5月30日(金)

 港の見える丘公園
★薔薇を見しその目に遠き氷川丸  正子
横浜港にほど近い薔薇園のようですね?色とりどりの薔薇の花を愛でた後遠くに目を向ければ、青い海の彼方に氷川丸の白い船体が望まれる・・・。如何にも爽やかな初夏の光景が想起され、好きな句です。 (桑本栄太郎)

○今日の俳句
かしましき程の田道や揚ひばり/桑本栄太郎
田道は しずかに明るく、雲雀を邪魔するものもない。雲雀が野の明るさを謳歌している。(高橋正子)

○茄子の花

[茄子の花/横浜日吉本町(2010年6月3日)]_[茄子の花/横浜市都筑区川和町(2013年5月21日)]

★この辺でかみ合ふ話茄子の花/稲畑汀子
★ふだん着の俳句大好き茄子の花/上田五千石
★雨あとの土息づくや茄子の花/松本一枝
★茄子の花茄子に映つてをりにけり/木暮陶句郎

 茄子(なす)は、ナス科ナス属の植物。また、その果実のこと。原産地はインドの東部が有力である。その後、ビルマを経由して中国へ渡ったと考えられている。中国では広く栽培され、日本でも1000年以上に渡り栽培されている。温帯では一年生植物であるが、熱帯では多年生植物となる。日本には奈良時代に、奈須比(なすび)として伝わった。土地によっては現在もそう呼ばれることがある。女房言葉により茄子となった。以降日本人にとってなじみのある庶民的な野菜となった。葉とヘタには棘があり、葉には毛が生えている。世界の各地で独自の品種が育てられている。加賀茄子などの一部例外もあるが日本においては南方ほど長実または大長実で、北方ほど小実品種となる。本州の中間地では中間的な中長品種が栽培されてきた。これは寒い地域では栽培期間が短く大きな実を収穫する事が難しい上に、冬季の保存食として小さい実のほうが漬物に加工しやすいからである。しかし食文化の均一化などにより野菜炒めや焼き茄子など、さまざまな料理に利用しやすい中長品種が全国的に流通している。日本で栽培される栽培品種のほとんどは果皮が紫色又は黒紫色である。しかしヨーロッパやアメリカ等では白・黄緑色・明るい紫、さらに縞模様の品種も広く栽培される。果肉は密度が低くスポンジ状である。ヘタの部分には鋭いトゲが生えている場合がある。新鮮な物ほど鋭く、鮮度を見分ける方法の一つとなるが、触った際にトゲが刺さり怪我をすることがある。収穫の作業性向上や実に傷がつくという理由から棘の無い品種も開発されている。品種によってさまざまな食べ方がある。小実品種は漬物、長実品種は焼き茄子、米茄子はソテー。栄養的にはさほど見るべきものはないが、東洋医学では体温を下げる効果があるとされている。また皮の色素ナスニンは抗酸化作用があるアントシアニンの一種である。なかには、「赤ナス」のような観賞用として生け花などにも利用されているもの(熊本県などで「赤ナス」の商品名で栽培されている食用の品種とは別物)もある。赤ナスは食用のナスの台木としても用いられる(観賞用の赤ナスは味などにおいて食用には適さないとされる)。

 茄子の花は野菜の花のなかでも、句に詠まれることが多い。茄子は、濃い紫の茎、紫の色を残した緑の葉、うす紫の花、そして紫の実とその色合いが少しずつ違って一本となっている。その中で茄子の花の芯は一つ黄色で、そのおかげで花が生きている。夕方、野菜畑に水をやるときには、もっとも涼しそうな花である。

★茄子の花葉かげもっとも涼しかり/高橋正子
★茄子の木にもっとも淡し茄子の花/高橋正子

◇生活する花たち「紫陽花・カルミア・卯の花」(横浜日吉本町)

◆今日の秀句/5月21日~31日◆

◆今日の秀句◆

[5月31日]
★朝顔の種植え鉢に朝の水/小西 宏
「朝の水」で句に詩情がでた。朝顔の種を植えれば、その後は水やりが日課となる。夕方ではなく、朝のすずやかな水をもらって朝顔も、すぐにも芽が出そうだ。(高橋正子)

[5月30日]
★トントンと葱切る音や夏に入る/井上治代
夏に入ると、まず衣服が軽くなる。部屋も窓が開けられ、風が通るように、日差しも一段とあかるくなって、快活な気分が漂う。まな板で葱を刻む音もトントンと軽やかに弾んでくる。季節が進み夏が来たうれしさが湧く。(高橋正子)

[5月29日]
★玉ねぎの抜きしにおいも持ち帰る/祝恵子
梅雨入り前の、まださわやかな風が吹くころ、新玉ねぎが収穫できる。畑から抜き取るとき、玉ねぎ独特の匂いがするが、その匂いまでもが、収穫のよろこびとなる。(高橋正子)

[5月28日]
★風薫る朝のテラスやミントティー/河野啓一
風薫る朝のさわやかさをテラスで飲むミントティーが象徴している。庭でとれたミントを紅茶に浮かべて飲む至福のお洒落なひとときだ。(高橋正子)

[5月27日]
★玉葱を引く葉の倒る一つから/黒谷光子
玉葱は抜いて見てはじめて大きさが解るのだが、抜いて小さかったからといって植えなおすわけにはいかない。葉の養分が根に移り、根を太らせて倒れる。今年の玉葱を初めて抜くときのちょっとした期待感がいい。(高橋正子)

[5月26日]
★蕗を剥く香り厨に収まらず/黒谷光子
蕗は皮を剥くと独特の香りするが、料理をする台所だけではなく、ほかの部屋までも匂ってくる。生気溢れる蕗の匂いに、初夏という季節が強く印象づけられる。(高橋正子)

[5月25日/2句]
★万緑や大き玻璃戸の美術館/佃 康水
美術館に大きなガラス戸がはめられ周辺の緑がそっくり見えるように設計されている。それがそのまま美術的でもあるが、展示の美術品をひろやかな気持ちになって鑑賞できることもうれしいものだ。(高橋正子)

★そらまめのふつくら炊けて釜の飯/桑本栄太郎
「釜の飯」に家庭のあたたかさが読める。ふっくらと炊けたそらまめご飯は素朴で季節のたのしみなご飯だ。(高橋正子)

[5月24日]
★晴れて今日裸足の季節始まりぬ/多田有花
裸足が気持ちがよいのは少し暑さが加わった晴れた日。今日はちょうどそんな日なので、裸足ですごすことに。「晴れて」裸足の季節が始まるという当たり前のようだが、そこに意外性がある。(高橋正子)

[5月23日]
★青空に溶けることなき青葉の線/川名ますみ
青は多くの色合いを含む。青空の青、葉や草の青など。青空と青葉とは、連なるような色だが、それが截然として空と青葉の間に線が引かれる。はやり、盛り上がるような青葉の勢いのせいであろう。(高橋正子)

[5月22日]
★獅子の舞うそろそろ田水張らる頃/祝恵子
この句の獅子舞は、田植えの始まる前に豊作を願って舞う獅子舞だろう。その獅子舞がくると田水が張られ田植えの準備が始まる。わくわくした気持ちにもなる。故郷の田植えを思いだされたのだろう。(高橋正子)

[5月21日]
★菜の色も海の香もあり冷やしソバ/小西 宏
冷やしソバに、畑の菜もあれば、海の香りのするものも載せてある。海の香りで一度に夏が来た。それを引き立てるのが菜の色だ。涼しさを誘う冷やしソバだ。(高橋正子)

5月29日(木)

★蔓ばらの空に咲きたる聖五月   正子
薔薇は明るく華麗な花であり、その咲き方にもいろいろあるようです。なかでも庭園のアーチや大きな家のフェンスなどに昇り咲く蔓ばらの賑わいは、太陽光に満ち満ちた空や風に更なる光を散りばめてくれています。「聖五月」という表現はそんな蔓ばらに似つかわしく輝きます。(小西 宏)

○今日の俳句
段なして植田それぞれ空を持つ/小西 宏
田ごとに空が映つる植田は、目にも涼やかで美しい。早苗の緑と、空の映る田水が段をなしている棚田の風景は、日本の残したい風景。(高橋正子)

○胡瓜の花

[胡瓜の花/横浜市緑区中山町(2012年5月26日)]_[胡瓜の花/横浜市都筑区川和町(2013年5月21日)]

★蝶を追ふ虻の力や瓜の花/正岡子規
★夕鰺を妻が値ぎりて瓜の花/高浜虚子
★生き得たる四十九年や胡瓜咲く/日野草城
★雲ひくし風呂の窓より瓜の花/芥川龍之介
★土蔵もて史蹟としたり瓜の花/富安風生
★瓜咲くや一つになつて村の音/永田耕衣
★肌合いの届くところに胡瓜咲く/成宮颯

胡瓜は、(キュウリ、Cucumis sativus L.)とはウリ科キュウリ属のつる性一年草、およびその果実のことである。かつては熟した実を食用とした事もあったが、甘みが薄いためにあまり好まれず、現在では未熟な実を食用とするようになった。インド北部、ヒマラヤ山麓原産。日本では平安時代から栽培される。胡瓜の「胡」という字は、シルクロードを渡って来たことを意味している。「キュウリ」の呼称は、漢字で「木瓜」または「黄瓜」(きうり)と書いていたことに由来する。上記の通り現代では未熟な実を食べる事からあまり知られていないが、熟した実は黄色くなる。尚、現代では「木瓜」はボケの花を指す。温暖な気候を好むつる性植物。栽培されているキュウリのうち、3分の2は生で食することができる。種子は暗発芽種子である。雌雄異花ではあるが、単為結果を行うため雄花が咲かなくとも結実する。主に黄色く甘い香りのする花を咲かせるが、生育ステージや品種、温度条件により雄花と雌花の比率が異なる。概ね、雄花と雌花がそれぞれ対になる形で花を咲かせてゆく。葉は鋸歯状で大きく、果実を直射日光から防御する日よけとしての役割を持つ。長い円形の果実は生長が非常に早く、50cmにまで達する事もある。熟すと苦味が出るため、その前に収穫して食べる。日本では収穫作業が一日に2~3回行われる(これには、日本市場のキュウリの規格が小果であることも一因である)。夏は露地栽培、秋から初春にかけては、ハウスでの栽培がメインとなり、気温によっては暖房を入れて栽培することもある。しかし、2003年から2008年の原油価格の価格高騰により、暖房をかけてまでの栽培を見送る農家も少なくない。果実色は濃緑が一般的だが、淡緑や白のものもある。根の酸素要求量が大きく、過湿により土壌の気相が小さい等、悪条件下では根が土壌上部に集中する。生産高は2004年、2005年は群馬県が第一位であったが、2006年からは宮崎県が第一位である。

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

5月27日-31日

5月31日

●小口泰與
赤城より朝の薫風鳥の声★★★★
咲き充ちて白ばらの花よごれたり★★★
百本のばら咲く庭のあかりかな★★★

●迫田和代
土手道の新樹浮かべて河流れ★★★
薄暑の日若い娘(こ)の足綺麗だな★★★
ざあざあと窓うつ雨や梅雨近し★★★

●小西 宏
朝顔の種植え鉢に朝の水★★★★
「朝の水」で句に詩情がでた。朝顔の種を植えれば、その後は水やりが日課となる。夕方ではなく、朝のすずやかな水をもらって朝顔も、すぐにも芽が出そうだ。(高橋正子)

梅の実の膨らむ深き葉の影に★★★
窓という窓開け放ち五月風★★★

●多田有花
風きって自転車降り来る夏の坂★★★
遠く近く森に満ちたり不如帰★★★★
本を読みそのまま昼寝となりにけり★★★

●河野啓一
オリーブの花影白き瀬戸の島★★★★
網戸入れ吹き過ぐ風の心地よさ★★★
マンションの横にも田水引かれたる★★★

●桑本栄太郎
金糸梅かぜの行方の定まらず★★★
天車(標準語:肩車)されて散歩や五月尽★★★
こんもりと古墳の森の青葉かな★★★★

●古田敬二
ジャガイモの畝をはみ出るみのりかな★★★★
ジャガイモが収穫時期を迎えた。太り具合を見にゆけば、畝をはみ出てみずみずしいジャガイモが見える。予想以上の出来に、またそのみずみずしさに嬉しさが湧く。(高橋正子)

土掘ればごつごつジャガイモ当たり来る★★★
畝作る遠くにヨシキリ今日も鳴く★★★

5月30日

●小口泰與
たかむらの闇や一声夏きぎす★★★★
海芋咲き朝の冷気は赤城から★★★
葉がくれのからももの実や雨の中★★★

●河野啓一
薄荷あめ含めば口に若葉風★★★★
そよ風やマーガレットは揺れもせず★★★
路の辺に茂る葉桜陽のひかり★★★

●小川和子
日傘さし小径に入れば花柘榴★★★★
風来るざわめきを乗せ夏落葉★★★
青葉風子らは造れり砂の城★★★

●多田有花
つとよぎる影見上げれば黒揚羽★★★
咲きのぼる構え大きく立葵★★★★
バンダナを結ぶうなじに夏の日差し★★★

●桑本栄太郎
乙訓の里に風吹き柿の花★★★★
青蘆の遮る丈のあおりけり★★★
降るものの舗道散りばめ緑蔭に★★★

●井上治代
トントンと葱切る音や夏に入る★★★★
夏に入ると、まず衣服が軽くなる。部屋も窓が開けられ、風が通るように、日差しも一段とあかるくなって、快活な気分が漂う。まな板で葱を刻む音もトントンと軽やかに弾んでくる。季節が進み夏が来たうれしさが湧く。(高橋正子)

憎きまで畑の中に草茂る★★★
夏霧や里の街灯ぽつねんと★★★

●川名ますみ
迷い来て寺に泰山木の花★★★★
道に迷いようやくたどり着いた寺に、泰山木の大きな白い花が咲いていた。おおらかな、白い花に予期せず迎えられ、うっすらかいた汗もひく思いで、感激も一入だっただろう。予期せぬ花に出会う喜びは大きい。(高橋正子)

梢まで赤咲きのぼる立葵★★★
白き一花迷いし道に泰山木★★★

5月29日

●小口泰與
風薫る朝日をあびし赤城山★★★
黄ばらや通園バスのえんじ達★★★★
たかぶれる噴水空を破りけり★★★

●祝恵子
ルピナスの色とりどりの風をうけ★★★
新緑の森に清しい光あり★★★
艦艇のプラモも走る夏の池★★★★

●古田敬二
葉の影を映して実梅丸丸と★★★★
枝先へうばらの花の咲き上る★★★
のうばらの最後の一花枝先に★★★

●桑本栄太郎
野蒜咲く風の田道の散歩かな★★★
蕗束ねバケツに売らる無人店(だな)★★★★
蚕豆の莢の空向き実りけり★★★

●多田有花
緑陰の途切れるところ頂に★★★★
山の登り始めは木々が茂りあう道から始まる。体も緑に染まりそうなくらいの緑陰となって、延々と道は続くのだが、その緑陰がとぎれるところに出た。そこが頂上だったわけで、頂上を目指すというのではなく、登り至れば頂上だった、というのがさっぱりしている。(高橋正子)

揚羽蝶森の奥より飛び来る★★★
すれ違う人にオーデコロンの香★★★

●高橋秀之
沖合に停泊する船夏日差し★★★★
夏と言えば太陽にかがやく海。沖合に停泊する船が夏の日差しに浮かんでいる。それが夏をいち早く感じさせる景色なのだ。(高橋正子)

紫陽花に当たる朝日と水飛沫★★★
月曜の朝紫陽花の色を見る★★★

●小西 宏
卯の花の垣根に咲ける親しきこと★★★★
梔子の白にあらざる白静か★★★
毒痛みの花泉水の近くあり★★★

●黒谷光子
万歩計つけて今日より夏帽子★★★★
一万歩目指し五月の池巡る★★★
黄菖蒲の池の周りのあちこちに★★★

5月28日

●小口泰與
咲ききって風の中なる庭のばら★★★★
ほろほろと散りし紅ばら香りおり★★★
浴衣着てすずろに歩む繁華街★★★

●河野啓一
風薫る朝のテラスやミントティー★★★★
風薫る朝のさわやかさをテラスで飲むミントティーが象徴している。庭でとれたミントを紅茶に浮かべて飲む至福のお洒落なひとときだ。(高橋正子)
 
薫風やグランドの芝撫でゆきて★★★
屋根裏の空蝉思わる去年の夏★★★

●多田有花
バンダナで額の汗を抑え歩く★★★★
木漏れ日の中渡り来る夏の風★★★
長く長く鳴く夏の鶯★★★

●桑本栄太郎
だれも居ぬ花壇の彩の紫蘭かな★★★
昼顔や彷徨う畦を彩と為し★★★
じゃがいもの花に望郷つのりけり★★★★

●小西 宏
園児バス待つマンションの赤いバラ★★★★
木陰より出でて青野の蛇いちご★★★
蚕豆のよき顔立ちを青く噛む★★★

●祝恵子
玉ねぎの抜きしにおいも持ち帰る★★★★
梅雨入り前の、まださわやかな風が吹くころ、新玉ねぎが収穫できる。畑から抜き取るとき、玉ねぎ独特の匂いがするが、その匂いまでもが、収穫のよろこびとなる。(高橋正子)

水面のバラ花びら少しづつ離なる★★★
すっきりと色花立ちて薄暑なり★★★

●黒谷光子
竹落葉踏み雑木山仏花切る★★★★
供花とする夏菊を買う道の駅★★★
供花はみな新しくして堂涼し★★★

5月27日

●小口泰與
鉄線花赤城の風となりにけり★★★
ばら咲くや色とりどりの登校児★★★★
浅間より絶えず雲出づ蟻の穴★★★

●河野啓一
紫陽花の白き蕾の数かぞえ★★★
あめ玉を口に含みて新緑へ★★★★
房咲きのバラ小さくて賑やかに★★★

●多田有花
幼虫の懸垂下降夏めく森★★★
鋏手に薔薇を切らんと男立つ★★★★
音のみが青葉のなかを流れゆく★★★

●桑本栄太郎
桑の実や遠き日となる母のこと★★★★
桑の実を今の子供たちは食べないだろうが、昔の子供は桑の実の甘さを喜んだ。母の記憶と桑の実を食べた記憶が重なる。それらが「遠き日」となることにさみしさもあるが、思い出す幸せもある。(高橋正子)

姫女苑風の行方を示しけり★★★
山影の映る植田や昏れゆきぬ★★★

●黒谷光子
玉葱を引く葉の倒る一つから★★★★
玉葱は抜いて見てはじめて大きさが解るのだが、抜いて小さかったからといって植えなおすわけにはいかない。葉の養分が根に移り、根を太らせて倒れる。今年の玉葱を初めて抜くときのちょっとした期待感がいい。(高橋正子)

莢豌豆山ほど採れて日本晴れ★★★
夏薊群れ咲き土手の華やげる★★★

●小西 宏
紫陽花の色づき初むる陽の五月★★★★
毒痛みの花群れ咲いて人恋し★★★
睡蓮の花閉じ眠る午後の水辺★★★

5月28日(水)

★竹落葉わが胸中を降るごとし  正子
竹は初夏に新葉が生じると古い葉を落とす。作者も初夏の気持ちの良い新緑の中で新しい勇気が湧き上がってくる。素敵ですね。 (小口泰與)

○今日の俳句
郭公や牧草ロールおちこちに/小口泰與
心地よい夏の牧場の風景。郭公が鳴き、牧草ロールが遠く、近くに点在する。よい時間が流れている。(高橋正子)

○栃の花

[紅花栃の木(べにばなとちのき)/横浜市都筑区牛久保]

★栃咲いて浅夜しづかな疲れあり/星野麦丘人
★仰ぎ見る樹齢いくばくぞ栃の花/杉田久女
★山砂の流れとどめて栃咲けり/長谷川かな女
★栃咲くやまぬがれ難き女の身/石田波郷
★墓地の道乾きて冷えぬ栃の花/草間時彦
★裁判所あたりを暗く栃の花/大堀柊花
★あつまれる神ほとけかも橡の花/山崎 聰
★栃の花大志を抱く男居て/谷内 茂
★栃の花日ぐれは逸る水の音/菅井静子

栃の木(トチノキ、学名:Aesculus turbinata)は、トチノキ科(APG植物分類体系ではムクロジ科とする)トチノキ属の落葉広葉樹。近縁種でヨーロッパ産のセイヨウトチノキ (Aesculus hippocastanum) が、フランス語名「マロニエ:marronnier」としてよく知られている。落葉性の高木で、温帯の落葉広葉樹林の重要な構成種の一つ。水気を好み、適度に湿気のある肥沃な土壌で育つ。谷間では、より低い標高から出現することもある。サワグルミなどとともに姿を見せることが多い。木はとても大きくなり高さ25m、太さも1mを越えるものが少なくない。葉も非常に大きく、この区域では最大級の葉である。葉柄は長く、その先に倒卵形の小葉5~7枚を掌状につけ(掌状複葉)、全体の長さは50cmにもなる。葉は枝先に集まって着く。5月から6月にその葉の間から穂状の花序が顔を出す。穂は高く立ち上がり、個々の花と花びらはさほど大きくないが、雄しべが伸び、全体としてはにぎやかで目立つ姿である。花は白~薄い紅色。ツバキのものを大きくしたような丸い果実が熟すと厚い果皮が割れて少数の種子を落とす。種子は大きさ、艶、形ともに、クリのてっぺんのとんがりをなくして丸くしたようなものを想像すれば、ほぼ間違いない。ただし、色はより黒っぽい。日本では東日本を中心に分布、中でも東北地方に顕著に見られる。木材として家具などの材料となる。巨木になるものが多いので、昔はくり抜いて臼を作るのにもよく使われた。最近は乱伐が原因で産出量が減り、主にテーブルなどに使用される。木質は芯が黄金がかった黄色で、周辺は白色調。綺麗な杢目がでることが多い。また真っ直ぐ伸びる木ではないので変化に飛んだ木材となりやすい。比較的乾燥しにくい木材であるが、乾燥が進むと割れやすいのが欠点であるが、21世紀頃にはウォールナットなどと同じ銘木級の高価な木材となっている。デンプンやタンパク質を多く含有する種子は栃の実として渋抜きして食用になる。同様に渋抜きして食用になるコナラやミズナラなどの果実(ドングリ)よりも長期間流水に浸す、大量の灰汁で煮るなど高度な技術が必要で手間がかかるが、かつては米がほとんど取れない山村ではヒエやドングリと共に主食の大きな一角を成し、常食しない地域でも飢饉の際の食料(飢救作物)として重宝された。現在では、渋抜きしたものをもち米と共についた栃餅(とちもち)などとしてあちこちの土産物になっている。そのほか、街路樹に用いられる。パリの街路樹のマロニエは、セイヨウトチノキといわれ実のさやに刺がある。また、マロニエと米国産のアカバナトチノキ (Aesculus pavia) を交配したベニバナトチノキ (Aesculus x carnea) も街路樹として使用される。日本では大正時代から街路樹として採用されるようになった。(フリー百科事典「ウィキペディア」より)

栃の花を若いときに見た記憶はないが、栃の天狗の団扇のような葉はなかなか面白い。立ちあがる花も大木の花らしくおおらかで、どことなく洒落ている。

★栃の木の紅花立てて街路樹に/高橋信之
★高架より見たり栃の花咲くを/高橋正子

◇生活する花たち「紫陽花・姫沙羅・グミ」(横浜日吉本町)

5月27日(火)

★浜名湖の水の五月を新幹線  正子

○今日の俳句
晴れて今日裸足の季節始まりぬ/多田有花
裸足が気持ちがよいのは少し暑さが加わった晴れた日。今日はちょうどそんな日なので、裸足ですごすことに。「晴れて」裸足の季節が始まるという当たり前のようだが、そこに意外性がある。(高橋正子)

○未央柳(びようやなぎ)

[びようやなぎ/横浜日吉本町]

★彼女眉目よし未央柳をむざと折る/高浜虚子
★水辺の未央柳は揺れ易し/清崎敏郎
★傘ひらく未央柳の明るさに/浜田菊代
★モンローの忘れ睫の美女柳/杉本京子
★胡姫の舞おもはす未央柳かな/富岡桐人

 未央柳は、キンシバイと同じ時期に咲くから、どちらも知らない人には同じ花と目に映るかもしれない。キンシバイは、花が梅の様だし、蕊が長くない。未央柳は、蕊が金色の糸のように長い。絵に描いた美人の長い睫毛とも見える。私が身近で未央柳を見かけるようになったのは、昭和40年代も終わりのころ。日本の景気が上向いて新興住宅団地が開拓され、庭つきの家が売り出された。庭も簡単に設計されて、樫などの裾を隠すために未央柳が植えられているのをよく目にした。住人が好んで植えたようでもない。日吉本町では、公園や公団、小さいビルの根方に植えられている。低木で花が沢山つくので、設計した庭の植え込みには便利がよいのだろう。水と合わせて植えれば、もっと風情がよくなるだろうといつも思う。

★夕映えは未央柳の蕊にあり/高橋正子

 未央柳(ビヨウヤナギ、学名:Hypericum monogynum)はオトギリソウ科の半落葉低木。別名「美女柳(びじょやな)」、「美容柳(びようやなぎ)」、「金線海棠(きんせんかいどう)」。中国原産。唐の長安の宮殿「未央宮」にかかわる名前で、柳の葉に似ていることからだが、これは日本名。中国では金糸桃と呼び、おしべがまさに金の糸。 半常緑性の小低木で、よく栽培されている。花期は6-7月頃で、黄色の5枚の花弁のある花を咲かせる。キンシバイにも似るが、特に雄蕊が長く多数あり、よく目立つ。雄蕊の基部は5つの束になっている。葉は十字対生する。7月14日の誕生花(未央柳、花言葉は「幸い」(未央柳)。

◇生活する花たち「山紫陽花・あさざ・がまずみ」(東京白金台・自然教育園)

5月24日-26日

5月26日

●小口泰與
産土の利根をそびらに花胡桃★★★★
夕暮れの雀騒(ぞめ)くや麦扱機★★★
湖の波染む夕焼けのにぎにぎし★★★

●黒谷光子
蕗を剥く香り厨に収まらず★★★★
蕗は皮を剥くと独特の香りするが、料理をする台所だけではなく、ほかの部屋までも匂ってくる。生気溢れる蕗の匂いに、初夏という季節が強く印象づけられる。(高橋正子)

伽羅蕗を煮詰め色濃し夕厨★★★
菜園の苺の形まちまちに★★★

●多田有花
風薫る堂島川の遊覧船★★★★
水の音親しく聞きし街薄暑★★★
仰ぎ見る高層ビルや天清和★★★

●桑本栄太郎
姫女苑風の行方を示しつつ★★★
桑の実や巨木となりて青空に★★★★
金糸梅部活の子等の下校どき★★★

●小西 宏
夏蝶に魅かれ山葵の沢に入る★★★★
涼しそうな夏蝶の魅力に導かれるように進むと山葵沢に入った。蝶はここへ案内したかったのかとさえ思う。涼しい心境の句。(高橋正子)

初夏の風みどりなる箱根路★★★
青葉影し土匂いする湿り道★★★

●古田敬二
一音階下げて応える牛蛙★★★
若葉風昔バンカラ下駄の街★★★★
玉ねぎを吊るせば香る薄闇に★★★

5月25日

●小口泰與
日照雨去り木々の匂いの聖五月★★★★
夕暮れや浅間を側む二重虹★★★
桐咲くや奇岩聳ゆる妙義山★★★

●佃 康水
万緑や大き玻璃戸の美術館★★★★
美術館に大きなガラス戸がはめられ周辺の緑がそっくり見えるように設計されている。それがそのまま美術的でもあるが、展示の美術品をひろやかな気持ちになって鑑賞できることもうれしいものだ。(高橋正子)

黄菖蒲の根方へ山の水滲む★★★
夕暮れの雲へあわあわ花楝★★★

●桑本栄太郎
あおぞらの窓の額絵や青嵐★★★
ハンガーに晒し掛けおり更衣★★★

そらまめのふつくら炊けて釜の飯★★★★
「釜の飯」に家庭のあたたかさが読める。ふっくらと炊けたそらまめご飯は素朴で季節のたのしみなご飯だ。(高橋正子)

●河野啓一
辿りきて峠越えれば海の青★★★★
アマリリスビロード赤の逞しき★★★
夏場所も果てて熱気の静まりぬ★★★

●小西 宏
十薬の野に置かれざる高貴かな★★★
縁台に休み天城の冷抹茶★★★
谷間(たにあい)の水に早苗の影淡し★★★★

●川名ますみ
青き葉に包まれ紫陽花の莟む★★★
紫陽花の莟めば白のやさしさに★★★★
山法師樹下に次々ランチを広げ★★★

5月24日

●迫田和代
新緑に囲まれている森の奥★★★
初夏になり」木陰もいいし風もいい★★★
流れゆく水音までも初夏の音★★★★

●小口泰與
隠れ沼(ぬ)に雨そそぎけり柿の花★★★
老鶯の山ふところに鳴きそそり★★★
昇り藤谷川岳の聳てり★★★★

●桑本栄太郎
ひつそりと葉蔭に青く柿の花★★★
さみどりの早もあじさいつぼみけり★★★★
青嵐の風落ち昏るる夕べかな★★★

●多田有花
晴れて今日裸足の季節始まりぬ★★★★
裸足が気持ちがよいのは少し暑さが加わった晴れた日。今日はちょうどそんな日なので、裸足ですごすことに。「晴れて」裸足の季節が始まるという当たり前のようだが、そこに意外性がある。(高橋正子)

少女らの自転車薫風を駆ける★★★
繰り返し森の奥よりほととぎす★★★

●黒谷光子
隣村へどの道行くも姫女苑★★★★
隣村へは、自転車に乗ったり、すぐ近ければ歩いてゆくこともあるのだろう。隣村へ行く道がいろいろあるが、どの道をとっても姫女苑が揺れている。やさしい花の咲くさわやかな道はうれしい。(高橋正子)

堂裏の射干知らぬ間に咲き終わり★★★
蕗を剥き暫く残る手の香り★★★

5月26日(月)

★金魚鉢きらめくものを子が飼えり  正子
金魚鉢の中で生きる小さな命たち。その「きらめく」命の輝きを日々いとおしみ、観察し育てる子どもたち。また、その子どもたちの姿を見守る母の、慈愛に満ちた眼差しを感じさせていただく御句です。(藤田洋子)

○今日の俳句
開いては菖蒲の高さ揃いたり/藤田洋子
菖蒲のあでやかな花が印象づけられる。どれも同じ丈に咲きそろう菖蒲の見事さ。(高橋正子)

○スイートピー

[スイートピー/横浜日吉本町]

★スイートピー薩摩切子の藍深く/水原春郎★
★百本のスイトピーとて一握り/稻畑汀子★
★来客を待つ卓上のスイートピー/羽根田和子★
★レントゲン終へてスイートピーの部屋にゐる/田中章子★
★風のあるさまに活けたるスイートピー/塩路隆子★
★スイートピー眠くなるほど束にする/高橋正子

 スイートピー (Lathyrus odoratus) は、マメ科レンリソウ属の植物。和名では、ジャコウエンドウ(麝香豌豆)やカオリエンドウ(香豌豆)、ジャコウレンリソウ(麝香連理草)などと呼ばれている。地中海沿岸原産で、日本では主に観賞用として栽培される。品種によって一年草や多年草がある。酸性用土ではうまく育たず、直根性で移植を嫌う。ふつう秋蒔きする。中世までは雑草扱いされていた。園芸植物として栽培されるようになってからも改良のスピードは遅く、本格的に改良、交配が進むのは19世紀後半に至ってからであった。トレヴァー・クラークとヘンリー・エックフォードの尽力により、多彩な品種が誕生した。エドワード朝のアレクサンドラ王妃はスイートピーを愛し、祝いの場では装飾としてスイートピーがふんだんに用いられ、エドワード朝を象徴する花となった。
 有毒植物であり、成分は同属の種に広く含まれるアミノプロピオニトリル (β-aminopropionitrile) で、豆と莢に多く含まれる。多食すればヒトの場合、神経性ラチリスム (neurolathyrism) と呼ばれる痙性麻痺を引き起こし、歩行などに影響が出ることがある。他の動物では骨性ラチリスムと呼ばれる骨格異常が生じることがある。
 スイートピーを題材とした歌に『赤いスイートピー』があるが、この歌が世に出た1982年1月当時に、赤色の花をつけるスイートピーは存在していなかった。しかし、写真にもあるように、その後、品種改良によって赤色のスイートピーも誕生した。花言葉は「門出・思い出・別離」といわれている。2月15日、3月15日、3月20日、6月9日の誕生花。

◇生活する花たち「紫陽花・カルミア・卯の花」(横浜日吉本町)

5月25日(日)

★青葉木菟湯にとっぷりと子と沈む  正子
夕暮れ時でしょうか。遠くから青葉木菟の泣き声が聞こえてきます。お子さんととっぷりとお湯に浸かって、誠に健康的なひとときです。この時季の風情溢れる詠みに惹かれます。(河野啓一)

○今日の俳句
楠若葉並木一筋通学路/河野啓一
楠の若葉は盛り上がるように樹を覆う。その若葉が連なり重なる並木を通学する児童や生徒は健康的だ。(高橋正子)

○飯桐の花

[飯桐の雄花(落花)/東京白金台・自然教育園]_[飯桐の木/東京白金台・自然教育園]

★桐咲くやカステラけむる口中に/原子公平★
★飯桐の落花を見ては木を仰ぐ/高橋信之★
★飯桐の落花あまたよ道濡れて/高橋正子★

 イイギリ(飯桐、学名:Idesia polycarpa)は、イイギリ科の落葉高木。和名の由来は、昔、葉で飯を包んだため飯桐といわれる。果実がナンテンに似るためナンテンギリ(南天桐)ともいう。イイギリ属の唯一の種。日本(本州以南)、朝鮮、中国、台湾に分布する。秋から冬に熟す多数の赤い果実が美しいので、栽培もされ、生け花や装飾にも使われる。
 雌雄異株。高さは15-20m。葉は互生、枝先に束性し、キリやアカメガシワに似て幅広い。葉柄は長く、先の方に1対の蜜腺がある(アカメガシワもこの点似ているが、蜜腺は葉身の付け根にある)。雄花も雌花も同じように黄緑色で3-5月頃咲き、円錐花序となり垂れ下がる。花弁はなく、萼片の数は5枚前後で一定しない。雄花には多数の雄蕊がある。雌花にも退化した雄蕊があり、子房上位。果実はブドウの房のように垂れ下がる。液果で直径1cmほど。熟すと真っ赤になり、多数の細かい種子を含む。果実は落葉後も長く残り、遠目にも良く目立つ。白実の品種もある。

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

5月24日(土)

★卯の花の盛りや雷雨呼びそうに  正子
卯の花と言えば昔歌った童謡「夏は来ぬ」を思い出します。真っ白い花は清々しく夏の訪れを感じさせますが、またこの頃には田植えの時期と同時に梅雨の時期でも有ります。「卯の花の盛りや」に対し梅雨よりももっと強い「雷雨呼びそうに」と詠われ、真っ盛りの卯の花がより印象深く思われます。(佃 康水)

○今日の俳句
青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
実際、朴の花はこの通りである。高く聳える木に朴の花は上を向いて咲く。仰いでもその花は下から眺めるのみで、「青空の高きへ掲ぐ」は実直な見方。それが、堂々としてよい。(高橋正子)

○蛍袋

[蛍袋/横浜日吉本町]_[蛍袋/横浜・四季の森公園]

★宵月を蛍袋の花で指す/中村草田男
★子を思へば蛍袋が目を掠む/佐野良太

 蛍袋は、釣鐘型の形がかわいい。ちょうど蛍が飛ぶときに咲くので、蛍を入れるには恰好の入れ物。朝霧の中でうつむいて咲いている姿から、何を考えているのだろうかと思うときもある。関西には白い蛍袋が多くて、関東には紫がかったものが多いと聞く。事実、横浜あたりで見たのは紫がかったものばかり。たまには白いのも見てみたい。山路へ踏み込んだところや、山を切り開いて作られた新興住宅地など、思わぬところに咲いている。学名は「カンパニュラ・・」と呼ばれる。「カンパネルラ」と間違えそうになる。こちらは、宮沢賢治の銀河鉄道の夜に出てくる少年の名前だが。子どもの絵本に「十四匹のあさごはん」というのがあって、その絵本には、夏の朝の森が涼しそうに描かれていた。そういう時、蛍袋は主役の花である。

★蛍袋霧濃きときは詩を生むや/高橋正子

 ホタルブクロ(蛍袋、Campanula punctata Lam.)とは、キキョウ科の多年草。初夏に大きな釣り鐘状の花を咲かせる。開けたやや乾燥した草原や道ばたなどによく見られる草本で、全体に毛が生えている。根出葉は長い柄があり、葉身はハート形。匍匐枝を横に出して増殖する。初夏に花茎を延ばす。高さは、最大80cmくらいにまでなり、数個の釣り鐘型の花を穂状につける。花は柄があって、うつむいて咲く。山間部では人里にも出現する野生植物であるが、美しいので山野草として栽培されることも多い。花色には赤紫のものと白とがあり、関東では赤紫が、関西では白が多い。ヤマホタルブクロ(学名、Campanula punctata Lam. var. hondoensis (Kitam.) Ohwi)は、ホタルブクロの変種で、山地に多く生育する。ほとんど外見は変わらないが、萼片の間が盛り上がっている。一方、ホタルブクロは萼片の間に反り返る付属片がある。園芸植物として親しまれているカンパニュラ(つりがねそう)は、同属植物で、主に地中海沿岸地方原産の植物を改良したものである。

◇生活する花たち「未央柳(びようやなぎ)・釣鐘草・卯の花」(横浜日吉本町)