ科ツツジ属 (Rhododendron) 無鱗片シャクナゲ亜属、無鱗片シャクナゲ節の総称である。主に低木だが、高木になるものもある。また、日本ではその多くのものがツツジと称される有鱗片シャクナゲ亜属のものを欧米では Rhododendron と呼んでいるので注意が必要である。ただし、有鱗片シャクナゲのなかでも、ビレア(マレーシアシャクナゲ)の仲間は、カワカミシャクナゲのように、日本でもシャクナゲと呼んでいる。
 Rhododendron としては主として北半球の亜寒帯から熱帯山地までのきわめて広い範囲に分布し、南限は赤道を越えて南半球のニューギニア・オーストラリアに達する。特にヒマラヤ周辺には非常に多くの種が分布する。いずれも派手で大きな花に特徴がある。花の色は白あるいは赤系統が多いが、黄色の場合もある。
 シャクナゲは葉にロードトキシンことグラヤノトキシンなどのケイレン毒を含む有毒植物である。摂取すると吐き気や下痢、呼吸困難を引き起こすことがある。葉に利尿・強壮の効果があるとして茶の代わりに飲む習慣を持つ人が多く存在するが、これはシャクナゲに「石南花」という字が当てられているため、これを漢方薬の「石南(オオカナメモチ)」と同一のもの(この2つに関連性はない)と勘違いしたためであり、シャクナゲにこのような薬効は存在しない。シャクナゲは常緑広葉樹にもかかわらず寒冷地にまで分布している。寒冷地に分布する種類のなかには、葉の裏側を中にした筒状にして越冬するハクサンシャクナゲなどがある。日本にも数多くの種類のシャクナゲが自生しているが、その多くは変種であり、種のレベルでは4種または6種に集約される。このほか、園芸用品種として数多くの外国産のシャクナゲが日本に導入されており、各地で植栽されている。

○生活する花たち「都忘れ・おだまき・卯の花」(東京浅草)

4月25日(金)

 小石川植物園
★たんぽぽの草の平らに散らばりぬ  正子
春の野を代表するたんぽぽは日が出ると開き、曇りの日や夜になると閉じる。そのたんぽぽが沢山野に咲いている素敵な景ですね。有難う御座いました。(小口泰與)

○今日の俳句
あえかなるばらの新芽や風の中/小口泰與
ばらの新芽に「あえか」な表情を見た。かわいらしく、やわらかく、傷つきそうな新芽が風の中に伸びてきた。(高橋正子)

○木香薔薇(もっこうばら)

[もっこうばら/横浜日吉本町]

★夕風や白薔薇の花皆動く/正岡子規
★薔薇深く ぴあの聞ゆる 薄月夜/正岡子規
★朝晴れて木香薔薇に滴あり/819maker
★木香バラ気高く庭を囲いをり/819maker
★黄モッコウお印の所以悟りけり/光賢
★近づいて 木香薔薇の 薫り嗅ぐ/isamu
★棘なしの蔓薔薇咲いて溢るる日/ROSE・MARRY
★手折りしは刺なき薔薇の黄木香/senior21

 モッコウバラ(木香茨、木香薔薇、学名:Rosa banksiae)は、中国原産のバラ。黄モッコウ(ロサ・バンクシア・ルテア)は秋篠宮家第一女子・眞子内親王のお印である。
学名は植物学者ジョゼフ・バンクスの夫人にちなむ(命名はウィリアム・エイトン)。
 常緑つる性低木。枝には棘がないため扱いやすい。花は白か淡い黄色で、それぞれ一重咲と八重咲があり、直径2-3cmの小さな花を咲かせる。開花期は初夏で一期性。黄花の一重や白花には芳香はある。一般的にモッコウバラといった場合には、黄色の八重咲を指す。性質は強健で、病気も普通のバラと比べると少ない。成長も早く、けっこう大きくなるので地植えにはそれなりのスペースが必要とされる。野生種の起源は不明である。ノイバラの台木に接ぎ木してもよいが、挿し芽でも簡単に増やすことができる。花芽の形成時期が8月末までに行われるため、それ以降に剪定をすると、翌年の開花数が少なくなってしまう。基本的には剪定はしない。行灯仕立てで販売されることがあるが、上述のように成長は極めて速く大きくなるので栽培は難しい。また、白花は黄花より開花が若干遅く、芳香性を持ってはいるが黄花ほど多花性は無い、成長も黄花に比べるとやや遅い。
 庭園などで、アーチやフェンスなどに用いる。生育が早く、大量に花をつけるため、大きなモッコウバラの開花時は圧巻である。バラの短所である棘がなく、病気、害虫にも強くバラとして理想的な性質を持っているが、一方、一期咲であること、黄花の八重咲に芳香がないこと、白と黄色しか花色がない事などの短所もある。

◇生活する花たち「藤①・藤②・石楠花」(横浜箕輪町・大聖院)