■3月ネット句会清記■

■3月ネット句会■
■清記/23名69句

01.辛夷の花枝ごと揺れて揺るる空
02.すみれ咲く小さきゆえの濃むらさき
03.春嵐玻璃戸の内のしんかんと
04.青柳や岸辺にぎわす稚魚の群
05.はくれんや本床にある有田焼
06.麗らかや水琴窟に耳を添え
07.鳥の声誘われ見あぐ春の土手
08.数本を摘んでお披露目初土筆
09.うららかや水替えており辻地蔵
10.静けさや目白憩える白き梅

11.角とれて三月の雲ふわり浮く
12.一品は菜の花和えを祝いの日
13.ふるさとの青きを踏んで師の墓参
14.山笑うふるさと恩師の一周忌
15.城の影映る木曽川水温む
16.梔子のつぼみの開く香りかな
17.沈丁花香りが先に届きけり
18.噴水のぶつかり落ちる飛沫かな
19.ふるさとの春田を偲ぶ遠い日や
20.箸置きに桃の花見て節句知る

21.壇ノ浦春潮はやく海狭く
22.たなびいて色即是空春霞
23.緋毛氈しいて飾らる紙ひいな
24.野道行く囀り空に充ち溢れ
25.迷ひ猫捜す貼紙春の風 
26.琴の音や白梅薫る丘広し
27.蕗の薹春の気配を天麩羅に
28.碧色の空へと梅の咲きのぼる
29.蝶々の戯れ昼の頂に
30.ベビーカーの足跳ねている暖かし

31.菜の花や煌めく海へ揺れ止まず
32.菜の花や少女二人の画布並ぶ
33.魚跳ぶや紙漉き村の水温む
34.鳥の声明るく澄みて山笑う
35.麗かや賛美歌聴きつつまどろみぬ
36.三月の日記にしるす晴れマーク
37.光散る岸いぬふぐり群生す
38.道脇に人眺めてる黄水仙
39.春風に洗濯物の袖触れ合う
40.古刹へと過ぎる公園柳の芽

41.白椿紅に遅れて咲き始む
42.春驟雨村中総出の道普請
43.イーゼルを据え爛漫の梅を描く
44.野にひかるタンポポの根の揺るぎなし
45.陽気よき谷戸に初蝶見失う
46.盛り上る土に並ぶ芽チューリップ
47.鶯の声に手を置く朝厨
48.箸先にふっと香りて蕗のとう
49.木の下へ一気に走る春時雨
50.うららかな日差しいっぱい物干し場

51.早起きと朝寝の子らの日曜日
52.祈ること日々に増え居り春嵐
53.帰る地のある幸せよ鳥雲に
54.残ること決めてくつろぐ春の鴨
55.陽をうけて古草緑また緑
56.朧月夜歩きをすることもなし
57.門燈の消し忘れあるしだれ梅
58.きらきらと春風を蹴るスニーカー
59.日を掴みひとつふたつと辛夷咲く
60.春服の骨董通りにひるがえる

61.卒業歌調子はずれのトランペット
62.道後の湯へ店頭の雛ながめつつ
63.鮊子の輝き笊に掬い煮る
64.犇めきて花びらの影花びらに
65.今日一日晴れている桜と吾に
66.通学路に沿う花木瓜の今盛りに
67.春光やみなとみらいの煉瓦街
68.つちふるやらんどまーくの空とざす
69.風強し辛夷咲き初む霧笛橋


◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、3月10日(日)午後7時から始め、同日(3月10日)午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、3月11日(月)正午です。
※2) 伝言・お礼等の投稿は、3月11日(月)正午~3月12日(火)午後6時です。

●3月ネット句会投句箱●

※投句を開始してください。

▼3月ネット句会の投句案内
①投句:当季雑詠(春の句)3句
②投句期間:2013年3月10日(日)午前0時~午後6時
※3月6日(水)から事前投句が許されますので、事前投句をご希望の方は、お申し込みください。
③投句は、下の<コメント欄>お書き込みください。

▼スタッフ(12名):
①高橋正子(句会主宰)・②高橋信之(管理)・③藤田洋子・④藤田裕子・⑤井上治代・⑥高橋句美子・⑦祝恵子・⑧多田有花・⑨高橋秀之・⑩小西宏・11安藤智久・12佃康水
▼3月句会当番スタッフ:藤田洋子・祝恵子・高橋秀之

■ご挨拶/第21回(立春)フェイスブック句会■

●高橋正子(花冠主宰)
3日の節分、4日の立春と日が過ぎ、暦の上では春となりました。今年は、急に大雪となったり、また急に春のような陽気になったり、変化の多い天候が続きました。落ち着かない天気の中で、春の声を聞くと嬉しいもので、寒さで固くなった心身がほぐれるような気持ちになります。立春句会には、はやも春らしい句が出そろいました。誰もが、春を心待ちにしておられることがよくわかります。早いところでは、梅が咲き始めているようです。春の小さな兆しを見つけて喜べるのも、俳句を作っているお陰と思います。今回は、花冠同人ほとんど全員といっていい26名の方が参加されました。大変うれしいことです。投句、選とコメントをいただき、ありがとうございます。入賞の皆さま、おめでとうございます。立春句会の管理運営は信之先生、集計は洋子さん、スタッフの皆さまにはコメントを書いていただきました。大変お世話になり、ありがとうございました。これでフェイスブック立春句会を終わります。次回は、3月3日の雛祭句会です。楽しみにお待ちください。

●藤田裕子(当番スタッフ)
信之先生、正子先生、第21回(立春)フェイスブック句会を開催していただきまして有難うございます。洋子様、いつも集計のお世話いただき有難うございます。ご参加くださいました皆様、お世話になりました。身にしむ寒さも、ようやく和らぎ、春の兆しがうれしい時季になってまいりました。各地の皆様の心温まる俳句を読ませていただきまして、とても幸せな春の訪れを感じさせていただきました。花々や鳥たち、光りや雨など、確実に春が近づいております。耐えていた冬から徐々に解放され、自由な楽しい明るい世界が広がってゆくようです。句会のコメントなどお世話いただきましたスタッフの皆様、有難うございました。まだまだ寒さの残るこの頃、どうぞ皆様、お体お大切になさってください。楽しい句会を、皆様有難うございました。

●多田有花(当番スタッフ)
信之先生、正子先生、第21回(立春)フェイスブック句会を開催頂きありがとうございました。洋子さまには毎回集計を担当頂き、ありがとうございます。フェイスブック句会では、いつも全国各地のそれぞれの季節の表情とそれを迎えられた同人のみなさまの暮らしぶりを垣間見ることができ、楽しみです。今年の立春は雨のところが多かったようですね。今日から春と思えば雨も明るく感じられます。まんさく、紅梅、白梅、デージー、蕗の薹といった早春の花や植物を詠まれた句の数々に、待ち焦がれた春を迎えられた喜びを感じました。節分の前の週末は春半ばといってもおかしくないような陽気になりました。立春を迎え、今度は寒の戻りがありそうな気配です。春は寒暖の差が大きい季節です。ご自愛ください。次回、3月3日の雛祭句会を楽しみにしております。

●井上治代(当番スタッフ)
信之先生、正子先生、第21回(立春)フェイスブック句会を開催して頂きましてありがとうございます。洋子様にはいつも集計のお世話をして頂きましてありがとうございます。フェイスブック句会ご参加の皆様、お世話になりありがとうございます。立春の日は雨が降りましたが暖かい一日になりました。この雨も大地を潤し、多くの生命を育んでくれることでしょう。皆様の俳句から、待ち望んでいた春の到来に喜びいっぱいの顔が浮かんできました。また、花の句、鳥の句、行事の句など様々な句があり、一句、一句から明るい色彩が豊かに広がり、鳥の声が聴こえ、優しい風の匂いを感じることができました。そして、このような俳句の仲間がいることに元気づけられました。季節の変わり目です。皆様、お身体ご自愛ください。

■第21回(立春)フェイスブック句会入賞発表■

■第21回フェイスブック句会■
■入賞発表/2013年2月5日■

【金賞】
★枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
枝に止まった鳥が、枝移りをするのか枝が揺れる。それを見ていると、光も揺らしているのだ。枝を張る陽光に満ちた木、枝移りする鳥が、なんと早春らしいことよ。(高橋正子)

【銀賞】
★風二月鳥よろこびの声散らし/藤田裕子
二月の、まだまだ寒い風に、鳥はもう「よろこびの声」を散らしている。真冬とは違う風の暖かさを知ったのだろう。野の生きるものたちは、季節の変化に敏感だ。(高橋正子)

【銅賞】
★夕映えの雲良く伸びて春兆す/小口 泰與
寒さが幾分和らぐ日、夕映えの雲が「良く伸びて」いる。伸びやかな夕映えの雲に春の兆しを感じ取ったセンスがよい。観察の賜物であろう。(高橋正子)

★まんさくの丘へ親子の声弾む/佃 康水
まんさくは、「先ず咲く」の訛りとも言われる。春が兆したばかりの丘に、母と子が声を弾ませ、楽しそうである。春が来たと思う光景だ。(高橋正子)

★節分の庭で男が薪を割る/多田 有花
節分という節目に、薪を割る潔い男の力。この男、「良い鬼」ではないかと思ってしまう。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
鳥そのものが光となって飛び去る。飛び去ったあとの木の枝がまた春の光に輝く。(古田 敬二)

★立春の朝は襖の白に明け/高橋正子
立春を迎える朝、ことさら際立つ襖の白さです。身辺の白の清々しさに、にわかに明るさを伴う春の光りを感じます。(藤田 洋子)
和室の襖に、立春の朝の明りが白々と穏やかです。冬の夜明けから柔らかな春の夜明けになってきた喜びが伝わってまいります。(藤田裕子)

★春立ちてとんとん刻む菜のみどり/藤田 洋子
寒も明けて、いよいよ立春。作者のうきうきとした気持ちが、菜を刻むとんとんと小気味よいリズムに現れているようです。(安藤 智久)
漸く立春を迎え、日常の厨事の何気ない所作にも、これからは少しづつ暖かくなって来るのだ・・との隠し切れない喜びの心情が窺えて素晴らしい。みどり色の菜を「とんとん刻む」との措辞が効果的である。(桑本 栄太郎)
寒気の中にもかすかな春の兆しが感じられる立春の朝、新鮮なみどりの菜の葉をリズム良く刻む軽快な音も春めいて来ている。春を迎えるうれしさが素晴らしいです。(小口泰與)
春らしいみどりの葉を音たてて刻んでいる。春が来た喜びが一杯です。みどりの葉も嬉しいですね。(迫田 和代)

★立春や夜明けは静かな雨となり/祝 恵子
俳句の侘・寂は、こういった「静かな」世界であろうと思う。自然の内に秘めたエネルギーをもつ静けさである。「立春」の雨の静けさがいい。(高橋信之)

★節分の庭で男が薪を割る/多田 有花
今日で冬が終わる。その区切りのときに男が独り薪を割っている。逞しくもあり、少し寂しげでもある。豆に追われた鬼か? いや、そんな説明は要らない。(小西 宏)
季節の入れ替わる節目の日を、鬼ではなく人を登場させて力強く詠まれたのが新鮮で印象に残りました。薪は鬼やらいの篝火などに使われるのでしょうね。(河野 啓一)

★白梅の花つぎつぎに空は青/迫田 和代
青い空に次々咲く白梅、春を見つけた嬉しさです。 (祝 恵子)

★風二月鳥よろこびの声散らし/藤田裕子
立春の声を聞くと自然界では春を謳歌したくなります。鳥達はいち早く春の到来へ喜びの声を散らしています。(佃 康水)

★宵闇のどこか匂いて豆を撒く/高橋正子
見えないところを見た。春近しを見た。すべての五感が働いて春近しを知ったのだ。視覚、嗅覚、「豆を撒く」ときの触覚と聴覚、それに「豆を食べるであろう」味覚までもが春近しを知った。日常を詠んで、いい感覚の句だ。(高橋信之)

【高橋正子特選/8句】
★枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
春の陽光のなかを枝を揺らせながら飛び交う鳥の嬉々とした様子に春を実感いたします。(黒谷光子)

★夕映えの雲良く伸びて春兆す/小口 泰與
夕焼け色を浴びた雲の明るさが広がり、春がすぐそこまでやってきている期待感が表れています。(祝 恵子)

★立春の朝のデージー鉢いっぱい/高橋句美子
立春の朝、鉢にいっぱい咲いているかわいいデージーの花。この光景を見ると、とても幸せな喜びを感じます。これから春に向かって、いろいろな夢も膨らんでまいります。 (藤田裕子)

★思い切り紅梅咲かせ丘の晴れ/高橋信之
空は晴れ、丘には紅梅が一気に咲き始めました。暖かく春めいてきた晴れた日、それに答えるかのように植物が活動を始めました。「思い切り」に力づよさが込められ、自然から元気をいただいたような思いが致します。 (藤田裕子)

★節分や豆蒔く音の弾みおり/井上 治代
節分の夜、豆を撒く音の弾みが何とも快く軽やかです。立春を明日に控えての、作者の心の弾みもうかがえ、明るい春の到来を感じさせてくれます。(藤田洋子)
節分の豆撒きは、子供の頃はもとより、大人になっても心弾む行事です。「豆蒔く音」によって、そんな待春の心が生き生きと詠われています。(小西 宏)

★節分会清め太鼓に島奮う/佃 康水
各地の寺社でとり行われる節分会。一島に春を呼び起すかのような清め太鼓の音が鳴り響き、厳かな中にも心晴れ晴れといたします。(藤田洋子)
島にある神社なのでしょう。節分の祭事の最中、きっと豆撒き直前の清め太鼓なのだろうと思います。「島奮う」の措辞が効果的で、句全体にリズムと力強さが感じられます。(小西 宏)

★節分会篝火赤く参道に/河野 啓一
節分の日、社寺参拝の人々のために浄らかに整えられた参道。その参道に赤く燃える篝火がひときわ鮮やかに、訪れる人の心にも温かく灯されるようです。 (藤田洋子)
神社の篝火はあるときは荘厳であり、あるときは力強く感じられます。赤く燃え上がる火炎は深遠な社での鬼やらいの儀式を鮮やかに見せてくれます。(小西 宏)

★まんさくの丘へ親子の声弾む/佃 康水
まんさくの花の明るい黄に包まれ、春めく日差しを浴びて丘に遊ぶ親子の笑い声が聞こえてきそうな心温まる光景ですね。 (柳原美知子)

【入選/14句】
★足湯してギターつま弾く春隣/柳原美知子
お家での光景か、それとも立ち寄りの温泉でしょうか。お湯に足を浸し、気分よくギターを弾く。春がもうそこまできている暖かさを楽しみながら、 お気に入りの曲を奏でる心持は春隣にふさわしいと感じます。(多田有花)

★雪の間に瑞々しきや蕗の薹/小口 泰與
雪の間からちょこんと顔をだした蕗の薹が春のおとずれを知らせてくれます。今年は例年より寒い冬だったので、蕗の薹を見つけた時はうれしかったことでしょう。(井上治代)

★寒晴の浦上天守マリア像/渋谷洋介
寒晴れにマリヤ像を配した景が見事です。(下地 鉄)

★子の春着一寸伸ばして夜の耽る/上島 祥子
立春を迎えて晴れ晴れとした思いの中に早や春着の支度が始まります。一日の家事を済ませ夜のしじまに子供の春着を丹念に直しながら子の成長を喜ぶ母親の姿が見えて参ります。(佃 康水)
※「春着」は、新年の季語。正月に着るために新調した衣服または晴れ着のこと。(注:高橋正子)

★犬とゆく二月の雨を軽く蹴り/安藤 智久
冷たい二月の雨も愛犬と一緒なら足取りも軽やかになりますね。(上島 祥子)
犬と歩く時、足の運びは、少しリズミカル。春浅い二月、やさしい雨を「軽く蹴り」ながら進む影が、さらりとそして力強くゆきます。春本番ももうじきです。(川名ますみ)

★敷石を音なく濡らす春の雨/黒谷 光子
春の雨の佇まいが旨く表現されていると思います。(古賀一弘)

★朝やさし枝垂るる先に梅一輪/川名ますみ
この数日穏やかな日が続いております。日ごと見ていて枝垂れる先に見つけた一輪の咲いた梅を見た喜びが伝わってまいります。 (祝恵子)

★寒椿縁に座れば目の高さ/高橋 秀之
縁側から目線は庭にある寒椿に、寒さのなか、頑張って咲いてくれる椿です。 (祝恵子)

★新駅の高架完成春立ちぬ/桑本 栄太郎
新駅の高架の完成は地域の人達にとっては何より嬉しい事、立春と共に大きな喜びが伝わってきます。(佃 康水)

★立春の雨鮮やかな傘が行く/古田 敬二
色とりどりの雨傘が通ってゆく道筋、立春の雨が柔らかく優しく降っています。傘の上に降る雨に、春の訪れを感じられ素敵です。 (藤田裕子)

★かき混ぜて音もいっしよの浅利汁/下地 鉄
湯気がたちあつあつの浅利汁を、かき混ぜて食べると美味しさ抜群です。「中七」の「音もいっしょの」という表現がすばらしいです。 (井上治代)

★目白来てヒヨ来て冬日射す小枝/小川 和子
鳥は自然のなかで快活に動いています。明るい日射しの中で小枝を揺らしながら楽しそうです。 (井上治代)

★紅ふふむ梅の蕾や雨の中/古賀一弘
雨の中で梅の紅い色が兆しはじめています。花が開くのも間近でしょう。 (井上治代)

★やわらかき雨連れ春の来たりけり/多田 有花
立春の朝は雨に明けたのでしょう。「やわらかき雨」に芽吹きをうながすような春らしい静かな趣が感じられて好きな句です。(小川 和子)

●選者

■選者詠/高橋信之
★梅開花一輪晴れのうれしさに
一輪であっても晴れた日の梅の開花には理屈抜きで春の訪れの嬉しさがあります。(高橋 秀之)

★思い切り紅梅咲かせ丘の晴れ
空は晴れ、丘には紅梅が一気に咲き始めました。暖かく春めいてきた晴れた日、それに答えるかのように植物が活動を始めました。「思い切り」に力づよさが込められ、自然から元気をいただいたような思いが致します。 (藤田裕子)

★今日は立春パソコンの明るい画面

■選者詠/高橋正子
★寒牡丹わが息すれば匂い立ち
真冬に咲く寒牡丹は華やかで、つい花に近付いて香りをかがれたたのでしょう。その動作が「わが息すれば」と詠まれ、ほのかな香りを楽しまれている様子がうかがえます。(佃 康水)

★立春の朝は襖の白に明け
特に技巧のある句ではないが、レベルの高い句。日常の確かさがいい。(高橋信之)

★宵闇のどこか匂いて豆を撒く
節分の宵闇のやわらかくかぐわしい春めく気配を捉えられ、女性ならではの感性を感じます。待春の思いがさらりと詠まれた素敵なお句ですね。(柳原美知子)

■互選高点句
●最高点(11点)
★枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏

●次点(9点)
★春立ちてとんとん刻む菜のみどり/藤田 洋子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

▼コメントのない句にコメントをお願いします。

■第21回(立春)フェイスブック句会清記■

■フェイスブック立春句会■
■清記/26名78句

01.電車の音響く青空梅ひらく
02.寒鯉の日へゆっくりと浮き来たる
03.足湯してギターつま弾く春隣
04.つま先を見て受験子の母歩く
05.朝やさし枝垂るる先に梅一輪
06.梅ひらき紅うつすらとほぐれたる
07.春近し鶺鴒池の面を打てば
08.豆まきの声ベランダに花の苗
09.枝ゆらし光ゆらして春の鳥
10.節分や観音参りの人の列

11.寒椿縁に座れば目の高さ
12.大空に向かい冬芽の柔らかく
13.二月早やまぶしき陽光バスの窓
14.新駅の高架完成春立ちぬ
15.見晴るかす生駒嶺遠く霞みけり
16.球児らの喚声遠く枯野かな  
17.かき混ぜて音もいっしよの浅利汁
18.酢のものに荒き海雲の夕餉かな
19.さえずりや日向ひなたに園児達
20.雪の間に瑞々しきや蕗の薹

21.春浅し赤城は風を育てそむ
22.蜜柑挿す庭木に目白来ておりぬ
23.目白来てヒヨ来て冬日射す小枝
24.春めく風家並み凡て陽の中へ
25.寒晴の浦上天守マリア像
26.束の間の命煌く雪の花
27.楪の日を照り返す力かな
28.寒牡丹わが息すれば匂い立ち
29.宵闇のどこか匂いて豆を撒く
30.立春の朝は襖の白に明け

31.節分の漆の升に豆を盛る
32.豆をまく一つ一つを手に握り
33.立春の朝のデージー鉢いっぱい
34.今日は立春パソコンの明るい画面
35.梅開花一輪晴れのうれしさに
36.思い切り紅梅咲かせ丘の晴れ
37.節分や豆蒔く音の弾みおり
38.ふるさとの歌を歌いて春を待つ
39.きらきらと瞬き交わし星冴ゆる
40.南南東向けて駆足恵方道

41.鬼は外鬼は何処まで行ったやら
42.紅ふふむ梅の蕾や雨の中
43.陽を浴びる川向うの春どことなく
44.春立ちて平和溢れる広島よ
45.白梅の花つぎつぎに空は青
46.おんぶして子をあやしおり冬日向
47.節分の絵手紙友の近況も
48.立春や夜明けは静かな雨となり
49.まんさくの丘へ親子の声弾む 
50.節分会清め太鼓に島奮う
 
51.青空へ梅の一花の紅映ゆる
52.瑞々し無限の夜空寒北斗
53.節分会篝火赤く参道に
54.春立ちて頬に優しき今朝の風
55.波音を聞き湖の色犬ふぐり
56.打ち寄せる波頭まぶしき春汀
57.敷石を音なく濡らす春の雨
58.夕映えの雲良く伸びて春兆す
59.公魚や榛名湖の色自ずから
60.あわあわの夕日浴びけり蕗の薹

61.節分の庭で男が薪を割る
62.節分や白菜刻みサラダとす
63.やわらかき雨連れ春の来たりけり
64.雨降って木々の雫に春立ちぬ
65.雨あとに立春の日の差し始む
66.春立ちてとんとん刻む菜のみどり
67.風二月鳥よろこびの声散らし
68.子ら行きて節分の豆かみしめり
69.草も木も音なき雨も春来る
70.立春の雨鮮やかな傘が行く

71.立春や昔の和音を合唱団
72.眼の隈どり夕日に鮮やかメジロ来る
73.スケートや終えて頬張るチョコレート
74.番犬の瞳潤んで春立つ日
75.子の春着1寸伸ばして夜の耽る
76.川を向く二脚の椅子や梅一輪
77.犬とゆく二月の雨を軽く蹴り
78.機織りの工房しんとして二月


◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、2月4日(月)午後7時から始め、2月5日(火)午前10時までに済ませてください。
③選句の投稿欄は、投句の投稿欄と同じで、最上段の<投稿欄>にご投稿ください。<facebookページ「インターネット俳句センター」>以外の場所に投稿しますと無効になります。
※1) 入賞発表は、2月5日(火)正午です。
※2) 伝言・お礼等の投稿は、2月5日(火)正午~2月6日(水)午後6時までに済ませてください。

第21回(立春)フェイスブック句会案内

■第21回(立春)フェイスブック句会ご案内■

①投句:当季雑詠(節分、立春、春の句、冬の句など)を計3句
②投句期間:2013年2月3日(日)午前0時~2月4日(月)午後6時
③互選期間:2月4日(月)午後7時~2月5日(火)午前10時
④入賞発表:2月5日(火)正午
⑤伝言・お礼等の投稿は、2月5日(火)正午~2月6日(水)午後6時
※句会場(投句場所):
Facebookページ「インターネット俳句センター」
http://www.facebook.com/kakan02/

■ご挨拶/第20回(新年)フェイスブック句会■

●高橋正子(花冠主宰)
 あけましておめでとうございます。巳の年が明けました。正月の間、穏やかな晴天に恵まれ、幸先よい感じです。よいことがありますように願っています。新年句会に24名の方にご参加いただき、ありがとうございました。選句やコメントをありがとうございました。晴れやかな新年の句に触れて、年が改まるというのは、いいものだと思いました。句会の管理運営は信之先生に、集計は藤田洋子さんに、また、スタッフの皆さまにもコメントなどお世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。次回は2月4日の立春句会となります。楽しみにお待ちください。これでフェイスブック新年句会を終わります。

●小西 宏(花冠同人会長)
 みなさま、明けましておめでとうございます。今年もどうぞ、よろしくご指導くださいますようお願い申し上げます。

 この新年もまた、高橋信之先生、高橋正子先生のご指導とご配慮により、「第20回(新年)フェイスブック句会」を開催していただきましたことに深く感謝いたしております。年の初めにふさわしく、力のこもった作品が多数寄せられたことを心より喜び、お礼申し上げます。
今年9月には花冠創刊30周年を迎えることになっており、「創刊30周年記念俳句大会」等の記念事業が予定されています。またそこに向けて、私たちそれぞれが俳句の力を高めてゆけるよう、両先生からも一層きめ細かなご指導いただくようになっております。「俳句添削教室」もその一環と考えておりますが、毎日休みなく力のこもったご指導を頂けることに深く感謝しております。私たち同人一同も「明るくて深い俳句」を目指し、俳句の心と技術を更に高めるよう、いっそうの努力をしていかなければならないと思っております。どうもありがとうございました。

●藤田 洋子(花冠事務局長)
新年明けましておめでとうございます。今年初めてのフェイスブック句会、ご参加の皆様、お世話になりありがとうございました。お正月は全国的にお天気に恵まれた模様で、松山も寒さはあるものの晴間の多い三ヶ日となりました。句会では、晴天のもと美しい富士山の眺望を始め、各地の皆さんの淑気あふれる初景色に心あらたまり、また日本のよきお正月の情景にふれて、心あたたまる思いがいたしました。「花冠創刊三十周年」の年頭にあたり、明るい希望を感じる句会となりました。開催にあたりましては、信之先生、正子先生に心よりお礼申し上げます。お世話いただいたスタッフの皆様、ありがとうございました。今年も皆さんとともに楽しく学ばせていただきたく思います。どうぞよろしくお願いします。

●安藤智久(フェイスブック句会スタッフ)
 みなさま新年明けましておめでとうございます。
 みなさまそれぞれが無事に新年を迎えられ、お正月の清々しい俳句がたくさん寄せられたことを心よりお祝い申し上げます。
 私は年末年始とわさびの出荷に追われ、ひたすらに山葵に触れていた日々でしたが、元日だけはお休みを頂き、美しい富士山を眺めながら三嶋大社に初詣に行ってきました。久しぶりにゆったりとした気持ちで俳句を作り、この句会に参加できたことを嬉しく思います。
小西さんがおっしゃられていたとおり、今年は花冠創刊30周年の節目の年です。信之先生、正子先生からあたたかいご指導が頂ける今の環境に感謝し、明るい気持ちで俳句を続けていきたいと思います。
本年も、どうぞよろしくお願いします。

■第20回(新年)フェイスブック句会入賞発表■

■第20回フェイスブック句会■
■入賞発表/2013年1月3日■

【金賞】
★注連飾りわが手造りへ日の当たる/佃 康水
慎ましく、礼をもって手造りの注連飾りで正月を迎える丁寧な暮らしがよい。当たる日にも温かさある。(高橋正子)

【銀賞】
★元旦の新聞おもいきり広げ/高橋句美子
元旦の新聞を思い切り広げてみる元気良さがよい。世界を一気一目に広げて見せるようだ。(高橋正子)

【銅賞】
★元朝や秒針のゆく確かな音/多田有花
元日の静かな朝、秒針が確実に時を刻んでいるのが耳に聞こえる。元朝なればこその静かな緊張が時を意識させている。(高橋正子)

★湧水の声なく溢れ花八手/渋谷洋介
「声なく溢れ」は、泉の水がやわらかに、しかもゆたかに湧き出ている様子をよく表わしている。傍に咲く花八つ手がいい景を作って、湧水の色をも想像させてくれる。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★元朝や秒針のゆく確かな音/多田 有花
元日朝の晴れやかで慌ただしさと秒針の静かな動きの対比の景がうまく調和して好きな句です。(下地鉄)
秒針が刻む音に託して元朝の時の流れを改めて感じとっている作者の感性に敬意を表します。遅々とした動きであっても刻一刻と時は流れ。元日の朝が来たのですね。(河野啓一)

★元旦の新聞おもいきり広げ/高橋句美子
ひときわ厚い元旦の新聞。慌ただしい朝は少し開いてすぐに閉じる紙面ですが、この日ばかりは「おもいきり広げ」ます。新年を説く様々な記事に、よき年となることを念じながら。(川名ますみ)

★抱かれる赤子へ明るき初日の出/古田 敬二
初めて初日の出を浴びるであろう赤子にとって、明るき初日の出と同様希望に満ちた1年となりますように。(高橋 秀之)

★寒晴れや水平線のくっきりと/下地 鉄 
冬晴れではなく寒晴れが寒さと空気の澄んで遠くの水平線がくっきりと見える風情を感じさせてくれます。(高橋秀之)

★星冴ゆる空の深さよ子等送る/小川 和子
年末年始で帰省されていたお子さんが帰られるのを見送っておられるところと推察します。除夜から元日をいっしょに過ごされて、楽しいひとときを思いつつ見送っておられるところでしょう。寒い夜の中の暖かい情景です。 (多田有花)

★初富士の遠嶺明るし葛飾に/高橋正子
★注連飾りわが手造りへ日の当たる/佃 康水

【高橋正子特選/7句】
★元旦の新聞おもいきり広げ/高橋句美子
元旦の新聞は広告と共に分厚いもの、今年の期待を込めて、思い切り部屋中に私も広げて見ました。(祝 恵子)

★お元日わずかばかりの菜を引きぬ/祝 恵子
お雑煮に入れられるのでしょうか。お庭に植えた初春の草を抜いてこられたのでしょう。静かな元旦の喜びが伝わってきます。 (小西 宏)

★二日の街に椿の白が競い合う/高橋信之
緑の葉を背景として白い椿の花が散らばり咲いている。ゆったりと散歩する正月二日の明るさです。 (小西 宏)

★冬木立陽に輝きて起立する/井上 治代
冬木立というのは本当に、陽の光を受けて輝き見えるものですね。そして、葉を落とした木々の一本一本の姿を「起立する」と詠われて、荘厳さを伝え届けてくれています。(小西 宏)
冬木立は正に起立するというのがしっくりとします。その冬木立が陽に輝いている様子は、気持ちのよい冬の晴れ間を感じさせてくれます。(高橋秀之)

★遠近の嶺と峰より除夜の鐘/桑本 栄太郎
京都ですね。名の知られた多くの寺院が立ち並ぶ古都。東山、北山、西山、それぞれの峰々に行く年を送る鐘が響き渡ります。その除夜はいっそう趣深いものと想像できます。 (多田有花)

★湧水の声なく溢れ花八手/渋谷洋介
大切な水資源にも繋がる湧く水がこんこんと溢れ出ている空気の綺麗な場所近くに活き活きと咲いている花八手が見える参ります。 (佃 康水)

★注連飾りわが手造りへ日の当たる/佃 康水

【入選/15句】
★居間隅々に新年の日が届く/藤田 洋子
一年の始め、あたりの風景も人の心も、一種改まった感じがしますね。居間の隅々にまであらたまった感じがしますね。(小口泰與)
きれいに片づけられ、いつもとは違った新年の居間に新年の陽があまねく行き渡る。今年はなんとなくいいことがありそうな予感をさせる陽の輝きである。(古田 敬二)

★新年の陽差し取り込む母の部屋/高橋句美子
新しい年の輝かしい陽を、まずお母様の部屋に取り込んであげたやさしい心持ちが素敵です。(井上 治代)

★習いたての着付の妻やお正月/安藤 智久
習いたての着付けで晴着姿の妻が初々しく、微笑ましく、奥様へのあたたかな眼差しに、明るく楽しいお正月を感じさせていただきました。(藤田 洋子)

★富士山に月を掲げて初日の出/川名 ますみ
富士山に有明の月を掲げての初日の出。心改まる最高のお正月風景を見せて頂いた想いです。(佃 康水)

★卓丸く老いも若きも味噌雑煮/藤田裕子
関西のお雑煮は味噌仕立てが多いのでしょうか。お餅も丸いのでしょうね。「卓丸く」に昔風の温かな家族関係が感じられ、ゆったりとしたお正月の風景が垣間見られます。(小西 宏)
丸いテーブルがいいですね。ほのぼのとした、一家団欒の様子が、目に浮かびます。(渋谷洋介)

★うす雲を染めて初日や信貴生駒/河野 啓一
元旦の朝はここ数年にないほど穏やかに晴れ、所要で出掛けた車中から遠くになだらかな信貴生駒山の連なりが眺められました。東方の信貴山生駒山の向こうには、悠久の歴史を誇る奈良大和の地であり、その地名と共に初日の出の荘厳な雰囲気が想われ素敵です。(桑本 栄太郎)

★初浅間伸びのび煙り広げおり/小口 泰與
正月の空にゆったりと上る山の煙。いつも見る光景が今日はまた新鮮だ。「初浅間」の季語がゆるぎない。 (小西 宏)

★実千両松の根締めに深く挿し/藤田 洋子
松と実千両の生け花はお正月らしい取り合わせですが「深く挿し」に新しい年への意志の現れのようにも感じます。(黒谷 光子)

★冬休み土手道駈ける児の叫び/迫田 和代
冬休みでこどもたちが遊んでいるのでしょう。冬の寒いときでも子どもたちは元気です。土手を駆け上がるこども達の叫びも楽しげな響きなのでしょう。(高橋秀之)
子供の元気な姿を見るのはよいものです。冬休みの子供たちの声が聞こえてくるようです。 (祝恵子)

★里山の枝かがやかし初明かり/小西 宏
元日の輝かしい朝を里山で迎えられたのでしょう。初明かりが枝を光らし、今年もいいことがありそうです。 (祝恵子)
新年の朝日が里山の枝をあまねく照らし、そこで暮らす人々の幸せな様子が想像できます。(井上治代)

★除夜の鐘山風にのり澄み渡る/藤田裕子
澄み渡って聞こえてくる除夜の鐘、静かに聞き入ってる詠者がいます。 (祝恵子)

★初空の青さの中を飛行雲/高橋 秀之
空の広さを感じるすがすがしい句です。(高橋句美子)
今年の関西の元日は明るく晴れて暖かな一日でした。からっと、あっけらかんと明るい御句にあの穏やかで明るい元日の朝の空が蘇ってきます。 (多田有花)

★伊吹嶺の稜線美しく初茜/黒谷 光子
伊吹山の特徴的な山容はいつ見ても力強く印象的です。初日に照らされた稜線の、元旦ならではの美を見事に詠まれました。 (河野啓一)

★初刷りの嵩に驚くベッドかな/矢野 文彦
作者は毎朝ベッドの中で朝刊を読まれるのでしょう。元旦の新聞が束になってどさりと、ベッドも驚くという非日常の朝を軽い諧謔味を含めて詠まれたものと思います。 (河野啓一)

★蒼天の富士を背にして梯子乗/古賀一弘
江戸の火消しが正月に演じたという度胸のパフォーマンス梯子乗り。当時は富士もことのほかくっきりと見えたことでしょうね。江戸情緒 が嬉しい一句と思いました。 (河野啓一)

■選者詠/高橋信之
★初詣今日がある今年がある
初詣をされ今日を迎えられた喜び、又今年を迎えられた幸せが、ひしひしと伝わってまいります。併せて今年への希望や決意も感じられます。(藤田裕子)

★二日の街に椿の白が競い合う
緑の葉を背景として白い椿の花が散らばり咲いている。ゆったりと散歩する正月二日の明るさです。 (小西 宏)

★幹くろぐろと桜冬芽を青空へ
裸木になって居る桜の幹は冬芽を付けて青空へ枝を張っている。幹くろぐろとの措辞により春に向かって今力を蓄えている桜の木の力強さが感じられます。(佃 康水)

■選者詠/高橋正子
★初富士の遠嶺明るし葛飾に
浮世絵風景版画を見るような心地です。お正月らしい景色、遠くに見える真っ白な富士の高嶺。「葛飾」という地名がそういう感覚を強くしています。(多田 有花)
葛飾から遠く初富士が望めた。真白く光る富士山はたとえ小さくても神々しく、新年をいっそうすがすがしく感じさせてくれます。(安藤 智久)

★水仙の花つぎつぎに昨日今日
冬のさなかに「つぎつぎに」可憐な花を咲かせる水仙に心慰められます。先生の鋭敏な感性が花の咲きようを通じて伝わってきます。(小西 宏)
水仙の花がつぎつぎ咲いているというなにか新年らしい爽やかさのある句ですね。香りが漂ってきそうな。(迫田 和代)

★山風に杉の匂える二日なる
杉の香りがおめでたい正月にぴったりの句です。周りの空気が心地よく感じました。(高橋句美子)

■互選高点句
●最高点(7点/同点2句)
★元朝や秒針のゆく確かな音/多田 有花
★習いたての着付の妻やお正月/安藤 智久

●次点(6点)
★実千両松の根締めに深く挿し/藤田 洋子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

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■第19回(忘年)フェイスブック句会入賞発表■

■入賞発表/2012年12月9日■

【金賞】
★背丈ほどの鍬振り上げて冬耕す/井上治代
鍬を使うは、大変な力仕事である。自分の背丈と同じほどの鍬を振上げ、よろめかぬように、力一杯振り下ろす。冬耕の土に向けた力が快い。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★冷ゆること云いつつ和尚袈裟を着る/祝 恵子
仏事のある日は、冷えることが多いと私は経験している。「冷ゆること」を言いつつも和尚が、おもむろに、しかも淡々と袈裟を着る。和尚の泰然とした態度にユーモアさえ感じる。(高橋正子)

★初霜の大地へざくりと杭を打つ/古田敬二
初霜に強張った大地に杭を打ち込む。「ざくり」が人間の力強さ、また迫力をよく表わしている。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★みどり濃く水仙の芽の伸び出せり/藤田洋子
芽を出すものはみんな可愛いが、水仙は「みどり濃く」芽を伸ばし始めた。真冬の花の水仙らしく、濃いみどりが生き生きとして、幸先のよさを感じる。(高橋正子)

★過ぎた日を明るく語る年の暮/迫田和代
過ぎた日を明るく語れる年の暮は、すばらしく良いことだと思う。みんな、笑って、楽しく語り合う年の暮にしたいもの。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★冷ゆること云いつつ和尚袈裟を着る/祝 恵子
家での法要の席でしょうか?親戚縁者一同に揃い、おもむろに和尚が袈裟に着替えこれから始まりです。田舎では冬の寒い時季に法要が行われることが多く、同じような情景を何度も経験しました。(桑本 栄太郎)

★空青く冬紅葉みな眩しさに/川名ますみ
冬の青い空が紅葉の紅さを引き立て、眩しく感じさせてくれる晴れ晴れとした日が気持ちいいです。(高橋秀之)

★ビルの間の落葉掃くより街動く/藤田洋子
寒い朝、 ビルの間に舞い散った落葉をきれいに掃くことから、街がだんだん活気づいてきます。早朝の街の一こまが、生き生きと詠まれています。 (藤田裕子)

★柊の花の匂ひやかくれんぼ/古賀一弘
ひっそりと咲きほのかな芳香を放つ柊に、子どもたちのかくれんぼ。ほのぼのとした懐かしさと優しさを抱かせてくれる情景です。そこはかとなく匂う柊に、澄んだ冬の空気が静かに伝わります。(藤田洋子)

★過ぎた日を明るく語る年の暮れ/迫田和代
「過ぎた」日を「明るく」語れば、来る年もきっと「明るく」なるに違いない。明けて、明るい年に違いない。(高橋信之)

★初霜の大地へざくりと杭を打つ/古田敬二
大地をご自分で耕して農作物を作っていられる、とお聞きしています。初霜の降る頃となった今は、来春への準備でしょうか。初霜と「ざくりと」が響きあって、力強さを感じます。(小川和子)

★背丈ほどの鍬振り上げて冬耕す/井上治代
力強さと一途さに溢れた句と思います。屹度丹精込めた黒土だと思います。鍬音が聞こえませんか?。(迫田 和代)

【高橋正子特選/7句】
★遠山に雪頂きて街明ける/藤田裕子
しんしんと冷え込んだ朝、目覚めに仰ぐ遠望の雪嶺が美しく清々しいかぎりです。荘厳さを帯びる雪嶺を迎えた街に、澄んだ朝の空気が満ちています。(藤田洋子)

★満載の貨車の遠のく師走かな/佃 康水
師が走るのではなく、年の瀬の荷物を積んだ貨車が走るという軽い可笑し味に成程と共感を覚えました。(河野啓一)

★背丈ほどの鍬振り上げて冬耕す/井上治代
力強さと一途さに溢れた句と思います。屹度丹精込めた黒土だと思います。鍬音が聞こえませんか?。(迫田 和代)

★初霜の大地へざくりと杭を打つ/古田敬二
大地をご自分で耕して農作物を作っていられる、とお聞きしています。初霜の降る頃となった今は、来春への準備でしょうか。初霜と「ざくりと」が響きあって、力強さを感じます。(小川和子)

★寒晴れて朝の地平の眩しかり/河野啓一
冬の寒い日の朝、遠く地平まで見通す日差し。その眩しさに冬の澄んだ空気と気持ちよさが感じられます。(高橋秀之)

★みどり濃く水仙の芽の伸び出せり/藤田洋子
芽を出すものはみんな可愛いが、水仙は「みどり濃く」芽を伸ばし始めた。真冬の花の水仙らしく、濃いみどりが生き生きとして、幸先のよさを感じる。(高橋正子)

★冷ゆること云いつつ和尚袈裟を着る/祝 恵子
仏事のある日は、冷えることが多いと私は経験している。「冷ゆること」を言いつつも和尚が、おもむろに、しかも淡々と袈裟を着る。和尚の泰然とした態度にユーモアさえ感じる。(高橋正子)

【入選/16句】
★紅葉散る小径の色に空の紺/川名ますみ 
彩り鮮やかな紅葉が小径に散らばり、晴れ渡る空が照らしている景色は温かくほっとする一時です。(佃 康水)

★顔見世や暮るるに早き東山/桑本栄太郎
京都南座の十二月興行、「東山」が活きています。 先日、中村勘三郎の訃報を聞いたばかり。暮れ行く年の思いが深くなります。(多田 有花)

★恙なき記念日の朝葱刻む/藤田裕子
結婚記念日でしょうか。無事に毎日過ごせることの幸せを、記念日をむかえて改めて噛みしめている作者の心情が伺えます。葱を刻む音も調子よくトントンと弾みます。(井上 治代)

★木のベンチ占めて彩る散紅葉/小川和子
木々の下に置かれた木のベンチの上に、赤や黄の散紅葉が色鮮やかに敷き詰められ、散りてもなお美しい紅葉の光景に感動いたします。(藤田裕子)

★凍滝の音閉じ込めて起立せり/古賀一弘
滝が凍結し、止むのは、水の流ればかりではありません。響いていた音をも、閉じ込めます。鎮まった其処は淋しいようですが、見れば凍滝は「起立せり」。なんと力強く、且つ繊細な御句かしらと、幾度も読み返しました。(川名ますみ)
凍った冬の滝の様子を彷彿とさせる句である。中七が滝の静けさをうまく表現している。(古田敬二)

★風紋を残して今朝の初氷/古田敬二
当地も初氷を見ました。そちらはよほど風がきつかったのでしょう風紋がついていたのですね。本格的な寒さがやってきています。(祝 恵子)
冷えたと思ったら初氷、その氷には風紋が残っていた。対象を良く見詰めた良い句と思う。(古賀一弘)
この冬初めて張った氷は薄く風の影響で和紙のようになっていますね。いよいよ寒さが本格化した事を感じます。 (小口泰與)

★栞にと拾う黄葉に詩ごころ/矢野文彦
一葉の紅葉にもやさしい詩心、一読 して作者の優しい毎日の生活がうかがえます。(下地 鉄)
散ったばかりの瑞々しい黄葉の細やかで美しい造形におのずと詩ごころが湧いてきます。そんな黄葉を栞にして心豊かな季節の喜びが感じられます。 (柳原美知子)

★妙義へと冬の陽どっと落ちにけり/小口泰與
岩山の妙義山を、いっとき輝かす冬の入日を思います。(渋谷洋介)

★海鳴りの遠くにありて年の暮れ/下地 鉄
海鳴りの音を遠くに聞きながら、今年一年のできごとなど、しみじみと思い起こされています。 (藤田裕子)

★竹林の斜面に白く時雨れけり/桑本栄太郎
竹林を濡らす時雨を、とても抒情的に詠まれています。京都の風情も感じられ、「白く時雨けり」が素敵です。 (藤田裕子)

★かくも濃く冬紅葉映ゆ平林寺/小川和子
寒さが増すと紅葉の紅も濃くなり、雨の後などは特に美しくみえます。お寺の中の紅葉だとなおさら風情があるように思われます。平林寺という固有名詞の使い方も一句をよくまとめていると思います。(井上治代)

★柿熟れて空一面に彩散らし/渋谷洋介
柿は実りの秋を象徴する果物だと思います。オレンジ色の柿の実がたわわに実り、空を仰ぐとまるで灯りのように輝いてきれいです。(井上治代)
柿が熟れて 来て、青い冬空をバックに朱色の彩をふりまいたようです。大きな柿の木なのでしょう。みごとですね。 (河野啓一)

★遠くまで群青色の冬の海/高橋秀之
冬の海は暗いイメージがありますが、晴れた日は遠くまで見渡せ群青色に輝きます。広々とした海を眺め、ひとときの安らぎを感じている作者の心情が伺えます。(井上治代)

★蟹食べに冬の但馬の海の町/多田有花
これから食すであろうかに料理を思い浮かべつつ、播磨地方から但馬に向かい、そして海の町へ。私も先週海の町まで蟹を食べに行きましたので、そのワクワク感がよく分かります。(高橋秀之)
但馬の海辺まで名産の蟹を食べに。蟹刺し、焼きガニ、かにすき–。よだれが出てきそうです。素晴らしい冬の愉しみです。 (河野啓一)

★天守日を返す町並み落葉降る/柳原美知子
街並みからひときわ高くそびえる天守閣。天守を仰ぐ街並みには天守から返す冬の日差しと降る落ち葉。平穏でのどかな冬の日常を感じます。(高橋秀之)

■選者詠/高橋信之
★冬晴れて青一色の今朝の空
寒い朝でも海岸の景色はまた格別。遥か沖合まで群青色が帯になって広がり素晴らしい眺めです。 (河野啓一)

★茶の花の数多小粒が朝の日に
冴えわたる朝の日差しを受けて、白色五弁の茶の花が際立つ白の鮮やかさです。茶の木に開く数多小粒の白の嬉しさに、明るく晴れやかな一日の始まりを感じさせていただきました。 (藤田洋子)

★冬紅葉くれない空へ清潔に
燃え立つ様な冬紅葉がくれないの空に映え、一層清らかな彩りを見せてくれている。極みの冬紅葉です。(佃 康水)

■選者詠/高橋正子
★雨あとのいろは紅葉の谷深し
谷に自生するいろは紅葉は樹高もあり、ありのままの自然美を見せてくれるのでしょう。雨あとの清澄な気の中、いちだんと鮮やかな、みずみずしい紅葉の美しさが目に浮かび、谷深きいろは紅葉の感動が伝わります。 (藤田洋子)
雨に濡れ、みずみずしく鮮やかないろは紅葉に彩られた谷から立ちのぼる冷気。深谷を流れる清らかな水音もしんしんと透徹した冬へと季節が深まっていくようです。 (柳原美知子)

★さんしゅゆの実の真っ赤なる十二月
晩秋から冬にかけて赤い実をつける樹木は沢山ありますが、さんしゅゆもその一つなのですね。十二月、クリスマスのリースやクランツにも使われる赤い実ですが、冬枯れの中でうれしい「真っ赤な」実です。 (小川和子)

★しんかんと蝋梅ひらく森の空
森の空へ静かに蝋梅が花ひらいた。その周辺は深閑とした空気が漂い、穏やかに咲き始めた蝋梅がとても新鮮に見えて参ります。(佃 康水)

■互選高点句
●最高点(7点)
★初霜の大地へざくりと杭を打つ/古田敬二

●次点(5点/同点2句)
★雨あとのいろは紅葉の谷深し/高橋正子
★背丈ほどの鍬振り上げて冬耕す/井上治代

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

▼コメントのない句にコメントをお願いします。

■第18回(13夜)フェイスブック句会入賞発表■

■入賞発表/2012年10月27日■

【金賞】
★絹雲の大空全て淡き色/高橋秀之
絹雲は成層圏に秋によく発達する雲で、薄く箒で掃いたようである。その雲が生まれる大空は淡い色に広がっている。軽くて伸びやかなところがよい。(高橋正子)

【銀賞】
★校庭の銀杏の若し黄葉す/小西 宏
「銀杏の若し」がよい。銀杏黄葉が透き通ってみずみずしい感じだ。背筋を伸ばしたように溌剌とした銀杏である。(高橋正子)

【銅賞】
★コスモスの夕日を透かせ揺れどおし/柳原美知子
コスモスが夕日に色を深め、花びらを透かせ揺れどおしている。優しさに満ちた光景はいつ見てもよいものだ。(高橋正子)

★茶の花の咲くや羽音に包まれて/多田有花
茶の花は椿に似るが、椿よりもずっと小さい。その蜜を吸いに目白などがくる。姿は見えないが、羽音が聞こえる。茶の花と小鳥がよくマッチしている。(高橋正子)

★酔芙蓉いちばん星見ぃつけた/矢野文彦
いちばん星がでるころの酔芙蓉は、もう花が閉じようとして紅くなっている。一日の終わりに、いちばん星と酔芙蓉の出会いが心優しく詠まれている。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★十三夜豆炊く蓋の動きだす/佃 康水
十三夜は豆名月ともいわれるようです。お月見のために詠者は豆を炊かれているのでしょう。「蓋の動きだす」で、そろそろかなとふたを開けたくなりそうですね。(祝 恵子)

★さわさわと森囁ける十三夜/小西 宏
「さわさわと」木々のそよぎ、風の音、その快い森の囁きが十三夜の趣きをさらに深めてくれます。十三夜ならではの豊かな詩情が、しんと静まる森から伝わってくるようです。 (藤田洋子)

★十三夜手もとに集めた古切手/祝 恵子
思い出の切手、美しい切手など様々な記念の切手など収集をなさって居るのでしょうか。十三夜は名残を惜しむ意味合いも有り、「手もとに集めた古切手」とは大変良く合った措辞と思います。(佃 康水)

★柘榴割れデイケアの部屋睥睨す/矢野文彦
デイケアの部屋から見える場所にある石榴が割れているのでしょうが、逆にその石榴が部屋を睥睨していると感じるのが面白いです。(高橋秀之)
柘榴が割れ中から紅い実が見えます。その実はまるで一つ一つが眼のようで、デイケアの部屋を見下ろしています。柘榴を擬人化することで、石榴の様子がよく伝わりました。(井上治代)

★コスモスの夕日を透かせ揺れどおし/柳原美知子
風に敏感で、いつも揺れているのがコスモスの魅力です。そこに夕日が差している、コスモスが揺れ夕日の光も揺れる、絵画的な景色が見えてきます。 (多田有花)

★茶の花の咲くや羽音に包まれて/多田有花
★絹雲の大空全て淡き色/高橋秀之

【高橋正子特選/7句】
★さざ波の音に更けゆく月の浜/下地 鉄
秋の夜も次第に更けて、月の浜辺に打ち寄せるさざ波の音。情緒たっぷりの美しい詠みに惹かれました。(河野啓一)
静かな波音のする海に懸かる中天の月。作者はその浜辺に立って月を仰いでいるのでしょうか。どの措辞ものびやかで静かな浜辺の美しい景が見える様です。(佃 康水)
さざ波の音が耳に心地よく響いてきます。月もしだいに上っていき静かで美しい光景です。(井上治代)
浜辺にのぼる月の景がくっきりと目にうかぶようです。十三夜の月となれば、いっそうの趣きが感じられます。(小川和子)

★池端の葉打ち水打ち木の実降る/桑本栄太郎
葉を打ち水を打ち、木々の木の実がしきりに落ちるさまが明るく目に浮かび、水辺の秋に訪れた、季節の喜びが感じられます。(藤田洋子)

★窓まどに団地の暮らし秋桜/祝 恵子
団地の窓には色とりどりの干しものが並んでいるのでしょう。秋桜の明るさ、優しさは、団地の暮らしを見つめる作者の優しさそのもののようです。 (藤田洋子)

★十三夜妻の実家の法事ごと/高橋秀之
十三夜の月明かりのもとで法事が行われ、亡き人を偲ぶ人々の姿を想像することができました。(井上治代)

★酔芙蓉いちばん星見ぃつけた/矢野文彦
「見ぃつけた」が効いています。思わず口ずさんでみたくなります。茶目っ気を感じる楽しい御句です。 (多田有花)

★校庭の銀杏の若し黄葉す/小西 宏
★コスモスの夕日を透かせ揺れどおし/柳原美知子

【入選/20句】
★風もなく音もなく暮れ十三夜/藤田洋子
静かな時間だけが流れて、何処となく闇だけが、深まってく る。全てが闇に包まれて行く。時間の流れだけが、闇を分けて行く様である。(増田泰造)

★秋声の大和三輪山神の宿/河野啓一
奈良、大和の三輪山は山そのものが御神体であり、従って社殿はありません。古より殺生禁断の地として守られ、豊かな自然が残っている由。山に風が吹き木々がざわめく時、秋深む光景が神の宿に相応しく神秘的に想われ好きな一句です。(桑本栄太郎)

★影踏みをする子逃げる子秋日向/祝 恵子
秋の日差しを浴びて元気に走り回るこどもたち。何気ない日常ですが、平和で幸せな日常を感じます。(高橋秀之)
遠い昔のことが思い出されます。(古賀一弘)

★膨らみゆく色やわらかき後の月/小西 宏
後の月の未完成な形や色を、控え目な美しさとして詠まれていて、とてもほのぼのと致します。(藤田裕子)

★十三夜米寿の友の句集かな/渋谷洋介  
米寿の句集の句を一つ採りました。 小生も数え米寿でなんとか句集をと悩んでいるところなので、生きたあかしをと願う気持ちに同感しました。(下地 鉄)

★薄紅葉水面に姿映しおり/多田有花  
水面に映った薄紅葉は綺麗でしょう。見たいですね。(迫田和代)

★釣り終わる波穏やかに十三夜/古田敬二
ここらで終いにしようと、釣りを切り上げる。くしくも今日は十三夜。穏やかな波と慎ましい月を繰り返し眺め、釣果を抱え、帰路に就かれたのでしょう。美しい夜を満喫なさった、ゆるやかな足取りが目に浮かびます。(川名ますみ)

★大寺の土塀ながなが蔦紅葉/黒谷光子
白い土塀に赤い蔦紅葉がアクセントとなり美しい様子が思われます。(上島祥子)

★残照の小波に憩う暮れの秋/下地 鉄
南の島の海辺は秋の終わりとはいえ、暖かでしょう。そこに 打ち寄せる波、その繰り返す波音と揺れる光、その中で 一日が暮れていくのをゆったりと味わっておられます。(多田有花)

★雨に落ち木犀の香の雨となり/川名ますみ
パラパラと降り始めた雨にはらりと零れる木犀の金色の花と香。詩情豊かな美しい雨の情景です。(柳原美知子)

★いつしかに波音に寝る島の秋/下地 鉄
島の秋の波音というのが密やかで心惹かれます。静かな波音に身を任せているうちにいつの間にか寝入ってしまう。そんな秋の夜が素敵です。(小西 宏)

★十三夜豆炊く蓋の動きだす/佃 康水
十三夜は豆名月ともいわれるようです。お月見のために詠者は豆を炊かれているのでしょう。「蓋の動きだす」で、そろそろかなとふたを開けたくなりそうですね。(祝 恵子)

★十三夜独り読書の飲むコーヒー/増田泰造
十三夜、読書に親しみながらの温かなコーヒー、独りなればこそ心落ち着くひとときです。静かな充実した時が流れる十三夜です。 (藤田洋子)

★山風の桐の実の音鳴らすかな/小口泰與
空っ風で名高い上州、その風が桐の実を鳴らしています。近づく冬の音を感じます。 (多田有花)

★唐黍の焼かるる熾に手をかざす/小川和子
そろそろ火が親しい頃になってきました。唐黍の焼かれる香ばしい香り、熾の色、掌に感じるぬくもり、それらが伝わってきます。 (多田有花)

★黒雲をすこし寄せつつ後の月/藤田裕子
十三夜は西日本ではお天気が下り坂でした。その予兆を感じさせる後の月の姿です。 (多田有花)

★掛軸の寒山拾得茶立虫/古賀一弘
掛け変えようとして久しぶりに出してみた「寒山拾得」の絵でしょうか詩でしょうか、それについた茶立虫に驚いておられるのでしょうか。 (祝恵子)

★しめやかに輝きを秘め後の月/井上治代
後の月を秘めやかな輝きとみられたことに憧れを感じます。 (祝恵子)

★口笛に応える囮の疲れ声/迫田和代
この囮は何なんだろうという気持ちにさせられます。お疲れさまということのようです。 (祝恵子)
仲間を呼び寄せる囮は籠の中の小鳥でしょうか、その囮に口笛を吹くとそれに応えてくれるが何だか疲れた声に聞こえる。作者はその囮に「大丈夫だろうか」と気づかっていらっしゃる優しい気持ちが伝わって来ます。(佃 康水)

★迎え待つ子等のにぎわい十三夜/上島祥子
お迎えを待つ間に十三夜を眺めながらの子供たち、どのようなお話がされているのでしょうね。 (祝恵子)
楽しいおしゃべりをしながらお母さんを待っているかわいい子ども達の姿が目に浮かびました。
十三夜の月が優しく子ども達を照らし、夜も更けていきます。(井上治代)

■選者詠/高橋信之
★十三夜月仰ぎ見る家族が居る
語り合える家族が居る小さな幸せ。(渋谷洋介)

★後の月少し傾き吾に親し
後の月は真ん円では無く少し欠けているので、その分少し傾いて居る様にも見えて参ります。その傾きこそが作者にとってより親しさを感じられたのでしょう。読み手にとっても月を身近に感じるとる事が出来ました。 (佃 康水)

★後の月くっきりとして吾に優し

■選者詠/高橋正子
★襟首に風のさびしい十三夜  
十三夜の頃の寒いと言うほどでもない微妙な体感を上手に表現されていると思います。襟首は一番よく風を感じるところですね。(黒谷光子)

★昇りては雲のみ照らし後の月
後の月が折角昇って来たのに周りに横たわっている雲ばかりを照らして居る。明るく淡い空では有るが雲に遮られない後の月を心待ちに仰いでいらっしゃる作者が見えて参ります。 (佃 康水)

★十三夜の月の明かりの駅みなみ

■互選高点句
●最高点(11点)
★十三夜豆炊く蓋の動きだす/佃 康水

●次点(7点)
★さざ波の音に更けゆく月の浜/下地 鉄

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

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