■2016年8月月例ネット句会■
■入賞発表/2016年8月22日
【金賞】
★一筆を画布に添えけり秋気澄む/小口泰與
秋になると絵心が動く。画布に一筆添えると、秋らしく、色だけでなく、空気も澄んでいる。すっかり秋の景色になった。こちらまで心が澄み、絵を描きたくなる。(高橋正子)
【銀賞2句】
★籾殻に隠れし林檎香り立つ/廣田洋一
木箱に籾殻と一緒に詰められた林檎。箱の蓋を開ければ、すぐさま林檎の香りがしてくる。籾殻に隠れた林檎は、私には昭和の思い出とともに記憶に残っている。(高橋正子)
★啼き合いて秋燕万羽葦の原/ 佃 康水
燕が南の国へ帰るときがきた。それぞれの場所で過ごしていた燕たちは、千羽も万羽もというほど集まって、旅立つ前を過ごす。葦原に集まって啼きあっている。旅立つ前の忙しさと一抹のさびしさを思う。(高橋正子)、
【銅賞3句】
★鰯雲白きを見れば旅心/河野啓一
鰯雲が白く空高くに広がるのをみれば、誰の心にも遠くへ、旅へ、出たい気持ちが湧くのだろうと思う。(高橋正子)
★カマキリの怒りは吾へ指差せば/祝恵子
カマキリは攻撃されると大きな鎌を振り上げる。カマキリを指差しただけで、怒りが自分に向かうとは。いよいよ命短くなったカマキリの抵抗か。(高橋正子)
★子らの乗る飛機遠ざかる鰯雲/ 佃 康水
帰省した子供たちが、空港から帰路に就く。子らの乗った飛行機はぐんぐん小さくなって、鰯雲の広がりのなかに消えた。一抹のさびしさをまた会える楽しみに。(高橋正子)
【高橋信之特選/8句】
★一筆を画布に添えけり秋気澄む/小口泰與
俳句を嗜む人が秋の到来を待ちわびるように、絵を描く事に嗜みのある方も秋の景色の到来を待っているものです。日中はまだ残暑が厳しいながらも、そこはかとなき秋の気配に絵筆を執った作者である。一筆を画布に添えるとの措辞に、その心情がよく表された。 (桑本栄太郎)
★籾殻に隠れし林檎香り立つ/廣田洋一
林檎箱を開けると一杯に詰まった籾殻の中に林檎が整然と並んでいる。その林檎箱を開けると林檎の素晴らしい香りが漂って食欲をさそう。秋の素敵な景ですね。 (小口泰與)
★鯔飛ぶや鷺の佇む被爆川/満天星
★啼き合いて秋燕万羽葦の原/ 佃 康水
★子らの乗る飛機遠ざかる鰯雲/ 佃 康水
★カマキリの怒りは吾へ指差せば/祝恵子
★一本の鉢植え甘藷の葉は繁り/祝恵子
★切り分けて冷えたる西瓜の赤尖る/ 髙橋正子
【高橋正子特選/8句】
★籾殻に隠れし林檎香り立つ/廣田洋一
木箱に入った林檎、籾殻に手を入れ探したものです。懐かしい思い出です。(祝恵子)
★街路樹に秋蝉小さく鳴いている/髙橋句美子
先日、公園の木々で啼いている秋の蝉に初めて遭遇し、とても嬉しく思いましたが、御句の「秋蝉小さく鳴いている」の措辞に小さな秋を見つけた!の思いと、夏蝉から秋蝉に変わったばかりのまだ弱々しい蝉のすがたを見せて頂きました。(佃 康水)
★鰯雲白きを見れば旅心/河野啓一
先日、飛行場で小さな鰯雲をみました。澄んだ青空へ白い鱗が美しく並んでいました。あの一つ一つの白い鱗を見ると秋への移ろいが感じられ、何となく侘しさも有り、何処かへ旅をしたい気持ちも湧いて来ますね。(佃 康水)
★一筆を画布に添えけり秋気澄む/小口泰與
★次次にかなかならしく鳴きにけり/小口泰與
★啼き合いて秋燕万羽葦の原/ 佃 康水
★子らの乗る飛機遠ざかる鰯雲/ 佃 康水
★回覧板持ちゆけば知る地蔵盆/祝恵子
【入選/4句】
★名乗り出で寸暇惜しむや法師蝉/桑本栄太郎
蝉の最後に出て来る法師蝉の鳴き声を上手く表現している。 (廣田洋一)
★木槿咲き客の送迎定食屋/廣田洋一
お好み屋の玄関に木槿が咲いているのを見たことがありますが、同じ情景をうまく詠われていると思いました。(満天星)
★雨上がり晴れたる空に秋の雲/廣田洋一
この時期の雨はわずかの時間にまとまって降るので、雨が上がるときも気持ちいいぐらいすっきりと上がります。その雨上がりの空に広がる秋の雲に、夏から秋へ移る季節が感じられます。 (高橋秀之)
★初鳴きの鈴虫音色がぎこちなく/高橋秀之
草むらではもう鈴虫が啼き始めたのですね。鈴を鳴らすような澄んだリーン、リーンと言う声が聞こえますが、如何にも涼しそうです。まだまだぎこちなく練習中なのでしょうか。本格的な秋ももうすぐですね。
(佃 康水)
■選者詠/高橋信之
★じゃがいもときゅうりのサラダ卓に盛らる
散文的で平易なな記述ながら、山盛りで豊かな秋の食卓を感じさせます。ユニークで面白いと思いました。(河野啓一)
★卓上の西瓜が切られ内部の赤
★団らんの卓に西瓜の赤楽し
■選者詠/高橋正子
★切り分けて冷えたる西瓜の赤尖る
真っ赤に熟れた新鮮な西瓜を良く冷やし、雫を滴らせながら頂く味は何とも言えません。切り分けた時のあの尖った部分が一段と美味で、いち早くかぶり付きたくなります。如何にも美味しそうな西瓜が目に浮かびます。(佃 康水)
★クーラーに吾亦紅活け秋呼べり
★薄まりし藍の色なる牽牛花
■互選高点句
■互選高点句
●最高点(5点)
★子らの乗る飛機遠ざかる鰯雲/ 佃 康水
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
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