■第21回(立春)フェイスブック句会清記■

■フェイスブック立春句会■
■清記/26名78句

01.電車の音響く青空梅ひらく
02.寒鯉の日へゆっくりと浮き来たる
03.足湯してギターつま弾く春隣
04.つま先を見て受験子の母歩く
05.朝やさし枝垂るる先に梅一輪
06.梅ひらき紅うつすらとほぐれたる
07.春近し鶺鴒池の面を打てば
08.豆まきの声ベランダに花の苗
09.枝ゆらし光ゆらして春の鳥
10.節分や観音参りの人の列

11.寒椿縁に座れば目の高さ
12.大空に向かい冬芽の柔らかく
13.二月早やまぶしき陽光バスの窓
14.新駅の高架完成春立ちぬ
15.見晴るかす生駒嶺遠く霞みけり
16.球児らの喚声遠く枯野かな  
17.かき混ぜて音もいっしよの浅利汁
18.酢のものに荒き海雲の夕餉かな
19.さえずりや日向ひなたに園児達
20.雪の間に瑞々しきや蕗の薹

21.春浅し赤城は風を育てそむ
22.蜜柑挿す庭木に目白来ておりぬ
23.目白来てヒヨ来て冬日射す小枝
24.春めく風家並み凡て陽の中へ
25.寒晴の浦上天守マリア像
26.束の間の命煌く雪の花
27.楪の日を照り返す力かな
28.寒牡丹わが息すれば匂い立ち
29.宵闇のどこか匂いて豆を撒く
30.立春の朝は襖の白に明け

31.節分の漆の升に豆を盛る
32.豆をまく一つ一つを手に握り
33.立春の朝のデージー鉢いっぱい
34.今日は立春パソコンの明るい画面
35.梅開花一輪晴れのうれしさに
36.思い切り紅梅咲かせ丘の晴れ
37.節分や豆蒔く音の弾みおり
38.ふるさとの歌を歌いて春を待つ
39.きらきらと瞬き交わし星冴ゆる
40.南南東向けて駆足恵方道

41.鬼は外鬼は何処まで行ったやら
42.紅ふふむ梅の蕾や雨の中
43.陽を浴びる川向うの春どことなく
44.春立ちて平和溢れる広島よ
45.白梅の花つぎつぎに空は青
46.おんぶして子をあやしおり冬日向
47.節分の絵手紙友の近況も
48.立春や夜明けは静かな雨となり
49.まんさくの丘へ親子の声弾む 
50.節分会清め太鼓に島奮う
 
51.青空へ梅の一花の紅映ゆる
52.瑞々し無限の夜空寒北斗
53.節分会篝火赤く参道に
54.春立ちて頬に優しき今朝の風
55.波音を聞き湖の色犬ふぐり
56.打ち寄せる波頭まぶしき春汀
57.敷石を音なく濡らす春の雨
58.夕映えの雲良く伸びて春兆す
59.公魚や榛名湖の色自ずから
60.あわあわの夕日浴びけり蕗の薹

61.節分の庭で男が薪を割る
62.節分や白菜刻みサラダとす
63.やわらかき雨連れ春の来たりけり
64.雨降って木々の雫に春立ちぬ
65.雨あとに立春の日の差し始む
66.春立ちてとんとん刻む菜のみどり
67.風二月鳥よろこびの声散らし
68.子ら行きて節分の豆かみしめり
69.草も木も音なき雨も春来る
70.立春の雨鮮やかな傘が行く

71.立春や昔の和音を合唱団
72.眼の隈どり夕日に鮮やかメジロ来る
73.スケートや終えて頬張るチョコレート
74.番犬の瞳潤んで春立つ日
75.子の春着1寸伸ばして夜の耽る
76.川を向く二脚の椅子や梅一輪
77.犬とゆく二月の雨を軽く蹴り
78.機織りの工房しんとして二月


◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、2月4日(月)午後7時から始め、2月5日(火)午前10時までに済ませてください。
③選句の投稿欄は、投句の投稿欄と同じで、最上段の<投稿欄>にご投稿ください。<facebookページ「インターネット俳句センター」>以外の場所に投稿しますと無効になります。
※1) 入賞発表は、2月5日(火)正午です。
※2) 伝言・お礼等の投稿は、2月5日(火)正午~2月6日(水)午後6時までに済ませてください。

第21回(立春)フェイスブック句会案内

■第21回(立春)フェイスブック句会ご案内■

①投句:当季雑詠(節分、立春、春の句、冬の句など)を計3句
②投句期間:2013年2月3日(日)午前0時~2月4日(月)午後6時
③互選期間:2月4日(月)午後7時~2月5日(火)午前10時
④入賞発表:2月5日(火)正午
⑤伝言・お礼等の投稿は、2月5日(火)正午~2月6日(水)午後6時
※句会場(投句場所):
Facebookページ「インターネット俳句センター」
http://www.facebook.com/kakan02/

■ご挨拶/第20回(新年)フェイスブック句会■

●高橋正子(花冠主宰)
 あけましておめでとうございます。巳の年が明けました。正月の間、穏やかな晴天に恵まれ、幸先よい感じです。よいことがありますように願っています。新年句会に24名の方にご参加いただき、ありがとうございました。選句やコメントをありがとうございました。晴れやかな新年の句に触れて、年が改まるというのは、いいものだと思いました。句会の管理運営は信之先生に、集計は藤田洋子さんに、また、スタッフの皆さまにもコメントなどお世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。次回は2月4日の立春句会となります。楽しみにお待ちください。これでフェイスブック新年句会を終わります。

●小西 宏(花冠同人会長)
 みなさま、明けましておめでとうございます。今年もどうぞ、よろしくご指導くださいますようお願い申し上げます。

 この新年もまた、高橋信之先生、高橋正子先生のご指導とご配慮により、「第20回(新年)フェイスブック句会」を開催していただきましたことに深く感謝いたしております。年の初めにふさわしく、力のこもった作品が多数寄せられたことを心より喜び、お礼申し上げます。
今年9月には花冠創刊30周年を迎えることになっており、「創刊30周年記念俳句大会」等の記念事業が予定されています。またそこに向けて、私たちそれぞれが俳句の力を高めてゆけるよう、両先生からも一層きめ細かなご指導いただくようになっております。「俳句添削教室」もその一環と考えておりますが、毎日休みなく力のこもったご指導を頂けることに深く感謝しております。私たち同人一同も「明るくて深い俳句」を目指し、俳句の心と技術を更に高めるよう、いっそうの努力をしていかなければならないと思っております。どうもありがとうございました。

●藤田 洋子(花冠事務局長)
新年明けましておめでとうございます。今年初めてのフェイスブック句会、ご参加の皆様、お世話になりありがとうございました。お正月は全国的にお天気に恵まれた模様で、松山も寒さはあるものの晴間の多い三ヶ日となりました。句会では、晴天のもと美しい富士山の眺望を始め、各地の皆さんの淑気あふれる初景色に心あらたまり、また日本のよきお正月の情景にふれて、心あたたまる思いがいたしました。「花冠創刊三十周年」の年頭にあたり、明るい希望を感じる句会となりました。開催にあたりましては、信之先生、正子先生に心よりお礼申し上げます。お世話いただいたスタッフの皆様、ありがとうございました。今年も皆さんとともに楽しく学ばせていただきたく思います。どうぞよろしくお願いします。

●安藤智久(フェイスブック句会スタッフ)
 みなさま新年明けましておめでとうございます。
 みなさまそれぞれが無事に新年を迎えられ、お正月の清々しい俳句がたくさん寄せられたことを心よりお祝い申し上げます。
 私は年末年始とわさびの出荷に追われ、ひたすらに山葵に触れていた日々でしたが、元日だけはお休みを頂き、美しい富士山を眺めながら三嶋大社に初詣に行ってきました。久しぶりにゆったりとした気持ちで俳句を作り、この句会に参加できたことを嬉しく思います。
小西さんがおっしゃられていたとおり、今年は花冠創刊30周年の節目の年です。信之先生、正子先生からあたたかいご指導が頂ける今の環境に感謝し、明るい気持ちで俳句を続けていきたいと思います。
本年も、どうぞよろしくお願いします。

■第20回(新年)フェイスブック句会入賞発表■

■第20回フェイスブック句会■
■入賞発表/2013年1月3日■

【金賞】
★注連飾りわが手造りへ日の当たる/佃 康水
慎ましく、礼をもって手造りの注連飾りで正月を迎える丁寧な暮らしがよい。当たる日にも温かさある。(高橋正子)

【銀賞】
★元旦の新聞おもいきり広げ/高橋句美子
元旦の新聞を思い切り広げてみる元気良さがよい。世界を一気一目に広げて見せるようだ。(高橋正子)

【銅賞】
★元朝や秒針のゆく確かな音/多田有花
元日の静かな朝、秒針が確実に時を刻んでいるのが耳に聞こえる。元朝なればこその静かな緊張が時を意識させている。(高橋正子)

★湧水の声なく溢れ花八手/渋谷洋介
「声なく溢れ」は、泉の水がやわらかに、しかもゆたかに湧き出ている様子をよく表わしている。傍に咲く花八つ手がいい景を作って、湧水の色をも想像させてくれる。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★元朝や秒針のゆく確かな音/多田 有花
元日朝の晴れやかで慌ただしさと秒針の静かな動きの対比の景がうまく調和して好きな句です。(下地鉄)
秒針が刻む音に託して元朝の時の流れを改めて感じとっている作者の感性に敬意を表します。遅々とした動きであっても刻一刻と時は流れ。元日の朝が来たのですね。(河野啓一)

★元旦の新聞おもいきり広げ/高橋句美子
ひときわ厚い元旦の新聞。慌ただしい朝は少し開いてすぐに閉じる紙面ですが、この日ばかりは「おもいきり広げ」ます。新年を説く様々な記事に、よき年となることを念じながら。(川名ますみ)

★抱かれる赤子へ明るき初日の出/古田 敬二
初めて初日の出を浴びるであろう赤子にとって、明るき初日の出と同様希望に満ちた1年となりますように。(高橋 秀之)

★寒晴れや水平線のくっきりと/下地 鉄 
冬晴れではなく寒晴れが寒さと空気の澄んで遠くの水平線がくっきりと見える風情を感じさせてくれます。(高橋秀之)

★星冴ゆる空の深さよ子等送る/小川 和子
年末年始で帰省されていたお子さんが帰られるのを見送っておられるところと推察します。除夜から元日をいっしょに過ごされて、楽しいひとときを思いつつ見送っておられるところでしょう。寒い夜の中の暖かい情景です。 (多田有花)

★初富士の遠嶺明るし葛飾に/高橋正子
★注連飾りわが手造りへ日の当たる/佃 康水

【高橋正子特選/7句】
★元旦の新聞おもいきり広げ/高橋句美子
元旦の新聞は広告と共に分厚いもの、今年の期待を込めて、思い切り部屋中に私も広げて見ました。(祝 恵子)

★お元日わずかばかりの菜を引きぬ/祝 恵子
お雑煮に入れられるのでしょうか。お庭に植えた初春の草を抜いてこられたのでしょう。静かな元旦の喜びが伝わってきます。 (小西 宏)

★二日の街に椿の白が競い合う/高橋信之
緑の葉を背景として白い椿の花が散らばり咲いている。ゆったりと散歩する正月二日の明るさです。 (小西 宏)

★冬木立陽に輝きて起立する/井上 治代
冬木立というのは本当に、陽の光を受けて輝き見えるものですね。そして、葉を落とした木々の一本一本の姿を「起立する」と詠われて、荘厳さを伝え届けてくれています。(小西 宏)
冬木立は正に起立するというのがしっくりとします。その冬木立が陽に輝いている様子は、気持ちのよい冬の晴れ間を感じさせてくれます。(高橋秀之)

★遠近の嶺と峰より除夜の鐘/桑本 栄太郎
京都ですね。名の知られた多くの寺院が立ち並ぶ古都。東山、北山、西山、それぞれの峰々に行く年を送る鐘が響き渡ります。その除夜はいっそう趣深いものと想像できます。 (多田有花)

★湧水の声なく溢れ花八手/渋谷洋介
大切な水資源にも繋がる湧く水がこんこんと溢れ出ている空気の綺麗な場所近くに活き活きと咲いている花八手が見える参ります。 (佃 康水)

★注連飾りわが手造りへ日の当たる/佃 康水

【入選/15句】
★居間隅々に新年の日が届く/藤田 洋子
一年の始め、あたりの風景も人の心も、一種改まった感じがしますね。居間の隅々にまであらたまった感じがしますね。(小口泰與)
きれいに片づけられ、いつもとは違った新年の居間に新年の陽があまねく行き渡る。今年はなんとなくいいことがありそうな予感をさせる陽の輝きである。(古田 敬二)

★新年の陽差し取り込む母の部屋/高橋句美子
新しい年の輝かしい陽を、まずお母様の部屋に取り込んであげたやさしい心持ちが素敵です。(井上 治代)

★習いたての着付の妻やお正月/安藤 智久
習いたての着付けで晴着姿の妻が初々しく、微笑ましく、奥様へのあたたかな眼差しに、明るく楽しいお正月を感じさせていただきました。(藤田 洋子)

★富士山に月を掲げて初日の出/川名 ますみ
富士山に有明の月を掲げての初日の出。心改まる最高のお正月風景を見せて頂いた想いです。(佃 康水)

★卓丸く老いも若きも味噌雑煮/藤田裕子
関西のお雑煮は味噌仕立てが多いのでしょうか。お餅も丸いのでしょうね。「卓丸く」に昔風の温かな家族関係が感じられ、ゆったりとしたお正月の風景が垣間見られます。(小西 宏)
丸いテーブルがいいですね。ほのぼのとした、一家団欒の様子が、目に浮かびます。(渋谷洋介)

★うす雲を染めて初日や信貴生駒/河野 啓一
元旦の朝はここ数年にないほど穏やかに晴れ、所要で出掛けた車中から遠くになだらかな信貴生駒山の連なりが眺められました。東方の信貴山生駒山の向こうには、悠久の歴史を誇る奈良大和の地であり、その地名と共に初日の出の荘厳な雰囲気が想われ素敵です。(桑本 栄太郎)

★初浅間伸びのび煙り広げおり/小口 泰與
正月の空にゆったりと上る山の煙。いつも見る光景が今日はまた新鮮だ。「初浅間」の季語がゆるぎない。 (小西 宏)

★実千両松の根締めに深く挿し/藤田 洋子
松と実千両の生け花はお正月らしい取り合わせですが「深く挿し」に新しい年への意志の現れのようにも感じます。(黒谷 光子)

★冬休み土手道駈ける児の叫び/迫田 和代
冬休みでこどもたちが遊んでいるのでしょう。冬の寒いときでも子どもたちは元気です。土手を駆け上がるこども達の叫びも楽しげな響きなのでしょう。(高橋秀之)
子供の元気な姿を見るのはよいものです。冬休みの子供たちの声が聞こえてくるようです。 (祝恵子)

★里山の枝かがやかし初明かり/小西 宏
元日の輝かしい朝を里山で迎えられたのでしょう。初明かりが枝を光らし、今年もいいことがありそうです。 (祝恵子)
新年の朝日が里山の枝をあまねく照らし、そこで暮らす人々の幸せな様子が想像できます。(井上治代)

★除夜の鐘山風にのり澄み渡る/藤田裕子
澄み渡って聞こえてくる除夜の鐘、静かに聞き入ってる詠者がいます。 (祝恵子)

★初空の青さの中を飛行雲/高橋 秀之
空の広さを感じるすがすがしい句です。(高橋句美子)
今年の関西の元日は明るく晴れて暖かな一日でした。からっと、あっけらかんと明るい御句にあの穏やかで明るい元日の朝の空が蘇ってきます。 (多田有花)

★伊吹嶺の稜線美しく初茜/黒谷 光子
伊吹山の特徴的な山容はいつ見ても力強く印象的です。初日に照らされた稜線の、元旦ならではの美を見事に詠まれました。 (河野啓一)

★初刷りの嵩に驚くベッドかな/矢野 文彦
作者は毎朝ベッドの中で朝刊を読まれるのでしょう。元旦の新聞が束になってどさりと、ベッドも驚くという非日常の朝を軽い諧謔味を含めて詠まれたものと思います。 (河野啓一)

★蒼天の富士を背にして梯子乗/古賀一弘
江戸の火消しが正月に演じたという度胸のパフォーマンス梯子乗り。当時は富士もことのほかくっきりと見えたことでしょうね。江戸情緒 が嬉しい一句と思いました。 (河野啓一)

■選者詠/高橋信之
★初詣今日がある今年がある
初詣をされ今日を迎えられた喜び、又今年を迎えられた幸せが、ひしひしと伝わってまいります。併せて今年への希望や決意も感じられます。(藤田裕子)

★二日の街に椿の白が競い合う
緑の葉を背景として白い椿の花が散らばり咲いている。ゆったりと散歩する正月二日の明るさです。 (小西 宏)

★幹くろぐろと桜冬芽を青空へ
裸木になって居る桜の幹は冬芽を付けて青空へ枝を張っている。幹くろぐろとの措辞により春に向かって今力を蓄えている桜の木の力強さが感じられます。(佃 康水)

■選者詠/高橋正子
★初富士の遠嶺明るし葛飾に
浮世絵風景版画を見るような心地です。お正月らしい景色、遠くに見える真っ白な富士の高嶺。「葛飾」という地名がそういう感覚を強くしています。(多田 有花)
葛飾から遠く初富士が望めた。真白く光る富士山はたとえ小さくても神々しく、新年をいっそうすがすがしく感じさせてくれます。(安藤 智久)

★水仙の花つぎつぎに昨日今日
冬のさなかに「つぎつぎに」可憐な花を咲かせる水仙に心慰められます。先生の鋭敏な感性が花の咲きようを通じて伝わってきます。(小西 宏)
水仙の花がつぎつぎ咲いているというなにか新年らしい爽やかさのある句ですね。香りが漂ってきそうな。(迫田 和代)

★山風に杉の匂える二日なる
杉の香りがおめでたい正月にぴったりの句です。周りの空気が心地よく感じました。(高橋句美子)

■互選高点句
●最高点(7点/同点2句)
★元朝や秒針のゆく確かな音/多田 有花
★習いたての着付の妻やお正月/安藤 智久

●次点(6点)
★実千両松の根締めに深く挿し/藤田 洋子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

▼コメントのない句にコメントをお願いします。

■第19回(忘年)フェイスブック句会入賞発表■

■入賞発表/2012年12月9日■

【金賞】
★背丈ほどの鍬振り上げて冬耕す/井上治代
鍬を使うは、大変な力仕事である。自分の背丈と同じほどの鍬を振上げ、よろめかぬように、力一杯振り下ろす。冬耕の土に向けた力が快い。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★冷ゆること云いつつ和尚袈裟を着る/祝 恵子
仏事のある日は、冷えることが多いと私は経験している。「冷ゆること」を言いつつも和尚が、おもむろに、しかも淡々と袈裟を着る。和尚の泰然とした態度にユーモアさえ感じる。(高橋正子)

★初霜の大地へざくりと杭を打つ/古田敬二
初霜に強張った大地に杭を打ち込む。「ざくり」が人間の力強さ、また迫力をよく表わしている。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★みどり濃く水仙の芽の伸び出せり/藤田洋子
芽を出すものはみんな可愛いが、水仙は「みどり濃く」芽を伸ばし始めた。真冬の花の水仙らしく、濃いみどりが生き生きとして、幸先のよさを感じる。(高橋正子)

★過ぎた日を明るく語る年の暮/迫田和代
過ぎた日を明るく語れる年の暮は、すばらしく良いことだと思う。みんな、笑って、楽しく語り合う年の暮にしたいもの。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★冷ゆること云いつつ和尚袈裟を着る/祝 恵子
家での法要の席でしょうか?親戚縁者一同に揃い、おもむろに和尚が袈裟に着替えこれから始まりです。田舎では冬の寒い時季に法要が行われることが多く、同じような情景を何度も経験しました。(桑本 栄太郎)

★空青く冬紅葉みな眩しさに/川名ますみ
冬の青い空が紅葉の紅さを引き立て、眩しく感じさせてくれる晴れ晴れとした日が気持ちいいです。(高橋秀之)

★ビルの間の落葉掃くより街動く/藤田洋子
寒い朝、 ビルの間に舞い散った落葉をきれいに掃くことから、街がだんだん活気づいてきます。早朝の街の一こまが、生き生きと詠まれています。 (藤田裕子)

★柊の花の匂ひやかくれんぼ/古賀一弘
ひっそりと咲きほのかな芳香を放つ柊に、子どもたちのかくれんぼ。ほのぼのとした懐かしさと優しさを抱かせてくれる情景です。そこはかとなく匂う柊に、澄んだ冬の空気が静かに伝わります。(藤田洋子)

★過ぎた日を明るく語る年の暮れ/迫田和代
「過ぎた」日を「明るく」語れば、来る年もきっと「明るく」なるに違いない。明けて、明るい年に違いない。(高橋信之)

★初霜の大地へざくりと杭を打つ/古田敬二
大地をご自分で耕して農作物を作っていられる、とお聞きしています。初霜の降る頃となった今は、来春への準備でしょうか。初霜と「ざくりと」が響きあって、力強さを感じます。(小川和子)

★背丈ほどの鍬振り上げて冬耕す/井上治代
力強さと一途さに溢れた句と思います。屹度丹精込めた黒土だと思います。鍬音が聞こえませんか?。(迫田 和代)

【高橋正子特選/7句】
★遠山に雪頂きて街明ける/藤田裕子
しんしんと冷え込んだ朝、目覚めに仰ぐ遠望の雪嶺が美しく清々しいかぎりです。荘厳さを帯びる雪嶺を迎えた街に、澄んだ朝の空気が満ちています。(藤田洋子)

★満載の貨車の遠のく師走かな/佃 康水
師が走るのではなく、年の瀬の荷物を積んだ貨車が走るという軽い可笑し味に成程と共感を覚えました。(河野啓一)

★背丈ほどの鍬振り上げて冬耕す/井上治代
力強さと一途さに溢れた句と思います。屹度丹精込めた黒土だと思います。鍬音が聞こえませんか?。(迫田 和代)

★初霜の大地へざくりと杭を打つ/古田敬二
大地をご自分で耕して農作物を作っていられる、とお聞きしています。初霜の降る頃となった今は、来春への準備でしょうか。初霜と「ざくりと」が響きあって、力強さを感じます。(小川和子)

★寒晴れて朝の地平の眩しかり/河野啓一
冬の寒い日の朝、遠く地平まで見通す日差し。その眩しさに冬の澄んだ空気と気持ちよさが感じられます。(高橋秀之)

★みどり濃く水仙の芽の伸び出せり/藤田洋子
芽を出すものはみんな可愛いが、水仙は「みどり濃く」芽を伸ばし始めた。真冬の花の水仙らしく、濃いみどりが生き生きとして、幸先のよさを感じる。(高橋正子)

★冷ゆること云いつつ和尚袈裟を着る/祝 恵子
仏事のある日は、冷えることが多いと私は経験している。「冷ゆること」を言いつつも和尚が、おもむろに、しかも淡々と袈裟を着る。和尚の泰然とした態度にユーモアさえ感じる。(高橋正子)

【入選/16句】
★紅葉散る小径の色に空の紺/川名ますみ 
彩り鮮やかな紅葉が小径に散らばり、晴れ渡る空が照らしている景色は温かくほっとする一時です。(佃 康水)

★顔見世や暮るるに早き東山/桑本栄太郎
京都南座の十二月興行、「東山」が活きています。 先日、中村勘三郎の訃報を聞いたばかり。暮れ行く年の思いが深くなります。(多田 有花)

★恙なき記念日の朝葱刻む/藤田裕子
結婚記念日でしょうか。無事に毎日過ごせることの幸せを、記念日をむかえて改めて噛みしめている作者の心情が伺えます。葱を刻む音も調子よくトントンと弾みます。(井上 治代)

★木のベンチ占めて彩る散紅葉/小川和子
木々の下に置かれた木のベンチの上に、赤や黄の散紅葉が色鮮やかに敷き詰められ、散りてもなお美しい紅葉の光景に感動いたします。(藤田裕子)

★凍滝の音閉じ込めて起立せり/古賀一弘
滝が凍結し、止むのは、水の流ればかりではありません。響いていた音をも、閉じ込めます。鎮まった其処は淋しいようですが、見れば凍滝は「起立せり」。なんと力強く、且つ繊細な御句かしらと、幾度も読み返しました。(川名ますみ)
凍った冬の滝の様子を彷彿とさせる句である。中七が滝の静けさをうまく表現している。(古田敬二)

★風紋を残して今朝の初氷/古田敬二
当地も初氷を見ました。そちらはよほど風がきつかったのでしょう風紋がついていたのですね。本格的な寒さがやってきています。(祝 恵子)
冷えたと思ったら初氷、その氷には風紋が残っていた。対象を良く見詰めた良い句と思う。(古賀一弘)
この冬初めて張った氷は薄く風の影響で和紙のようになっていますね。いよいよ寒さが本格化した事を感じます。 (小口泰與)

★栞にと拾う黄葉に詩ごころ/矢野文彦
一葉の紅葉にもやさしい詩心、一読 して作者の優しい毎日の生活がうかがえます。(下地 鉄)
散ったばかりの瑞々しい黄葉の細やかで美しい造形におのずと詩ごころが湧いてきます。そんな黄葉を栞にして心豊かな季節の喜びが感じられます。 (柳原美知子)

★妙義へと冬の陽どっと落ちにけり/小口泰與
岩山の妙義山を、いっとき輝かす冬の入日を思います。(渋谷洋介)

★海鳴りの遠くにありて年の暮れ/下地 鉄
海鳴りの音を遠くに聞きながら、今年一年のできごとなど、しみじみと思い起こされています。 (藤田裕子)

★竹林の斜面に白く時雨れけり/桑本栄太郎
竹林を濡らす時雨を、とても抒情的に詠まれています。京都の風情も感じられ、「白く時雨けり」が素敵です。 (藤田裕子)

★かくも濃く冬紅葉映ゆ平林寺/小川和子
寒さが増すと紅葉の紅も濃くなり、雨の後などは特に美しくみえます。お寺の中の紅葉だとなおさら風情があるように思われます。平林寺という固有名詞の使い方も一句をよくまとめていると思います。(井上治代)

★柿熟れて空一面に彩散らし/渋谷洋介
柿は実りの秋を象徴する果物だと思います。オレンジ色の柿の実がたわわに実り、空を仰ぐとまるで灯りのように輝いてきれいです。(井上治代)
柿が熟れて 来て、青い冬空をバックに朱色の彩をふりまいたようです。大きな柿の木なのでしょう。みごとですね。 (河野啓一)

★遠くまで群青色の冬の海/高橋秀之
冬の海は暗いイメージがありますが、晴れた日は遠くまで見渡せ群青色に輝きます。広々とした海を眺め、ひとときの安らぎを感じている作者の心情が伺えます。(井上治代)

★蟹食べに冬の但馬の海の町/多田有花
これから食すであろうかに料理を思い浮かべつつ、播磨地方から但馬に向かい、そして海の町へ。私も先週海の町まで蟹を食べに行きましたので、そのワクワク感がよく分かります。(高橋秀之)
但馬の海辺まで名産の蟹を食べに。蟹刺し、焼きガニ、かにすき–。よだれが出てきそうです。素晴らしい冬の愉しみです。 (河野啓一)

★天守日を返す町並み落葉降る/柳原美知子
街並みからひときわ高くそびえる天守閣。天守を仰ぐ街並みには天守から返す冬の日差しと降る落ち葉。平穏でのどかな冬の日常を感じます。(高橋秀之)

■選者詠/高橋信之
★冬晴れて青一色の今朝の空
寒い朝でも海岸の景色はまた格別。遥か沖合まで群青色が帯になって広がり素晴らしい眺めです。 (河野啓一)

★茶の花の数多小粒が朝の日に
冴えわたる朝の日差しを受けて、白色五弁の茶の花が際立つ白の鮮やかさです。茶の木に開く数多小粒の白の嬉しさに、明るく晴れやかな一日の始まりを感じさせていただきました。 (藤田洋子)

★冬紅葉くれない空へ清潔に
燃え立つ様な冬紅葉がくれないの空に映え、一層清らかな彩りを見せてくれている。極みの冬紅葉です。(佃 康水)

■選者詠/高橋正子
★雨あとのいろは紅葉の谷深し
谷に自生するいろは紅葉は樹高もあり、ありのままの自然美を見せてくれるのでしょう。雨あとの清澄な気の中、いちだんと鮮やかな、みずみずしい紅葉の美しさが目に浮かび、谷深きいろは紅葉の感動が伝わります。 (藤田洋子)
雨に濡れ、みずみずしく鮮やかないろは紅葉に彩られた谷から立ちのぼる冷気。深谷を流れる清らかな水音もしんしんと透徹した冬へと季節が深まっていくようです。 (柳原美知子)

★さんしゅゆの実の真っ赤なる十二月
晩秋から冬にかけて赤い実をつける樹木は沢山ありますが、さんしゅゆもその一つなのですね。十二月、クリスマスのリースやクランツにも使われる赤い実ですが、冬枯れの中でうれしい「真っ赤な」実です。 (小川和子)

★しんかんと蝋梅ひらく森の空
森の空へ静かに蝋梅が花ひらいた。その周辺は深閑とした空気が漂い、穏やかに咲き始めた蝋梅がとても新鮮に見えて参ります。(佃 康水)

■互選高点句
●最高点(7点)
★初霜の大地へざくりと杭を打つ/古田敬二

●次点(5点/同点2句)
★雨あとのいろは紅葉の谷深し/高橋正子
★背丈ほどの鍬振り上げて冬耕す/井上治代

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

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■第18回(13夜)フェイスブック句会入賞発表■

■入賞発表/2012年10月27日■

【金賞】
★絹雲の大空全て淡き色/高橋秀之
絹雲は成層圏に秋によく発達する雲で、薄く箒で掃いたようである。その雲が生まれる大空は淡い色に広がっている。軽くて伸びやかなところがよい。(高橋正子)

【銀賞】
★校庭の銀杏の若し黄葉す/小西 宏
「銀杏の若し」がよい。銀杏黄葉が透き通ってみずみずしい感じだ。背筋を伸ばしたように溌剌とした銀杏である。(高橋正子)

【銅賞】
★コスモスの夕日を透かせ揺れどおし/柳原美知子
コスモスが夕日に色を深め、花びらを透かせ揺れどおしている。優しさに満ちた光景はいつ見てもよいものだ。(高橋正子)

★茶の花の咲くや羽音に包まれて/多田有花
茶の花は椿に似るが、椿よりもずっと小さい。その蜜を吸いに目白などがくる。姿は見えないが、羽音が聞こえる。茶の花と小鳥がよくマッチしている。(高橋正子)

★酔芙蓉いちばん星見ぃつけた/矢野文彦
いちばん星がでるころの酔芙蓉は、もう花が閉じようとして紅くなっている。一日の終わりに、いちばん星と酔芙蓉の出会いが心優しく詠まれている。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★十三夜豆炊く蓋の動きだす/佃 康水
十三夜は豆名月ともいわれるようです。お月見のために詠者は豆を炊かれているのでしょう。「蓋の動きだす」で、そろそろかなとふたを開けたくなりそうですね。(祝 恵子)

★さわさわと森囁ける十三夜/小西 宏
「さわさわと」木々のそよぎ、風の音、その快い森の囁きが十三夜の趣きをさらに深めてくれます。十三夜ならではの豊かな詩情が、しんと静まる森から伝わってくるようです。 (藤田洋子)

★十三夜手もとに集めた古切手/祝 恵子
思い出の切手、美しい切手など様々な記念の切手など収集をなさって居るのでしょうか。十三夜は名残を惜しむ意味合いも有り、「手もとに集めた古切手」とは大変良く合った措辞と思います。(佃 康水)

★柘榴割れデイケアの部屋睥睨す/矢野文彦
デイケアの部屋から見える場所にある石榴が割れているのでしょうが、逆にその石榴が部屋を睥睨していると感じるのが面白いです。(高橋秀之)
柘榴が割れ中から紅い実が見えます。その実はまるで一つ一つが眼のようで、デイケアの部屋を見下ろしています。柘榴を擬人化することで、石榴の様子がよく伝わりました。(井上治代)

★コスモスの夕日を透かせ揺れどおし/柳原美知子
風に敏感で、いつも揺れているのがコスモスの魅力です。そこに夕日が差している、コスモスが揺れ夕日の光も揺れる、絵画的な景色が見えてきます。 (多田有花)

★茶の花の咲くや羽音に包まれて/多田有花
★絹雲の大空全て淡き色/高橋秀之

【高橋正子特選/7句】
★さざ波の音に更けゆく月の浜/下地 鉄
秋の夜も次第に更けて、月の浜辺に打ち寄せるさざ波の音。情緒たっぷりの美しい詠みに惹かれました。(河野啓一)
静かな波音のする海に懸かる中天の月。作者はその浜辺に立って月を仰いでいるのでしょうか。どの措辞ものびやかで静かな浜辺の美しい景が見える様です。(佃 康水)
さざ波の音が耳に心地よく響いてきます。月もしだいに上っていき静かで美しい光景です。(井上治代)
浜辺にのぼる月の景がくっきりと目にうかぶようです。十三夜の月となれば、いっそうの趣きが感じられます。(小川和子)

★池端の葉打ち水打ち木の実降る/桑本栄太郎
葉を打ち水を打ち、木々の木の実がしきりに落ちるさまが明るく目に浮かび、水辺の秋に訪れた、季節の喜びが感じられます。(藤田洋子)

★窓まどに団地の暮らし秋桜/祝 恵子
団地の窓には色とりどりの干しものが並んでいるのでしょう。秋桜の明るさ、優しさは、団地の暮らしを見つめる作者の優しさそのもののようです。 (藤田洋子)

★十三夜妻の実家の法事ごと/高橋秀之
十三夜の月明かりのもとで法事が行われ、亡き人を偲ぶ人々の姿を想像することができました。(井上治代)

★酔芙蓉いちばん星見ぃつけた/矢野文彦
「見ぃつけた」が効いています。思わず口ずさんでみたくなります。茶目っ気を感じる楽しい御句です。 (多田有花)

★校庭の銀杏の若し黄葉す/小西 宏
★コスモスの夕日を透かせ揺れどおし/柳原美知子

【入選/20句】
★風もなく音もなく暮れ十三夜/藤田洋子
静かな時間だけが流れて、何処となく闇だけが、深まってく る。全てが闇に包まれて行く。時間の流れだけが、闇を分けて行く様である。(増田泰造)

★秋声の大和三輪山神の宿/河野啓一
奈良、大和の三輪山は山そのものが御神体であり、従って社殿はありません。古より殺生禁断の地として守られ、豊かな自然が残っている由。山に風が吹き木々がざわめく時、秋深む光景が神の宿に相応しく神秘的に想われ好きな一句です。(桑本栄太郎)

★影踏みをする子逃げる子秋日向/祝 恵子
秋の日差しを浴びて元気に走り回るこどもたち。何気ない日常ですが、平和で幸せな日常を感じます。(高橋秀之)
遠い昔のことが思い出されます。(古賀一弘)

★膨らみゆく色やわらかき後の月/小西 宏
後の月の未完成な形や色を、控え目な美しさとして詠まれていて、とてもほのぼのと致します。(藤田裕子)

★十三夜米寿の友の句集かな/渋谷洋介  
米寿の句集の句を一つ採りました。 小生も数え米寿でなんとか句集をと悩んでいるところなので、生きたあかしをと願う気持ちに同感しました。(下地 鉄)

★薄紅葉水面に姿映しおり/多田有花  
水面に映った薄紅葉は綺麗でしょう。見たいですね。(迫田和代)

★釣り終わる波穏やかに十三夜/古田敬二
ここらで終いにしようと、釣りを切り上げる。くしくも今日は十三夜。穏やかな波と慎ましい月を繰り返し眺め、釣果を抱え、帰路に就かれたのでしょう。美しい夜を満喫なさった、ゆるやかな足取りが目に浮かびます。(川名ますみ)

★大寺の土塀ながなが蔦紅葉/黒谷光子
白い土塀に赤い蔦紅葉がアクセントとなり美しい様子が思われます。(上島祥子)

★残照の小波に憩う暮れの秋/下地 鉄
南の島の海辺は秋の終わりとはいえ、暖かでしょう。そこに 打ち寄せる波、その繰り返す波音と揺れる光、その中で 一日が暮れていくのをゆったりと味わっておられます。(多田有花)

★雨に落ち木犀の香の雨となり/川名ますみ
パラパラと降り始めた雨にはらりと零れる木犀の金色の花と香。詩情豊かな美しい雨の情景です。(柳原美知子)

★いつしかに波音に寝る島の秋/下地 鉄
島の秋の波音というのが密やかで心惹かれます。静かな波音に身を任せているうちにいつの間にか寝入ってしまう。そんな秋の夜が素敵です。(小西 宏)

★十三夜豆炊く蓋の動きだす/佃 康水
十三夜は豆名月ともいわれるようです。お月見のために詠者は豆を炊かれているのでしょう。「蓋の動きだす」で、そろそろかなとふたを開けたくなりそうですね。(祝 恵子)

★十三夜独り読書の飲むコーヒー/増田泰造
十三夜、読書に親しみながらの温かなコーヒー、独りなればこそ心落ち着くひとときです。静かな充実した時が流れる十三夜です。 (藤田洋子)

★山風の桐の実の音鳴らすかな/小口泰與
空っ風で名高い上州、その風が桐の実を鳴らしています。近づく冬の音を感じます。 (多田有花)

★唐黍の焼かるる熾に手をかざす/小川和子
そろそろ火が親しい頃になってきました。唐黍の焼かれる香ばしい香り、熾の色、掌に感じるぬくもり、それらが伝わってきます。 (多田有花)

★黒雲をすこし寄せつつ後の月/藤田裕子
十三夜は西日本ではお天気が下り坂でした。その予兆を感じさせる後の月の姿です。 (多田有花)

★掛軸の寒山拾得茶立虫/古賀一弘
掛け変えようとして久しぶりに出してみた「寒山拾得」の絵でしょうか詩でしょうか、それについた茶立虫に驚いておられるのでしょうか。 (祝恵子)

★しめやかに輝きを秘め後の月/井上治代
後の月を秘めやかな輝きとみられたことに憧れを感じます。 (祝恵子)

★口笛に応える囮の疲れ声/迫田和代
この囮は何なんだろうという気持ちにさせられます。お疲れさまということのようです。 (祝恵子)
仲間を呼び寄せる囮は籠の中の小鳥でしょうか、その囮に口笛を吹くとそれに応えてくれるが何だか疲れた声に聞こえる。作者はその囮に「大丈夫だろうか」と気づかっていらっしゃる優しい気持ちが伝わって来ます。(佃 康水)

★迎え待つ子等のにぎわい十三夜/上島祥子
お迎えを待つ間に十三夜を眺めながらの子供たち、どのようなお話がされているのでしょうね。 (祝恵子)
楽しいおしゃべりをしながらお母さんを待っているかわいい子ども達の姿が目に浮かびました。
十三夜の月が優しく子ども達を照らし、夜も更けていきます。(井上治代)

■選者詠/高橋信之
★十三夜月仰ぎ見る家族が居る
語り合える家族が居る小さな幸せ。(渋谷洋介)

★後の月少し傾き吾に親し
後の月は真ん円では無く少し欠けているので、その分少し傾いて居る様にも見えて参ります。その傾きこそが作者にとってより親しさを感じられたのでしょう。読み手にとっても月を身近に感じるとる事が出来ました。 (佃 康水)

★後の月くっきりとして吾に優し

■選者詠/高橋正子
★襟首に風のさびしい十三夜  
十三夜の頃の寒いと言うほどでもない微妙な体感を上手に表現されていると思います。襟首は一番よく風を感じるところですね。(黒谷光子)

★昇りては雲のみ照らし後の月
後の月が折角昇って来たのに周りに横たわっている雲ばかりを照らして居る。明るく淡い空では有るが雲に遮られない後の月を心待ちに仰いでいらっしゃる作者が見えて参ります。 (佃 康水)

★十三夜の月の明かりの駅みなみ

■互選高点句
●最高点(11点)
★十三夜豆炊く蓋の動きだす/佃 康水

●次点(7点)
★さざ波の音に更けゆく月の浜/下地 鉄

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

▼コメントのない句にコメントをお願いします。

■第17回(15夜)フェイスブック句会入賞発表■


■第17回フェイスブック句会■
■入賞発表/2012年9月30日■

【金賞】
★耕せし畝照らしけり満月光/古田敬二
「耕し」は、美しいまでの人間の作業。昼間丁寧に耕された畝を満月が照らす。照らされた畑の畝が生むそれぞれの影もまた美しい。(高橋正子)

【銀賞】
★直と立つ嵐の前の曼珠沙華/矢野文彦
曼珠沙華は、葉もなく茎がすっと伸びている。嵐の前には、その茎が「直と立つ」。それは台風を待つ作者の神妙な心理でもあろう。(高橋正子)

【銅賞】
★家々は灯りに集い無月かな/黒谷光子
満月のでない夜の暗さに、家々は灯りともし集っている。ましてや、今夜の十五夜は台風17号の来襲で、台風が過ぎるのを待たねばならない。そういうときこそ、灯りに集う家族のほのぼのとした温かさに和む。(高橋正子)

★水滴に秋の日かがやきミント摘む/高橋句美子
ミントの葉に如露の水か、水滴が付いて、それを静かな秋の日が輝かせている。そのきれいな水滴の付いたミントの葉を摘むゆっくりとそして爽やかな時間が若々しく詠まれている。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★家々は灯りに集い無月かな/黒谷 光子
生憎のお天気で月も姿を現しません。その空の下で、家々の灯かりは静かに寄り添い瞬いています。名月に思いを残しながら、人々との繋がりを優しく見守る作者の優しさ。(小西 宏)
残念ながら名月は望めない夜。しかし十五夜は十五夜。特別な夜だ。それぞれの家の灯りの下に十五夜の団欒が見える。(安藤 智久)

★騎馬戦の勝者は白組天高し/祝 恵子
ガッツポーズの拳の先に、広がる空が勝者のために在るようだ。(増田 泰造)

★宵待ちに流れ積み来る野分雲/小西 宏
十五夜の宵を待っているが、台風の接近に伴って野分雲がどんどん流れて、月が見えない夜空になっていく。流れ積み来るに残念に思う気持ちが感じられます。 (高橋秀之)

★うす雲の北へ北へと月待てば/高橋正子
列島を通過する台風の中での今宵の十五夜。「北へ北へ」と流れる雲の動きに、今日の夜空がありありと目に浮かびます。そのうす雲の流れる一刻に、十五夜の月を待ち望むお気持ちが込められているようです。 (藤田洋子)

★虫の音に風に包まれ月仰ぐ/藤田裕子
澄んだ虫の音も秋の夜風も快く、月を仰ぐひととき。そのひとときに身を置く作者の充実さが伝わり、心豊かな日本の秋を感じさせていただきました。 (藤田洋子)

★水滴に秋の日かがやきミント摘む/高橋句美子
★直と立つ嵐の前の曼珠沙華/矢野 文彦
★耕せし畝照らしけり満月光/古田 敬二

【高橋正子特選/8句】
★山の陰山に映りて澄み渡る/安藤 智久
山々が連なっている様子が目に浮かぶ。夏とは違う秋の山の静けさ、清々しさを感じる。(高橋 句美子)

★レモンの輪一つ新涼のティーカップ/藤田 洋子
ティーカップに添えられた輪切りのレモン、涼しくなったこの時季、一層爽やかさを覚えます。 (藤田裕子)
新涼の日の爽やかな気分が嬉しいです。テイーカップの中に浮かべた薄切りのレモンが目に浮ぶようです。(河野啓一)

★水滴に秋の日かがやきミント摘む/高橋句美子
雨上がりの朝、ミントを摘む楽しさ。微かにミントの香りがして、爽やかな秋の一日が思われます。以前ミントを庭に植えた記憶が甦りました。(河野啓一)

★虫の音に風に包まれ月仰ぐ/藤田裕子
澄んだ虫の音も秋の夜風も快く、月を仰ぐひととき。そのひとときに身を置く作者の充実さが伝わり、心豊かな日本の秋を感じさせていただきました。 (藤田洋子)

★幾筋の日矢の射したる花野かな/小口 泰與
雲を抜けて射す日矢が花野を輝かせる。広やかで美しい景色に日本の秋を思う。(高橋正子)

★秋の蝶にわかに風の攫ひけり/古賀一弘
気ままな秋風に蝶が攫われるように飛ぶ。透明感のある句だが、秋のさみしさ、命のあわれをふっと感じる。(高橋正子)

★家々は灯りに集い無月かな/黒谷 光子
★耕せし畝照らしけり満月光/古田 敬二

【入選/10句】
★濡れそぼつ夜道灯りに萩の花/桑本 栄太郎
雨で濡れている夜道を照らす明かりが道端の萩の花も照らし出し、くっきりと浮かび上がらせています。秋もいよいよ深まってきた感が醸し出されています。(高橋 秀之)

★相模湾暮れて刻々月高し/小川 和子
高台から湾全体を眺めておられるのでしょうか。昇っていく月の速さは地球が回転していく速さです。のびやかな大きな景色を目にし、昇っていく月の速さを堪能されている印象を受けます。(多田 有花)
相模湾を見下ろす丘で月の出を待っているのでしょうか。早い日暮れになると東の空に月が昇ってくる。刻々とその位置が変わる。おだやかな海の向こうに上がる月が見える句。(古田 敬二)

★高潮の波の飛沫きて無月かな/佃 康水
西日本から東日本の太平洋沿岸には台風の影響で高潮になり、岸に打ち付ける波の飛沫も高く打ちあがります。楽しみにしていた十五夜の月の変わりに高潮の飛沫を見る作者の気持ちは残念だったことでしょう。 (高橋秀之)

★なだらかな播磨の山の良夜かな/多田 有花
それまでの強風・大雨に変わりなだらかな播磨の山と透き通る良夜。台風が過ぎ、播磨の山の稜線もはっきりと見えたことでしょう。 (高橋秀之)
「だらかな」がよく効いて、リズムもよく、読んでほのぼのとした良夜が思われます。(小川 和子)

★壇ノ浦何か侘びしい秋の潮/迫田 和代
壇ノ浦と言えば源平最後の合戦が繰り広げられ、平家は敗れ滅んだと言い伝えられています。その事と連想し何か寂しい秋の潮と詠まれた気持が良く伝わります。(佃 康水)
秋の潮をみると何となく、壇ノ浦の悲しい物語が胸の内に浮かんでくるのでしょうか。 (祝恵子)

★風強し木々は唸りて月の雨/高橋 秀之
久々の強い雨風が木々を唸らして通り過ぎて行きましたね。 (祝恵子)

★颱風の宵の句会の淡々と/川名ますみ
日本列島は少なからず雨、風の台風に見舞われましたが、私達俳友の仲間は冷静に受け止め淡々と句会に参加させて頂きました。何に対しても冷静に受け止める事の大切さを学んだ様に思います。(佃 康水)

★ロシアより帰郷の子に先ず炊く新米/柳原美知子 
ロシア公演を終えられ帰郷された息子さんに、新米で労われた温かいお気持ちが滲みでています。(藤田裕子)

★月今宵甍の波も銀の色/河野 啓一
満月に照らされた屋根の甍が銀色に輝き、いつも見る色合いと違って、とても幻想的で美しく見えます。 (藤田裕子)

★狭庭にも片明り射す今日の月/増田 泰造
我が家の庭にも満月の明りが差し込んでくれています。満月に拝みたくなるような、有難いお気持ちになられたことと思います。 (藤田裕子)

■選者詠/高橋信之
★竹の一山大きく揺れて台風来る
暴風に煽られる竹林、その一山を大きく揺さぶるほどの凄さに、来る台風への驚きと緊張感が走ります。荒々しくも壮大な風景に、自然の脅威、自然の絶大なるエネルギーを感じずにはいられません。(藤田洋子)

★森を歩く新涼の土の匂い
残暑が長かった今年でした。それでもお彼岸を過ぎ、季節ははっきり変わりました。自然の中へ入るとそれがいっそうはっきりわかります。「土の匂い」は自然全体が発する新しい季節の匂いです。 (多田有花)

★無月という静けさの中に居る

■選者詠/高橋正子
★うす雲の北へ北へと月待てば
昨日の句会の時間経過を思いました。夕刻に台風が知多半島周辺に上陸。空模様を気にしながら句会のことを思っておられる様子が伝わってきます。 (多田有花)

★古書街をもどり無月の書に浸る
横浜は台風の影響で無月となったようですね。台風は台風で、無月は無月でそれを受け止め本に親しむひとときとされる。静かで落ち着いた生活を思います。 (多田有花)

★芒の穂むこうの闇のつややかに

■互選高点句
●最高点(7点)
★家々は灯りに集い無月かな/黒谷光子

●次点(6点)
★古書街をもどり無月の書に浸る/高橋正子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

▼コメントのない句にコメントをお願いします。

■第16回(結婚祝い)フェイスブック句会入賞発表■

■第16回フェイスブック句会■
■入賞発表/2012年9月9日■

【金賞】
★朝の田に光こぼしつ赤とんぼ/柳原美知子
朝の赤とんぼは、ことにきらきらと輝いている。「光こぼし」は的確な描写。朝の田の清々しさと、生き生きと飛ぶ赤とんぼが目に明らかだ。(高橋正子)

【銀賞】
★窓越しの鳴き澄む虫と夜を分つ/藤田 洋子
「夜を分かつ」によって、窓の外の虫音と内とが繋がって、しっとりと落ち着いた虫の夜となっている。「鳴き澄む」虫の声が透徹している。(高橋正子)

【銅賞】
★虫の音を聞くころとなり新所帯/多田 有花
結婚後の新生活も虫の音を聞くころになると落ち着いてきた。虫の音は、静かで落ち着いた生活の中でこそ聞きたい。時の経過がさりげなく表現されている。(高橋正子)

★メガネを外し決勝戦の土俵へと/安藤 智久
優勝を懸けた決勝戦の相撲。メガネがあっては、邪魔となる。「メガネを外して」はアマチュア相撲らしくユーモアがある。決勝戦の結果は如何に。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★虫の音を聞くころとなり新所帯/多田 有花
新所帯に虫の音、いいですね。新しい家庭もゆっくりと落ち着いて​きて、ふと気がつけば、そこにはもう虫の音が届く季節になってい​る。初々しさを保ちながらも、自然や世間に囲まれて豊かで静かな​暮らしが育っていく。(小西 宏)

★小鳥来る二人の未来幸あれと/河野 啓一
若い夫婦の未来は限りなく明るく希望に満ちています。小鳥の鳴き​声もお二人をお祝いしているようです。(井上 治代)

★まっすぐに伸びる狗尾草の影/高橋 秀之
「まっすぐに」伸びた狗尾草、その影のありようが、秋の初めの季節感を定かにとらえていると思います。爽やかな秋の風も感じさせてくれます。(藤田洋子)

★新涼や若き夫婦に空広し/井上 治代
毎年巡り来る秋の広い空も、若き新夫婦にとっては格別なことでしょう。秋の初めの涼しさも、また、二人の門出を感じさせてくれます。 (高橋秀之)

★朝の田に光こぼしつ赤とんぼ/柳原美知子
朝の田なればこそ、赤とんぼがいっそう鮮やかに目に映ります。澄んだ朝の空気に、「光こぼしつ」軽やかに飛ぶ赤とんぼの、繊細で清らかないのちを感じさせていただきました。(藤田洋子)
ほんのりと色づいた稲穂の波にホバーリングする赤とんぼの爽やかな息遣い。朝の清新な気とそこに零れる秋の色合いと。 (小西 宏)

★わけ合える二人にいよよ天高し/佃 康水
二年前でしたか、智久さまの「かき氷分け合う海の眩しさに」の御​句から、まばゆいまでに優しいお二人の姿を想いました。それから​、幾つかの季節を経て今、ご結婚をお祝いする句会。「わけ合える​二人」が、澄み渡る秋空のもと、なお清らかに想われます。 (川名ますみ)
喜びも悲しみもわけ合い、二人三脚でこれから歩んでいかれますお二人に、秋空は温かく祝福し前途に希望をもたらし高く高く広がっています。 (藤田裕子)

★山葵田の幾百枚が新涼に/高橋 正子
今迄は残暑の中の涼しさは有ったものの一時の涼しさを感じるもの。新涼は本格的な涼しさで、心地良い嬉しさが有る。人生の中でかけがえの無い奥様を迎えられ、幾百枚の山葵田のお仕事にも気合の入る喜びが有り、山葵田もこの新涼に活き活きと見えて参ります。 (佃 康水)

★メガネを外し決勝戦の土俵へと/安藤 智久
優勝を懸けた決勝戦の相撲。メガネがあっては、邪魔となる。「メガネを外して」はアマチュア相撲らしくユーモアがある。決勝戦の結果は如何に。(高橋正子)

【高橋正子特選/8句】
★堂裏の寸土を満たし花茗荷/黒谷 光子
ここでは茗荷の子と思われるが、秋めいて朝夕涼しくなれば茗荷の​花は咲いて来る。澄まし汁、薬味、漬物にと用途は多く主婦にとっ​ては嬉しい季節の一品である。「寸土を満たす」との措辞に、日々​の生活の中にも季節の移ろいの発見と、狭い国土を豊かに利用して​来た日本古来の喜びが此処にはある。美しい日本語である。(桑本 栄太郎)

★窓越しの鳴き澄む虫と夜を分つ/藤田 洋子
夜長に、好きな読書や趣味などしながら、ふと窓越から聞こえくる​虫。「夜を分かつ」虫の音を生活の中にも取り入れていて、素敵な​句です。(祝 恵子)
「夜を分つ」に余韻を残すとともに、きっぱりとした決断も感じられます。「鳴き澄む虫」に心傾けながら「窓越し」に心を交わす清清しさ。 (小西 宏)
秋の夜は夏と違い窓を開けているので、窓越しに鳴く虫の音も澄んだ声で聞こえてきます。そんな虫の音と夜を過ごす、秋の風情はのどかな楽しいひとときです。 (高橋秀之)

★虫の音を聞くころとなり新所帯/多田 有花
これまでは一人で住んでいた住まいが、新婚夫婦の住まいとなり虫の音も二人で聞くようになりました。新所帯となり虫の音も楽しく聞こえることでしょう。 (高橋秀之)

★峠まで来し秋蝶の高みへと/小川 和子
ちょっとした山を歩くと、こんなところまでと思う高みにまで蝶が飛んできています。そして更にも登り続けるる気配。秋の日を思えば、蝶にとっては大冒険であったでしょうのに。ようやく登ってきた自分自身ともども、感慨ひとしおです。 (小西 宏)

★秋の虹朝輝かせ婚祝う/藤田 裕子
お二人の結婚を祝い大きな虹がかかりました。虹は未来へのかけ橋となり、朝空に輝いています。大いなる自然に抱かれている幸せに感謝したいと思います。 (井上治代)

★邯鄲や塵箱さへも真っ新よ/小口 泰與
新所帯の道具はどれも新しいものばかり。邯鄲さえ祝ってくれているようです。(祝恵子)

★メガネを外し決勝戦の土俵へと/安藤 智久
優勝を懸けた決勝戦の相撲。メガネがあっては、邪魔となる。「メガネを外して」はアマチュア相撲らしくユーモアがある。決勝戦の結果は如何に。(高橋正子)

★秋水の途ぎれぬ流れ山葵田へ/高橋 信之
山葵田へと注がれる、曇りのない秋の水がことさら清く澄み通り、清爽の感を覚えます。美しく秋気澄む山葵田に心洗われ、お二人への心を込めた祝句と思います。(藤田洋子)

【入選/18句】
★虫の音の重なり合うて夜の更ける/黒谷 光子
虫の音色にはそれぞれ風情があり、鳴いている所・時・数によって​も趣が違う。その虫の鳴き競う音色を聞いていると夜の更けるのも​忘れてしまうほどですね。趣があり素敵な句だと思います。(小口 泰與)

★また一つ木槿咲く朝婚祝う/藤田 洋子
夏の頃から次々と花を咲かせて楽しませてくれる木槿。一日花です​から、毎朝新しい花が咲きますね。「また一つ」「咲く朝」に、ご​結婚されたお二方へのやさしい祝意が、静かに温かく伝わってきます。(小川 和子)

★鉦叩静かな夜の仏間にて/祝 恵子
夜もだいぶ更けてきた頃、仏間に居ますと、どこからか鉦叩の声が聞こえてきました。リズムよく音を生み出し、聞いていて楽しくなります。 (藤田裕子)

★清流のふたりの散策沢桔梗/桑本 栄太郎
さらさらと流れる川のほとりを二人で散策するのは楽しく、岸辺の沢桔梗も可憐な花を咲かせています。ゆったりとした時間が流れていき、幸せなひとときです。(井上治代)

★ゆく路は富士も山葵も水も澄み/川名 ますみ
秋の澄んだ空気が、富士も山葵を、そして水までもが澄んできれい​に見えます。秋になり気持ちのよい季節を迎えた喜びが周りのもの​が澄んで見えることで心地よく感じられます。(高橋 秀之)
新生活の始まったお二人はこれから長い道程を歩んで行かれますが、日本一の富士山も彼のご職業である山葵田もそしていのちに一番大事な水も美しく澄み渡っている。新婚夫婦へのお祝いと応援のお気持が良く現われて居る様に思います。 (佃 康水)

★水の秋スカイツリーの影映し/渋谷洋介
満々と水をたたえた川にスカイツリーの影が映り、秋風が爽やかに感じられます。隅田川でしょうか、大きな景が浮かんでまいります。 (藤田裕子)
涼しげな風と共に、川岸や川船などからもスカイツリーを眺め、水面には影をうつしています。名所が増えましたね。(祝恵子)

★彩雲のやがて暮れゆき虫の声/小西 宏
美しい色の雲も夕暮れになると、しだいに闇に包まれてゆきます。すると、どこからか虫の声が聞こえはじめ、美しい音楽を奏でてくれます。心安らぐ情景です。(井上治代)

★初秋や檜の樋の水美味し/古田 敬二
秋の山から流れ来た清水を受けてある檜の樋、飲めば一息つける美味さである。(祝恵子)

★この良き日総て明るい虹の橋/迫田 和代
ご結婚と言うこの良き日、目に映るもの総てが明るく見えて来る。七色の美しい虹の橋をお二人で渡りたい気持でしょう。これからのご多幸を句友の皆さんと共にお祈り申上げたい句です。 (佃 康水)

★サイロ立つ丘一面に朝の露/佃 康水
サイロ立つ牧場の朝の清々しさに、丘一面の草に宿る露の美しさ、​格別の秋のさやけさに心澄む思いがしました。(藤田 洋子)

★野に光る鍬の切っ先秋アカネ/古田 敬二 
土を打つ鍬の切っ先も光り辺り​には赤とんぼも飛んでいます。蕪や大根を撒く時期になりましたが​、畑仕事をとても楽しんでしていらっしゃる様子が伝わります。赤​とんぼも応援しているようです。(黒谷 光子)

★竹林の古びし句碑やつづれさせ/渋谷洋介
薄暗い竹林に古い句碑がある。その措辞だけでも、何となく侘び​,寂びを感じますが、こおろぎの鳴く声に更に秋の風情が高まりま​す。日中はまだまだ残暑が続きますが、もう秋ですね。(佃 康水)

★秋の虹消えゆく沖へ出漁す/柳原美知子 
夜明けの虹が大きく孤を描いて空​に消えて行く頃、エンジンの音を響かせ漁船が沖へ出て行く。勇壮​で大きな景が目に浮かんできます。(河野 啓一)

★虫の夜につぎつぎ祝いの句の届く/安藤 智久
昨夜の様子そのままですね。「俳句は挨拶」という言葉が思い出さ​れます。その場の情景を的確に詠まれると同時に、素晴らしいお祝いの挨拶​句になっています。(多田 有花)

★虫の音の重なり合うて夜の更ける/黒谷 光子
虫の音色にはそれぞれ風情があり、鳴いている所・時・数によって​も趣が違う。その虫の鳴き競う音色を聞いていると夜の更けるのも​忘れてしまうほどですね。趣があり素敵な句だと思います。(小口 泰與)

★秋の星瞬く点を結んでみる/高橋句美子
都会で秋でも見える星座といえば、北斗七星やカシオペア、上手くいけばはくちょう座。そんな秋の星座を見つけて星と星を結んで形を作り、星座と確認する。静かな夜の思索のひと時を思わせる句である。(古田敬二)

■選者詠/高橋信之
★酔芙蓉に空一枚の透きいて青し
淡紅色の酔芙蓉、その上に広がる​真っ青な空、澄んだ空気が感じられ爽やかな光景が浮かんでまいり​ます。(藤田裕子)

★秋水の途ぎれぬ流れ山葵田へ
山葵田へと注がれる、曇りのない秋の水がことさら清く澄み通り、清爽の感を覚えます。美しく秋気澄む山葵田に心洗われ、お二人への心を込めた祝句と思います。(藤田洋子)

★秋蝉鳴く朝日の低く差し来れば
夜が明けると蝉の声が聞こえます。しかし、秋の深まりとともにしだいに細くなっています。そこに差す朝日の角度もまさに秋そのもの、空気にはさわやかさが加わっています。(多田有花)

■選者詠/高橋正子
★山葵田の幾百枚が新涼に
今迄は残暑の中の涼しさは有ったものの一時の涼しさを感じるもの。新涼は本格的な涼しさで、心地良い嬉しさが有る。人生の中でかけがえの無い奥様を迎えられ、幾百枚の山葵田のお仕事にも気合の入る喜びが有り、山葵田もこの新涼に活き活きと見えて参ります。 (佃 康水)

★一段と空澄み咲きつぐ秋海棠/高橋正子
涼しさが増し、空が高くなり始める頃です。可憐な秋海棠の花がうつむきながら咲くのもこのころ、空の青さにピンクが映えます。(多田有花)

★深まれる秋の真中の酔芙蓉/高橋正子
酔芙蓉は芙蓉の一種です。咲き始めは真っ白ですが、時間の経過と共にしだいに紅色を帯びてきます。その様子がお酒に酔っているようだとして、酔芙蓉の名になりました。アルコールに弱い人が多い日本ならではの名づけと思います。この花が咲き始めると、秋は本番です。(多田有花)

■互選高点句
●最高点(7点)
★秋水の途ぎれぬ流れ山葵田へ/高橋 信之

●次点(6点)
★ゆく路は富士も山葵も水も澄み/川名 ますみ

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

■第15回(立秋)フェイスブック句会入賞発表■

■立秋句会入賞発表■
■入賞発表/2012年8月9日■

【金賞】
★蝉時雨ひとりの部屋の音を消す/矢野 文彦
ひとりの部屋は、ひとりが作る小さな音。その音は蝉時雨に消されてしまって、部屋は蝉時雨でいっぱい。部屋が大樹の茂る戸外になったようにも思える。(高橋正子)

【銀賞】
★サクサクと野菜切る音涼​しかり/井上 治代
野菜を切る音が「サクサク」と快い。快さは涼しさに通じて、生活のこんなところにも喜びを見つけることができる。(高橋正子)

【銅賞】
★夏川に浮かべば遠き街の音/安藤 智久
夏川に小さな舟で浮かんだのか、筏のようなもので浮かんだのか。自然のただ中に居るのとは違って、街の音が遠く聞こえる。夏川と街との程よい距離感が新鮮な感覚で捉えられている。(高橋正子)

★夏惜しむ胸まで潮に浸りけり/小野寺 靖
胸まで深々と海の潮につかる。潮の匂い、水の冷たさ、照らす太陽など、もろもろを体全体の感覚で捉えて、それが「夏惜しむ」の心情となっているのがよい。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★青田風立たせ列車は駅に入る/藤田 洋子
日差も強く、植田が青一色に輝き、より一層鮮やかになる青田。そ​の田に風が吹き渡る山里の駅に鈍行列車が入行して来る。見るから​に穏やかな山里の景が見えてきます。(小口 泰與)

★窓一枚開け立秋の朝なりき/高橋 正子
いつもと同じように窓を開けても、これまでと違う立秋の朝の感覚​を味わうひとときがとても清々しいです。(高橋 秀之)

★夏惜しむ胸まで潮に浸りけり/小野寺 靖
楽しい夏だったのでしょう。そんな夏を惜しまれてじっと潮に体を​浸たされたお気持ち。じんときます。(迫田 和代)

★分校の五右衛門風呂や夏休み/古賀一弘
分校でキャンプをされたのでしょうか。五右衛門風呂に浸かり、楽しい夏休みの思い出を振り返っていると、暑い夏の物憂さも吹き飛んでしまいそうです。爽やかな秋もすぐそこまできています。 (井上治代)

★漱石の旧居への坂つくつくし/柳原美知子
松山の町の坂をのんびりと歩き、秋を感じられたのでしょう。「漱石の旧居」が「つくつくし」とよく響き合い、城下町の景色に親しみを感じさせてくれます。(小西 宏)

★サクサクと野菜切る音涼​しかり/井上 治代
「サクサクと」の音の清々しさに、新鮮でみずみずしい野菜も目に​見えるようです。夏の暑さの中にあって、日常のお暮らしの中での​一抹の涼しさに、心明るく楽しくなれます。(藤田 洋子)

★おみなえし一朶の雲を連れており/高橋 正子
おみなえしは秋の七草の一つでも有り、背が高く風に揺れる姿は楚々とした美しい女性を連想させ、万葉集にも多く詠まれた花だと聞いています。そのおみなえしが一朶の雲を侍らせている様で、万葉の世界のロマンと重なります。 (佃 康水)

★百日紅火の見櫓は雲に浮き/祝 恵子
青空をバックに百日紅が赤く燃えるように咲いています。遠方に目をやると、白い雲に浮いているように火の見櫓が見えます。一枚の絵を見るようで、鮮やかな景が浮かんできます。 (藤田裕子)

【高橋正子特選/8句】
★立秋の川面ひとすじ藻の緑/藤田 洋子
連日の暑さに少々うんざりしている時、ふと川面を眺めるとひとす​じの緑の藻が透けて見え、その一瞬に秋を実感されたのでしょう。​立秋の爽やかさが伝わって参ります。(佃 康水)
秋立つ日の川辺、少しだけ陽射しが柔らかくなり、水面の光も昨日​よりおだやかです。そこにひとすじ走る、藻の緑。爽やかな川面に​、気分も新たになるような涼しさを感じます。(川名 ますみ)

★今朝の秋ラジオの声に胸広げ/藤田裕子
立秋の朝のラジオ体操の溌剌とした明るさ。(小野寺 靖)

★水鉢に雨を数える涼しさよ/川名ますみ
睡蓮を活けておられる水鉢でしょうか。雨の音に透明感が感じられ、涼しさに共感いたします。(小西 宏)

★ひろしま忌祈りの席や万の椅子/佃 康水
八月は祈りの月です。特に原爆の惨禍を受けられた地の方には、祈りの気持ちがいっそう深いものと思います。「万の椅子」にそれが象徴的に表されています。 (多田有花)

★蝉時雨ひとりの部屋の音を消す/矢野 文彦
多くの蝉が降って来る様に一斉に鳴いて、今まさにせみ時雨の時期です。色んな種類の蝉が鳴くので、部屋の音を消してじっと聞き入るのも秋ならではですが、何となく秋の寂しさも感じますね。 (佃 康水)

★お土産と音零しつつ江戸風鈴/黒谷 光子
東京土産の江戸風鈴を持っていくと、中を開ける前から風鈴の音が零れてくる様子は、吊った風鈴とは違う風情があります。(高橋秀之)

★夏川に浮かべば遠き街の音/安藤 智久
夏の川にゆったりと浮かんでいる。街の音は遠く、ゆっくり流れる時間がそこにあります。(高橋秀之)

★夜の秋五輪の記録かけめぐる/矢野 文彦
今、オリンピックが熱く報じられています。選手の皆さんの健闘ぶり、メダルの数、すばらしい記録が生まれています。国民が一丸となって応援している夜の秋です。 (藤田裕子)

【入選/19句】
★風のふと身に添う岸辺秋立ちぬ/藤田 洋子
気づけば風が身に心地よい。ああ秋になったのだと思われたのでしょう。「ふと身に添う」こういう風に気付きたいものです。綺麗な​句ですね。(祝 恵子)

★風鈴の音心地よく縁を拭く/黒谷 光子
縁側はよく風が通ります。そこを拭き掃除しておられます。時おり風が風鈴を鳴らし、詠者もその風に吹かれます。吹いてくる涼風の​感覚が伝わってきます。(多田 有花)

★金魚鉢に小粒の餌のひとつまみ/安藤 智久
金魚鉢に広がり揺れる赤く薄い大きな鰭。そこに小さく広がり沈ん​でいく小粒の餌をぱくりと口に入れる。(フッと、いったんは吐き​出してみせる動作もあるのかもしれません)。「ひとつまみ」が宜しい。金魚鉢にまつわる一編の物語を読むようにイメージが広がります。(小西 宏)

★炎昼の湯の介護士の美脚かな/矢野 文彦
健康美溢れる介護士さんの介助の下、炎昼の汗だくの身体を湯に浸す至福のひととき。介護士さんとの日頃の温かい交流が思われ、ほの​ぼのとした気持ちになります。(柳原美知子)

★低空のヤンマ草原平らかに/小西 宏
草原の草の丈すれすれに颯爽ととぶヤンマの勇姿が目にうかび、草​原に立つ心地よさも伝わってくるようです。(小川 和子)

★石鎚の山を真中に夕虹立つ/柳原美知子
眼の前には石鎚の山が聳え立ち、夕方の虹が大きく半円を描き美しい光景です。まるで一枚の写真をみているような感じがしました。(井上治代)
石鎚山は四国第高峰その峰真ん中にして夕虹が立った。大きな景、清々しい感じのする雄大な句である。(古賀一弘)

★東天の雲を黄金に今朝の秋/多田 有花
立秋の日の出の景が鮮やかに詠まれています。雲を黄金にしつつお日様が見えてくるのが素敵です。(藤田裕子)

★立秋といえどあちこちほしい白/迫田 和代
立秋がきたとはいえ、今年は猛暑でまだまだ暑い日が続きそうです。そのような時に清澄な白い色に出合うとほっとします。白い雲、白木槿などを眺め涼しさを味わいたいものです。 (井上治代)

★ここちよき風の目覚めや今朝の秋/桑本 栄太郎
涼しい風に目覚めると、気持のよい一日が始まります。立秋の日の風は昨日とはまたひとつ違った感じがします。これから、一日一日秋も深まっていくことでしょう。 (井上治代)

★山女の斑(ふ)光りて谷の雲迅し/小口 泰與
川の流れの中の山女なのでしょう。すばやい泳ぎによって斑点が流れ耀き、それが迅い雲の流れと競い合っているうです。ひんやりとした渓谷の涼しさが伝わってきます。(小西 宏)

★今朝の秋白雲なびく生駒山/河野 啓一
季節が変わる日の朝の新鮮な思いは俳句を詠む人ならではです。元日にも似たすがすがしいものを感じます。その新鮮な気持ちが御句から漂ってきます。 (多田有花)

★遥けしや秋夕焼のわが帰路に/小川 和子
この時期はまだ日が長く全天を染めるような夕焼けが見られます。そうした夕焼けの中を家路につかれているのでしょう。徒歩かあるいは乗り物か、いずれにせよ人生の歩みの中の美しい夕焼けです。 (多田有花)

★睡蓮の花びらを透く陽よ水よ/川名ますみ
水に濡れた睡蓮の花を美しくリズムよく詠まれたのが印象的です。静けさの中にも、差し込む陽の光や水の滴りの動きが感じられるように思いました。(河野 啓一)

★水鉄砲の水滴残る窓ガラス/安藤 智久
しばらく水鉄砲で遊んだ子供たちがどこかへ行ってしまったのでしょう。窓ガラスに残った水滴が、子供たちの嬉しそうな顔や歓声を残しています。(黒谷 光子)

★鎮魂の沖より花火揚がりけり/小野寺 靖
去年の今頃はまだ花火どころではなかったが、漸く少しづつ普段の生活が戻りつつある震災による被災の地。しかし沖の海の底には、津波で流された御霊が未だ沢山収容されていない事を想うとき、美しい花火も作者の深い鎮魂の思いなのである。(桑本 栄太郎)

★新涼や鴨の水輪の交差する/古田 敬二
水面を滑らかに泳ぐ鴨たち、生まれる水輪も交差して、まだ厳しい残暑を身に覚える中で、秋になっての爽やかな清涼感を感じさせていただきました。(藤田洋子)

★透き通る烏賊の刺身や日本海/高橋 秀之
漁期は夏場が多く旬な烏賊、透き通る烏賊の身がことさら美しく涼しげで、日本海ならではの美味しさを感じさせてくれます。(藤田洋子)

★立秋の驟雨竹薮騒がせて/多田 有花
急に降りだした雨にざわめく竹藪、竹の葉擦れもさやさやと、驟雨の雨の清々しさも加え、ことさら秋の立つ気配が感じられます。(藤田洋子)
大粒の雨が急に激しく降って来て竹薮はざわめき始めた。しかし、それも短時間でからりと上がり、何となく涼気を感じ、さすが秋だなと実感されたのではないでしょうか。(佃 康水)

★あぜ道に忽と湧き出づ秋茜/小口 泰與
夏の風景だったのが、赤とんぼは突然に湧き出るように現れ、里の​景色が秋の透き通った色に一変した。鮮やかな季節の変化だ。(安藤 智久)

■選者詠/高橋信之
★花合歓の光あふるる下に居る
合歓の花は小枝の先に絹糸のような細い紅色の雄花をつけます。先​端のほうは紅で下のほうは白くまるで赤い光を吹いているように見​える。中七の「光りあふるる」はその有様をうまく表現しており、その花​を見上げる作者の姿が見えます。(古田 敬二)

★古代蓮明るし楽し朝の中に
古代蓮の美しさが朝の空間を占め、そこは明るい楽しい世界となっています。俗世間を忘れ、極楽浄土に身を置いているような清らかなお心になられたことと思います。 (藤田裕子)

★カサブランカに吹く朝風が白い

■選者詠/高橋正子
★窓一枚開け立秋の朝なりき
いつもと同じように窓を開けても、これまでと違う立秋の朝の感覚​を味わうひとときがとても清々しいです。(高橋 秀之)

★おみなえし一朶の雲を連れており
おみなえしは秋の七草の一つでも有り、背が高く風に揺れる姿は楚々とした美しい女性を連想させ、万葉集にも多く詠まれた花だと聞いています。そのおみなえしが一朶の雲を侍らせている様で、万葉の世界のロマンと重なります。 (佃 康水)

★沖見つつ海で泳ぐことを捨て

■互選高点句
●最高点(8点)
★花合歓の光あふるる下に居る/高橋信之

●次点(7点)
★窓一枚開け立秋の朝なりき/高橋正子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

■第14回(七夕)フェイスブック句会入賞発表■

■七夕句会入賞発表■
■入賞発表/2012年7月9日■

【金賞】
★山の湯へ七夕笹を潜り入る/佃 康水
七夕飾りをしてある山の湯。七夕飾りをさらさら鳴らして湯に入るという、抒情ゆたかな七夕が詠まれている。(高橋正子)

【銀賞】
★梅雨明けを待ちつつ髪を切りにけり/多田有花
梅雨の間は特に髪が重いと感じるのだが、梅雨明けのさっぱりした気持を思いつつ、髪を切る。これで気持ちの中では一足先に梅雨が明けそうだ。(高橋正子)

【銅賞】
★梅雨の森また静やかに葉を鳴らす/小西 宏
梅雨の森は青葉が茂りしんとして緑の奥深さを感じる。風に鳴り止んだ葉が、またも静かに葉を鳴らす。なんと、ひそけく「静やか」なことであろう。深い明るさがある。(高橋正子)

★嵐去り蜻蛉生れ​て田の上に/井上治代
嵐が去ると、さっそく生まれ出た蜻蛉が田の上を勢いよく自在に飛んでいる。田の緑、蜻蛉のすずやかさに、生き生きとした爽やかさ季節が読みとれる。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★山の湯へ七夕笹を潜り入る/佃 康水
七夕飾りをしてある山の湯。七夕飾りをさらさら鳴らして湯に入るという、抒情ゆたかな七夕が詠まれている。(高橋正子)

★梅雨明けを待ちつつ髪を切りにけり/多田有花
梅雨の頃は、伸びた髪をうっとうしく感じるもの。さっぱりと髪を切り、間もなく訪れるでしょう、梅雨明けの厳しい暑さにも備えます。(川名ますみ)
雨の降る日が多いい今年の梅雨。それでも日毎に気温が高くなりつつあります。梅雨明けを期待し、早めにさっぱりと髪を短く切った作者の心情がよく表現されています。(桑本 栄太郎)

★梅雨の森また静やかに葉を鳴らす/小西 宏
しっとりと濡れた梅雨の森の静けさ。再び降ってきた雨の音がさらさらと高いところで葉を鳴らし、ぽつりぽつりと落ちてくる。静かな気持ちにさせてくれる句。(安藤 智久)

★なでしこの苗に花あり風があり/高橋正子
なでしこの苗に花がつき、その花が風に揺れている。何気ない一瞬ですが、そこに自然の素晴らしさ、喜びがあります。(高橋 秀之)

★でで虫の飼育係の一年生/高橋亜紀彦
入学してから三ヶ月、一年生の皆さんももういろいろな係を受け持って頑張っているのですね。子どもたちの好奇心もうかがい知れ、とても微笑ましい俳句です。(小西 宏)
でで虫の飼育に携わりいろいろな発見や驚きの一年生。初々しい一年生のお子さんへ寄せるお気持ちに、でで虫のほのぼのとした親しみをより感じさせてくれます。(藤田洋子)

★天城路に色濃く紫陽花つづきけり/安藤 智久
天城山に連なる路には色鮮やかな紫陽花が続いている様子は、夏の清々しい自然の様子を伝えてくれています。(高橋秀之)

★千切っては塩かけキャベツ酒を飲む/野澤 裕
日常のささやかな楽しみであろうが、詠み手の姿がありありと伝わってくる。読み手も自身の姿を見るようで楽しい。日常の生活は、ささやかであっても楽しみがある。(高橋信之)

★七夕飾りを通り抜ければ山が見ゆ/高橋正子
平塚、あるいは仙台の七夕祭りを想起させられます。懐かしく心安らぐ風景描写に惹かれました。(野澤 裕)

【高橋正子特選/8句】
★山の湯へ七夕笹を潜り入る/佃 康水
七夕飾りをしてある山の湯。七夕飾りをさらさら鳴らして湯に入るという、抒情ゆたかな七夕が詠まれている。(高橋正子)

★嵐去り蜻蛉生れ​て田の上に/井上治代
嵐が去ると、さっそく生まれ出た蜻蛉が田の上を勢いよく自在に飛んでいる。田の緑、蜻蛉のすずやかさに、生き生きとした爽やかさ季節が読みとれる。(高橋正子)

★鹿の耳ぴんと立ちいし茂りかな/安藤 智久
山路を歩いていて偶然鹿に遭遇されたのでしょうか。見た人も見られた鹿も驚きのまあるい眼。 ピンと耳を立てた鹿の緊張感が伝わってきます。(古田 敬二)

★さらさらと青葉ふれあう星祭/小西 宏
夏風に青葉が揺れ、葉擦れの音が涼やかです。その音は織姫​と彦星のささやきのようでもあります。(井上治代)

★七夕の飾りふれゆく親子連れ/祝 恵子
笹飾りの並ぶ街並みでしょうか。あるいは商店街の七夕飾りでしょうか。ゆっくりと夕涼みがてらそぞろ歩き、語り合い、飾りを眺め歩くのでしょう。ちょっとした仕草を捉えたところに説得力があります。(小西 宏)
小さな子を連れた親子連れであろう。七夕飾りを見て、つい、どのような願いが書いてあるのか手を触れてみてしまう。ほのぼのとした親子の会話がそこに見えてきます。(高橋秀之)

★スカイツリーに七夕星の点しあり/小野寺 靖
今名所となっているスカイツリーに七夕星をイメージした電飾が点った。夜空に高く点る灯りの美しさは、見る人を惹きつ七夕の抒情に浸らせてくれる。(高橋正子)

★待宵草の黄花を空へくっきりと/高橋信之
帰化植物ながら荒地でも逞しく自生する待宵草。黄花なればこそ、いっそう鮮やかに空に映えます。夏空へ黄花を向け、明るく生き生きと立つ待宵草です。(藤田洋子)

★夏燕の一閃雨後の空締まる/藤田洋子
滂沱と降った雨の後のまだ濡れたような空を夏燕が一瞬の間に過る。「一閃」の速さなのだ。空さえも引き締まるのだ。(高橋正子)

【入選/20句】
★地に咲ける星のきらめき額の花/小川和子
額の花の美しさを「地の星」と見立てたのが秀逸。(高橋 亜紀彦)

★合歓の花雨に明るき湖岸沿い/黒谷光子
合歓の花は雨がよく似合う。「雨に明るき」という措辞が好く効いている。(古賀一弘)

★星祭る銀座通りの軒端ごと/川名麻澄
星祭りの彩りに飾られた銀座通りが、とりわけ新鮮に目に映ります。いつもと違う街の趣に、ことに涼やかな心楽しさを感じられたのでしょう。(藤田 洋子)

★黄昏の淀屋橋から虹伸びる/高橋秀之
淀屋橋が効いています。淀屋という江戸時代の悲劇の豪商にちなんだ地名、現代の大阪の街、そこから伸びる虹、そこにさまざまな物語が感じられます。(多田有花)

★雨の青田小さき水輪の列をなし/柳原美知子
青田に雨が降り続いている様子がとてもきれいに詠まれています。「小さき水輪」が素敵です。(藤田裕子)

★梅の実の熟れて明るき色ころぶ/小西 宏
青葉の中に採る人もいず、熟れて黄色く熟した梅が沢山青葉の中に見る事が出来る。その中のひとつふたつが落ちて転がって行く様を的確に詠っていると思います。(小口 泰與)
「色ころぶ」にひかれました。梅の実の蒸れたにおいが数か所に転がりるお庭でしょうか、お庭を持つことに、憧れます。(祝 恵子)

★ミニトマト娘のポケットに入れてやる/祝 恵子
自家製のミニトマトでしょうか?食べ頃に熟れたミニトマトを娘のポケットに入れてやる。親子ならではの微笑ましい絆を垣間見る様です。(佃 康水)
家庭菜園の愉しい一こまがさらりと描かれていると思います。(河野 啓一)

★里の灯のぽつりぽつりと星涼し/井上 治代 
梅雨時の今、日中は蒸し暑い中、夕暮れになり、人里にもぽつりぽつりと生活の灯がともります。ちょうどその頃、夜空にも星が一つ、二つと見えはじめるのでしょう。涼しげで心にしんと届く好きな句です。(小川 和子)
田畑の闇は広く、ぽつりぽつりと灯された里の明かり。その明かりの慎ましさが、夏の星に呼応していて涼しげである。(安藤智久)

★あおあおと稲匂いきて青田波/河野啓一
稲が育ってはや波打つようになってきました。そこに風が通っていきます。風が運ぶ青い稲の香り、間もなく梅雨明けです。(多田有花)
稲苗ももうずいぶん大きく育ってきて、青く逞しい葉を風になびかせているのでしょう。そして稲からは「あおあおと」した匂いが流れてきます。瑞々しい田の風景です。(小西 宏)

★桜桃の箱よりあふれ朝市場/上島祥子
どっさり市場に運び込まれた桜桃。市場は活気に満ち、その中で新鮮な桜桃が買われていきます。売る人、買う人の喜びが感じられます。(多田有花)

★夏霧の降りおる丘や牛の声/小口泰與
霧が立ち込める朝の放牧場、牛舎を出た牛たちが思い思いの場所へとカウベルを鳴らしながら歩いていきます。やがて霧は晴れて青空へと変わるのでしょう。(多田有花)
細かな霧の粒が降る幻想的な丘の風景。そこに聞こえる牛の声や息づかいが生々しくてリアルである。(安藤智久)

★絵団扇のほど良き風の生まれくる/藤田裕子
暑い日が続くようになって来る季節。絵団扇からのほどよい風がとても心地よい。穏やかな日常の時間がゆったりと流れる風情があります。(高橋秀之)
クーラーや扇風機が殆どですが、団扇の風も捨てがたく、描かれ​ている絵も涼しさを呼ぶようです。風情のある光景です。(黒谷光子)

★一花のみ残る夕闇沙羅の花/桑本 栄太郎
梅雨の夕闇に暮れ残る一輪の沙羅の花の気品漂う白さが仄かな匂いと共に浮かびあがります。日本画を観るようです。(柳原美知子)

★七夕の海風ゆたかに吹き上ぐる/柳原美知子
七夕の日に吹き上げる海風が、清々しく爽やかです。海風に立つ作者の、心身ともの充実感がうかがえ心明るくなれます。(藤田洋子)

★こだまして遠郭公の秩父かな/古賀一弘
秩父山系の山並みに郭公がのびやかに啼き交わし、こだまします。「遠郭公」という季語がよく効いて、さわやかで清々しい秩父路が想われます。 (小川和子)
遠くで鳴く郭公の声が秩父の山々にこだまし、澄んだ空気の中、とても爽やかな光景が浮かんでまいります。(藤田裕子)

★藪陰にある純白という芙蓉かな/古田 敬二
藪陰に咲いている白芙蓉の純白と言われるほど美しい姿に感動されたことと思います。(藤田裕子)

★朝焼けや始発の駅に列車来る/高橋秀之
いつも見ている光景と違って、早朝の美しい朝焼けの中、列車の近づいてくる景はとても印象的で心に残ります。(藤田裕子)

★極楽の余り風かな軒風鈴/古賀一弘
心地よい風を「極楽」と表現することに感謝をもって日常を​送る作者さまの素敵な心根を感じます。(上島祥子)

★夏河原どのスポーツも声高く/川名ますみ
多摩川などの河原には、野球場やテニスコートなどがあって、思い思いにプレーを楽しんでいる。青草や川の流れの勢いの乗じるように、出す声も高くなる。生き生きとした人の活動場面。(高橋正子)
夏河原ではキャッチボールやバトミントンなど軽快なスポーツを楽しんでいらっしゃる 人達の声が高らかに響き渡っている景色が見えて来ます。大空のもと開放的で見て居ても気持良いものですね。(佃 康水)
 
★初蝉の耳の鳴るごと雨上がる/桑本栄太郎
初蝉を聞いたがまだ耳の底に鳴るような感じで終わった。雨上がりの穴から抜け出たばかりの蝉の声が確かに蝉の季節が来たことを告げている。。(高橋正子)
雨が上がり、耳を傾けていると、恰も耳の鳴って居るかのような初蝉の声が小さく聞こえて来たのですね。梅雨明けも間近い時期の初蝉を上手く表現されて居ると思いました。蝉時雨となる夏ももう直ぐですね。(佃 康水)

■選者詠/高橋信之
★待宵草の黄花を空へくっきりと
帰化植物ながら荒地でも逞しく自生する待宵草。黄花なればこそ、いっそう鮮やかに空に映えます。夏空へ黄花を向け、明るく生き生きと立つ待宵草です。(藤田洋子)

★芭蕉居しと夏萩の紅明らかに
★今日七夕の雨降り悲しみの記事

■選者詠/高橋正子
★なでしこの苗に花あり風があり
なでしこの苗に花がつき、その花が風に揺れている。何気ない一瞬ですが、そこに自然の素晴らしさ、喜びがあります。(高橋秀之)

★小さき街の七夕飾りはすぐ尽きぬ
身近な、小さな商店街に飾られた七夕飾り。ちょっと歩くとすぐに尽きてしまった。静かな、しっとりとした七夕祭。忘れられぬ余情。(小西 宏)

★七夕飾りを通り抜ければ山が見ゆ
街の活性化を願っての七夕飾りでしょうか。吹流しや七夕竹などが彩り良く軒先に並んで居る。その七夕飾りを通り抜けると向こうに山が見えて来る。七夕飾りの通りの賑わいとそして街外れの静けさと両面の景色が見えて参ります。(佃 康水)
平塚、あるいは仙台の七夕祭りを想起させられます。懐かしく心安らぐ風景描写に惹かれました。(野澤 裕)

■互選高点句
●最高点(6点/同点2句)
★山の湯へ七夕笹を潜り入る/佃 康水
★夏燕の一閃雨後の空締まる/藤田洋子

●次点(5点)
★里の灯のぽつりぽつりと星涼し/井上治代

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)