1月6日(火)/小寒

★餅を焼く火の色澄むを損なわず  正子
餅は、長い文化の中で、あるいは地域の広がりの中で様々に生きてきました。私の地方、子供の頃は、火鉢の炭火で、皆の見守る中で焼いていたことを思い出します。(今では我が家に火鉢もなく、オーブントースターで膨らませています)。先生のこの句は、やはり炭火で焼いていた頃を思い出させてくれます。火勢は強すぎてもいかず、ほどほどに明るい蜜柑色の光の中で、頃合いを図りつつひっくり返しては、柔らかに膨らむのを待っていました。(小西 宏)

○今日の俳句
★午後の陽にまだある氷割り遊ぶ/小西 宏
午後の陽がきらきらと氷に差している。日中も気温が上がらないと、こんな氷に出くわすが、ちょっと割ってみたくなる遊び心。午後の陽が余計に遊び心をかきたてたのだろう。(高橋正子)

○エリカ(ヒース)

[エリカ/横浜日吉本町]

★花エリカ雪後のごとくさびしけれ/角川源義
★エリカといふさびしき花や年の暮/山口青邨
★嬰児にもあるためいきや花エリカ/岡田史乃
★空港に帰着の刻をエリカ活く/横山房子
★エリカ咲くひとかたまりのこむらさき/草間時彦
★鷗啼く絵里香や折ればこぼるるも/小池文子
★横文字の名札に翳すエリカかな/吉田洋一

 エリカは、ツツジ科エリカ属(学名:Erica)の常緑性樹木で、日本では学名エリーカから、エリカと呼ばれることが多い。エリカ属は、700種類以上の種があり、多くの種は高さ20-150cmほどの低木であるが、E. arborea、E. scopariaのように高さ6-7mに達する種もある。エリカの群生地としては、北ドイツの自然保護地区、リューネブルガーハイデが有名。また小説『嵐が丘』の館の周囲に生えていたのもエリカ、英語ではヒース(heath)と呼ばれる。主な種は、ジャノメエリカ(学名E.canaliculata)とスズランエリカ(学名E. formosa)。ジャノメエリカの名前の由来は、花の中の黒い葯(花粉袋)が蛇の目に見えることから。 スズランエリカの名前の由来は、花がスズランに似ていることから。
 エリカ属の大部分は南アフリカ原産で、残りの70種程度がアフリカの他の地域や地中海地方、ヨーロッパ原産である。園芸では性質などの違いで南アフリカ原産種とヨーロッパ原産種にざっくり分けられる。名前はギリシア語のエイレケー(砕く)に由来するとされ、エリカが体内の胆石をとる(砕く)薬効があるされていたため、そんな名前が付いたとされている。葉は短い針型や線形で、枝にびっしりと付く姿は、枝に葉が生えているといった感じです。花はタマゴ型や壺状の小さな粒々のもの、紡錘形などがある。

◇生活する花たち「冬椿①・冬椿②・山帰来の紅葉」(横浜・綱島)

1月5日(月)

★お飾りの稲穂に雀駈けて来し 正子
お飾りは、元来神の占有する清浄な区域を示すもので、これを新年の門戸に飾って魔よけの意を表したものですが、そのお飾りの稲穂に餌と間違えてお腹を空かせた雀が寄ってきたほほえましい景ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
雪の間に日向ありけり福寿草/小口泰與
雲間に日差しが見えて、その日差しが福寿草に届く。福寿草の咲き方と言えば、そんな光景が私にはふさわしいように思える。(高橋正子)

○十両(やぶこうじ)

[十両/東京白金台・国立自然教育園]   [百両(たちばな)/横東京白金台・国立自然教育園]

★千両も万両も生ふ旧き家/村越化石
★供華に活け千両の実をこぼしけり/稲畑汀子
★慎ましく足元見よと藪柑子/松本詩葉子

万両・千両・百両・十両・一両の実は、何れも秋から冬に赤熟し、 その赤い実も小粒です。そのため古来、これらの赤い実を付けた植物は、お正月の縁起物としてもてはやされ てきました。

万両
センリョウより沢山実が付くことから、 マンリョウの名前が付いたと云われる。園芸種では白や黄色の実を付けるものがあります。

千両
本州中部以南から台湾、インドなど暖帯から熱帯に分布。山林の半日陰に自生する常緑小低木。花は黄緑色で小さい。 果実は球形で、赤く熟する。

百両
江戸時代のタチバナは非常に高価で、 百両以下では手に入れることができないため、 「百両金」と呼ばれました。

十両
ヤブコウジの名は近代になって付けられたが、 古くは赤い果実を山のミカンに見立てたヤマタチバナ(山橘) の名で良く知られていた。 それがヤブコウジ(藪柑子)になったという。 タチバナはコウジミカン(柑子)の古名。

一両
常緑小低木。腋に鋭い長い刺がある葉の付け根から出ているトゲが蟻をも刺し通すという意味です。 お正月のおめでたいときの飾ります。「千両、万両をお持ちでも、このアリドオシがないと「千両、万両、有り通し」に なりません。この機会にぜひ揃えてみたいです。

◇生活する花たち「冬椿①・冬椿②・山帰来の紅葉」(横浜・綱島)

1月4日(日)

★四日目の花切り戻し風邪籠り  正子
お正月花にと活けた花も四日ともなれば少し元気がなくなって来ました。そのお花の水揚げが良くなる様にと根元の切戻しをなさったのでしょう。慌ただしいお正月も過ぎ一先ずほっとした頃ですが、つい風邪を召されてしまいました。しかし風邪に籠る前にお花への手当をきちんとされるなどお花を愛される作者の暮らしぶりが見えるようです。 (佃 康水)

○今日の俳句
床の間に早や一輪の梅ひらく/佃 康水
床の間に活けた梅の固い蕾が、部屋のぬくもりで、一輪開いた。早も開いた驚きと、その清らかさに魅了された。(高橋正子)

○よく晴れた。子どもたちもそれぞれの家でのんびりしていることだろう。

○万両

[万両/東京白金台・自然教育園]     [万両/横浜日吉本町]

★万両の赤を要に活けらるる/稲畑汀子
★万両に日向移りて午後の景/岡本眸
★千両も万両も生ふ旧き家/村越化石
★退院の待たるる日々や実万両/水原春郎
★実生なる万両として日をはじく/豊田都峰
★碑のもと万両のまだ青し/阿部ひろし

★万両の赤い実も鉢もつやつやと/高橋正子
★万両の鉢泥洗うも冬支度/高橋正子
★万両の根もとを猫が通り抜け/高橋正子

 横浜日吉本町に住んでいるが、百両を見かけたのは、ご近所では一軒だけで、万両は千両と並んで町内の庭先でよく見かける。数年前、町田市の里山に出かけたが、その山に自生の万両を見た。そして、東海道53次の戸塚を過ぎて、藤沢の遊行寺の近くの遊行坂の山にやはり、自生と思われる万両を見た。生家にもあったが、これを父は実のついた万年青とともに大事にしていた。あまり育たず、増えずの感じだったが、横浜では、いたるところで見かける。四国の砥部の家にも万両があったが、いつの間にか、塀沿いに万両が増えて育っていた。実がこぼれたのであろう。
 マンリョウ(万両、Ardisia crenata Sims)はヤブコウジ科の常緑小低木。林内に生育し、冬に熟す果実が美しいので栽培され、特に名前がめでたいのでセンリョウ(千両)などとともに正月の縁起物とされる。東アジア~インドの温暖な場所に広く分布する。日本では、関東地方以西~四国・九州・沖縄に自生するほか、庭木などとしても植えられている。なお、アメリカのフロリダ州では外来有害植物として問題になっている。高さは1mほど。同属のヤブコウジと似ているが、ヤブコウジは高さ10cmほどなので区別ができる。根元から新しい幹を出して株立ちとなる。葉は縁が波打ち互生する。葉の波状に膨れた部分には共生細菌が詰まった部屋が内部に形成されている。また、葉は光に透かすと黒点が見える。花は白色で7月頃に咲き、小枝の先に散形花序をなす。果実は液果で10月頃に赤く熟し、翌年2月頃まで枝に見られる。栽培品種には白や黄色の果実もある。いわゆる古典園芸植物のひとつで、江戸時代には葉が縮れたりした変異個体が選抜されて、多様な品種群が栽培された。

◇生活する花たち「冬椿①・冬椿②・山帰来の紅葉」(横浜・綱島)

◆ご挨拶/新年ネット句会◆


◆新年ネット句会◆
ご挨拶(高橋正子/主宰)
あけましておめでとうございます。全国的に寒波が押し寄せて、雪が降ったところもたくさんあったようです。横浜も元旦のお昼過ぎ、しばらく粉雪が舞いました。この冷え込みに風邪に見舞われた方もおられるようですが、温かくしてお過ごしください。ご家庭でのお正月の行事のなか、句会にご参加くださいましてありがとうございました。19名の方がご参加くださいました。入賞の皆様おめでとうございます。選とコメントをありがとうございました。皆さんの選やコメントを拝読して、いろいろと学ぶことがたくさんありました。ご投句のなかに、昔ながらの風景や伝統行事が行われているのを読んで、営々と続く人々の暮らしの壮大なことを思いました。新しいことも、古いことも大切だと思われます。お正月の過ごし方も様々になっているようですが、新年ネット句会もその過ごし方の一つとなっているようで、うれしく思いました。本年も月例ネット句会をどうぞよろしくお願いいたします。これで新年ネット句会を終わります。句会の管理運営は信之先生に、集計は藤田洋子さんにお願いいたしました。ありがとうございました。

1月3日(土)

★一月はわが誕生月よ静かなれ   正子
一月は一年の始まりで、何かと喧噪的な時期ですが、ゆっくりと静かに過ごしたいと思う、その気持ちの誕生月です。(高橋秀之)

○今日の俳句
獅子舞に頭を向けて走り寄る/高橋秀之
獅子舞の獅子に頭を噛んでもらうと元気な子になるとか。恐ろしい獅子に向かって走り寄るのは、果敢で愉快な男の子。(高橋正子)

○新年ネット句会!
ご挨拶(高橋正子/主宰)

◆新年ネット句会◆
ご挨拶(高橋正子/主宰)
あけましておめでとうございます。全国的に寒波が押し寄せて、雪が降ったところもたくさんあったようです。横浜も元旦のお昼過ぎ、しばらく粉雪が舞いました。この冷え込みに風邪に見舞われた方もおられるようですが、温かくしてお過ごしください。ご家庭でのお正月の行事のなか、句会にご参加くださいましてありがとうございました。19名の方がご参加くださいました。入賞の皆様おめでとうございます。選とコメントをありがとうございました。皆さんの選やコメントを拝読して、いろいろと学ぶことがたくさんありました。ご投句のなかに、昔ながらの風景や伝統行事が行われているのを読んで、営々と続く人々の暮らしの壮大なことを思いました。新しいことも、古いことも大切だと思われます。お正月の過ごし方も様々になっているようですが、新年ネット句会もその過ごし方の一つとなっているようで、うれしく思いました。本年も月例ネット句会をどうぞよろしくお願いいたします。これで新年ネット句会を終わります。句会の管理運営は信之先生に、集計は藤田洋子さんにお願いいたしました。ありがとうございました。

【金賞】
★正月の山葵を納め灯を消しぬ/安藤智久
正月用の山葵を納品し、今年の仕事がすっかり終わった安堵と充足に灯を消した。働くことへの真摯な姿。(高橋正子)

▼その他の入賞作品:
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d

○正子3句
 駒林神社初詣
粉雪と火の粉の中の初詣 
さつさつと粉雪お神酒に降り交る
戻り来てわが衣の雪を払いけり

○午後4時すぎ、友宏と句美子夫婦が年始と正子の誕生祝いに来る。
ネット句会の入賞発表をパソコンで見ながら二人でなんだかんだと言っていた。
元希用に買っていた子ども椅子のキットを句美子が組み立ててくれた。背もたれに、丸い目と、ニコッとした口の穴が開いている。

○南天

[南天/横浜日吉本町]

★南天の実をこぼしたる目白かな/正岡子規
★口切や南天の実の赤き頃/夏目漱石
★あるかなし南天の紅竹垣に/瀧井孝作 
★実南天奈良から一人少女来る/青木啓泰

 ナンテン(南天、学名:Nandina domestica)は、メギ科ナンテン属の常緑低木。和名の由来は、漢名の「南天燭」の略。高さは2m位、高いもので4~5mほど。幹の先端にだけ葉が集まって付く独特の姿をしている。葉は互生し、三回羽状複葉で、小葉は広披針形で先端が少し突きだし、革質で深い緑色、ややつやがある。先端の葉の間から、花序を上に伸ばし、初夏に白い花が咲き、晩秋から初冬にかけて赤色(まれに白色)の小球形の果実をつける。中国原産。日本では西日本、四国、九州に自生しているが、古くに渡来した栽培種が野生化したものだとされている。山口県萩市川上の「川上のユズおよびナンテン自生地」は、国の天然記念物(1941年指定)。
 庭木として植えられることが多い。音が「難を転ずる」に通ずることから、縁起の良い木とされ、鬼門または裏鬼門に植えると良いなどという俗信がある。福寿草とセットで、「災い転じて福となす」ともいわれる。稀に太く育ったものは、幹を床柱として使うことがあり、鹿苑寺(金閣寺)の茶室、柴又帝釈天の大客殿などで見られる。以前に発行されていた日本の6円郵便切手の意匠としても親しまれていた。花言葉は「私の愛は増すばかり」、「良い家庭」。活け花などでは、ナンテンの実は長持ちし最後まで枝に残っている。このことから一部地方では、酒席に最後まで残って飲み続け、なかなか席を立とうとしない人々のことを「ナンテン組」という。

◇生活する花たち「蝋梅①・蝋梅②・さんしゅゆの実」(横浜・四季の森公園)

新年ネット句会入賞発表■


■1月ネット句会■
■入賞発表/2015年1月3日■

【金賞】
★正月の山葵を納め灯を消しぬ/安藤智久
正月用の山葵を納品し、今年の仕事がすっかり終わった安堵と充足に灯を消した。働くことへの真摯な姿。(高橋正子)

【銀賞2句】
★葱を掘る太き白さの真直ぐに/古田敬二
葱を掘り上げて、太く、真っ白でまっすぐな葱に、改めて出来の良さに驚く。丹精の甲斐があって、柔らかくおいしい葱に舌鼓を打たれたことだろう。(高橋正子)

★元日の朝も目覚まし時計鳴る/高橋秀之
目覚まし時計は、朝な朝な鳴り響いて目を覚まさせてくれる。それが、元旦という特別な日であろうと。昨日の次が今日であるという事実は変わらず、そこに真理とユーモアがある。(高橋正子)

【銅賞4句】
★初空を映す流れの清らかに/柳原美知子
初空を映して流れる小川の清らかなこと。初空の穏やかさ、のどかな田園の流れに淑気が漂う。(高橋正子)

★いま雪は舞うて鉢物覆いたる/祝恵子
今、雪が霏々と舞って、鉢物に降りかかり、形を柔らかく覆ってしまった。みるみる降り積もる雪の様子をしっかりと見つめる作者。(高橋正子)

★山口の汽笛谷間へ年明くる/桑本栄太郎
大晦日を山口で迎えられた作者。山口は、作者の古里とも、いま住んでおられる所とも違い、汽笛が谷間へ響いて年が明ける。新年への新しい思い。(高橋正子)

★雪やみて城より太き雲流る/福田ひろし
雪が降っている間は降る雪に空も見えないほどだ。雪が止むと城の後ろから太い雲が流れ出ている。たった今雪を降らした雲の名残であろうか。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★粉雪と火の粉の中の初詣/高橋正子
今年の年明けは全国的に寒波に包まれ、雪模様の初詣が多かったことでしょう。わたしも雪の中、寒さに震えて手を合わせ、早々と焚き火の近くに行きました。境内は冷たい粉と熱い粉に覆われていました。 (福田ひろし)

★初日記小さな良きこと探しつつ/古田敬二
新しい年が始まり、今年もいいことがたくさんあるように祈りながら、日記を書いている作者の姿が目に浮かびます。小さな良いことを探す姿勢を見習いたいと思います。 (井上治代)
一年の最初に記入する初日記は、何か良いことを記入したいもの。毎日、良いことが書けるように願い過ごせば、日々の積み重なりであり、その一年は良い一年となります。 (桑本栄太郎)

★元日の朝も目覚まし時計鳴る/高橋秀之
いつもの目覚まし時計が鳴った。元日の朝もだ。「目覚まし時計」に生活感があって、いい生活句だ。(高橋信之)

★戻り来てわが衣の雪を払いけり/高橋正子
中七から下五までの十二字、「わが衣の雪を払いけり」は、わが家に戻った実感を詠んで、リアルである。「わが家」をうまく捉えた秀句。主婦の生活がある振る舞いを見た。(高橋信之)

★正月の山葵を納め灯を消しぬ/安藤智久
生活のある句がいい。「灯を消しぬ」に区切りがある。一年の区切りだ。(高橋信之)

★葱を掘る太き白さの真直ぐに/古田敬二
素直な写生句だ。「太き白さの真直ぐに」がいい。作者の内面の良さが現れたのだ。(高橋信之)

★初空を映す流れの清らかに/柳原美知子
女性の優しさを感じさせる句だ。そして、日本の風物の優しさでもある。「初空」であれば、なお、嬉しい。(高橋信之)

★いま雪は舞うて鉢物覆いたる/祝恵子
日常の生活をうまく読み手に見せてくれる。さり気なく、そして、それがいいのだ。(高橋信之)

【高橋正子特選/8句】
★千両を活けて空気の引き締まる/柳原美知子
千両の実の赤さはぱっと華やぐ明るさです。それを伐って床の間にでも活けるとき、冷たく整った部屋の佇まいは更にきりりと引き締まります。(小西 宏)
 千両の赤い実を中心に活けた生け花。据えられた部屋はその赤い実で日常の風景と違って新年らしいものに見えて得来る。 (古田敬二)

★初雀連なるオブジェの曲線に/高橋句美子
雀が連なっているのが、電線や軒先ではなく、美術品、芸術品であるオブジェの曲線というところに日常との対比を感じます。それが初雀となればなおさらです。 (高橋秀之)

★雪やみて城より太き雲流る/福田ひろし
「雪やみて」も、まだ降り足らぬ雲である。雪雲に重さがあり、流れゆく「太き雲」である。城下町の冬の景を詠む。(高橋信之)

★山口の汽笛谷間へ年明くる/桑本栄太郎
大晦日を山口で迎えられた作者。山口は、作者の古里とも、いま住んでおられる所とも違い、汽笛が谷間へ響いて年が明ける。新年への新しい思い。(高橋正子)

★元日の朝も目覚まし時計鳴る/高橋秀之
目覚まし時計は、朝な朝な鳴り響いて目を覚まさせてくれる。それが、元旦という特別な日であろうと。昨日の次が今日であるという事実は変わらず、そこに真理とユーモアがある。(高橋正子)

★正月の山葵を納め灯を消しぬ/安藤智久
正月用の山葵を納品し、今年の仕事がすっかり終わった安堵と充足に灯を消した。働くことへの真摯な姿。(高橋正子)

★葱を掘る太き白さの真直ぐに/古田敬二
素直な写生句だ。「太き白さの真直ぐに」がいい。作者の内面の良さが現れたのだ。(高橋信之)

★雪の降るいつもの丘がその中に/高橋信之

【入選/12句】
★やわらかき言の葉交わす今年かな/小口泰與
お正月らしく柔らく御挨拶なさったのでしょう。新年らしいですね。 (迫田和代)

★妹の賀状を上に束ね来る/祝恵子
お年賀状を頂くのはやっぱり嬉しいものですね。誰から?或いは添え書きを読んでその人の近況を知る等お正月の楽しみの一つです。その年賀状の束の一枚目に妹さんの名前が真っ先に目に入って来た。思わず優しく微笑まれる作者が見えて参ります。 (佃 康水)

★初氷子どものように踏みあそぶ/井上治代
新年を迎えての初氷。普段と違って踏みたくなる気持ちが分かります。きっとむ、踏み遊ぶ気持ちは、子どものころにかえっているのでしょう。 (高橋秀之)

★父母老いて道具も古るび餅をつく/安藤智久
毎年餅をついてくれていた父母も年をとり、力仕事は苦手になってきた。よって今年は古びた道具を使い、代わって餅つきをしている。年寄りを思いやる作者の率直で優しいお気持ちが嬉しく感じられます。 (河野啓一)

★歯の欠けし孫の多弁に初笑い/佃 康水
可愛いお孫さんのおしゃべりと前歯でしょうか、抜けた口元、思っただけで共に笑いそうです。 時間が過ぎましたが、選句いたします。 (祝恵子)

★那覇へ発つ子らの機影や初御空/佃 康水
子供達を乗せた飛行機が元旦の真新しい空に飛び立って行く。ちょっとした旅行なのかもしれないが、巣立って行く子供を見送る親の気持ちを爽やかに表現されているような気がしました。 (安藤智久)

★福笑い始める前にもう笑い/迫田和代
日頃は離れて暮らす家族も一堂に会するお正月。賑やかな楽しい雰囲気に自然と笑みが零れ、はしゃぐ子供たち。希望に満ちた平和な新年です。(柳原美知子)

★初富士の茜に映ゆる明るさに/川名ますみ
富士山は昨4月観光に行ったばかりでその雄姿が未だ瞼にあり、好きな句です。(下地 鉄)

★初春や雀の遊ぶ手水鉢/小西 宏
初春を迎え、普段と違う新鮮なものに感じます。雀の遊んでいる様子も、きっと初春を感じさせてくれているのでしょう。 (高橋秀之)

★初春の牧に草食む羊かな/河野啓一
長閑な牧場の羊たち、今年の干支でもあり、初春となるとやはり自然が新しく見えてきます。 (祝恵子)

★野良猫の何を待つやら春日かな/下地 鉄
沖縄の野良猫は春日の中で海でも眺めているのでしょうか。何かがやってくるのを。 (祝恵子)

★あら玉の夕空晴れて茜差す/小川和子
夕焼けが差してきて、あら玉の幕開けにふさわしく、今年も良い年になりそうな予感がする句です。 (祝恵子)

■選者詠/高橋信之
★わが干支の羊の年の元朝よ
我が干支の年が回ってくるとまた特別の感慨があります。元朝に当たって新たな決意やさまざまな思いを巡らせていらっしゃる作者の前向きな姿勢が窺えます。 (佃 康水)

★朝刊のことさら匂い大晦日
★雪の降るいつもの丘がその中に

■選者詠/高橋正子
★粉雪と火の粉の中の初詣
今年の年明けは全国的に寒波に包まれ、雪模様の初詣が多かったことでしょう。わたしも雪の中、寒さに震えて手を合わせ、早々と焚き火の近くに行きました。境内は冷たい粉と熱い粉に覆われていました。 (福田ひろし)

★さつさつと粉雪お神酒に降りまじる
粉雪の中の初詣、ふるまわれたお神酒にも、細かな雪が降りそそぎます。「さつさつと」迷いなくまじる雪は、神様のお力に加え、元日の空の恵みを添えているかのよう。ひときわ有難いお神酒となったことでしょう。(川名ますみ)

★戻り来てわが衣の雪を払いけり
きらきらと降りしきる雪の中に先ずは初詣に出かけられました。初詣を済ませ我が家にたどり着き、ほっとした爽やかな気持ちで衣の雪を払われている作者が見えてまいります。 (佃 康水)

■互選高点句
●最高点(5点)
★福笑い始める前にもう笑い/迫田和代

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

◆新年ネット句会清記◆

■新年ネット句会■
■清記/19名57句

01.歳晩の店混雑やカートの列
02.寒波来る西へ向かいて曇り来し
03.山口の汽笛谷間へ年明くる
04.鐘の音の風に乗りけり去年今年
05.あかあかと朝日差しけり初浅間
06.やわらかき言の葉交わす今年かな
07.初春の牧に草食む羊かな
08.初詣孫の手を引きし年もあり
09.茅渟の海照らす初日の光かな
10.野良猫の何を待つやら春日かな

11.行く歳に注連なき家の静けさよ
12.年の市何を買うやらそわそわと
13.妹の賀状を上に束ね来る
14.いま雪は舞うて鉢物覆いたる
15.寒き夜は記事のメニューを煮たており
16.元日の朝も目覚まし時計鳴る
17.初売りの服に着替えてまた出かけ
18.初詣合格祈願の絵馬を架け
19.朝陽受け雄姿現す冬の山
20.初氷子どものように踏みあそぶ

21.新春や優しき雪に包まれる
22.かがり火の朱色暖か初詣
23.初雀連なるオブジェの曲線に
24.破魔矢の鈴鳴らして帰る坂の道
25.粉雪と火の粉の中の初詣
26.さつさつと粉雪お神酒に降りまじる
27.戻り来てわが衣の雪を払いけり
28.父母老いて道具も古び餅をつく
29.正月の山葵を納め灯を消しぬ
30.新年の太鼓かすかに風邪籠

31.朝刊のことさら匂い大晦日
32.雪の降るいつもの丘がその中に
33.わが干支の羊の年の元朝よ
34.破魔矢提げ乗りくる少女親子かな    
35.歯の欠けし孫の多弁に初笑い
36.那覇へ発つ子らの機影や初御空
37.初日記小さな良きこと探しつつ
38.葱を掘る太き白さの真直ぐに
39.畦を行く太葱の土こぼしつつ
40.復興や(白い花咲く)年の暮れ

41.福笑い始める前にもう笑い
42.陽を浴びてしっかり輝く門松や
43.煙突の煙なびかせ初明り
44.初富士の茜に映ゆる明るさに
45.初茜ぐるりの空の染まりたる
46.路地裏を曲がり曲がりて寒椿
47.ポインセチア眼下に渡し船の過ぐ
48.雪やみて城より太き雲流る
49.掛軸の山水画映ゆ初座敷
50.あら玉の夕空晴れて茜差す

51.空模様仰ぐ初旅明日なれば
52.千両を活けて空気の引き締まる
53.初空を映す流れの清らかに
54.祠には餅と田作り供えられ
55.初春や雀の遊ぶ手水鉢
56.正月の庭驚かす雪霰
57.遠富士の向こう張ったる寝正月

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、1月2日(金)午後7時から始め、同日(1月2日)午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、1月3日(土)正午
※2) 伝言・お礼等の投稿は、1月3日(土)正午~1月4日(日)午後6時です。

1月2日(金)

★木賊生う地より突き立つ濃き緑/高橋正子
山中の湿地に自生しているが観賞用に庭園などにも植えている。地下茎は力強く横に生え、地上茎は直立し、枝分かれせず70センチ位の高さで深緑の縦溝が新年の青空に力強く立っている素晴らしい景ですね。 (小口泰與)

○今日の俳句
大らかな雪の浅間の二日かな/小口泰與
よい天気続きの正月。二日も雪を冠った浅間山が大らかに坐っている。浅間山を「大らか」と捉えた度量がよい。(高橋正子)

○新年ネット句会の互選。入賞発表の準備。明日正午発表予定だが、夜中に入賞発表をした。

○元家族が年始に来る。掛け軸などを見せる。石井南放先生の松の茶掛けなどを持って帰り、自宅の床に掛けた写真を送ってきた。備前の花瓶と、灰色杉板の敷板も合わせて持って帰って、早速使っている。

○水仙

[水仙/横浜日吉本町]

★水仙やホテル住ひに隣なく/久保田万太郎
★水仙やすでに東風吹く波がしら/水原秋櫻子
★あるだけ剪りあるだけ挿して水仙花/大橋敦子
★水仙や日本の詩の潔し/瀧春一
★水仙に昃り易さの日射なる/鈴鹿野風呂
★潮の香を海に返しぬ野水仙/稲畑汀子
★水仙や潮砕け散る烏帽子岩/朝妻力
★上げ潮や水仙のよく匂ふ街/今瀬剛一
★自画像の芙美子に会へり水仙花/神蔵器
★水仙や向き合ふ暮し取り戻す/井内佳代子

★向き合えば吾に水仙のみずみずし/高橋信之
水仙の花を「古鏡」といった俳人もいたが、向き合うことができる花である。向かうと、以外にもみずみずしい花である。(高橋正子)

★水仙の枯れし終わりを折りて捨つ/高橋正子
庭に咲いているのでしょうか、可憐な水仙花、でもいのちあるものには最後があるのです。ありがとうの気持ちでしょうか。(祝恵子)

★水仙の一花二花咲き正月へ/高橋正子

 スイセン属(スイセンぞく、学名:Narcissus)は、ヒガンバナ科(クロンキスト体系ではユリ科)の属のひとつ。この属にはラッパスイセンやニホンズイセンなど色や形の異なる種や品種が多くあるが、この属に含まれるものを総称してスイセンと呼んでいる。多年草で、冬から春にかけて白や黄の花を咲かせるものが多い。狭義には学名Narcissus tazettaや、その変種であるニホンズイセン(Narcissus tazetta var. chinensis)をスイセンということも多い。
 原産地は主にスペイン、ポルトガルを中心に地中海沿岸地域、アフリカ北部まで広がり、原種は30種類ほど知られている。また、園芸用に品種改良されたものが広く栽培されている。日本においては、ニホンズイセンが古くに中国を経由して渡来したといわれている。分布は、本州以南の比較的暖かい海岸近くで野生化し、群生が見られる。越前海岸の群落が有名であり、福井県の県花ともなっている。

◇生活する花たち「アッサムチヤ・グランサム椿・からたちの実」(東京・小石川植物園)
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1月1日(木)/元日

 賀正 2015年元旦
 あけましておめでとうございます。本年も高橋正子の俳句日記をよろしくご愛読ください。元日のお昼過ぎ、氏神様の駒林神社に初詣でに信之先生と出かけた。

●高橋正子3句●
元朝となりしばかりの灯が明るい
粉雪と火の粉の中の初詣
ひらがなをていねいに書きお年玉

○元朝○
★わが干支の羊の年の元朝よ/高橋信之
未年を生涯で7度むかえられた信之先生は、十二年前とさほど変わっておられないが、確かに12年の歳月を経たことを感覚的に感じている。未が羊であるのが、この句の良さと面白さ。24年前にはむくむくの羊のぬいぐるみがあった。そんな羊を思い出した。(高橋正子)

○元旦○
★元旦や朝日棚田へ溢れおり/小口泰與
元旦のあふれる朝日をまず棚田に眺める。上州の棚田であろうか。すがすがしい元旦を詠んでいる。(高橋正子)

○元日○
★せせらぎの砂に日差してお元日/高橋正子
浅瀬の水際に佇み、迎える新年。流れゆく水はもちろん、その岸の砂、一粒一粒に日が差していることに、慶びを感じます。見るもの全てがあらたまり、清らかに想われるお元日です。(川名ますみ)

★新しき箸もて家族お元日/小西 宏
新年は、なにか一つ新しいもので迎えると、すがすがしい気持ちになる。新しい箸に家族揃ってのお元日が清々しく、和やかである。

★元日の大空朝日で青々と/高橋秀之
元旦の空が大きく、まっさらな朝日で青い。「朝日で青々と」が秀之さんらしく、印象に残る空である。(高橋正子)

○初詣○
★海よりの長き石段初詣/多田有花
海の近くの寺社。寺社への長い石段は海から続き、海はいかにも穏やかである。長い石段の上からの眺めも素晴らしいことだろう。よい初詣。(高橋正子)

○若水○
★若水のくらきを汲んで手を清む/高橋正子★
初詣は氏神様である駒林神社に行きましたが、神社の坂の下から、拝礼の列ができて、30分ほど並んでやっとお参りすることができました。参拝のあと、お神酒をいただき、お札を買って、おみくじを引きました。学生風の若い人たちが大勢いて、その人たちらしい話題が漏れ聞こえてきました。(高橋正子)

○年頭○
★年頭躍筆墨条のみの白馬の図/中村草田男★
正月の床を飾るに相応しく、健康で、力強い句である。俳句の短い詩形、それに白と黒の単純さを生かした、俳句のよさである。(高橋信之)

○蝋梅(ロウバイ)

[蝋梅/横浜・四季の森公園]

★風往き来しては蝋梅のつやを消す/長谷川双魚
★蝋梅の咲くゆゑ淡海いくたびも/森 澄雄
★蝋梅や樅をはなるる風の音/古館曹人
★文机に蝋梅一朶誕生日/品川鈴子

★蝋梅咲いて森の正午の空の青/高橋信之
★蝋梅のはじめの一花空に透け/高橋正子

 ロウバイ(蝋梅、蠟梅、臘梅、唐梅、Chimonanthus praecox)は名前に梅がついているためバラ科サクラ属と誤解されやすいが、ロウバイ科ロウバイ属の落葉低木。開花時期は、12/25 ~ 翌 3/15頃。お正月頃から咲き出す。花の少ない季節に咲く、うれしい花です。とてもよい香り。中国原産。日本には17世紀頃に渡来。よく見られるのは蝋梅のうちの「素心蝋梅(そしんろうばい)」。花の外側だけでなく内側も黄色いのが特徴。ふつうの「蝋梅」は内側がちょっと赤っぽい。葉っぱは、ふつう花が咲く前に落葉するが、開花時にまだ残っていて徐々に落葉する場合もあるようだ。表面はザラザラした感触。花のあとでできる実は、なんともユニークな形。花の姿からは想像できない。マンゲツロウバイ(満月蝋梅)、トウロウバイ(唐蝋梅)などの栽培品種がある。1月27日の誕生花。花言葉は「先導、先見」。

◇生活する花たち「冬桜・水仙・万両」(横浜日吉本町)

12月31日(水)

 横浜日吉本町・金蔵寺
★除夜の鐘鳴りはじめなる一の音  正子
年越しの準備も整い、家族がくつろいで新しい年を迎えようとするとき、近くのお寺から除夜の鐘がかすかに聞こえてきます。その一の音。すると家の外も中も、いっそうの静寂に包まれます。年を送り新たな年を迎え、また今あることの意味合いをしみじみと思います。(小西 宏)

○今日の俳句
乗り換えの国ざかい駅雪深し/福田ひろし
乗り換えで立ち降りた駅は国ざかい。思わぬ雪の深さに、国を境に、こんなにも雪の降りようが違うものかと感慨も深む。(高橋正子)

○ユズリハ

[ユズリハ/横浜日吉本町]

★楪のしきりに殖ゆる古葉かな/原石鼎
★楪の日本の家明るき日/高島茂
★父とかはす年賀短かし共に主/高島茂
★枯れ落ちた楪の葉は一年目 琴姫
★楪の葉のいれかはり新成人 征夫
★楪の赤きところが見ゆる庭/高橋正子

ユズリハ(楪、交譲木または譲葉、学名:Daphniphyllum macropodum)は、ユズリハ科ユズリハ属の常緑高木。古名はユズルハ。雌雄異株。高さは10mほど。葉は長さ20cmほどで枝先にらせん状につく。花には花被がなく、葉腋から総状花序を出す。花の形態がトウダイグサ科に似るので古くはトウダイグサ科に含められたが、心皮が2個(トウダイグサ科は3個)などの違いから独立のユズリハ科(Daphniphyllaceae)とされた。APG分類体系ではユキノシタ目に入れられている。ユズリハの名は、春に枝先に若葉が出たあと、前年の葉がそれに譲るように落葉することから。その様子を、親が子を育てて家が代々続いていくように見立てて縁起物とされ、正月の飾りや庭木に使われる。クマリン系アルカロイドのダフニクマリンを含み、中毒の原因となる。日本では、本州の福島県以西、四国、九州、沖縄に、アジアでは、韓国、中国中部まで分布し、暖地の山地に自生する。

◇生活する花たち「柊・茶の花・錦木紅葉」(横浜日吉本町)