2月12日(木)

★梅の花いつもきれいな青空に   正子
梅の開花を迎える今の時季は気候も定まらず、風がよく吹き、まさに吸い込まれそうな青空の事が多いようです。寒梅の折に見上げる空は、先ずきれいな青空があって、その青空を背景に梅見です。きれいな青空と梅の花の情景がよく想われ、寒梅を楽しまれた事でしょう。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
ぱつちりと土手にちらばり犬ふぐり/桑本栄太郎
犬ふぐりの花は、ぱっちりと開いた小さな青い瞳のようだ。土手に散らばって咲く姿がまた可憐である。(高橋正子)

○紅梅

[紅梅/横浜・四季の森公園]

★紅梅や見ぬ恋つくる玉すだれ 芭蕉
★紅梅や入日の襲ふ松かしは 蕪村
★紅梅や照日降日の中一日 暁台
★紅梅や大きな弥陀に光さす 太祇
★紅梅にほしておくなり洗ひ猫  一茶
★紅梅や雨のふりたるぬり盥 成美
★梅の中に紅梅咲くや上根岸 子規
★紅梅や文箱差出す高蒔絵 漱石
★紅梅や日和の影を雲の上/長谷川櫂
★坂下はすぐに汀や薄紅梅/小澤克己
★紅梅や湯上りの香の厨ごと/岡本眸
★紅梅に空あをくなれ青くなれ/林翔
★紅梅や庭に富士見の丘築き/宮津昭彦
★紅梅のつめたき枝をさしかはし/高田正子

四季の森公園へ行った帰り道、辛夷が無数に蕾を付ける街路樹のある歩道を脇に入ったところ。紅梅の匂いがした。紅梅のあることを知らなかった場所にこれも無数の蕾を付けた紅梅の木が立っている。二本。ふくよかな匂いがする。かすかに薔薇のような匂いがする。まじまじと見れば童女のようにあどけない。

★おしばなの紅梅円形にて匂う/高橋正子

 日記帳にひそかに挟み、忘れたころに見つかる。押し花になってもいい匂いがする。自分の、誰に見せるわけでもない小さな宝物である。

★紅梅咲く隣家に黒衣の人出入り/高橋正子
うららかな紅梅日和、法事があるのだろう。黒衣が日にきらめいていた。

 梅 (うめ、学名:Prunus mume)は、薔薇(ばら)科。開花時期は、1月中旬頃から咲き出すもの、3月中旬頃から咲き出すものなど、さまざま。漢名でもある「梅」の字音の「め」が変化して「うめ」になった。中国原産。奈良時代の遣隋使(けんずいし)または遣唐使(けんとうし)が中国から持ち帰ったらしい。「万葉集」の頃は白梅が、平安時代になると紅梅がもてはやされた。万葉集では梅について百首以上が詠まれており、植物の中では「萩」に次いで多い。別名は「好文木」(こうぶんぼく)、「木の花」(このはな)、「春告草」(はるつげぐさ)、「風待草」(かぜまちぐさ)。1月1日、2月3日の誕生花。花言葉は「厳しい美しさ、あでやかさ」
 ウメにまつわる言葉
 「桜伐(き)る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」 春先に咲く代表的な花である桜と梅のふたつを対比しつつ、栽培上の注意を示したもの。桜はむやみに伐ると切り口から腐敗しがちであり、剪定には注意が必要。一方、梅の樹は剪定に強く、むしろかなり切り詰めないと徒枝が伸びて樹形が雑然となって台無しになるばかりでなく、実の付き方も悪くなる。花芽は年々枝先へと移動する結果、実が付く枝は通常数年で枯れ込んでしまう。実の収穫を目的とするのであれば、定期的に枝の更新を図る必要があるからである。
 「東風(こち)吹かば にほひおこせよ梅の花 主なしとて 春な忘れそ」
 菅原道真が大宰府に左遷されるとき、道真の愛した庭の梅の花に別れを惜しんで詠んだ歌。後に庭の梅木が道真を追って大宰府に飛んできた、という「飛梅伝説」がある。
 「桃栗三年、柿八年、柚(ゆず)の馬鹿野郎十八年、梅はすいすい十六年」
 種を植えてから実を収穫できるまでの期間を指す俚謡。本来は「桃栗三年柿八年」で一つの諺。「物事は簡単にうまくいくものではなく、一人前になるには地道な努力と忍耐が必要だ」という教訓である。

◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)

2月11日(水)/建国記念の日

 東海道53次川崎宿
★下萌えの六郷川の水青し   正子
川崎宿を歩かれたのでしょうね。萌え出した草の柔らかさ、六郷川に流れる雪解けの清らな水、春が訪れた喜びを感じます。(祝 恵子)

○今日の俳句
もてなさる一つに椀のあさり汁/祝 恵子
もてなしの料理が並ぶなかの一つの椀があさり汁である。春らしい一椀に、ほっと気持ちが解きほぐされ、主客ともに春をいただく気持ちが湧く。(高橋正子)

○木蓮の花芽

[木蓮の花芽/横浜日吉本町(2014年1月28日)]_[木蓮の花/横浜日吉本町(2012年4月12日)]

★木蓮に日強くて風定まらず/飯田蛇笏
★遊雀木蓮の花芽毛皮の冬構え/遊雀

 モクレン(木蓮、木蘭、Magnolia quinquepeta もしくは Magnolia liliiflora、中国では、「辛夷」と表記する。)は、モクレン目モクレン科モクレン属の落葉低木。花が紫色であることから、シモクレン(紫木蓮)の別名もある。ハネズ、モクレンゲと呼ばれることもある。昔は「木蘭(もくらん)」と呼ばれていたこともあるが、これは花がランに似ていることに由来する。今日では、ランよりもハスの花に似ているとして「木蓮(もくれん)」と呼ばれるようになった。
 小型で樹高3-5m程度。葉は互生で、広卵型、長さ8-10cm、先は尖る。花期は春(4-5月頃)。花は濃い紅色から桃色で、花弁は6枚、がくは3枚、雄しべと雌しべは多数が螺旋状につく。上品な強い芳香を放つ。ハクモクレンとは異なり、花びらは舌状で長い。実は赤い。
 庭木、公園樹として中国、日本だけでなく、北米やヨーロッパ諸国で広く栽培されている。移植は困難であり、株分けによって殖やす。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)では国花に指定されている。
 ハクモクレン(白木蓮、学名:Magnolia heptapeta、シノニム:Magnolia denudata)はモクレンの仲間で白色の花をつける。しばしば、「モクレン」と混同され、そう呼ばれることがある。モクレン属の中では大型の種類で樹高は10-15m程度まで成長する、春、葉に先立って大形で白色の花が開く。

 今近隣では、冬の寒さを凌ぐため冬芽(ふゆめ、とうが)を形成し、じっと耐えている木々の姿をよく見かける。特に、木蓮などは、毛皮のようなもので芽を覆いしっかりと身を守っている。

◇生活する花たち「満作・椿・蝋梅」(神奈川・大船植物園)

2月10日(火)

★春浅し立ちたる草の鳴りづめに   正子
萌え出した草の上を風が渡っているのでしょうか。光からも音からも明るい春の景色がうかがえ、心楽しくなります。(多田有花)

○今日の俳句
沖よりも甍の光り春めけり/多田有花
海の沖を眺めると、冬の沖とは違って春めいて思えるだが、それよりも手前に眺める甍の光りの方が強く、遥かに春めいているのだ。日本の甍は、その季節、その日の光りを偽ることなく反射させる。今、春めいた陽光を反射させている。(高橋正子)

○赤花満作

[赤花満作/横浜・四季の森公園]

★満作咲く丘の麓の空晴れて/高橋信之
★満作のひらひら咲くや寒波来て/高橋正子
★森に咲く満作の枝横伸びに/高橋句美子
★作紅し森の階段森奥へ/高橋句美子

 アカバナマンサク(赤花満作、学名:Hamamelis japonica var.obtusata)は、マンサク科 マンサク属の落葉小高木。別名はベニバナマンサク(紅花満作)だが、あまり使われない。花弁が赤色のマンサクだが、外国種や交配種の赤花もアカバナマンサクという名前で表示されていたり、売られていたりする。分類的には、本来の”アカバナマンサク”は在来の”マンサクの変種のマルバマンサクの一つの品種”のことを指す。外国種や交配種には別の学名がつけられている。分布:本州の日本海側、樹高:3~8m、花期:2~3月、果期:9月
 落葉の小高木で落葉樹の多いところに生えている。マルバマンサクの品種で花弁全体が暗い赤色を帯びる。枯れ葉が枝に残っていることがある。葉は単葉で互生し、長さ5~11cm。幅3~7cm。葉の先が半円形の菱形状円形または広卵形で基部は左右の形がちがう。葉縁は先半分に波状の鋸歯があり、基部半分は全縁。果は直径1cmほどの卵状球形。熟すと2つに裂けて光沢のある黒い種子を2個はじきとばす。葉の展開に先立って花を咲かせ、花弁は4枚、煤けたような暗い赤色で、鮮やかな赤色ではない。黄色い縁取りがあり、長さ1~1.5cm。萼片も4枚ある。花は良い香りはせず、生臭い香りがかすかにする。

◇生活する花たち「さんしゅゆの花蕾・沈丁花の蕾・木瓜」(横浜日吉本町)

2月9日(月)

★梅の香を息に吸い込みあるきけり   正子
梅咲く中、馥郁と清らかな香りを「息に吸い込み」つつ、可憐な花と香りに春を感じる作者を思います。その心身の快さと自然との一体感に、早春のみずみずしさ、季節の喜びが感じ取れます。(藤田洋子)

○今日の俳句
街筋の昼月ほっと梅開く/藤田洋子
街筋の空を見上げれば、白く透明感のある昼の月が浮かんでいる。昼月を遠く梅が開いて、昼月と梅との美しい出会いがある。(高橋正子)

○満作

[ニシキマンサク/東大・小石川植物園]   [アテツマンサク/東大・小石川植物園]

★まんさくに水激しくて村静か/飯田龍太
★満作咲く丘の麓の空晴れて/高橋信之
★満作のひらひら咲くや寒波来て/高橋正子
★森に咲く満作の枝横伸びに/高橋句美子

 ニシキマンサク(錦満作、学名:Hamamelis japonica var. obtusata forma flavo-purpurascens)は、マンサク科 マンサク属の落葉小高木。分布:北海道の西南部、本州の東北地方から鳥取県の日本海側、樹高:5~6m、花期:2~3月仲間:マンサク、シナマンサク、マルバマンサク、アカバナマンサク、アテツマンサク等、同科トキワマンサク属:ベニバナトキワマンサク。多雪地の山地に生える日本在来種マルバマンサクの変種で、日本海側の山地に自生する。前年枝の葉腋から花柄を伸ばし黄色い花を咲かせる。他のマンサクの仲間と同様に、葉の展開より先に開花する。冬芽の表面は、褐色の毛で覆われている。葉は単葉で互生し、葉身は菱形状円形または広卵形で基部は左右の形がちがう。長さ5~11cm。葉縁の先端側に粗い波状の鋸歯があり、基部側は全縁。果実は果で、毛が生えた直径1cmほどの卵状球形、熟すと2つに裂け、光沢のある黒い種子を2個はじき出す。黄色い花弁の基部が、煤けたような、黒ずんだ赤色を帯びる。花弁は4枚あり、長さ1~1.5cm。
 アテツマンサク(阿哲満作、学名:Hamamelis japonica var. glauca)は、マンサク科 マンサク属の落葉小高木。アテツマンサクは中国地方から四国・九州に分布する落葉の小高木。暖帯の中・上部からブナ帯にかけての急傾斜地に生育する。雪の消えた頃から咲き始め、場所によっては2月の中頃から落葉樹林の中で、黄色い花を咲かせて、春の訪れを知らせている。花はおもしろい形であり、4枚のリボン状の花弁がよれて広がっている。アテツは最初に発見された岡山県阿哲地方を意味しており、マンサクは最初に咲くので、「まず咲く」であるともいうが、どうであろうか。満作とか、万作などの漢字をあてると、豊作を期待させるイメージになる。基本種であるマンサクは関東以西から九州に広く分布し、若葉の星状毛は早期に脱落するが、アテツマンサクは褐色の毛が残る点で区別される。

◇生活する花たち「クリスマスローズ・木瓜の蕾・枝垂れ梅」(横浜日吉本町)

2月8日(日)

★梅の花遠きに咲きて白さ満つ   正子
遠くの梅の木が、花を咲かせました。その白さは、遠景の中、発光するような耀きを以ち立っています。浅き春、白梅に満ちた汚れなさ、逞しさに、離れていても力を分かたれる感触を抱くこと、深く共感いたします。向こうに望む白梅は、希望そのものです。(川名ますみ)

○今日の俳句
水仙の低きに咲くを見つけたり/川名ますみ
この句の生命は「低きに咲く」にある。低いところは、木の下か、道の下か、幾分の湿りもあるだろう。そういったところに咲く水仙には、日向の水仙よりも陰影を帯びた魅力がある。(高橋正子)

○三椏の花蕾

[三椏の花蕾/横浜・四季の森公園]

★三椏や英国大使館鉄扉/佐藤鬼房
★三椏の花三三が九三三が九/稲畑汀子
★三椏の花に暈見て衰ふ眼/宮津昭彦
★三椏の花じやんけんを繰り返す 大串章
★いかるがの草は低さに花蕾/伊藤敬子
★花蕾立春の音たてている/ぽちこ

★三椏の花の蕾のその勢い/高橋信之

▼ブログ「古い日記の続きの日記 by kokoro-usasan」
 きょうもいい天気。庭では、すっかり葉を落とした三椏の木に、白い花蕾がたくさんの小さなぼんぼりのように愛らしくついている。これは不思議だったよ。だって、この木は暮れのある日まで、大ぶりの葉っぱがたくさん茂っていて、芽生え始めた花蕾を覆い隠すようにしていたのだもの。毎年、そういう営みをしているはずなのに、わたしは、そのへんの流れを記憶していなくて、あれぇ、三椏って、常緑樹だったけかなぁ、おかしいなぁ、葉っぱ落ちるよねぇ、これじゃ、花が咲いても見えないよねぇ、なんて訝しく思ってた。そうしたら、それから程ない年明けのある朝、あれだけたくさん茂っていた葉が一枚残らず、地面に落ちて、可愛い蕾たちだけが、裸木にいっぱい残されてたの。なんじゃ、こりゃ、だよ、ほんとに。笑。
 花芽が小さいうちは、大事に葉っぱで守っていたんだろか。葉っぱたちは、寒さのなか我慢に我慢を重ねて、花芽が、もう充分成形できてきたかねっていうころを見計らって、お日様の光が思う存分当たるように、一斉に落ちていったってことかな。ねぇ、ねぇ、そういうこと?って、霜柱の立った地面の上に落ちてる葉っぱを一枚拾い上げて訊いてみたけれど、何にも言わなかった。自然は人間と違って謙虚だからね。ふふ。
 三椏は地味な木だけれど、とてもユニークな花を咲かせる。色合いの変化も中々面白くて、おや、そうきますか?なんて、ちょっとからかいたくなっちゃう。この木は、以前は我が家にはなくて、父が亡くなる前年くらいに、まだしっかりしていた母が、ホームセンターで苗木を頼んで植樹したものだった。三椏を植えるんだと母に聞いたとき、わたしは内心、わ、うれしいなって思ったんだよね。なんでかっていうと・・・。(2013-01-25記)

◇生活する花たち「菜の花」(横浜日吉本町)

2月7日(土)

 東山・法然院
★春寒し木を打ち人を呼び出せり   正子
暦の上では春になったとはいえ、まだ肌に感じる空気は冷たい初春に、木を打つ音が山に響いています。今まで家のなか中心に静かに暮らしていた人々が、その音を聞き外に出てみようかという気持ちになっている情景でしょうか?これから、日に日に暖かくなり人々の暮らしにも活気が出てくることでしょう。(井上治代)

○今日の俳句
早も咲ける菜の花の丈低かりし/井上治代
春も暦ばかりと思えるのに、早も菜の花が咲いて黄色い光を返している。先駆けの菜の花らしく「丈低かりし」であって、実在感がある花となっている。(高橋正子)

○芽柳

[芽柳/横浜・四季の森公園(2012年1月26日)]_[芽柳/横浜・四季の森公園(2012年3月22日)]

★古川にこびて芽を張る柳かな 芭蕉
★ほつかりと黄ばみ出でたり柳の芽 暁台
★芽柳のおのれを包みはじめたる/後藤比奈夫
★芽柳や鶏飼ふ艀菜をきざむ/皆川盤水
★芽柳の色となりつゝ風と合ふ/稲畑汀子
★芽柳や傘さし上げてすれ違ふ/満田春日
★退屈なガソリンガール柳の芽/富安風生
★芽柳や声やはらかく遊びをり/遠藤千鶴羽
★東京の石神井恋し柳の芽/清水淑子

 めやなぎ(芽柳)とは、早春、芽の出始めた柳。芽吹き柳。芽張り柳。[季]春。《―の奥たのもしき風情かな/鬼貫》(三省堂 大辞林)
 ヤナギ(柳、英語: Willow)は、ヤナギ科 Salicaceae ヤナギ属 Salix の樹木の総称。世界に約350種あり、主に北半球に分布する。日本では、柳と言えば一般にシダレヤナギを指すことが多い。落葉性の木本であり、高木から低木、ごく背が低く、這うものまである。葉は互生、まれに対生。托葉を持ち、葉柄は短い。葉身は単葉で線形、披針形、卵形など変化が多い。雌雄異株で、花は尾状花序、つまり、小さい花が集まった穂になり、枯れるときには花序全体がぽろりと落ちる。冬芽は1枚のカバーのような鱗片に包まれ、これがすっぽりと取れたり、片方に割れ目を生じてはずれたりする特徴がある。これは、本来は2枚の鱗片であったものが融合したものと考えられる。果実はさく果で、種子は小さく柳絮(りゅうじょ)と呼ばれ、綿毛を持っており風に乗って散布される。 なお、中国において5月頃の風物詩となっており、古くから漢詩等によく詠み込まれる柳絮だが、日本には目立つほど綿毛を形成しない種が多い。
 日本では、柳といえば、街路樹、公園樹のシダレヤナギが代表的であるが、生け花では幹がくねったウンリュウヤナギや冬芽から顔を出す花穂が銀白色の毛で目立つネコヤナギがよく知られている。

◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)

2月6日(金)

★おしばなの紅梅円形にて匂う   正子
愛らしい紅梅を一輪、おしばなにしてみた。薄く広がって円形になった後でも、咲いていた時のように透き通って、香りが感じられるようだ。心嬉しい一句です。(河野啓一)

○今日の俳句
水音して箕面連山春浅し/河野啓一
「水音して・・春浅し」の感覚がいい。箕面連山を行くと、ころころと水音が絶えずしている。自然に身を入れると、確かに春が来ている。(高橋正子)

○2014年
横浜市の大倉山は梅林で有名。それほど広い梅林ではないが、東横線の日吉駅から二駅目にあるので、昨日2月5信之先生と散歩気分で出かけた。大倉山の梅林は北側にあるので、期待はしなかったが、木によっては満開になっていた。紅梅と白梅があって、そのまざり具合が快い絵のようになっている。梅見の人はほどんどいなく、熱心に写真を撮る人が数人いた程度で、静かに楽しめた。

大倉山へは以前は句会や吟行でよく出かけたが、しばらく来ていない。坂道の途中にベーカリーが出来ていて、「今日も元気にがんばっています!」とポップがあったので、入ってみた。若い人数人が楽しそうに働いて、作業場も見える。入口の吹きさらしのテーブルでは、コーヒーを飲みながら買ったパンを食べている人もいる。聞くとコーヒーは無料とのこと。みんなに倣ってコーヒーをいただいて、買ったパンを食べた。親切にも、ひざ掛けが置いてある。買ったパンは、粒あんパン、メロンパン、クロックムッシュ一個ずつ。二人分で、お土産の紅茶クッキー2枚も入れて720円。

○福寿草「秩父紅」

[福寿草「秩父紅」/横浜日吉本町]     [福寿草「秩父紅」/埼玉県皆野町「ムクゲ自然公園」(ネットより)]

★小さくても昇殿すなり福寿草 一茶
★暖炉たく部屋暖かに福寿草 子規
★一日の温さに開く福寿草/高橋正子
★福寿草紅色がちな花は光り/高橋正子

 フクジュソウ(福寿草、学名:Adonis ramosa)は、キンポウゲ科の多年草。春を告げる花の代表である。そのため元日草(がんじつそう)の別名を持つ。福寿草という和名もまた新春を祝う意味がある。正月にはヤブコウジなどと寄せ植えにした植木鉢が販売される。花言葉は永久の幸福、思い出、幸福を招く、祝福。

▼幻の福寿草「秩父紅」を訪ねて(ブログ「いったりきたり日記/2010年2月27日」より:
父からの誘いで埼玉県皆野町のムクゲ自然公園というところに行く。西武秩父駅前で午前10時に待ち合わせ、車で皆野町へ。とはいえムクゲは夏の花なので当然いま咲いているわけがない。今日の目的は「秩父紅」というここだけに咲く幻の福寿草。雨模様だったがしだいに晴れてきた。秩父紅は陽が当たらないと開かないそうだ。母がしきりに「わたしは晴れ女だから」と自慢する。ロウバイが咲いている。マンサクも咲いている。その先の山腹に一万株の秩父紅が植わっている。セイヨウミツバチがちらほら来ていた。半透明のデリケートな花弁と華やかな雄しべ。一般種の福寿草は目の覚めるような強烈イエロー。材木に生えていたきのこ。池で鳴いていたカジカガエル。カジカガエルの卵。公園案内所に戻って甘酒と目薬の木のお茶をごちそうになった。ここでは園内のハーブ園で栽培したハーブや、花の種や鉢植えの販売もしている。母は目薬の木のお茶を、私は古代米をおみやげに買い求めた。

◇生活する花たち「さんしゅゆの花蕾・節分草・満作」(横浜・四季の森公園)

2月5日(木)

★水掛けて春水かがやく仏なる  正子
温かい春の日、観音様をお訪ねになられ、柄杓で水を掛けお参りなされたのでしょうか。観音様は水に濡れる度に益々春の光りに輝きを増されて来ます。私達のこころまで洗われる様な光り輝くお姿を想像致します。(佃 康水)

○今日の俳句
野に覚めし淡きみどりや蕗のとう/佃 康水
「野に覚めし」によって、淡い蕗のとうのみどりが目に強く焼きつく。初めて見つけた蕗の董であろう。驚きと嬉しさを隠せない。(高橋正子)

○蕗の薹

[蕗の薹/横浜日吉本町]

★莟とはなれもしらずよ蕗のたう  蕪村
★ほろ苦き恋の味なり蕗の薹/杉田久女
★蕗の薹おもひおもひの夕汽笛/中村汀女
★猪を炙り蕗の薹まぶしかな/長谷川櫂
 
 蕗は菊科の多年草で山野に自生する。早春、新葉が出る前に根茎から卵の形をした緑色の花茎を出す。花茎は数枚の大きな鱗のような葉で包まれ、特有の香気とほろ苦い風味が喜ばれる。花がほうけたものを蕗の姑(ふきのしゅうとめ)という。 学名:Petasites japonicus、Petasites(ペタシテス)は、ギリシャ語の「petasos(つば広の帽子)」が語源で、葉が広く大きいところから。
 蕗の薹(ふきのとうは、蕗の花芽のことで、天ぷらにするとおいしい。花が咲く前の柔らかいうちがベスト(地面から出てきた直後ぐらいの状態のもの)。春の代表的な山菜。花が咲いてから、地下茎を通じてつながっている葉が大きく伸びて広がってくる。(花と葉が別々につく)。この”葉柄”(葉の茎の部分)がいわゆる「フキ」として食用になる。市販されているものはほとんどが「秋田フキ」と呼ばれる、葉柄2mほどの大型のもの。葉自体は円形。

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

◆ご挨拶/立春ネット句会◆


◆立春ネット句会◆
ご挨拶(高橋正子/主宰)
今日、立春は、横浜はよい天気に恵まれました。全国的にもよい天気でしたのでしょうか。立春の夜は満月ということでしたが、曇ってしまいました。それでも、匂やかな春立つ日となりました。入賞の皆様、大変おめでとうございます。今回は、参加者が14名で多少、少ない感じですが、オフで、松山や砥部の自宅で句会をしていたときは、二間続きの座敷は満室で、大変にぎやかなことでした。そんなことを懐かしく今日は思い出しました。午後、用事で明治神宮の表参道まで行きましたが、日曜日かと思うような人出でした。若い人たちが、バレンタインの洒落たチョコレートを売る店や、ポップコーンを売る店に行列を作っていました。春だなあ、と思わずにはおれませんでした。皆様の句からもうきうきした気分が伝わって、ことのほか、楽しい気持ちになりました。
投句に始まり、選とコメントをありがとうございました。信之先生には、句会の管理運営を、洋子さんには、互選の集計をお願いいたしました。どうも、お世話をありがとうございました。これで、立春句会をおわります。3月はひな祭り句会となります。

■立春ネット句会入賞発表■

■立春ネット句会■
■入賞発表/2015年2月4日■

【金賞】
★明日寒明け青空市に花並ぶ/祝恵子
明日は寒が明ける。暦の上のことであるが、「寒明け」には、厳しい寒さに耐えたことから解放される喜びがある。青空市には、とりどりの花が並び、春はそこに来ているではないか。(高橋正子)

【銀賞2句】
★梅咲いて軽き会釈の行き交える/藤田洋子
寒い中にも梅が咲き、あたりにも日差しがこぼれる。行き交う人も軽く会釈をして、微笑んで行き過ぎる。梅の花が咲くころの軽さに、暖かい瀬戸内の早春を思い出す。(高橋正子)

★靴紐を締めて春立つ山に入る/多田有花
「春立つ山」が清新。靴紐をしっかり締めて、心を引き締め、心新たに山に入る。「春立つ」喜び。(高橋正子)

【銅賞3句】
★立春や子等のあいさつ歯切れよし/井上治代
「立春」の声を聞けば、厳しい寒さから解放された嬉しさが先に立つ。人も活動的になる感じだ。子どもたちの挨拶もはきはきと歯切れがよい。子供たちへの眼差しがあたたかい。(高橋正子)

★雪掘りて得し蕗の芽の青さかな/内山富佐子
まだ雪深いけれど、もしかして蕗の芽が出ているかもしれないと、雪を掘り、掘り当てた時の嬉しさ。雪の中の「青さ」が一入目に染みる。(高橋正子)

★夕映えを梅の蕾も受けとめる/川名ますみ
日がずいぶん永くなった。夕映えの光が長く、沈み惜しむかのように梅の蕾に届く。梅のつぼみも、日ごと暖かさに開くばかりになったいる。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★厨房の隅まで磨き春迎う/内山富佐子
未だ寒い日々ながら日毎に日脚も伸び、とうとう立春を迎えた。暦の上とは言え、立春を迎えればこれからは日毎に暖かくなるのだと思えば、自ずと厨房まで磨き上げたくなる主婦ならではの心弾む思いである。(桑本栄太郎)

★靴紐を締めて春立つ山に入る/多田有花
春だ! しっかりと足元を整えてまだ雪も残っているであろう山に向かおう。浮き立つような清冽な雰囲気が伝わってきます。「春立つ山」がいいですね。(河野啓一)

★梅咲いて軽き会釈の行き交える/藤田洋子
梅が咲き芳香を嗅げば、春の訪れを感じ、寒さで萎縮した心身を軽くしてくれるようです。人の往来も少しずつ増え、微笑が行き交う温かい情景が感じられます。 (柳原美知子)

★春立ちて鳥跳ねている塀の上/柳原美知子
春が近づくと鳥たちの活動も活発になってきます。高い鳴き声が聴こえたり、木から木へ飛び移り木の実をつついたりしている様子を見かけます、立春の日に鳥が嬉しそうに跳ねている姿は可愛いかったことでしょう。(井上治代)

★立春や子等のあいさつ歯切れよし/井上治代
立春ともなれば、全てが明るくなる。登校、あるいは下校の子等のあいさつは、明るく、そして歯切れよし、である。(高橋信之)

★米櫃のかろき音たて春迎う/桑本栄太郎
「米櫃」といえば、母を思う。幼き頃の母であり、厨の母に纏いついていた幼き頃の私である。(高橋信之)

★節分や一人の豆撒き丁寧に/井上治代
家人の居ない節分の夜、お一人なればこそ念入りに撒く年の豆に、家内の幸を願う気持ちが込められているようです。季節の行事を大切になされ、丁寧な日々のお暮らしがうかがえます。(藤田洋子)

★明日寒明け青空市に花並ぶ/祝恵子

【高橋正子特選/8句】
★雪掘りて得し蕗の芽の青さかな/内山富佐子
見当を付けてあったのでしょう。掘り出した雪の中に、青き蕗の薹を見つけた喜びが伝わってまいります。 (祝恵子)

★靴紐を締めて春立つ山に入る/多田有花
春を迎えたばかりの山に、気を引き締めてこれから入るという思いが伝わってきます。 (高橋秀之)

★明日寒明け青空市に花並ぶ/祝恵子
明日は、嬉しい「寒明け」で、「寒の時期が終わって、立春となる」のである。「青空市に花並ぶ」であれば、明日の寒明けは、明るくて、なおのこと嬉しい。(高橋信之)

★梅咲いて軽き会釈の行き交える/藤田洋子
梅咲いて、その下での「軽き会釈」は、春近しの軽く明るい風景だ。(高橋信之)

★春北風やはるか鞍馬の峰白く/桑本栄太郎
春を迎えた京都。まだ北風が冷たく、遠く仰ぐ鞍馬の山は雪化粧をしています。「鞍馬」という地名が句に広がりを与えました。春らしい暖かい日を待ち望みながら、峯の雪を仰ぐのも京都らしい暮らしの一こまです。(多田有花)
1月半ばの歩き会で京都を囲った峰峰の冠雪を見ました。まだ残っているのですね。春が待ち遠しい京の街です。(祝恵子)

★梅一輪の位置定まりて青空に/高橋信之
伸びた枝の中でひとつの花が開き始めました。それによって、枝も景色もしっかりとした焦点を得ました。梅が咲き始める頃の明るくきりっとひきしまった空気が思われます。(多田有花)
未だ寒さ厳しいながらも、水色の空に梅が一輪咲き綻びました。大きく広がる青空の下から梅の木を眺めれば、先初めのたった一輪の梅はその所を得た。確かなる梅の咲き初めの情景がよく捉えられている。(桑本栄太郎)

★夕映えを梅の蕾も受けとめる/川名ますみ
おそらく鉢梅の夕景と想われますが、今日か明日かと梅の開花を待ち望んでいる作者が想われる。蕾の開花を待ちながら、暖かい春を待っている心情がよく窺える。(桑本栄太郎)

★立春や子等のあいさつ歯切れよし/井上治代

【入選/6句】
★春立ちて明日香の里の鳥の声/河野啓一
春を待っていた鳥の声が明るく響き、のどかな明日香の風景が広がっています。これから少しずつ暖かくなっていくのを楽しみにしている、作者の様子を思い浮かべることができました。 (井上治代)

★いつしかに花器の柳の枝芽吹き/柳原美知子
断ち切られた柳の枝でも春が来ればちゃんと芽吹く。自然の命の確かさを感ずる一句です。 (内山富佐子)

★人やさし山河うるわし国建つ日/河野啓一
建国記念の日、人に恵まれ、美しい自然に恵まれ、日本のよさを再認識いたします。国を愛する心、未来への願いが感じとれます。 (藤田洋子)

★立春の朝に新しい服おろす/高橋秀之
まだ寒さが残っていても、立春という言葉を聞いただけでうきうきしてきます。新しい服を着て颯爽と歩いてみたい気持ちがよく分かります。(井上治代)

★青空を映してつづく雪の道/迫田和代
青空のもと、日に輝く雪の道が清々しく美しいかぎりです。寒さの中にも、春の兆しが感じる情景に心明るくなれます。(藤田洋子)

★噴煙の南へ流る余寒かな/小口泰與
「噴煙の南へ流る」であれば、北風吹く「余寒」である。「南へ」という言葉がいい。一句の中で詩の言葉となった。(高橋信之)

■選者詠/高橋信之
★梅の香につつまれ歩く幸せに
実感です。梅の高雅な香りにつつまれて歩ける幸せ いろいろ考えながら。素適な一時ですね。 (迫田和代)

★冬芽空へ空へ確とした意思がある
冬芽が空へとのびている、空へ空へと重ねたことで冬芽たちが意思を持って、大空に向かって伸びている姿が見てとれるようです。(祝恵子)

★梅一輪の位置定まりて青空に

■選者詠/高橋正子
★くらがりを戻りて暗きへ豆を打つ
節分の夜、家の隅々まで豆を打ちます。今は人が居ない、灯りの消えた部屋も、念入りに。ほの暗い廊下を行きつ戻りつ鬼遣らいをなさる、ご家族を想うお気持ちが、温かく沁み入ります。(川名ますみ)
節分は立春の前の夜をさし、豆まきは夜におこなうのが本来の姿とか。「くらがりを戻りて暗きへ」という繰り返しが面白く、昔から続く豆まきの習俗の姿が浮かび上がってきます。邪気を払う祈り、願いの姿です。 (多田有花)

★夕べの月しろじろ年の豆を打つ
夕べの「月」が昇れば、「豆を打つ」ことも、日本の風景らしい、昔からの親しみを感じる。「豆を打つ」ことは、日本の今の日常であるが、日本の原初からの風景に思える。(高橋信之)

★立春の窓から強き朝が来る

■互選高点句
●最高点(9点)
★靴紐を締めて春立つ山に入る/多田有花

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
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