12月4日(木)

★冬鵙の囃すは水照る向こう岸  正子
秋から冬にかけて鵙は雌雄別々に縄張りを張り、その宣言として、高い梢などで鋭い声で鳴き騒ぎ、小春日の穏やかな川の流れに、川面は光り、対岸の森では鵙が賑やかに鳴き競っている素敵な初冬の景ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
火の山の噴煙起つや大根干す/小口泰與
大根を干すころは、風も寒くなり、温かさが恋しくなる。火の山の噴煙も目に温かさを運ぶ。そういう意味で取り合わせが成功している。(高橋正子)

○寒木瓜(かんぼけ)・冬木瓜(ふゆぼけ)

[寒木瓜/横浜日吉本町]           [寒木瓜の実と花/横浜日吉本町]

★近江路や茶店茶店の木瓜の花/正岡子規
★木瓜咲くや漱石拙を守るべく/夏目漱石
★木瓜の花こぼれし如く低う咲く/大谷句仏
★寒木瓜の蕊のぞきたる花一つ/阿部ひろし
★寒木瓜の刺の鋭き女坂/増田栄子
★寒木瓜を見つけし後の足軽し/819maker(ブログ俳句の風景)

★丘晴れていて寒木瓜の赤の濃し/高橋信之
★今青空に冬木瓜の実の確とあり/高橋信之

 木瓜と書いて「もっこう」と読む場合もあるが、普通「ぼけ」と読む。この音を聞いてほとんどの人は「あほ、ぼけ」の「ぼけ」を想像するだろう。それがこの花のおもしろいところで、木瓜は春の花であるが、花の少ない冬、暖かい陽だまりなどに咲き始める。棘があって、花は梅のように枝について咲く。葉は花の後から出るのであるが、この朴訥な枝と少ない花を生かして春の先駆けを思わせて生花にも使われる。雪が降ったりすると、雪を冠った花がうれしそうに見える。実は花梨のように大きな黄色い実がつくのも、「ぼけな」感じだ。

 寒木瓜は、木瓜と同じ品種だが、ふつうは3月から4月に咲くのに対して、11月から12月ごろに咲き出すものをいう。
 ボケ(木瓜)は、バラ科の落葉低木。学名Chaenomeles speciosa(シノニムC. lagenaria)実が瓜に似ており、木になる瓜で「木瓜(もけ)」とよばれたものが「ぼけ」に転訛(てんか)したとも、「木瓜(ぼっくわ)」から「ぼけ」に転訛したも言われる。帰化植物(平安時代)。学名のspeciosa は 美しい、華やか 、Chaenomelesは 「chaino(開ける)+ melon(リンゴ)」が語源。花言葉は「先駆者」「指導者」「妖精の輝き」「平凡」。原産地:中国大陸。日本に自生するボケはクサボケといわれる同属の植物。
 樹高:1~2m。枝:若枝は褐色の毛があり、古くなると灰黒色。幹:樹皮は縦に浅く裂け、小枝は刺となっている。葉:長楕円形・楕円形。長さ 5~9cmで鋭頭でまれに鈍頭。基部はくさび形で細鋭鋸歯縁。花:3~4月に葉よりも先に開く。短枝の脇に数個つき径2.5~3.5cm。色は基本的に淡紅、緋紅。白と紅の斑、白などがある。
 好陽性で土壌を選ばず、移植は容易だが大気汚染・潮害にはさほど強くない。日本では本州から四国、九州にかけて植栽、または自生。温暖地でよく育ち北海道南部では種類が限定される。
 庭園樹としてよく利用され、添景樹として花を観賞する目的で植栽される。盆栽にも用いられる。実を果実酒などにすることもある。
 同属の植物にクサボケ(草木瓜、Chaenomeles japonica 英名Japanese quince)がある。50cmほど。実や枝も小振り。本州や四国の日当たりの良い斜面などに分布。シドミ、ジナシとも呼ばれる。花は朱赤色だが、白い花のものを白花草ボケと呼ぶ場合もある。果実はボケやカリン同様に良い香りを放ち、果実酒の材料として人気がある。減少傾向にある。
 [木瓜と草木瓜のちがい] 木瓜は:背が高い。枝のトゲはあまり目立たない。実は草木瓜の実よりも大きくて、色は黄色。縦に「彫り」が入っている。草木瓜は:背は木瓜より低い。枝にトゲがいっぱいある。実はボケよりは小さく、色は黄色。縦に「彫り」は入っておらず、表面はつるつる。

◇生活する花たち「十両(やぶこうじ)・万両・白文字(しろもじ)」(東京白金台・国立自然教育園)

12月1日(月)

★鴨の池映れるものはみな映り  正子

○今日の俳句
わさわさと大きな蕪の一輪車/祝恵子
一輪車をはみ出して「わさわさと」運ばれる蕪の葉がまことに生き生きしている。(高橋正子)

○冬珊瑚(玉珊瑚)

[冬珊瑚/東京白金台・自然教育園]

★冬珊瑚東海に日は燃えいでぬ/豊長みのる
★冬さんご熟し四十路の悔ばかり/竹内定子
★掌にすくふ水のつめたさたまさんご/久松かつ子
★階段を上るも愉し冬珊瑚/819maker
★御稲荷さん入口の冬珊瑚かな/819maker

 茄子(なす)科。学名:Solanum pseudo-capsicum。ブラジル原産。明治中期に渡来。夏から冬にかけて鮮やかな色の丸い実をいっぱいつけるので、その姿を珊瑚に見立て、時期と合わせて「冬珊瑚」という名前になったとのこと。
 実の色の遷移がおもしろく、花を咲かせたあとで緑色の実になり、それが「緑 → 黄 → 橙」の順で色づく。いろんな段階の色の実が同居して緑色の実、黄色の実、橙色の実がほぼ同時に楽しめる。実はきれいだが毒があるらしく、食用にはならない。寒さに強い。
 別名「ビッグボーイ」「クリスマスチェリー」「玉珊瑚(たまさんご)」。いずれも、実の形からの命名のようだ。12月10日(世界人権デー・三億円事件の日・ノーベル賞授賞式・アロエヨーグルトの日)の誕生花

◇生活する花たち「山茶花・柊・桜黄葉」(横浜日吉本町)

11月29日(土)

★芹育て橋を潜れる速き水  正子

○今日の俳句
作品を提げ行く冬の車椅子/河野啓一
「作品」がいい。一つの作品となった画か、書。それを自分で車椅子の膝に載せて、搬入しようとしている。作品は自分自身ともいえる。作品はそうでありたい。(高橋正子)

○野茨の実

[野茨の実/東京白金台・自然教育園2012年11月21日]_[野茨の花/東京白金台・自然教育園2012年5月10日]

★野茨の実赤きまま零れ散る/草花俳句(オレンジスタジオ)
★野いばらの実の熟れすぎて冬曇/写真俳句ブログ
★野茨の実や まんまるな 冬の雨/福田 泉
★野茨ややわらかき陽に色ずく実/小野久子

★鳥飛ぶ空の高さへ赤い実の茨/高橋信之
★野茨の実の赤々と池ほとり/高橋正子
 ノイバラ(野茨、学名:Rosa multiflora)は、バラ科の落葉性のつる性低木。日本のノバラの代表的な種。沖縄以外の日本各地の山野に多く自生する。ノバラ(野薔薇)ともいう。高さは2mぐらいになる。葉は奇数羽状複葉で、小葉数は7-9、長さは10cmほど。小葉は楕円形、細かい鋸歯があり、表面に艶がない。花期は5~6月。枝の端に白色または淡紅色の花を散房状につける。個々の花は白く丸い花びらが5弁あり、径2cm程度。雄しべは黄色、香りがある。秋に果実が赤く熟す。同属でやはり身近に出現するもの-にテリハノイバラ (Rosa luciae) があり、こちらは葉の表面にクチクラ層が発達しているため、艶がある。また花は一回り大きく、数が少ない。道端にも多く出現し、棘が多いので雑草としてはいやがられる。刈り入れられても根本から萌芽し、根絶は難しい。北海道から九州までと、朝鮮半島に分布する。野原や草原、道端などに生え、森林に出ることはあまり見ない。河川敷など、攪乱の多い場所によく生え、刈り込まれてもよく萌芽する、雑草的な性格が強い。
 果実は営実(エイジツ)と称し瀉下薬、利尿薬になり、日本薬局方にも記載されている。また、バラの園芸品種に房咲き性をもたらした原種であり、日本では接ぎ木の台木に使用される。そのため、しばしば栽培中に根本からノイバラが萌芽し、繁茂してしまうことがある。エイジツエキスは、おでき、にきび、腫れ物に効果があるといわれていて、化粧品成分に利用されています。皮膚の保護作用、収れん作用、抗酸化性、美白性、保湿性、皮膚細胞の活性効果を持ちます。
 古くはうまらと呼ばれ万葉集にも歌われている。
 道の辺の うまらの末(うれ)に 這(は)ほ豆の からまる君を はなれか行かむ 丈部鳥(はせつかべのとり)巻二十 4352

◇生活する花たち「鶏頭・皇帝ダリア・鈴懸黄葉」(横浜市港北区高田町・早淵川土手)

11月24日(月)

★あかるさは林檎の花の帰り咲く  正子
旱天が続いたり、台風などで木が傷めつけられた年におおく咲く帰り花は、小春日和のころ暖かい日が続くと、花の季節が終わってしまった林檎の木にも季節外れの花が咲き、あたりを明るく気持ちよくさせてくれます。(小口泰與)

 
○今日の俳句
冬霧の覆わる丘の灯しかな/小口泰與
詩情のある句。冬霧に覆われた丘に静かに点る灯が、なお柔らかな灯となっている。冬霧の季語が効いている。(高橋正子)

○白樺黄葉

[白樺黄葉/東京大学・小石川植物園]

★白樺のまれにはななめ秋晴るる/皆吉爽雨
★大鹿の村の白樺黄葉す/小屋番
★正午(ひる)の陽の白樺黄葉快活に/高橋信之

 メルヘン街道!八千穂高原白樺林の黄葉(長野の観光・旅行/長野の観光スポット)
 八千穂高原の白樺林の広さは東洋一!特に秋の白樺林の紅葉は素晴らしい!その年の気象条件により異なりますが、いい年・いい時期には一斉に色づく「黄金色に輝く白樺林の黄葉」が見られます。(ネットより http://allabout.co.jp/gm/gc/51977/2/)

 シラカンバ(白樺、学名:Betula platyphylla)は、カバノキ科カバノキ属の落葉樹の1種。樹皮が白いことからこの名がある。別名はシラカバなど。温帯から亜寒帯地方に多く見られる。基変種であるコウアンシラカンバ Betula platyphylla var. platyphylla とそれにごく近縁にオウシュウシラカンバ Betula pendula は、アジア北東部・シベリア・ヨーロッパの広い範囲に分布する。日本産変種である Betula platyphylla var. japonica は、福井県を西端、静岡県を南端として北海道までの落葉広葉樹林帯と亜高山帯下部に分布する。日本の高原を代表する木の1つである。主に長野県や北海道に多い。
 明るい場所を好み、成長が早い。ブナなどの暗い場所を好む樹木にとって代わられて、通常は一代限りで消えていく。高さは20〜30mになる。幹は30cm〜1m程でまっすぐに伸びる。枝は多岐に別れて伸び卵形の樹幹を形成する。外皮は薄く、黄色みを帯びた白色で光沢があり、紙状に剥がれる。葉は対生して生え、卵状菱形もしくは三角状広卵形で周囲は鋸葉状。長さが4〜10cm、幅は3〜6cmほど。秋には黄色く紅葉する。花期は春。雌雄同株で、5cmほどの雄花は長枝の先から尾状に垂れ下がる。雌花は短枝に4cmほどの花穂をつける。

◇生活する花たち「茶の花・茶の実・欅黄葉」(川崎市宮前区野川・影向寺)

11月19日(水)

★咳こぼし青年ふたり歩み去る  正子
すれ違ったのでしょうか。青年が二人咳を残して去っていく姿に、風邪が流行り出したこの寒さと、何だか優しさを思います。(祝恵子)

○今日の俳句
初採りの冬菜根を持ち土落とす/祝 恵子
秋に蒔いた菜が寒さの中にようやく育った。引き抜いた菜の根を持ち土をほろほろ落とす。寒そうな土と丈夫な根に冬菜の元気が見える。

○自然教育園へ行く
今日の自然教育園は、花は白嫁菜が咲き残っているぐらいでほとんどの花は枯れている。実をつけるものがいろいろあった。から橘、藪柑子、千両、さるとりいばら、さねかずら、野茨の実、からすうりが赤く熟れていた。万両はようやく色づき始めている。紫式部の実が葉の黄葉に映えて紫色が美しい。こむらさきの風情どころではない。写真に撮ったが、葉陰で暗いのと、風が枝を揺らしていたので出来栄えがよくなく残念だった。自然教育園はすっかり冬の園となっていて、ところどころ日が差し込んで暖かい。

地下鉄の白金台駅を出ると、風が強かった。快晴の空からむやみに風が吹いてくる。冬になると白金台の駅を出ると風が強いが、これを東京の空っ風と言うのかといつも思う。どの風が空っ風か誰にも聞いたことはないけれど。今日は日吉本町の駅にもどると、穏やかな小春日和だった。

○枸杞(くこ)

[枸杞の実/横浜市都筑区東山田]       [枸杞の花/横浜市都筑区東山田]

 クコ(枸杞、学名:Lycium chinense)は、中国原産のナス科の落葉低木。食用や薬用に利用される。日本や朝鮮半島、台湾、北アメリカなどにも移入され、分布を広げている外来種でもある。枝は長さ1m以上、太さは数mm-1cmほどで、細くしなやかである。地上部は束状で、上向きに多くの枝が伸びる。枝には2-5cm程度の葉と1-2cm程度の棘が互生するが、枝分かれは少ない。垂直方向以外に地上にも匍匐茎を伸ばし、同様の株を次々と作って繁茂する。海岸、河原、田畑の畦、空き地の周囲など、人の手が加わりやすく、高木が生えきれない環境によく生える。ある程度湿り気のある水辺の砂地を好む。
 性質は丈夫であり、しばしばハムシの一種トホシクビボソハムシ(Lema decempunctata)の成虫や幼虫が葉を強く食害したり、何種類かのフシダニが寄生して虫癭だらけになったりするが、それでもよく耐えて成長し、乾燥にも比較的強い。一旦定着すると匍匐茎を伸ばして増え続け、数年後にはまとまった群落となることが多い。開花期は夏-初秋で、直径1cmほどの小さな薄紫色の花が咲く。果実は長径1-1.5cmほどの楕円形で、赤く熟す。
 果実は酒に漬けこんでクコ酒にする他、生食やドライフルーツでも利用される。薬膳として粥の具にもされる。また、柔らかい若葉も食用にされる。クコの果実、根皮、葉は、それぞれ枸杞子(くこし)、地骨皮(じこっぴ)、枸杞葉(くこよう)という生薬である。ナガバクコ(学名: Lycium barbarum)も同様に生薬にされる。月経促進や人工中絶薬の作用をする成分(ベタイン)が含有されているため、「妊婦あるいは授乳中の摂取は避けたほうがよい」[1]との情報がある。 ワルファリンとの相互作用が報告されている[2]。食品素材として利用する場合のヒトでの安全性・有効性については、信頼できるデータが見当たらない。

◇生活する花たち「皇帝ダリア・柚子・檸檬(れもん」(川崎市高津区子母口)

11月18日(火)

★落葉ふる空の青さのどこまでも  正子
落葉がことごとく散るこの季節は、空の青さも果てしなく広やかで、ぬけるような大空が思われます。(小川和子)

○今日の俳句
小春日の芝生へ児ら吹くシャボン玉/小川和子
芝生で遊ぶ児がしきりにシャボン玉を吹いている。小春日のうららかさが、シャボン玉を吹く児を通してよく詠まれている。(高橋正子)

○レモン

[レモン/川崎市高津区子母口]

 レモン(檸檬、英語: lemon、学名: Citrus limon)は、ミカン科ミカン属の常緑低木、またはその果実のこと。柑橘類のひとつである。レモンの近縁種の一つ、シトロンの別名がクエン(枸櫞)で、クエン酸の名はこれに由来する。
 原産地はインド北部(ヒマラヤ)。樹高は3mほどになる。枝には棘がある。葉には厚みがあり菱形、もしくは楕円形で縁は鋸歯状。紫色の蕾を付け、白ないしピンクで強い香りのする5花弁の花を咲かせる。果実は紡錘形(ラグビーボール形)で、先端に乳頭と呼ばれる突起がある。最初は緑色をしているが、熟すと黄色になり、ライムにもよく似ている。ただし、レモンと名は付いていても他の柑橘類と交雑した品種(マイヤーレモンやサイパンレモンなど)では栽培環境で果実の形が変わり易く球形に近いものや、熟すとオレンジ色になるものもある。
 レモンを題材とした作品:梶井基次郎 『檸檬』、主人公が檸檬を爆弾にみたて、丸善を爆破する幻想に駆られる物語。さだまさし 『檸檬』、梶井の小説をヒントにしつつ、舞台を御茶ノ水に置換え、青春時代の恋愛の無常さを描いた楽曲。ヨハン・シュトラウス2世 『レモンの花咲くところ』 (シトロンと訳す場合もあり)。高村光太郎 『レモン哀歌』、妻智恵子との死別を書いた詩。

◇生活する花たち「鶏頭・皇帝ダリア・鈴懸黄葉」(横浜市港北区高田町・早淵川土手)

11月16日(日)

★たて笛の音色幼し冬初め   正子
小学校低学年の児童でしょうか。新学期から学び始めたリコーダーも半年を過ぎ、ずいぶん様になってきました。まだまだ音色に幼いところがあるとはいえ、大きな進歩が見えます。「冬初め」に子供にとっての時間の積み重ね、家族の感慨が感じとれます。あるいはお子様方の幼い頃の思い出かもしれませんね。(小西 宏)

○今日の俳句
欅立つ落葉きらめく陽の中に/小西 宏
情景がよく整理されている。陽を受けてきらめきながら散る落葉。その中心に黄葉した大きな欅の存在が示されている。(高橋正子)

○欅黄葉(けやきもみじ)

[欅黄葉/横浜日吉本町]

★色付や豆腐に落て薄紅葉 芭蕉
★小原女の足の早さよ夕もみぢ 蕪村
★日の暮れの背中淋しき紅葉哉 一茶
★山に倚つて家まばらなりむら紅葉 子規
★瀑五段一段毎の紅葉かな 漱石
★阿賀川も紅葉も下に見ゆるなり 碧梧桐
★たかあしの膳に菓子盛り紅葉寺 虚子
★紅葉してしばし日の照る谷間かな 鬼城
★山門に赫と日浮ぶ紅葉かな 蛇笏
★岩畳をながるゝ水に紅葉かな 石鼎
★黄葉一樹輝きたてり紅葉山 泊雲

★仰ぎ見る欅黄葉と青空を/高橋信之
★欅黄葉いま北国の空が欲し/高橋正子

 千葉公園には、イロハモミジ、イチョウ、トウカエデ、ケヤキ、カツラ、ニワウルシ、シマサルスベリ、トチノキ、ハナミヅキ、ヒメシャラ、ドウダンツツジなどの紅葉・黄葉する樹木があります。10月中~下旬からケヤキ、サクラ、カツラなどが色づきはじめ、11月上旬から中旬にイロハモミジ、トウカエデ、トチノキが見ごろになり、11月下旬から12月上旬にはボタン園の大イチョウが見事な黄葉を見せます。
 今年の紅葉の見ごろ時期は、(社)日本観光振興協会の予想によれば「例年よりやや遅くなる見込み」だそうです。因みに東京(明治神宮外苑)の見ごろ時期は、12月上旬~中旬(例年11月下旬~12月上旬)の予想です。
 紅葉は最低気温が8度になると始まり、5~6度以下になると色づきが進むといわれます。前記の予想は、9月の平均気温から予想する気象庁作成の予測式を用いており、今年は9月の平均気温が例年より高かったため、紅葉の見ごろが「やや遅れる」予想結果となっています。
 紅葉・黄葉の色は樹種によって概ね同じですが、ケヤキの場合は、黄~橙~赤と樹木によって紅葉の色が異なります。同一の樹木が年によって紅葉色が変わることはなく、樹木の個体ごとに紅葉する色が遺伝的に決まっていることが分かっています。千葉公園でも、黄色のものから赤色のものまで色とりどりのケヤキが見られます。(千葉市のホームページより)

◇生活する花たち「十両(やぶこうじ)・万両・白文字(しろもじ)」(東京白金台・国立自然教育園)

11月14日(金)

★眩しかり渚に並ぶゆりかもめ  正子
京都の鴨川などでもよく見かけました。ゆりかもめは色が白く群れで見ることが多い冬の鳥です。
冬の渚に群れるゆりかもめ、晴れの日の渚の波のきらめきの中では眩しさが一層強くなります。(古田敬二)

○今日の俳句
木の実あまた落ちたばかりの輝きに/古田敬二
落ちたばかりの木の実は、驚くほどつやつやしている。それが「あまた」なので、あたりの森や、その木のゆたかさが思われるできる。(高橋正子)

○花冠1月号(362号)校了。 刷り上がるのは12月初旬の予定。ただいま2月号の編集中。

○石蕗の花(つわのはな)

[石蕗の花/横浜日吉本町]         [石蕗の花/横浜いずみ野]

★せせらぎの水音止まず石蕗の花/高橋正子
★葉の強さよりも明るき石蕗の花/高橋正子

 ツワブキ(石蕗、艶蕗、学名:Farfugium japonicum)とはキク科ツワブキ属の多年草。イシブキ、ツワともいう。ツワブキの名は、艶葉蕗(つやばぶき)、つまり「艶のある葉のフキ」から転じたと考えられている。沖縄方言では「ちぃぱっぱ」という。日本では本州の福島県・石川県以西から四国、九州、琉球諸島(大東諸島と魚釣島を除く)に、日本国外では朝鮮半島、中国、台湾に分布する。低地から山地の日陰や海岸に多い。有毒物質のピロリジジンアルカロイドを含有している。
 多年草で、草丈は50cm程度。地下に短い茎があり、地上には葉だけが出る。葉は根生葉で葉身は基部が大きく左右に張り出し全体で円形に近くなる。長い葉柄を持ち、葉柄は大きく切れ込んだ葉身の中心につく。これらの点はフキによく似ている。その葉は厚くて表面につやがあり、緑色が濃く、若いときには綿毛が多い。花期は10-11月。葉の間を抜けて花茎を伸ばし、その先端に散房花序をつけ、直径5cm程度の黄色い花を数輪咲かせる。フキが夏緑性であるのに対して、ツワブキは常緑性である。
 日陰でもよく育ち、園芸植物として、日本庭園の石組みや木の根元などに好まれる。斑入りの葉を持つものもある。民間薬(生薬名たくご)として、茎と葉を打撲や火傷に用いる。フキと同じように茎を食用とすることもあり、フキを原料にした煮物と同様に「キャラブキ」と呼ばれることもある。津和野町の名前の由来は「石蕗の野」であるという。
 俳句歳時記では「石蕗の花」が冬の季語となっている。

◇生活する花たち「椿・野葡萄・くこ」(横浜市都筑区東山田)

11月13日(木)

★落葉ふる空の青さのどこまでも  正子

○今日の俳句
冬鵙に雲一片もなかりけり/井上治代
一片の雲もなく晴れ渡った空に、けたたましいはずの冬鵙の声が、のびやかに聞こえる。(高橋正子)

○帰り花(りんごの花)

[帰り花(つつじ)/横浜港北区日吉本町_2012年10月25日]  [帰り花(りんごの花)/横浜・四季の森公園_2011年11月3日]

★凩に匂ひやつけし帰花 芭蕉
★かへり花暁の月にちりつくす 蕪村
★春雨と思ふ日もあり帰り花 蓼太
★ニ三日ちうでゐにけりかへり花– 太祗
★茗荷畑ありしあたりか忘れ花 也有
★帰り咲く八重の桜や法隆寺 子規
★一輪は命短し帰花 漱石
★ひとり磨く靴のくもりや返り花 龍之介
★日に消えて又現れぬ帰り花 虚子
★藁積んで門の広さや帰花 鬼城
★返り咲く園遅々とゆく広さかな 蛇笏
★返り花その日その日の来ては去る 万太郎
★梨棚や潰えんとして返り花 秋櫻子
★真青な葉も二三枚返り花 素十
★梨棚のところに来たり帰花 青畝
★ひと枝にうすく真白く返り花 草田男
★返り花三年教へし書をはさむ 草田男
★帰り花日かげりぬればさやかなる 草城
★返り花俳人兵のことぎれし 静塔
★人の世に花を絶やさず帰り花/鷹羽狩行
★帰り花鶴折るうちに折り殺す/赤尾兜子
★礼服をしばらく吊りぬ返り花/山下知津子
★返り咲く花は盛りもなく散りぬ/下村梅子
★太陽のとほれる道に返り花 長谷川櫂
★寂庵の仏に捧ぐ返り花 高田正子

 十月も終わりごろだったと思うが、横浜四季の森公園近くの民家に林檎の帰り花を見たのは、はじめてのこと。桜と紛れてしまうような林檎の花も小春日和の空に咲いているのを見ると、皐月などと違って、なにがしかの風情がある。
 帰り花(かえりばな)とは、11月頃の小春日和に、桜、梅、桃・梨・山吹・つつじなどに多く見られる現象で、本来の季節とは異なって咲かせた花のこと。ひとが忘れた頃に咲くので、「忘れ花」といった言い方もされる。「返り花」とも書き、「二度咲」「狂い咲」ともいい、俳句では冬の季語の一つとなっている。

★歳月は還らず返り咲く花よ/高橋正子

◇生活する花たち「たいわんつばき・石蕗の花・小菊」(神奈川・大船植物園)

◆ご挨拶/11月ネット句会◆


◆11月ネット句会◆
ご挨拶(高橋正子/主宰)

11月句会にご参加くださいまして、ありがとうございました。入賞の皆様おめでとうございます。
立冬を過ぎ、朝晩はすっかり冬と言えるようになりました。温かいお風呂や、炬燵が嬉しくなりました。一週間ほど前、久しぶりに大船の植物園に出かけましたら、菊花展がありました。冬桜や山茶花、石蕗の花も沢山咲いておりました。薔薇園も秋の薔薇がちょうど見ごろ。普段俳句を作るには、何でもないような所から海が見えたり、ちょっとした小川があったり、窓から木の葉が揺れるのが見えたりするのが一番よいように思いました。句会では、みなさんの句から、今日は何をされたのかな、どこへ行かれたのかななど思って、楽しさをおすそ分けいただいています。秀之さんの句に、みかんを箱で買って自転車に乗せて帰るというのがありましたが、みかんどころの愛媛にいるときは、そんなこともしていたな、と思い出しました。日常生活には楽しいことが沢山あるというのは本当でしょう。句会の度にそれを実感します。今月も句会の管理・運営は信之先生、集計は洋子さんにお願いいたしました。いつもお世話をありがとうございます。これで11月句会を終わります。

次回12月の月例ネット句会は、「漱石忌ネット句会」として12月9日(火)に行う予定です。詳細は追ってお知らせいたします。
多くの方のご参加をお待ちしています。