■9月月例ネット句会入賞発表■

■9月月例ネット句会入賞発表■
2023年9月11日

【金賞】
25.水桶の水真新し新豆腐/吉田 晃
今年収穫した大豆で作られた新豆腐が、真水を入れた桶のなかに沈んでいる。新涼に味わう食のさっぱりした感じが伝わる一句。「桶」の素材は木やプラスティックなどだろうが、レトロな印象がする言葉。「真水」は、水道水ではない、湧き水や井戸水などを連想させるが、真水の冷たさ、柔らかさが伝わっていい。これらの道具をさりげなんくそろえた力量は一日にしてならず。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
22.乗り換えの駅に飛び交う赤とんぼ/ 高橋秀之
都会から乗ってきた列車を乗り換えるため下車すると、思いがけず、赤とんぼがたくさん飛び交っていた。残暑の都会から、地方の駅にきたとたんに赤とんぼに出会い、秋を感じた新鮮さうれしい一句。(髙橋正子)

33.朝の窓開ければどっと稲田の黄/柳原美知子
朝窓を開けると、「どっと」押し寄せる熟れ田の黄色。ゆたかな稔りに圧倒された一瞬。晴れやかな稔りの風景を読者も堪能できる一句と思う。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
19.朝顔のあす咲く蕾ふくらます/祝恵子
朝顔の蕾は日ごと育って、初めは強くよじれた形であったのに、しだいによじれも緩くなり、膨らんでいく。いよいよ明日は咲きそうなふくらみまで近づいた。明日の花を思うと心楽しい。(髙橋正子)

34,窓八枚真横に秋の雲たなびく/川名ますみ
「窓八枚」、「真横に」は、現代詩的な、ある意味散文的な表現だが、新しい俳句表現の試みがある。また別な意味では、現代の生活がそうなのだとも言える。八枚のガラス窓が連なって、秋の雲が横にたなびいている。のびやかで、さわやかな景色がいい。(髙橋正子)

41.秋天へ声透き通るコンサート/西村友宏
野外コンサートだろう。合唱の声は秋天へ届きそうに響いている。その声も透き通って、少年少女の合唱のように思える。「透き通る」は、混じりけがないことを言う。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】

16.村落のあかりを点ける野分かな/弓削和人
村落の夜はいつもなら早くに灯が消えて、漆黒の闇となるが、台風の夜にはあかりが点り、風雨が心配される。緊張感の漂うほのかなあかりにけぶる村落もまた情趣がありますね。(柳原美知子)

19.朝顔のあす咲く蕾ふくらます/祝恵子
秋晴れの一日一日を愛おしむような朝顔が明日を迎える瞬間を切り取っている。清々しい希望を描いている作者の思いを投影しているようだ。(弓削和人)

22.乗り換えの駅に飛び交う赤とんぼ/ 高橋秀之
何処の駅での乗り換えであろうか?ホームに待って居れば、赤とんぼが飛び交い始めました。いずれにしても鄙びた田舎の駅のホームが想われ、旅情のあふれる良い光景である。 (桑本栄太郎)
「乗り換えの駅」は、出発でも行き先でもない駅。そこで、赤とんぼが飛び交う景色に出会いました。関わりのなかった駅が、心身に秋を届ける場所に。さわやかな景色ですね。(川名ますみ)

34,窓八枚真横に秋の雲たなびく/川名ますみ
学校でしょうか。ビルでしょうか。とにかく窓が鏡のように並ぶ建物です。そこに刷毛でさっとはいたような秋の雲が映っています。青空がもうひとつ生まれたようなさわやかな情景です。 (多田有花)

06.母よ西方浄土は秋夕映/多田有花
25.水桶の水真新し新豆腐/吉田 晃
33.朝の窓開ければどっと稲田の黄/柳原美知子


【髙橋句美子特選/7句】
15.散歩道気づけばたわわ青蜜柑/友田 修
普段は何気なく歩く散歩道。でも、見逃している日常の風景もふと気が付けばたわわに青蜜柑が実っている。秋の気付きのひとつです。(高橋秀之)

18.水引の凛と咲きたり雨あがり/弓削和人
清楚なたたずまいながら、水引の存在感が感じられる句です。 (髙橋句美子)

41.秋天へ声透き通るコンサート/西村友宏
野外コンサートでしょうか。皆さん楽しまれています。 (祝恵子)

08.大輪の菊を一花飾りけり/廣田洋一
17.星月夜ひじ掛け椅子に睡りおり/弓削和人
29.葛の花みな立ち上がる山の畑/髙橋正子
33.朝の窓開ければどっと稲田の黄/柳原美知子


【入選/14句】
04.身に入むや臨終の母の手を取れば/多田有花
ご愁傷様です。御臨終ですと先生に言われてから手を取ると、冷たくて本当に身に染みる思いがする。母上のご冥福をお祈り致します。(廣田洋一)
万感の思いでお母様の手を取られたことでしょう。お悔やみ申し上げ、お母様のご冥福を心よりお祈りいたします。(柳原美知子)

09.秋雨にしっとり濡れし藪蕎麦屋/廣田洋一
夏の間は客で賑わったのだろう。秋の雨にしっとり濡れる蕎麦屋の暖簾。本格的な秋まで少しの寛ぎの時を過ごしているように感じた。 (吉田 晃)

11.渓流の水の豊や黄鶺鴒/小口泰與
詠者は渓流釣りを趣味とされていると記憶します。魚影を追って渓流を歩いておられるとそこにキセキレイの姿が。渓流の間を飛び渡る黄色い姿が鮮やかです。(多田有花)

24. 夏休み終えてふたりの夕ご飯/ 高橋秀之
帰省していた孫や子たちも夏休みの終わりとともにそれぞれの場所に戻っていった。御馳走が並んでいた夕ご飯も二人だけの食卓となった。季節の移り変わりを若干の寂しさといつもの生活に戻ったという安堵感とで同時に食卓に映した句にほっと致します。(友田修)

31.今日一日秋燕に暮れ月の里/柳原美知子
そろそろツバメが渡りを始める頃です。昼間は南へと戻るツバメが高空を何羽も飛び交っていました。その村里の上に夜が来て美しい月が出ました。(多田有花)

32.子の作る蒸しパン今朝は栗入りで/柳原美知子
お子さんが蒸しパンを作ってくれる。それだけでも嬉しいところに今朝は栗が入っている。嬉しさ、喜びが増し増しです。(高橋秀之)

40.月出でて太鼓高鳴る盆踊り/西村友宏
盆踊りの高揚感に満ちた御句です。思わずどどんと太鼓を叩きたくなる、そういう楽しさもあります。櫓の上には見事な月も出て、これぞ日本の盆踊り。(多田有花)

42.ハンモック揺れて目覚める秋の風/西村友宏
秋は夏と冬の季節風の交替期で、定まった風位は有りません。ハンモックで寝ている夢の世界を肌寒い身に染む風によって目を覚まされる。なんともつれない残念な気持ちの目覚めです。 (小口泰與)

38.撫子の軽い花びら束にされ/髙橋句美子
女性らしい優しい一句。束にされても軽い撫子の花びらは、まるで花野に揺れているその軽さを思う。この花束は、お父上の仏壇に飾るのだろう。 (吉田 晃)

01.秋の蚊の親い寄り来る夕べかな/桑本栄太郎

05.母逝きぬ大空にかかる秋の虹/多田有花
10.列をなす訳あり市や秋の晴/小口泰與
12.山の沼鯉の吐きたる秋の風/小口泰與
27.野に優し風の軽さを秋蝶へ/吉田 晃

■選者詠/髙橋正子
28.露草のまことの青が草に散り
我が庭の柊の木陰に露草が葉を広げている。まだ小さな青だがいくつか花開いており、残暑厳しい中に秋の風情を醸している。もう少しすると散らばり咲くのだろう。秋の静かな営みが見えてきたことをさりげなく詠んだ句に魅力を感じた。(吉田 晃)

29.葛の花みな立ち上がる山の畑/髙橋正子
野趣あふれる山畑の総立ちになった葛の花。赤紫色の美しい花から立ち昇る芳香に浸り、山気の中に秋が実感されるうれしいひとときです。 (柳原美知子)

30.秋芝に影がきれいよボール蹴る

秋の日差しを受ける影が夏と違い、きれいに映っている。きっと少年であろうプレイヤーの元気よさも伝ってきます。」(高橋秀之)

■選者詠/髙橋句美子
38.撫子の軽い花びら束にされ
女性らしい優しい一句。束にされても軽い撫子の花びらは、まるで花野に揺れているその軽さを思う。この花束は、お父上の仏壇に飾るのだろう。(吉田 晃)

37.満月を高く指さしつつ帰宅
39.葡萄詰め瀬戸内からの贈り物

■互選高点句
●最高点句(7点)
22.乗り換えの駅に飛び交う赤とんぼ/ 高橋秀之
※集計:髙橋正子
※コメントの無い句にコメントをお願いします。

■9月月例ネット句会清記■

■9月月例ネット句会清記■
2023年9月10日
42句(14名)

01.秋の蚊の親い寄り来る夕べかな
02.秋冷や腕(かいな)をいだき眠り居り
03.勝虫と云われ前へと赤とんぼ
04.身に入むや臨終の母の手を取れば
05.母逝きぬ大空にかかる秋の虹
06.母よ西方浄土は秋夕映
07.恙なし重九の酒を一人酌む
08.大輪の菊を一花飾りけり
09.秋雨にしっとり濡れし藪蕎麦屋
10.列をなす訳あり市や秋の晴

11.渓流の水の豊や黄鶺鴒
12.山の沼鯉の吐きたる秋の風
13.枝豆をつまむ今宵のブルームーン
14.早朝の呆れるほどの残暑かな
15.散歩道気づけばたわわ青蜜柑
16.村落のあかりを点ける野分かな
17.星月夜ひじ掛け椅子に睡りおり
18.水引の凛と咲きたり雨あがり
19.朝顔のあす咲く蕾ふくらます
20.クワガタの展示してあり美容室

21.音立てて開きそうです白桔梗
22.乗り換えの駅に飛び交う赤とんぼ
23.秋空を見上げつぶやく秋はどこ
24.夏休み終えてふたりの夕ご飯
25.水桶の水真新し新豆腐
26.早生の稲架少し湿りの残る田へ
27.野に優し風の軽さを秋蝶へ
28.露草のまことの青が草に散り
29.葛の花みな立ち上がる山の畑
30.秋芝に影がきれいよボール蹴る

31.今日一日秋燕に暮れ月の里
32.子の作る蒸しパン今朝は栗入りで
33.朝の窓開ければどっと稲田の黄
34,窓八枚真横に秋の雲たなびく
35.涼新たメールの返事みな早く
36.秋澄みてビル街に雨吸われゆく
37.満月を高く指さしつつ帰宅
38.撫子の軽い花びら束にされ
39.葡萄詰め瀬戸内からの贈り物
40.月出でて太鼓高鳴る盆踊り

41.秋天へ声透き通るコンサート
42.ハンモック揺れて目覚める秋の風

※互選をはじめてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。選句は、このコメント欄にお書きください。

9月9日(土)

小雨
●明日の月例句会の準備。投句された句をざっと見る。自分の句がなかなかまとまらないのに、投句された句はいい句ば並ぶ。刺激を受ける。
●朝、日の出前に5丁目の丘へ一人吟行に。丘の畑は作る人が亡くなったらしく、荒れ果てている。去年信之先生が満開の桜を背景に立っていたところは、孟宗竹の竹の垣根も朽ちて壊れ、畑は葛でおおわれている。少し歩いて、早速見えない絮らしきものが肌についたようで、かゆくなる。丘を一回りして帰る。五丁目全体が古くなった印象。

9月8日(金)

台風一過仏に留守居頼みたり  正子
台風の雨がすずしく葉を降らす 正子
 琴さんは十一月十一日癌で急逝
青い月琴さんのこと思い出す  正子
●台風13号が静岡に上陸し、関東地方を抜ける予報で、一日雨。夕方6時ごろ、台風は温帯低気圧になって、上陸しないで消滅した。千葉や茨城は線状降水帯ができて大雨。
●信之先生の句がひととおり整理できた。信之先生が自選した句もあるので、それを中心に選ぶことにするが、疲れてしまって、夜は音楽を聴いて、面白そうなYouTube を見て就寝。台風で籠っていたせいか、今日が金曜日である感覚がなかった。
●ますみさんがメールで「思いつくまま」として句を送ってきてくれた。

9月7日(木)

●台風13号が静岡や伊豆諸島へと近づいている。ひどくはないが雨。
●合同句集の信之先生の句をまとめる仕事をここ数日している。全句集を出すのに整理した句が誰かに渡ったままになっているのに気づく。ここに、信之先生も自分で選をしているのだが。平成15年から令和5年までの句が句集になっていないので、これをまとめる。20年間ほどの句。
●夜、自由な投句箱、月例ネット句会の投句を整理していて、有花さんのお母さんが亡くなられたことを投句から知る。夜も遅いので、メールでお悔み。
●ジャニーズ事件で、ジャニーズ事務所が4時間12分の記者会見。はじめは見ていたが、そんなに長く見れるものではない。感覚的には外国の事件の感じ。メディア側の罪はわかっていながら、問いにくい。

9月6日(水)

晴れ
外出に虫の鳴き出す夕ごころ  正子
方丈記立ち読む書肆の秋灯に  正子
置き積みの書の明るさに秋灯  正子
●小西さんからお悔みの葉書。花冠9月号で信之先生の死去を知り驚いたとのこと。
●夕方歩いて、日吉の丸善へ。ラジオ深夜便の「絶望名言」を聞いて、『方丈記』のその絶望名言のある終わりの方を確かめたくなった。解説本があればと思い店頭の検索機でさがす。検索にはかからなかったが、NHK出版の『方丈記』が見つかった。NHKの「100分de名著」の番組のための研究をまとめたもので、庵の詳しい図があり手軽に読める。

9月5日(火)

晴れ
●雨があがり、また暑い。
●葡萄を冷凍。ひとつひとつ軸を残して切り離し、洗って冷凍。
●九品仏という駅がある。気になる名前だが、阿弥陀如来が九体あるお寺があるとのこと。等々力渓谷と九品仏に、一度行ってみたい。
●ラジオの「絶望名言」で鴨長明の方丈記の言葉が紹介されていた。青空文庫で方丈記を探して読む。読みたいのは終わりの方。

9月4日(月)

切りもなし夫亡きあとのつくつくし 正子
秋の山越え来て書肆に文具買う   正子
秋ゆかし蛙・兎の一筆箋      正子
●夕べから雨が降ったりやんだり。雨のお陰で涼しくなる。
●合同句集の件、メールを見ていない人がいるので、みんなに電話。一人を残して全員と連絡が済む。
●暗がりの本棚から厚めの英語の本を取り出した。買ったことを忘れて紙がやけているが、「罪と罰」。めくるとわからない単語に鉛筆でアンダーラインを引いている。読んだ記憶がないが、読もうとしていたようだ。意外に一文が短い。複雑な構文がない。ドストエフスキーってこうだったか。苛酷な体験が文を短くさせたか、ということが思い浮かんだ。
ロシアがウクライナに侵攻して、なかなか戦争が終わりそうにない。そのせいで、ロシア文学を手に取りにくい。

9月3日(日)

晴れ、夜になり小雨。
雨粒のかかりし葡萄の荷が届く  正子
青ぶどう白磁のごとく手に受けぬ 正子
月の夜とずっと思いて雨の音   正子
●今日は句美子の誕生日。花冠40年の記憶とともに、の誕生日。いつもどおり今日来るかと思ったら、恩師のお見舞いに行くので来れないとメールが来る。
●妹が路地の葡萄が熟れたからと農協かどこかで買って送ってくれる。シャインマスカット、ピオーネ、ニューベリーA。ニューベリーAは葡萄らしい葡萄。これが一番好きかもしれない。まだ栽培し続けられている。
●霧の彫刻家として中谷芙二子さんという方がいるのを初めて知った。1933年生まれの中谷さんは、雪の人工結晶を世界で初めて作った中谷宇吉郎の次女とのこと。この親にしてこの子あり、を思う。霧を発生させ、自在に操る。彼女は、それをアートというより、デディケーション(献呈)と言っている。中谷宇吉郎の生まれ故郷、石川県には、行ってみたい美術館が多い。石川県は美と生活が高度に密着しているのかも。街並み、美術館、輪島塗、菓子etc. 

9月2日(土)

晴れ
つくつくほうしつくつくほうしは夫の声 正子
昼の虫かほど小さく鳴かでよし     正子
夏もラグビー散水どうどとホースより  正子
●朝パソコンを開けると、黒い画面。パソコンが起動しなくなっている。パソコンの下に熱がたまっている。扇風機の風をいれ冷やす。dellを使うようになって3か月になるが、初めての事。スマホで対処法を調べる。まずは電源を長押しして電源を切り、再起動する。ちょっとひやっとしたが、直った。
●お花を買いに歩いて日吉まで。2丁目の丘を越え、商店街の中央通りに出る。丘は全面つくつくほうし、竹林の根元は虫の声。普通部のグランドでは、中学生がラグビーの練習をしている。手足も顔も汗で黒びかり。押しの練習のように見える。太い散水ホースで6か所から水を撒いている。生徒が臨機応変にやっているようだ。
●8月30日ネット短信No.369で合同句集の投稿要項を書いてメールした。その件について、困りごとはないか数人を手始めに電話した。案の定、今日電話した人は誰もメールを見ていなかった。私の勘では、今花冠の俳句は読んでもらえる、と確信がある。みなさんに、このチャンスを逃さず、投稿をお願いしたい。チャンスに尻尾はない!
信之先生が亡くなって3か月経つが、日曜日夕方句美子が来る以外ほとんど一人で過ごしている。朝夕の仏壇の花の水替えや線香をあげ燈明をつけ、水とご飯をあげることは、ままごとのようであるが、毎日のお勤めになった。こういう空間にいると、勘がはたらく気がしている。