◆立春ネット句会◆
ご挨拶(高橋正子/主宰)
今日、立春は、横浜はよい天気に恵まれました。全国的にもよい天気でしたのでしょうか。立春の夜は満月ということでしたが、曇ってしまいました。それでも、匂やかな春立つ日となりました。入賞の皆様、大変おめでとうございます。今回は、参加者が14名で多少、少ない感じですが、オフで、松山や砥部の自宅で句会をしていたときは、二間続きの座敷は満室で、大変にぎやかなことでした。そんなことを懐かしく今日は思い出しました。午後、用事で明治神宮の表参道まで行きましたが、日曜日かと思うような人出でした。若い人たちが、バレンタインの洒落たチョコレートを売る店や、ポップコーンを売る店に行列を作っていました。春だなあ、と思わずにはおれませんでした。皆様の句からもうきうきした気分が伝わって、ことのほか、楽しい気持ちになりました。
投句に始まり、選とコメントをありがとうございました。信之先生には、句会の管理運営を、洋子さんには、互選の集計をお願いいたしました。どうも、お世話をありがとうございました。これで、立春句会をおわります。3月はひな祭り句会となります。
■立春ネット句会入賞発表■
■立春ネット句会■
■入賞発表/2015年2月4日■
【金賞】
★明日寒明け青空市に花並ぶ/祝恵子
明日は寒が明ける。暦の上のことであるが、「寒明け」には、厳しい寒さに耐えたことから解放される喜びがある。青空市には、とりどりの花が並び、春はそこに来ているではないか。(高橋正子)
【銀賞2句】
★梅咲いて軽き会釈の行き交える/藤田洋子
寒い中にも梅が咲き、あたりにも日差しがこぼれる。行き交う人も軽く会釈をして、微笑んで行き過ぎる。梅の花が咲くころの軽さに、暖かい瀬戸内の早春を思い出す。(高橋正子)
★靴紐を締めて春立つ山に入る/多田有花
「春立つ山」が清新。靴紐をしっかり締めて、心を引き締め、心新たに山に入る。「春立つ」喜び。(高橋正子)
【銅賞3句】
★立春や子等のあいさつ歯切れよし/井上治代
「立春」の声を聞けば、厳しい寒さから解放された嬉しさが先に立つ。人も活動的になる感じだ。子どもたちの挨拶もはきはきと歯切れがよい。子供たちへの眼差しがあたたかい。(高橋正子)
★雪掘りて得し蕗の芽の青さかな/内山富佐子
まだ雪深いけれど、もしかして蕗の芽が出ているかもしれないと、雪を掘り、掘り当てた時の嬉しさ。雪の中の「青さ」が一入目に染みる。(高橋正子)
★夕映えを梅の蕾も受けとめる/川名ますみ
日がずいぶん永くなった。夕映えの光が長く、沈み惜しむかのように梅の蕾に届く。梅のつぼみも、日ごと暖かさに開くばかりになったいる。(高橋正子)
【高橋信之特選/8句】
★厨房の隅まで磨き春迎う/内山富佐子
未だ寒い日々ながら日毎に日脚も伸び、とうとう立春を迎えた。暦の上とは言え、立春を迎えればこれからは日毎に暖かくなるのだと思えば、自ずと厨房まで磨き上げたくなる主婦ならではの心弾む思いである。(桑本栄太郎)
★靴紐を締めて春立つ山に入る/多田有花
春だ! しっかりと足元を整えてまだ雪も残っているであろう山に向かおう。浮き立つような清冽な雰囲気が伝わってきます。「春立つ山」がいいですね。(河野啓一)
★梅咲いて軽き会釈の行き交える/藤田洋子
梅が咲き芳香を嗅げば、春の訪れを感じ、寒さで萎縮した心身を軽くしてくれるようです。人の往来も少しずつ増え、微笑が行き交う温かい情景が感じられます。 (柳原美知子)
★春立ちて鳥跳ねている塀の上/柳原美知子
春が近づくと鳥たちの活動も活発になってきます。高い鳴き声が聴こえたり、木から木へ飛び移り木の実をつついたりしている様子を見かけます、立春の日に鳥が嬉しそうに跳ねている姿は可愛いかったことでしょう。(井上治代)
★立春や子等のあいさつ歯切れよし/井上治代
立春ともなれば、全てが明るくなる。登校、あるいは下校の子等のあいさつは、明るく、そして歯切れよし、である。(高橋信之)
★米櫃のかろき音たて春迎う/桑本栄太郎
「米櫃」といえば、母を思う。幼き頃の母であり、厨の母に纏いついていた幼き頃の私である。(高橋信之)
★節分や一人の豆撒き丁寧に/井上治代
家人の居ない節分の夜、お一人なればこそ念入りに撒く年の豆に、家内の幸を願う気持ちが込められているようです。季節の行事を大切になされ、丁寧な日々のお暮らしがうかがえます。(藤田洋子)
★明日寒明け青空市に花並ぶ/祝恵子
【高橋正子特選/8句】
★雪掘りて得し蕗の芽の青さかな/内山富佐子
見当を付けてあったのでしょう。掘り出した雪の中に、青き蕗の薹を見つけた喜びが伝わってまいります。 (祝恵子)
★靴紐を締めて春立つ山に入る/多田有花
春を迎えたばかりの山に、気を引き締めてこれから入るという思いが伝わってきます。 (高橋秀之)
★明日寒明け青空市に花並ぶ/祝恵子
明日は、嬉しい「寒明け」で、「寒の時期が終わって、立春となる」のである。「青空市に花並ぶ」であれば、明日の寒明けは、明るくて、なおのこと嬉しい。(高橋信之)
★梅咲いて軽き会釈の行き交える/藤田洋子
梅咲いて、その下での「軽き会釈」は、春近しの軽く明るい風景だ。(高橋信之)
★春北風やはるか鞍馬の峰白く/桑本栄太郎
春を迎えた京都。まだ北風が冷たく、遠く仰ぐ鞍馬の山は雪化粧をしています。「鞍馬」という地名が句に広がりを与えました。春らしい暖かい日を待ち望みながら、峯の雪を仰ぐのも京都らしい暮らしの一こまです。(多田有花)
1月半ばの歩き会で京都を囲った峰峰の冠雪を見ました。まだ残っているのですね。春が待ち遠しい京の街です。(祝恵子)
★梅一輪の位置定まりて青空に/高橋信之
伸びた枝の中でひとつの花が開き始めました。それによって、枝も景色もしっかりとした焦点を得ました。梅が咲き始める頃の明るくきりっとひきしまった空気が思われます。(多田有花)
未だ寒さ厳しいながらも、水色の空に梅が一輪咲き綻びました。大きく広がる青空の下から梅の木を眺めれば、先初めのたった一輪の梅はその所を得た。確かなる梅の咲き初めの情景がよく捉えられている。(桑本栄太郎)
★夕映えを梅の蕾も受けとめる/川名ますみ
おそらく鉢梅の夕景と想われますが、今日か明日かと梅の開花を待ち望んでいる作者が想われる。蕾の開花を待ちながら、暖かい春を待っている心情がよく窺える。(桑本栄太郎)
★立春や子等のあいさつ歯切れよし/井上治代
【入選/6句】
★春立ちて明日香の里の鳥の声/河野啓一
春を待っていた鳥の声が明るく響き、のどかな明日香の風景が広がっています。これから少しずつ暖かくなっていくのを楽しみにしている、作者の様子を思い浮かべることができました。 (井上治代)
★いつしかに花器の柳の枝芽吹き/柳原美知子
断ち切られた柳の枝でも春が来ればちゃんと芽吹く。自然の命の確かさを感ずる一句です。 (内山富佐子)
★人やさし山河うるわし国建つ日/河野啓一
建国記念の日、人に恵まれ、美しい自然に恵まれ、日本のよさを再認識いたします。国を愛する心、未来への願いが感じとれます。 (藤田洋子)
★立春の朝に新しい服おろす/高橋秀之
まだ寒さが残っていても、立春という言葉を聞いただけでうきうきしてきます。新しい服を着て颯爽と歩いてみたい気持ちがよく分かります。(井上治代)
★青空を映してつづく雪の道/迫田和代
青空のもと、日に輝く雪の道が清々しく美しいかぎりです。寒さの中にも、春の兆しが感じる情景に心明るくなれます。(藤田洋子)
★噴煙の南へ流る余寒かな/小口泰與
「噴煙の南へ流る」であれば、北風吹く「余寒」である。「南へ」という言葉がいい。一句の中で詩の言葉となった。(高橋信之)
■選者詠/高橋信之
★梅の香につつまれ歩く幸せに
実感です。梅の高雅な香りにつつまれて歩ける幸せ いろいろ考えながら。素適な一時ですね。 (迫田和代)
★冬芽空へ空へ確とした意思がある
冬芽が空へとのびている、空へ空へと重ねたことで冬芽たちが意思を持って、大空に向かって伸びている姿が見てとれるようです。(祝恵子)
★梅一輪の位置定まりて青空に
■選者詠/高橋正子
★くらがりを戻りて暗きへ豆を打つ
節分の夜、家の隅々まで豆を打ちます。今は人が居ない、灯りの消えた部屋も、念入りに。ほの暗い廊下を行きつ戻りつ鬼遣らいをなさる、ご家族を想うお気持ちが、温かく沁み入ります。(川名ますみ)
節分は立春の前の夜をさし、豆まきは夜におこなうのが本来の姿とか。「くらがりを戻りて暗きへ」という繰り返しが面白く、昔から続く豆まきの習俗の姿が浮かび上がってきます。邪気を払う祈り、願いの姿です。 (多田有花)
★夕べの月しろじろ年の豆を打つ
夕べの「月」が昇れば、「豆を打つ」ことも、日本の風景らしい、昔からの親しみを感じる。「豆を打つ」ことは、日本の今の日常であるが、日本の原初からの風景に思える。(高橋信之)
★立春の窓から強き朝が来る
■互選高点句
●最高点(9点)
★靴紐を締めて春立つ山に入る/多田有花
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。
◆立春ネ ット句会清記◆
立春ネット句会清記
01. 米櫃のかろき音たて春迎ふ
02. 枝つたうように芽吹きやゆきやなぎ
03. 春北風やはるか鞍馬の峰白く
04. 立春の朝の玄関豆のあと
05. 立春の朝に新しい服おろす
06. 明るさを感じる朝に春立てり
07. 節分の豆香ばしや雀翔つ
08. 梅が香や朝日賜わる榛名富士
09. 噴煙の南へ流る余寒かな
10. 明日寒明け青空市に花並ぶ
11. 立春や求めし苗を朝植ゆる
12. 春に入る登校児童の列のゆく
13. 青空を映してつづく雪の道
14. 春なのに黄身盛り上がる卵かな
15. 川流れ何故か嬉しい春らしさ
16. 春立ちて明日香の里の鳥の声
17. 白梅のふくらみ嬉し空の青
18. 人やさし山河うるわし国建つ日
19. 厨房の隅まで磨き春迎ふ
20. 雪掘りて得し蕗の芽の青さかな
21. 寒明けの風鴨の首伸ばしけり
22. 寒明けの葉蘭青々朝の照り
23. 梅咲いて軽き会釈の行き交える
24. 青空に花芽広げて梅の畑
25. チチチチと朝の目ざまし春の鳥
26. 立春や子等のあいさつ歯切れよし
27. 節分や一人の豆撒き丁寧に
28. 立春の朝のしばしの二度寝かな
29. 靴紐を締めて春立つ山に入る
30. 梅が枝は陽のさす方へ伸びている
31. 夕べの月しろじろ年の豆を打つ
32. くらがりを戻りて暗きへ豆を打つ
33. 立春の窓から強き朝が来る
34. 冬芽空へ空へ確とした意思がある
35. 梅の香につつまれ歩く幸せに
36. 梅一輪の位置定まりて青空に
37. 臘梅の陽に白みいる昼下がり
38. しら梅の空をそよがし咲きそめり
39. 夕映えを梅の蕾も受けとめる
40.春立ちて鳥跳ねている塀の上
41.いつしかに花器の柳の枝芽吹き
42.里の湯屋手仕事豊かに吊るし雛
◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、2月4日(水)午後7時から始め、同日(2月4日)午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、2月5日(木)正午
※2) 伝言・お礼等の投稿は、2月5日(木)正午~2月7日(土)午後6時です。
2月4日(水)/立春
★立春のピアノの弦のすべてが鳴る/高橋正子
春を迎える日の窓に聞こえてくるピアノ曲の軽やかな旋律を想像いたします。音階を緩急自在に走りゆき、和音をのびやかに膨らませて、すべての弦がふるえ響き、春到来を喜んでいるようです。(小西 宏)
○今日の俳句
枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
枝に止まった鳥が、枝移りをするのか枝が揺れる。それを見ていると、光も揺らしているのだ。枝を張る陽光に満ちた木、枝移りする鳥が、なんと早春らしいことよ。(高橋正子)
○立春
★立春の米こぼれをり葛西橋/石田波郷
★立春の海よりの風海見えず/桂 信子
★立春の夜道どこからか水の匂い/高橋信之(昭和四十八年作)
「立春」と聞くと、それだけで気持ちがほぐれる。厳しい冬の寒さと別れ、いよいよ春になる。夜道を歩けば、どこからか水の匂いがする。小川の流れか、水はいち早く温み始めたのだろう。夜道の暗さに水の匂いが春のはなやぎのように感じられる。(高橋正子)
陰暦では、1年360日を二十四気七十二候に分けたが、立春はその二十四気の一つで、陽暦では2月4日か5日、節分の翌日に当たる。節分は冬の季語となっている。節分を境に翌日は春となる。あくまでも暦の上だが、この切り替えがまた、人の心の切り替えにも役立って、立春と聞くと見るもの聞くものが艶めいて感じられる。冬木もいよいよ芽を動かすのだろうと思う。寒禽と呼ばれていた鳥も鳴き声がかわいらしく聞こえる。
★立春の朝は襖の白に明け/高橋正子
★立春の朝のデージー鉢いっぱい/高橋句美子
○梅
[白梅/横浜日吉本町(2013年2月3日)]_[紅梅/横浜日吉本町(2013年2月3日)]
★梅白しきのふや鶴をぬすまれし 芭蕉
★白雲の竜をつつむや梅の花 嵐雪
★とぼとぼと日は入切て梅の花 杉風
★からからと猫のあがるやむめの花 許六
★山里や井戸のはたなる梅の花 鬼貫
★手折らるる人に薫るや梅の花 千代女
★此村に一えだ咲きぬ梅の華 也有
★二もとの梅に遅速を愛す哉 蕪村
梅の開花前線
和歌山県南部に位置する月向農園では、1月下旬~2月に梅が開花します。南北になが~い日本列島!あなたの処ではいつ頃かな?梅は百花に先駆けて咲き、桜などに比べ休眠が浅いために開花時期が天候によって大きく左右されます。
高温・適湿・多照の年は開花時期が早まり、乾燥の激しい年や気温の低い年はやや遅くなります。また、品種によって多少差があります。寒い中、いち早く春の訪れを知らせる梅の花は、1月下旬~5月上旬まで、約3ヶ月間かけて、ゆっくりと日本列島を北上します。
2月3日(火)/節分
★節分寺裏山までも清められ 正子
季節の節目、特に冬を送って春を迎える節分は気分が新たになります。節分にあたり、寺域を清められたお寺の清々しいたたずまいが目に浮かびます。 (多田有花)
○今日の俳句
朝霜に木を切る音の響きおり/多田有花
朝の霜がまだあるうちから、木を切る仕事が始まっている。霜に響く木を切る音が力強い。(高橋正子)
○柊挿す(ひいらぎさす)・柊鰯
[柊/横浜日吉本町] [柊鰯/ネットより]
★かきけむりけり節分の櫟原/石田波郷
★節分の火の粉を散らす孤独の手/鈴木六林男
★節分の豆がひしめく子の拳/高橋信之
★柊さすはてしや外の浜びさし 蕪村
★柊をさすや築地の崩れまで 蝶夢
★猫の子のざれなくしけりさし柊 一茶
★古りし宿柊挿すをわすれざり/水原秋桜子
★烈風の戸に柊のさしてあり 石橋秀野
★宵闇のどこかが匂い豆を撒く/高橋正子
★節分寺五色の幕が風孕み/高橋正子
午後、スニーカーを買いに日吉駅あたりへ出かけた。スニーカーは、同じものばかり履くので、1年半ぐらいで破れてしまう。アーバントラッドという、オーソドックスなのを一足買った。日吉まで歩いて出かけたが、途中日吉2丁目の金蔵寺の境内を通り抜けていった。お寺には節分のためか、五色の幕が張り巡らされていた。豆撒きがあるにかなとも思ったがしずかだった。日吉からの帰り、また境内を通ったが、4時半ごろ、五色の幕は外されて、いつもの寺になっていた。豆撒きをした気配はなかった。
昔は四季の移り目をそれぞれ節分といったが、今は立春の前日だけが節分と呼ばれる。冬の節から春の節に移る分岐点。この夜。寺社では悪魔を追い払い、春を迎える意味で追儺が行われる。民間でも豆を撒いたり、鰯の頭や柊を戸口に飾ったりする。
節分の夜の豆まきは、特に幼い子どもたちにとっては楽しい行事。なんしろ、悪い鬼を豆をぶつけてやっつけるのだから。「福は内、鬼は外」の「鬼は外」は、大人には闇にひそむ姿の見えない鬼へ向かっての礫投げ。戸口に飾る鰯の頭、柊も庶民らしい追儺のしつらい。「鰯の頭も信心から」ということわざもあるが、これはどこから出てきたのか。
柊挿す(ひいらぎさす)は、節分の夜、魔除(まよ)けのために、焼いた鰯(いわし)の頭を付けたヒイラギの枝を門口に挿し、臭いものや鋭くとがったもので悪魔払いをする風習。この、焼いた鰯の魔除けを「やいかがし」と言い、「焼き嗅し」が語原と言われている。
2月2日(月)
★枯木立星のあおさに揺れもせず 正子
冬になって、葉がことごとく落ちつくした落葉樹の群落の枯木立は真冬の厳しい夜の寒さにも負けず凛として立ちつくしている。雄々しい素敵な景ですね。(小口泰與)
○今日の俳句
群れ起つや羽音厳しき寒雀/小口泰與
小さい雀だが、一斉に群れて飛び立つときは、体に似合わないほどの音を立てる。「羽音厳しき」は、厳しい寒さのときだけに、強い実感となって一句となった。(高橋正子)
○老鴉柿(ロウヤガキ)
[老鴉柿/東京・小石川植物園(2013年1月20日)]
小石川植物園(2013年1月20日)
★寒天に散らばり朱し老鴉柿/高橋信之
(2013年1月20日、大寒であったが、信之先生が小石川植物園に花を探しに出掛けた。梅はまだであるし、大方は芽である。土佐水木の冬芽の明るい茶色に、土佐水木の淡い黄色の花が思い浮かんだ。冬の植物園でいちいち芽を探すには広すぎるのではと思われた。2008年の4月19日の小石川植物園吟行は、桜が散って、一面に桜蕊が降り重なって、踏めばやわらかなクッションとなって、足裏に応えてくれた。その記憶が今蘇った。
小石川植物園(2008年4月19日)
★やわらかに足裏に踏んで桜蘂/高橋正子
ロウヤガキ(老鴉柿、学名:Diospyros rhombifolia)は、中国原産のカキノキ属の植物。ツクバネガキ(衝羽根柿)とも呼ばれる。葉は丸味を帯びた菱形で、3月から4月頃に花を着ける。液果は小さく尖った楕円形状で、熟すと橙に色付く。株は雌雄異株で、着果には雄株が必要である。渋柿で食用には向かないが、盆栽や庭木として広く用いられている。日本への導入は遅く、第二次世界大戦中に京都府立植物園初代園長である菊地秋雄が持ち帰ったとされる。
▼東京大学・小石川植物園:
http://www.bg.s.u-tokyo.ac.jp/
2月1日(日)
★大寒の真青な空の実栴檀 正子
空は青空、そこに栴檀の実が高く沢山の実を付け残っている。大寒の空にも栴檀の実をみつけた楽しさ。 (祝恵子)
○今日の俳句
賑わいの境内冬芽あちこちに/祝恵子
賑わいは、前掲句「境内に人の溢れて初弘法」から初弘法と知れるが、そうした境内の賑わいの中に、冬芽もあちこちの木に育っている。冬芽も賑わいのひとつである。(高橋正子)
★立寒椿花の真中に日を受けし/高橋正子
★寒椿というや雪の公園に/高橋正子
寒椿(カンツバキ)は、ツバキ科ツバキ属の常緑低木で、山茶花(サザンカ)を母種としたカンツバキ群の園芸品種である。枝が横に広がる傾向がある。これに対して枝が上に伸びるものは、立寒椿(タチカンツバキ)といって区別をする。学名:Camellia x hiemalis cv. Tachikantsubaki(=Camellia sasanqua cv. Hiemalis)
サザンカとカンツバキの見分け方。(「ガーデニング – 教えて!goo」より):
どちらもかなりの近隣種ですので、これですという区別は難しいですね。というのも寒椿には二種類の系統があり、現在の主流は本来の寒椿(中国原産)とサザンカの交雑種である「寒椿群」という系統が一般に流通しています。交雑種ですのでどちらの血も流れていますのでますます見分けにくくなっているのは仕方がないことですね。さらに「寒椿群」はサザンカの一種として認知されています。 これはその学名からも理解できます。「Camellia sasanqua」です。この寒椿群はすべて立ち性(椿系)で通称はあなたがいうように立ち寒椿と言われています。 その品種の一つに「勘次郎」があります。一方、中国原産の「カンツバキ」は学名を「Camellia hiemalis」という冬咲きという名が学名についているとおり冬咲きで、その特徴は矮性であることです。種類は少なく、主に「獅子頭」というものが出回っているようです。 さらにこの「獅子頭」が前述した「寒椿群」のもとになったという複雑さがあります。つまりサザンカもカンツバキも同じ仲間と認識したほうが間違いありません。その違いはと言われれば、次のようにまとめることができます。<花の咲く時期>サザンカ→寒椿群(勘次郎)→カンツバキ(獅子頭)。*注意:サザンカにも春咲きが例外として存在します。<樹木の特徴>*サザンカ・寒椿群は、立ち性で、別名タチカンツバキ。*カンツバキは、矮性。サザンカと椿(春咲きの一般種)との顕著な違いは「毛の有無」です。 サザンカにのみ子房と新葉の葉と枝に微毛があります。これが見分け方ですね。
1月31日(土)
鎌倉・報国寺
★竹林に踏み入るところ冬椿 正子
冬の竹林は冷え切っている。そんな中へ入った時見つけた椿の紅。そういえば田舎の竹やぶにもあった風景。なんだか近づいてくる春の足音を聴くような句である。(古田敬二)
○今日の俳句
やや白く割れて万朶の梅つぼみ/古田敬二
寒中の寒さに堪えて咲く梅であるが、咲く兆しが見えると非常に嬉しい。白梅の蕾に白が認められる。しかも万朶の蕾に。待春の気持ちが明るくてよい。(高橋正子)
藁傘の中なる陰り寒牡丹/高橋正子
雪よりもはるかに透けて白牡丹/高橋正子
寒牡丹匂うは花を平らかに/高橋正子
寒牡丹開きし花は風を受く/高橋正子
黄の牡丹ほどよく開き描かれいる/高橋正子
銀杏をカンカン炒って大鉄鍋/高橋正子
寒中も繭玉掛けて酒屋の柱/高橋正子
○2013年の<俳句日記>より:
1月31日はまだ寒中であるから、寒中の鎌倉へ出掛けたいと思っていた。鶴岡八幡の寒牡丹、竹の寺で知られる報国寺の冬桜と冬椿、北鎌倉の東慶寺の水仙などを計画した。しかし、句集の編集などで、疲れ気味なので、八幡様と東慶寺の二つに絞って出掛けた。朝、9時半前に家を出て鎌倉に向かった。駅に着き、先ず鶴岡八幡へ。段葛(参道が一段高くなっている)を通ってお参りをし、おみくじを引き、句美子に開運の桜のお守りを買った。参道では、名物の銀杏を鉄鍋でカンカンと炒りながら売っていた。受験の合格祈願か、高校生や中学生であふれていた。神苑内の牡丹園へは、鑑賞券一人五百円を払って入園。寒中の牡丹は、咲くのもままならないのではと思ったが、ちょうど、見ごろを迎え咲き揃っていた。藁傘や傘に守られて疵もなく見事に咲いている。色は、牡丹色、白、ピンク、黄色などで色どりも豊か。牡丹をカメラに撮ろうとするが、藁傘の下では陰りがあったり、傘がないところは、日が当たりすぎたりして、明るさの調節が難しい。オートにしてかなりの枚数を撮った。撮り終わり休憩所で甘酒を頼んで一服。今日は牡丹だけで東慶寺へ行くのはやめた。帰り、参道前の鎌倉彫の店に見物に寄ったが、鎌倉彫の小さな二段重があったので衝動買いをしてしまった。それから、小町通りの入口の長嶋家で切山椒を買う予定で寄るが、出来上がりを待たねばならず、昼食を先に摂った。銀座ルノアールという鎌倉駅前の喫茶店で昼食。「フォレ」の蜂蜜とマスカルボーネと付けて食べるフランスパンを食べたが、美味。喫茶店を出て、長嶋家に切山椒を買いに行き、豊島屋で鳩サブレなどを買って、帰りの電車に乗った。今日は、寒牡丹を見る吟行となった。
▽正月牡丹(鎌倉・鶴岡八幡宮神苑ぼたん庭園):
http://okadosblog.blogspot.jp/2011/01/blog-post_4600.html
1月30日(金)
★竹林に踏み入るところ冬椿 正子
鎌倉の竹寺ともいわれる報国寺。見事な孟宗竹の竹林に入ろうとした時、凛と咲く冬椿との嬉しい出会い。寺苑の澄んだ空気の中、竹林との対比も鮮やかに、心洗われるような美しさの冬椿です。思いがけない冬椿の彩りは、深閑とした竹林を前に、ふと心和らぐあたたかさも感じられます。(藤田洋子)
○今日の俳句
葦原の枯れ尽くしても水の上/藤田洋子
「枯れ尽くしても水の上」は、意表をついて、新しい発見。蓮や菖蒲などは、枯れると茎や葉が折れて水に浸かってしまう。葦原の葦は、枯れながらもまっすぐに立ち、水には影を落とすのみ。なるほど、枯れ尽くしても水の上ある。(高橋正子)
○飯桐の実(いいぎりの実)
[飯桐の実/東京白金台・国立自然教育園]
★いゝぎりの実もて真赤な空ありぬ/飴山 実
★飯桐の実やどこまでも青き空/819maker
イイギリ(飯桐、学名:Idesia polycarpa)は、ヤナギ科(Salicaceae)イイギリ属(Idesia)の落葉高木。和名の由来は、昔、葉で飯を包んだため飯桐といわれる。果実がナンテンに似るためナンテンギリ(南天桐)ともいう。イイギリ属の唯一の種。
日本(本州以南)、朝鮮、中国、台湾に分布する。秋から冬に熟す多数の赤い果実が美しいので、栽培もされ、生け花や装飾にも使われる。雌雄異株。高さは15-20m。葉は互生、枝先に束性し、キリやアカメガシワに似て幅広い。葉柄は長く、先の方に1対の蜜腺がある(アカメガシワもこの点似ているが、蜜腺は葉身の付け根にある)。雄花も雌花も同じように黄緑色で3-5月頃咲き、円錐花序となり垂れ下がる。花弁はなく、萼片の数は5枚前後で一定しない。雄花には多数の雄蕊がある。雌花にも退化した雄蕊があり、子房上位。果実はブドウの房のように垂れ下がる。液果で直径1cmほど。熟すと真っ赤になり、多数の細かい種子を含む。果実は落葉後も長く残り、遠目にも良く目立つ。白実の品種もある。
▼朝日カルチャーセンター「カフェきごさい」より:
明るい朱色の房になって垂れ下がるいいぎりの実は、ひときわ華やかな晩秋を演出します。いいぎり(飯桐)と呼ばれるのは、昔その大きめの葉にご飯を包んだり、盛ったりしたからといわれています。日本の中でも西では(いとぎり)ともよばれるそうです。
南天桐という別名は、艶やかな丸い実が南天の実の色と形に似ているからでしょう。この実をつけている季節は、木が10数メートルに達する高さであることもあって一段と目立つのですが、それは人間だけでなく鳥とて同じ。遠くから実をながめて楽しもうと思っていた矢先、そこにあったはずの実が下がっていない!
―――花材として綺麗なままをとろうとすれば、そりゃできる限りの高さに鳥よけの網をかけて、実を守るしかないからねーーーいけばなの枝をたくさん扱っている花屋さんの話です。長ければ20センチ近くの房になり、実は秋が深くなるまで枝に残っています。大きな葉がなくなってしまえば、元の枝から切り取って水につけなくても、実は急に落ちたり、表面の皮がすぐにはしおれる事は少ないでしょう。こんな理由もあって、この時期の花展には花材としてよく見かけられます。
木肌は確かに桐に似ています。桐から下駄やたんすが作られるのは他の木と比べると軽めだからといわれますが、この南天桐も実がついているわりに、持ってみると想像していたより軽く感じられます。実に充分に陽が当たるように、という植物本来の持っている知恵でしょうか、枝は真っ直ぐ羽を広げたように伸びています。そこに下がる房の間隔は隣の房にあまり邪魔にならないよう、絡む事のないよう、うまく配置されているかのように見えてくるのです。
夏も終りのころのいいぎりを見た事があります。その緑の実からは、秋も深まったころの豪華に垂れ下がった姿はあまり想像できません。熟していないため実の形もほっそりとしています。でもこれはこれで面白く、魅力があります。朱赤ではなく白い実をつけた(いいぎり)もあるということですが 私はまだ見たことはありません。もしもこの時期、いいぎり南天を幸運にも見かけることができたら色と形をじっくり観察してみてください。毎日の散歩の途中、すこし首を伸ばして上をみて探してみてください。都会の真ん中でもいいぎりは意外と回りに見つかるかもしれません。鳥たちに先を越されなければ、ですが。(光加)
1月29日(木)
★あたらしき薪を傍積み暖炉燃ゆ 正子
暖炉の中の薪の炎がゆらゆらと燃え盛り、ほっこりとした優しい暖かさに包まれています。傍には新しく用意された薪も積まれ、一層何とも心豊かな安らぎを感じます。 (佃 康水)
○今日の俳句
満潮へ鴨の二陣の広く浮く/佃 康水
満ちて来る潮に向かって、二陣の鴨の群れが広がり浮かんでいる。豊かな潮と浮き広がる鴨の群れが色彩的にもよい風景である。(高橋正子)
★山茶花のこゝを書斎と定めたり/正岡子規
★山茶花は咲く花よりも散つてゐる/細見綾子
★山茶花の明るき日和たまはりぬ/稲畑汀子
「笑顔」という名前に思わず頬が緩む。「春山茶花」と呼ばれるものだが、花弁がひらひら砕けて、いかにも山茶花に系を引く花らしい。ピンク色で幼子の笑顔のような花だ。言葉として「笑顔」はあまりに俗すぎるが、幼子の笑顔ならば、許されよう。
▼大人のためのツバキ情報とホームページの作り方 by SeiSuzuk「つばきノート」より:
昔は、冬になると園芸雑誌に冬のツバキの特集があったが、現在ではツバキの記事はほとんど雑誌からなくなった。しかし、冬に大型の花が咲く花木はほとんどないので、ツバキが冬に咲く貴重な花木であることは変わりがない筈である。恐らくは、ツバキ園芸関係のオピニオン・リーダーがそうした熱意を失ったのかもしれない。
冬のツバキといえば、カンツバキの勘次郎が有名であるが、勘次郎の花期は12月から1月初旬であり、1月下旬には終わってしまう。冬に一番花が長い品種は笑顔である。笑顔はハルサザンカである。ツバキ愛好家はサザンカをやや別種扱いするが、ハルサザンカは、サザンカとツバキの交雑種とされ、広い意味ではツバキの品種となる。ツバキの多くの品種を発表している米国のヌチオ社も、また多くのサザンカ品種を販売しており、ユーレタイドは有名な品種である。ユーレタイドは花も多く優れた品種であるが、サザンカであるので花期は初冬までである。
庭に早春咲の花は多くは必要がないので、1本か2本あれば、冬の庭はにぎわうのである。笑顔は1月初旬から3月まで咲く、優れた品種であり、お奨めの品種である。他のハルサザンカより多花性で、大輪のピンクの鮮やかな花色は見事である。寒さで花弁が痛むことも少なく、花は咲き終わると落花するので、咲き終わった花が茶色く残ることはない。
ハルサザンカ類は、冬季の花木として再認識されてよいと思われる品種である。
▼旅行のクチコミサイト フォートラベル「あんみつ姫さん」より:
大船フラワーセンターの椿園に行ってみました。たくさんの椿・サザンカが花開いている中、「笑顔」という名前の、可愛らしい花がたくさん咲いていました。はるさざんか「笑顔」 ピンク色した大輪の花。その名のとおり、笑顔いっぱいで迎えてくれた気がします。そのほか、藪椿・侘び助・大輪の椿など、いつもはひっそりとした椿のブースですが、この時期だけは、紅やピンク・白などの花々を咲かせ、園内を歩く人をここに招き入れているようでした。