★秋の潮満ち来る波の触れあいて 正子
穏やかな秋の日に、潮波の触れ合う音が聞こえてくるようです。(祝恵子)
○今日の俳句
寄りし娘に持たす枝豆ゆでたてを/祝恵子
ゆでたてのほっくりした枝豆に母のさりげない愛情が読み取れる。立ち寄る娘のさりげなさも、自然体で美しい。(高橋正子)
○現の証拠(げんのしょうこ)

[げんのしょうこ/横浜・四季の森公園] [げんのしょうこ/東京・向島百花園]
★うちかヾみげんのしょうこの花を見る/高浜虚子
★山の日がげんのしょうこの花に倦む/長谷川素逝
★手にしたるげんのしょうこを萎れしめ/加藤楸邨
★草掻き分けてげんのしょうこの花がある/高橋信之
★十月のげんのしょうこは可愛ゆしと/高橋正子
げんのしょうこは、ドクダミ、センブリなどの日本の3大民間薬として用いられる。戦後の四国に居たときのことだが、げんのしょうこを近くの空地などで採取、乾燥し、煎じて飲んだ。下痢の症状に効果があって、これも60年以上も昔の懐かしい思い出なのだが、その美しい花を見た記憶がない。げんのしょうこを「可愛ゆし」と見た率直な実感がいい。(高橋信之)
げんのしょうこは、季語では夏。昨日10月5日、四季の森公園へ信之先生と行った。野外に出かけるときの服装は、家を出るとき少し薄着をして、涼しいくらい、寒いくらいで出かけるのが私の常。それに調整のきく服や手袋、マフラー、スカーフなどを持つ。それに山行きの服装を好んでいる。それ向きに繊維も新素材を使っているせいか、何年たっても痛みも少なく重宝している。
四季の森には、いろいろ珍しいものも、そうでないものも咲いていた。げんのしょうこを林縁の落葉が積む中で見つけた。草丈10センチほどで、花も8ミリほど。小さかった。もう終わりなのだ。関東には白花が多いときくが、昨日も白花であった。民間薬として下痢止めに飲まれているそうだが、私は飲んだことはない。紅色にしろ、白色にしろ、可愛い花だ。
昨日の四季の森公園は秋の花がいろいろと。吾亦紅、山とりかぶと、ノダケ、ヤブマメ、イヌショウマ、釣船草、黄釣船草、溝そば、水引草、ヒヨドリ草、彼岸花、白彼岸花、野菊(おもにはヨメナ)、葦の花、薄コスモス、キツネノマゴ(なぜマゴなのでしょう?)、アメリカセンダングサ、サンシュの実、それに林縁の縁の日陰にはきのこ類など。
マユタテアカネという緋色のしっぽの赤とんぼ、馬追いが、ロープに止まって、カメラを近づけても飛び立たない。キリギリスがよく鳴き、つくつく法師が遠くから聞こえた。野鳥、これがなにかわかないが森に2,3種鳴くのが聞こえた。幸い昨日は、四季の森のスタッフのかたにし草の名前をいろいろ聞くことができた。山とりかぶとはこの山にたくさんあるとのこと。紫式部は見つけることができなかった。カワセミの飛翔も見た。
★かわせみ飛ぶ青の速さというべくに/高橋正子
ゲンノショウコ(現の証拠 Geranium thunbergii)は、フウロソウ科の多年草。日本では北海道の草地や本州~九州の山野、また朝鮮半島、中国大陸などに自生する。生薬のひとつであり、植物名は「(胃腸に)実際に効く証拠」を意味する。玄草(げんそう)ともいう。茎は約30-40cmに伸び、葉は掌状に分かれる。紅紫色または白紫色の花は夏に開花し、花弁は5枚(紅紫花種は西日本に、白紫花種は東日本に多く見られる)。秋に種子を飛散させた後で果柄を立てた様が神輿のように見える事から、ミコシグサとも呼ばれる。近い仲間にアメリカフウロ、老鶴草などがある。
ゲンノショウコはドクダミ、センブリなどと共に、日本の民間薬の代表格である。江戸時代から民間薬として用いられるようになり、『本草綱目啓蒙』(1803年)にも取り上げられた。現代の日本薬局方にも「ゲンノショウコ」として見える。但し、伝統的な漢方方剤(漢方薬)では用いない。有効成分はタンニン。根・茎・葉・花などを干し煎じて下痢止めや胃薬とし、また茶としても飲用する。飲み過ぎても便秘を引き起こしたりせず、優秀な整腸生薬であることからイシャイラズ(医者いらず)、タチマチグサ(たちまち草)などの異名も持つ。
生活する花たち「野菊・藤袴・萩」(東京・向島百花園)

★刈り進む稲田の真っ赤なコンバイン 正子
今、当に稲刈りの真っ最中です。黄金に熟れた豊かな稲田を真っ赤なコンバインが爽やかな音を響かせて刈り進んでいる。コンストラストが鮮明でコンバインの勢いと刈り進んでゆく人の収穫の歓びも合わせ見えて参ります。(佃 康水)
○今日の俳句
満月や瀬戸の潮騒高まりぬ/佃 康水
月に左右される潮の干満。満月が昇ると、おだやかな瀬戸もざわざわと潮騒が高まる。潮騒の高まりに、ますます輝く満月となって、臨場感のある句となった。(高橋正子)
○貴船菊
[貴船菊/横浜日吉本町] [貴船菊/イギリス・コッツウォルズ]
★観音の影のさまなる貴船菊/阿部みどり女
「秀明菊」という名前を俳句では使いにくい。「秀明」という漢字が俳句的ではない。ことに「秀」が。したがって「貴船菊」を使うことになる。菊とは言え菊とは別の仲間。一重のものは、花の形が大ぶりながら可愛い。愛媛の砥部に住んでいたころ、近所の上品な夫人の家に一もと白があった。あちこちでも見るが、たいてい数本である。去年9月にイギリスに旅行したとき、コッズウォルズ地方の家々に咲きみだれていた。コッズウォルズで貴船菊に遇うとは、と驚いたのだが、しばらく見ているうちにそれがいかにもこの地方らしいと、納得した。大かたは、ピンク系であと少し白があった。ライムストーンの石壁によく馴染んでいた。コッズウォルズでも貴船菊は生活する花たちである。暮らしにも、家のたたずまいにも密着している。イングリッシュガーデンが日本でも一部で流行だが、一番は色合いが絵画的で、ゆっくりとした透明な時間が流れている。
★小さき村貴舟菊をどの家も/高橋正子
秀明菊は貴船菊ともいう。俳句では貴船菊が多い。多く観られる京都洛北の貴船に由来する。ピンクの花弁は実は額片で中央の黄色は雄蕊、地下茎で増える。
シュウメイギク(秋明菊、学名:Anemone hupehensis var. japonica)とは、キンポウゲ科の植物の一種。別名、キブネギク(貴船菊)。名前にキクが付くが、キクの仲間ではなくアネモネの仲間である。中国から古い時代に入ってきた帰化植物である。文献上では「花壇綱目」に「秋明菊」の名前で記載が成れていて、日本に定着していたことが窺える。中国では明代末の「本草綱目」には記載はなく「三才図会」に「秋牡丹」の名前で記載されるようになる。「秋牡丹」の呼称は貝原益軒も「大和本草」で使用している。以後日本の園芸書には「秋明菊」「秋牡丹」で紹介されることが多くなり、「しめ菊」「紫衣菊」「加賀菊」「越前菊」「貴船菊」「唐菊」「高麗菊」「秋芍薬」などの多様な別名で呼ばれることになった。花色は赤紫色であるが、近年、他種との交配品種が市販されるようになり、弁数が少ない品種や白色の品種が多く栽培されて名称の混乱が見られる。多年草で開花期は秋、高く伸びた花茎の上に大柄な花をつける。花は多数の赤紫色の花弁状の萼片が目立ち、本物の花弁はない。
◇生活する花たち「ノダケ・シロバナサクラタデ・ユウガギク」(東京白金台・国立自然教育園)

★藤袴スカイツリーのいや真直ぐ 正子
古来より親しまれた秋の七草と、時代の最先端のタワーとの対照的な存在感ながら、秋空のもと美しく爽やかな景観です。淡紫色の小花の藤袴と空へ真っ直ぐ伸びる巨大なスカイツリーが新鮮に目に映り、風景の広がりを感じさせてくれます。(藤田洋子)
○今日の俳句
幾重にも石積みの畑秋高し/藤田洋子
段々畑は、石を積み上げて猫の額ほどの畑を山頂へと幾段も作った。作物にやる水も下から桶で運びあげねばならず、日本の零細農業の象徴のような存在だが、その景観は美しい。秋空を背にして山頂までの石垣がまぶしい。(高橋正子)
○現の証拠(げんのしょうこ)

[げんのしょうこ/横浜・四季の森公園] [げんのしょうこ/東京・向島百花園]
★うちかヾみげんのしょうこの花を見る/高浜虚子
★山の日がげんのしょうこの花に倦む/長谷川素逝
★手にしたるげんのしょうこを萎れしめ/加藤楸邨
★草掻き分けてげんのしょうこの花がある/高橋信之
★十月のげんのしょうこは可愛ゆしと/高橋正子
げんのしょうこは、ドクダミ、センブリなどの日本の3大民間薬として用いられる。戦後の四国に居たときのことだが、げんのしょうこを近くの空地などで採取、乾燥し、煎じて飲んだ。下痢の症状に効果があって、これも60年以上も昔の懐かしい思い出なのだが、その美しい花を見た記憶がない。げんのしょうこを「可愛ゆし」と見た率直な実感がいい。(高橋信之)
ゲンノショウコ(現の証拠 Geranium thunbergii)は、フウロソウ科の多年草。日本では北海道の草地や本州~九州の山野、また朝鮮半島、中国大陸などに自生する。生薬のひとつであり、植物名は「(胃腸に)実際に効く証拠」を意味する。玄草(げんそう)ともいう。茎は約30-40cmに伸び、葉は掌状に分かれる。紅紫色または白紫色の花は夏に開花し、花弁は5枚(紅紫花種は西日本に、白紫花種は東日本に多く見られる)。秋に種子を飛散させた後で果柄を立てた様が神輿のように見える事から、ミコシグサとも呼ばれる。近い仲間にアメリカフウロ、老鶴草などがある。
ゲンノショウコはドクダミ、センブリなどと共に、日本の民間薬の代表格である。江戸時代から民間薬として用いられるようになり、『本草綱目啓蒙』(1803年)にも取り上げられた。現代の日本薬局方にも「ゲンノショウコ」として見える。但し、伝統的な漢方方剤(漢方薬)では用いない。有効成分はタンニン。根・茎・葉・花などを干し煎じて下痢止めや胃薬とし、また茶としても飲用する。飲み過ぎても便秘を引き起こしたりせず、優秀な整腸生薬であることからイシャイラズ(医者いらず)、タチマチグサ(たちまち草)などの異名も持つ。
生活する花たち「野菊・藤袴・萩」(東京・向島百花園)

★金水引つゆ草さくら蓼野が埋まり 正子
春のピークと同様、秋の季節のピークには野山には秋の草花で覆われます。まさに秋の園、草の花、秋の色ですね!!青空に映えて散策が一際楽しくなる気候となりました。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
四条大橋~高瀬川界隈
せせらぎの岸に茶店や水の秋/桑本栄太郎
せせらぎのほとりの茶店はいいものだ。ゆっくりとお茶を飲みながら水音を聞き、水を眺める。「水の秋」の爽やかさである。(高橋正子)
○昨日は中秋の名月。今夜は特大満月。スーパームーン。次回のスーパームーンは来年の11月27日だそうだ。14か月先。10日近く風邪をひいているが、咳がひどいが、インフルエンザかもしれない。今年は、インフルエンザで学級閉鎖もありと知る。(2015)
満月のひかり花色照らしだす 正子
満月の葛の花色照らしだす 〃
満月の色やわらかに昇り初め 〃
風邪熱の覚めて月のベランダに 〃
◇ロンドンシティ◇
[ロンドン・ハロッズの電飾] [睡蓮(ロンドン・キューガーデン)]
2011年
今日は、今回のイギリス旅行の最後の観光となる。明日、ロンドンヒースロー空港発の便で帰国の予定。
今日の予定は、ヒースローのホテル(ホリディインロンドンヒースロー M4 JCT 4)を午前8時15分に出発。午前がロンドン市内観光。午後は自由行動。
○ロンドン
ロンドンの観光名所はすでにたくさんの写真で日本でもみんなに知られている。国会議事堂の時計ビッグ・ベン、ロンドン塔、タワーブリッジ、ロンドン橋(なんの変哲もない橋)、ウェストミンスター寺院、セント・ポール大聖堂、バッキンガム宮殿をバスの窓から。バッキンガム宮殿は降りて写真を撮ったりした。それからテムズ川の水。昼食は、イギリスの代表的な料理フィッシュアンドチップスを食べたが、これはフリーメイソンの建物の近くにある。「フリーメイソン」と聞くと、不思議な気分になる。昼食後、ロンドン三越で40分ほど買い物。その後自由行動。キューガーデンに行くことにした。三越があるところは、ピカデリーサーカス。このピカデリサーカスから、地下鉄(チューブと愛称されるが)でキューガーデンまで行く。ロンドン市内から3、40分。ピカデリー線のハンマースミス駅まで行き、そこからリッチモンド行きに乗り換え、キューガーデン駅で降り、徒歩15分ほどで、キュウーガーデンに着く。駅からほぼ真直ぐな道だ。
二階バス次々来たり秋暑し
○キューガーデン
キューガーデンでは、時間があまりないので、まず温室を見学。温度は28度Cに設定され、水蒸気をふかしているところもある。アフリカ、オーストラリア、などと分けられそこの熱帯植物が沢山集められている。いちいち名前を確認して写真をとることもできないので、よいと思ったものを次々に映した。日本で観葉植物として売られているものも多く見かけた。日日草などはアフリカの花である。胡蝶蘭は見事。温室の地下は水生植物や海藻などもあり、魚もいる。これはさすがと驚いた。
温室の後は、オニバスを見ようとウォーターリリーハウスに入ったが、運よく、水連の見ごろで、色とりどりの花が咲いていた。黄色、ピンク、紫、白など。日本で見かけるのと違って、花が大きい。茎も水の上に出て、やがて倒れて花が水に浮くようだ。蓮の花があったが、これに注意書きがあり、これは睡蓮ではないのだと書かれてあった。
温室を見たあと、なんとか伯爵公園、とか薔薇園を見る。もっと奥へゆくと宮殿があるのだが、そこに行く時間はない。薄の類を集めたとろこがあり、チカラシバまであった。歩けば、野菊、ほととぎす、日本の楓もある。ガチョウだろうか芝生に飼われて糞に気をつけながら歩いた。芝生には、マーガレットより小さい野菊ほどの白い花が芝に埋もれるように、日本でいえば、蒲公英のように咲いている。見学のあとショップでこの花を周りにあしらった写真立てを句美子が買った。三越集合が5時45分なので、四時半過ぎにキューガーデンを後にした。キューガーデンの駅にも咲きほどの白い小花のイラストが描かれてかわいいえきであった。苗や球根を売っている店も駅前にはいろいろあった。
睡蓮の花いろいろに水を出る
夕食は、三越近くの中華料理。夕食後、ヒースローのホテルへ向かうが、ハロッズがデパートの建物を小さな電飾で飾っていた。添乗員さんも初めて見たとのことである。ハロッズはロンドンシティのはずれにある。シティを出れば一路ヒースローのホテルへと走った。夜は帰宅の準備となって、カッスル・クームで拾った栃の実を残念ながらゴミ箱へ捨てた。
栃の実を捨てて旅の終わりなり
◇生活する花たち「茶の花・犬蓼・吾亦紅」(横浜下田町・松の川緑道)

★露草の青のいのちの正午まで 正子
あちこちの路傍に生える露草は一年草で青色の花をさかせる。月光を浴びて咲くので月草とも言われ、正午頃には綺麗な青色が覚め始める。初秋に可憐に咲く素敵な花ですね。(小口泰與)
○今日の俳句
とんぼうととんぼの影の水面かな/小口泰與
とんぼうが水面を飛ぶ。そのとんぼの影も水面にある。澄んだ水面と、とんぼうの翅の透明感がよい。(高橋正子)

[白鳥(コッツウォルズ バイブリー)] [シェイクスピアの家(ストラトフォード・アポン・エイボン)]
◆イギリス俳句の旅2011◆
○バイブリー
コッツウォルズ地方と言えば、日本ではバイブリーの景色がなじみとなっている。この町は世界一きれいな町として、実際ここに住んだウィリアム・モリスが言っている。彼は町の保存に力を尽くしているが、もとはウールで栄えた町だった。産業が下火になり、家を建て替えたりする資金がなく、昔のままが保存されたということである。家は、近くで多く産出されるライムストーンという砂岩で出来たブロックを積んで造られて、独特の風合いとなっている。小川も大変きれいで、ウールで栄えたころの教会がある。ライムストーンは、湿度や気温などその土地によって、変色がさまざまであるそうだ。花が家を飾り、これが普段の人々の生活そのものであることに驚かされる。教会のとなりに小さな小学校があるが、しずかに授業をしている声が聞こえた。乗用車がひっきりなしに通るのも不思議なほどだ。
水澄んで白鳥ふうわり流れくる
○ボードン・オン・ザ・ウォーター
ボードン・オン・ザ・ウォーターは、町を浅い川がながれ、川のほとりは、芝生が植えられベンチが置いてある。川に六本橋がかかっているが、二〇歩ほどで渡れる橋だ。観光にきた老人も多く、町の人に交じってゆっくりお茶を楽しんでいる。ここのティーハウスで、お昼前だったが、クリームティーを句美子と楽しんだりした。クリームティーは、紅茶とスコーンのセットを楽しむお茶のことで、スコーンにジャムとバタークリームが付いて供された。アールグレイを頼むとゆったりとしたティーポットに入れてきてくれた。
お茶のあと、観光街を外れてあるいていると、「ポッタリー175ヤード」の小さな標識があったので、そのポッタリーをさがして歩いた。ヤードはたぶん、「ひとひろ(両手をのばした長さ)」ではなかったかと、思いつつ歩くと間もなく見つかった。
店に入って驚いた。益子焼とバーナードリーチの作品に非常に似ている。なにかそういう影響を受けたのかと店の女主人に聞くとそうだという。彼女も芸術家で彫刻と絵付をしている。主人が焼いている。ミルクピッチャーを一つかった。益子焼に似ている。彼女によれば、浜田庄司の湯呑をひとつもっているとのことだった。パンフレットにはリーチイーストセンターでご主人が勉強したと書いてあった。近くで産出されるこれもライムストーンを使っているようであった。モリスにしろ、リーチの影響を受けたご主人にしろ、思ってもみなかった縁がここにあることに、驚かざるを得なかった。
秋夕日羊にそれぞれ影生まる
○ストラトフォード・アポン・エイボン
シェークスピアの生家を訪ねる前に、妻のアンの生家を訪ねた。趣のある藁ぶき屋根の家で庭には当時植えられていたであろう花がいろいろ植えてあった。屋根には小さな金網を掛けてあり、小鳥が巣づくりで藁を抜いていかないようにするためと聞いた。
シェークスピアの生家は、街のなかにあり、写真で見るより小さかった。シェークスピアが生まれた両親の部屋なども見たがベッドもずいぶん小さい。大きくなると、背に大きな枕当てて、半身を起して寝たようだ。体を伸ばして寝ると死んだように見えるからとも言っていた。暖炉があり、冬は湿った薪を焚くので、部屋は煙りがもうもうとなり窓を開けて寝たとも。そのために、ナイトキャップが必要とされたそうだ。父親は皮職人だったので、皮手袋をぶら下げて売っていた部屋もあった。今は裏庭に秋のはなが咲き乱れていたが、トサツ場であったようで、牛の骨が見つかっている。ドラマ仕立ての説明があったが、ドラマティックに仕立ててあって、演劇の素地がこの街にあることを十分に感じた。著名演劇人に交じって日本人では黒沢明の写真が1枚あった。
この街の中学生や高校生をバスが停車しているとき見たが、日本人とわかると、「こんにちは。」と声をかけてくる。日本の普通の中学生と変わらない。明るい雰囲気のする街であった。シェークズピアが眠る教会を訪ねたが、アプローチに12使徒を表す菩提樹が12本両脇に植えてあった。エイボン川の流れが静かであった。
シェイクスピアの生家
秋晴るる日射し庭の花々に
◇生活する花たち「藻の花・萩・藪蘭」(鎌倉・宝戒寺)

★林檎手に送られ来しが赤ほのと 正子
遠くから送られてきた林檎。手に取ってみればほんのりと赤く色づいている。林檎そのものへの慈しみのみならず、遥か旅してきた林檎への労り、贈り主への感謝の思いも読み取ることができます。(小西 宏)
○今日の俳句
静かなる海の遠さや稲光/小西 宏
海ははるかに遠くに静かに横たわる。全く平らかに。ところが、その海をいらだたせるかのように、稲光が走る。平らな海と稲妻が好対照。(高橋正子)
○柚香菊(ゆうがぎく)

[柚香菊/東京小金台・国立自然教育園]
★花開ききったり柚香菊そこに/高橋信之
★花びらの欠けるかに咲き柚香菊/高橋正子
★やや寒し柚香菊の白を帯ぶ/〃
★茎すっと伸びて岐れて柚香菊/〃
★湖の縁にならんで柚香菊/高橋句美子
ユウガギク(柚香菊、学名:Kalimelis pinnatifida) は、キク科ヨメナ属の多年草で、やや湿性の高い場所に自生し、いわゆる「野菊」の仲間である。草丈50cmほどで、しばしば1mを越える。上部で花茎を分け、花期は6月下旬~11月、茎頂に径3cm前後の白から淡紫色の典型的なキク型の花をつける。葉は、幅3cmほど、長さ8cm前後の卵状長楕円形で、通常、葉縁に鋭く浅い切れ込みか、または羽状の中裂が入る。本州の近畿地方以北に分布し、関東地方以北に分布するカントウヨメナにとてもよく似ている。近年、シロヨメナをヤマシロギクの別名としたり、その逆としたり、シロヨメナとヤマシロギクを混同する記載が結構目立つ。シロヨメナとヤマシロギクはともにノコンギクの亜種だが、別種である。ヤマシロギクは東海地方以西に分布し、シロヨメナの分布は本州~九州・台湾である。シロヨメナはしばしばヤマシロギクとの間に雑種を作るのでこのような混同がおきているのかもしれない。「柚香菊」は、ユズの香りがするとの命名だが、葉を揉んでもユズの香りは確認できていない。
★野菊持ちし女の童に逢ひぬ鈴鹿越/正岡子規
★足元に日のおちかかる野菊かな 一茶
★湯壷から首丈出せば野菊かな/夏目漱石
★蝶々のおどろき発つや野菊の香/前田普羅
★頂上や殊に野菊の吹かれをり/原石鼎
★かがみ折る野菊つゆけし都府楼址/杉田久女
横浜日吉・慶大グランド
★サッカーの練習熱帯ぶ野菊咲き/高橋正子
柚香菊は、野菊の仲間である。野菊(のぎく)とは、野生の菊のことである。よく似た多くの種があり、地域によってもさまざまな種がある。一般に栽培されている菊は、和名をキク(キク科キク属 Dendranthema grandiflorum (Ramatuelle) Kitam.)と言い、野生のものは存在せず、中国で作出されたものが伝来したと考えられている。したがって、菊の野生種というものはない。しかしながら、日本にはキクに似た花を咲かせるものは多数あり、野菊というのはそのような植物の総称として使われている。辞典などにはヨメナの別称と記している場合もあるが、植物図鑑等ではノギクをヨメナの別名とは見なしていない。現在では最も身近に見られる野菊のひとつがヨメナであるが、近似種と区別するのは簡単ではなく、一般には複数種が混同されている。キク科の植物は日本に約350種の野生種があり、帰化種、栽培種も多い。多くのものが何々ギクの名を持ち、その中で菊らしく見えるものもかなりの属にわたって存在する。
野菊は、野生の植物でキクに見えるもののことである。キクはキク科の植物であるが、この類の花には大きな特徴がある。菊の花と一般に言われているものは、実際には多数の小さい花の集合体であり、これを頭状花序と言う。頭状花序を構成する花には大きく2つの形があり、1つはサジ型に1枚の花弁が発達する舌状花、もう1つは花弁が小さく5つに割れる管状花である。キクの花の場合、外側にはサジ型の舌状花が並び、内側には黄色い管状花が密生するのが基本である。
◇生活する花たち「ノダケ・シロバナサクラタデ・ユウガギク」(東京白金台・国立自然教育園)

★もろこしのつめたさつまり露の冷え 正子
朝夕田畑に露が置き敷かれる秋口はちょうどトウモロコシが稔るころ。その実を手に取ると、ぎっしりとつまった粒があたかも露の玉のようのように冷たくも感じられますね。軽妙な詠みが秋の到来を実感させてくれます。(河野啓一)
○今日の俳句
深み行く秋空ひろきベッドかな/河野啓一
入院生活も長くなられ、猛暑の夏を越して秋になった。ベッドから眺める秋空がひろびろと、色深くなってきて、もの思う作者の心境が察せられる。(高橋正子)
○先週の土曜日から風邪。その前日病院に診察に行ったばかりだが、その翌日から風邪。今日連休明けで病院に行くが、私が医者に述べている症状よりも重いと医者に言われ、吸入薬など薬をいろいろもらい安静にする。このたびの風邪は倦怠感が強い。(2015)
○酔芙蓉
[酔芙蓉/横浜・四季の森公園] [酔芙蓉/横浜日吉本町]
★震度四芙蓉の酔ひをうながしぬ/水原春郎
★無雑作な土鉢に風の酔芙蓉/皆川盤水
★歌詠みの留守を預けし酔芙蓉/品川鈴子
★漲るは朝の大気の酔芙蓉/稲畑汀子
★酔芙蓉向かうをむいてをりにけり/高橋将夫
★日の暮れの日のあるうちの酔芙蓉/鷹羽狩行
★枝ぶりの日ごとに替る芙蓉かな 芭蕉
★日輪病めり芙蓉の瓣の翳ふかく 亞浪
松山の郊外に一時住んでいたときは、玄関に芙蓉があり、花に隠れて水道があった。そこでは、盥で洗濯をしたが、花の傍で水をいっぱい使って洗濯をすると、気分もさわやかだった。
★深まれる秋の真中の酔芙蓉/高橋正子
フヨウ(芙蓉、Hibiscus mutabilis)はアオイ科フヨウ属の落葉低木。種小名 mutabilisは「変化しやすい」(英語のmutable)の意。「芙蓉」はハスの美称でもあることから、とくに区別する際には「木芙蓉」(もくふよう)とも呼ばれる。原産地は中国で、台湾、日本の沖縄、九州・四国に自生する。日本では関東地方以南で観賞用に栽培される。
同属のムクゲと同時期に良く似た花をつけるが、直線的な枝を上方に伸ばすムクゲの樹形に対し、本種は多く枝分かれして横にこんもりと広がること、葉がムクゲより大きいこと、めしべの先端が曲がっていること、で容易に区別できる。
スイフヨウ(酔芙蓉、Hibiscus mutabilis cv. Versicolor) 朝咲き始めた花弁は白いが、時間がたつにつれてピンクに変色する八重咲きの変種であり、色が変わるさまを酔って赤くなることに例えたもの。なお、「水芙蓉」はハスのことである。混同しないように注意のこと。 アメリカフヨウ(草芙蓉(くさふよう)、Hibiscus moscheutos、英: rose mallow) 米国アラバマ州の原産で、7~9月頃に直径20cmにもなる大きな花をつける。草丈は1mくらいになる。葉は裂け目の少ない卵形で花弁は浅い皿状に広がって互いに重なるため円形に見える。この種は多数の種の交配種からなる園芸品種で、いろいろな形態が栽培される。なかには花弁の重なりが少なくフヨウやタチアオイと似た形状の花をつけるものもある。
生活する花たち「白むくげ・萩・藤袴」(東京・向島百花園)

★山萩を黄蝶をわが目に遊ばせる 正子
草冠に秋と書いて萩と読ませる。昔の人にとっては萩は秋を象徴する花だったのでしょうか。そんな萩も山萩となるとそんなに目立つ花ではなく地味な感じとなる。そこへ秋の黄色の蝶が飛来する。「わが目に遊ばせる」の主語は何かと考える。秋をつかさどる自然の神かと思って読みました。豊かな秋に対する喜びと自然に対する感謝とも読み取れる句である。(古田敬二)
○今日の俳句
書道展
秋の字が黒々生まれる太い筆/古田敬二
墨痕の鮮やかさが一番引き立つのは季節でいえば、秋ではなかろうか。太筆で黒々と書かれた字が力を得ている。(高橋正子)
○杜鵑草(ほととぎす)
[杜鵑草/横浜日吉本町] [ヤマホトトギス/東京白金台・国立自然教育園]
★杜鵑草暮れ母の忌の仏間暮る/林 翔
★時鳥草顔冷ゆるまで跼(セグク)みもし/岸田稚魚
★紫の斑の賑はしや杜鵑草/轡田 進
★杜鵑草壺中にくらき水湛う/養学登志子
「杜鵑」は鳥のほととぎす。「杜鵑草」と書けば、植物のほととぎすである。我が家の庭の下草に植えていた。なかなか丈夫で秋になると赤紫の班がある花をつける。暗いようでもあり、にぎやかなようでもある。玄関に花がない日には、この花を一茎摘んで籠に挿した。それだけで結構様になる。庭や近くの野辺の一輪の花が空間にうるおいを与えてくれた。杜鵑草もそんな花のひとつである。
★活けたれば花が飛びたる杜鵑草/高橋正子
ホトトギス属(杜鵑草属、学名 Tricyrtis)は、ユリ科植物の属の多年生草本植物である。山野の林下や林縁、崖や傾斜地などの、日当たりの弱いところに自生する。葉は互生し、楕円形で長く、葉脈は縦方向で、表面には毛が生える。花期は初夏から秋にかけてで、雌雄同花で上向きに咲き、花弁が 6枚で直径数cm程度のもので 2?4日程度咲くことが多い。東アジア(日本、台湾、朝鮮半島)に分布し、19種が確認されている。そのうち日本では 13種(変種を除く)が確認されており、うち 10種は日本固有種である。 日本列島を中心に分布していることから、日本が原産であると推定されている。
ホトトギス Tricyrtis hirta (Thunb.) Hook 代表種。草丈は 1m になり、花は葉腋に 1?3個ずつ付き、4日間咲く。花期は秋。関東・新潟県以西に分布する。 ヤマホトトギス Tricyrtis macropoda Miq. 関東以西の太平洋側および長野県に分布し、草丈は 1m ほどになる。花は 2日間で、茎の先に花序を伸ばし、晩夏に咲く。花びらの折れたところに斑紋が入らず、花びらが反り返るところで判別できる。
ムベ(郁子、野木瓜、学名:Stauntonia hexaphylla)は、アケビ科ムベ属の常緑つる性木本植物。別名、トキワアケビ(常葉通草)。方言名はグベ(長崎県諫早地方)、フユビ(島根県隠岐郡)、イノチナガ、コッコなど。
日本の本州関東以西、台湾、中国に生える。柄のある3~7枚の小葉からなる掌状複葉。小葉の葉身は厚い革質で、深緑で艶があり、裏側はやや色が薄い。裏面には、特徴的な網状の葉脈を見ることが出来る。
花期は5月。花には雌雄があり、芳香を発し、花冠は薄い黄色で細長く、剥いたバナナの皮のようでアケビの花とは趣が異なる。
10月に5~7cmの果実が赤紫に熟す。この果実は同じ科のアケビに似ているが、果皮はアケビに比べると薄く柔らかく、心皮の縫合線に沿って裂けることはない。果皮の内側には、乳白色の非常に固い層がある。その内側に、胎座に由来する半透明の果肉をまとった小さな黒い種子が多数あり、その間には甘い果汁が満たされている。果肉も甘いが種にしっかり着いており、種子をより分けて食べるのは難しい。自然状態ではニホンザルが好んで食べ、種子散布に寄与しているようである。
主に盆栽や日陰棚にしたてる。食用となる。日本では伝統的に果樹として重んじられ、宮中に献上する習慣もあった。 しかしアケビ等に比較して果実が小さく、果肉も甘いが食べにくいので、商業的価値はほとんどない。
茎や根は野木瓜(やもっか)という生薬で利尿剤となる。
◇生活する花たち「露草・なんばんぎせる・玉珊瑚(たまさんご)」(東京白金台・自然教育園)
