2月7日(土)

 東山・法然院
★春寒し木を打ち人を呼び出せり   正子
暦の上では春になったとはいえ、まだ肌に感じる空気は冷たい初春に、木を打つ音が山に響いています。今まで家のなか中心に静かに暮らしていた人々が、その音を聞き外に出てみようかという気持ちになっている情景でしょうか?これから、日に日に暖かくなり人々の暮らしにも活気が出てくることでしょう。(井上治代)

○今日の俳句
早も咲ける菜の花の丈低かりし/井上治代
春も暦ばかりと思えるのに、早も菜の花が咲いて黄色い光を返している。先駆けの菜の花らしく「丈低かりし」であって、実在感がある花となっている。(高橋正子)

○芽柳

[芽柳/横浜・四季の森公園(2012年1月26日)]_[芽柳/横浜・四季の森公園(2012年3月22日)]

★古川にこびて芽を張る柳かな 芭蕉
★ほつかりと黄ばみ出でたり柳の芽 暁台
★芽柳のおのれを包みはじめたる/後藤比奈夫
★芽柳や鶏飼ふ艀菜をきざむ/皆川盤水
★芽柳の色となりつゝ風と合ふ/稲畑汀子
★芽柳や傘さし上げてすれ違ふ/満田春日
★退屈なガソリンガール柳の芽/富安風生
★芽柳や声やはらかく遊びをり/遠藤千鶴羽
★東京の石神井恋し柳の芽/清水淑子

 めやなぎ(芽柳)とは、早春、芽の出始めた柳。芽吹き柳。芽張り柳。[季]春。《―の奥たのもしき風情かな/鬼貫》(三省堂 大辞林)
 ヤナギ(柳、英語: Willow)は、ヤナギ科 Salicaceae ヤナギ属 Salix の樹木の総称。世界に約350種あり、主に北半球に分布する。日本では、柳と言えば一般にシダレヤナギを指すことが多い。落葉性の木本であり、高木から低木、ごく背が低く、這うものまである。葉は互生、まれに対生。托葉を持ち、葉柄は短い。葉身は単葉で線形、披針形、卵形など変化が多い。雌雄異株で、花は尾状花序、つまり、小さい花が集まった穂になり、枯れるときには花序全体がぽろりと落ちる。冬芽は1枚のカバーのような鱗片に包まれ、これがすっぽりと取れたり、片方に割れ目を生じてはずれたりする特徴がある。これは、本来は2枚の鱗片であったものが融合したものと考えられる。果実はさく果で、種子は小さく柳絮(りゅうじょ)と呼ばれ、綿毛を持っており風に乗って散布される。 なお、中国において5月頃の風物詩となっており、古くから漢詩等によく詠み込まれる柳絮だが、日本には目立つほど綿毛を形成しない種が多い。
 日本では、柳といえば、街路樹、公園樹のシダレヤナギが代表的であるが、生け花では幹がくねったウンリュウヤナギや冬芽から顔を出す花穂が銀白色の毛で目立つネコヤナギがよく知られている。

◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)

2月6日(金)

★おしばなの紅梅円形にて匂う   正子
愛らしい紅梅を一輪、おしばなにしてみた。薄く広がって円形になった後でも、咲いていた時のように透き通って、香りが感じられるようだ。心嬉しい一句です。(河野啓一)

○今日の俳句
水音して箕面連山春浅し/河野啓一
「水音して・・春浅し」の感覚がいい。箕面連山を行くと、ころころと水音が絶えずしている。自然に身を入れると、確かに春が来ている。(高橋正子)

○2014年
横浜市の大倉山は梅林で有名。それほど広い梅林ではないが、東横線の日吉駅から二駅目にあるので、昨日2月5信之先生と散歩気分で出かけた。大倉山の梅林は北側にあるので、期待はしなかったが、木によっては満開になっていた。紅梅と白梅があって、そのまざり具合が快い絵のようになっている。梅見の人はほどんどいなく、熱心に写真を撮る人が数人いた程度で、静かに楽しめた。

大倉山へは以前は句会や吟行でよく出かけたが、しばらく来ていない。坂道の途中にベーカリーが出来ていて、「今日も元気にがんばっています!」とポップがあったので、入ってみた。若い人数人が楽しそうに働いて、作業場も見える。入口の吹きさらしのテーブルでは、コーヒーを飲みながら買ったパンを食べている人もいる。聞くとコーヒーは無料とのこと。みんなに倣ってコーヒーをいただいて、買ったパンを食べた。親切にも、ひざ掛けが置いてある。買ったパンは、粒あんパン、メロンパン、クロックムッシュ一個ずつ。二人分で、お土産の紅茶クッキー2枚も入れて720円。

○福寿草「秩父紅」

[福寿草「秩父紅」/横浜日吉本町]     [福寿草「秩父紅」/埼玉県皆野町「ムクゲ自然公園」(ネットより)]

★小さくても昇殿すなり福寿草 一茶
★暖炉たく部屋暖かに福寿草 子規
★一日の温さに開く福寿草/高橋正子
★福寿草紅色がちな花は光り/高橋正子

 フクジュソウ(福寿草、学名:Adonis ramosa)は、キンポウゲ科の多年草。春を告げる花の代表である。そのため元日草(がんじつそう)の別名を持つ。福寿草という和名もまた新春を祝う意味がある。正月にはヤブコウジなどと寄せ植えにした植木鉢が販売される。花言葉は永久の幸福、思い出、幸福を招く、祝福。

▼幻の福寿草「秩父紅」を訪ねて(ブログ「いったりきたり日記/2010年2月27日」より:
父からの誘いで埼玉県皆野町のムクゲ自然公園というところに行く。西武秩父駅前で午前10時に待ち合わせ、車で皆野町へ。とはいえムクゲは夏の花なので当然いま咲いているわけがない。今日の目的は「秩父紅」というここだけに咲く幻の福寿草。雨模様だったがしだいに晴れてきた。秩父紅は陽が当たらないと開かないそうだ。母がしきりに「わたしは晴れ女だから」と自慢する。ロウバイが咲いている。マンサクも咲いている。その先の山腹に一万株の秩父紅が植わっている。セイヨウミツバチがちらほら来ていた。半透明のデリケートな花弁と華やかな雄しべ。一般種の福寿草は目の覚めるような強烈イエロー。材木に生えていたきのこ。池で鳴いていたカジカガエル。カジカガエルの卵。公園案内所に戻って甘酒と目薬の木のお茶をごちそうになった。ここでは園内のハーブ園で栽培したハーブや、花の種や鉢植えの販売もしている。母は目薬の木のお茶を、私は古代米をおみやげに買い求めた。

◇生活する花たち「さんしゅゆの花蕾・節分草・満作」(横浜・四季の森公園)

2月5日(木)

★水掛けて春水かがやく仏なる  正子
温かい春の日、観音様をお訪ねになられ、柄杓で水を掛けお参りなされたのでしょうか。観音様は水に濡れる度に益々春の光りに輝きを増されて来ます。私達のこころまで洗われる様な光り輝くお姿を想像致します。(佃 康水)

○今日の俳句
野に覚めし淡きみどりや蕗のとう/佃 康水
「野に覚めし」によって、淡い蕗のとうのみどりが目に強く焼きつく。初めて見つけた蕗の董であろう。驚きと嬉しさを隠せない。(高橋正子)

○蕗の薹

[蕗の薹/横浜日吉本町]

★莟とはなれもしらずよ蕗のたう  蕪村
★ほろ苦き恋の味なり蕗の薹/杉田久女
★蕗の薹おもひおもひの夕汽笛/中村汀女
★猪を炙り蕗の薹まぶしかな/長谷川櫂
 
 蕗は菊科の多年草で山野に自生する。早春、新葉が出る前に根茎から卵の形をした緑色の花茎を出す。花茎は数枚の大きな鱗のような葉で包まれ、特有の香気とほろ苦い風味が喜ばれる。花がほうけたものを蕗の姑(ふきのしゅうとめ)という。 学名:Petasites japonicus、Petasites(ペタシテス)は、ギリシャ語の「petasos(つば広の帽子)」が語源で、葉が広く大きいところから。
 蕗の薹(ふきのとうは、蕗の花芽のことで、天ぷらにするとおいしい。花が咲く前の柔らかいうちがベスト(地面から出てきた直後ぐらいの状態のもの)。春の代表的な山菜。花が咲いてから、地下茎を通じてつながっている葉が大きく伸びて広がってくる。(花と葉が別々につく)。この”葉柄”(葉の茎の部分)がいわゆる「フキ」として食用になる。市販されているものはほとんどが「秋田フキ」と呼ばれる、葉柄2mほどの大型のもの。葉自体は円形。

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

◆ご挨拶/立春ネット句会◆


◆立春ネット句会◆
ご挨拶(高橋正子/主宰)
今日、立春は、横浜はよい天気に恵まれました。全国的にもよい天気でしたのでしょうか。立春の夜は満月ということでしたが、曇ってしまいました。それでも、匂やかな春立つ日となりました。入賞の皆様、大変おめでとうございます。今回は、参加者が14名で多少、少ない感じですが、オフで、松山や砥部の自宅で句会をしていたときは、二間続きの座敷は満室で、大変にぎやかなことでした。そんなことを懐かしく今日は思い出しました。午後、用事で明治神宮の表参道まで行きましたが、日曜日かと思うような人出でした。若い人たちが、バレンタインの洒落たチョコレートを売る店や、ポップコーンを売る店に行列を作っていました。春だなあ、と思わずにはおれませんでした。皆様の句からもうきうきした気分が伝わって、ことのほか、楽しい気持ちになりました。
投句に始まり、選とコメントをありがとうございました。信之先生には、句会の管理運営を、洋子さんには、互選の集計をお願いいたしました。どうも、お世話をありがとうございました。これで、立春句会をおわります。3月はひな祭り句会となります。

■立春ネット句会入賞発表■

■立春ネット句会■
■入賞発表/2015年2月4日■

【金賞】
★明日寒明け青空市に花並ぶ/祝恵子
明日は寒が明ける。暦の上のことであるが、「寒明け」には、厳しい寒さに耐えたことから解放される喜びがある。青空市には、とりどりの花が並び、春はそこに来ているではないか。(高橋正子)

【銀賞2句】
★梅咲いて軽き会釈の行き交える/藤田洋子
寒い中にも梅が咲き、あたりにも日差しがこぼれる。行き交う人も軽く会釈をして、微笑んで行き過ぎる。梅の花が咲くころの軽さに、暖かい瀬戸内の早春を思い出す。(高橋正子)

★靴紐を締めて春立つ山に入る/多田有花
「春立つ山」が清新。靴紐をしっかり締めて、心を引き締め、心新たに山に入る。「春立つ」喜び。(高橋正子)

【銅賞3句】
★立春や子等のあいさつ歯切れよし/井上治代
「立春」の声を聞けば、厳しい寒さから解放された嬉しさが先に立つ。人も活動的になる感じだ。子どもたちの挨拶もはきはきと歯切れがよい。子供たちへの眼差しがあたたかい。(高橋正子)

★雪掘りて得し蕗の芽の青さかな/内山富佐子
まだ雪深いけれど、もしかして蕗の芽が出ているかもしれないと、雪を掘り、掘り当てた時の嬉しさ。雪の中の「青さ」が一入目に染みる。(高橋正子)

★夕映えを梅の蕾も受けとめる/川名ますみ
日がずいぶん永くなった。夕映えの光が長く、沈み惜しむかのように梅の蕾に届く。梅のつぼみも、日ごと暖かさに開くばかりになったいる。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★厨房の隅まで磨き春迎う/内山富佐子
未だ寒い日々ながら日毎に日脚も伸び、とうとう立春を迎えた。暦の上とは言え、立春を迎えればこれからは日毎に暖かくなるのだと思えば、自ずと厨房まで磨き上げたくなる主婦ならではの心弾む思いである。(桑本栄太郎)

★靴紐を締めて春立つ山に入る/多田有花
春だ! しっかりと足元を整えてまだ雪も残っているであろう山に向かおう。浮き立つような清冽な雰囲気が伝わってきます。「春立つ山」がいいですね。(河野啓一)

★梅咲いて軽き会釈の行き交える/藤田洋子
梅が咲き芳香を嗅げば、春の訪れを感じ、寒さで萎縮した心身を軽くしてくれるようです。人の往来も少しずつ増え、微笑が行き交う温かい情景が感じられます。 (柳原美知子)

★春立ちて鳥跳ねている塀の上/柳原美知子
春が近づくと鳥たちの活動も活発になってきます。高い鳴き声が聴こえたり、木から木へ飛び移り木の実をつついたりしている様子を見かけます、立春の日に鳥が嬉しそうに跳ねている姿は可愛いかったことでしょう。(井上治代)

★立春や子等のあいさつ歯切れよし/井上治代
立春ともなれば、全てが明るくなる。登校、あるいは下校の子等のあいさつは、明るく、そして歯切れよし、である。(高橋信之)

★米櫃のかろき音たて春迎う/桑本栄太郎
「米櫃」といえば、母を思う。幼き頃の母であり、厨の母に纏いついていた幼き頃の私である。(高橋信之)

★節分や一人の豆撒き丁寧に/井上治代
家人の居ない節分の夜、お一人なればこそ念入りに撒く年の豆に、家内の幸を願う気持ちが込められているようです。季節の行事を大切になされ、丁寧な日々のお暮らしがうかがえます。(藤田洋子)

★明日寒明け青空市に花並ぶ/祝恵子

【高橋正子特選/8句】
★雪掘りて得し蕗の芽の青さかな/内山富佐子
見当を付けてあったのでしょう。掘り出した雪の中に、青き蕗の薹を見つけた喜びが伝わってまいります。 (祝恵子)

★靴紐を締めて春立つ山に入る/多田有花
春を迎えたばかりの山に、気を引き締めてこれから入るという思いが伝わってきます。 (高橋秀之)

★明日寒明け青空市に花並ぶ/祝恵子
明日は、嬉しい「寒明け」で、「寒の時期が終わって、立春となる」のである。「青空市に花並ぶ」であれば、明日の寒明けは、明るくて、なおのこと嬉しい。(高橋信之)

★梅咲いて軽き会釈の行き交える/藤田洋子
梅咲いて、その下での「軽き会釈」は、春近しの軽く明るい風景だ。(高橋信之)

★春北風やはるか鞍馬の峰白く/桑本栄太郎
春を迎えた京都。まだ北風が冷たく、遠く仰ぐ鞍馬の山は雪化粧をしています。「鞍馬」という地名が句に広がりを与えました。春らしい暖かい日を待ち望みながら、峯の雪を仰ぐのも京都らしい暮らしの一こまです。(多田有花)
1月半ばの歩き会で京都を囲った峰峰の冠雪を見ました。まだ残っているのですね。春が待ち遠しい京の街です。(祝恵子)

★梅一輪の位置定まりて青空に/高橋信之
伸びた枝の中でひとつの花が開き始めました。それによって、枝も景色もしっかりとした焦点を得ました。梅が咲き始める頃の明るくきりっとひきしまった空気が思われます。(多田有花)
未だ寒さ厳しいながらも、水色の空に梅が一輪咲き綻びました。大きく広がる青空の下から梅の木を眺めれば、先初めのたった一輪の梅はその所を得た。確かなる梅の咲き初めの情景がよく捉えられている。(桑本栄太郎)

★夕映えを梅の蕾も受けとめる/川名ますみ
おそらく鉢梅の夕景と想われますが、今日か明日かと梅の開花を待ち望んでいる作者が想われる。蕾の開花を待ちながら、暖かい春を待っている心情がよく窺える。(桑本栄太郎)

★立春や子等のあいさつ歯切れよし/井上治代

【入選/6句】
★春立ちて明日香の里の鳥の声/河野啓一
春を待っていた鳥の声が明るく響き、のどかな明日香の風景が広がっています。これから少しずつ暖かくなっていくのを楽しみにしている、作者の様子を思い浮かべることができました。 (井上治代)

★いつしかに花器の柳の枝芽吹き/柳原美知子
断ち切られた柳の枝でも春が来ればちゃんと芽吹く。自然の命の確かさを感ずる一句です。 (内山富佐子)

★人やさし山河うるわし国建つ日/河野啓一
建国記念の日、人に恵まれ、美しい自然に恵まれ、日本のよさを再認識いたします。国を愛する心、未来への願いが感じとれます。 (藤田洋子)

★立春の朝に新しい服おろす/高橋秀之
まだ寒さが残っていても、立春という言葉を聞いただけでうきうきしてきます。新しい服を着て颯爽と歩いてみたい気持ちがよく分かります。(井上治代)

★青空を映してつづく雪の道/迫田和代
青空のもと、日に輝く雪の道が清々しく美しいかぎりです。寒さの中にも、春の兆しが感じる情景に心明るくなれます。(藤田洋子)

★噴煙の南へ流る余寒かな/小口泰與
「噴煙の南へ流る」であれば、北風吹く「余寒」である。「南へ」という言葉がいい。一句の中で詩の言葉となった。(高橋信之)

■選者詠/高橋信之
★梅の香につつまれ歩く幸せに
実感です。梅の高雅な香りにつつまれて歩ける幸せ いろいろ考えながら。素適な一時ですね。 (迫田和代)

★冬芽空へ空へ確とした意思がある
冬芽が空へとのびている、空へ空へと重ねたことで冬芽たちが意思を持って、大空に向かって伸びている姿が見てとれるようです。(祝恵子)

★梅一輪の位置定まりて青空に

■選者詠/高橋正子
★くらがりを戻りて暗きへ豆を打つ
節分の夜、家の隅々まで豆を打ちます。今は人が居ない、灯りの消えた部屋も、念入りに。ほの暗い廊下を行きつ戻りつ鬼遣らいをなさる、ご家族を想うお気持ちが、温かく沁み入ります。(川名ますみ)
節分は立春の前の夜をさし、豆まきは夜におこなうのが本来の姿とか。「くらがりを戻りて暗きへ」という繰り返しが面白く、昔から続く豆まきの習俗の姿が浮かび上がってきます。邪気を払う祈り、願いの姿です。 (多田有花)

★夕べの月しろじろ年の豆を打つ
夕べの「月」が昇れば、「豆を打つ」ことも、日本の風景らしい、昔からの親しみを感じる。「豆を打つ」ことは、日本の今の日常であるが、日本の原初からの風景に思える。(高橋信之)

★立春の窓から強き朝が来る

■互選高点句
●最高点(9点)
★靴紐を締めて春立つ山に入る/多田有花

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

◆立春ネ ット句会清記◆

立春ネット句会清記

01. 米櫃のかろき音たて春迎ふ
02. 枝つたうように芽吹きやゆきやなぎ
03. 春北風やはるか鞍馬の峰白く
04. 立春の朝の玄関豆のあと
05. 立春の朝に新しい服おろす
06. 明るさを感じる朝に春立てり
07. 節分の豆香ばしや雀翔つ
08. 梅が香や朝日賜わる榛名富士
09. 噴煙の南へ流る余寒かな
10. 明日寒明け青空市に花並ぶ

11. 立春や求めし苗を朝植ゆる
12. 春に入る登校児童の列のゆく
13. 青空を映してつづく雪の道
14. 春なのに黄身盛り上がる卵かな
15. 川流れ何故か嬉しい春らしさ
16. 春立ちて明日香の里の鳥の声
17. 白梅のふくらみ嬉し空の青
18. 人やさし山河うるわし国建つ日
19. 厨房の隅まで磨き春迎ふ
20. 雪掘りて得し蕗の芽の青さかな

21. 寒明けの風鴨の首伸ばしけり
22. 寒明けの葉蘭青々朝の照り
23. 梅咲いて軽き会釈の行き交える
24. 青空に花芽広げて梅の畑
25. チチチチと朝の目ざまし春の鳥
26. 立春や子等のあいさつ歯切れよし
27. 節分や一人の豆撒き丁寧に
28. 立春の朝のしばしの二度寝かな
29. 靴紐を締めて春立つ山に入る
30. 梅が枝は陽のさす方へ伸びている

31. 夕べの月しろじろ年の豆を打つ
32. くらがりを戻りて暗きへ豆を打つ
33. 立春の窓から強き朝が来る
34. 冬芽空へ空へ確とした意思がある
35. 梅の香につつまれ歩く幸せに
36. 梅一輪の位置定まりて青空に
37. 臘梅の陽に白みいる昼下がり
38. しら梅の空をそよがし咲きそめり
39. 夕映えを梅の蕾も受けとめる
40.春立ちて鳥跳ねている塀の上

41.いつしかに花器の柳の枝芽吹き
42.里の湯屋手仕事豊かに吊るし雛

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、2月4日(水)午後7時から始め、同日(2月4日)午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、2月5日(木)正午
※2) 伝言・お礼等の投稿は、2月5日(木)正午~2月7日(土)午後6時です。

2月4日(水)/立春

★立春のピアノの弦のすべてが鳴る/高橋正子
春を迎える日の窓に聞こえてくるピアノ曲の軽やかな旋律を想像いたします。音階を緩急自在に走りゆき、和音をのびやかに膨らませて、すべての弦がふるえ響き、春到来を喜んでいるようです。(小西 宏)

○今日の俳句
枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
枝に止まった鳥が、枝移りをするのか枝が揺れる。それを見ていると、光も揺らしているのだ。枝を張る陽光に満ちた木、枝移りする鳥が、なんと早春らしいことよ。(高橋正子)

○立春
★立春の米こぼれをり葛西橋/石田波郷
★立春の海よりの風海見えず/桂 信子

★立春の夜道どこからか水の匂い/高橋信之(昭和四十八年作)
「立春」と聞くと、それだけで気持ちがほぐれる。厳しい冬の寒さと別れ、いよいよ春になる。夜道を歩けば、どこからか水の匂いがする。小川の流れか、水はいち早く温み始めたのだろう。夜道の暗さに水の匂いが春のはなやぎのように感じられる。(高橋正子)

陰暦では、1年360日を二十四気七十二候に分けたが、立春はその二十四気の一つで、陽暦では2月4日か5日、節分の翌日に当たる。節分は冬の季語となっている。節分を境に翌日は春となる。あくまでも暦の上だが、この切り替えがまた、人の心の切り替えにも役立って、立春と聞くと見るもの聞くものが艶めいて感じられる。冬木もいよいよ芽を動かすのだろうと思う。寒禽と呼ばれていた鳥も鳴き声がかわいらしく聞こえる。

★立春の朝は襖の白に明け/高橋正子
★立春の朝のデージー鉢いっぱい/高橋句美子

○梅

[白梅/横浜日吉本町(2013年2月3日)]_[紅梅/横浜日吉本町(2013年2月3日)]

★梅白しきのふや鶴をぬすまれし 芭蕉
★白雲の竜をつつむや梅の花 嵐雪
★とぼとぼと日は入切て梅の花 杉風
★からからと猫のあがるやむめの花 許六
★山里や井戸のはたなる梅の花 鬼貫
★手折らるる人に薫るや梅の花 千代女
★此村に一えだ咲きぬ梅の華 也有
★二もとの梅に遅速を愛す哉 蕪村

 梅の開花前線
 和歌山県南部に位置する月向農園では、1月下旬~2月に梅が開花します。南北になが~い日本列島!あなたの処ではいつ頃かな?梅は百花に先駆けて咲き、桜などに比べ休眠が浅いために開花時期が天候によって大きく左右されます。
 高温・適湿・多照の年は開花時期が早まり、乾燥の激しい年や気温の低い年はやや遅くなります。また、品種によって多少差があります。寒い中、いち早く春の訪れを知らせる梅の花は、1月下旬~5月上旬まで、約3ヶ月間かけて、ゆっくりと日本列島を北上します。

◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)

2月3日(火)/節分

★節分寺裏山までも清められ   正子
季節の節目、特に冬を送って春を迎える節分は気分が新たになります。節分にあたり、寺域を清められたお寺の清々しいたたずまいが目に浮かびます。 (多田有花)

○今日の俳句
朝霜に木を切る音の響きおり/多田有花
朝の霜がまだあるうちから、木を切る仕事が始まっている。霜に響く木を切る音が力強い。(高橋正子)

○柊挿す(ひいらぎさす)・柊鰯

[柊/横浜日吉本町]               [柊鰯/ネットより]

★かきけむりけり節分の櫟原/石田波郷
★節分の火の粉を散らす孤独の手/鈴木六林男
★節分の豆がひしめく子の拳/高橋信之
★柊さすはてしや外の浜びさし 蕪村
★柊をさすや築地の崩れまで 蝶夢
★猫の子のざれなくしけりさし柊 一茶
★古りし宿柊挿すをわすれざり/水原秋桜子
★烈風の戸に柊のさしてあり 石橋秀野

★宵闇のどこかが匂い豆を撒く/高橋正子
★節分寺五色の幕が風孕み/高橋正子

午後、スニーカーを買いに日吉駅あたりへ出かけた。スニーカーは、同じものばかり履くので、1年半ぐらいで破れてしまう。アーバントラッドという、オーソドックスなのを一足買った。日吉まで歩いて出かけたが、途中日吉2丁目の金蔵寺の境内を通り抜けていった。お寺には節分のためか、五色の幕が張り巡らされていた。豆撒きがあるにかなとも思ったがしずかだった。日吉からの帰り、また境内を通ったが、4時半ごろ、五色の幕は外されて、いつもの寺になっていた。豆撒きをした気配はなかった。

 昔は四季の移り目をそれぞれ節分といったが、今は立春の前日だけが節分と呼ばれる。冬の節から春の節に移る分岐点。この夜。寺社では悪魔を追い払い、春を迎える意味で追儺が行われる。民間でも豆を撒いたり、鰯の頭や柊を戸口に飾ったりする。
節分の夜の豆まきは、特に幼い子どもたちにとっては楽しい行事。なんしろ、悪い鬼を豆をぶつけてやっつけるのだから。「福は内、鬼は外」の「鬼は外」は、大人には闇にひそむ姿の見えない鬼へ向かっての礫投げ。戸口に飾る鰯の頭、柊も庶民らしい追儺のしつらい。「鰯の頭も信心から」ということわざもあるが、これはどこから出てきたのか。
 柊挿す(ひいらぎさす)は、節分の夜、魔除(まよ)けのために、焼いた鰯(いわし)の頭を付けたヒイラギの枝を門口に挿し、臭いものや鋭くとがったもので悪魔払いをする風習。この、焼いた鰯の魔除けを「やいかがし」と言い、「焼き嗅し」が語原と言われている。

◇生活する花たち「満作・立寒椿・蝋梅」(大船フラワーセンター)

2月2日(月)

★枯木立星のあおさに揺れもせず   正子
冬になって、葉がことごとく落ちつくした落葉樹の群落の枯木立は真冬の厳しい夜の寒さにも負けず凛として立ちつくしている。雄々しい素敵な景ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
群れ起つや羽音厳しき寒雀/小口泰與
小さい雀だが、一斉に群れて飛び立つときは、体に似合わないほどの音を立てる。「羽音厳しき」は、厳しい寒さのときだけに、強い実感となって一句となった。(高橋正子)

○老鴉柿(ロウヤガキ)

[老鴉柿/東京・小石川植物園(2013年1月20日)]

 小石川植物園(2013年1月20日)
★寒天に散らばり朱し老鴉柿/高橋信之

(2013年1月20日、大寒であったが、信之先生が小石川植物園に花を探しに出掛けた。梅はまだであるし、大方は芽である。土佐水木の冬芽の明るい茶色に、土佐水木の淡い黄色の花が思い浮かんだ。冬の植物園でいちいち芽を探すには広すぎるのではと思われた。2008年の4月19日の小石川植物園吟行は、桜が散って、一面に桜蕊が降り重なって、踏めばやわらかなクッションとなって、足裏に応えてくれた。その記憶が今蘇った。

 小石川植物園(2008年4月19日)
★やわらかに足裏に踏んで桜蘂/高橋正子

ロウヤガキ(老鴉柿、学名:Diospyros rhombifolia)は、中国原産のカキノキ属の植物。ツクバネガキ(衝羽根柿)とも呼ばれる。葉は丸味を帯びた菱形で、3月から4月頃に花を着ける。液果は小さく尖った楕円形状で、熟すと橙に色付く。株は雌雄異株で、着果には雄株が必要である。渋柿で食用には向かないが、盆栽や庭木として広く用いられている。日本への導入は遅く、第二次世界大戦中に京都府立植物園初代園長である菊地秋雄が持ち帰ったとされる。

▼東京大学・小石川植物園:
http://www.bg.s.u-tokyo.ac.jp/

◇生活する花たち「寒牡丹」(鎌倉・鶴岡八幡宮)

2月1日(日)

★大寒の真青な空の実栴檀   正子
空は青空、そこに栴檀の実が高く沢山の実を付け残っている。大寒の空にも栴檀の実をみつけた楽しさ。 (祝恵子)

○今日の俳句
賑わいの境内冬芽あちこちに/祝恵子
賑わいは、前掲句「境内に人の溢れて初弘法」から初弘法と知れるが、そうした境内の賑わいの中に、冬芽もあちこちの木に育っている。冬芽も賑わいのひとつである。(高橋正子)

○立寒椿

[立寒椿/大船フラワーセンター]

★立寒椿花の真中に日を受けし/高橋正子
★寒椿というや雪の公園に/高橋正子

 寒椿(カンツバキ)は、ツバキ科ツバキ属の常緑低木で、山茶花(サザンカ)を母種としたカンツバキ群の園芸品種である。枝が横に広がる傾向がある。これに対して枝が上に伸びるものは、立寒椿(タチカンツバキ)といって区別をする。学名:Camellia x hiemalis cv. Tachikantsubaki(=Camellia sasanqua cv. Hiemalis)
 サザンカとカンツバキの見分け方。(「ガーデニング – 教えて!goo」より): 
 どちらもかなりの近隣種ですので、これですという区別は難しいですね。というのも寒椿には二種類の系統があり、現在の主流は本来の寒椿(中国原産)とサザンカの交雑種である「寒椿群」という系統が一般に流通しています。交雑種ですのでどちらの血も流れていますのでますます見分けにくくなっているのは仕方がないことですね。さらに「寒椿群」はサザンカの一種として認知されています。 これはその学名からも理解できます。「Camellia sasanqua」です。この寒椿群はすべて立ち性(椿系)で通称はあなたがいうように立ち寒椿と言われています。 その品種の一つに「勘次郎」があります。一方、中国原産の「カンツバキ」は学名を「Camellia hiemalis」という冬咲きという名が学名についているとおり冬咲きで、その特徴は矮性であることです。種類は少なく、主に「獅子頭」というものが出回っているようです。 さらにこの「獅子頭」が前述した「寒椿群」のもとになったという複雑さがあります。つまりサザンカもカンツバキも同じ仲間と認識したほうが間違いありません。その違いはと言われれば、次のようにまとめることができます。<花の咲く時期>サザンカ→寒椿群(勘次郎)→カンツバキ(獅子頭)。*注意:サザンカにも春咲きが例外として存在します。<樹木の特徴>*サザンカ・寒椿群は、立ち性で、別名タチカンツバキ。*カンツバキは、矮性。サザンカと椿(春咲きの一般種)との顕著な違いは「毛の有無」です。 サザンカにのみ子房と新葉の葉と枝に微毛があります。これが見分け方ですね。

◇生活する花たち「寒牡丹」(鎌倉・鶴岡八幡宮)