5月19日(日)

曇り、夜雨

老鶯のどこかに鳴いて納骨す   正子
桜の実の熟れている墓地納骨す   正子
青葉して尼僧の読経の一周忌   正子

●信之先生の納骨と一周忌の法事。夏日の予報だったが、曇りでちょうどよい気温。今日のお経は尼さんがあげてくれた。尼さんのお経は初めてだったが、句美子は尼さんの方がいいと言っている。石鎚山に修行でのぼることもあると言う話だった。納骨と法要は40分ほどで終わった。墓所には次を待つ二家族ほどがいた。田舎では考えられないこと。

昼食は私以外は若い人たちなので、麻布十番に本店があるレストランで西洋料理。始めに出されたオニオンスープが美味しかったので、後もおいしいのではと期待したら、その通り。元が車で往復してくれた。帰宅すると、お骨を置いていた場所に今朝白い芍薬を置いたが、満開になって部屋中いい匂いがしていた。正月でもないのに、納骨と一周忌の法事が終わり年を取った感じがする。

5月18日(土)

晴れ

今日は暑かった。明日は信之先生の一周忌と納骨の法事。信之先生も家で過ごすのは今夜が最後となる。白い芍薬の花を供える。いい匂いがして、二輪で花瓶いっぱいに。墓地事務所から、明日は町田でサッカーの試合があるので、渋滞を考えて来るようにと連絡があった。

昨日、図書館で借りた本のひとつ『片手の郵便配達人』(グードルン・パウゼヴァング著/高田ゆみ子訳)を今朝までに読んだ。この本の題名はどこかで聞いていたので、手に取ってみて、借りた。1944年8月から1945年5月までのドイツの山間の村の日常の話。45年の5月1日にヒットラーは自殺している。主人公ヨハン・ボルトナーは大きくて体ががっしりした青い目の17歳の少年。たいした訓練も受けないで入隊し、左手を爆弾で失った郵便配達人。241ページ。

ドイツの小さい村の名前は一度も聞いたことがない。地図を見てもわからないが、ドイツ中部のドルトムントあたりの話のようだ。女性作家によって描かれた村の景色は美しい。淡々と描かれている。ドイツの1944年8月から1945年5月の話の結末が悲劇なのは戦争の不条理で済ませられることではない。誠実で温かいヨハンであったのに。いや、誠実で温かいヨハンであったからこその悲劇と言えよう。話の中にヒットラー・ユーゲントが出て来るが、ヒットラー・ユーゲントは日本にも来ていて、長野から東京に列車で移動するとき出迎えたという人の話を何かで読んだ。敗戦国ドイツも敗戦国日本も、敗戦の思いは民族の思いとしてまだまだ長い間消えないだろうか。戦後の事を私は小さかったのでよく覚えている。山間の七つの村に戦争が沁み込んでいく日常の書き方が1944年8月、1944年9月、1944年9月・・の章立てとなって書き方として興味深い。

5月17日(金)

晴れ
●図書館の本の返却日。熱心に読んだのは『人間ゲーテ』だけ。一度読み終えてすぐ2度目を読んだ。それでようやくこの本の意図が分かった。ゲーテの入門書だったが、『ファウスト』の一部、二部を曲りなりにでも読んでいて、2回目読んだときはずいぶん納得する箇所が多くて、手元にこの本を置きたくなった。

世界でいちばん美しい抒情詩の一つと言われるゲーテの詩「旅人の夜の歌」(2)が紹介されていた。言葉として、その音を書き留めておきたい気持ち。「この詩には深い意味がある。どこにあるかと言えば表面にある。」とホーフマンスタールが言ったそうだが、それは「色即是空」ではないの、と言いたくなる。そしてゲーテの自然の把握は、峰から梢へと移っている。間違えても梢から峰へ、ではない。この自然の把握も私的には俳句の場合もそうだと言いたい。
  Wanderers Nachtlied       
Über allen Gipfeln       
Ist Ruh,                                                            
In allen Wipfeln               
Spürest du
Kaum einen Hauch;
Die Vögelein schweigen  im Walde.
Warte nur, balde
Ruhest du auch.
  旅人の夜の歌
すべての峰に
憩いあり、
すべての梢に
そよ風の
動きもなし、
森には小鳥の歌もやみぬ。
待てよかし、やがて
汝も憩わん。
(訳:小栗浩)
※この詩を理解するために生成AIのCopilotに質問した。①前置詞のあとの格について。?韻を踏むためにスペルの追加があるかどうか、③Walde とWald の違い、balde とbald の違いの3点。AIの答えは、Über allen GipfelnとIn allen Wipfelnはともに3格であること。韻を踏むためにbald ではなく古語・詩語のはbaldeが使われていること。Waldeはbalde 同様、古語・詩語だということだった。
これが正解かどうかわからないが、勘ではAIの答えは正解だと思う。





5月16日(木)

小雨

●19日の信之先生の一周忌の法事の準備、実際準備してみれば抜けていることがあって、買い物。19日は暑くなりそう。27度の予報が出ている。

●ネット短信No.415を14日に送信したが、受信の確認が取れない人が半数以上。月例ネット句会の反応も速いとは言えない。多分、日常的にはスマホを使い、PCのメールは見ていないのかもしれない。こう思いつき判断するまで、時間がかかったが、No.415に続いて、ネット短信No.416でスマホにメールを送ってほしい人はアドレスを知らせるように連絡した。早速、美知子さんと秀之さんから連絡が来た。

5月15日(水)

晴れ
街中の古家にほんのり枇杷熟れる 正子
アゲハ蝶飛翔のときは浅葱色   正子
櫟林の山路は昏し卯の花も    正子

●いつも通り目が覚めたと思ったら、まだ4時半。この時間は日差しを気にする必要がないし、鳥も鳴いているだろうと、5丁目の丘へ出かけた。朝靄で、直観でしか見えない富士山の雪嶺が浮いていた。鳥は四十雀がたまに鳴く程度。鳥たちは山に帰っているのか、どうなのか。

●『人間ゲーテ』(小栗浩著)の小さい本を読んでいるが、250年以上前の文豪ゲーテに我々が学ぶところは何かと言う本。この本自体が30年前の本だが、気づかされることが多い。四章に分けられている。3章「ヴァイマル」、4章「詩人としてのゲーテ」よりも、2章「わが存在のピラミッド」はゲーテの本質的なことのようなので、からっぽの頭では理解が難しいが、おぼろげながらわかる。

ゲーテの人間形成に恋愛は大きく影響している。「少女を見、この少女を愛することによって、美しいもの、すぐれたものの世界が開かれたのであった。」(『詩と真実』)「わが存在」のために「ピラミッド」を築く、高みを求め続ける精神が、「高み」への理想主義的希求が重なる恋愛を体験させたのだと思えた。

それよりもゲーテの詩「五月の歌」は、明るくのびやかで好きな詩であるが、これがフリーデリーケとの恋愛で生まれ、「ゼーゼンハイムの絶唱」と呼ばれていることをはじめて知った。高揚した精神で自然を見ればこのような詩が生まれるのか、興味深い。内面的な俳句は内面が触発されることによってできることはわかっている。精神の高みのある状態で自然を見ればどうなるか。「高み」は、「深み」とは反対でもなさそうだ。

ゲーテはマイン河畔のフランクフルトで生まれているが、ゲーテが最初に学んだライプチッヒ大学のあるライプチッヒに比べて言葉が粗野で悩むこともあったようだ。しかし、ゲーテはフランクルトの言葉を愛していたという。フランクフルト読みの発音で韻を踏む詩を作っている。こういう詩を読んでいると、詩は息でできているとさえ思える。

家族のドイツ旅行の時、フランクフルトのゲーテの生家を訪ねた。ゲーテの部屋にも入ったが、写真で見るのと同じ様子だった。家はマイン川のピンクがかったうすい紫色の砂岩でできていて、階段は観光客が踏むためか、擦りへってくぼんでいた。中庭のある生家を訪ねたことはなにがしかゲーテの理解を助けてくれている。

ゲーテの本と一緒にシラーの本も借りて来た。ベートーベンの第九「歓喜の歌」はシラーの詩の大部分が使われているが、「歓喜の歌」はこれまでドイツ語で聞くのに慣れてしまって、シラーの日本語訳の詩がどうしても痩せて思えた。「メーリケ」の詩の翻訳もシラー同様にどうしても痩せて思える。ゲーテの詩は翻訳でもそれほど痩せた印象がない。これはどういうことか。ゲーテは小説ならトーマス・マンに、詩ならリルケに比べれば、その構成、また言葉にゆるさがあるという。これもまた面白いところ。

■信之忌/芍薬忌(5月24日/金曜日)ネット句会ご案内■

■信之忌/芍薬忌(5月24日/金曜日)ネット句会ご案内■
名誉主宰の髙橋信之先生は昨年5月24日に亡くなられました。ちょうど1周忌を迎えますので、信之忌(芍薬忌)ネット句会を開催いたします。ご参加くださいますよう、下記にご案内いたします。(花冠代表 髙橋正子)
 記
①投句:献句1句と当季雑詠3句
 5月20日(月)午前6時~5月24日(金)午後5時
②投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:5月24日(金)午後6時~午後10時
②入賞発表:5月25日(土)正午

      献句については選をいたしません。
③伝言・お礼等の投稿は、5月25日(土)正午~5月29日(水)午後6時
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:髙橋句美子・西村友宏

ご挨拶/5月月例ネット句会を終えて

〇風薫る良い季節を迎えています。5月月例ネット句会にご参加ありがとうございました。入賞の皆様、おめでとうございます。
入賞句は、日本の美しい農を中心とした風景や、懐かしい、あるいは楽しい生活、生活のなかのちょっとした思いなどが詠まれていて、戦争のない日本の良さを思いました。内容が深い俳句も、また高みのある俳句も日々の生活から生まれるものなのでしょうから、生活というのは大事なものだと思います。
これで5月月例ネット句会を終わります。コメントのない句には、引き続きコメントを書いていただければ、嬉しいです。

〇なお、5月24日(金)は信之先生の忌日に当たりますので、この場所で、「信之忌(芍薬忌)ネット句会」を開催いたしますので、ご参加いただければたいへんうれしいです。

5月14日(火)

晴れ
踏み入りし青葉の寺の奥深し    正子
夫の忌も母の忌日も聖五月     正子
梅の実の葉蔭に緑濃く太る    正子

●ネット短信No.415を出す。No.414がちょうど2か月前の3月14日。花冠No.371号への雑詠投句依頼。信之忌ネット句会の案内、大垣全国俳句大会の案内の件。

●クリーニング屋へ行く途中、金蔵寺へ寄る。境内に入ると桜の季節とうって変わって、青葉が寺に輝いている。色はなくひたすら青葉ばかり。めずらしくお参りの人が誰もいない。青梅が太っている。柏葉紫陽花が白と言えず、うす緑に咲いている。

5月13日(月)

青葉陰小川に添えば水が鳴る    正子
青嵐巣箱のかかる樫の木に     正子
おとといのバラが散りたりこの部屋も   正子

●午前9時過ぎ、五月月例ネット句会の入賞発表。

●夕方、郵便物がどっさり届く。中に「芭蕉蛤塚忌全国俳句大会」実行委員会からの案内があって、力が入っている。「奥の細道むすびの地「大垣」」の主催。普段は全国からの結社誌から主宰の句を一句ずつ紹介したリーフレットを送ってくれる。普段から地道な活動をされていて、大会の時だけではないので協力したい。明日、花冠会員に投句用紙などを送る予定。

●昨日はネット句会で忙しかったが、今日は朝から雨で、今日が日曜日の感じがする。ネット句会の合間に朝顔の種を蒔いたが、今日の雨がかかって芽生えを助けてくれそう。深く蒔き過ぎた気がする。今年は垣根のように仕立てるつもり。支柱はたくさんある。今年はアブラムシが全然来ないし、ミニ薔薇の葉も病気にならないので、それが不思議。ベランダ花壇は順調に育っている。紫蘇も買わなくてよいほどに育った。

■5月月例ネット句会入賞発表■

■5月月例ネット句会入賞発表■
2024年5月12日
【金賞】
18.湧水の波紋に砂のゆれる初夏/吉田晃
砂から水が湧き出し波紋をつくると、その波紋で砂が静かにゆれる、繊細で清らかな水と砂の動きは、初夏を象徴する光景と言える。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
27.刈られゆく麦の香一日風に乗り/柳原美知子
家の周りは麦刈の真っ最中。刈り取られる麦の匂いが風に乗って一日中漂ってくる。麦秋の季節の明るさ、爽やかさ、その匂いに懐かしい昭和の光景を思い出した。今もその光景があることの大切さを思う。(髙橋正子)

23.田に水の満ちる音して五月に入る/祝恵子
田んぼに水が引かれ、しだいに田に満ちていく。流れ入る水の音もかろやかに弾んでいる。ちょうど五月に入った日なのだ。田植の準備が着々と進んでいる。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
05.竹皮を脱ぐや至れり薮の空/桑本栄太郎
竹の生長ははやい。皮を脱ぐとあっという間に空へ高く伸びる。しかし、伸びる先の空はあくまでも生えたところの藪の空。このあたりにせつなくも諧謔味があって、これも竹の本質。(髙橋正子)

12.葉桜の作る日陰に長き列/高橋秀之
素直な詠みかたは、葉桜の日陰をかろやかに印象付けてくれる。葉桜の季節は汗ばむ日もある。長い列はなんの列だろう。何か待っている列には違いない。暑い日差しを避けられる葉桜の日陰がありがたい。(髙橋正子)

20.はつなつの稜線に雲湧き初めし/多田有花
山の稜線は山並みの描く「線」。その山に夏らしい白い雲が湧き始めるのを見ると、夏が来たな、と思う。「はつなつ」の心楽しさが詠まれている。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】
10.帰省の子迎えるように鯉のぼり/高橋秀之
息子さんたちも成長し自立されました。そして、ゴールデンウィークには帰省されました。それを迎えるようにご近所で鯉のぼりがはためいています。 (多田有花)

23.田に水の満る音して五月に入る/祝恵子
水が張られ田植えの準備も終わり、充実した五月を迎える爽やかな心境を感じました。 (西村友宏)
 新緑の快い季節のなか、田には水がいっぱいに張られ田植えの準備が出来上がり、気候も自然の風物も衣食住も夏らしくなってくる素晴らしい季節です。(小口泰與)

27.刈られゆく麦の香一日風に乗り/柳原美知子
今日は熟れた麦の刈り取りの日なのですね?この日は一日中麦の香が風にただよい、当に麦秋の収穫の喜びに満ち溢れますね。(桑本栄太郎)
熟れた麦が刈られてゆきその香が一日漂っている、動きを感じます。麦の香と風のそよぎが伝わってきます。(多田有花)

36.鯉のぼり喜ぶ声がどこからか/髙橋句美子
鯉のぼりは誰が見ても楽しく心を躍らせてくれます。どこらか聞こえる喜ぶ声もきっと弾んだ明るい声でしょう。(髙橋秀之)

05.竹皮を脱ぐや至れり薮の空/桑本栄太郎
18.湧水の波紋に砂のゆれる初夏/吉田晃
20.はつなつの稜線に雲湧き初めし/多田有花

【髙橋句美子特選/7句】
18.湧水の波紋に砂のゆれる初夏/吉田晃
水の中で砂が穏やかに揺れる様子が夏らしいです。(髙橋句美子)

22.朝一番眺める鉢のメダカの子/祝恵子
メダカを飼育して、稚魚が生まれると楽しいですね。生まれた子の様子を毎朝真っ先にご覧になる。うきうきと水槽をのぞかれる様子が想像できます。 (多田有花)

23.田に水の満ちる音して五月に入る/祝恵子
新緑の快い季節のなか、田には水がいっぱいに張られ田植えの準備が出来上がり、気候も自然の風物も衣食住も夏らしくなってくる素晴らしい季節です。(小口泰與)
水が張られ田植えの準備も終わり、充実した五月を迎える爽やかな心境を感じました。 (西村友宏)

33.八重桜揺れて濃淡鮮やかに/西村友宏
八重桜が咲くころは日差しもぐんと強くなります。重たげに豊満に咲く八重桜の花が風にゆられる様子を「濃淡鮮やか」ととらえられ、新鮮です。 (多田有花)

37.春深し白き小花の街に満つ/川名ますみ
可憐なこでまりや雪柳などの白い花が咲き満ちてそよ風に揺れる街に出ると、心も軽く春の深まりが実感されますね。 (柳原美知子)

12.葉桜の作る日陰に長き列/高橋秀之
27.刈られゆく麦の香一日風に乗り/柳原美知子

【入選/10句】
01.満緑の中に沈みて昼寝かな/小口泰與
満緑の庭に置かれた座り心地のよい肘掛け椅子が想像されます。その椅子に身を沈めみどりの風に身をまかせての昼寝。至福のひとときですね。 (柳原美知子)

08.亀鳴くやゆるき日暮れの待ち合わせ/弓削和人
日長となった春の夕暮れになりきらない頃の待ち合わせ。こんな時には亀が鳴くのではと思うようなのどかで楽しいひとときです。 (柳原美知子)

15.断崖を目指すが如き卯波かな/廣田洋一
「卯波」の季語をよく研究されていて、「断崖」と「卯波」の取り合わせて、画のような景色が生まれている。ただ「如き」が惜しい。例えば添削例として「断崖を目指して迅(はや)き卯波かな」のように、具体的に卯波を写生されるとよいと思う。(髙橋正子)

16.老の声漁の話を初夏の浜/吉田 晃
熱心に夏の浜辺で聞きいっている若者がいます。(祝 恵子)

17.鎌研げば軽くなる風麦畑/吉田 晃
麦刈りに備えて鎌を研ぐと吹く風も軽くなっている。いよいよ収穫の時がきた。無事に麦が育ち収穫を迎える喜びが感じられます。 (柳原美知子)

19.短夜を夜通し風の吹き通し/多田有花
夜に窓を開く時期になりました。夜通し吹き通す風に季節感が溢れてます。(髙橋秀之)

31.箸先に弾力伝わる初鰹/西村友宏
初鰹の身は、固く締まっていてしかも弾力がある。これを箸先に伝わると詠んで、引き締まった鰹の旨さを上手く表現した。 (廣田洋一)

02.庭にきて静寂を砕く時鳥/小口泰與
11.初蝶がひらりと肩にタッチ/高橋秀之
14.土手道を走る親子や薄暑光/廣田洋一

■選者詠/髙橋正子
28.啄木鳥の鳴く声若葉の奥深く
初夏の森の奥深くから啄木鳥の鳴き声が聞こえてくる。秋に木の幹を叩いては餌を探すあの音ではなく、若葉の奥で鳴く声である。啄木鳥の森は瑞々しい若葉に囲まれ、その声が瑞々しく聞こえているのだろう。 (吉田晃)

30.夏の蝶遺影の夫の変わらずに
夏の蝶は大きく、時に、天からの遣いのように映ります。その影に促されて遺影を仰げば、いつものご夫君の姿。遺影が変わらないのは当然ですが、それに驚きを覚えるほど、時の流れを感じられたのでしょう。 (川名ますみ)

29.発車して旅に出るごと栃の花

■選者詠/髙橋句美子
34.黄菖蒲の川の流れに満開に/髙橋句美子
流れに映る黄菖蒲も美しく、風の音清らかな水音も聞こえてくるような爽やかな初夏の景色です。 (柳原美知子)

36.鯉のぼり喜ぶ声がどこからか
鯉のぼりは誰が見ても楽しく心を躍らせてくれます。どこらか聞こえる喜ぶ声もきっと弾んだ明るい声でしょう。(髙橋秀之)

35.同窓会写真に映る八重桜

互選高点句
●最高点句(7点)
23.田に水の満る音して五月に入る/祝恵子
集計:髙橋正子

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