★鎌倉へ合歓の一樹の花盛り 正子
合歓の木は随所に見られますが、普段はほとんど目につかず、花が咲いて初めて「ああこんなところに合歓が!」と嬉しくなることが多いかと思います。鎌倉へ行かれるご用事の道すがら、一樹の花盛りを見つけられた作者の気持ちが読者にも浮き浮きと伝わってきます。(河野啓一)
○今日の俳句
紫陽花の軒端に雨水たっぷりと/河野啓一
紫陽花が咲く軒端に雨水がたっぷりと溜まっている。たっぷり溜まった雨水がゆたかで涼しい。(高橋正子)
明るくて深い 現代語による俳句を。よい生活から よい俳句を。
★蛍ぶくろ霧濃きときは詩を生むや 正子
白や紫色した蛍袋が下向きに咲き、中はがらんどう。蛍袋の咲く梅雨の頃には霧の発生も良く見られ、濃い霧にぼやけて見える花は一際風情を感じます。また、この花筒の中にほたるを入れて遊んだという説にはますますメルヘンの世界に誘われると共にこの様なところから詩が生まれて来そうな予感が致します。御句こそが美しい一行詩です。(佃 康水)
○今日の俳句
清らかや飛騨路に出合う朴の花/佃 康水
朴の花は、大ぶりな白い花でよい香りがする。山深い飛騨路に出合えば、「清らかさ」が印象的。(高橋正子)
○コムラサキとムラサキシキブの二つが違うものであることを知らないときは、その花の付き方、実の付き方を細かく書いた文を丁寧によくよく読んで判別していたが、コムラサキとムラサキシキブを見ただけで分かるようになると、そんなことをしていたことが、なんだか、余計なことのように思われる。区別できるようになったのも、説明のおかげなのだが。
自宅から10分ほどの小高い公園の山にムラサキシキブがあったが、去年ばっさり切られてしまったのを発見。自生なんだから大切にしなければならないのに。近所を見る限り、大体にして、すぐに木を切ってしまう。なんのために切るのかよくわからないが。それに、庭木の剪定さえも下手に思う。(2015.6.30)
★紫陽花を剪るに真青き匂いたち 正子
梅雨の頃、小さい多数の四片の花を、毬状に群がり咲かせ、花弁と見えるものは萼で、花期が長く白、淡緑、碧、紫、淡紅と日を経るに従って花の色が変化する美しい花を剪って花瓶にさした紫陽花の素晴らしい景ですね。(小口泰與)
○今日の俳句
蛍飛ぶ後ろ大きな山の闇/藤田洋子
大きな山を後ろに闇を乱舞する蛍の火。山間の清流を舞う蛍火の見事さを「山の闇」で的確に表現した。(高橋正子) じゃがいもの花や赤城は靄の中/小口泰與
雄々しい赤城の山も靄の中に消え、薄紫のじゃがいもの花が優しく咲く。じゃがいもの花が咲く頃は、雨の後など靄がかかりやすい。季節がよく捉えられている。(高橋正子)
○夏萩
[夏萩/東京・関口芭蕉庵(2011年6月12日)]_[夏萩/北鎌倉・円覚寺(2013年6月16日)]
★夏萩の咲きひろがりぬ影の上/谷野予志
★夏萩や山越ゆる雲かろやかに/石原絹江
東京・関口芭蕉庵
★芭蕉居しと夏萩の紅明らかに/高橋信之
★夏萩にもっとも似合うのシャツ白/高橋正子
萩と言えば、秋の七草のひとつで、多くの方がご存じ。万葉集に詠まれ、日本画、着物などの柄、日常の種々のものにも描かれて、馴染み深い花となっている。秋が来るのを待たず咲いているのに出会うと、「もう萩が。」と汗が引く思いで足を止めて見る。夏萩は、夏の終わりから秋の初めにさく南天萩、四業萩、猫萩、夏開花する野萩、めどはぎ、犬萩、藪萩などを指すしている。六月に関口芭蕉庵を訪ねたことがあったが、瓢箪池のふちに夏萩が枝をのばして紅紫の可憐な花を付けていた。「古池や」の句碑も立っているが、池水のにごりに映えて静かな雰囲気を醸していた。関口芭蕉庵から椿山荘へ場所を移すと、椿山荘にも露を置く草の中に数本の枝が倒れて紅紫の花をほちほちと草に散るように咲いていた。一足はやい秋の訪れを垣間見る思いだ。
俳人・正岡子規も愛した“萩の寺”、大阪府豊中市の曹洞宗東光院(村山廣甫住職)で、ナツハギが6月初旬~中旬くらいまでが見頃で、かれんな花が参拝客らの目を楽しませている。参道には、秋に見頃を迎えるマルバハギなど約10種3千株にまじり、ナツハギ約30株が植えられており、今年は例年より早く赤紫の花が房状に咲き始めたという。東光院は、奈良時代の天平7(735)年に僧の行基(668~749年)が現在の大阪市北区に薬師如来像を自作し、薬師堂を建立したのが始まりとされる。行基が死者の霊を慰めるために当時、淀川に群生していたハギを供えたことから境内にもハギが植えられ、「萩の寺」として親しまれるようになった。子規や高浜虚子ら多くの俳人が好んで訪れ、子規はハギが咲き誇る風情を「ほろほろと石にこぼれぬ萩の露」と詠んだという。同院は「ハギの群生美は、日本らしい『和』の民族性を表しているよう。1度花を咲かせたあと、さらに茎を伸ばし花を咲かせる姿は、私たちに希望を与えてくれる」と話している。
ハギ(萩)とは、マメ科ハギ属の総称。落葉低木。秋の七草のひとつで、花期は7月から10月。分布は種類にもよるが、日本のほぼ全域。古くから日本人に親しまれ、『万葉集』で最もよく詠まれる花でもある。秋ハギと牡鹿のペアの歌が多い。別名:芽子・生芽(ハギ)。背の低い落葉低木ではあるが、木本とは言い難い面もある。茎は木質化して固くなるが、年々太くなって伸びるようなことはなく、根本から新しい芽が毎年出る。直立せず、先端はややしだれる。葉は3出複葉、秋に枝の先端から多数の花枝を出し、赤紫の花の房をつける。果実は種子を1つだけ含み、楕円形で扁平。荒れ地に生えるパイオニア植物で、放牧地や山火事跡などに一面に生えることがある。
6月月例ネット句会はお休みです。
次回は7月月例ネット句会となります。
(主宰/高橋正子)
★透き通るバケツにあふる朝の百合 正子
バケツがすきとおっているのではなく、水がすきとおっていると感じました。
その朝のすきとおった水に溢れんばかりの百合の花は、すっきりとした気分にさせてくれたことでしょう。(高橋秀之)
○今日の俳句
百円を握り園児はアイス買う/高橋秀之
暑い日には、アイスが何よりのたのしみな子どもたち。とくに園児は買い物が自分で出来る喜びも加わるので、アイスを手にした満足感はたかい。嬉しそうな園児の顔が浮かぶ。(高橋正子)
★青田中信濃の踏切唄ふごとし/大串 章
★青田風チェンジのときも賑やかに/中田尚子
★千枚の青田 渚になだれ入る/佐藤春夫
★選挙カー連呼せず過ぐ青田道/日下徳一
★川面吹き青田吹き風袖にみつ/平塚らいてう
★石斧出て峡の青田の浮上せり/石井野洲子
★松葉牡丹のその色明るし子が摘みぬ 正子
膝をかがめ、幼き子が松葉牡丹の一番明るい花色を手折っている。傍でお母さんが優しい眼差しで、見守られています。(祝恵子)
○今日の俳句
植田には水の出入りの音つづく/祝恵子
植田には、いつも水があるが、入る水と、出る水とが静かに動いている。その出入口には静かな水音が絶えない。(高橋正子)
★仏桑華被弾残塁かくれなし/藤田湘子
★けふの暑さ思ふ朝戸出の仏桑花/林原耒井
★激しくて一日紅の仏桑花/文挟夫佐恵
★仏桑花咲けば虜囚の日の遠き/多賀谷栄一
★仏桑花爆心に咲き喪の季節/下村ひろし
★口笛は幼くかなし仏桑花/塚原麦生
★海の紺ゆるび来たりし仏桑花/清崎敏郎
★島人の血はかくも濃し仏桑花/青柳志解樹
★仏桑花真紅の声を挙げて基地/山田みづえ
★仏桑花咲く島に来る終戦日/北沢瑞史
★仏桑花供華としあふれ自決の碑/岩鼻十三女
★窓際にハイビスカスの陽射し恋ふ/山元重男
★ハイビスカスばかり働き者ばかり/本田静江
ハイビスカスはフラダンスを踊る人が髪に飾っている花として知った。未婚の女性と既婚の女性では、花を付ける位置が違うと聞いたことがある。アロハシャツにも描かれなじみとなっている。ハワイの州花となってハワイを代表する花であるが、沖縄にも自生していると聞く。おおらかで、明るく、穏やかな南国のイメージをまとっている。南国の楽園の花とイメージできる一方で、人知れぬかなしみをまとった花である。夏になると、ハイビスカスの鉢を買いたくなる。5,6年前購入したものがまだ健在であるが、肥料が足りないせいか、日差しが足りないせいか、真っ赤だった色が薄くなってきた。夏は、パッと真っ赤に咲かせたいと思う。
★街空の青にも開きハイビスカス/高橋正子
ハイビスカスは、アオイ科フヨウ属の常緑低木で、学名は Hibiscus cv.(属の総称)。英名は Hibiscus。広義では、アオイ目アオイ科フヨウ属(Hibiscus)のことで、また、そこに含まれる植物の総称だが、日本では、そのなかでも熱帯および亜熱帯性のいくつかの種がとくに「ハイビスカス」と呼ばれ、南国のイメージをまとった植物として広く親しまれている。園芸用・観賞用としていくつかの種が「ハイビスカス」として流通する。その代表的なものはブッソウゲ(仏桑華、Hibiscus rosa-sinensis)である。ハワイの州花として知られる熱帯花木で、「ふよう」や「むくげ」も同じ仲間だが、ふつうは「ハワイアンハイビスカス」といわれる交配品種群をさす。和名の「ぶっそうげ(仏桑華)」は、葉が「くわ(桑)」に似ているからかもしれない。長く突き出た雌しべが特徴。「ハイビスカスティー」に用いられる花は、通常、ローゼル(Hibiscus sabdariffa)と呼ばれる別種のものである。
★風鈴に木々のみどりの集まりぬ 正子
○今日の俳句
夏の風本のページをすべて繰る/多田有花
開いておいた本に一陣の涼風が吹き、ページをぱらぱらとめくった。数ページでなく、すべてのページを繰る風の遊び心が面白い。涼しい句だ。(高橋正子)
○夏萩
[夏萩/東京・関口芭蕉庵(2011年6月12日)]_[夏萩/北鎌倉・円覚寺(2013年6月16日)]
★夏萩の咲きひろがりぬ影の上/谷野予志
★夏萩や山越ゆる雲かろやかに/石原絹江
東京・関口芭蕉庵
★芭蕉居しと夏萩の紅明らかに/高橋信之
★夏萩にもっとも似合うのシャツ白/高橋正子
萩と言えば、秋の七草のひとつで、多くの方がご存じ。万葉集に詠まれ、日本画、着物などの柄、日常の種々のものにも描かれて、馴染み深い花となっている。秋が来るのを待たず咲いているのに出会うと、「もう萩が。」と汗が引く思いで足を止めて見る。夏萩は、夏の終わりから秋の初めにさく南天萩、四業萩、猫萩、夏開花する野萩、めどはぎ、犬萩、藪萩などを指すしている。六月に関口芭蕉庵を訪ねたことがあったが、瓢箪池のふちに夏萩が枝をのばして紅紫の可憐な花を付けていた。「古池や」の句碑も立っているが、池水のにごりに映えて静かな雰囲気を醸していた。関口芭蕉庵から椿山荘へ場所を移すと、椿山荘にも露を置く草の中に数本の枝が倒れて紅紫の花をほちほちと草に散るように咲いていた。一足はやい秋の訪れを垣間見る思いだ。
俳人・正岡子規も愛した“萩の寺”、大阪府豊中市の曹洞宗東光院(村山廣甫住職)で、ナツハギが6月初旬~中旬くらいまでが見頃で、かれんな花が参拝客らの目を楽しませている。参道には、秋に見頃を迎えるマルバハギなど約10種3千株にまじり、ナツハギ約30株が植えられており、今年は例年より早く赤紫の花が房状に咲き始めたという。東光院は、奈良時代の天平7(735)年に僧の行基(668~749年)が現在の大阪市北区に薬師如来像を自作し、薬師堂を建立したのが始まりとされる。行基が死者の霊を慰めるために当時、淀川に群生していたハギを供えたことから境内にもハギが植えられ、「萩の寺」として親しまれるようになった。子規や高浜虚子ら多くの俳人が好んで訪れ、子規はハギが咲き誇る風情を「ほろほろと石にこぼれぬ萩の露」と詠んだという。同院は「ハギの群生美は、日本らしい『和』の民族性を表しているよう。1度花を咲かせたあと、さらに茎を伸ばし花を咲かせる姿は、私たちに希望を与えてくれる」と話している。
ハギ(萩)とは、マメ科ハギ属の総称。落葉低木。秋の七草のひとつで、花期は7月から10月。分布は種類にもよるが、日本のほぼ全域。古くから日本人に親しまれ、『万葉集』で最もよく詠まれる花でもある。秋ハギと牡鹿のペアの歌が多い。別名:芽子・生芽(ハギ)。背の低い落葉低木ではあるが、木本とは言い難い面もある。茎は木質化して固くなるが、年々太くなって伸びるようなことはなく、根本から新しい芽が毎年出る。直立せず、先端はややしだれる。葉は3出複葉、秋に枝の先端から多数の花枝を出し、赤紫の花の房をつける。果実は種子を1つだけ含み、楕円形で扁平。荒れ地に生えるパイオニア植物で、放牧地や山火事跡などに一面に生えることがある。
★ハム削ぎ切り新玉葱の白を載せ 正子
うすく切ったハムに、白い新玉葱をこれも薄く切って載せ、ハリハリとかじる。涼しさとその食感が同時に味わえる気が致します。この時季の季節感に充ち溢れた御句と思います。(河野啓一)
○今日の俳句
黒潮の豊かに寄せて青岬/河野啓一
「黒潮」と「青岬」の取り合わせが絵画的で印象深い。黒潮寄せる、緑滴る岬。涼しさと強さをもった景色だ。(高橋正子)
★自在鉤の鍋に活けありすかし百合/岡田章子
★すかし百合散るまで水平線凝視む/小林輝子
スカシユリ(透百合、Lilium maculatum Thunb.)は、ユリ科ユリ属に属する植物の一種。海岸の砂礫地や崖などに生える多年草。大きさは20cm – 60cmとなる。本種は古来より栽培・育種の対象となっており、交配の母種として使われることが多い。本種と近縁種をスカシユリ亜属(Lilium pseudolirion Thunb.)として分類することがある。杯状の花を上向きにつけることが特徴。本属には、本種スカシユリの他、近縁種のエゾスカシユリ、ヒメユリを含む。
鱗茎は白色で卵型。茎は直立し、高さ20cm – 60cm程度。葉は葉柄のない披針形で互生する。花期は太平洋岸の個体群で7月 – 8月、日本海側の個体群で5月 – 6月。茎の頂に、直径10cm程度の、赤褐色の斑点を持つ橙色の花をつける。花被片の付け根付近がやや細く、隙間が見えることから「透かし」百合の和名がある。近縁種のエゾスカシユリと比較し、花柄やつぼみに綿毛がないこと、全体にやや小型であることで判別される。