11月3日(月)

★朴落葉空より吹かれ来て臥しぬ  正子
朴の木は高木で森や山路に見る事が出来ますが、恥ずかしながら朴落葉を今年初めて見ました。他の落葉の枯れ色に紛れず、その大きさが目立ちます。「空より吹かれて来て臥す」は高い木であること、また臥す(横たわる)と言えるほどに大きな葉で有る事が想像出来て朴落葉の詩情ある初冬の風景です。(佃 康水)

○今日の俳句
 霜降の日松の菰巻き
菰巻きや縄目きりりと立ち揃い/佃 康水
新しい菰で幹を蒔かれ、縄をきりりと結んだ木は、風格が一段と増して見える。冬越しの準備が整い、気持ちが引き締まる思いだ。(高橋正子)

○山鳥兜(ヤマトリカブト、鳥兜・鳥頭・かぶと花)

[ヤマトリカブト/横浜・四季の森公園]    [オクトリカブト/尾瀬ヶ原]

★今生は病む生なりき鳥頭(トリカブト)/石田波郷
★かぶと花手折りて何を恋ひゆくや/石原君代
★鳥兜毒持つことは静かなり/東金夢明
★オキシドール泡立ちており鳥兜/河村まさあき
★国境へ鳥兜の原広がりぬ/久保田慶子
  横浜・四季の森公園
★鳥兜のむらさき優しこの森は/高橋信之
★鳥兜斜めがちにて色淡し/高橋正子

 ヤマトリカブト(山鳥兜、学名:Aconitum japonicum)は、 キンポウゲ科トリカブト属の多年草。トリカブト属の中には、オクトリカブト、ミヤマトリカブト、ハコネトリカブトなどがあり、ヤマトリカブトは、オクトリカブトの変種で、中国原産。花の形が、舞楽のときにかぶる、鳳凰(ほうおう)の頭をかたどった兜に似ていることから「鳥兜」。また、山地に生える鳥兜なので「山~」となった。ふつう、「鳥兜」と呼ぶ場合は、この「山鳥兜」を指すようで、単なる「鳥兜」という名前の花はない。英名の”monkshood”は「僧侶のフード(かぶりもの)」の意。
 トリカブト(鳥兜)の仲間は日本には約30種自生している。沢筋などの比較的湿気の多い場所を好む。花時には草丈90~130cmほどになる。茎は斜上することが多く、稀に直立する。 秋に、花茎の上部にいくつかの青紫色の長さ4cmほどの兜(かぶと)型の花をつける。花の色は紫色の他、白、黄色、ピンク色など。葉は大きさはいろいろあり、径7~12cmほどの偏円形ですが、3~5深裂(葉の基部近くまで裂けている)し、裂片はさらに細かく中~深裂(欠刻状の鋸歯)しているのが特徴で、見た目では全体に細かく裂けているように見える。
 塊根を乾燥させたものは漢方薬や毒として用いられ、烏頭(うず)または附子(生薬名は「ぶし」、毒に使うときは「ぶす」)と呼ばれる。本来「附子」は、球根の周り着いている「子ども」のぶぶん、中央部の「親」の部分は「烏頭(うず)」、子球のないものを「天雄(てんゆう)」と呼んでいたが、現在は附子以外のことばはほとんど用いられていない。ドクウツギ、ドクゼリと並んで日本三大有毒植物の一つとされる。ヨーロッパでは、魔術の女神ヘカテーを司る花とされ、庭に埋めてはならないとされる。ギリシア神話では、地獄の番犬といわれるケルベロスのよだれから生まれたともされている。狼男伝説とも関連づけられている。富士山の名の由来には複数の説があり、山麓に多く自生しているトリカブト(附子)からとする説もある。また俗に不美人のことを「ブス」と言うが、これはトリカブトの中毒で神経に障害が起き、顔の表情がおかしくなったのを指すという説もある。10月13日の誕生花(鳥兜)、花言葉は「騎士道、栄光」(鳥兜)。

◇生活する花たち「犬蓼・金木犀・白曼珠沙華」(横浜四季の森公園)

11月2日(日)

★秋海は青より銀に由比ヶ浜  正子

○今日の俳句
秋天に伸びゆくものの数多あり/多田有花
秋の天に高く伸びてゆくものを読み手はいろいろ想像する。鉄塔であったり、高層ビルであったり、聳える木であったり。秋天にある飛行機雲も。秋麗の日差し、空気、まさに「秋」がよく表現されている。(高橋正子)

○がまずみ

[がまずみの実/東京白金台・自然教育園]_[がまずみの花/東京白金台・自然教育園]

★がまずみや蓑虫切に糸縮め/殿村菟絲子
★がまずみの実を噛み捨てて語を継がず/瀬知和子
★がまずみを含みて道の遠きかな/斎藤玲子
★がまずみの白き花冴ゆ梅雨の入り/那須亀洞

★そぞのみの思い出多し山学校/大柳雄彦(宮城環境保全研究所)

  11月に入っても、まだ十分に秋の気配が残り、過ごし易い日が続いている。そんなある日、近くにある国見峠の道ばたで、赤く熟したガマズミの実を啄ばむジョウビタキの姿が見られた。
 遠い昔を思い起こし、その場で綴った駄作である。私が小学校に通っていたのは、昭和10年代の後半、つまり、太平洋戦争の真っ只中のこと。今とは違って塾などあるはずはなく、学校からの宿題もほとんどなかった時代である。当然ながら下校後の山学校は日課になっていて、気の合った者同志で色んな場所に出かけていった。とりわけ、晴天の日が続く晩秋の山学校は楽しく、かなり奥地の山林まで足を延ばし、クリを拾い、アケビやサルナシをもぎ取り、ガマズミやナツハゼの実をしゃぶるなどして、夢中になって過ごしたものである。しかし、つるべ落としのこの時期は、日の暮れるのが滅法早く、あわてて家路につくのは毎度のことで、時には、山の中にランドセルを忘れてきた苦い思い出もある。
 「そぞのみ」は、本県で使われているガマズミの方言で、「よっずみ」と呼ぶ地方もある。里山地帯の至るところに生えている潅木で、紅葉も美しい。初夏に赤い実を枝一杯につけ、はじめは酸っぱいが、徐々に甘みを増していく。山林内での、賦存量はかなり多く、しかも手の届く高さで採取できるので、農村部の子供たちにとっては人気のある野生の食品である。(宮城環境保全研究所/仙台市青葉区八幡のホームページより)

 ガマズミ(莢蒾、学名:Viburnum dilatatum)は、山地や丘陵地の明るい林や草原に生える落葉低木。樹高2-3m程度となる。若い枝は星状毛や腺点があってざらざらで、灰緑色。古くなると、灰黒色になる。葉は対生し、細かい鋸歯がある卵型から広卵形で10cm程度。表面には羽状の葉脈がわずかに出っ張り、凹凸がある。表面は脈上にだけ毛があるが、裏面では腺点や星状毛などが多い。花期は5-6月。白い小さい花の花序を作る。晩夏から秋にかけて3-5mm程度の果実をつけ、食用となる。果実は赤く熟し、最終的に晩秋の頃に表面に白っぽい粉をふき、この時期がもっとも美味になる。焼酎に漬けて果実酒にも利用する。また、丈夫でよく分枝するため、庭木として観賞用に植樹されることもある。

★がまずみの実赤し鳥の眼に吾に/高橋信之
がまずみの赤い実が楽しい。初夏に咲く白い花を、秋になっての青い実を思えばなお楽しい。(高橋信之)

◇生活する花たち「茶の花・柚香菊・実蔓(さねかずら)」(東京白金台・国立自然教育園)

11月1日(土)

★冷たさも露けさもスライスオニオン  正子
「スライスオニオン」に露けさをお感じになり、またそこに冷たさも味わわれて、晩秋の白さのようなものを造形なさいました。その澄明さに見とれ、句のリズムに聞き惚れます。(小西 宏)

○今日の俳句
蟷螂の路上を這える青きまま/小西 宏
秋になると蟷螂も枯れ色をしたのが眼に付く。ところが、路上に出てきた蟷螂がゆっくりとした動きだが、青きまま。「青きまま」が却ってあわれを誘う。(高橋正子)

○金水引(キンミズヒキ)

[金水引/横浜・四季の森公園]_[銀水引/東京・向島百花園]

★金水引のきらきら森の正午となる/高橋信之

 キンミズヒキ(金水引、学名:Aqrimonia pilosa)は、バラ科キンミズヒキ属の多年草。本州、四国、九州などの林の縁、原野、路傍に普通に見られる。草丈1メートル程に伸びて、全株に長毛が密生し、葉は互生し、羽状の複葉で表面に腺点がある。大小ふぞろいの小葉からなっているが、根元につくものは大きくなる。長い葉柄には葉状で縁がぎざぎざの托葉(たくよう)がある。花は、夏から秋にかけ、長くのびた茎の上部に黄色5弁の小さなものを穂状につけ、果実は宿存がくの内側にでき、そのがくの縁には鋭くて内側に曲がった刺毛が多数でき、この刺毛が衣類等に附着して散布に役立っている。
 キンミズヒキの名前の由来は、ミズヒキは「水引」の意味で、夏に黄花の小花を細長く穂のように咲かせる姿から「金色の水引」に見たてこの名前がついたという。
中国では、果実の刺毛が内側に曲がった姿から「竜の牙(きば)」を連想して、龍牙草(りゅうげそう)という漢名があり、それを音読みして生薬名になった。 また、キンミズヒキの果実が衣類に簡単につきやすいことから、ヒッツキグサという別名もある。キンミズヒキ属は、アグリモニアといい、ギリシャ語で刺の多い植物という意味のアルゲモネからきている。キンミズヒキは、日本から東ヨーロッパまで広く分布して、全体に小型のものはヒメキンミズヒキと呼ばれ、日本の特産種。夏から初秋の開花期に全草を掘り採り、水でよく洗って天日で乾燥し、生薬名は龍牙草(りゅうげそう)又は、仙鶴草(せんかくそう)という。春先の若芽や若葉を摘み、熱湯で茹でて水にさらしてから、おひたしや和え物にしたり、汁の実にしたりして食べる。

◇生活する花たち「秋の野芥子・銀木犀・金木犀」(横浜日吉本町)

10月26日(日)

 グレコ展
★秋光あおあおと浴び「水浴の女」  正子
秋の日射しが燦々とそそぐ野外の木洩れ日の中の光景でしょうか?エル・グレコの洋画に特有である、日射しの色を青を基調とした濃淡による表現の格調の高さが想われます。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
鈴懸けの実の青空へ野分過ぐ/桑本栄太郎
鈴懸と野分のとりあわせに意外性があるが、それは今年の季節の意外性といってよい。今年は十月になっても大型台風が来た。野分が過ぎた後、鈴懸の葉が落とされ、実が明らかになる。青空の中の鈴懸のかわいらしい実が印象的だ。(高橋正子)

○柘榴(ざくろ)

[柘榴/横浜日吉本町][柘榴の花/横浜日吉本町]

10月22日(水)

★起きぬけの目にりんりんと曼珠沙華  正子
秋の彼岸ごろ、川辺の堤や畦、お寺さんなどに、葉の無い花茎を急に伸ばして、頂に真紅の美しい花を輪状に咲かせる。群生して、その辺りを、真赤に燃え立たせ、特に起きぬけの目には妖凄な感じがいたしますね。 (小口泰與)

○今日の俳句
直立の日矢や藁塚一列に/小口泰與
朝早くだろう。山里などでは日が高く昇り、日矢は真上近くから差し込んでくる。それを「直立の日矢」といった。その日矢が一列に並ぶ藁塚に差し、山里は神々しいまでの朝だ。(高橋正子)

○野葡萄

[野葡萄/北鎌倉・東慶寺]

★野葡萄の色に遠野の物語 佐藤みほ
★野葡萄の瑠璃の惜別牧を閉づ 村上光子
★野葡萄や岩の迫り出す漁師町 仲尾弥栄子
★野葡萄の葉擦れの音も冬に入る 清水伊代乃
★野葡萄や滝を見にゆく道々に 阿部ひろし
★蒼穹に野葡萄が実をかかげたり 山村修
★野葡萄の色付き初めし城址かな 内田和子
★野ぶだうや湖畔の杜の写生会 大島英昭
★野葡萄の熟れ豊頬の石地蔵 中山純子
★野葡萄や四囲の山稜雲生みて 大竹淑子
★野葡萄の同じ瑠璃色ひとつも無し 栗田れい子
★野ぶだうの透明をただ呟きて 井上信子
★野葡萄をふふみて森の人となる 石田きよし
★野葡萄や何処に立つも水の音 飯田角子
★野葡萄の聯はそのままそのままに 瀬川公馨

 ノブドウ(野葡萄、Ampelopsis glandulosa var. heterophylla)はブドウ科ノブドウ属に属するつる性落葉低木。日本全国のほか東アジア一帯に分布し、アメリカにも帰化している。やぶに多く見られ、都市でも空地などに見られる。
 葉はブドウやヤマブドウに似ることもあるが、別属であり、特に果実は葉と交互につくなどブドウ類とは異なる。 果実は、熟すと光沢のある青や紫などに色づくが、食味は不味い。園芸植物として栽培されることがある。
 ノブドウ属(Ampelopsis)の植物はアジア・アメリカに20種ほどある。ウドカズラ(A. leeoides または A. cantoniensis)日本に自生し、葉はウドに似た2回羽状複葉で、実は赤く熟する。カガミグサ(白斂:ビャクレン、A. japonica)中国原産。漢方薬に使われる。

◇生活する花たち「犬蓼・金木犀・白曼珠沙華」(横浜四季の森公園)

10月20日(月)

★うす紙がかりんをかたちのまま包む  正子
戴かれたのかかりんの実、包まれた薄紙には形のままだという。ちょっといびつな色も見えているのかもしれませんね。(祝恵子)

○今日の俳句
秋夕焼け飛行機雲も包まれて/祝恵子
夕焼けの中に延びる飛行機雲。その飛行機雲までも夕焼けにすっぽり包まれて茜色に染まっている。秋夕焼けに染まる空を見れば、温かい思いになる。(高橋正子)

○葉鶏頭(ハゲイトウ)

[葉鶏頭/横浜日吉本町]

★葉鶏頭の三寸にして真赤也/正岡子規
★雁来紅や中年以後に激せし人/香西照雄
★水乞ふやねむらざる眼に葉鷄頭/瀧春一
★葉鶏頭と競はむとして空青き/能村登四郎
★葉鶏頭ほどのはげしき色欲しや/鷹羽狩行
★折れてゐる葉鶏頭あり抜いておく/高橋将夫
★雁来紅弔辞ときどき聞きとれる/池田澄子
★殊に濃き天誅村の葉鶏頭/塩路隆子
★山羊の怪我たのまれ診るや葉鶏頭/三嶋隆英
★剣道着干すや燃え立つ葉鶏頭/宇都宮靖

 このごろ葉鶏頭を見ることがまれになった。コリウスというシソ科の葉鶏頭に似たものが見るが、葉鶏頭はさっぱり。それでも建てこんだ民家の庭先に葉鶏頭を育てている家がある。家というよりそこの主婦であるが、葉鶏頭の写真を撮らせてもらおうとしていると、如露を持って出てきた。そして、「写真をお撮りになるのなら、あとで水を遣りますよ。」と家の中に引っ込んでしまった。野牡丹と並んで植えられていた葉鶏頭だった。

★葉鶏頭老女出て来て水を遣り/高橋正子

 ハゲイトウ(葉鶏頭、雁来紅、学名Amaranthus tricolor) はヒユ科の一年草。日本には明治後期に渡来し、花壇の背景、農家の庭先を飾る植物として、広く栽培されている。アマランサス(ヒユ属)の1種である。主に食用品種をヒユ(莧)とも呼ぶが、アマランサスの食用品種の総称的に呼ぶこともある。
属名の Amaranthus は、「色が褪せない」の意味。そのために「不老・不死」の花言葉があるが、これは以前この属に属していたセンニチコウによるものである。種小名の tricolor は「三色の」の意。英名は旧約聖書に登場するヨセフにヤコブが与えた多色の上着のことで、鮮やかな葉色をこの上着にたとえている。
 熱帯アジア原産の春まきの草花で、根はゴボウ状の直根で、茎は堅く直立し、草丈 80cm から 1.5m ぐらいになる。葉は被針形で、初めは緑色だが、夏の終わり頃から色づきはじめ、上部から見ると中心より赤・黄色・緑になり、寒さが加わってくるといっそう色鮮やかになる。全体が紅色になる品種や、プランターなどで栽培できる矮性種もある。タネは細かいが、発芽は比較的よく、こぼれ種でも生えるくらいである。排水と日当たりの良いところに4月下旬頃に直まきし、タネが見え隠れする程度に覆土する。観葉植物として利用される。 食用の近縁種はアマランサスだが、南米では、インカ帝国の昔から種子を穀物として食用にしてきた。日本でも健康食品として販売されている。ヒモゲイトウ (Amaranthus caudatus) がそのなかでも最も大規模に栽培されている。

◇生活する花たち「秋海棠・銀木犀・金木犀」(横浜日吉本町)

10月17日(金)

★林檎手に送られ来しが赤ほのと  正子
送り届けられた林檎を手にして、胸の内までがぽっと明るく灯されたような、「赤ほのと」のあたたかさです。新鮮な季節の実りをいただく喜び、送り手への感謝の気持ちが感じとれます。 (藤田洋子)

○今日の俳句
真珠筏浸し秋の海澄めり/藤田洋子
「浸し」が秋海の澄んだ水をよく感じさせてくれる。秋海の澄んだ水に浸され殻を育てている真珠は、美しく輝く珠となることであろう。(高橋正子)

○孔雀草(くじゃくそう)

[孔雀草/横浜日吉本町]

★開ききり咲き重なって孔雀草/高橋正子
 
 きのうの朝は、日吉本町2丁目あたりを散歩した。2丁目は、3丁目が洋風な花が多いのに比べ、古風な花が多い。野牡丹や葉鶏頭をきれいに咲かせている。その2丁目にはコーポの団地があって、ここも花好きな住人がいるのか、紅蜀葵やゼラニュウムなどの昔ながらの花と、今風な、センスのいい花壇を作っている。一番後ろに紫系のハープの花、その前に薄紫と白の孔雀草、その前に千日紅の牡丹色と白が植えられて、同系色の色彩でまとめた花壇であった。秋らしくていいと思った。庭の花も年期である。

 孔雀草(くじゃくそう、学名:Aster hybridus 英名:Frost aster)は、キク科シオン属の多年草。Aster : シオン属、hybridus : 雑種の、Aster(アスター)は、ギリシャ語の「aster(星)」から。花のつき方のようすに由来。北アメリカ原産で、わが国には昭和30年代に導入された。花壇や切り花によく用いられている。よく分枝して株立ちし、高さは40~120センチになる。葉は披針形から倒披針形で互生し、7月から9月ごろ、白色から淡紫色の花をいっぱい咲かす。別名で孔雀アスター、キダチコンギク(木立紺菊とも呼ばれます。9月5日、11月23日の誕生花(孔雀草)。花言葉は 「いつも愉快、ひとめぼれ」。似ている花は、都忘れ、紫苑、紺菊、関東嫁菜。

◇生活する花たち「犬蓼・金木犀・白曼珠沙華」(横浜四季の森公園)

10月15日(水)

  横浜北八朔・梨園
★梨の実に白雲の空広がれる   正子
梨は春に白い桐か雲のように見える白い花を咲かせ、秋に結実します。今頃果樹園には、秋空の下、二十世紀、長十郎、豊水、幸水など、濃淡いろいろな大きな果実が実っている頃でしょう。季節の移り変わりと、実りの豊かさを実感させられる伸びやかな詠みが素敵です。(河野啓一)

○今日の俳句
苅田広き明日香村なる棚田かな/河野啓一
奈良、明日香村も稲刈りがほとんど済んで刈田が広がっている。棚田のある村に古代より繋いできた人々のゆかしい暮らしが見える。(高橋正子)

○烏瓜

[烏瓜の実/横浜日吉本町]      [烏瓜の花/ネットより]

★蔓切れてはね上りたる烏瓜/高浜虚子
烏瓜の朱色の実を見つけると、手繰り寄せて採りたくなる。蔓は雑木などに絡まっているので、蔓をひっぱっても、易々と手元には来ない。蔓が切れて、引っ張った力の反動で「はね上がる」。「はね上がる」が面白い。はね上がった実が揺れ、悔しがるものが居る。(高橋正子)

★烏瓜映る水あり藪の中/松本たかし
★をどりつつたぐられて来る烏瓜/下村梅子

 烏瓜は、普段の生活での利用法を聞いたことがないが、形や色が面白いので、飾ったりする。夏には烏瓜のレースのような花を見よう懐中電燈を用意して出掛けたがあいにく咲いていなかった。信之先生は、その前に凋んだ花を写真に撮ってはいたが。その花もさることながら、楕円形の朱色の実も面白い。熟れても青い実の時の縞がうっすら残っている。猪の子を「瓜坊」というが、この烏瓜から来たのかも知れないと思うほどである。木などに蔓が絡まって、危なげなところにあったり、また川向うにあったりして、見つけても、やすやすとは手に入らない。運が良ければ、すぐ採れるが。しかし、インテリアにもされるが、俳人ごのみの植物であろう。
★川水はきらきら烏瓜が熟れ/高橋正子
★一日の楽しみに置く烏瓜/高橋正子

 カラスウリ(烏瓜、Trichosanthes cucumeroides)はウリ科の植物で、つる性の多年草。朱色の果実と、夜間だけ開く花で知られる。 地下には塊根を有する。原産地は中国・日本で、日本では本州・四国・九州に自生する。林や藪の草木にからみついて成長する。葉はハート型で表面は短い毛で覆われる。雌雄異株で、ひとつの株には雄花か雌花かのいずれかのみがつく。別名:玉章(たまずさ)・ツチウリ・キツネノマクラ・ヤマウリ。
 4月~6月にかけて塊根から発芽、あるいは実生する。花期は夏で、7月~9月にかけての日没後から開花する。雄花の花芽は一ヶ所から複数つき、数日間連続して開花する。対して雌花の花芽は、おおむね単独でつくが、固体によっては複数つく場合もある。花弁は白色で主に5弁(4弁、6弁もある)で、やや後部に反り返り、縁部が無数の白く細いひも状になって伸び、直径7~10cm程度の網あるいはレース状に広がる。花は翌朝、日の出前には萎む。 こうした目立つ花になった理由は、受粉のため夜行性のガを引き寄せるためであると考えられており、ポリネーターは大型のスズメガである。カラスウリの花筒は非常に長く、スズメガ級の長い口吻を持ったガでなければ花の奥の蜜には到達することはできず、結果として送粉できないためである。雌花の咲く雌株にのみ果実をつける。
 果実は直径5~7cmの卵型形状で、形状は楕円形や丸いものなど様々。熟する前は縦の線が通った緑色をしており光沢がある。10月から11月末に熟し、オレンジ色ないし朱色になり、冬に枯れたつるにぶらさがった姿がポツンと目立つ。鮮やかな色の薄い果皮を破ると、内部には胎座由来の黄色の果肉にくるまれた、カマキリの頭部に似た特異な形状をした黒褐色の種子がある。この果肉はヒトの舌には舐めると一瞬甘みを感じるものの非常に苦く、人間の食用には適さない。鳥がこの果肉を摂食し、同時に種子を飲み込んで運ぶ場合もある。しかし名前と異なり、特にカラスの好物という観察例はほとんどない。地下にはデンプンやタンパク質をふんだんに含んだ芋状の塊根が発達しており、これで越冬する。夏の間に延びた地上の蔓は、秋になると地面に向かって延び、先端が地表に触れるとそこから根を出し、ここにも新しい塊根を形成して栄養繁殖を行う。
 種子はその形から打ち出の小槌にも喩えられる。そのため財布に入れて携帯すると富みに通じる縁起物として扱われることもある。かつては、しもやけの薬として実から取れるエキスが使用された。 若い実は漬物にするほか、中身を取り出し穴をあけてランタンにする遊びに使われる。近年ではインテリアなどの用途として栽培もされており、一部ではカラスウリの雌雄両株を出荷する農園も存在する。

◇生活する花たち「十月桜・金木犀・茶の花と実」(横浜・東慶寺)

◆ご挨拶/10月ネット句会◆


◆10月ネット句会◆
ご挨拶(高橋正子/主宰)

 今月の句会は、体育の日の連休中でしが、先週の台風18号に続き、今週も大型の19号が来襲するというので、ひやひやいたしました。皆さまのところには、被害はございませんでしたでしょうか。横浜は、夜9時ごろからしばらく、本ぶりの雨と風でしたが、今朝は台風一過の青空が広がっています。今月の投句者は18名でした。入賞の皆さまおめでとうございました。選コメントをありがとうございました。先月の句会より、秋がまたひとつ深くなり、季節の進みを感じました。皆既月食あり、稲の稔りや、秋祭りの句、木の実や秋の花々の句など、めずらしい句もありました。読む楽しみも、作る楽しみもあるのが句会ですが、ネットでありながら、親しく交わる句会となっていることを、嬉しく思いました。
 総合俳誌「俳句界」10月号に花冠のネット活動を信之先生が紹介されています。日本のなかでも、あるいは世界のなかでもと言えると思いますが、ネットを利用しての句会や俳句活動は、花冠の誇るところと思います。一人ひとりのご参加があってのことです。ますます、ご健吟ください。句会の管理運営は信之先生に、互選の集計は洋子さんにお願いしました。お世話になりありがとうございました。朝夕冷え込むようになりました。風邪にはご用心なさってください。これで今月の句会を終わります。

■10月ネット句会入賞発表■


■10月ネット句会■
■入賞発表/2014年10月13日■

【金賞】
★風澄みて濠の蓮の実飛ぶを見る/小川和子
蓮の花が終わると、蜂の巣状に穴の開いた花托(かたく)となって、中の実が熟すと穴から飛び出て水に落ちる。この句の蓮は濠に咲いていた蓮。「蓮の実飛ぶ」を眼のあたりにした驚きでもあるが、「風澄みて」によって、いっそうクリアに「蓮の実飛ぶ」を見たことになった。(高橋正子)

【銀賞2句】
★幟はためき刈りたての田が匂う/藤田洋子
幟は秋祭りの幟で、そもそも秋祭りは収穫に感謝する祭りだ。稲が刈られたばかりの田が匂い、墨痕鮮やかな幟がはためき、祭りの気分も盛り上がる。在所の秋祭りの雰囲気がよく出ている。(高橋正子)

★爽やかに大東京を一望す/多田有花
東京が一望できる超高層ビルやタワーに上ったのだろう。秋気が澄み、大東京が一望できることに、爽やかさを感じ取った。また、句意がはっきりしていることも、爽やかさの一つとしたい。(高橋正子)

【銅賞3句】
★ぷちぷちと足裏にひびき木の実踏む/桑本栄太郎
散歩などで森の道などを歩くと、おびただしい木の実が落ちているのに出会う。踏み歩くと足裏に「ぷちぷち」とひびく。木の実の形、木の実の硬さが足裏に伝わってくる確かな実感がある。(高橋正子)

★カタコトと夜なべのミシン軽やかに/井上治代
夜なべは、農家では冬物の繕いや藁仕事などしたが、今ではこうした夜なべは少ない。夜遅くまで起きている生活が普通になり、「夜なべ」にも、趣味的な楽しみの要素がが加わってきた。この句の夜なべに踏むミシンもカタコトと、軽やかで楽しそうだ。(高橋正子)

★コスモスの色地に零しつつ剪れり/柳原美知子
秋も半ば、コスモスが咲き誇っている。中にはすぐに散る花もある。剪りとろうとすると、花びらがこぼれ散る。その散り零れるいろいろの色が、咲く花よりも儚くて印象に残る。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】

★幟はためき刈りたての田が匂う/藤田洋子
秋祭りの風景なのであろうか。あるいは、稲刈りと合わせて田の傍に幟を立てるものなのだろうか。私は、実際にこうした風景を見たことはないのだが、収穫の喜びが晴れ晴れと祝われている情景を目の当たりにすることができます。「田が匂う」が力強く響きます。(小西 宏)
人を詠んだ句ではないのに、そこに暮らす人のぬくもりを感じる、好きな句です。路には行事の幟が立てられ、稲はまさに苅ったばかり、刈株が並んで、田ごと匂い立つよう。静かな景色に、確かな日々の営みがあります。(川名ますみ)
稲刈りを終えた里の秋祭りを迎える静かで喜びに満ちた人々の暮らしがうかがえる日本の原風景に、心安らぐ思いがします。(柳原美知子)

★蔓細工の籠に重ねて青みかん/小川和子
味わいのある籠に重ねられたみかん。つやつやと輝きおいしそうです。実りの秋に感謝したいと思います。 (井上治代)

★俎板に軽き音立て秋祭り/藤田洋子
そうですよね、お祭りの外の賑やかさを詠むことが多いですが、家内のご馳走づくりも祭りのものですね。力を入れずに「軽き」がとても素敵です。 (祝恵子)

★乾杯のワインの美味さ赤き月/内山富佐子
先日の皆既月食ですね。夕方から夜半前までの天体ショー。今回は約1時間かけて赤い月を眺める事が出来ました。その月を仰ぎながらご家族?お友達?とワインで乾杯!美味しい!至福の一時です。 (佃 康水)

★風澄みて濠の蓮の実飛ぶを見る/小川和子
蓮の実は実に奇妙な形をしている。実際に飛ぶ光景を見た事はないものの、秋晴れの爽やかな日にポンと音を立てて飛ぶと聞いた事がある。あの多連装の銃口のような形状から飛ぶ事を想えばさもありなんと想え、そこに秋の豊かな詩情が生まれた。 (桑本栄太郎)

★妹も泥に網入れ蘆の花/小西 宏
おそらく上のお子さんを真似ての姿でしょう。自然の中で遊ぶ子どもたちがありありと目に浮かび、心安らぐ水辺の秋の光景です。子どもたちを見守るあたたかな眼差しに、蘆の花穂がこよなく優しく感じられます。 (藤田洋子)

★ぷちぷちと足裏にひびき木の実踏む/桑本栄太郎
★爽やかに大東京を一望す/多田有花

【高橋正子特選/8句】

★幟はためき刈りたての田が匂う/藤田洋子
人を詠んだ句ではないのに、そこに暮らす人のぬくもりを感じる、好きな句です。路には行事の幟が立てられ、稲はまさに苅ったばかり、刈株が並んで、田ごと匂い立つよう。静かな景色に、確かな日々の営みがあります。(川名ますみ)
稲刈りを終えた里の秋祭りを迎える静かで喜びに満ちた人々の暮らしがうかがえる日本の原風景に、心安らぐ思いがします。(柳原美知子)

★風澄みて濠の蓮の実飛ぶを見る/小川和子
蓮の実は実に奇妙な形をしている。実際に飛ぶ光景を見た事はないものの、秋晴れの爽やかな日にポンと音を立てて飛ぶと聞いた事がある。あの多連装の銃口のような形状から飛ぶ事を想えばさもありなんと想え、そこに秋の豊かな詩情が生まれた。 (桑本栄太郎) 

★畝に座し句帳開けば百舌遠音/古田敬二
菜園作業を終えちょっと一休み。やれやれと畝に座し句帳を開くと何処からか百舌の声が聞こえてくる。そこで一句。日頃から菜園を楽しみつつ、またそれを余さず句財にされている作者が見えて参ります。空晴れて絶好の百舌日和、心身共に伸びやかです。 (佃 康水)

★稲雀辺りの屋根を逃げ場とし/佃 康水
辺りを賑わしている稲雀たち、敏感に反応しては近場の屋根に逃げてはまた下りる。その動きを楽しんでいる作者です。(祝恵子)
何に驚いたのか、そろって逃げ去り、近くの屋根に集まってようすを窺う姿をよく見かけます。そのくせ、すぐにまた刈り後の田んぼに舞い降りて来るのですね。微笑ましい秋の風景です。(小西 宏)

★東へと帰る旅路は秋の夜/高橋秀之
東へと向かっている、旅を終えての帰途の安堵感でしょうか。(祝恵子)

★カタコトと夜なべのミシン軽やかに/井上治代
★爽やかに大東京を一望す/多田有花
★コスモスの色地に零しつつ剪れり/柳原美知子

【入選/7句】
★秋の蝶吾身に触れて離れゆく/祝恵子
秋の蝶はどこか、はかなげ。ひらひらと近づいてきて、作者に触れ、どこへともなく去ってゆく。秋の日の蝶との又とない交流のひとときが思われます。(小川和子)

★あつあつの秋刀魚ふとぶと皿に余る/小西 宏
秋の味覚の王者、秋刀魚。皿をはみ出すほどの太った秋刀魚。焼き立てにカボスなどを絞って掛け、アツアツをほぐして、新米の飯を食う。どんなレストランの料理のも勝る夕餉である。 (古田敬二)

★鳥が飛ぶ秋の瀬戸内海岸線/高橋秀之
大きな景の句です。鳥の目になってどこまでも続く瀬戸内の海岸線を空から気持ちよく俯瞰しました。 (内山富佐子)

★噴煙の果てて紅葉の日和かな/小口泰與
噴煙は浅間山のものでしょうか。今日は噴煙が少なく穏やか、お天気も上々で色づき始めた紅葉が美しく山を彩っています。 (多田有花)

★月食を同窓会に秋の暮/川名ますみ
月食の夜に生まれる、旧友たちとの素敵な交流に心和みます。刻々と進む月食の感動を互いに共有しながら、深まる秋にいっそう心豊かなひとときが感じられます。 (藤田洋子)

★秋晴れに島のまわりに釣りの舟/迫田和代
瀬戸内の島でしょう。小舟が島のまわりに散らばっています。澄んだ秋空と穏やかな瀬戸の海、ほのぼのとした情景です。 (多田有花)

★銀漢や灯台の下釣り師あり/福田ひろし
雄大な景色です。天の川、灯台、釣り師と大きなところから小さなところへと視点を誘われます。 (多田有花)

■選者詠/高橋信之
★台風の眼がある今日のパソコンに
大型の台風19号は台湾と小笠原諸島との間を通過 する時には大きな台風の眼がレイダーにはっきり映りTVやPCで見ることが出来ます。今年最大の勢力で日本を縦断して大きな被害をもたらしました。(小口泰與)
先日、宇宙ステーションから撮影した台風19号の写真をネットで見ました。恐らく同じものをご覧になっての御句と思います。白い雲の中央に目がくっきりと見えていて、大型で強い台風の力を感じました。(多田有花)

★手拭の小熊の笑みよ台風去る
★台風去って街の明るい朝へ出る

■選者詠/高橋正子
★月ひとつ霧に滲んで高くあり
秋の月が、少し滲みながらも、毅然と空高く輝いている。ひとつ、高く、という言葉が厳かな雰囲気を見事に表現されているように思います。(福田ひろし)

★銀杏を割って永久のみどり色
お正月の祝い膳に翡翠色した銀杏を飾ったり、茶碗蒸しに入れたり、殻煎りしてぷちっと割って出てきた緑の実を美味しく戴くのがこれからの楽しみです。「永久のみどり色」の表現にとても新鮮な魅力を感じました。「永久の」とは「割った芯の何処までも澄んだみどり色」「何時も変わらぬ翡翠色」などの意味を表現されているのかなと透きとおる様な銀杏のみどりを思い浮かべています。(佃 康水)

★空耳と思えど里の祭笛
氏神様を祀る秋祭りは収穫の整う10月上旬に行われる事が多く、小生の田舎では10月10日に行われていた。三方に米、里芋、柿、人参ほか収穫物を乗せて供えていた。秋祭りは遷宮でもあれば露店も出て、それは大変な賑わいであった。風に乗って何処か遠くから祭笛の音が聞こえて来れば、空耳では?と思いながらも遠い懐かしい記憶が一瞬にして蘇えり、胸が躍るのである。(桑本栄太郎)

■互選高点句
●最高点(7点)
★幟はためき刈りたての田が匂う/藤田洋子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)