■9月ネット句会入賞発表■

■9月ネット句会■
■入賞発表/2013年9月9日■

【金賞】
★稲の香の風に放たれ刈られゆく/柳原美知子
熟れ稲の香が田に満ちて、刈るたびにその香が風に放たれてゆく。一株一株鎌で刈り取られているのだろう。爽やかな風の吹く晴れた日の稲刈りが想像できる。(高橋正子)

【銀賞】
★稜線のくっきり帰燕の空となり/佃 康水
山の稜線がくっきりと見える空気の澄んだ季節。空の色は深まり燕は南の国へ帰ってゆく。さびしさとともに色の深まる空である。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★浜に立ち他所の空から遠花火/迫田和代
遠い空に花火があがる。その花火のあがる空からすれば、作者が立つ浜の空は、他所の空なのだ。遠花火の世界が、こちらとは別の美しい世界として存在する。(高橋正子)

★素焼き乾す庭へすいっと秋茜/佃 康水
素焼きを乾す庭に秋茜がすいっと飛んできた。素焼きの素朴さが秋の空気の透明感を感じさせてくれる。立体的な句となっている。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★結納の支度整う白露の日/藤田洋子
結納の支度との事ですから、ご子息さまのご結婚でしょうか?9月8日の大安の前の7日の土曜日が白露の日。みほとりがすっかり涼しくなり、秋めいて静謐なる中での慶事が想われ 身の引き締まるほどの喜びが伝わります。 (桑本栄太郎)

★稜線のくっきり帰燕の空となり/佃 康水
すっきりとした秋空の大景が好ましいと思います。(河野啓一) 
燕が帰る。いままで身近に感じていた燕だったが、広い世界を旅する偉大な生き物なのだと気づく。くっきりと澄んだ秋の空に旅立つ燕に対して、畏敬の念を感じました。(安藤智久)

★浜に立ち他所の空から遠花火/迫田和代
朝晩は過ごしやすくなってまいりました。浜で涼んでいると何処からか遠くに花火が見える。夏も過ぎてゆくのですね。(祝恵子)

★落鮎に河の雫のきらめける/高橋正子
産卵のために川を下る鮎は生涯最後の旅ともなるのですね。その鰭に跳ね上げられ、鱗をなめる水の流れはいよいよ清らかに輝きます。 (小西 宏)

★長皿の鮎にまっすぐ黄色い線/高橋句美子
長いお皿には背鰭尾鰭に塩を打った香ばしい鮎の姿焼きが盛られています。真っ直ぐな黄色い線を残したとても新鮮な鮎を想起させ、まさに旬の味を楽しまれたことでしょう。美味しそうです。(佃 康水)
脂ののった鮎には黄色い線が輝き、おいしそうです。この季節ならではのご馳走です。下五は字余りですが、一句がすっきりとして新鮮です。 (井上治代)

★新涼や青磁の花瓶透かし彫/小口泰與
涼しい風の中で、青磁の花瓶に生けられた花が揺れています。「新涼」・「透かし彫」の言葉から透明な美しさを感じ、涼しさが増すようです。 (井上治代)

★素焼き乾す庭へすいっと秋茜/佃 康水
★稲の香の風に放たれ刈られゆく/柳原美知子

【高橋正子特選/8句】
★港から天に向かいて秋の虹/高橋秀之
大きな虹がかかりました。その虹は明るい未来への架け橋となってくれることを願います。雄大で美しい景色を想像することができました。(井上治代)

★稜線のくっきり帰燕の空となり/佃 康水
秋めいて来ると空気も澄んで稜線もくっきり見えてくる。そろそろ燕も南へ帰る頃山々が旅立ちを祝している景。 (古賀一弘)

★みどり児のうまいいとしく銀河濃し/小川和子
お孫さんがご誕生になられ、すやすやと眠って居られる寝姿は可愛くてしかた有りません。家族皆の幸せですね。澄み渡った空は益々煌めいています。おめでとうございます。 (佃 康水)

★稲の香の風に放たれ刈られゆく/柳原美知子
風に放たれる稲の香が芳しく清々しく、早くも刈取りを迎えた稲田に、実りの秋の喜びがあふれます。 (藤田洋子)

★蕎麦の花伸びれば覗く空の青/下地鉄
一面に広がる蕎麦の花の白、その眺めはとりもなおさず抜けるような空の青の広がりでもあります。 (小西 宏)

★鈴懸の黄葉し初むる広き道/小西 宏
広い道が続く、鈴懸並木を想像しております。黄葉(もみじ)し初めてきて、秋が徐々に深まっていくのでしょうね。(祝恵子)
「鈴懸の」措辞に美しい詩情を感じます。広い街路地へ植えられているプラタナスが夏の風情を残しながらも黄葉しはじめました。そしてやがて落ち葉して空一杯にあの鈴懸の実が見られるのももう直ぐです。(佃 康水)

★素焼き乾す庭へすいっと秋茜/佃 康水
★浜に立ち他所の空から遠花火/迫田和代

【入選14句】
★朝顔の種とる夕べ次の代思う/河野啓一 
朝顔の種を取る時期になりました。来年、またこの種を植えて新しい朝顔が育つ。そんなことを思いながら種を取る夕べは、涼しくなった秋の夕べです。 (高橋秀之)

★秋の旅しているつもり日本地図/ 祝恵子
是非あそこ、ここと決めてかかる夏や冬の旅ではない。気の浮き立ち、すぐにでも飛び出したくなる春でもない。ゆっくりと、地図を見ながらさまざまな場所の秋に思いを馳せる。それだけで心満たされるときもある。そんな余裕のある詠いぶりが楽しい。 (小西 宏)

★篭盛りの秋茄子縁より届けらる/柳原美知子
マンションではこうもいかないでしょうが、篭に入れた秋茄子が縁側から届けられたお付き合いが嬉しいですね。 (祝恵子)

★朝顔の種とる夕べ次の代思う/河野啓一 
朝顔の種を取る時期になりました。来年、またこの種を植えて新しい朝顔が育つ。そんなことを思いながら種を取る夕べは、涼しくなった秋の夕べです。 (高橋秀之)

★子の名前考え始む虫の夜/安藤智久
初めてのお子さんの誕生がだんだん近づいてきているのでしょう。名前を考えるというのは、父親として最初の仕事ですね。あれこれ思いをはせながら思案されるのもかけがえのないひとときと思います。 (多田有花)

★唐黍を囓る反っ歯の童かな/古賀一弘
反っ歯だったら唐黍を齧れば調子いいでしょう。思わず顔が崩れます。とても楽しい句ですね。(迫田和代)

★孫生れし報のやすらぎ涼新た/小川和子
待望のお孫さんが無事誕生された安堵感と喜びが、より一層の新涼を感じさせてくれます。おめでとうございます。(柳原美知子)

★ゆらゆらと日なたの方へ秋の蝶/井上治代
ようやく涼しくなってきました。蝶を見る私たちの目も少し違ってきます。日向をやわらかなものと見る目が戻ってきて、秋蝶の動きも温みを求めてゆったりと翅を動かす、愛おしいものと見えてきます。 (小西 宏)

★お勤めの木魚聞こゆる白露かな/桑本栄太郎
今年は残暑がことのほか厳しく、白露となってようやく秋が定まってきた感じです。その中で聞こえてくる木魚の音、秋の空気の中でなにやらほのぼのとした感覚を感じます。 (多田有花)

★秋の朝行き交う人あり手を振って/河野啓一
涼しくなって、青空も高くなりはじめた朝、出会った人が挨拶の手を振りながら通っていきます。すがすがしい朝の情景です。 (多田有花)

★森を抜け丘を目指せば彼岸花/祝恵子
猛烈な残暑がようやくおさまりました。すると早くも彼岸花が咲き始めています。丘に通じる道の一角で揺れるあの赤い花。秋の象徴です。 (多田有花)

★二〇二〇年の暦を見る秋/多田有花
目出度くオリンピックが東京へと決まり沸き立っております。きっとカレンダーを見て、7年先の未来?のことやチエックをされているのではと思ったりしています。(祝恵子)

★天高し友の訃報を胸に抱き/矢野文彦
どこまでも高く、澄み渡った青い空。友の訃報を知り、なおさら空の青さが身に沁みます。友との懐かしい思い出がよみがえります。 (井上治代)

★今朝の秋梢をわたる風の声/渋谷洋介
立秋を迎える朝、梢を吹きぬける風が清々しいかぎりです。炎暑の夏を越せばこその秋の到来の喜びが、新鮮な「風の声」に感じとれます。 (藤田洋子)

■選者詠/高橋信之
★秋陽降る森の葉っぱを透かせ降る
秋の太陽は空気か乾燥しているので照り方が激しくひざしは秋とは言いながら強く森の木々の葉っぱを透かしている。秋の素晴らしい景ですね。 (小口泰與) 
秋陽の心地よさが遺憾なく表現されで好きな句です。 (下地鉄)

★秋蝉じじと鳴く森の中へ中へ
★虫が鳴くその奥にまた虫が鳴く

■選者詠/高橋正子
★落鮎に河の雫のきらめける
産卵のために川を下る鮎は生涯最後の旅ともなるのですね。その鰭に跳ね上げられ、鱗をなめる水の流れはいよいよ清らかに輝きます。 (小西 宏)

★尾も鰭も澄みたる色の下り鮎
下り鮎(落ち鮎)を余り見た事が無かったのですが、地方紙の中国新聞のフェイスブックの写真を見てしっかり理解出来ました。水流を堰き止めて、流された鮎が簗の上で美しい色をした尾や鰭でぴちぴちと飛び跳ねて居る光景は将に感動そのものです。(フェイスブックにシェアしました。) (佃 康水)

★灯ともして子ども声よ鉦叩

■互選高点句
●最高点(9点)
★稜線のくっきり帰燕の空となり/佃 康水

●次点(7点)
★稲の香の風に放たれ刈られゆく/柳原美知子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

※コメントのない句にコメントをお願いします。下のコメント欄にお書きください。

9月ネット句会清記

■9月ネット句会■
■清記/21名63句

01.蜩の声にやすらぐ日暮かな
02.コスモスの小さく揺れて風を待ち
03.蕎麦の花伸びれば覗く空の青
04.庭先の桔梗を切りて花器満たす
05.松葉きらきらと白露の雨の粒
06.結納の支度整う白露の日
07.蝉の声いつしか虫と入れかわる
08.廃屋の増えゆく里や白木槿
09.ゆらゆらと日なたの方へ秋の蝶
10.お勤めの木魚聞こゆる白露かな

11.丘上に辿り愛でれば萩の雨
12.風鎮み秋の夕日の入りにけり
13.空模様なかなか定まらぬ白露
14.長雨や二百十日を過ぎてより
15.二〇二〇年の暦を見る秋
16.竹の春街道沿いに浅緑
17.朝顔の種とる夕べ次の代思う 
18.秋の朝行き交う人あり手を振って
19.素焼き乾す庭へすいっと秋茜
20.雨上がり確と青柿艶増せり

         
21.稜線のくっきり帰燕の空となり
22.川風に日ざしの和む秋のばら
23.新涼や青磁の花瓶透かし彫
24.一瞬のしじまをやぶり虫すだく
25.森を抜け丘を目指せば彼岸花
26.秋の旅しているつもり日本地図
27.話しかけ八重の木槿の揺れを止め
28.秋冷の朝(あした)することサラと済む
29.蜩の声を残して去っていく
30.浜に立ち他所の空から遠花火

31.日曜の秋に包(くる)まり朝寝坊
32.里山に忙しく鳴けり法師蝉
33.鈴懸の黄葉(もみじ)し初むる広き道
34.薄日差す秋めく朝の軒雀
35.秋の蝶曲線描いて大空へ
36.港から天に向かいて秋の虹
37.夕暮れの窓七色に秋の虹
38.稲の香の風に放たれ刈られゆく
39.篭盛りの秋茄子縁より届けらる
40.真昼の日稔田をかく輝かす

41.孫生れし報のやすらぎ涼新た
42.みどり児のうまいいとしく銀河濃し
43.唐黍を囓る反っ歯の童かな
44.転た寝や羽化登仙の菊枕
45.関八州またぎ竜巻秋暑し
46.今朝の秋梢をわたる風の声
47.鎮魂の花火映すや信濃川
48.平和願う黙祷三度八月や
49.子の名前考え始む虫の夜
50.巣を揺らし蜘蛛が朝日を輝かす

51.友の背を叩き土俵へ送り出す
52.長皿の鮎にまっすぐ黄色い線
53.提げて重い梨の袋のいい香り
54.明るくて静かなお盆の電車の窓
55.灯ともして子ども声よ鉦叩
56.尾も鰭も澄みたる色の下り鮎
57.落鮎に河の雫のきらめける
58.秋蝉じじと鳴く森の中へ中へ
59.秋陽降る森の葉っぱを透かせ降る
60.虫が鳴くその奥にまた虫が鳴く

61.天高し友の訃報を胸に抱き
62.湯上りの秋の団扇を読みくらべ
63.咲くうちはそのままにおく秋の花


◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、9月8日(日)午後7時から始め、同日(9月8日)午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、9月9日(月)午前9時です。
※2) 伝言・お礼等の投稿は、9月9日(月)午前9時~9月10日(火)午後6時です。

◆9月ネ ット句会投句箱◆


▼9月ネット句会の投句案内
①投句:当季雑詠(秋の句)3句
②投句期間:2013年9月8日(日)午前0時~午後6時
※事前投句が許されますで、事前投句をご希望の方は、お申し込みください。
③投句は、下の<コメント欄>お書き込みください。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:9月8日(日)午後7時~午後10時
②入賞発表:9月9日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、9月9日(月)正午~9月10日(火)午後6時

▼スタッフ
①句会主宰:高橋正子
②句会管理:高橋信之・藤田洋子
③当番スタッフ:小西宏・佃康水

■ご挨拶/8月ネット句会■

ご挨拶/高橋正子(主宰)
11日は記録的な猛暑でした。四万十川では40度を超えたとか。お盆前のこの暑さにもかかわらず、20名の方にご参加いただき、投句に始まり、選とコメントをありがとうございました。暑いと言いながらも、初秋の気配が感じられる句が多くあり、句を読んで涼を感じました。今回は、皆さんの選がばらつき同点最高点がたくさんありました。どの句もよいが、(暑さのためか)あと少しの句が多かったせいかもしれません。俳句は、「あと少し」が難しいところと思います。集計は洋子さんに、管理運営は信之先生に、この暑さの中、大変お世話になりました。当番スタッフのみなさんには、コメントをありがとうございました。これで8月ネット句会を終わります。来月の句会は9月8日(日)です。

ご挨拶/藤田洋子(当番スタッフ)
8月ネット句会ご参加の皆様、お世話になりありがとうございました。全国各地とも、記録的に気温が上がり、立秋を過ぎても猛烈な暑さが続きます。その中で、20名の皆さんと夏の句、初秋の句を鑑賞し、ネット句会ならではの交流の場を楽しませていただきました。蜩、飛蝗、月見草、芙蓉の花など、お暮らしの身辺から生まれる俳句の数々は夏から秋への季節を実感することができます。暑さの中にもひとときの涼しさ、爽やかな明るさを感じることができました。今回も集計をしながら、互選、コメントをあらためて楽しめました。句会の開催に際しましては、信之先生、正子先生に心よりお礼申し上げます。スタッフの皆様、コメントのお世話などありがとうございました。残暑厳しい折、皆様お元気にお過ごしください。

ご挨拶/高橋秀之(当番スタッフ)
全国的に残暑のきわめて厳しい中、8月句会にご参加のみなさま、ありがとうございました。立秋を過ぎたとは思えない猛烈な暑さが続きますが、それでも季節は確実に秋に向かっていることが、皆様の句から感じられました。いろいろな季節感の感じ方があり、いろいろな光景が感じられ、身近な生活から、これぞ日本の夏といった大きな光景まで、投句、選句などを通して、ご参加の皆様には楽しい句会になったことだと思います。
厳しい暑さが続く中、8月句会を開催開催していただきました高橋信之、高橋正子先生には心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。また、集計のお世話をいただいた藤田洋子様、当番スタッフの皆様、お世話をいただきありがとうございました。
まだまだ暑い日が続くという予報です。皆様には体調にお気をつけてお過ごしください。次回句会も、楽しい句を楽しみにしております。

◆伝言◆

●俳句添削教室
以下の方の俳句添削を下記アドレスの<俳句添削教室>に書き込みましたので、
ご確認ください。
川名ますみ・高橋秀之
http://www.21style.jp/bbs/kakan13/

●高橋正子の俳句日記(ブログ)
以下の方の俳句をご紹介していますので、ご確認ください。
佃康水(8/18)藤田洋子(8/17)
http://blog.goo.ne.jp/kakan02/

■8月ネット句会入賞発表■

■8月ネット句会■
■入賞発表/2013年8月11日■

【金賞】
★蜩の降りくる森の厚みかな/小西 宏
「森の厚み」に、ひぐらしの声の特質がとらえられている。ひぐらしは、森全体に響き、森全体が鳴くように思える。それが「森の厚み」として捉えられた。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★花舗の朝仕分けの花に秋立ちぬ/堀川喜代子
開店間際の花舗の朝。仕分けをする花にも、竜胆や女郎花などが混じっているのだろう。生き生きとさわやかな花となっている。(高橋正子)

★玄関の飛蝗大きな青空へ/高橋秀之
玄関にいた飛蝗が、いきなり飛び立った。それも一気に大きな青空へ。飛蝗の力強さ、大きな青空の爽快さが、明快に詠まれている。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★潮引いて海も遠のく月見草/迫田和代
潮が引くと浅瀬がぐんと現れる。海が遠のくのだ。そこに月見草が咲く。遠のく海と月見草の出会いがいい。(高橋正子)

★夏果つる空に円形観覧車/小川和子
夏が終わる。夏の間人々を楽しませた観覧車が空に円形を描いている。空に立つ円形観覧車が夏の果てを象徴している。(高橋正子)

★向日葵を籠いっぱいに活けあげる/井上治代
向日葵を活ける。それも籠いっぱいにあふれさせて。「活けあげる」の「あげる」に作者の心意気と思いがよく出ている。明るくはつらつとした向日葵である。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★花舗の朝仕分けの花に秋立ちぬ/堀川喜代子
立秋を迎えるとすぐにお盆です。お墓参り用の花も色々準備され、今までとは違った種類の花が入荷して居る花屋さんに秋の来た事を実感されたのでしょう。 (佃 康水)

★虫網を下段に構えヤンマ待つ/小西 宏
大型のオニヤンマを捕るために虫網を持つ子どもたち。「下段に」の細やかな描写が、虫捕りの子どもたちの様子を明るく生き生きと伝えてくれます。自然の中で子どもたちを見守る優しい眼差しを感じます。 (藤田洋子)

★朝の日へ咲き初む里の稲の花/佃 康水
朝の日差しの中、小さな白い稲の開花が心洗われるような清らかさです。稲の花咲く里にやがて訪れる実りの秋を思い、初秋の嬉しさが感じとれます。 (藤田洋子)

★酢の物の色どりどりをガラス器に/井上治代
連日の暑さの中ではさっぱりとした酢の物が何よりのご馳走です。それを更に色とりどりの新鮮野菜を取り混ぜ、また、ガラス器へ盛られた卓上は視覚的にも涼しく、食欲が増して参ります。廚に立つ者として共感の御句です。 (佃 康水)

★玄関の飛蝗大きな青空へ/高橋秀之
★蜩の降りくる森の厚みかな/小西 宏
★夏果つる空に円形観覧車/小川和子
★向日葵を籠いっぱいに活けあげる/井上治代

【高橋正子特選/8句】
★花舗の朝仕分けの花に秋立ちぬ/堀川喜代子
花舗の朝は仕分けで始まます。その花舗の仕分けはもっとも季節感が表れるところでしょう。花を見て立秋を感じるのは花舗ならではです。 (高橋秀之)

★本堂へ台しつらえて大西瓜/佃 康水
お寺には、季節ごとの自然からの賜物がお供えされていることが少なくありません。特別に台をしつらえてドンと置かれた大きな西瓜が、微笑ましさと共に初秋の恵みを伝えてくれています。(小西 宏)
お寺さんのお掃除でもあったのでしょうか、お手伝いの皆様に切り分けられた大きなスイカ。それも本堂にて、和やかな景が思われます。 (祝恵子)

★瀬戸大橋渡り連なる涼しき灯/藤田洋子
夜の瀬戸大橋を渡るヘッドライトの列が静かに、明るく繋がり、涼しさを伝えてくれています。(小西 宏)
瀬戸大橋に連なる外灯、海を渡ってくる涼しい風、しばしの間、暑さを忘れて初秋を感じられました。(藤田裕子)

★とんぼうの急に増えけり今朝の里/小口泰與
町中はまだ猛暑が続いておりますが、里の朝は、とんぼがたくさん飛び交っています。早く秋の訪れが待たれます。(藤田裕子)

★モビールの海の色して揺れ涼し/祝恵子
句意がはっきりして平明なので、読んで心が軽くなる。吊られたモビールが海の色をして揺れ、いかにも、涼しそうだ。(高橋正子)

★月見草空引き寄せて丘に咲く/高橋信之
月見草は丘の荒れ地などによく咲いている。そういう月見草は空の中にすっと伸びている。空を自分に引き寄せているのだ。(高橋正子)

★潮引いて海も遠のく月見草/迫田和代
潮が引き、また夕暮れて、海もますます遠く感じられます。そんな風情に、浜に咲く月見草のたおやかさが静かに残ります。(小西 宏)

★玄関の飛蝗大きな青空へ/高橋秀之

【入選/13句】
★夾竹桃上り急行通過せり/渋谷洋介
冷房の効いている電車の中さえ団扇で扇ぐ人がいるほどの酷暑。しかし、その鉄路のかたわらには夾竹桃の可憐な花が咲いています。猛暑の中で咲く花を揺らし急行列車が走って行きます。 (多田有花)

★関東を一瀉千里の夕立かな/古賀一弘
関東地方はこの夏大規模な夕立が何度もありました。一瀉千里という言葉に雲の上を駆け回る雷神の姿を、思い浮かべました。 (多田有花)

★青柿や白雲育つその下に/柳原美知子
暑い午後、入道雲が空にぐんぐん育ちます。その空の下、葉陰では柿の実がしだいに大きくなっています。猛暑の中に秋が育っているようです。 (多田有花)
逞しい夏雲がむくむくと伸び上がっている。その下に、すっきりと青い若い柿の実。白い動の中に色美しい静の緑が新鮮に浮き立ちます。(小西 宏)

★中庭に木槿の白を散らしたり/川名ますみ
花木を植えて四季を感じられる閑静な中庭に真っ白な木槿が散っている。散っている木槿に静かによせて来る初秋の風情と涼しさを感じます。 (佃 康水)
暑さ厳しさの残る今日、白木槿が散っている庭。明日も咲くであろう花を思う気持ちが「散らしたり」となるのでしょう。(祝恵子)
中庭に咲いている白木槿、そしてその白をふわりと散らした木槿、清楚な美しさを醸し出してくれます。(藤田裕子)

★蝉時雨のみ一村の昼下がり/黒谷光子
蝉時雨が激しく聞こえてくるにもかかわらず、「昼下がり」の「一村」の佇まいが静かです。(小西 宏)
暑い暑い夏の午後、村人も家に引きこもっています。ただ蝉だけが盛んに夏を謳歌。山間の村の情景が浮かんで来ます。 (古賀一弘)
暑さのためか人通りの少ない昼下がりの山の村には、ただ蝉時雨のみが響いています。すごく静かな中に蝉が鳴いている日本の夏という情景が浮かんできます。 (高橋秀之)

★みな帰る胸に花火の余韻抱き/多田有花
花火大会の帰りなのでしょう。帰途につく人々は華やかだった花火の余韻を大切に家路に向かわれたことでしょう。 (黒谷光子)

★雲の峰見上げる人の小ささや/迫田和代
雲の峰とそれを見上げる人との対比、見あげる人は自分そのものでしょう。 (祝恵子)

★秋を待つさやかに響く音にさえ/迫田和代
ここ数日の暑さの酷さは真夏以上です。秋を待ち望む気持ちはあらゆるものの中にその兆しを感じ取ろうとします。涼しげな音の響きに近づく秋を待ち望む心を託しておられます。 (多田有花)

★月見草しみじみ高く野辺暮るる/小川和子
暮れゆく中、野に立つ月見草の静かな佇まいが見えてきます。月見草へ寄せる作者の思いがしみじみと優しく伝わります。(藤田洋子)

★炎天へ踏み出す帽子の鍔広き/黒谷光子
連日のこの酷い猛暑。出来る事であれば外出も控えたい所であるが、所要が出来ればそうは言っておられず止むをえない所。心して勢いをつけ外出の時の心情が、大変良く表現されている。 (桑本栄太郎)

★提灯の明るさ増しゆく踊りの輪/藤田裕子
提灯の明るさとともに踊る人々も増え、踊りの輪も広がっていくようです。盆踊りの夜景も美しく、踊りに集う人々の温もりを感じる一夜です。 (藤田洋子)

★歓声や夜空に花火の開くたび/多田有花
花火大会は夏の風物詩。その花火が開くたびに起こる歓声。暑さを忘れさせてくれる光景です。 (高橋秀之)

★名札付け帰省みやげの調えり/桑本栄太郎
誰に何を渡そうか。忘れないように、間違えないようにお土産名名札をつけて準備を整える。帰省の度に繰り返されるであろう光景は、毎年の楽しみでもあるのでしょう。 (高橋秀之)

■選者詠/高橋信之
★天ひろびろ地がひろびろ稲の花咲く
天は青く広がり、その下の地上は稲の花が咲く田園が広がっています。青い空、緑の稲、白い稲の花、美しい光景がひろびろと見えてまいります。 (藤田裕子)
稲の花が咲く頃の濃く広い空、花咲く稲草の青々と靡く地の広さ、そして何より、稲の花を迎えた人々の喜び。 (小西 宏)

★暑き朝なれど確かな今日がある
どんな暑い朝であっても確実に季節はながれている。屹度立秋と思われるのですが、確かな今日がある 嬉しいですね。 (迫田和代)
八月になり暑い日が続きますが、暑い朝であっても、確実に今日という一日は始まります。当たり前のことかもしれませんんが、確かな今日がそこにあるというところに、今日という一日に感謝する気持ちが感じられます。 (高橋秀之)

★月見草空引き寄せて丘に咲く
月見草は丘の荒れ地などによく咲いている。そういう月見草は空の中にすっと伸びている。空を自分に引き寄せているのだ。(高橋正子)

■選者詠/高橋正子
★遠雷は遠雷のまま昼下がり
遠くに雷が聞こえます。夕立が来るかしらと思うものの、遠雷は遠雷のまま。何ごともなかった昼下がりですが、耳を澄まし、空を見上げ、肌や匂いで湿り気を察する、より自然に近づくひとときであったと存じます。 (川名ますみ)
猛暑に一雨ほしいが、遠雷のまま驟雨は来ず。 (渋谷洋介)

★風立ちて芙蓉の花のみな戦ぎ
初秋の頃の朝、淡紅色の花を開き夕方にはしぼむ、芙蓉の花が風に揺れてそよそよと音を立てている素敵な景ですね。 (小口泰與)

★炎昼の舗路をゆくとき修行めく
猛暑の中、汗だくになって照りかえす舗道を歩く行為は忍耐そのもの。まるで修行という発想が面白いですね。 (柳原美知子)

■互選高点句
●最高点(4点/同点7句)
★天ひろびろ地がひろびろ稲の花咲く/高橋信之
★暑き朝なれど確かな今日がある/高橋信之
★遠雷は遠雷のまま昼下がり/高橋正子
★玄関の飛蝗大きな青空へ/高橋秀之
★みな帰る胸に花火の余韻抱き/多田有花
★モビールの海の色して揺れ涼し/祝 恵子
★花舗の朝仕分けの花に秋立ちぬ/堀川喜代子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

■8月ネット句会清記■

■8月ネット句会■
■清記/20名60句

01.名札付け帰省みやげの調えり
02.整えて帰省みやげを部屋に置く
03.帰省子のリストに添いぬ旅かばん
04.白木槿咲く門口を掃きし人
05.中庭に木槿の白を散らしたり
06.高熱を経て青き空けさの秋
07.寝返りて窓の近くへ秋暑し
08.不揃いの虫の音夜の散歩道
09.玄関の飛蝗大きな青空へ
10.七色の光が開く熱帯夜

11.歓声や夜空に花火の開くたび
12.みな帰る胸に花火の余韻抱き
13.湯煙をふわり包みし霧流る
14.とんぼうの急に増えけり今朝の里
15.木犀やジャックベリーの曲流る
16.雲の峰見上げる人の小ささや
17.秋を待つさやかに響く音にさえ
18.潮引いて海も遠のく月見草
19.虫網を下段に構えヤンマ待つ
20.蝉の羽曳く一匹の蟻の秋

21.蜩の降りくる森の厚みかな
22.モビールの海の色して揺れ涼し
23.うちわ持つ語り手の指す蚕棚
24.ガラス器の展示に挿され綿の花
25.児の視線せんこう花火の散りぎわへ
26.門先に小さな揺れ見せ日日草
27.提灯の明るさ増しゆく踊りの輪
28.山の池さざ波立ちて萩の風
29.本堂へ台しつらえて大西瓜
30.朝の日へ咲き初む里の稲の花

31.天ひろびろ地がひろびろ稲の花咲く
32.月見草空引き寄せて丘に咲く
33.暑き朝なれど確かな今日がある
34.夏果つる空に円形観覧車
35.月見草しみじみ高く野辺暮るる
36.病棟の前庭ばらの香のアーチ
37.夾竹桃上り急行通過せり
38.靴脱ぎに蚊遣火焚かれ書道塾
39.慰安婦の解けぬ心白木槿
40.浮いて来い怪獣ガメラと大戦争

41.関東を一瀉千里の夕立かな
42.日の盛り仏間をのそり猫過ぎる
43.炎天へ踏み出す帽子の鍔広き
44.蝉時雨のみ一村の昼下がり
45.涼風の入る縁側へ午後の席
46.早朝の空気しっとり夏座敷
47.酢の物の色どりどりをガラス器に
48.向日葵を籠いっぱいに活けあげる
49.海鳴りや茶房の金魚ひるがえり
50.夕映えの河口静かに夏終わる

51.花舗の朝仕分けの花に秋立ちぬ
52.遠雷は遠雷のまま昼下がり
53.炎昼の舗路をゆくとき修行めく
54.風立ちて芙蓉の花のみな戦ぎ
55.墓洗うすぐに上がりし山の雨
56.黄睡蓮山門常に風通る
57.瀬戸大橋渡り連なる涼しき灯
58.青柿や白雲育つその下に
59.蓮の葉を雨露ころころ風のまま
60.紅蓮の散りし花びら葉ごと揺れ


◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、8月11日(日)午後7時から始め、同日(8月11日午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、8月12日(月)午前9時です。
※2) 伝言・お礼等の投稿は、8月12日(月)午前9時~8月13日(火)午後6時です。

◆8月ネ ット句会投句箱◆

▼8月ネット句会の投句案内
①投句:当季雑詠(夏の句)3句
②投句期間:2013年8月11日(日)午前0時~午後6時
※事前投句が許されますで、事前投句をご希望の方は、お申し込みください。
③投句は、下の<コメント欄>お書き込みください。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:8月11日(日)午後7時~午後10時
②入賞発表:8月12日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、8月12日(月)正午~7月16日(火)午後6時

▼スタッフ(12名):
①高橋正子(句会主宰)・②高橋信之(管理)・③藤田洋子(管理)・④藤田裕子・⑤井上治代・⑥高橋句美子・⑦祝恵子・⑧多田有花・⑨高橋秀之・⑩小西宏・11安藤智久・12佃康水
▼8月句会当番スタッフ:藤田洋子・高橋秀之

◆伝言◆

●俳句添削教室
以下の方の俳句添削を下記アドレスの<俳句添削教室>に書き込みましたので、
ご確認ください。
高橋秀之・祝恵子・多田有花
http://www.21style.jp/bbs/kakan13/

●高橋正子の俳句日記(ブログ)
以下の方の俳句をご紹介していますので、ご確認ください。
佃康水(8/18)藤田洋子(8/17)藤田裕子(8/16)
http://blog.goo.ne.jp/kakan02/

■ご挨拶/7月ネット句会■

○ご挨拶/高橋正子(花冠代表)

雨が明けてから、暑い日が続きますが、この暑さのなか、いつものより多い24名の方が投句されました。ありがとうございます。暑いと言いながらも、周囲に目をやると、涼しそうな景色、生き生きとした野菜、元気な子供たち、と句材は多くあります。14日はおりしも京都の祇園祭。栄太郎さんはそれを句に詠まれたり、治代さんは、農村の暮らしから句材と得られるなど、いろんな地方の多彩な句が投句されました。これもネット句会の醍醐味でしょう。選とコメントをありがとうございました。句会の管理運営は信之先生、互選の集計は洋子さんにお願いしました。当番スタッフの皆さんには、コメントを書いていただき、ありがとうございました。いつものことながら、お世話になり大変ありがとうございました。これから暑さも本番を迎えます。お体に気をつけて、よい夏をお過ごしください。これで、7月ネット句会を終わります。次回は8月11日(日)です。楽しみにお待ちください。

○ご挨拶/小西 宏(花冠同人会長)
高橋信之先生、高橋正子先生
 この何ヶ月かは花冠創刊30周年祝賀行事準備のためとりわけお忙しい毎日だったと思いますが、その中で今月もまた中身の濃いネット句会をご開催くださり大変ありがとうございました。
 地方による差はあるのかもしれませんが、梅雨が明け酷暑の毎日に苦しむ日が多くなってきています。それでもみなさま方の俳句を拝見すると、そんな夏の生活を明るく楽しむ心の余裕が感じられ、それも俳句の力かと心強く、嬉しく思っております。
 近頃は日本の気候も四季から二季へと変化が乏しくなりつつあるとの声も聞かれます。しかし、地球生命の劣化を避ける具体的な施策と共に、心の中でも季節の豊かさを大切にする生活を育んでいきたいと強く念じております。
 いつもながらのことですが、藤田洋子さんをはじめとして、運営スタッフのみなさま方のご活躍に対しても、改めてお礼申し上げます。

○ご挨拶/祝恵子(当番スタッフ)
信之先生、正子先生、7月ネット句会の開催をありがとうございました。入選の皆様おめでとうございます。猛暑の中、当地はこの二日間は激しい雷雨があり驚きでした。皆さまの投句により祭りや、お盆の行事など各地の催し物が始まっているのがうかがえます。また暮らしぶりも垣間見え楽しい句会でした。暑さがますます厳しくなることでしょう。皆様ご自愛くださいますように。藤田洋子様いつも集計等御苦労さまです。

○ご挨拶/佃 康水(当番スタッフ)
高橋信之先生 正子先生
この度は、花冠創刊30周年記念行事の準備の最中、「7月ネット句会」を開催いただきまして誠に有り難うございます。普段の投句とはまた違って緊張感を持って句会に参加させていただきました。ネット句会ならではのスピードアップ、そしてまた投句し易い方法などにもご尽力下さり感謝申上げます。この度の句会は梅雨明けや猛暑を背景とした句、そしてお盆の句、また、夏の風物詩にもなって居る祇園祭の句などなど、日本各地の夏の風景を大いに楽しむことが出来ました。俳句は言うまでも有りませんがその句へのコメントも私にとっては大変勉強になるものばかりです。季語の携えているものをどの様なことばで俳句として表現すればいいのか花冠俳句からこれからも沢山学ばせて頂きたいと思っています。今年は全国的に梅雨明けが早かったためか猛暑もいち早くやって来た様です。天気予報では今後平年を上回る暑さが予想されるとか。皆様と共に元気にそして俳句を楽しみながらこの夏を乗り切りましょう。この度も集計を藤田洋子様には大変お世話になりました。そして、参加者の皆様、スタッフの皆様大変有り難うございました。次回8月のネット句会を楽しみに致しましょう。

■7月ネット句会入賞発表■

■7月ネット句会■
■入賞発表/2013年7月14日■

【金賞】
★たっぷりと野菜を洗う水涼し/井上治代
夏は水が気持ちがよい。野菜を洗うにも手に水を楽しみながら洗う。夏野菜もいろいろとあって、新鮮そのもの。それが涼感を句にもたらしている。(高橋正子)

【銀賞】
★水注しに溢れる水を原爆忌/迫田和代
原爆が投下されたとき、多くの人は「水を!」と言って亡くなった。今、炎天下に水差しには溢れるほどの水がある。溢れる水は、原爆被害者への祈り。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★お茶漬けに梅干し一つ雲の峰/下地鉄
雲の峰がもくもく湧き立つ日、お茶漬けに梅干し一つを入れて、さっぱりと食事をすませる。雲の白さと梅干しの赤のコントラストがさっぱりとしている。それに加え、暑ささに重なる日の丸のイメージがぬぐえない。(高橋正子)

★園丁の刈り残したる文字摺り草/佃 康水
園丁の優しさで、文字摺り草が刈り残された。小さなピンク色の花がらせん状に巻きあがる文字摺草は目立つ花ではないが、人を心優しくさせる花である。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★桃少し冷えふっくらと白み帯ぶ/高橋正子
生活の中の身近なものをしっかりと見ている。観察の眼がいいのだ。そして、それを言葉に乗せた。やさしさがある。(高橋信之)

★たっぷりと野菜を洗う水涼し/井上治代
水の透明感と動きがあり、夏らしくて良いです。(高橋句美子)
採れたてのみずみずしい夏野菜をたっぷりと水を流しながら洗う清々しさ。洗われた野菜の弾く水滴も涼しげです。 (柳原美知子)

★一面の青田へ開く朝の窓/柳原美知子
朝の窓から見える一面の青田がとても美しく、爽やかな風も感じられ、田園風景に感動いたします。 (藤田裕子)

★園丁の刈り残したる文字摺り草/佃 康水
手入れされた公園の芝生なのでしょう。刈り残された一筋、二筋の文字摺草がかわいく目に浮かびます。園丁の行き届いたお世話がうれしいです。(黒谷光子)

★お茶漬けに梅干し一つ雲の峰/下地鉄
常夏と言われる沖縄の夏は想像出来ませんが、本土とはまた違った暑さでしょうか。もくもくと湧きあがって来る夏の雲。真夏は食欲も減退気味となります。酷暑に対処出来るのは日本人にとって、やはり「お茶漬けに梅干し」が一番ですね。それにしても美しい青い海に囲まれた沖縄も素敵でしょうね。(佃 康水)

★迎火へ声を出さずに歌うたり/川名ますみ
今年もまた、父上の霊をお迎えなさったのでしょう。「声を出さずに歌う」の措辞に深い哀惜の情と、年月を経ての心の静まりを感じさせます。(小西 宏)
心の中で歌った歌は、今は天国に旅立った方との懐かしい思い出の歌なのでしょう。その歌はきっと天国まで届いたと思います。 (井上治代)

★水注しに溢れる水を原爆忌/迫田和代
原爆投下によって大きな火傷を受けた被爆者は「水!水!」と言いつつ亡くなって行きました。作者は被爆者であるからこその深い思いを如実に表わされた実感の御句と思います。原爆を直視出来るようになった事は俳句のお蔭と仰った作者の気持ちが伝わります。(佃 康水)

【高橋正子特選/7句】
★夏山の輝く朝に傘を干す/安藤智久
山で傘を干すという発想が面白い。しかし、本当はありそうなことなのだ。「傘を干す」という表現によって夏山の輝きが一段と映える。(小西 宏)

★空晴れて今日の自由を得し揚羽/高橋信之
夏に見られる揚羽蝶は黄色地に黒の縞模様を持ち大きく美しい。梅雨の間は弱々しく飛び、蝶も梅雨明けと同時に太陽の日をいっぱいに受け大きく気持よく飛び回っている。青空のもと気持の良い景です。 (小口泰與)

★たっぷりと野菜を洗う水涼し/井上治代
水を流しながらみずみずしい夏野菜を洗うひととき。お暮しの中での格別な涼感と心豊かさが感じられます。(藤田洋子)

★星空へ蝉声ほそく鳴き出せり/藤田裕子
梅雨が明け真夏の厳しい日々が続き、蝉の声も聞こえる様になって参りました。生まれたたばかりの蝉は、未だか弱い声で鳴き始めますが、それを「ほそく鳴きだせり」と詠われ、又美しい星空を仰ぎながら初蝉への慈しみの想いと嬉しさの入り混じった御句と思います。(佃 康水)
夜を迎えようやく静まった蝉の声。そこにまた静かに鳴き始める一匹の蝉。星空とあいまって哀感の漂うひと時です。(小西 宏)

★水注しに溢れる水を原爆忌/迫田和代
原爆投下によって大きな火傷を受けた被爆者は「水!水!」と言いつつ亡くなって行きました。作者は被爆者であるからこその深い思いを如実に表わされた実感の御句と思います。原爆を直視出来るようになった事は俳句のお蔭と仰った作者の気持ちが伝わります。(佃 康水)

★園丁の刈り残したる文字摺り草/佃 康水
手入れされた公園の芝生なのでしょう。刈り残された一筋、二筋の文字摺草がかわいく目に浮かびます。園丁の行き届いたお世話がうれしいです。(黒谷光子)

★お茶漬けに梅干し一つ雲の峰/下地鉄
常夏と言われる沖縄の夏は想像出来ませんが、本土とはまた違った暑さでしょうか。もくもくと湧きあがって来る夏の雲。真夏は食欲も減退気味となります。酷暑に対処出来るのは日本人にとって、やはり「お茶漬けに梅干し」が一番ですね。それにしても美しい青い海に囲まれた沖縄も素敵でしょうね。(佃 康水)

【入選/21句】
★青芝に座し湖の青山の青/黒谷光子
青が三つありますが それぞれに違った青と思います。青芝は新芽の柔らかな青ですし 湖は深い青 山の青は新緑の燃え立つ緑っぽい青でしょう。大きな句ですね。(迫田和代)

★咲き残る一輪湖畔の夏椿/黒谷光子
湖にはさざ波がたち、夏椿の白い花が涼しそうで、ほっとするひとときです。 (井上治代)

★投網打つ夏の夕日をからめては/小口泰與
少し涼しくなってきた夕方の投網、何回も何回も投げては引き上げる網、「夕日もからめて」だんだん暗くなってゆく前の明るい投網を見ているのでしょうか。 (祝恵子)
投網が広がり水に落ちる一瞬の美しさ。網に「からんだ」夏の夕陽の輝きが印象的です。(安藤智久)
夕日がきらめく川面にさっと広がる投網。水面に落ちるときの一瞬を上手く捉えた。 (古田敬二)

★湖よりの風にさ揺らぐ夏の萩/黒谷光子
早くも咲きだした萩が「風に狭揺らぐ」優美な景が目に浮かびます。(河野啓一)

★山葵田を駈け上がり来る夏の霧/安藤智久
山葵田はきっと標高何百メートルかの場所に有るのでしょう。私達は夏の霧と言えば遠山や遠海にかかって居る状態しか見ませんが、自分の居場所、足元へ駈け上がって来る夏霧をリアルに詠まれ臨場感溢れる御句です。 (佃 康水)

★八ヶ岳暮れ山すその青田美し/小川和子
暮れ時の八ヶ岳の美しさ。その裾野に広がる青田の美しさ。これぞ日本の夏という風情がうかがい知れます。 (高橋秀之)

★石鎚の峰をはるかに青田風/柳原美知子
四国山脈の最高峰石槌より吹き下ろす風、田植えが終わりほっとひと息青田風が心地よい。 (古賀一弘)

★一試合済ませて来たと日焼けの子/ 祝恵子
きっと真っ黒に日に焼けた子どもが笑顔で報告しているのでしょう。夏の楽しい思い出を積み重ねている元気な子どもが見えてきます。(高橋秀之)

★夕闇の夜空に高き長刀鉾/桑本栄太郎
山鉾の先頭を行く長刀鉾も、今はひかれゆく日を待ち夕闇の中で出番を待っているのでしょう。 (祝恵子)
長刀鉾が暮れてきたばかりの夜空に向かって高く掲げられている様子は、祇園祭の高揚感とあいまって夏を強く感じさせてくれます。(高橋秀之)

★花萱草三輪ほどの香りかな/渋谷洋介
草むらに咲いているのでしょうか、三輪の花萱草。色と香りで、存在を示しているようです。 (祝恵子)

★青時雨弾み吊り橋渡りきる/小川和子
青葉山の中の吊橋を渡っているときに雨に会い、怖々と橋を渡り切った安堵感でしょうか。 (祝恵子)

★夏の海漁火きらら波に映え/ 河野啓一
漁火が波に反射してきらきらと光って見えている夏の海は、まだまだこれから漁が本番という感じでしょうか。そこに躍動感が感じられます。(高橋秀之)

★夏休み心弾みし時空かな/古賀一弘
幼時の回想を交えた哲学的な響きのある詠みが魅力と思います。無限の時空を感じる自由な夏休みです。 (河野啓一)

★昼寝覚ベッドぐらしも日々あらた/矢野文彦
多くベッド暮らしをされている作者の日々新たな感覚。精神活動の若さが伝わってきます。 (河野啓一)

★石段に沿って紫陽花咲く青さ/高橋句美子
石段に沿って咲き満ちている紫陽花の落ち着いたたずまい。社寺を訪れて感じる日本人の心の原風景の一つでありましょう。 (河野啓一)
石段の両脇をうずめる紫陽花の青が透き通って涼しげに感じられます。(小西 宏)

★潮風と夏草香る埋立地/高橋秀之
まだ、ただ土を積まれたばかりの埋立地。潮風と夏草の匂いに、広大な土地と海の光が伝わってきます。(小西 宏)
海に近い埋立地には夏草が生い茂り、海からの風の香りとまじり合っています。暑い夏も潮風にあたると、心地よく清々しい気持ちになれます。 (井上治代)

★初蝉の朝朗々と鳴き出でし/藤田洋子
朝の明かりと共に朗々と鳴き出だす蝉の声。いよいよ夏の日の始まりです。(小西 宏)
今年初めて聴く蝉の声。夏本番になった気持ちになります。「朗々と」という表現が蝉の鳴き声をうまく表していると思いました。 (井上治代)

★山深し老鶯鳴きつつ遠ざかる/古田敬二
山深く分け入って行きますと、鶯の声が聞こえてきました。そして、だんだんと遠のき、かすかになってゆきました。老鶯への哀感が漂っています。 (藤田裕子)

★凌霄や雲疾(と)く流る夕浅間/小口泰與
夕暮れ時、凌霄の咲きのぼる景と、浅間山の上を雲が疾(と)く流れる景が、雄大で力強く感じられます。気象の変化も予感しているようです。 (藤田裕子)

★復元の市電に夏の日の反射/小西 宏
夏の強い日差しが市電に反射して眩いばかりです。その市電は復元されたもので、懐かしさが込み上げてまいります。炎天のもと、復元された市電に遇った喜びも感じられます。 (藤田裕子)

★夏蓬刈られ青き香放ちけり/井上治代
炎熱と湿気の溢れる今の時季は人間にとっては暑くて辛い季節であるが、植物にとっては生長へのエネルギーとなる大切な時である。夏草そのものも香りが強いが、わけても蓬の刈られた時の芳香は強く、作者にとってはその香りは農作業を行っている自身と自然への歓喜の讃歌である。(桑本栄太郎)
夏草の茂りは旺盛です。春に萌えでた蓬草も、今や高々と伸び、刈りとられたのでしょう。草いきれの強い香に生命感を感じます。(小川和子)

■選者詠/高橋信之
★空晴れて今日の自由を得し揚羽
夏に見られる揚羽蝶は黄色地に黒の縞模様を持ち大きく美しい。梅雨の間は弱々しく飛び、蝶も梅雨明けと同時に太陽の日をいっぱいに受け大きく気持よく飛び回っている。青空のもと気持の良い景です。 (小口泰與)

★サルビアに歯科医の門に正午の陽
歯科医院の門前に植えられたサルビア。あらゆるものを射す正午の陽に、サルビアも門も等しく光を放っています。自然な言葉遣いながら、サ行に刻まれるリズム、濁音・撥音・長音の響きが心地好く、音も好きな俳句です。 (川名ますみ)

★寺苑清浄蓮の蕾のふくらみに
寺苑の清浄な空気の中で、開花する前の蓮の蕾の清らかさが、まるで浄土にいるような心地です。聖なる花の蕾のふくらみに、心澄み、心洗われます。 (藤田洋子)

■選者詠/高橋正子
★桃少し冷えふっくらと白み帯ぶ
生活の中の身近なものをしっかりと見ている。観察の眼がいいのだ。そして、それを言葉に乗せた。やさしさがある。(高橋信之)

★開ききり今朝の朝顔疵もなし
朝顔を育てて感じたことですが、疵もなく涼やかに開き切ってくれる花は案外少ないようです。今朝の朝顔の素晴らしさに感激です。 (河野啓一)

★蓮つぼみ尖り炎暑のうすみどり
大きな蓮の葉が池を覆い尽くしその狭間から先が尖り合掌の形につぼみが抜きん出ています。炎暑の中、つぼみのうすみどりはとても清らかで気持を癒してくれます。 (佃 康水)

■互選高点句
●最高点(10点)
★たっぷりと野菜を洗う水涼し/井上治代

●次点(7点)
★投網打つ夏の夕日をからめては/小口泰與

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

■7月ネット句会清記■


■7月ネット句会■
■清記/24名72句

01.万緑や歯固め備えお食い初め
02.鉾立ての四条通りの炎暑かな
03.夕闇の夜空に高き長刀鉾
04.山深し老鶯鳴きつつ遠ざかる
05.梅雨明けの美濃山塊のたわやかさ
06.トラノオの優しく曲がる山路行く
07.打ち水の吹かれて返す飛沫かな
08.悠々と守宮這い出る独居かな
09.お茶漬けに梅干し一つ雲の峰
10.迎火へ声を出さずに歌うたり

11.魂迎笑顔が増えてゆくわたし
12.迎火の後やや厚き居間の声
13.潮風と夏草香る埋立地
14.噴水の先は小虹と大空と
15.青空へ日の出とともに蝉時雨
16.目で追いぬ幼き蜻蛉の舞いゆく先を
17.夏の海漁火きらら波に映え
18.涼し色アガパンサスは風の中
19.一試合済ませて来たと日焼けの子
20.指にまだ百合の花粉の付きしまま

21.水打てば辻角に立つ補導員
22.杏の実あっけらかんと落ちにけり
23.投網打つ夏の夕日をからめては
24.凌霄や雲疾(と)く流る夕浅間
25.差し伸べて願いの糸を結ぶ子等
26.ひたすらにただひたすらに蟻の道
27.花萱草三輪ほどの香りかな
28.ごみ出しの帰り豊けし星今宵
29.星空へ蝉声ほそく鳴き出せり

30.潮の紋澄みきる青を箱の鯖
31.たっぷりと野菜を洗う水涼し
32.夏蓬刈られ青き香放ちけり
33.梅雨明けや力漲る空の青
34.湖よりの風にさ揺らぐ夏の萩
35.青芝に座し湖の山の
36.咲き残る一輪湖畔の夏椿
37.復元の市電に夏の日の反射
38.若竹の伸びる緑がやわらかい
39.梅雨明けの蜩とおき森の夕
40.水注しに溢れる水を原爆忌

41.もくもくと輝き登る雲の峰
42.明るさの黴ることなき道をゆく
43.雨意兆すかはたれ時や花うつぎ
44.空梅雨や気に入りの傘出番なし
45.夏休み心弾みし時空かな
46.喫茶去の玻璃の窓辺や釣忍
47.園丁の刈り残したる文字摺り草
48.芝手入れの庭師連れくる初蜻蛉
49.サルビアに歯科医の門に正午の陽
50.寺苑清浄蓮の蕾のふくらみに

51.空晴れて今日の自由を得し揚羽
52.蓮つぼみ尖り炎暑のうすみどり
53.開ききり今朝の朝顔疵もなし
54.桃少し冷えふっくらと白み帯ぶ
55.バス停の古びた椅子や濃紫陽花
56.夏山の輝く朝に傘を干す
57.山葵田を駆け上がり来る夏の霧
58.空青く雲白く梅雨明けにけり
59.植え筋を残し青田の波打てり
60.初蝉の朝朗々と鳴き出でし

61.木曽川に夏日きらめく目映さよ
62.青時雨弾み吊り橋渡りきる
63.八ヶ岳暮れ山すその青田美し
64.昼寝覚ベッドぐらしも日々あらた
65.初蝉の姿も声も軽からず
66.遠雷や秒針動くただ動く
67.石段に沿って紫陽花咲く青さ
68.濡れた崖花を落として岩たばこ
69.岩の割れ目ゆきのしたの小さい花
70.白南風の港に吹きて波の音

71.一面の青田へ開く朝の窓
72.石鎚の峰をはるかに青田風


◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、7月14日(日)午後7時から始め、同日(7月14日)午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、7月15日(月)正午です。
※2) 伝言・お礼等の投稿は、7月15日(月)正午~7月16日(火)午後6時です。