3月4日(金)

★花菜の束一つが開き売られたり   正子
花菜が束にして売られていて,かわいい花先が見えている。待ちに待った春のお店での出会いです。(祝恵子)

○今日の俳句
春の日をせりだす床に坐して受け/祝 恵子  
「春の日をせり出す」は、ようやく暖かくなった春の日差しをうまく表現している。「せり出す」は、言えそうでなかなか言えない。(高橋正子)

○木瓜の花

[木瓜の花蕾/横浜日吉本町(2013年2月13日)]_[木瓜の花/横浜日吉本町(2011年3月27日)]

★初旅や木瓜もうれしき物の数 子規
★黄いろなる真赤なるこの木瓜の雨 虚子
★岨道を牛の高荷や木瓜の花 鬼城
★一と叢の木瓜さきいでし葎かな 蛇笏
★花ふゝむ木瓜にひかりて雨ほそし 悌二郎
★日のぬくみ吸うて真つ赤に木瓜の花 淡路女
★木瓜の朱いづこにかあり書を読む 青邨
★浮雲の影あまた過ぎ木瓜ひらく 秋櫻子
★つれづれに夕餉待たるる木瓜の花 草城
★木瓜紅く田舎の午後のつづくなる 多佳子
★木瓜咲くや漱石拙を守るべく/夏目漱石
★草木瓜に日はあたたかし道の縁/高橋正子

 中国原産の落葉低木。日本には江戸中期に渡来したといわれる。平安時代の説も。四月ごろ葉に先だって花を開く。深紅色のものを緋木瓜、白色のものを白木瓜、紅白雑色のものを更紗木瓜という。実は薬用。実が瓜に似ており、木になる瓜で「木瓜(もけ)」とよばれたものが「ぼけ」に転訛(てんか)したとも、「木瓜(ぼっくわ)」から「ぼけ」に転訛したも言われる。
 木瓜は、棘がある。四国砥部の我が家の門扉近くには緋木瓜が植わっていた。その隣に蝋梅、その隣に白山吹、白椿と並んでアプローチを飾っていた。日当たりがよかったので、正月ころからぼつぼつ咲き始めた。子供のころは、紅白がまだらになった更紗木瓜と緋色より薄い紅色の木瓜をよく見た。更紗木瓜については、なんでこのような色具合にといつも思っていたが、そういう咲き方するもののようだ。今はどうか知らないが、春先の花展で、さんしゅゆ、万作の花と並んでよく使われた。秋にひょっこり花梨を少し小さくした、枝に似あわず大きな実がついていることがあった。花梨もバラ科なので樹高は違うが木瓜と似たところがある。

○2013年3月4日:
きのうは雛祭だが、わが家は四国から引っ越して来てからもずっと月遅れで雛を飾っている。本当に桃の花が咲くときに雛を飾る予定。でも、夕餉はちらしずしと菜の花のお吸い物。夕飯を済ませてから、日吉の東急や商店街に買い物に。花冠発送用の封筒、ロルバーンの手帖を文具店で、東急の中の美容室で髪を切る。美容室の待ち時間に「入門 近代日本の思想史」(田恂子著)を立ち読み。解りやすくて面白いので、買うことにした。文庫本ながら1400円。高いがしかたあるまい。このごろは、この手の本は女性の書いたものが、丁寧でわかりやすい。髪を刈った後、林フルーツで雛祭のフルーツケーキを買う。8時近いので割引となって4個で1145円。

◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)

◆ご挨拶/雛祭りネット句会(句会主宰:高橋正子)◆


ご挨拶
雛祭りネット句会にご参加いただき、ありがとうございました。入賞の皆さまおめでとうございます。
3月に入ってから、比較的暖かい日が続くようになりました。週末に向かって気温は上がっていくようですが、そのあと寒さが戻らなければいいのですが。今朝の新聞には上野公園のオオカンザクラが開いて花を見ながら通る人たちの写真が載っていました。桜や路地植えの桃が咲くまであと少しです。花桃ではない、実の生る桃の花は、ほんとうにきれいな桃色で、この桃の花の咲くのを楽しみにしています。今住んでいる日吉の丘に上れば桃畑があります。今月は、参加者が7名と少なかったのですが、雛祭りらしく、近くで話をしているような気持になった句会でした。来月の月例ネット句会は、花まつり(灌仏会)の4月8日(金)を予定しております。楽しみに、ご健吟ください。これで、雛祭りネット句会を終わります。

※金銀銅賞の皆さまには、上島祥子さんが提供してくださった和紙のシールをお送りいたします。お使いください。

入賞発表/雛祭りネット句会


■2016年雛祭りネット句会■
■入賞発表/2016年3月4日

【金賞】
★耕すやバケツに水をたんと張り/佃 康水
耕したあとにはすぐにも苗を植えたり、種を蒔いたりするのであろう。バケツに水をいっぱいにして、耕し始める。バケツにいっぱいにした水に春の暖かさ、うららかさが思われる。生き生きした句だ。(高橋正子)

【銀賞句】
★透けている和紙に包んだ雛あられ/迫田和代
和紙は、薄く漉かれて、包んだものがうっすらと透けて見える。雛あられの色が淡く和紙に透けてみやびだ。(高橋正子)

【銅賞句】
★青海苔のふりかけ芳し朝食に/井上治代
春寒のころの朝、炊き立てご飯に香りも芳しい青海苔を振りかけていただく。青海苔の香りがぷんとして、すがすがしい朝が始まる。春の朝のすがすがしさ。(高橋正子)

【高橋信之特選/6句】
★青海苔のふりかけ芳し朝食に/井上治代
美味しそう! 鮮やかな緑の青海苔を火に炙り熱々のご飯のお供に頂く。色も香りも高く一気に春の訪れを感じさせて頂きました。(佃 康水)

★空に向け桜さくらの坂道を/迫田和代
青空に向かって桜の花が咲き、美しい光景です。この句から何年か前に旅行した、吉野山の山桜の様子を思い浮かべることができました。 (井上治代)

★友からの写真は雛と幼き子/高橋秀之
子どもの健やかな成長を願う、明るく温かな家庭の様子が伺え、私も幸せな気持ちになりました。 (井上治代)

★雛の日の蛤濡れて売らるるよ/高橋正子
雛祭りのお祝いの膳にと売られる蛤、濡れて春潮の香りも漂うようです。貝合わせの雅な絵模様なども思われる雛の日のひと時です (柳原美知子)

★耕すやバケツに水をたんと張り/佃 康水

【高橋正子特選/6句】
★透けている和紙に包んだ雛あられ/迫田和代
和紙に包んだ雛あられ。緑や桃色、黄色と白、透けてとても愛らしい。見ても、食べても雛あられには特別な懐かしい思い出が甦って来た事でしょう。 (佃 康水)

★やさしさの光の中のひな祭り/高橋信之
少しずつ春らしくなり、自然もやさしい光に包まれるようになりました。ひな祭りのほのぼのとした様子が感じられます。 (井上治代)

★空に向け桜さくらの坂道を/迫田和代
★青海苔のふりかけ芳し朝食に/井上治代
★耕すやバケツに水をたんと張り/佃 康水
★豆雛寄せて楽しき段飾り/柳原美知子

【入選/2句】
★親と児の手を添え合うて雛流す/佃 康水
仲のいい親子なんでしょう。ほほえましい句ですね。手を添え合うて いいですね。 (迫田和代)

★指ほどの小さき雛と笑み交わす/井上治代
指ほどの豆雛を手にとると、その可愛らしさにおもわず笑みがこぼれる。優しさあふれる静かな雛祭りです。(柳原美知子)

■選者詠/高橋信之
★嫁がせし娘の雛飾るひな祭り
女の子のお孫さんがいらっしゃるのでしょう。代々受け継がれていく雛飾りが日本の大切な風習を思い起こさせてくれます。 (高橋秀之)

★ひなあられの袋に描かれ雛美し
★やさしさの光の中のひな祭り

■選者詠/高橋正子
★椿咲き心にほっとするものを
椿の種類は多く春を代表する神聖な木の意を込めて「つばき」に当てたという事を聞いたことが有ります。「生活する花達」の中にも詳しく解説されたり、自作の俳句も多いことなどから、作者の心には椿には特別な想いをお持ちなのでしょう。御句にその気持ちが頷けます。(佃 康水)

★雛の日の蛤濡れて売らるるよ
雛祭りのお祝いの膳にと売られる蛤、濡れて春潮の香りも漂うようです。貝合わせの雅な絵模様なども思われる雛の日のひと時です (柳原美知子)

★雛の日の宵の明かりに夕支度

■互選高点句
●最高点(4点)/同点2句
★透けている和紙に包んだ雛あられ/迫田和代
★青海苔のふりかけ芳し朝食に/井上治代

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

◆雛祭りネット句会清記◆


2016年3月3日
■雛祭りネット句会清記
 7名21句

01.空に向け桜さくらの坂道を
02.透けている和紙に包んだ雛あられ
03.揺れながら土手の桜と舟の旅
04.指ほどの小さき雛と笑み交わす
05.青海苔のふりかけ芳し朝食に
06.道端のムスカリ一輪あたたか
07.友からの写真は雛と幼き子
08.就活の彼ら彼女ら春の服
09.早朝の街への日差し春めいて
10.母と児の手を添え合うて雛流す

11.相対すひいなや吾子と同い年
12.耕すやバケツに水をたんと張り
13.豆雛寄せて楽しき段飾り
14.贈られし雛にそれぞれ友の面
15.春の雪ふわりと窓に降りかかる
16.雛の日の蛤濡れて売らるるよ
17.雛の日の宵の明かりに夕支度
18.椿咲き心にほっとするものを
19.ひなあられの袋に描かれ雛美し
20.やさしさの光の中のひな祭り

21.嫁がせし娘の雛飾るひな祭り

  ※互選を開始してください。

3月3日(木)

★手渡されながら花桃散りいたり   正子

○今日の俳句
一枝の桃を活けたりひな祭り/河野啓一
一枝の桃の花で、ひな祭りがずいぶん円かになる。あかるく、あたたかく、かわいらしい桃の花は、やはり、雛の節句に相応しい。(高橋正子)

○桃の花

[桃の花/横浜日吉本町]

★故郷に桃咲く家や知らぬ人/正岡子規
★百姓の娘うつくし桃の花/正岡子規
★桃咲くや古き都の子守唄/正岡子規
★雛の影桃の影壁に重なりぬ/正岡子規

★両の手に桃とさくらや草の餅/松尾芭蕉
★葛飾や桃の籬も水田べり/水原秋桜子
★風吹かず桃と蒸されて桃は八重/細見綾子
★桃咲いて五右衛門風呂の湯気濛々/川崎展宏
★金貸してすこし日の経つ桃の花/長谷川双魚

 モモ(桃、学名は Amygdalus persica L.で[1][2]、Prunus persica (L.) Batsch はシノニムとなっている[3]。)はバラ科モモ属の落葉小高木。また、その果実のこと。春には五弁または多重弁の花を咲かせ、夏には水分が多く甘い球形の果実を実らせる。中国原産。食用・観賞用として世界各地で栽培されている。
 3月下旬から4月上旬頃に薄桃色の花をつける。「桃の花」は春の季語。桃が咲き始める時期は七十二候において、中国では桃始華、日本は桃始笑と呼ばれ、それぞれ啓蟄(驚蟄)の初候、次候にあたる。淡い紅色であるものが多いが、白色から濃紅色まで様々な色のものがある。五弁または多重弁で、多くの雄しべを持つ。花柄は非常に短く、枝に直接着生しているように見える。観賞用の品種(花桃)は源平桃(げんぺいもも)・枝垂れ桃(しだれもも)など。庭木として、あるいは華道で切り花として用いられる。
 葉は花よりやや遅れて茂る。幅5cm、長さ15cm程度の細長い形で互生し、縁は粗い鋸歯状。湯に入れた桃葉湯は、あせもなど皮膚の炎症に効くとされる。ただし、乾燥していない葉は青酸化合物を含むので換気に十分注意しなければならない。
 7月 – 8月に実る。「桃の実」は秋の季語。球形で縦に割れているのが特徴的。果実は赤みがかった白色の薄い皮に包まれている。果肉は水分を多く含んで柔らかい。水分や糖分、カリウムなどを多く含んでいる。栽培中、病害虫に侵されやすい果物であるため、袋をかけて保護しなければならない手間の掛かる作物である。また、痛みやすく収穫後すぐに軟らかくなるため、賞味期間も短い。生食する他、ジュース(ネクター)や、シロップ漬けにした缶詰も良く見られる。

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

●雛祭りネット句会ご案内●


●雛祭りネット句会投句案内●
①投句:当季雑詠(春の句)3句
②投句期間:2016年3月1日(火)午前0時~2016年3月3日(木)午後7時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:3月3日(木)午後7時~午後10時
②入賞発表:3月4日(金)正午
③伝言・お礼等の投稿は、3月4日(金)正午~3月6日(日)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

2月25日(木)

★青空の果てしなきこと二月なる   正子
季節の替り目、二月は晩冬から早春にかけて風も強く空は哀しいまでに真っ青です。その青さは秋のそれよりも青いかもしれません。そして、凛とした青空は厳しい寒さの中にも、暖かい春の近い事を予感させてくれます。 (桑本栄太郎)

○今日の俳句
故郷回想
海苔掻や潮目沖へと流れおり/桑本栄太郎
沖へと流れる潮目を見ながらの海苔掻きに、春の磯の伸びやかな風景が見えて、素晴らしい。(高橋正子)

○三椏の花

[三椏の花/伊豆修善寺(2011年2月22日)]_[三椏の花蕾/横浜四季の森公園(2012年1月26日)]

★三椏や皆首垂れて花盛り/前田普羅
★三椏の咲くや古雪に又降りつむ/水原秋櫻子
★三椏のはなやぎ咲けるうららかな/芝不器男
★三椏の花に暈見て衰ふ眼/宮津昭彦
★三椏や石橋くぐる水の音/渡邉孝彦
★三椏の花紅の雫せり/檀原さち子

 三椏は、蕾の期間が長いようだ。初詣に行けば神社の境内に蕾の三椏を見つけることがある。私は長い間、この蕾を花と思い違っていた。去年修善寺の梅林を訪ねたときに、それは二月下旬だったが、梅林の入口のバス停の近くに三椏の花が咲いていた。蕾がはじけて山吹色が内側に見えて、毬のように咲いていた。大変可憐な花である。横浜の四季の森公園のせせらぎ沿いに植えられているのが、いま最も身近にある三椏である。
 三椏の花でもっとも印象に残っているのは、四国八十八か所のお寺出石寺の山門の脇に咲いていたものである。ふもとからバスで山道をうねうねと登ると雲海の上に寺がある。雲海が寄せてくるところの三椏の花は、それが和紙の原料であるということも考えれば、生活の花として別の意味合いやイメージが湧いてくる。事実ふもとの大洲市は和紙の産地である。
 ミツマタ(三椏、学名:Edgeworthia chrysantha)は、ジンチョウゲ科ミツマタ属の落葉低木。中国中南部、ヒマラヤ地方原産。皮は和紙の原料として用いられる。ミツマタは、その枝が必ず三叉、すなわち三つに分岐する特徴があるため、この名があり、三枝、三又とも書く。中国語では「結香」(ジエシアン)と称している。春の訪れを、待ちかねたように咲く花の一つがミツマタである。春を告げるように一足先に、淡い黄色の花を一斉に開くので、サキサクと万葉歌人はよんだ(またはサキクサ:三枝[さいぐさ、さえぐさ]という姓の語源とされる)。
 「赤花三叉(あかばなみつまた)」は、戦後、愛媛県の栽培地で発見され、今では黄色花とともによく栽培されている。

◇生活する花たち「修善寺梅林・河津川花菜・河津桜」(静岡県伊豆半島)

2月19日(金)

★ヒヤシンスの香り水より立つごとし/高橋正子
水栽培で育つヒヤシンス。直立する花茎に、無数に開く可憐な小花のみずみずしさを思います。春を呼び覚ますような爽やかな芳しさのヒヤシンスです。(藤田洋子)

○今日の俳句
春光につつまれし身のときめきよ/藤田洋子
この句を読むと、もの静かで明るい若い母親の姿が浮かぶ。うす紫の丸いヨークのセーターが、春光の中で、肩までの黒髪に映えていた。(高橋正子)

○孫橋元希三歳の誕生日
元希は2013年2月19日生まれ。

○猫柳

[猫柳/東大・小石川植物園(2013年2月14日]_[猫柳/横浜・四季の森公園(2012年3月22日)]

★ぎんねずに朱ケのさばしるねこやなぎ/飯田蛇笏
★ひもすがら日は枯草に猫柳/松村蒼石
★猫柳奈良も果てなる築地越し/加藤楸邨
★猫柳高嶺は雪をあらたにす/山口誓子
★そばへ寄れば急に大きく猫柳/加倉井秋を
★ときをりの水のささやき猫柳/中村汀女
★二月はや天に影してねこやなぎ/百合山羽公
★猫柳四五歩離れて暮れてをり/高野素十
★猫柳大利根ゆるぎなく流れ/渡辺潔
★猫柳今日水音の高きこと/稲畑汀子
★谿風の鳴る日鳴らぬ日猫柳/山田弘子
★猫柳水を鏡に呆け初む/皆川盤水
★子を肩に猫柳しかない空ぞ/加藤かな文
★水音は川幅を出ず猫柳/鷹羽狩行

★猫柳さざ波向こうから寄せて/高橋正子

ネコヤナギ(猫柳、学名:Salix gracilistyla)は、ヤナギ科ヤナギ属の落葉低木。山間部の渓流から町中の小川まで、広く川辺に自生する、ヤナギの1種である。北海道〜九州までの河川の水辺で見られ、早春に川辺で穂の出る姿は美しいものである。他のヤナギ類の開花よりも一足早く花を咲かせることから、春の訪れを告げる植物とみなされる。他のヤナギ類よりも水際に生育し、株元は水に浸かるところに育つ。根本からも枝を出し、水に浸ったところからは根を下ろして株が増える。葉は細い楕円形でつやがない。初夏には綿毛につつまれた種子を飛ばす。花期は3〜4月。雌雄異株で、雄株と雌株がそれぞれ雄花と雌花を咲かす。高さは3mほど。銀白色の毛で目立つ花穂が特徴的であり、「ネコヤナギ」の和名はこれをネコの尾に見立てたことによる。花穂は生け花にもよく用いられる。ネコヤナギの樹液はカブトムシやクワガタムシ、カナブン、スズメバチの好物である。

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

2月18日(木)

★青空の果てしなきこと二月なる   正子
二月の空はどこまでも青く、高く広がっています。地上では野の花が咲き、天道虫が草の上を這っています。これから、少しずつ暖かくなり、命あふれる季節がやってきます。二月の空の様子を見事な一句にされていて感心しました。(井上治代)

○今日の俳句
川岸の菜の花明かり水明かり/井上治代
川岸をこぼれそうな菜の花。川の水の明かり。どちらもがほのかに、あかるい「明かり」となって、対象を見る作者の心を満たしている。溶け合うような「明かり」の世界が美しい。(高橋正子)

○菊咲き一華(キクザキイチゲ)

[菊咲き一華/横浜・四季の森公園]

★うちとけて一輪草の中にゐる/古館曹人
★一輪草強気な色を投げらるゝ/鈴木早春
★山の日は一輪草に届かざる/田中かつ子
★一華咲く春の確かな陽の中へ/高橋信之
★うす青き沼の光りに一華咲く/高橋正子

 キクザキイチゲ(菊咲一華、学名:Anemone pseudoaltaica)はキンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。キクザキイチリンソウ(菊咲一輪草)とも呼ばれる。本州近畿地方以北~北海道に分布し、落葉広葉樹林の林床などに生育する。高さ10~30cm。花期は3~5月で、白色~紫色の花を一輪つける。キクに似た花を一輪つけることからこの名がついた。春先に花を咲かせ、落葉広葉樹林の若葉が広がる頃には地上部は枯れてなくなり、その後は翌春まで地中の地下茎で過ごすスプリング・エフェメラルの一種。山梨県など複数の都道府県で、レッドリストの絶滅危惧種(絶滅危惧I類)や絶滅危惧II類などに指定されている。近縁種は、アズマイチゲ(東一華、学名:Anemone raddeana)、ユキワリイチゲ(雪割一華、学名:Anemone keiskeana)。
 イチリンソウ属(イチリンソウぞく、学名:Anemone )は、キンポウゲ科の属の一つ。日本の種にシュウメイギク(帰化)、ユキワリイチゲ、キクザキイチゲ、イチリンソウ、ニリンソウ、サンリンソウ等がある。

◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)

2月17日(水)

 東海道53次川崎宿
★下萌えの六郷川の水青し   正子
冬枯れの地面のそこかしこから、野にも川辺にも萌え出た草を見出す事が出来、春らしい景色の中六郷川の川の水も春の青空を映してゆったりと流れている素晴らしい景ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
蕗の芽や利根の支流に毛鉤打つ/小口泰與
蕗の芽が出はじめ、利根川の支流の愛着の川だろうが、春を待ちかねて毛鉤を打った。川の水にも蕗の芽にもある早春の息吹が何よりも嬉しい。(高橋正子)

○雪割一華(ユキワリイチゲ)

[ユキワリイチゲの花/東京白金台・自然教育園]

★雪割一華へ浅春の陽が燦々と/高橋信之
★一華咲く春の確かな陽の中へ/高橋信之

四季の森公園で初めて「キクザキイチゲ」を見た。去年3月22日のこと。「イチゲ」とは、どんな字を書くのだろうと名札のカタカナを見ながら思った。「一華」である。一茎に一つ花を咲かせる。
先日2月14日に小石川植物園に行った。園内を巡り、売店で柚子茶を飲んでもう帰ろうかと思ったところ植物園で作業をしている男性に出会って立ち話を少々した。一旦別れ、歩いているとまた出会って「下にユキワリイチゲの蕾がちょうど出たところだよ。神社の下の小さい池がある辺り。」と東北訛りで教えてくれた。神社は太郎神社、小さな沼池は榛の木が生えているところと見当がついた。危うく見逃すところだったが、言われた所に行くと、榛の木の生えている少し上に名札が立ててあるのに気付いた。近づくと、紫がかった三つ葉の葉に似た叢に小さな白い蕾が見える。名札がなければ、発見は難しいところだった。一輪だけが咲きかけていた。白い小さな蕾が葉に浮くように、どれも向こうを向くか横向きであった。沼に足を滑らせないように気をつけて、写真を撮った。

★うす青き沼の光りに一華咲く/高橋正子
★榛の木の根方一華の蕾みたり/高橋正子

雪割一華(ユキワリイチゲ、学名:Anemone keiskeana)はキンポウゲ科イチリンソウ属の多年草である。日本固有種である。本州の滋賀県から九州にかけて分布し、林の中や渓流沿いなどに生える。「雪割」は早春植物を意味し、「一華」は一茎に一輪の花を咲かせるという意味である。草丈は20から30センチくらいである。根際から生える葉は3小葉からなる。小葉は三角状の卵形でミツバの葉に似ていて、裏面は紫色を帯びる。茎につく葉は茎先に3枚が輪のようになって生える(輪生)。開花時期は3月から4月である。花の色は白く、淡い紫色を帯びている。花びらは8枚から12枚くらいである。ただし、花弁のように見えるのは萼片である。花の後にできる実はそう果(熟しても裂開せず、種子は1つで全体が種子のように見えるもの)である。花言葉は「幸せになる」である。属名の Anemone はギリシャ語の「anemos(風)」からきている。種小名の keiskeana は明治初期の植物学者「伊藤圭介さんの」という意味である。圭介はオランダ商館のシーボルトのもとで植物学を学んだ。(花図鑑、©龍&華凛)

◇生活する花たち「満作・椿・蝋梅」(神奈川・大船植物園)