8月16日(火)

★いつよりか燕無き空青澄める  正子
ツバメは群れを成したり隊形を整えたりして渡ることをしないようですから、春が来て何羽もが街を飛び交っているのを見つけたり、また秋には、いつの間にか一羽もいなくなってしまっていることにふと気が付くというようなことがよくあります。
「燕無き空青澄める」という表現には、しみじみと秋到来を思う深い詩情が込められており、「いつよりか」にはまた、小さな喪失への感慨が届けられて来ます。(小西 宏)

○今日の俳句
露ころぶキャベツ外葉の濃き緑/小西 宏
キャベツの濃い緑の外葉にころがる露に、力がある。丸く、収れんした露の力と輝きは秋の朝のすがすがしさ。(高橋正子)

●長男家族が11時ごろ揃って来た。
昼食は、孫の元希が蕎麦がいいいうので、蕎麦と天ぷらにした。3歳なのに、蕎麦の食べっぷりは、なかなか通っぽい。海老の天ぷらを手でつかんで、チョンチョンとそばつゆをつけて食べる。
玄関に朝顔の写真を何枚も飾っていたら、それがほしいと言うので、全部持たせた。いいものに思えたのか。絵葉書がはいっていたケースに入れてあげると、ちょうど額縁に入ったようになったので、にっことする。何がわかったのかと思うが。
元が使った木の貨物列車を可愛いので飾ったおいているのに興味を示す。正月に来たときは全然興味を示さなかったのにまるで、違う反応だ。

○木槿(むくげ)

[木槿/横浜日吉本町]            [木槿/東京・新宿御苑]

★花むくげはだか童のかざし哉 芭蕉
★道のべの木槿は馬にくはれけり 芭蕉
★修理寮の雨にくれゆく木槿哉 蕪村
★花木槿里留主がちに見ゆる哉 一茶
★馬ひとり木槿にそふて曲りけり 子規
★縄簾裏をのぞけば木槿かな 漱石
★墓多き小寺の垣や花木槿 碧梧桐
★いつまでも吠えゐる犬や木槿垣 虚子
★お遍路木槿の花をほめる杖つく 放哉
★みちのくの木槿の花の白かりし 青邨
★路草にむかひて萎む木槿かな 耕衣
★日の出待つや木槿いつせいに吹かる中 林火
★避暑町の少しさびれぬ花木槿 たかし
★道すがらうかぶ木槿や徒労ばかり 波郷
★白木槿ごみを出すにも蝶むすび/片山由美子
★ふっくらと巻きて落花の木槿かな/野村洋子

 木槿は、朝咲いて夕方にはしぼむ。お茶席の花としてよく活けられもする。先日千駄木の骨董屋の女主人が亜浪先生の句について信之先生に聞いて来られた折に、骨董の竹籠に槿と縞萱を活けた写真を送ってこられ、だれかをお茶にお招きしたい気分だと書き添えてあった。お茶の花ともなるが、どこにでも咲いている。
 
★白槿十年たちまち過ぎていし/高橋正子
 
 この句は、砥部の田舎で学生が来たり、ドイツ語の先生が来たり、子どもの友達がわっさわっさと来たり、句会の人たちが出入りしたり、掃除、洗濯、庭の手入れなどなど、雑多なことに明け暮れて、ある朝、白い槿を見て、十年なんてすぐ終わってしまうと思ったとき出来た句だ。
 今朝、自分の以前作ったこの白槿の句を読んで、今はもうこういう句を作る気持ちではないと知った。あれから十年が何回過ぎたことか。
 
★底紅の紅が澄みたる白槿/高橋正子

 ムクゲ(木槿、別名:ハチス、Hibiscus syriacus; 英語: rose of Sharon)はアオイ科の落葉低木。 庭木として広く植栽されるほか、夏の茶花としても欠かせない花である。インドや中国が原産で、中近東にも自生している。日本へは奈良時代に中国から渡来し、和歌山県や山口県に野生のムクゲがあったとされる。 夏から秋にかけて白、紫、赤などの美しい花をつける。薬用のほか、鑑賞用に多くの品種がある。俳句では秋の季語である。根が横に広がらないため、比較的狭い場所に植えることができる。 刈り込みにもよく耐え、新しい枝が次々と分岐する。そのため、庭の垣根に利用されることもある。 自然樹形は箒を逆さにしたようになる(下記の樹形の例参照)。 栽培されているものはよく剪定されてしまうため、高さは3-4mくらいのものが多く、灌木であると誤解されるが、放置すると10m以上の樹高になり、桜の木よりすこし小さいくらいの大きさになる。花期は7-10月。花の大きさは10-18cmほど。花芽はその年の春から秋にかけて伸長した枝に次々と形成される。 白居易(白楽天)の詩の誤訳から一日花との誤解があるが、朝花が開き、夕方にはしぼんで、また翌朝開き、一重のもので2-3日。八重の長く咲くもので2週間くらい、一輪の花を楽しめる。中国名の木槿(もくきん)を音読みし、木槿(むくげ)、木槿花(もくきんか)と呼ばれるようになった。また、「類聚名義抄」には「木波知須(キハチス)」と記載されており、木波知須(キハチス)や、単に波知須(ハチス)とも呼ばれる。白の一重花に中心が赤い底紅種は、千利休の孫である千宗旦(せんそうたん)が好んだことから、「宗丹木槿(ソウタンムクゲ)」とも呼ばれる。中国語では木槿/木槿(ムーチン)、朝鮮語では???(無窮花; ムグンファ)という。英語の慣用名称のrose of Sharonはヘブライ語で書かれた旧約聖書の雅歌にある「シャロンのばら」に相当する英語から取られている。

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月15日(月)


今日は月遅れのお盆。明日は、長男家族が訪ねてくるので、その準備などもあるが、土、日でほぼすませたので、今日は時間がある。前から気にかかったいた町田市鶴川にある「認定NPO法人エンディングセンター(尊厳ある死と葬送を実現するために活動している市民団体)」にある樹木葬の墓地を見に行くことにした。

今日行かなければ、またずるずると先に延びそうな気がして、何がなんでもという勢いで信之先生と出かけた。鶴川には、白洲次郎、正子夫妻が住んだ武相荘がある。小田急線の鶴川で下車。そこからバスで15分ほどの丘陵に樹木葬の墓地がある。檀家の昔ながらの墓地もある。南向きの日当たりのより晴れやかなところで、横浜市内が見える。噴水があり、お花も供花だけでなく、ところどろこに、まとめて活けられていた。供花を挿すところは、湧き水をひいて、いつも水が流れているそうだ。墓所は、芝生に覆われて、シンボルツリーの桜が植えられている。川津桜やエドヒガン、秋に咲く十月桜もある。いろんな種類の桜が集められている。それぞれの墓所へは遊歩道のような道があるが、「参道」とよばれている。芝生を手て撫でている家族もいた。正式契約は二週間後にして、墓地を予約して帰った。帰ったあとは、ずいぶんと疲れて、夕飯はスーパーでお寿司を買って済ませた。

TEL:042-850-1212/FAX:042-850-1211
http://www.endingcenter.com/tokyosakura/shiori/

8月14日(日)


今朝は3時半起床。
角川俳句から俳句年鑑の原稿依頼。信之先生、正子、句美子さんの住所録。信之先生の諸家自選5句。
のちほど届くと思うが、俳誌花冠の記事。私には、主宰でありながら諸家自選5句の依頼がないので、信之先生は、「花冠のレベルが下がった」と不満である。・・・ふーむ。

おとといFBで黄色をどのくらい識別できるかというテストがあったので、やってみた。黄色は人間の目には、識別できにくい色らしい。結果は8パーセントの逸材と出た。一瞬の見た目の感じだが、違いが識別できたようだ。
アフリカには、白い色を何種類も見分ける人たちがいると聞いた。色に関しては、なんとなく微妙な色の違いがわかるような気がする。何年か前、鎌倉在住の美術科を出たかたから、正子の俳句日記を読んで、画に詳しいとほめていただき、ご主人のデザインの本を送ってくださったことがあった。色には自信をもってよいか。絵はより私に近いか、文学に近いか。

8月11日(木)


今日は、初めての山の日。山の日があればいいなあと思っていたが、山の日は、8年前に提唱されていたそうだ。
山には登りたし、されど、経験はほどんどなし。行ったのは、四国の石鎚山、皿が嶺、富士山、尾瀬湿原。

思い返す尾瀬のとんぼや吾亦紅/正子
炎天に隠れ場所なき尾瀬湿原/正子

8月2日(火)

★這いはじめし子に展げ敷く花茣蓙  正子
子が成長していくのは親の喜びです。這い這いしはじめの子へ花茣蓙を敷き見守られている姿が、喜びが、伝わってまいります。(祝恵子)

○今日の俳句
家裏に立てかけられてゴムプール/祝恵子
カラフルなゴムプールが、ひっそりとした家裏に立てかけられて、目に楽しく映る。家裏が涼しそうである。(高橋正子)

○落花生の花

[落花生の花/横浜市緑区北八朔町]

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月1日(月)

★撒き水の虹を生みつつ樫ぬらす  正子
散水の水しぶきが小さな虹を生んでいるのでしょう。そしてその水が樫をぬらしていく。何気ない日常ながら、ほっとするひと時をそこに感じます。(高橋秀之)

○今日の俳句
子らに買うバナナを袋いっぱいに/高橋秀之
袋の詰められたバナナの黄色に元気がある。子供たちへの格好の土産となったバナナであるが、夏にあって楽しい。(高橋正子)

○紫式部の花

[ムラサキシキブ/横浜・四季の森公園]   [コムラサキ/東京・新宿御苑園]

★慈雨来る紫式部の花にかな/山内八千代
★紫式部添木に添わぬ花あまた/神部 翠
★光悦垣色あはあはと花式部/高瀬亭子
★紫式部咳くやうに咲き初めし/河野?子
★夢辿る紫式部の花の香に/石地まゆみ
★花式部見つけたり日の輝きに/高橋信之

 紫式部の実は、熟れると美しい紫色となる。しだれるような枝に小さな紫色の実がつき、小鳥が好んで食べる。一度私も食べてみたが、棗に似た味がする。この美しい実がつく前には花が咲くのはとうぜんだが、6月、今ちょうどその紫式部の花が咲いている。実より少し淡い紫色である。その花の通りに実がつく。山野に自生したのを見るが、庭木に植えているものと見かけが多少ちがうように思う。私が見た限りでは、庭木に植えているもは、葉が黄緑がかっているが、自生種は葉が大ぶりで、緑色が濃い。花よりも実が美しい木の一つである。

★登り来てふと見し花は花式部/高橋正子

 ムラサキシキブ(紫式部、Callicarpa japonica)はクマツヅラ科の落葉低木で、日本各地の林などに自生し、また果実が紫色で美しいので観賞用に栽培される。高さ3m程度に成長する。小枝はやや水平に伸び、葉を対生する。葉は長楕円形、鋭尖頭(先端が少し突き出すこと)、長さ6-13cm。細かい鋸歯がある。葉は黄緑で洋紙質、薄くて表面につやはない。初めは表側に細かい毛があることもある。花は淡紫色の小花が散房花序をつくり葉腋から対になって出て、6月頃咲く。秋に果実が熟すと紫色になる。果実は直径3mmで球形。栽培品種には白実のものもある。名前の由来は平安時代の女性作家「紫式部」だが、この植物にこの名が付けられたのはもともと「ムラサキシキミ」と呼ばれていたためと思われる。「シキミ」とは重る実=実がたくさんなるという意味。スウェーデンの植物学者のカール・ツンベルクが学名を命名した。北海道から九州、琉球列島まで広く見られ、国外では朝鮮半島と台湾に分布する。低山の森林にごく普通に見られ、特に崩壊地などにはよく育っている。ムラサキシキブ(コムラサキ、シロシキブ)の名所として、京都・嵯峨野の正覚寺が有名である。
 コムラサキ(C. dichotoma)も、全体に小型だが果実の数が多くて美しいのでよく栽培される。別名コシキブ。ムラサキシキブとは別種であるが混同されやすく、コムラサキをムラサキシキブといって栽培していることが大半である。全体によく似ているが、コムラサキの方がこじんまりとしている。個々の特徴では、葉はコムラサキは葉の先端半分にだけ鋸歯があるが、ムラサキシキブは葉全体に鋸歯があることで区別できる。また、花序ではムラサキシキブのそれが腋生であるのに対して、コムラサキは腋上生で、葉の付け根から数mm離れた上につく。岩手県で絶滅、その他多数の都道府県でレッドリストの絶滅寸前・絶滅危惧種・危急種・準絶滅危惧の種に指定されている。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

7月31日(日)

★冬瓜にさくっという音のみありぬ  正子
「さくっという音」に時間も空間も凝縮されたように感じました。また、これからできる、歯ざわりのいい美味しそうな冬瓜料理が、食卓に並べられている様子を想像することができました。私は冬瓜はまだ食べたことがないので、食べてみたいなと思いました。(井上治代)

○今日の俳句
鳴き交わし夏鳥高き青空へ/井上治代
夏鳥の弾けるような鳴き声が楽しげだ。高く眩しい青空へ飛びゆく姿も生命の楽しさそのものだ。(高橋正子)

○風船葛

[風船葛/横浜日吉本町]

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

7月30日(土)

★わが視線揚羽の青に流さるる  正子
ふっとあらわれた涼しそうな青い揚羽蝶。しばらくは揚羽のようすに心ひかれて目がはなせません、詩のある風景が思われます。(小川和子)

○クィーン・ネックレス

[クィーン・ネックレス/横浜日吉本町]

★夕涼に行き遇うクィーン・ネックレス/高橋正子

 「クィーン・ネックレス」という花がある。「女王様の首飾り」。女王様は、エリザベス女王以外には考えられない。わざわざ「クィーン」がつくところが、メルヘン的。この花のピンクが英国女王に似合っているようにも思う。蔓性の花、案外丈夫で、いったん咲いて、剪定して、また咲いてを、しばらく繰り返しているようだ。ちょうど角の家にあるし、ピンクの小花がネックレスのように10センチほど連なっていて、珍しいので、通る人がよく名前を尋ねるらしい。
 クイーンネックレスは、タデ科アンティゴノン属で、学名はAntigonon leptopus。メキシコ原産の熱帯つる性で、7月~10月にかけて、ピンク色の花を咲かす。耐暑性はあるが、耐寒性(5度以上)は弱い。日あたりのよい場所、また水はけ、水もちのよい土で育て、フェンス・トレリス等に這わせ、ベランダからも垂らしたりする。別名をアサヒカズラ、アンティゴノン、ニトベカズラという。

◇生活する花たち「月見草・大賀蓮・のうぜんかずら」(横浜・四季の森公園)