■6月ネット句会■
■入賞/15名45句
■入賞発表/2015年6月21日
【金賞】
★なだらかに百合は海へと続きおり/祝 恵子
バスや車、電車などで出かけると、山肌の斜面に白い百合が雪崩れ咲いているのを見かける。私の経験では、松山自動車道を通るときに、こういった光景をよく見た。今では、懐かしい風景として蘇る。百合と海との取り合わせに清潔さがあって、すがすがしい。望郷の思いも重なる。(高橋正子)
【銀賞2句】
★枇杷熟れて吾に望郷つのりけり/桑本栄太郎
枇杷の実が熟れると、灯をともしたような色になる。田舎ではどの家にもというほど、枇杷があった。枇杷の実は子どもの楽しみでもあった。その夢見るような優しさは、望郷の思いをつらせる。(高橋正子)
★ロープーウェイ眼下は若葉の広がりし/高橋秀之
ロープウェイで吊られてゆくと、眼下には若葉が広がっている。明るい若葉の上をよぎることなど、ロープウェイでないとできないことだ。眼下に広がる若葉を楽しんでのことだ。(高橋正子)
【銅賞3句】
★合歓咲きて丘の一隅灯したり/ 佃 康水
丘の上に合歓の花が咲いた。淡い薄桃色の合歓の花が咲くと、丘の一隅が灯をともしたように明るくなる。合歓を見る人は、ともし火のような優しさに包まれる。(高橋正子)
★しんじゃがの籠重たくて畦を行く/古田敬二
しんじゃがを収穫した籠を下げて畦を行く。たくさん収穫できた喜び。しかし、下げれば重い籠に苦心して帰る道々。まだ土の乾かないようなしんじゃがは、作った人でないと味わえない。さぞやおいしいことだろう。(高橋正子)
★うるわしき大洲盆地や若葉風/井上治代
大洲盆地は、その中心を肱川が流れ、霧が発生することでも有名だ。夏にはこの川で鵜飼があり、川ほとりには大洲城がある。盆地を埋める豊かな若葉。その若葉を風が吹くと、「うるわしき哉、大洲盆地」となる。故郷賛歌。(高橋正子)
【高橋信之特選/8句】
★まな板にのせて収穫初胡瓜/祝 恵子
自家製の胡瓜が実り、初めて収穫され、今、まな板に載っています。何のご馳走が出来るのでしょうか。収穫の喜びと主婦らしい眼差しを感じます。 (佃 康水)
★ロープーウェイ眼下は若葉の広がりし/高橋秀之
若葉とロープウエイに的を絞って大景を俯瞰された詠みに惹かれました。 (河野啓一)
★蜻蛉生る狭庭の隅やビオトープ/河野啓一
庭の隅にある小さなビオトープから蜻蛉が生まれます。小さくても身近なところに生命の神秘があります。(高橋秀之)
★枇杷熟れて吾に望郷つのりけり/桑本栄太郎
★なだらかに百合は海へと続きおり/祝 恵子
★しんじゃがの籠重たくて畦を行く/古田敬二
★うるわしき大洲盆地や若葉風/井上治代
★夕立のあとのいつもの街を歩く/高橋正子
【高橋正子特選/8句】
★湖は夏櫂の雫も風に乗り/河野啓一
湖の水の上を渡って匂うような爽やかな風が吹き、ボートに乗っている若い二人の櫂も気の合った漕ぎ方でスイスイと進み、櫂から飛び散る水滴も風に乗ってとっても気持良さそうです。 (小口泰與)
★道端に瞳涼しき石仏/井上治代
瞳のすずやかな石仏に会われ、足を止められ、話しかけられたりしておられるのかなと推察いたしました。 (祝 恵子)
★雨上がりの空へ向かって夏の蝶/高橋秀之
雨の多い季節,蝶は翅を濡らし重たそうにしています。雨が上がれば翅を乾かすかの様に空に向かって飛ぶ活き活きとした夏の蝶の姿が見えて参ります。(佃 康水)
★糠漬の夏の野菜と白米と/迫田和代
むしむしとした夏、些か食欲も衰え勝ちです。そんな時、胡瓜、茄子などの夏野菜の糠漬と白いご飯が有れば食が進みます。糠漬と白米のみに焦点を当て、後は何も言わなくても日本人ならではの食事、これからの猛暑も乗り切れそうですね。(佃 康水)
★ラムネ買い水色ガラスの音がする/高橋句美子
ラムネを買われた作者、実際に音を鳴らされたのか或いはまた、ラムネの水色のビンの形、ラムネの栓、ガラス玉の音、抜く時のしゅっ!とした音、など等懐かしい思い出のイメージが浮かんで来られたのでしょうか。遠い夏の日の涼しい音が甦って参りました。(佃 康水)
ラムネは子どもの頃に飲んだ記憶があります。飲んだ後でビンを揺らして、ビー玉の音を楽しんでいました。「水色ガラスの音がする」という表現が涼しげで「夏が来た」という感じがします。 (井上治代)
★枇杷熟れて吾に望郷つのりけり/桑本栄太郎
★なだらかに百合は海へと続きおり/祝 恵子
★合歓咲きて丘の一隅灯したり/ 佃 康水
【入選/5句】
★雷鳴や雹の飛び交う厩橋/小口泰與
ここ数年、温暖化のせいでしょうか?全国至る所で異常気象の発生です。先日の関東地方を襲ったダウンバースト現象のようですが、雷鳴と共に雹が降り、大変な被害でした。厩橋との地名も効いていて異常気象の緊張感を巧みに詠まれました。 (桑本栄太郎)
★田植え終う里鎮もりて満月光/柳原美知子
田植えの終わった広々とした水田。その静持ったみなもを満月の光りが静かに照らす。平和な農村風景である。 (古田敬二)
★亀そろい甲羅を干すや梅雨晴れ間/多田有花
雨の後の青さが増した空の下で、亀が並んで甲羅を干している様子がユーモラスな感じがして、楽しい句だと思いました。(井上治代)
★万緑の大山崎や蒸留所/桑本栄太郎
JR京都線に乗って大阪から京都に向かう途中にサントリーの蒸留所が見えます。都会からわずかの距離なのに、緑が濃くほっとする景色が広がっています。あああのあたりだなと思う御句です。(多田有花)
★不死鳥のフェニックス揺れ墜栗花雨/谷口博望
植物のフェニックスの名がエジプト神話の不死鳥のフェニックスと同じなので、「不死鳥のフェニックス」と言った。蘇鉄似た、それよりも大きな葉を広げ、風を受けて大きくそよぐ。墜栗花雨は、「ついりあめ」と読む。フェニックスが揺れているのは墜栗花雨のせい。(高橋正子)
■選者詠/高橋信之
★芍薬のピンクが白に近い色
美しい芍薬の花白に近いピンク色にぱっと咲いて周りを華やかにする。淡いピンクを白に近い色と言われたのもいいですね。 (迫田和代)
★栃の木の紅花立てて街路樹に
栃の木は高木で大きな葉を付け,花は円錐状に空へ向かって立ち上がっています。
植物公園で初めて見た時、正子先生の句にも有りました様に本当に豊かな気持ちになりました。その栃の花が日常的に街路樹に見られるのは嬉しいです。(佃 康水)
★花蜜柑の匂い池への斜面を流れ
■選者詠/高橋正子
★欅並木梅雨をきらきら滴らす
梅雨の欅並木を軽快に歩む詠者。雨滴がきらきらと輝く様子を眺めるのも梅雨ならではの楽しみです。生き生きとした梅雨の季節の生活が感じられます。 (柳原美知子)
★夕立のあとのいつもの街を歩く
「いつもの街」がよく効いていると感じます。
日々暮らす自分の生活する街、夕立はその街に新鮮な風を運びます。雨上がりのさっぱりとした景色の中を歩く心地よさが伝わってきます。(多田有花)
★休憩に真正面の夕焼けへ
■互選高点句
●最高点(6点)
★道端に瞳涼しき石仏/井上治代
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
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