■立春ネット句会■
■入賞発表/2014年2月4日■
【金賞】
★撒く豆の闇の奥まで弾みけり/安藤智久
豆撒きの豆が闇の奥まで弾んでいった。勢いよく撒かれた豆だろうから、闇の奥の鬼もきっちりと追い払われたであろう。(高橋正子)
【銀賞】
★水鏡して春空の高かりし/井上治代
水鏡の春の空は、触れられそうで、触れられない。高いと感じる春の空は、やさしく、淡く、広い空であろう。(高橋正子)
【銅賞3句】
★長靴に春泥重く畝立てる/古田敬二
一雨ごとに暖かくなるころ、畑の土もぬかるみがち。畝を立てるのも力のいることだが、長靴につく泥の重さや光り具合に春らしさを思う。(高橋正子)
★寒明けて全樹つぼみの椿かな/河野啓一
「全樹のつぼみ」に作者の生き生きとした気持ちが表れている。寒が明けるのを待っていたかのように、固かった椿の蕾は一時に、膨らむ気配を見せて来た。椿の咲く日が楽しみである。(高橋正子)
★踏みしめて二月の丘の芝弾み/藤田洋子
二月の丘に登る。踏みしめてこそ知る芝の弾力。芝も萌え初めているのだろう。二月の丘に春の兆しがあるうれしさ。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
★白梅のみずみずしきが青空に/高橋正子
青空をバックにみずみずしい白梅がはっきり見えます。胸に染みいるような香りもします。いいですねー。 (迫田和代)
★長靴に春泥重く畝立てる/古田敬二
春先は雨量が増えたり雪解などが有り、又なかなか土地が乾かないのでぬかるみになってしまいます。したがって長靴や鍬に付いた土は重く畝立てにご苦労されている様子が伝わって参ります。 (佃 康水)
★美しき影はっきりと雪の上/迫田和代
雪が降った日、いろいろなものがくっきりとした影を作っています。真っ白な雪、くっきりとした黒い影、雪の少ない土地に住めばなお更美しい光景ですね。 (佃 康水)
★撒く豆の闇の奥まで弾みけり/安藤智久
「鬼は外 福は内」と家の隅々へ弾むほどに豆撒きをされている父親の喜びまで伝わって参ります。沢山の福が来てくれたことでしょう。 (佃 康水)
★冬北斗追いかけっこでゆく親子/高橋句美子
澄みわたる冬の夜空のもと、ほのぼのと心あたたまる親子の情景に、いっそう明るく輝く冬北斗を思います。天上に瞬く冬北斗と地上との、広々と心洗われるような美しい世界です。(藤田洋子)
北斗七星といえばおおくま座。その横には北極星を含むこぐま座。北の空で大きくゆっくりと追いかけっこをしています。星座が美しく浮かび上がる冬の夜空に星座の物語を思い描く作者の透き通ったまなざしが見えます。(安藤智久)
★春光や和紙に包まる有平糖/小口泰與
有平糖は砂糖菓子。春光が差し、和紙に包まれた有平糖は、その色がほのかに透けて見える。和紙も春光も柔らかで優しい。(高橋正子)
★水鏡して春空の高かりし/井上治代
【高橋正子特選/7句】
★晴れの日の続きて森の満作咲く/高橋信之
満作は糸のような花をほぐして咲く。とくに寒明けが近いころから晴れた日が続くと、満作は春がきたかと思うのか、一斉に咲き始める。自然の森のなかに、早春の花の満作を見つけると嬉しいものだ。(高橋正子)
★米びつの軽ろき音たて寒終る/桑本栄太郎
米びつに計量カップか何かが当たり、かすかな音がしました。その音にも春の気配を感じた作者の感性が素晴らしいと思いました。(井上治代)
★受験子や会釈の顔の引き締まり/佃 康水
受験シーズンの只中、受験子の緊張感がひしひしと伝わります。また、会釈をするお子さんへのエールも込めて、あたたかな優しい眼差しも感じさせていただきました。(藤田洋子)
★水鏡して春空の高かりし/井上治代
湖を目の前にしているのでしょうか。空を映した水面にも、そこからぐっと見上げる空にもやわらかな春の色が広々とそして高々とみえてきます。(安藤智久)
★踏みしめて二月の丘の芝弾み/藤田洋子
★寒明けて全樹つぼみの椿かな/河野啓一
★撒く豆の闇の奥まで弾みけり/安藤智久
【入選/10句】
★雨だれの枝につらなり梅ひらく/桑本栄太郎
春雨の暖かさに誘われ梅が開く。枝に雨だれと梅が連なる情景が鮮明に浮かぶ佳句です。(古賀一弘)
雨が止んだのでしょう。点々と枝についてる雨だれ、咲いた梅の色が雨粒の中に咲いているのかもしれません。(祝恵子)
★樹に巣箱掛けられ森に春立てり/小川和子
春の産卵、子育てを助けるために、幹に巣箱が掛けられ親鳥の寄るのを待っている。立春の日に森を歩き、木々を見上げて春の始まりを確かめる喜び。(小西 宏)
★路地裏の冬日拾ひて猫眠る/古賀一弘
猫は何処に居ても暖かい所を好む動物である。ここ数日の寒のゆるみに、猫も路地裏の日溜りに出て寛いだのであろう。「冬日拾ふ」との措辞が効果的で、情景の良く分かる長閑さが良い。(桑本栄太郎)
冬日がスポットライトのように猫を照らしている様子が暖かく可愛らしい句です。(安藤智久)
★わらづとの話など聞きボタンの芽/祝恵子
わら囲いをして大切に育てられた冬牡丹を見に行ったことがあります。寒気に強いというボタンですが、出始めたボタンの芽の育て方などを話題にされたのでしょうか。(小川和子)
★蓬萌ゆ岸へ石橋踏み渡る/柳原美知子
萌え出す蓬の緑が、硬質な石橋との対照も鮮やかに、より柔らかくみずみずしく感じられます。これから春めく岸辺の情景を思い、明るい希望を抱かせていただきました。(藤田洋子)
小川の岸辺に生えだした蓬。万葉の人のように、石橋を渡って摘みに行く。心躍る春の一日。 (古田敬二)
★父として声張り上げし鬼やらひ/安藤智久
一児の父となって初めての節分、追儺の行事。吾子の健やかな成長を祈る父としての感慨が滲んでいると思います。(河野啓一)
★帰国児の声をそろえて豆を撒く/矢野文彦
久しぶりに帰国した子供たちが、母国の節分の行事を楽しみ、元気よく豆撒きをする姿を見守る詠者の喜びが伝わってきます。 (柳原美知子)
★春節やにぎわう街に身を委ね/渋谷洋介
日本でも横浜の中華街では、春節を祝って街がにぎわう。その街の賑わいに身を委ね、異国の正月を楽しむのもいいことだ。(高橋正子)
★日を透かし高みにそよぐミモザかな/下地鉄
ミモザは、早春の花である。四国松山に住んでいたころは、黄砂が降るころ遠い丘に高く咲くミモザをよく見た。この句のミモザも高みそよぎ、日差しをいっぱいに浴びている。早春の光が溢れている句だ。(高橋正子)
早くも、高々と穂状に群がり咲くミモザの黄が眩しいばかりです。ミモザを透かす日差しも、そよぐ風にも、春来る喜びがあふれているようです。(藤田洋子)
★節分や真っ赤な色した鬼の面/高橋秀之
真っ赤な色の鬼の面をして鬼になっているのは誰でしょう。「福は内、鬼は外」と大声で叫びながら豆をまかれ、逃げまどっている鬼のようすがよく分かります。(井上治代)
■選者詠/高橋信之
★さんしゅゆの実を光らせて日が昇る
さんしゅうの実は山ぐみとも呼んでいますがあの真っ赤な実が朝陽に照らされながら輝いています。日が昇るで一層活き活きとした山ぐみが見えて参ります。 (佃 康水)
★晴れの日の続きて森の満作咲く
暖かく晴れた日が続くと、木々の芽は膨らみ、蕾はほぐれて花が咲きます。森の満作も花が咲き、希望の春がやってきました。(井上治代)
★立春の東の峯の明るい空
■選者詠/高橋正子
★白梅のみずみずしきが青空に
和やかな日光が地上を照らす日は、雲もない青空でもほの白く、春先高い香気を放って馥郁と咲き、光沢があって生気に満ちた新鮮な白梅の素晴らしい景ですね。(小口泰與)
眼前のみずみずしい白梅と大きく広がる青空のコントラストが鮮明に浮かんできて、気持ちの良い情景です。 (高橋秀之)
★大寒の真青な空の実栴檀/高橋正子
さみしく感じるまでに青く澄み渡った空に、栴檀の実が陽に輝いている美しい光景を思い浮かべることができました。 (井上治代)
★わが肺に水仙の香の今入る
■互選高点句●最高点(7点)
★撒く豆の闇の奥まで弾みけり/安藤智久
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
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