■ご挨拶/11月ネット句会■

ご挨拶(高橋正子/主宰)
11月も立冬を過ぎ、寒々とした空になりました。今朝は東京地方を除いて全国的に寒いということです。すでに暖房を入れたお宅も多いことでしょう。11月ネット句会は、20名の方がご参加され60句の投句がありました。入賞の皆様おめでとうございます。日々の生活が詠まれたご投句からは、季節がこんなにも進んで、すっかり冬になってきていることを実感させられました。鴨が来たり、麦の芽が戦いだり、蜜柑を買い込んだりと、いろいろ楽しいことがある生活はいいものだと思い、ご投句を味わわせていただきました。皆様からは、選とコメントをいただき、ありがとうございました。句会の管理運営はいつものように信之先生にお願いしました。集計は藤田洋子さんが担当してくださいますが、ちょうど今月は洋子さんのお嬢さんの結婚式の日でしたので、後ほど発表いたします。これで11月ネット句会を終わります。来月の句会を楽しみにお待ちください。

ご挨拶 (小西宏/同人会長)
高橋信之先生 高橋正子先生
今月もまた、美しい初冬の季節にネット句会をご開催くださり、たいへんありがとうございました。
思えば、度々の台風襲来に各地で大きな被害の出た10月でした。11月を迎えればはやくも冬の声。しかしまだまだ、ほんのりと温かな日差しが残されているこの頃でもあります。そんな温みが、投稿された作品の中にも快く見受けられます。みなさま方の前向きな生活の様が、温かく、あるいは逞しく句の中に表現されているからでしょう。
これからは少しずつ寒さも増してくるとは思いますが、それはそれでまた新しい美しさ、喜びを与えてくれることでしょう。来月もまた、お元気でネット句会に集まれるよう、どうぞお体に気をつけてご活躍ください。

■11月ネット句会入賞発表■

■11月ネット句会■
■入賞発表/2013年11月11日■

【金賞】
★初鴨や波打つ音へ啼き交わし/佃 康水
この秋初めて飛来した鴨が、生き生きと詠まれている。波打つ音に声を混じらせ、仲間を呼び合い、これからここで冬を過ごすのだ。(高橋正子)

【銀賞】
★木の実踏む吾の後先木の実降る/桑本栄太郎
木の実を踏むや、その間を置かず、自分の後ろにも前にも木の実が降ってくる。木の実が雨のように降る晩秋の経験である。(高橋正子)

【銅賞】
★温き陽の大木に寄る今日立冬/古田敬二
立冬の大木に寄り掛かると、幹は陽に温められ温かい。立冬にも拘わらず、大きな木は意外にも温かい。(高橋正子)

★小春日の芝生へ児ら吹くシャボン玉/小川和子
芝生で遊ぶ児がしきりにシャボン玉を吹いている。小春日のうららかさが、シャボン玉を吹く児を通してよく詠まれている。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★晩秋の空は深かり薔薇園に/高橋正子
何処までも澄み切った青い空 それに秋薔薇の花の色は深みがあって一年で一番美しいと思います。去っていく秋を惜しむ心にも触れ好きな句です。 (迫田和代)

★麦の芽を揺らせて列車北へ行く/黒谷光子
冬枯れの中、麦の青い芽は、見るだけで明るい心地になります。その隣を列車が過ぎる。さらに寒さが厳しいでしょう、北へと向かう車両に、少し伸びた葉を揺らす麦畑。強さを感じる景色です。 (川名ますみ)

★大根引き寝っ転がって青い空/古賀一弘
大根を引き、力あまってのけぞったのだろうか。そのまま起き上がらずに暫し寝転んでいれば、青い空。大きな自然の下での、のびのびとした出来事である。 (小西 宏)

★小春日や青空の中に鳥と居る/河野啓一
暖かい秋の一日。空はどこまでも青く澄み、鳥の声をききながらゆったりと過ごす時間は幸福そのものです。 (井上治代)

★木の実踏む吾の後先木の実降る/桑本栄太郎
★初鴨や波打つ音へ啼き交わし/佃 康水
★小春日の芝生へ児ら吹くシャボン玉/小川和子

【高橋正子特選/7句】
★木の実踏む吾の後先木の実降る/桑本栄太郎
木の実踏むと木の実降るのレフレインが楽しい。自分の前後に木の実の落ちる音秋を楽しむ作者の笑顔が浮かぶ。 (古賀一弘)

★初鴨や波打つ音へ啼き交わし/佃 康水
飛来してきたばかりの鴨が仲間と無事を確認しているように思いました。波の音と鴨、長浜の湖岸の光景と重なります。(黒谷光子)

★温き陽の大木に寄る今日立冬/古田敬二
冬の到来を告げる立冬だが、大木に寄れば陽はまだ温い。季節の移り変わりを大らかに受け止めて、心は澄み伸びやかである。 (小西 宏)

★白波の拡がり見せる良夜かな/迫田和代
月の光がまばゆいばかりの海を見ていて、静かに白波が漂い拡がっていく光景が浮かんでまいります。(祝恵子)

★自転車の荷台にみかん箱を積む/高橋秀之
みかんが美味しくなってきました。荷台に載せる箱入り、お子さんたちの喜ぶ顔が見えてきます。(祝恵子)

★土や苗植え替え急ぐ冬隣り/祝恵子
朝夕は肌寒くなってきました。立冬も過ぎしだいに寒さも厳しくなることでしょう。その前に植え替えをと、いそいそと草花の世話をする様子がよく伝わってきました。 (井上治代)

★冬鳥の枝移りゆく声の澄み/黒谷光子
冬鳥がやってきて、枝を移りながら鳴く声は、冬の空気とを伝わってよく澄んで耳に届きます。(高橋秀之)

【入選/10句】
★俎板に骨断つ音の冷やかに/川名ますみ
夕餉の支度であろうか?台所の俎板の上で骨を断つ音がいつもより大きく、冷え冷えと聞こえて来る・・・。日毎に深まりゆく晩秋の情景が日々の生活音からも想われ素晴らしい。 (桑本栄太郎)
晩秋になると朝夕は冷えびえとしてくる。雨が降るとその感はいっそう深い。俎板の上で大きな魚の料理、太い骨を断つ音のがいっそう深く寂しさを感じる。(小口泰與)

★鳥も無き池面に枯葉舞い降りぬ/小西 宏
暖かいときは水鳥で賑わっていたであろう池も冬が来て今は静かになっている。そんな池ではあるが、まだ枯葉が舞い降りぬ、秋が終わり冬を迎えるそんな瞬間の様子を捉えています。(高橋秀之)

★裏返す鮃の白さ冬近し/川名ますみ
鮃の表は茶褐色で裏返すと白。濡れた新鮮なヒラメを俎板に載せ裏返すとひんやりとした風情となる。そのひんやりの中に近づいてくる冬を感じた。(古田敬二)
釣り果のおすそ分けを頂いたのでは、と拝察いたします。釣り上げたばかりの大きな平目は滑りもあり、新鮮で、どうお料理しても美味しくいただけそうです。(小川和子)

★臨月の腹の艶めく秋ともし/安藤智久
臨月と秋とは直接の必然性はない(少なくとも人類は)。人それぞれに、それぞれの季節に生まれてくる。しかし親としては、その季が絶対なのだ。この「秋ともし」の下の「腹の艶めき」はしかし/だから、全ての人に共有される、と私は思う。(小西 宏)

★踏み迷ふ百万本のコスモスや/ 渋谷洋介
見渡す限りのコスモス、百万本もあるという。歩くたびに気をつけていかなければと思う優しさ。(祝恵子)

★薄き影野良に流して秋の蝶/古田敬二
薄日をまとって野を低く流れるように飛ぶ秋蝶の儚さと愛しさ。野に山に季節の移ろいを感じます。(柳原美知子)
「影を流す」に、秋の蝶の儚さが上手く表現されています。 (安藤智久)

★掘りすすむ甘藷の輪郭豊けしや/柳原美知子
芋蔓を刈り取った後、畝の中の甘藷の成長に期待が膨らみます。いよいよ掘り進んで行くと立派な輪郭の甘藷が現れ思わず大歓声。収穫の喜びが聞こえて来るようで、私まで豊かな気持ちにさせていただきました。 (佃 康水)

★残菊や雨に打たれてなお強し/井上治代
咲き誇った時期が過ぎてもなお残っている菊の花は、雨に打たれても散ることなく、残っている。そこに力強さがあります。(高橋秀之)

★秋風に波音遠き礁かな/下地鉄
礁に打ち寄せる波の音も、秋風の吹く中に遠く聞こえる。秋海の侘しさが静かに伝わってくる。(高橋正子)

★北風や母家を叩くくさり樋/小口泰與
母屋に垂れているくさり樋が、北風になぶられて鎖の音を立てている。音は北風の強さそのままの音だが、「母屋を叩く」に言い知れぬ思いがある。(高橋正子)

■選者詠/高橋信之
★園児楽しどんぐり拾い吾に呉れぬ
どんぐりを楽しげに拾う園児たち。その喜びを作者にも分けてくれる。どんぐりだけでなく、秋の実りの喜び、子供らの遊び育つ喜びを分けてくれているのだ。 (小西 宏)
どんぐり拾いを楽しむ可愛い子どもの笑顔とどんぐりを受け取る優しい作者の微笑みが目に浮かびました。(井上治代)

★明日あれば丘に秋ばら咲くことも
海が見える見晴らしのいい丘の薔薇のつぼみを連想。
明日には咲きそうな気配のつぼみ。穏やかな老齢期でなければ詠めない句と思います。明日も穏やかな日であることを願いつつ詠まれたのでしょうか。 (古田敬二)

★菊咲いて年寄り多く平和なる
菊の季節です。社会全体が高齢化しており、我が家を含め地域は老人が多くなっています。菊は老人に似合う花です。菊を愛で穏やかな平和な生活であることを願うばかりです。 (古田敬二)

■選者詠/高橋正子
★晩秋の空は深かり薔薇園に/高橋正子
何処までも澄み切った青い空 それに秋薔薇の花の色は深みがあって一年で一番美しいと思います。去っていく秋を惜しむ心にも触れ好きな句です。 (迫田和代)

★秋水に空ひたひたと映りたる
澄みきった秋の水に美しい空がひたひたと揺らめいている。大きな池であろうか。「ひたひたと」が静かな晩秋の風情をも想像させます。 (佃 康水)

★武蔵野の林に秋空まばらなり

■互選高点句
●最高点(6点)
★秋水に空ひたひたと映りたる/高橋正子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

※コメントのない句にコメントをお願いします。下のコメント欄にお書きください。

11月ネット句会清記

■11月ネット句会■
■清記/20名60句

01.踏み迷ふ百万本のコスモスや
02.指呼の間に甲斐駒臨む谷紅葉
03.括られて秀明菊の戦ぎかな
04.晩秋の時さらさらとながれゆく
05.残菊や雨に打たれてなお強し
06.銀杏黄葉十手を広げ青空に
07.木の実踏む吾の後先木の実降る
08.はらり穂をほどく芒の穂絮かな
09.ひつじ穂の伸びてかそけき稲の花
10.初鴨や波打つ音へ啼き交わし

11.郁子の実やうす紅が垣に垂れ
12.初冬の日差しを弾くビルの窓
13.朝の間にもぎたて柿をいただきぬ
14.甘藷掘り園児ら笑顔の赤帽子
15.土や苗植え替え急ぐ冬隣り
16.薄き影野良に流して秋の蝶
17.温き陽の大木に寄る今日立冬
18.フレームの四角一杯柿紅葉
19.冬ぬくし笑顔笑顔に迎えられ
20.箕面山紅葉狩りなる日曜日

21.小春日や青空の中に鳥と居る
22.好きな道桜紅葉と静さの
23.幾人か追い越して行く秋の暮
24.白波の拡がり見せる良夜かな
25.広き空下弦の月は真ん中に
26.自転車の荷台にみかん箱を積む
27.まっすぐに銀杏紅葉の御堂筋
28.大根引き寝っ転がって青い空
29.冬の蝶切貼りされて石の上
30.猫眠る風やはらかく帰り花

31.蒼海の薄雲覗く秋日かな
32.からからと落ち葉のまろぶ舗道かな
33.秋風に波音遠き礁かな
34.麦の芽を揺らせて列車北へ行く
35.冬鳥の枝移りゆく声の澄み
36.つわぶきの花に明るき雨の庭
37.武蔵野の林に秋空まばらなり
38.秋水に空ひたひたと映りたる
39.晩秋の空は深かり薔薇園に
40.園児楽しどんぐり拾い吾に呉れぬ

41.明日あれば丘に秋ばら咲くことも
42.菊咲いて年寄り多く平和なる
43.渓谷の湯宿の灯り小夜時雨
44.枯蔦や落人村の道祖神
45.北風や母家を叩くくさり樋
46.鳥も無き池面に枯葉舞い降りぬ
47.落ち葉掃く腰伸ばしつつ振り返り
48.柑橘の黄の輝かし初時雨
49.時鳥草に風一陣の吹きて過ぐ
50.岩陰に光集めし石蕗の花

51.小春日の芝生へ児ら吹くシャボン玉
52.臨月の腹の艶めく秋ともし
53.丹精の菊を借り置く店先に
54.焼き椎茸に行列できてキノコ祭
55.単線の列車停車す草紅葉
56.雨上がりの流れに洗わる蓼の花
57.掘りすすむ甘藷の輪郭豊けしや
58.大鮃俎板に載せ暮の秋
59.俎板に骨断つ音の冷やかに
60.裏返す鮃の白さ冬近し

※互選を開始してください。

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、11月10日(日)午後7時から始め、同日(11月10日午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、11月11(月)午前9時です。
※2) 伝言・お礼等の投稿は、11月11日(月)午前9時~11月12日(火)午後6時です。

◆11月ネ ット句会案内◆

●11月ネット句会投句案内●
①投句:当季雑詠(秋か、冬の句)3句
②投句期間:2013年11月10日(日)午前0時~午後6時
※事前投句が許されますで、事前投句をご希望の方は、お申し込みください。
③投句は、下の<コメント欄>お書き込みください。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:11月10(日)午後7時~午後10時
②入賞発表:11月11日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、11月11日(月)正午~11月12日(火)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

10月19日(土)

★うす紙がかりんをかたちのまま包む  正子
かりんの果実は楕円形をして大型、芳しい香りがあります。うす紙をとおして香る香りとかりんの形や手触りを御句から感じます。(多田有花)

○今日の俳句
澄む水を渡りたどりて山下りぬ/多田有花
沢の流れを伝い、また橋を渡って山を下った。沢の水はどこも澄んでいる。秋の山のひんやりとした空気も合わせて感じられる。(高橋正子)

○錦木(ニシキギ)

[錦木/横浜日吉本町]

★錦木の葉と実の少し違う赤/高橋正子★

ニシキギ(錦木、学名:Euonymus alatus)とはニシキギ科ニシキギ属の落葉低木。庭木や生垣、盆栽にされることが多い。日本、中国に自生する。紅葉が見事で、モミジ・スズランノキと共に世界三大紅葉樹に数えられる。若い枝では表皮を突き破ってコルク質の2~4枚の翼(ヨク)が伸長するので識別しやすい。なお、翼が出ないもの品種もあり、コマユミ(E. alatus f. ciliatodentatus、シノニムE. alatus f. striatus他)と呼ばれる。葉は対生で細かい鋸歯があり、マユミやツリバナよりも小さい。枝葉は密に茂る。 初夏に、緑色で小さな四弁の花が多数つく。あまり目立たない。 果実は楕円形で、熟すと果皮が割れて、中から赤い仮種皮に覆われた小さい種子が露出する。これを果実食の鳥が摂食し、仮種皮を消化吸収したあと、種子を糞として排泄し、種子散布が行われる。紅葉を美しくするために西日を避けた日当たりの良い場所に植える。 剪定は落葉中に行う。よく芽をつける性質なので、生垣の場合は強く剪定してもよい。 栽培は容易。名前の由来は紅葉を錦に例えたことによる。別名ヤハズニシキギ。

◇生活する花たち「十月桜・白ほととぎす・野葡萄」(横浜・東慶寺)

■ご挨拶/10月ネット句会■

ご挨拶(高橋正子/主宰)
2、3日前の真夏日の暑さには驚きましたが、今朝は秋冷の空気に満たされた晴天の朝を迎えました。三連休となりました今回の句会は16名の方がご参加くださいました。この人数に、愛媛の砥部や松山の自宅でオフ句会を行っていたころを懐かしく思い出しました。二間続きの和室を開け放って、テーブルを囲んだり、もっと多いときは、輪になってぎっしりと座ったりして句会をしておりました。お菓子やお茶の用意、お花は何にするかなど、句会の準備も楽しみの一つであったように思います。実際のオフ句会なら、ちょうどよい人数とも言えます。ご参加ありがとうございました。入賞の皆様、おめでとうございます。移り変わる季節の句に、時が止められたことを思いますと、日々の句作が大切なのだと、知らされます。句会の管理運営は信之先生、集計は藤田洋子さんにお世話になりました。信之先生は花冠冬号(358号)の書下ろし論文原稿の執筆をしながらのことで、いつもに増して、ご負担をおかけしました。また、ご参加の同人の方には、コメントをいただき、ありがとうございました。来月の月例ネット句会は、11月10日(日)です。楽しみにお待ちください。これで十月ネット句会を終わります。

ご挨拶 (藤田洋子/スタッフ)
10月ネット句会ご参加の皆様、お世話になりありがとうございました。気温の差の著しい毎日ですが、今日は松山も気持ちのよい秋晴れとなりました。16名の皆さんの、爽やかな好季節ならではの俳句を楽しませていただきました。さまざまな異常気象など、年々薄らぐ季節感に戸惑いを感じつつも、こうして皆さんのご投句の、澄む秋の美しさや豊かな日本の秋にふれると、心澄み安らぐ思いがいたします。先生のご自宅での定例オフ句会では、何より心に残るひとときを過ごせました。オフ句会同様、毎月、誌友の皆さんと集える充実したネット句会に心から感謝しています。ご多忙の中、信之先生、正子先生、句会の管理運営を大変お世話になりました。台風26号も接近していますので、皆様お気をつけてお過ごしください。

■10月ネット句会入賞発表■

■10月ネット句会■
■入賞発表/2013年10月13日■

【金賞】
★葦の田の刈られて軽し水の音/小西 宏
青々と茂げっていた葦田の葦も枯れた。その葦をすっかり刈り取ると、葦の根元を流れていた楚々とした軽やかな音を立てて流れるようになった。清潔さがあり、なお、軽やかさがある。(高橋正子)

【銀賞】
★掛軸もすっと真すぐに糸すすき/高橋句美子
糸すすきは、すすきの中でももっとも遅く花を開く。残る虫の声のように細く、こじんまりとしている。それに合わせるように掛軸もすっと真すぐに垂れている。そのままの情景を詠んでいるが、茶席の雰囲気が出ている。(高橋正子)

【銅賞】
★朝々に柿の色付き婚近し/藤田洋子
「朝々に」の言葉が楚々としているので、嫁ぎゆく娘の雰囲気を、母親としての慈しみをもって表現できている。柿の色が光が差すように熟れると婚礼の日となるのだ。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★朝々に柿の色付き婚近し/藤田洋子
日一日と秋の深まりと共に愈々婚礼の日も近づき、身の引き締まる思いがありありと伝わって来ます。「朝ごとに」ではなく、「朝々に」との措辞が心情をよりリアルに表現されている。 (桑本栄太郎)

★掛軸もすっと真すぐに糸すすき/高橋句美子
床の間の掛け軸も真っすぐに下がり花瓶には糸ススキが活けてある。落ちつける和室です。 (祝恵子)

★背伸びして胸元に貼る赤い羽根/高橋秀之
自分で募金箱にお金を入れたのでしょうか。不自由な人、力の弱い人たちへの優しい気持ちを胸にしっかりと抱きしめる決心と子供らしい誇りが体現されています。 (小西 宏)

★秋晴れて風車の前の丘に立つ/祝恵子
秋晴れて天高しである。丘に立てば、なお、秋晴れて天高しである。晴れ晴れとして広々として、丘に立つ詠み手の姿が見えてくる。読み手も嬉しくなる。(高橋信之)

★豊作や新米どかと届けられ/河野啓一
中七の「新米どかと」はリアルな表現で、作者の喜びが読み手に強く伝わってくる。無駄な言葉のない一句である。(高橋信之)

★裏木戸へ弾けて真っ赤檀の実/佃 康水
こういうお庭があればなぁと思う景です。(祝恵子)

★葦の田の刈られて軽し水の音/小西 宏

【高橋正子特選/7句】
★野菊咲く道は遠くの山に向き/迫田和代
道の野菊の咲く道は、遠くの山に向かって伸びてゆく。遠くの山だからこそ、秋に向かう風情が感じられます。(高橋秀之)
遠くの山がすっきりと見わたせる道を通られたのでしょう。野菊の咲く道は空気も澄んで、秋らしい気持ちのよい情景が思われます。(小川和子)

★朝々に柿の色付き婚近し/藤田洋子
お子様のご結婚と言う慶びの日を間近に控えられ、色付いて来た柿の実を朝な朝なに眺めるにつけ嬉しくも有り寂しくも有り、親の複雑な心境がひしひしと伝わって参ります。(佃 康水)

★掛稲の穂垂れ軽々吹かれおり/柳原美知子
機械化されず稲架に掛けて天日で干される稲穂、風とともに軽やかにそよぐあり様が、いっそう収穫の喜びを感じさせてくれます。 (藤田洋子)

★虫の夜のただそれだけの住まいかな/下地鉄
きっと静かな夜をすごしておられるのでしょう。ただ、虫の音だけが聞こえてくる住まいで、ゆったりとした時間が流れていきます。(高橋秀之)

★朴の葉の白き葉裏の落ちて秋/桑本栄太郎
朴の大きな葉が裏返り、ぱさっと落ちたところに秋を感じたのがよい。(高橋正子)

★葦の田の刈られて軽し水の音/小西 宏
★掛軸もすっと真すぐに糸すすき/高橋句美子

【入選/5句】
★天空は風尽きるらし鱗雲/桑本栄太郎
空の果てまで続き、だんだん小さくなってゆく鱗雲を眺めているとそんな風にも思われますね。広やかな想像力に惹かれました。 (河野啓一)

★遠出の日高い空には鰯雲/迫田和代
鰯雲の広がる大空を見上げ、心も晴れ晴れと秋光に包まれての遠出。秋たけなわの自然をゆったりと満喫する喜びが伝わってきます。 (柳原美知子)

★何を見に秋天を飛ぶヘリコプター/矢野文彦
報道取材なのか、遊覧飛行なのか。高く澄んだ秋の空を飛ぶヘリコプターを見て、いろいろと思いをめぐらせる時間もいいものです。(高橋秀之)

★残る虫御苑の太き銀杏の根/古田敬二
御苑の散策でしょう、大銀杏の張り込んだ根っこ、佇めば虫の声も聞こえ、足元にはぎんなんが落ちているのやも。(祝恵子)

★秋高く上水瀬音響かせる/小川和子
東京地方では玉川上水、神田上水などという名前を子供の頃から聞いていました。今でも使われているのでしょうか。澄んだ秋空の下に流れる飲料水としての小さな川。清澄な響きです。 (小西 宏)

■選者詠/高橋信之
★秋高し柏手を打つ妻も打つ
豊穣の秋、天高く澄み渡った空の下で、二人そろって神に感謝する。われわれ日本人の肌に染みついた自然の恵みへの感謝の気持こころ。リズムよく詠まれまれた気持ちの良い御句です。(河野啓一)

★野葡萄の低きに垂れて実が優し
「野葡萄」がもつ野趣が一句を貫いていて、秋の深まりを感じます。(小川和子)

★空青く晴れきて白き杜鵑草

■選者詠/高橋正子
★竜胆の青透く峡の朝日差し
峡の中に咲いている秋らしい竜胆に朝日が差して輝いてる。青く透けて見えるのもいいですね。青い竜胆の色が目の前にちらつきます。(迫田和代)

★一碗の茶をいただけばきりぎりす
一椀のお茶の味。間遠に鳴くきりぎりす。忙中閑ありの上品な所作が偲ばれます。 (矢野文彦)

★関守石の露に濡たる縄の色

■互選高点句
●最高点(5点/同点3句)
★竜胆の青透く峡の朝日差し/高橋正子
★野菊咲く道は遠くの山に向き/迫田和代
★コスモスの高さに子らの見え隠れ/祝 恵子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

※コメントのない句にコメントをお願いします。下のコメント欄にお書きください。

10月ネット句会清記

■10月ネット句会■
■清記/16名48句

01.天空は風尽きるらし鱗雲
02.朴の葉の白き葉裏の落ちて秋
03.野の風にエスコートされ秋桜
04.まっすぐに秋冷を行く京の露地
05.比叡山に向かい御苑の露を踏む
06.残る虫御苑の太き銀杏の根
07.秋の朝釣具背負いてペダル漕ぐ
08.背伸びして胸元に貼る赤い羽根
09.一口でしかめ面する青蜜柑
10.コスモスの高さに子らの見え隠れ

11.秋晴れて風車の前の丘に立つ
12.萩白し木椅子にもたれ空見あぐ
13.葦の田の刈られて軽し水の音
14.秋深み銀杏並木の一つ影
15.澄む秋の街を縫い行く電車の灯
16.虫の夜のただそれだけの住まいかな
17.海風に大樹のそよぎ島の秋
18.とどまれば蜻蛉群れ来る田舎道
19.野菊咲く道は遠くの山に向き
20.蜻蛉飛ぶ水に写った空と共に

21.遠出の日高い空には鰯雲
22.秋高く上水瀬音響かせる
23.縺れては光を散らす萩の蝶
24.秋の虹立てり深大寺の帰路に
25.竜胆の青透く峡の朝日差し
26.一碗の茶をいただけばきりぎりす
27.関守石の露に濡たる縄の色
28.穂を割りし芒の艶の鉄路沿う
29.茹栗の湯気立つままを卓上に
30.朝々に柿の色付き婚近し

31.豊作や新米どかと届けられ
32.秋暑し明治は遠くなりぬれば
33.寄せ来る今秋鯖の豊漁に
34.隆々としずけき御所へ新松子
35.階(きざはし)へ木漏れ日揺れて初紅葉
36.裏木戸へ弾けて真っ赤檀の実
37.賜りし一日は足れり酔芙蓉
38.そのなかにAKBも案山子立つ
39.何を見に秋天を飛ぶヘリコプター
40.十月桜細い枝に降る花は

41.掛軸もすっと真すぐに糸すすき
42.水玉が弾けるように野のぶどう
43.秋高し柏手を打つ妻も打つ
44.空青く晴れきて白き杜鵑草
45.野葡萄の低きに垂れて実が優し
46.杉山の尖りくっきり秋天へ
47.谷あいの茶畑しんと秋日中
48.掛稲の穂垂れ軽々吹かれおり

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、10月13日(日)午後7時から始め、同日(10月13日午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、10月14日(月)午前9時です。
※2) 伝言・お礼等の投稿は、10月14日(月)午前9時~10月15日(火)午後6時です。

◆10月ネ ット句会投句箱◆

●10月ネ ット句会投句案内●
①投句:当季雑詠(秋の句)3句
②投句期間:2013年10月13日(日)午前0時~午後6時
※事前投句が許されますで、事前投句をご希望の方は、お申し込みください。
③投句は、下の<コメント欄>お書き込みください。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:10月13(日)午後7時~午後10時
②入賞発表:10月14日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、10月14日(月)正午~10月15日(火)午後6時

▼スタッフ
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之・藤田洋子

■ご挨拶/9月ネット句会■


ご挨拶(高橋正子/主宰)
今年の厳しかった暑さもようやく朝夕は収まり、涼しくなりました。本当にほっとする思いです。今月の句会の句を拝読していますと、ご結納、お子さんやお孫さんのご誕生などを詠まれた句がいろいろありました。おめでとうございます。創刊三十周年を迎えた花冠に喜びが重なり大変うれしく思います。今月は21名のご投句がありました。選とコメントをありがとうございました。信之先生には暑さのなか、今月も管理運営のお世話になり、ありがとうございました。洋子さんはお嬢様のご結納の日に集計のお世話をいただき、大変ありがとうございます。当番スタッフの方には、コメントをいろいろありがとうございました。今月の句会は、2020年の東京オリンピックの開催が決まった日でした。これで9月ネット句会を終わります。10月ネット句会は、10月13日(日)ですので、月がきれいなころになると思います。楽しみにお待ちください。

ご挨拶 (小西 宏/花冠同人会長)
 高橋信之先生、高橋正子先生
 今月も「9月ネット句会」をご開催くださり、たいへんありがとうございました。また、句会管理を担当してくださいました藤田洋子さん、いつもどうもありがとうございます。
 いつも俳句に励み、楽しんでおられる同人、会員の方々からの、たくさんの力のこもった投句、選句にも心からお礼申し上げます。
8月、9月は猛暑に続き、各地に豪雨や長雨、竜巻などが襲いかかった厳しい季節でした。それでも近頃は、少しずつ秋も深まってきて、みなさま方の俳句にも涼しさや爽やかさを感じさせるものが多く見られたように思います。
また、必ずしも季節のおかげとばかりは言えませんが、お子様のご結納、お孫さんのご誕生、お子さんの誕生を待ちながらのお名前の準備など、明るいお便りを載せた俳句に喜びを分けていただくこともできました。こうした中、句会開始直前には2020年のオリンピック開催地が東京に決まったとの明るいニュースも入ってきました。俳句を通しての季節の移りかわりへの感慨とともに、生きていくことの喜びに気付かせてくれる句会ともなったような気がします。そして秋はまた、来し方を想い、また次の世代の営みに思いを寄せる季節でもありますね。そんなことに気付かせてくれる俳句にも巡り会うことができました。
 また来月のネット句会でお会いできることを楽しみにしております。

ご挨拶 (藤田洋子/花冠事務局長)
 9月ネット句会ご参加の皆様、お世話になりありがとうございました。ようやく秋めく日々、皆さんご投句の、稲の実りや蜻蛉、虫の音、鮎や秋茄子など、秋の気配を敏感にとらえ、生活実感から生まれる豊かな俳句を楽しませていただきました。加えて、今回は皆さんの身辺の様々な慶事が思われ、新鮮な情感や人生の喜びを味わえる、よりいっそう明るく和やかなネット句会を感じさせていただきました。東京オリンピックの開催も決まり、私事ではありますが娘の結納の日と重ね、嬉しい記念の句会となりました。ありがとうございました。
信之先生、正子先生にはお忙しい中、句会の開催、管理運営をお世話になり心よりお礼申し上げます。スタッフの皆様、コメントなどご協力いただきありがとうございました。

ご挨拶 (佃 康水/当番スタッフ)
 高橋信之先生 高橋正子先生 この度は「9月ネット句会」を開催いただき、管理運営など大変有難うございました。今回の句会は丁度白露に入り、文字通り秋の気配を実感出来る日々となって参りました。次々と投句される句もリアルに捉えられ、白露、落ち鮎、東京オリンピック(2020年)へ早や夢躍らされている句、その時、虹が出たことも報道されましたが各地に於いても淡い虹が見られたようです。そしてご結婚、ご出産を待たれている句、お孫さんの誕生、など等、皆様共々に明るく参加させて頂きました。朝夕の空気もひんやりして参りましたが、気候不順な折、どうぞお風邪を召されませぬ様、10月のネット句会を楽しみにさせて頂きましょう。 藤田洋子様には今回も大変お世話になり有難うございました。