8月11日~8月20日

8月20日(4名)
小口泰與
さもあらばあれ湖の面に秋日差す★★★
とんぼうの岸辺の草を弓なりに★★★★
秋薔薇や虫の飛び交う朝の庭★★★

多田有花
飛び交わす帰燕となる日近き朝★★★
今朝曇り長き残暑の落ち着きぬ★★★
白杖の若者前をゆく初秋★★★

廣田洋一
クレーンの伸び行く先に秋の雲★★★
手入れ良き庭を揺るがす秋桜★★★
一房の葡萄分け合う兄妹★★★★

桑本栄太郎
秋雨の真夜に聞く音哀しかり★★★
秋蝉のぴたり鳴き止む昼下がり★★★
うそ寒や路面濡れゆく午後の雨★★★
「うそ寒」は、晩秋の季語です。(髙橋正子)
8月19日(4名)

小口泰與
秋蝉の声の高きや森の中★★★
今朝の森秋翡翠の揶揄に覚む★★★
眼間に秋の夕焼奇岩かな★★★

廣田洋一
底の石くっきりと見え秋の川★★★
野の光集めつくせし青葡萄★★★
英字紙の袋のかかる梨畑★★★

桑本栄太郎
落蝉のあまた鋪道の木蔭かな★★★
買物の急ぐ家路や秋暑し★★★
昼前のぴたりと止まる蝉の声★★★

多田有花
朝の田の上を群れ飛ぶ赤とんぼ★★★★
えのころや風と光にころころと★★★
秋茄子のつややかな丸さ愛でにけり★★★
8月18日(4名)

廣田洋一
八つ切りの西瓜を一つ買いにけり★★★
銀やんま二匹飛び交う川の縁★★★
さくさくと梨噛む音や一人の夜★★★

小口泰與
庭刈られ虫のさ迷う夕間暮れ★★★
身にしむや彩色褪める浅間山★★★
山の沼秋色褪める夕間暮れ★★★

多田有花
稔りゆく田水に映る空の色★★★
栗の毬まるまるとしてまだ青き★★★★
秋の向日葵寄り添いて咲きぬ★★★

桑本栄太郎
それぞれの家族集いぬ盆の家★★★
名乗り出で朝より鳴きぬ法師蝉★★★
天よりの息吹か風の稲穂かな★★★
 
8月17日(4名)

廣田洋一
秋茄子の取り忘れ有り道の端★★★
引き売りの車を停めてカンナかな★★★
コスモスや入乱れたる赤と白★★★

小口泰與
やや寒や猫のさ迷う利根河原★★★
稲妻やチワワ忽然飛び上がり★★★
子を育て帰燕の準備怠るな(原句)
「帰燕の準備怠るな」に換喩が含まれている考えても、無理があります。(髙橋正子)
子を育てし帰燕よ準備怠るな(正子添削)

多田有花
露持ちて稲穂垂れ初めし朝に★★★★
風受けて田に舞い踊る鳥脅し★★★
田の縁に群れ集いたる稲すずめ★★★

桑本栄太郎
水平線の群青色や盆の海★★★★
列車待つ無人駅舎や葛茂る★★★
ひるがえる葉裏白きや盆の風★★★
8月16日(3名)
小口泰與
風強き沼に動かぬ秋翡翠(原句)
翡翠が止まっている具体的な場所を示すとよいと思います。(原句)
風強き岩に動かぬ秋翡翠(正子添削例)

蜻蛉の飛び交う沼や岩に亀★★★
様ざまな恋の鳥語や秋の森★★★

廣田洋一
鳴声のとぎれとぎれに秋の蝉★★★
切り売りの西瓜きれいな肌を見せ★★★

雨風も新涼誘う朝かな(原句)
雨風の新涼誘う朝かな(正子添削)

多田有花
新涼のなかで珈琲を淹れる★★★
「新涼のなかで」は、「新涼に」でいいのではないかと思います。(髙橋正子)

残暑より逃れて北東の部屋に★★★

名前入りの朝顔の鉢並びおり(原句)
名をつけて朝顔の鉢並びおり(正子添削)
8月15日(2名)
多田有花
涼新た夜明けの窓を入る風に★★★★
八月の部屋のがらんと心地よし★★★
終戦日地球の上にも訪れよ★★★
小口泰與
広き海秋の鴎の強く舞う★★★★
とんぼうの水面つんつん沼の面★★★
とんぼうの水面を舐めし山の沼★★★
8月14日(3名)
小口泰與
妻待ちて心さすらう新酒かな★★★
外灯の影にさまよう草雲雀★★★
日輪の褪むる妙義や秋の雲★★★

多田有花
上弦の月の軒端に宵の風★★★★
初盆や位牌仏壇なけれども★★★
名も知らぬ先祖の写真盂蘭盆会★★★

廣田洋一

迎え火やせっかちな母先頭に★★★
迎え火や献杯したるご仏前★★★
目の前の建物壊され盆の月★★★

8月13日(3名)

小口泰與
座してすぐ木立の影や秋の午後★★★★
初鴨の流石魚を捕らえたり★★★
初紅葉さすが赤城のすそ野かな★★★

多田有花
八月の風に身を任せし真昼★★★
カートにはおのおの供花盆用意★★★
宵の空月の日ごとに育ちゆく★★★

廣田洋一
幼き子婆の横にて踊りおり★★★
踊り子の列あでやかに町流す★★★
白粉花花壇の縁を取りており★★★
8月12日(3名)
小口泰與
夕方の縁台将棋子と父と★★★
翡翠や目薬差して湖の岸★★★
大岩魚釣上げすべて忘れたり★★★

多田有花
涼風至洋服ダンスを解体す★★★
山の日や播磨の山は快晴に★★★★
台風の余波なる風の強く吹き★★★

桑本栄太郎
朝涼の一枚羽織る未明かな★★★
色いろと点検ありぬ盆帰省★★★
集う日の連絡密に盆帰省★★★
8月11日(3名)
小口泰與
翡翠の沼をくるりと回りけり★★★
捨て舟の水に孑孑数多かな★★★
今日の朝風の中なる百日紅★★★

廣田洋一
縁側に子らの並びて西瓜食む★★★
西瓜の皮浅漬けにして食卓に★★★
初秋の光りとなりて堰落ちる★★★★

桑本栄太郎
句集入れ薬も入れて帰省かな★★★
あおぞらの雲の間や秋気澄む★★★★
クレープのシャツとすててこ円朝忌★★★

自由な投句箱/8月1日~8月10日

※当季雑詠3句(夏の句・秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/8月1日~8月10日

8月10日(2句)

★山の日や雲に隠され富士の山/廣田洋一
「山」と言えば日本一の高さと優美な姿を誇る富士山が誰にも思い浮かぶ山だろう。洋一さんは、富士山の見えるところにお住まいだ。山の日の今日は雲に隠された富士の山で、残念に思うだろうが、目裏には、くっきりと富士山の姿が見えている。(髙橋正子)

★新涼の風乾きおり野に街に/桑本栄太郎
新涼の風のさわやかさを、「風乾き」と感じた感覚が新しい。湿潤な空気から乾いた空気に変わったことで新涼の空気となったのだ。野に街に新涼の気が満ちている。(髙橋正子)
8月9日(1句)

★窓を拭きおれば秋燕近く飛び/多田有花
「秋燕」(しゅうえん)という音がきれいで、拭かれてきれいな窓に添えられて、さわやかな透明感のある句になっている。(髙橋正子)

8月8日(2句)

★赤とんぼ甍の上を群れて飛ぶ/多田有花
「赤とんぼ」と「甍」に日本の原風景が詠まれて、だれにも郷愁をさそう句になっている。(髙橋正子)

★新涼の雲育て居り峰の上/桑本栄太郎
「新涼の雲」がすっきり、さわやかでいい。峰の上の空に新涼の雲が「育て」られている。「育て」に読み手は雲の姿をいろいろ想像できる。(髙橋正子)
8月7日(1句)

★窓開けて立秋の風存分に/多田有花
暦の上の秋と言われる立秋だが、よく観察すれば、猛暑と言われながらも、太陽の高度は確実に変わり、日差しも違う色に見えて来る。窓を大きく開けて風を存分に入れると、爽やかな気持ちになる。(髙橋正子)
8月6日

該当句無し
8月5日(1句)

★駅前に雲水の立つ夏の果/廣田洋一
「雲水」は禅宗の修行僧の事さすが、修行のひとつとしての托鉢がある。托鉢は寺を出て市街地に出向き、経文を唱えながら食べ物や金銭を鉢で受け取る修行である。この雲水は、こういった托鉢僧のことだろう。「夏の果」は、いよいよ夏も終わり、朝夕は涼しさを覚え、心が秋へ傾くとき。そういうとき、托鉢の雲水を駅前で見かけたときの心に動くものがある。(髙橋正子)

8月4日(2句)

★水馬寄せ来る波に抗えり/廣田洋一
水馬と言えば、水面をすいすい移動している姿をよく見かける。この句ではそうではなく、風が水面を波立たせているのか、その波に必死で抗っているようだ。そんな水馬への驚きとまた、親しみが感じられる句。(髙橋正子)

★白壁を朝顔の紺のぼりきる/川名ますみ
白壁と朝顔の紺色の対比が目にくっきりとして、涼しそうだ。「のぼりきる」でずいぶん高いところまで咲いているのだろう。目を楽しませてくれている。(髙橋正子)

8月3日(1句)

★鉢植えの胡麻の背丈や秋近し/桑本栄太郎
胡麻は普通畑で栽培されるが、それを鉢植えで育てて、胡麻を収穫しようとしているのが面白い。胡麻の丈は意外と高く、ずいぶんと伸びていることだろう。(髙橋正子)
8月2日(1句)

★未明より威し銃鳴る山の里/桑本栄太郎
「未明」が山の里の露けさを感じさせている。人もいないところで、突然に鳴る威し銃が、空気だけでなく、稲穂までも揺らすようで、豊作を思わせる。(髙橋正子)

8月1日(1句)

★夜の海見に行く浴衣白々と/廣田洋一
「夕涼み」と言う言葉も、クーラーがどの家庭にも取り付けられて、聞かなくなったが、いまも涼しい夜の海へ浴衣姿で出かけるのもいい。夜の暗がりに白地の浴衣が浮かび上がるのが印象的。(髙橋正子)

8月1日~8月10日

有花さんへ
8月4日、8月6日の有花さんの句についてのご質問の件、お答えしましたので、その箇所をご覧ください。(髙橋正子)
8月10日(5名)
小口泰與
大滝を支える巌や蒼き空★★★
翡翠のさざめく沼の朝かな★★★
青空の枝の川蝉さざめきて★★★

多田有花
新秋の朝の散歩をする人よ★★★
ゆで卵チンとゆであげ秋の昼★★★

水飲めとアプリに言われる残暑かな★★★

廣田洋一
立秋の師の句を愛でてぼんぼり祭★★★
山の日や雲に隠され富士の山★★★★
ゆるゆると姿を変える秋の空★★★

桑本栄太郎
秋めくと眼にもさやかに風立ちぬ★★★
新涼の風乾きおり野に街に★★★★
赤々と団地を取り巻くさるすべり★★★

弓削和人
散らばりし引越荷物秋の宵★★★
稲光まったき音のなき世かな(原句)
「まったき」は「音」を形容しています。「まったき音」とはどんな音でしょうか。「音がまったく無い」(稲光だけが光っている)の意味なら以下のようになります。また、「世」は、この世、世界を指しますが、比較的長い時を指すので、「世界」にしました。(髙橋正子)
稲光音のまったくなき世界(正子添削)

たしかなる川瀬の堤夕の霧 (原句)
夕霧に川瀬の堤たしかなる(正子添削)
8月9日(4名)
廣田洋一
秋の蚊のふららとまとひつきにけり★★★
秋の宵人波くぐり絵ぼんぼり★★★
残暑中ボールを蹴る子が一人★★★

多田有花
早朝の空高く澄み長崎忌★★★
窓を拭きおれば秋燕近く飛び★★★★
秋蝉に混じり朝刊取り出す音★★★

小口泰與
飛ぶときは鳴き鳴き翔ける翡翠よ(原句)
翡翠の鳴き鳴き翔ける〇〇〇〇〇 とするとよいと思います。(髙橋正子)

背の高き枝に先駆く薔薇の花(原句)
背の高い枝が伸びるのはいつの時期でしょうか。その時期をいかすとよいと思います。
背の高き枝に先駆く秋の薔薇(正子添削例)
幸わうは翡翠沼の対岸に★★★ 
桑本栄太郎
大き目の腹巻着ける涼新た★★★
新涼や風吹き抜ける八畳間★★★
うそ寒や巨大地震の報走る
「うそ寒」は晩秋の季語です。ほかの季語を考えてもいいのではないでしょうか。(髙橋正子)
8月8日(4名)
小口泰與
雷連れて逃げ込む先は幼稚園★★★
我が生は薔薇とまみれて行くとせる★★★
鳥交る瞬きの間に飛びにける★★★

廣田洋一
三日月の色濃く沈む西の空★★★
新しきモールを飾る花カンナ★★★
風もなく残暑厳しき朝かな★★★

多田有花
光るもの光らせ秋を迎えおり★★★
赤とんぼ甍の上を群れて飛ぶ★★★★
おしろいを咲かせる県営団地なり★★★

桑本栄太郎
早朝の初秋風の窓辺かな★★★
階段の階(きざはし)ごとに蝉の落つ★★★
新涼の雲育て居り峰の上★★★★
8月7日(4名)
小口泰與
翡翠の葉裏にこもる朝かな★★★
こやる身に夏掛け布団掛けたまへ★★★
真夜中の夏川超ゆる雨の音★★★

多田有花
窓開けて立秋の風存分に★★★★
われを見て燕飛び立ち今朝の秋★★★
秋立つやサッシ隅々まで掃除★★★

廣田洋一
唐辛子青きがままに垂れており★★★
立秋の風にあたりて二歩三歩★★★
立秋の期待もむなし猛暑まだ★★★

桑本栄太郎
さやさやと寝床に風の今朝の秋★★★
ごみ出しの朝の静寂や涼気満つ★★★
地獄めくつづく暗さや蝉の穴★★★
8月6日(4名)
小口泰與
頼みたる雨雲頭上日照草★★★
戯れに風が連れ来る極暑かな★★★
忽然のたばしる雨や青葡萄★★★

多田有花
遠雷の風受けつばめ奔放に★★★
「遠雷の風」が感覚的につかみにくいのが難点です。「遠雷」を切り離すとよいでしょう。(髙橋正子)
遠雷や風受けつばめ奔放に(正子添削例①)
切字「や」に抵抗があれば
遠雷に風受けつばめ奔放に(正子添削例⓶)

二の丑は静かなるかな秋隣★★★
戦場の主役はドローン原爆忌★★★

廣田洋一
日を浴びて色濃くなりぬ日日草★★★
蝉の声ひと際高く夕間暮★★★
いつの間に閉じてしまいぬ松葉牡丹★★★

桑本栄太郎
さやさやと夜気の入り来る涼夜かな★★★
寝床にて夢やうつつの法師蝉★★★
背景に炎をかざし原爆忌★★★
8月5日(4名)
小口泰與
谷蟇の声の高きや山の沼★★★
手のひらに干梅ひょいと頂きし★★★
噴煙の棚引く先や百日紅★★★★

多田有花
陽が昇る時間方角秋近し★★★
歳時記の傷みを直す晩夏かな★★★
風通る場所に座りぬ夜の秋★★★

廣田洋一
駅前に雲水の立つ夏の果★★★★
一日に一本のバス木槿咲く★★★
道の端白く揺れたる花木槿★★★

桑本栄太郎
目覚め居て夢のあまたや熱帯夜★★★
空蝉の何かを語る寡黙かな★★★
雨あがり又も鋪道の灼け来たる★★★

8月4日(5名)
小口泰與
翡翠の声に誘われ山の沼★★★
川蝉の掴む梢の揺れにけり★★★
手のひらの山女の生の鼓動かな(原句)
手のひら山女の生の鼓動かな(正子添削)

多田有花
日盛を帽子目深に被りゆく★★★
「目深」で被っていることはわかるので、「被りゆく」が惜しいです。
日盛を帽子目深に自転車で(有花改作)
「で」が句を散文的にしています。「で(de)」の音は使い方によって、汚い音になります。こういったことも気を付けるといいと思います。(髙橋正子)
日盛を帽子目深に自転車に(正子添削)

扇風機手探りで点けまた眠る★★★
大夕焼け明日の灼熱約束す★★★

廣田洋一
百日紅木々は緑に光りおり★★★
時かけて食べる店先かき氷★★★
水馬寄せ来る波に抗えり★★★★

川名ますみ
白壁を朝顔の紺のぼりきる★★★★
西瓜絞りグラスへ果汁あかあかと★★★
硝子器に西瓜まっかに搾らるる★★★

桑本栄太郎
じゅわじゅわと今朝の序曲や蝉の声★★★
朝仕事終えて噴き出す汗しずく★★★
突風と音に目覚めりはたた神★★★
8月3日(5名)

小口泰與
翡翠の忽と現れ水面割る★★★
花合歓や鳥をかくまう葉の盛★★★
菓子選ぶ子らの笑顔や夏の市★★★

多田有花
寝苦しき夜続きおりしずの女忌★★★
救急車走りてやまぬ熱帯夜★★★
蝉声に囲まれ朝の掃除かな★★★

桑本栄太郎
さまざまな夢を見て居り熱帯夜★★★
気合入れ買物へ出る炎暑かな★★★
鉢植えの胡麻の背丈や秋近し★★★★

廣田洋一
点々と底紅光る小道かな★★★
紅色の透き通りたる百日紅★★★
冷酒と麦酒に別れ暑気払い★★★

弓削和人
鬼百合の花粉こぼさぬように垂れ★★★
「花粉」 に色などの具体性があるといいです。(髙橋正子)
アマガエル跳ねて凝視のさきはずす★★★
「さき」に具体性があれば、アマガエルのいる場所がわかります。(髙橋正子)

泳ぎ子の白き歯並ぶ湖水浴 ★★★
「並ぶ」が問題です。(髙橋正子)
3句とも視点や句意はいいです。(髙橋正子)
8月2日(5名)

小口泰與
棚引くは浅間の煙百日紅★★★★
谷蟇の大あくびかな沼の風★★★
忽然と水面を割し牛蛙★★★

多田有花
今朝生れし蝉もこの世の陽を浴びる(原句)
「蝉も」の「も」によって、この句が理屈の句になっています。写生の句にするとよいと思います。(髙橋正子)
今朝生れし蝉がこの世の陽を浴びる(正子添削)

夏の風吹き抜けてゆくホームに立つ★★★
秋ほのか土用半ばに吹く風に★★★

廣田洋一
江の島を望む窓辺のソーダ水★★★★
時により言葉を変える時鳥★★★
地下広場出でたる町の爆暑かな★★★

弓削和人
避暑の湖避暑の親子となりにけり★★★
夏座敷奥間に誰か居るような★★★
梅雨あげる床にひやりの裸足かな
「梅雨あげる」の意味がわからないのですが。(髙橋正子)

桑本栄太郎
未明より威し銃鳴る山の里★★★★
朝よりの冷房入れる厨かな★★★
家路より戻り噴き出す汗一斗★★★
8月1日(5名)

多田有花
七月を送る鏡を拭きあげて★★★
日傘で防ぐ戦くほどの日差し★★★
銀色のピアス光らせて真夏★★★

廣田洋一
さあ行くか声に出したり炎天下★★★
炎天下庭に飛び来る鳥もなき★★★
夜の海見に行く浴衣白々と★★★★

桑本栄太郎
仰のけの腹の白さや蝉落ちる★★★
さやさやと窓より風の涼夜かな★★★
色いろな想い出ありぬ八月に★★★

小口泰與
翡翠にさやる上枝の細きかな★★★
谷蟇に日の現れし沼の岸★★★
釣り上げし岩魚ぬるりとたなごころ★★★

弓削和人
いつもよりかすむポストの晩夏光★★★
向日葵や支えし棒をふりきって★★★
河童忌や亡き父読みし書の栞★★★

自由な投句箱/7月21日~7月31日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

7月21日~7月31日

7月31日(4名)
小口泰與
翡翠の番いや木木を震わせて★★★
さもなくば庭の薔薇見て帰られよ★★★
翡翠や魚を雌に届けける★★★
廣田洋一
炎天下背広の上着手に抱え★★★
炎天に木の葉のアーチ段葛★★★
浴衣着て連立ち散歩古都暮色★★★
多田有花
夏の朝腰赤燕の巣を出でぬ★★★
暁や日の出を呼びぬほととぎす★★★★
入道雲育ち盛りの午後の空★★★★
桑本栄太郎
 <JR嵯峨野線を京都より亀岡へ>
亀岡へ西日の中を嵯峨野線★★★
嵯峨野線の夕日の中を嵐山★★★
涼風の部屋吹き抜ける今日の朝★★★
7月30日(5名)

小口泰與
雨蛙奇岩の妙義さまよえる★★★
勝糸に蚯蚓を付けて置鈎に★★★
夕焼の覚めて終えば鳥の夜★★★

桑本栄太郎
朝五時の鳴り響き居り威し銃★★★
さるすべりあの日あの時想い居り★★★
日を合わせ逢う約束も帰省かな★★★★

廣田洋一
厄払うかわらけ投げて晩夏光★★★★
神鈴に心を浄め夏の果★★★
水馬結界もなくはね廻り★★★

多田有花
夏の朝下弦の月が中天に★★★
かなかなや夜明けの街に響きおり★★★
ボランティア夏の花壇を手入れする★★★

弓削和人
夏朝や一湖と吾のほかになし(原句)
「夏朝」は「夏の朝」とするべきです。一句の流れからすれば、切字「や」は欲しいですね。それを生かして添削しました。(髙橋正子)
朝涼や一湖と吾のほかになし(正子添削)

じーじーと蟲の浄める夏夜かな★★★
背表紙のやわくしおれり女梅雨★★★
7月29日(3名)

小口泰與
翡翠や終の楽しみ見つけたる★★★
老犬の昼寝さまたぐ昼雷★★★
芝刈られ虫の出で来る夏の朝★★★
いい目の付け所ですが、あと少しです。(髙橋正子)

廣田洋一
からからと氷鳴らして夜の秋★★★★
駅出でて雨に深まる夜の秋★★★★
突然に泳ぎ出したる媼かな★★★

多田有花
冷房の通勤電車の静けさよ★★★
女子大前駅夏服の女学生★★★
武庫川駅ホームは夏の川の上★★★
そうですよね。惜しい句ですね。(髙橋正子)
7月28日(4名)

多田有花
月鈍くぼやけて上がる熱帯夜★★★
蚊取線香きれいな渦を崩す朝★★★
「崩す」が、句を平凡にしているのが惜しいです。むしろ、「崩す」前の「残る」とかの方がいいと思います。(髙橋正子)

花火の音遠き夜空に響きおり★★★★

廣田洋一
生垣の上に鮮やか凌霄花★★
二階より流れ落ちたる凌霄花★★★
 見方が面白いです。(髙橋正子)
木から木へ移りて行ける蝉の声★★★
 この句も目の付け所がいいと思います。(髙橋正子)

桑本栄太郎
ぎらぎらと京の町屋に極暑来る★★★
南座の大屋根灼ける酷暑かな★★★
鴨川の河に迫り出す川床料理★★★

小口泰與
銀鱗を日に晒したる夏の沼★★★
両岸で鳴き合う蝦蟇の声高し★★★
忽然と夕立ちありて木木の色★★★
7月27日(3名)
廣田洋一
七変化緑色にて締めにけり
句意はとてもいいです。「締めにけり」がおしいです。(髙橋正子)
七変化緑色にて花を終ゆ(正子添削例)

茄子の紺そのまま生かしすまし汁
この句も句意はとてもいいです。「生かし」が気になります。写生の方向で。(髙橋正子)

胡瓜一本おやつにしたる小学生(原句)
小学生の様子が分かるとさらにいいと思います。(髙橋正子)
胡瓜一本おやつに齧る小学生(正子添削例)

多田有花
泉州が沖に横たう夏の海★★★
青信号横断歩道を日傘の波★★★
空蝉のきれいに割れし背中かな★★★
桑本栄太郎
短夜や新聞受けの音に起き★★★★
朝仕事終えて玉なす汗しずく★★★
ぎらぎらと枝葉透きたる極暑かな★★★ 
 
7月26日(5名)

小口泰與
さまざまな形のありて雲の峰★★★★
大鯰髭を振り上げ沼覚ます★★★
夏の朝沼を賑わす野鳥達★★★

多田有花
夏休みの朝はラジオ体操に★★★
ひと皿の激辛カレー炎暑かな★★★
日が昇るやがて熊蝉大合唱★★★

廣田洋一
走り根や大きく育つ夏茸★★★★
蟬飛び来たり一声もなく飛び去りぬ★★★
三河産鰻を食べる家族連れ★★★

桑本栄太郎
朝五時の早や競い合う蝉しぐれ★★★
刻々と梅雨出水なるニュースかな★★★
地ぼてりや餌曳く蟻の木蔭道★★★

弓削和人
涼しさや雨つぶふくむ葉の揺れに★★★
「ふくむ」が正確さに欠けるように思います。写生が大事です。(髙橋正子)

隣る世へ長針わずかの昼寝覚★★★
炎天を遠ざかりたるは吾の影 ★★★
7月25日(4名)
小口泰與
弓なりの竿に山女や女の子★★★
翡翠の飛び立つ構え蒼き空★★★
蜥蜴出で九十九折をばさ迷えり★★★

廣田洋一
さわさわとそよげる木の葉晩夏光★★★★
公園の木椅子に二人夕涼み★★★
県境一つ越えれば旱川★★★

多田有花
片陰に休む巣立ちの燕たち★★★
土用丑うなぎたっぷり売られおり★★★
日焼けせし少年の髪つややかに★★★★

桑本栄太郎
ゲリラなる雷雨のありや黒き雲★★★
日盛りや予報疑い傘を持つ★★★
一瞬の途絶えのありぬ蝉しぐれ★★★
7月24日(5名)
小口泰與
一天に比ぶ榛名と夏赤城★★★
鮎釣りの長竿収む雨もよい★★★
赤赤の百日紅へ夕日かな★★★

多田有花
救難訓練猛暑の河川敷★★★
朝焼やいくつ飛び交う鳥の影★★★
朝の雨街に打水のごとし★★★★

廣田洋一
蝉の声気温と共に高まりぬ★★★
公園のベンチに座り蝉時雨★★★
陽は西に項垂れている大向日葵★★★

桑本栄太郎
河童忌や虚実のしれぬ人の世に★★★
激雷や天の壊れたかと思う★★★
染みる眼を閉じつつ流し髪洗う★★★

弓削和人
真夏日といえども樹の根動かざる★★★
アスファルト白き夏野を貫けり
「白き夏野」の「白き」はどんな様子なのでしょうか。(髙橋正子)
アラームのさきゆく蝉の時雨かな★★★
7月23日(5名)

小口泰與
魚咥え川蝉喜々と木木の中★★★
落選や悔し涙の夏の夕★★★
翡翠や森の暗みに光差す★★★

多田有花
梅雨明けの風吹き抜ける部屋に寝る★★★
耐えるべきやり過ごすべき酷暑来る★★★
朝夕の活動さかん夏つばめ★★★

廣田洋一
水替えてゆらりと動く金魚かな★★★★
一杯のジントニックや夕晩夏★★★
庭の草みな丈高く晩夏かな★★★

桑本栄太郎
冷房の効き過ぎいたるバス車内★★★
午後からは棲み分けしたるあぶら蝉★★★
嶺の端のくつきり赤く西日落つ★★★

弓削和人
打水の跡のわずかへ車輪過ぎ★★★
動かざる嶺より来る大暑かな★★★★
犬が下影を求める大暑かな★★★
7月22日(5名)

小口泰與
尺物の鮎つり上げし小学生★★★
翡翠の組する枝や夕間暮れ★★★
夕立ちや葉裏に隠くる野鳥達★★★

廣田洋一
雲の無き大暑の空を仰ぎたり★★★★
べたべたとまといつきたる大暑かな★★★
風死してじっと耐えたる道の草★★★

多田有花
川波を光らせ月の涼しかり★★★★
南海に嵐生まれたる大暑★★★
さて大暑掃除洗濯さっぱりと★★★★

桑本栄太郎
ベランダに高く設え古すだれ★★★★
梅雨明けの京の町家の日射しかな★★★
西山の入日茜や大西日★★★

弓削和人
ピーマンやみどりのどこか照りびかり(原句)
「照りびかり」の合成語に無理があると思います。(髙橋正子)
ビーマンやみどりのどこか照りひかり(正子添削①)

桃の実の剥きたる指にゆだねたり(原句)
桃の実を剝きたる指にゆだねたり(正子添削)

向日葵のこの世を見渡すばかりかな ★★★
7月21日(4名)
廣田洋一
長雨の終わりし高さ立葵★★★
打水や開店前の一仕事★★★
打水や風匂い立つ花舗の前★★★★

小口泰與
目の前の薔薇くずおれし雨の中★★★
小魚を咥え翡翠枝に来し★★★
川蝉の日を受け羽のきららなる★★★

多田有花
ピアノ弾くことは瞑想夏の朝★★★
盛夏早暁世の極楽と思うなり★★★
遠くまで行った心地の昼寝覚め★★★★

桑本栄太郎
干乾びてのの字に果つる蚯蚓かな★★★
かなかなや夢見哀しき幼き日★★★
同調のうねりとなりぬ蝉しぐれ ★★★

今日の秀句/7月21日~7月31日

7月31日(1句)

★入道雲育ち盛りの午後の空/多田有花
「育ち盛り」がユーモラス。育ち盛りの男の子のような入道雲が、午後の空にむくむくと湧いている。「午後の空」の大づかみな把握が入道雲の姿をはっきりさせて効果的。(髙橋正子)

7月30日(1句)

★朝涼や一湖と吾のほかになし/弓削和人
吾と湖だけの朝の時。夏の朝の涼しさを一人占めした時間がすばらしい。(髙橋正子)
7月29日(1句)

★からからと氷鳴らして夜の秋/廣田洋一
「からから」の音が軽やか。昼間の暑さから少し解放されて、夜は涼しくなってきた。そのとき飲み物に入れた氷であろう、グラスをゆすると軽やかな音を立てるので、心楽しい気持ちになる。(髙橋正子)

7月28日(1句)

★花火の音遠き夜空に響きおり/多田有花
空に開く花火を見るのもいいが、花火の揚がる音だけを聞くもの、違った情趣があっていいものだ。遠い夜空から聞こえる花火の音にしみじみとしたものを感じる。(髙橋正子)
7月27日(1句)

★短夜や新聞受けの音に起き/桑本栄太郎
寝苦しい短夜。熟睡した感じのないまま、朝刊が新聞受けに落とされる音で目が覚める。はや、朝かと。(髙橋正子)
7月26日(1句)

★さまざまな形のありて雲の峰/小口泰與
雲の峰も一言では言えない、さまざまな形がある。ぐるっと見まわして空にはあちこちに雲の峰が出来ているのであろう。たくましく、変わり続ける夏の景色である。(髙橋正子)
7月25日(1句)

★日焼けせし少年の髪つややかに/多田有花
日焼けした少年の健やかな清潔感が詠まれて、読んで、さっぱりとした気持ちになる。(髙橋正子)
7月24日(1句)

★朝の雨街に打水のごとし/多田有花
朝の一降りの雨。街が打水されたように、涼しくなって、爽やかな気持ちになれた。うれしい朝の雨である。(髙橋正子)
7月23日(2句)

★水替えてゆらりと動く金魚かな/廣田洋一
水を替えて金魚が喜び、動きが自由に、大きくなっている様子が「ゆらり」の表現で感じ取れる。こうした金魚の動きときれいな水が辺りを涼しく差せている。(髙橋正子)

★動かざる嶺より来る大暑かな/弓削和人
暑いと思いながら、動じない山に対峙しているのだろう。その山の嶺から逃れようのない暑さが押し寄せて来る。「大暑」は暦の上の呼び方であるが、この句では、大変な暑さをも擬人的に指している。(髙橋正子)
7月22日(1句)

★川波を光らせ月の涼しかり/多田有花
川波に月の光がさし、視覚的な涼しさが呼び起こされる。蒸し暑い夜も川近くは風が吹いて、涼しさがうれしい。(髙橋正子)
7月21日(2句)

★打水や風匂い立つ花舗の前/廣田洋一
打水に「風匂い立つ」で十分に詩情がある上に、それが花屋の前だったことがくわわり、いっそう、匂い立つ風になったのだろう。思わず涼しさを感じる句。(髙橋正子)

★遠くまで行った心地の昼寝覚め/多田有花
昼寝から目覚めたときに心地。夢心地とはいうけれど、暑い時の昼寝から覚めたときは、「遠くまで行った」心地になる。共感できる。(髙橋正子)

自由な投句箱/7月11日~7月20日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/7月11日~7月20日

7月20日(1句)

★白シャツや土用太郎の風はらむ/多田有花
「土用太郎」とは、土用入りの日。土用に入った第1日目のこと。その日に吹く風は、爽やかな風ではなく、蒸した風である。白シャツが、蒸して吹く風をさわやかにして、潔い風景となっている。(髙橋正子)

7月19日(1句)
★大西日犬にホースの水しぶき/弓削和人
西日が照り付けて、今日も一日暑かった。庭に水を撒いたり、鉢物に水をやったり、あるいはホースで水を流し洗車しているのかもしれない。犬も近くにいるので、ホースの水飛沫を浴びてしまった。楽しく、涼しそうな光景だ。(髙橋正子)
7月18日(1句)

★八十年浅間を仰ぎ竹落葉/小口泰與
竹は初夏新芽が出始めると古葉がひらひらと切りもなく降る。竹の落葉が降る様子を見ていると、生まれて八十年間、浅間山を仰ぎ続けた生涯の様々な思いが湧いてくる。(髙橋正子)
7月17日(1句)
★弓なりに草を弾ます川蜻蛉/小口泰與
蜻蛉のように軽いものでも、草に止まれば、草の葉は弓なりになる。飛び立つときには、草が弾む。軽いものにも重さや力がある生き物の神秘。(髙橋正子)
7月16日(1句)

★緑蔭の窓辺に座して推敲す/桑本栄太郎
緑蔭の窓辺は、涼しそうで、穏やかな場所。推敲には、苦しみもあるが、また楽しいことでもある。(髙橋正子)
7月15日(2句)

★ほととぎす細かき雨の降る夜明け/多田有花
ほととぎすが、夜明けの空を鳴いてゆく。細かい雨が降り、ほととぎすの鋭い声も小雨の向こうで趣ある声に聞こえる。(髙橋正子)

★宵山の四条通の小雨かな/桑本栄太郎
祇園祭の宵山でにぎわう四条通に小雨が降っている。賑わう宵山にしっとりと「小雨」の醸す情緒は、一味違う宵山を演出した感じだ。(髙橋正子)
(この後、海の日の15日は土砂降りの雨で大混乱のようでしたが、大丈夫でしたか。)

7月14日(1句)

★梅雨荒れやはるか鞍馬は雲の中/桑本栄太郎
梅雨に荒れる空の雲の向こうには、「鞍馬」がある、と思い描いている。京の人が「鞍馬」に寄せる思いはさまざまだろうが、荒れる梅雨と荒々しい鞍馬とが離れていながら一つにつながった感じがある。(髙橋正子)
7月13日(1句)

★鮎釣りの懸命に行く上流へ/小口泰與
渓流の鮎釣りは良い景色のなかで鮎を釣る楽しみがある。狙った場所で釣れなければ、次の場所をさがして上流へ行く釣り人の懸命さは、一通りの釣りではなさそうだ。(髙橋正子)

7月12日(1句)

★ナイターに行く人数多阪神電車/多田有花
関西人の阪神ファンは知られるところであるが、ナイターとなれば、大勢が阪神電車で球場へ出かける。乗り合わせた電車に早くもナイター観戦の熱気がある。(髙橋正子)

7月11日(1句)

★海峡と大橋望み夾竹桃/多田有花
夾竹桃と言えば、たくましい印象と、また裏腹に敗戦や原爆を思いださせる悲しい印象の、夏を象徴する花である。夾竹桃の袂から海峡と大橋をのぞむ大きな景色が「夏」を象徴した景色となっているのがいい。(髙橋正子)

7月11日~7月20日

7月20日(4名)

多田有花
白シャツや土用太郎の風はらむ★★★★
電線へ等間隔に夏つばめ★★★
ヘッドフォン越しに聞こえし蝉の声★★★

小口泰與
山道の石清水にて口濯ぐ★★★
夏桑や日の出と共に摘みにける★★★
この川の鮎をみざるや口惜しき★★★

廣田洋一
うなぎ屋のうの字のはねて土用かな★★★
熱きコーヒーゆっくりと飲む土用入★★★
自転車の補助輪取れて夕晩夏★★★

桑本栄太郎
茅舎忌の明の東雲うすあかね★★★
風あれど溽暑の午後となりにけり★★★
かなかなや赤く染まりし西の天★★★
7月19日(5名)

小口泰與
燕の子赤城の風に口を開け★★★
ばら咲くや黄色の葉っぱ風の中★★★
蝦蟇ふた声鳴いてそれっきり★★★

多田有花
涼しさや風通る部屋で書き物を★★★
夏鶯盛んに鳴ける日の出かな★★★★
土用入真昼の街路を救急車★★★

廣田洋一
鷺草のなおつつましく法の池★★★
土用の入り風心地良き法の庭★★★
山門を潜りて拭う玉の汗★★★

桑本栄太郎
暁闇にかなかな鳴きて目覚めけり★★★★
じわじわと日毎姦し蝉しぐれ★★★
夏草や廃墟の庭にいきおいて★★★

弓削和人
大西日犬にホースの水しぶき★★★★
夏のごみ朝一番の清掃車★★★
ブルーベリー青藍色に口を染め★★★
7月18日(3名)
小口泰與
八十年浅間を仰ぎ竹落葉★★★★
山風にくつがえりたる青葉かな★★★
くちなはに子ら集まりて囃しける★★★

多田有花
捨てるべきものを捨てたり梅雨晴間★★★
押し入れを吹き抜けてゆく夏の風★★★
熱中症アラート放送土用前★★★

桑本栄太郎
山鉾のごつとん揺るる辻回し★★★
さらさらとお歯黒蜻蛉苔上に★★★
黒蟻の直ぐ歩み居り雨上がり ★★★
7月17日(3名)

小口泰與
百本の薔薇に夕日のさしにけり★★★
三山の横たう里や麦の秋★★★
弓なりに草を弾ます川蜻蛉★★★★

多田有花
たっぷりのもぎたてトマトをいただきぬ★★★
汗ぬぐいつつすっきりと片付ける★★★
南北の窓吹き抜ける夏の風★★★

桑本栄太郎
バスの行く並木通りや青葉闇★★★
山鉾の巡行日和や雨上がる★★★
バス道の分離帯とや草茂る★★★

7月16日(3名)

多田有花
夏暖簾揺れる古民家ステーキ屋★★★
生ハムに千切りキャベツ添えらるる★★★
海の日の海は雨なりステーキ食ぶ★★★

弓削和人
てんとむし壁に並びて飛びいづる★★★
親つばめ開けたる嘴を探し分け★★★
蟻の道夏の匂いを辿りけり★★★

桑本栄太郎
緑蔭の窓辺に座して推敲す★★★★
古すだれ越しの戸外の青葉かな★★★
梅雨闇や窓より風の通りゆく★★★
7月15日(3名)

小口泰與
朝日差す合歓咲く木木を紅に染め★★★
朝日差し合歓咲く木木をあかあかと(正子添削例)
「紅に染め」を感じた「感覚」を大切して詠むと、読む人に共感してもらいやすくなります。(髙橋正子)

ぽこぽこと芝生に落し杏子かな★★★
翡翠のしかと授かる沼の魚★★★

多田有花
入れ替わり首を出しおり燕の子★★★
ほととぎす細かき雨の降る夜明け★★★★
梅雨深し耳になじみし雨の音★★★

桑本栄太郎
朝方の家事手伝いの溽暑かな★★★
じゅりじゅりと子燕鳴きぬ嬉しさに ★★★
宵山の四条通の小雨かな★★★★
7月14日(2名)
小口泰與
くちなしを見しよりしばし足止まり
「くちなし」は、「くちなわ」の間違いですか。(髙橋正子)

青空をくつかえりつつ夏燕★★★
あけぼのの沼を震わす蝦蟇の声★★★

桑本栄太郎
駅中のホームに祇園囃子かな★★★
梅雨荒れやはるか鞍馬の雲の中(原句)
一読して、「の」より「は」のほうが分かりやすのでは、と思います。(髙橋正子)
梅雨荒れやはるか鞍馬は雲の中(正子添削)

鴨川の濁る早瀬や梅雨深し★★★
7月13日(4名)

桑本栄太郎
街中を歩み行くほど蝉しぐれ★★★
塊りの撓り揺れ居りさるすべり★★★★
吾が足の丈に長きや半ズボン★★★

小口泰與
歳時記の夏のくだりや不如帰★★★
鮎釣りの懸命に行く上流へ★★★★
忽然と水輪を残す蝦蟇二匹★★★

多田有花
青鷺の静かに佇む夕の川★★★
「暑いですね」あいさつ交わし別れおり★★★
青あらし川面を白く波立たす★★★

廣田洋一
草を食む羊散らばる夏野かな★★★
草刈るや地肌の見ゆる野原かな★★★
夕焼けや野の中天赤く染め ★★★
7月12日(3名)
小口泰與
大空を映す大沼おおでまり★★★
利根川の径くさぐさや山女釣★★★
老翁のくさぎる畑や夏の鴨★★★

多田有花
七月の淀川河口を渡りおり★★★
坂上り青蔦豊かな病院へ★★★
ナイターに行く人数多阪神電車★★★★

桑本栄太郎
ベランダの手すりの滴梅雨荒るる★★★
初蝉の三日前のみそれつきり★★★
”えっちらこ”とみみずを運ぶ蟻の列★★★

7月11日(3名)

小口泰與
ギヤマンの桶に揺らゆら夏の夜★★★
ぎいぎいと湖畔の木木や夏の雲★★★
忽然と雨にみまわる夏の鳥★★★

多田有花
ため池を囲み揺れおり青田波★★★
海峡と大橋望み夾竹桃★★★★
大橋を抜ければ梅雨の大阪湾★★★

桑本栄太郎
驟雨来る音に目覚むや朝まだき★★★

子烏の居付きというは愛しけり(原句)
子烏の居付きというは愛しかり(正子添削)
「愛し」は形容詞です。また「けり」は連用形に接続します。
したがって「けり」を使うなら「愛しかりけり」となります。
※「愛し」は古文では、いわゆる「カリ活用」をします。現代語では「シク活用」です。以下の活用表をご覧ください。(髙橋正子)
活用形 語幹 活用語尾(ク) 活用語尾(カリ) 識別方法
未然形 から ずを付ける
連用形 かり てを付ける
終止形 ーーー 。を付ける
連体形 かる 物を付ける
已然形 ーーー けれ ばを付ける
命令形 ーーー かれ !を付ける

サングラス取れば優しきパパの顔★★★