■芍薬忌ネット句会/入賞発表/2024年■
2024年5月24日
【金賞】
38.茅花流し青き田水をきらめかす/柳原美知子
「茅花流し」の「流し」は、湿気を含んだ南風のこと。従って「茅花流し」は茅花の白い絮が風に飛ぶころの湿った南風のこと。茅花の白のイメージと青き田水の「青」のイメージが重なって、すずやかな印象を生み出している。それがきらめいているからなおさら美しい。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
03.良き暮らし吟ずべしとや風薫る/桑本栄太郎
信之先生は常々、「よい俳句はよい生活から」と言っておられた。「よい生活」は楽な生活をするということではなく、わかりやすく言えば、嘘偽りのない、充実した生活を送ると、いい俳句ができると言う意味と私は解釈している。風薫る季節が信之先生の命日となったが、忌日にそれを思いだすことは意義ある琴と思う。(髙橋正子)
20.紫陽花のつぼみの縁に青しかと/川名ますみ
これから時期を迎えて開こうとする紫陽花が、蕾の縁に青い色がしっかりと見せている。みずみずしい紫陽花の青い色をたしかに見届けた嬉しさ。(鷹は斎雅子)
【銅賞/3句】
06.蝶々来る朝日の光る水溜まり/高橋秀之
蝶々がくる水溜まりが朝日で光っている情景が眩しい。可憐な蝶々が朝日に光る水溜まりでいのち輝くものになっている。(髙橋正子)
29.どくだみの花のまわりの闇は濃し/弓削和人
どくだみの白い十字はとくに日陰では印象にのこる。浮き立つ白い花の周りは闇が「濃し」なのた。「深し」ではなく、「濃し」の印象は闇を色合いでとらえ、詩情を醸し出している。(髙橋正子)
23.田に水の入れば夏鳥羽休め/祝 恵子
すこし大きい鳥だろう。田んぼに水が入ったので、水に浮いて羽を休めている。安全地帯の水のある田んぼで、ゆっくり羽を休めている鳥を見ると、見る側も心やすらかになる。(髙橋正子)
【髙橋正子特選/7句】
03.良き暮らし吟ずべしとや風薫る/桑本栄太郎
「明るくて深い句」「良い暮らしから良い句」これが信之先生の教えでした。はや一年たったのかと思いながら、良き暮らしができているか、とわが身を顧みます。 (多田有花)
32.挿し芽して紫陽花小さき毬生まる/藤田洋子
挿し芽した紫陽花がしっかりと根付き、まだ小さいけれど、可憐な毬のような花を咲かせてくれた嬉しさ。これからどんな色の変化を見せてくれるのか楽しみですね。(柳原美知子)
38.茅花流し青き田水をきらめかす
茅の穂が銀色の絮となり、茅花流しが吹く頃になりました。名前の通り、茅の穂のゆらめく様も美しいですが、その風が田を渡る時はひときわでしょう。「青き田水」のきらめきが浮かびます。 (川名ますみ)
06.蝶々来る朝日の光る水溜まり/高橋秀之
20.紫陽花のつぼみの縁に青しかと/川名ますみ
23.田に水の入れば夏鳥羽休め/祝 恵子
29.どくだみの花のまわりの闇は濃し/弓削和人
【髙橋句美子特選/7句】
02.師の教え偲ぶ時なり青嵐/桑本栄太郎
信之先生のお句には青の多様な色彩が表現されており、青嵐に吹かれながら、さまざまなお教えが偲ばれます。先生の「大杉の芯を鳴らして青あらし」のお句も思い出されます。(柳原美知子)
ルッコラは地中海原産のハーブの一種。ご自宅で水栽培されているのですね。そういえば、信之先生はお料理されるのもお好きでした。 (多田有花)
06.蝶々来る朝日の光る水溜まり/高橋秀之
20.紫陽花のつぼみの縁に青しかと/川名ますみ
29.どくだみの花のまわりの闇は濃し/弓削和人
39.パチパチと音たて走る麦焼く火/柳原美知子
40.あじさいに雨ふるかぎり青に染む/髙橋正子
【入選/11句】
07.夏灯ワインは赤くほの甘く/吉田 晃
昼の夏に輝く太陽が沈む暮。涼しい時分の赤ワインは殊の外、澄んでいて甘さを際立たせている。夏とワインが、赤で象徴的な結びつき、心地よい気分を醸し出している。(弓削和人)
09.萍(うきくさ)の花咲く池の濁りより/吉田 晃
池の周りを散歩しているのでしょうか。澄んだ水でもないのに、萍(うきくさ)の花が咲いて、楽しいことよ。 (祝恵子)
11.百本のばらの香りを浴びにけり/小口泰與
小口さまは薔薇を栽培しておられましたね。百本の薔薇が咲きそろいましたか。丹精の結晶です。 (多田有花)
12.あけぼのの風の吐息や初夏の沼/小口泰與
新緑の沼に吹く曙の風が吐息のように、沼を波立たせ、朝が静かに明けてゆきます。初夏の沼の美しい夜明けです。(柳原美知子)
13.芍薬の豊かに並ぶ門の前/廣田洋一
芍薬が並んで咲く門、豪華です。良い暮らし、いい意味での豊かな暮らしが感じられます。 (多田有花)
16.母在れば白寿なるかな小満に/多田有花
白寿を迎えられたお母様、お喜び申しあげます。万物の成長が満ちあふれる季節の節目に、ご長寿の喜びが重なり、これからの健康と幸せを願うお気持ちが伝わります。(藤田洋子)
18.腹を見せ背を見せひらり夏つばめ/多田有花
優雅に軽やかに飛ぶ夏燕が夏の訪れを告げているような美しい情景を思い浮かべました。(西村友宏)
21.青葉雨少年の弾くヴィヴァルディ/川名ますみ
雨の濡らす青葉のみずみずしさと少年の弾くバイオリンの伸びやかで明るいヴィヴァルディの旋律がマッチしていて、癒され、希望が感じられます。(柳原美知子)
25.雨上り雫滴るさくらんぼ/西村友宏
雨上がりのしずくが、きっと瑞々しく弾かれていのでしょう。そんな光景がパッと浮かびました。 (高橋秀之)
26.朝起きて淹れる新茶の青々と/西村友宏
まだ肌寒い朝、起きて最初に淹れるときの新茶の香おりと色は、季節と幸せを感じさせてくれます。良い一日のスタートですね。(柳原美知子)
01.想い出を辿るひと時窓若葉/桑本栄太郎
■選者詠/髙橋正子
40.あじさいに雨ふるかぎり青に染む
紫陽花は、雨の色を取り込んで青くなるのを上手く詠んだ。 (廣田洋一)
41. 夕焼けの吾にかく燃え信之忌
信之先生の一周忌の夕焼けは、格別に燃えるような濃い色で、胸に迫ってきます。一周忌を無事終えられた感慨と共に一抹の寂しさも覚えられたことでしょう。信之先生も天からこの日を見届けられたことでしょう。(柳原美知子)
42,クローバーある日夏めく密に咲き
いつもの野にあるクローバー、ふと「ある日」変化するクローバーの群生。春からいよいよ夏へと移る季節の動き、日ごとに変わる野の状景を敏感に感じ取られていると思います。(藤田洋子)
■選者詠/髙橋句美子
36.ふと香る薔薇の赤に近づいて
何かの拍子に薔薇が目の前に来たのだろう。その時、薔薇の赤い色とそして、ふと香りを感じたのである。(吉田晃)
34.朝顔の双葉が青いと母の声
芽を出したばかりの朝顔の双葉、その初々しい青さに、初夏のみずみずしい明るさを感じます。これからも朝顔の成長を見守りながら、母娘の穏やかな時間が流れていくようです。(藤田洋子)
35.空仰ぎ日傘をもてば朝はじまり
互選高点句
●最高点句(同点3句/5点)
06.蝶々来る朝日の光る水溜まり/高橋秀之
20.紫陽花のつぼみの縁に青しかと/川名ますみ
40.あじさいに雨ふるかぎり青に染む/髙橋正子
集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。
■芍薬忌ネット句会清記■
2024年5月24日
42句(14名)
01.想い出を辿るひと時窓若葉
02.師の教え偲ぶ時なり青嵐
03.良き暮らし吟ずべしとや風薫る
04.風薫る海辺の緑地に家族連れ
05.軒先の紫陽花大きく膨らんで
06.蝶々来る朝日の光る水溜まり
07.夏灯ワインは赤くほの甘く
08.酔眼に夏星いくつも瞬けり
09.萍(うきくさ)の花咲く池の濁りより
10.話し声奪う瀧音明けの天
11.百本のばらの香りを浴びにけり
12.あけぼのの風の吐息や初夏の沼
13.芍薬の豊かに並ぶ門の前
14.フェンスよりはみ出し咲きぬ百合の花
15.バナナ採る朝一番の庭師かな
16.母存れば白寿なるかな小満に
17.初ほととぎす未明の空に響く
18.腹を見せ背を見せひらり夏つばめ
19.風すこし梅花空木の薫り来る
20.紫陽花のつぼみの縁に青しかと
21.青葉雨少年の弾くヴィヴァルディ
22.車椅子押しつつ吟行夏の城
23.田に水の入れば夏鳥羽休め
24.楽しみは子メダカ増える朝一番
25.雨上り雫滴るさくらんぼ
26.朝起きて淹れる新茶の青々と
27.身の締まる鯖寿司味わう日曜日
28.母の日やきょうも勤めし母の朝
29.どくだみの花のまわりの闇は濃し
30.みずみずし水没林の根のあまた
31.紫陽花の広がり蕾持ち始む
32.挿し芽して紫陽花小さき毬生まる
33.水に挿すパセリルッコラ風入るる
34.朝顔の双葉が青いと母の声
35.空仰ぎ日傘をもてば朝はじまり
36.ふと香る薔薇の赤に近づいて
37.夏鶯切り株みがく声放ち
38.茅花流し青き田水をきらめかす
39.パチパチと音たて走る麦焼く火
40.あじさいに雨ふるかぎり青に染む
41.夕焼けの吾にかく燃え信之忌
42.クローバーある日夏めく密に咲き
※互選をはじめてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。
5月24日(金)
5月23日(木)
5月22日(水)
5月21日(火)
5月20日(月)
5月19日(日)
5月18日(土)
今日は暑かった。明日は信之先生の一周忌と納骨の法事。信之先生も家で過ごすのは今夜が最後となる。白い芍薬の花を供える。いい匂いがして、二輪で花瓶いっぱいに。墓地事務所から、明日は町田でサッカーの試合があるので、渋滞を考えて来るようにと連絡があった。
昨日、図書館で借りた本のひとつ『片手の郵便配達人』(グードルン・パウゼヴァング著/高田ゆみ子訳)を今朝までに読んだ。この本の題名はどこかで聞いていたので、手に取ってみて、借りた。1944年8月から1945年5月までのドイツの山間の村の日常の話。45年の5月1日にヒットラーは自殺している。主人公ヨハン・ボルトナーは大きくて体ががっしりした青い目の17歳の少年。たいした訓練も受けないで入隊し、左手を爆弾で失った郵便配達人。241ページ。
ドイツの小さい村の名前は一度も聞いたことがない。地図を見てもわからないが、ドイツ中部のドルトムントあたりの話のようだ。女性作家によって描かれた村の景色は美しい。淡々と描かれている。ドイツの1944年8月から1945年5月の話の結末が悲劇なのは戦争の不条理で済ませられることではない。誠実で温かいヨハンであったのに。いや、誠実で温かいヨハンであったからこその悲劇と言えよう。話の中にヒットラー・ユーゲントが出て来るが、ヒットラー・ユーゲントは日本にも来ていて、長野から東京に列車で移動するとき出迎えたという人の話を何かで読んだ。敗戦国ドイツも敗戦国日本も、敗戦の思いは民族の思いとしてまだまだ長い間消えないだろうか。戦後の事を私は小さかったのでよく覚えている。山間の七つの村に戦争が沁み込んでいく日常の書き方が1944年8月、1944年9月、1944年9月・・の章立てとなって書き方として興味深い。