1日8日(日)

★水仙の向きを変えみて寒の入  正子

○今日の俳句
  治水橋
何処までも青空冴ゆる橋向こう/小川 和子
人は「橋」に特別な思いを寄せることが多い。橋の向こうは、知らない町へと続く。橋向こうの冴えた青空にその続きを思うこともある。(高橋正子)

●横浜そごうへ買い物に。
萩焼の展示会があるので立ち寄る。句美子が古希の祝いに萩焼の急須を買ってくれた。一晩水に漬け、2日間かんそうさせて、それから使うように教えてもらった。藁灰の釉のかかった白い萩。草木灰だと、透明な、普通の萩となるそうだ。使用中の急須も展示してあり、使えば、このように嵌入が入るという見本。

句美子が家に画が一枚ほしいものだ冗談交じりにというので、そごうの画廊を見る。買えそうな画は、買うことにはならないが、15万円までと踏んで、見て回る。ありました。とても欲しい。上村敦之のリトグラフ「薫風」と題したもの。何とも言えないバックの水色が美しい。葦の葉が数枚、鶺鴒が一羽、少し嘴を開いて、歌うような、話すような感じで描かれている。saleとあって12万円。リトグラフとは思えない。

駿河屋でくずあられを食べて今年の正月は終わり。

○福寿草(元日草)

[福寿草/横浜・四季の森公園]
★花よりも名に近づくや福寿草 千代女
★小さくても昇殿すなり福寿草 一茶
★暖炉たく部屋暖かに福寿草 子規
★日の障子太鼓の如し福寿草 たかし
★南窓にはれし筑波や福寿草/大竹孤悠
★福寿草家族のごとくかたまれり/福田蓼汀
★福寿草ひらきてこぼす真砂かな/橋本鶏二

 フクジュソウ(福寿草、学名:Adonis ramosa)は、キンポウゲ科の多年草。別名、ガンジツソウ(元日草)。毒草である。1月1日の誕生花。日本では北海道から九州にかけて分布し山林に生育する。シノニム(同一種を指す同意語)の種小名である amurensis は「アムール川流域の」という意味。花期は初春であり、3-4cmの黄色い花を咲かせる。当初は茎が伸びず、包に包まれた短い茎の上に花だけがつくが、次第に茎や葉が伸び、いくつかの花を咲かせる。この花は花弁を使って日光を花の中心に集め、その熱で虫を誘引している。その為、太陽光に応じて開閉(日光が当たると開き、日が陰ると閉じる)する。葉は細かく分かれる。夏になると地上部が枯れる。つまり初春に花を咲かせ、夏までに光合成をおこない、それから春までを地下で過ごす、典型的なスプリング・エフェメラルである。根はゴボウのようなまっすぐで太いものを多数持っている。
 春を告げる花の代表である。そのため元日草(がんじつそう)や朔日草(ついたちそう)の別名を持つ。福寿草という和名もまた新春を祝う意味がある。江戸時代より多数の園芸品種も作られている古典園芸植物で、緋色や緑色の花をつける品種もある。正月にはヤブコウジなどと寄せ植えにした植木鉢が販売される。ただし、フクジュソウは根がよく発達しているため、正月用の小さな化粧鉢にフクジュソウを植えようとすると根を大幅に切りつめる必要があり、開花後に衰弱してしまう。翌年も花を咲かせるためには不格好でもなるべく大きく深い鉢に植えられたフクジュソウを購入するとよい。露地植えでもよく育つ。また、根には強心作用、利尿作用があり民間薬として使われることがある。しかし、毒性(副作用)も強く素人の利用は死に至る危険な行為である。薬理作用、毒性共にアドニンという成分によるものと考えられている。花言葉は永久の幸福、思い出、幸福を招く、祝福。

◇生活する花たち「冬桜・水仙・万両」(横浜日吉本町)

1日7日(土)

★七草の書架のガラスの透きとおり  正子
正月七日、ようやく日常に戻る七草のころ、きれいに磨かれた書架のガラスに、整然と並ぶ書物が見えるようです。年の始めの清々しさとともに、清潔感漂うお暮らしもうかがえます。(藤田洋子)

○今日の俳句
刻ゆるやかに七草粥の煮ゆるなり/藤田洋子
主婦にとって、正月はなにかと落ち着かなく過ぎるが、七草のころになると一段落する。ふつふつと煮える七草粥に、「刻ゆるやかに」の感が強まる。(高橋正子)

お飾りの稲穂に雀馳せて来し 正子
四日目の花切り戻し風邪籠り 〃
ストーブに背なが静かに温もれる  〃
一月はわが誕生月よ静かなれ   〃

●七草粥の菜は、乾燥した七草を使った。正月料理の材料と一緒に購入した。製造所を見ると、福山市。わが故郷の菜なり、だ。

故郷の春の七草買い求む     正子
七草粥の菜を買いたれば故郷の菜 正子

夜、年賀状の返事を信之先生の代筆分も含め書く。今年の年賀状の返事は終わり。

夜、作業用のモーツアルトをパソコンで聞きながら、ネットの仕事をする。ちょっと世界の民謡が聞きたくなって、ネットで前にも出会ったサイトだが、アイルランド民謡を聞く。しっとりしているのはやはりアイルランドだ。

○霜柱

[霜柱/横浜日吉本町]

★戦没の友のみ若し霜柱/三橋敏雄
★掌に愛す芙美子旧居の霜柱/神蔵器
★ふと踏んで瞬の童心霜柱/林翔
★昼の灯のもとの消えざる霜柱/宮津昭彦
★凸凹の人の道なり霜柱/高橋将夫
★霜柱さわさわ育てローム層/高橋正子
 愛媛・出石寺
★霜柱苔の真下にきらめき伸び/高橋正子

 日吉五丁目の丘を歩く。丘の上の農家に空地があって、そこには、剪定した木の枝などが積まれ、こぶしなどもある。その土の崩れかけたところに霜柱ができていた。五センチ位もあろうか。靴で踏んでしまって気付いたが、すぐ傍を見ると、霜柱が育っている。 植物と言えそうなほどの成長だ。畑に置く霜とはまた別のものだ。

愛媛に出石寺という寺がある。雲海の上にあって、そこで春先に俳句の合宿があった。八十八ケ所のお参りが一度にできるような小遍路が作ってあって、その路だったと記憶している。なにしろ、四十数年前のことなのだが、その石仏の並ぶ路に苔を持ち上げて、霜柱が育っていた。伸びすぎてやや曲がっている。これほどまで成長した霜柱は初めてだったので、印象は鮮烈だった。

霜柱(しもばしら)とは、地中の温度が0℃以上かつ地表の温度が0℃以下のときに、地中の水分が毛細管現象(毛管現象)によって地表にしみ出し、柱状に凍結したものである。霜柱の発生メカニズムはまず地表の水分を含んだ土が凍る。そこで、凍っていない地中の水分が毛細管現象で吸い上げられ、地表に来ると冷やされて凍ることを繰り返して、霜柱が成長するというものである。霜柱は地中の水分が凍ってできたものであり、霜とは別の現象。固まった土では土が持ち上がりにくいため霜柱は起こりにくく、耕された畑の土などで起こりやすい。また、関東地方の関東ロームは土の粒子が霜柱を起こしやすい大きさであるため、霜柱ができやすい。霜柱が起こると、土が持ち上げられてしまい、「霜崩れ」と呼ばれるさまざまな被害をもたらす。植物は根ごと浮き上がってしまい、農作物が被害を受ける。これを防ぐため、断熱材として藁を地面に敷き詰め地表の温度を地中の温度に近づけ、気温との断熱を行う。斜面などでは霜柱により浮き上がった土が崩れやすくなり、侵食が起きやすくなる。霜柱を見かけることが少なくなったという地域が増えているとの声もある[1]。地球温暖化による影響も考えられるが、都市部や郊外ではヒートアイランド現象による影響もあるほか、道路が舗装されて水分が少なければ霜柱は形成されない。地表と地中の温度差が必要なため、霜より短い期間しか起こらない。主に冬期に見られる現象なので、冬の季語となっている。

◇生活する花たち「蝋梅①・蝋梅②・さんしゅゆの実」(横浜・四季の森公園)

1日6日(金)

★餅を焼く火の色澄むを損なわず  正子
餅は、長い文化の中で、あるいは地域の広がりの中で様々に生きてきました。私の地方、子供の頃は、火鉢の炭火で、皆の見守る中で焼いていたことを思い出します。(今では我が家に火鉢もなく、オーブントースターで膨らませています)。先生のこの句は、やはり炭火で焼いていた頃を思い出させてくれます。火勢は強すぎてもいかず、ほどほどに明るい蜜柑色の光の中で、頃合いを図りつつひっくり返しては、柔らかに膨らむのを待っていました。(小西 宏)

○今日の俳句
★午後の陽にまだある氷割り遊ぶ/小西 宏
午後の陽がきらきらと氷に差している。日中も気温が上がらないと、こんな氷に出くわすが、ちょっと割ってみたくなる遊び心。午後の陽が余計に遊び心をかきたてたのだろう。(高橋正子)

○エリカ(ヒース)

[エリカ/横浜日吉本町]

★花エリカ雪後のごとくさびしけれ/角川源義
★エリカといふさびしき花や年の暮/山口青邨
★嬰児にもあるためいきや花エリカ/岡田史乃
★空港に帰着の刻をエリカ活く/横山房子
★エリカ咲くひとかたまりのこむらさき/草間時彦
★?啼く絵里香や折ればこぼるるも/小池文子
★横文字の名札に翳すエリカかな/吉田洋一

 エリカは、ツツジ科エリカ属(学名:Erica)の常緑性樹木で、日本では学名エリーカから、エリカと呼ばれることが多い。エリカ属は、700種類以上の種があり、多くの種は高さ20-150cmほどの低木であるが、E. arborea、E. scopariaのように高さ6-7mに達する種もある。エリカの群生地としては、北ドイツの自然保護地区、リューネブルガーハイデが有名。また小説『嵐が丘』の館の周囲に生えていたのもエリカ、英語ではヒース(heath)と呼ばれる。主な種は、ジャノメエリカ(学名E.canaliculata)とスズランエリカ(学名E. formosa)。ジャノメエリカの名前の由来は、花の中の黒い葯(花粉袋)が蛇の目に見えることから。 スズランエリカの名前の由来は、花がスズランに似ていることから。
 エリカ属の大部分は南アフリカ原産で、残りの70種程度がアフリカの他の地域や地中海地方、ヨーロッパ原産である。園芸では性質などの違いで南アフリカ原産種とヨーロッパ原産種にざっくり分けられる。名前はギリシア語のエイレケー(砕く)に由来するとされ、エリカが体内の胆石をとる(砕く)薬効があるされていたため、そんな名前が付いたとされている。葉は短い針型や線形で、枝にびっしりと付く姿は、枝に葉が生えているといった感じです。花はタマゴ型や壺状の小さな粒々のもの、紡錘形などがある。

◇生活する花たち「冬椿①・冬椿②・山帰来の紅葉」(横浜・綱島)

1日5日(木)

★正月の山の落葉のかく深し   正子
正月の山は既に木の葉もすっかり落葉してしまっていることでしょう。山路の落ち葉の嵩を見て「かく深し」と感嘆の声が聞こえてきそうです。里の暮らしとは少し離れた寒の季節の静寂な山中を思い起こします。(佃 康水)

○今日の俳句
牡蠣揚がる瀬戸の潮(うしお)を零しつつ/佃 康水
広島は牡蠣の産地として知られているが、牡蠣の水揚げを詠んだ句。潮を零しながら、しかも瀬戸の、と具体的な詠みに情景がくっきりと浮かび上がり、臨場感が出た。(高橋正子)

○神奈川・大船植物園
 2014年1月12日、大船植物園(フラワーセンター)を信之先生と訪ねた。水仙と寒椿がお目当ての吟行と写真撮影。
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f598/

○十両(やぶこうじ)

[十両/東京白金台・国立自然教育園]   [百両(たちばな)/横東京白金台・国立自然教育園]

★千両も万両も生ふ旧き家/村越化石
★供華に活け千両の実をこぼしけり/稲畑汀子
★慎ましく足元見よと藪柑子/松本詩葉子

万両・千両・百両・十両・一両の実は、何れも秋から冬に赤熟し、 その赤い実も小粒です。そのため古来、これらの赤い実を付けた植物は、お正月の縁起物としてもてはやされ てきました。

万両
センリョウより沢山実が付くことから、 マンリョウの名前が付いたと云われる。園芸種では白や黄色の実を付けるものがあります。

千両
本州中部以南から台湾、インドなど暖帯から熱帯に分布。山林の半日陰に自生する常緑小低木。花は黄緑色で小さい。 果実は球形で、赤く熟する。

百両
江戸時代のタチバナは非常に高価で、 百両以下では手に入れることができないため、 「百両金」と呼ばれました。

十両
ヤブコウジの名は近代になって付けられたが、 古くは赤い果実を山のミカンに見立てたヤマタチバナ(山橘) の名で良く知られていた。 それがヤブコウジ(藪柑子)になったという。 タチバナはコウジミカン(柑子)の古名。

一両
常緑小低木。腋に鋭い長い刺がある葉の付け根から出ているトゲが蟻をも刺し通すという意味です。 お正月のおめでたいときの飾ります。「千両、万両をお持ちでも、このアリドオシがないと「千両、万両、有り通し」に なりません。この機会にぜひ揃えてみたいです。

◇生活する花たち「冬椿①・冬椿②・山帰来の紅葉」(横浜・綱島)

1日4日(水)

★四日目の花切り戻し風邪籠り  正子
お正月花にと活けた花も四日ともなれば少し元気がなくなって来ました。そのお花の水揚げが良くなる様にと根元の切戻しをなさったのでしょう。慌ただしいお正月も過ぎ一先ずほっとした頃ですが、つい風邪を召されてしまいました。しかし風邪に籠る前にお花への手当をきちんとされるなどお花を愛される作者の暮らしぶりが見えるようです。 (佃 康水)

○今日の俳句
床の間に早や一輪の梅ひらく/佃 康水
床の間に活けた梅の固い蕾が、部屋のぬくもりで、一輪開いた。早も開いた驚きと、その清らかさに魅了された。(高橋正子)

○万両

[万両/東京白金台・自然教育園]     [万両/横浜日吉本町]

★万両の赤を要に活けらるる/稲畑汀子
★万両に日向移りて午後の景/岡本眸
★千両も万両も生ふ旧き家/村越化石
★退院の待たるる日々や実万両/水原春郎
★実生なる万両として日をはじく/豊田都峰
★碑のもと万両のまだ青し/阿部ひろし

★万両の赤い実も鉢もつやつやと/高橋正子
★万両の鉢泥洗うも冬支度/高橋正子
★万両の根もとを猫が通り抜け/高橋正子

 横浜日吉本町に住んでいるが、百両を見かけたのは、ご近所では一軒だけで、万両は千両と並んで町内の庭先でよく見かける。数年前、町田市の里山に出かけたが、その山に自生の万両を見た。そして、東海道53次の戸塚を過ぎて、藤沢の遊行寺の近くの遊行坂の山にやはり、自生と思われる万両を見た。生家にもあったが、これを父は実のついた万年青とともに大事にしていた。あまり育たず、増えずの感じだったが、横浜では、いたるところで見かける。四国の砥部の家にも万両があったが、いつの間にか、塀沿いに万両が増えて育っていた。実がこぼれたのであろう。
 マンリョウ(万両、Ardisia crenata Sims)はヤブコウジ科の常緑小低木。林内に生育し、冬に熟す果実が美しいので栽培され、特に名前がめでたいのでセンリョウ(千両)などとともに正月の縁起物とされる。東アジア~インドの温暖な場所に広く分布する。日本では、関東地方以西~四国・九州・沖縄に自生するほか、庭木などとしても植えられている。なお、アメリカのフロリダ州では外来有害植物として問題になっている。高さは1mほど。同属のヤブコウジと似ているが、ヤブコウジは高さ10cmほどなので区別ができる。根元から新しい幹を出して株立ちとなる。葉は縁が波打ち互生する。葉の波状に膨れた部分には共生細菌が詰まった部屋が内部に形成されている。また、葉は光に透かすと黒点が見える。花は白色で7月頃に咲き、小枝の先に散形花序をなす。果実は液果で10月頃に赤く熟し、翌年2月頃まで枝に見られる。栽培品種には白や黄色の果実もある。いわゆる古典園芸植物のひとつで、江戸時代には葉が縮れたりした変異個体が選抜されて、多様な品種群が栽培された。

◇生活する花たち「冬椿①・冬椿②・山帰来の紅葉」(横浜・綱島)

1日3日(火)

★一月はわが誕生月よ静かなれ   正子
一月は一年の始まりで、何かと喧噪的な時期ですが、ゆっくりと静かに過ごしたいと思う、その気持ちの誕生月です。(高橋秀之)

○今日の俳句
獅子舞に頭を向けて走り寄る/高橋秀之
獅子舞の獅子に頭を噛んでもらうと元気な子になるとか。恐ろしい獅子に向かって走り寄るのは、果敢で愉快な男の子。(高橋正子)

○南天

[南天/横浜日吉本町]

★南天の実をこぼしたる目白かな/正岡子規
★口切や南天の実の赤き頃/夏目漱石
★あるかなし南天の紅竹垣に/瀧井孝作 
★実南天奈良から一人少女来る/青木啓泰

 ナンテン(南天、学名:Nandina domestica)は、メギ科ナンテン属の常緑低木。和名の由来は、漢名の「南天燭」の略。高さは2m位、高いもので4~5mほど。幹の先端にだけ葉が集まって付く独特の姿をしている。葉は互生し、三回羽状複葉で、小葉は広披針形で先端が少し突きだし、革質で深い緑色、ややつやがある。先端の葉の間から、花序を上に伸ばし、初夏に白い花が咲き、晩秋から初冬にかけて赤色(まれに白色)の小球形の果実をつける。中国原産。日本では西日本、四国、九州に自生しているが、古くに渡来した栽培種が野生化したものだとされている。山口県萩市川上の「川上のユズおよびナンテン自生地」は、国の天然記念物(1941年指定)。
 庭木として植えられることが多い。音が「難を転ずる」に通ずることから、縁起の良い木とされ、鬼門または裏鬼門に植えると良いなどという俗信がある。福寿草とセットで、「災い転じて福となす」ともいわれる。稀に太く育ったものは、幹を床柱として使うことがあり、鹿苑寺(金閣寺)の茶室、柴又帝釈天の大客殿などで見られる。以前に発行されていた日本の6円郵便切手の意匠としても親しまれていた。花言葉は「私の愛は増すばかり」、「良い家庭」。活け花などでは、ナンテンの実は長持ちし最後まで枝に残っている。このことから一部地方では、酒席に最後まで残って飲み続け、なかなか席を立とうとしない人々のことを「ナンテン組」という。

◇生活する花たち「蝋梅①・蝋梅②・さんしゅゆの実」(横浜・四季の森公園)

■新年ネット句会入賞発表■


■2017年新年ネット句会■
■入賞発表/2017年1月2日

【金賞】
★四方晴れて湾穏やかや初渡船/佃 康水
「渡船」がいい。「渡船」には、向こうの島と、こちらの岸との間に密着した生活がある。穏やかに晴れ、凪いだ湾を今年初めて渡る。宮島への初詣であろうか。晴れやかな気持ちが一句にみなぎっていて、手堅い句だ。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★見あぐれば冬芽と吾はビル谷間/祝恵子
ビルの谷間から見上げると、木には冬芽がついている。ビルの谷底にいる作者の視線は上へ。冬芽は小さいながら、自然のしたたかさと映る。(高橋正子)

★三山の山容違う初御空/小口泰與
作者のいうのは、上州の上毛三山、つまり、赤城山・榛名山・妙義山であろう。日々眺める三山であるが、それぞれに山容が違って、初御空に泰然と座っている。三山もそれぞれに正月を迎えた。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★松ぼっくり足してリースの注連飾り/柳原美知子
注連飾りも、最近はリースの形をとったものが多く見られる。注連飾り松ぼっくりを加えた。現代的な注連飾りで新しい時代が来るようだ。(高橋正子)

★瞬いてその座占めたり冬オリオン/古田敬二
オリオン座は、星座のなかでも、すぐに目に入る。かなたの記憶の中にも、オリオン座は瞬いている。今も、その座は確かで、瞬きはかわらない。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★発声の婿に合わせて屠蘇祝う/佃 康水
正月は家族が出来るだけ一同に集まり、新年の健康と幸せを祈って屠蘇を酌み、祝うものである。今では少なくなりつつある正月の、仕来りと賑わいが想われる一句です。 (桑本栄太郎)

★生駒山超え来て初日の東(ひんがし)に/河野啓一
大阪から見る生駒山は東に位置するので、日の出は生駒を超えて上がってきます。普段は意識せずにみている光景でも、初日の出となれば、それはまた格別です。(高橋秀之)

★見あぐれば冬芽と吾はビル谷間/祝恵子
★四方晴れて湾穏やかや初渡船/ 佃 康水
★三山の山容違う初御空/小口泰與
★松ぼっくり足してリースの注連飾り/柳原美知子
★石垣の裾に列あり初詣/高橋正子

【高橋正子特選/8句】
★初詣石段のぼれば五色幕/高橋句美子
お参りする神社を目指して石段を一歩ずつ登っていく。そして、神社にたどり着くと初詣の五色幕が広がる普段とは違う神社がそこにある。まさにお正月のひとこまという感じがします。 (高橋秀之)

★除夜の鐘湯浴みのうちに聞きにけり/桑本栄太郎
一年間の疲れを癒す大晦日の湯浴の最中、折りしも除夜の鐘が聞こえて来ました。様々な事を思い出しながらも新しい年に向けての抱負も浮かんで来たことでしょう。作者の健やかで穏やかな去年今年の暮らしぶりを見る様です。(佃 康水)

★見あぐれば冬芽と吾はビル谷間/祝恵子
★四方晴れて湾穏やかや初渡船/ 佃 康水
★瞬いてその座占めたり冬オリオン/古田敬二
★三山の山容違う初御空/小口泰與
★初詣の空青あおとわが頭上に/高橋信之

【入選/6句】
★初日の出光とどけり妻を撮る/古田敬二
共に初日の出を拝す妻に清らかな光が当たり絶好のシャッターチャンスを得た。奥様を大切に思うお気持ちとともに新年を迎えられる喜びが感じられる美しい光景ですね。 (柳原美知子)

★初晴れや川の流れもきらきらと/廣田洋一
★初詣長き列なす天満宮/高橋秀之
★大年の空に雲浮き海青し/柳原美知子
★寒鯉の紅白鮮やか池の中/高橋句美子
★米寿という義兄へ元旦の挨拶/祝恵子

■選者詠/高橋信之
★初詣の空青あおとわが頭上に
初詣の空は晴れ、一年の幸福の予感が広がる。 (古田敬二)
元日の空は本当に青く澄み切っていた。それをわが頭上にと纏めた、良い句です。 (廣田洋一)

★元旦の空の青きその下を歩く
★元日のありがたきもの青き空

■選者詠/高橋正子
★初詣かやの木檜の木が聳え
榧(かや)の樹の寿命は1000年にも及ぶ貴重な存在とか。また檜に有っては宮殿建設用の最高の材になると言われています。神社仏閣にこれらの木々が聳え立っているとは心豊かな最高の初詣で有った事でしょう。 (佃 康水)

★石垣の裾に列あり初詣
★元日の晴れたる梢鵯が二羽

■互選高点句
●最高点(5点)
★四方晴れて湾穏やかや初渡船/佃 康水

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

★寒鯉の紅白鮮やか池の中/高橋句美子
寒い時期には鯉は水底に潜んでいますが、池の水が澄み、紅白の鯉が色鮮やかに見えています。新年の目出度さを一層引き立てている御句です。(佃 康水)

★米寿という義兄へ元旦の挨拶/祝恵子
義兄様が今年米寿を迎えられ、年の初めに先ず義兄様にご挨拶をされました。ご家族への深い愛情と、作者の温かさが伝わって参ります。あめでとうございます。(佃 康水)

★生駒山超え来て初日の東(ひんがし)に/河野啓一
大阪から見る生駒山は東に位置するので、日の出は生駒を超えて上がってきます。普段は意識せずにみている光景でも、初日の出となれば、それはまた格別です。(高橋秀之)

●新年ネット句会清記●


■新年ネット句会清記
2017年1月2日
12名36句

01.生駒山超え来て初日の東(ひんがし)に
02.四海波静かにあれと初日かな
03.初日透かし干し柿薄あかね
04.一炊の夢の果て居り年暮るる
05.除夜の鐘湯浴みのうちに聞きにけり
06.東雲の明かり寿ぐ初日かな
07.見あぐれば冬芽と吾はビル谷間
08.米寿という義兄へ元旦の挨拶
09.トランペット流れくる河原お正月
10.初写真毎年同じ場所で撮る

11.初詣長き列なす天満宮
12.正月の番組特に見るものもなく
13.四方晴れて湾穏やかや初渡船
14.今此処に来ている子らの賀状来る
15.発声の婿に合わせて屠蘇祝う
16.我は地にオリオン天に位置を決め
17.瞬いてその座占めたり冬オリオン
18.初日の出光とどけり妻を撮る
19.初晴れや川の流れもきらきたと
20.青空に紅梅咲きし初詣

21.ちらと見て若く見えしか初鏡
22.羽霧へ逆光差すや初御空
23.三山の山容違う初御空
24.露天湯の向こう側より御慶かな
25.大年の空に雲浮き海青し
26.松ぼっくり足してリースの注連飾り
27.梅の花の生麩浮かせて雑煮かな
28.新年の西日が当たり赤い木々
29.寒鯉の紅白鮮やか池の中
30.初詣石段のぼれば五色幕

31.初詣の空青あおとわが頭上に
32.元旦の空の青きその下を歩く
33.元日のありがたきもの青き空
34.初詣かやの木檜の木が聳え
35.石垣の裾に列あり初詣
36.元日の晴れたる梢鵯が二羽

※互選を開始してください。3句選をし、そのうちの一句にコメントをつけてください。

1月2日(月)

★木賊生う地より突き立つ濃き緑/高橋正子
山中の湿地に自生しているが観賞用に庭園などにも植えている。地下茎は力強く横に生え、地上茎は直立し、枝分かれせず70センチ位の高さで深緑の縦溝が新年の青空に力強く立っている素晴らしい景ですね。 (小口泰與)

○今日の俳句
大らかな雪の浅間の二日かな/小口泰與
よい天気続きの正月。二日も雪を冠った浅間山が大らかに坐っている。浅間山を「大らか」と捉えた度量がよい。(高橋正子)

●新年ネット句会
投句
初詣かやの木檜の木が聳え  正子
石垣の裾に列あり初詣    正子
元旦の晴れたる梢鵯が二羽  正子

入賞発表を終えたのは23時50分。今日は、これでパソコンを閉じて寝ることに。明日は、元家族と句美子夫婦が来る。それにあした、私は70歳になる。

今日のヒット料理は、市販のちらし寿司の素に、暮れにもらった鯛の短冊で作った鯛そぼろ、だて巻きの端の細かく切ったのを入れ、錦糸卵を飾ったちらし寿司。酢もきつさがとれ、結構おいしかった。

○水仙

[水仙/横浜日吉本町]

★水仙やホテル住ひに隣なく/久保田万太郎
★水仙やすでに東風吹く波がしら/水原秋櫻子
★あるだけ剪りあるだけ挿して水仙花/大橋敦子
★水仙や日本の詩の潔し/瀧春一
★水仙に昃り易さの日射なる/鈴鹿野風呂
★潮の香を海に返しぬ野水仙/稲畑汀子
★水仙や潮砕け散る烏帽子岩/朝妻力
★上げ潮や水仙のよく匂ふ街/今瀬剛一
★自画像の芙美子に会へり水仙花/神蔵器
★水仙や向き合ふ暮し取り戻す/井内佳代子

★向き合えば吾に水仙のみずみずし/高橋信之
水仙の花を「古鏡」といった俳人もいたが、向き合うことができる花である。向かうと、以外にもみずみずしい花である。(高橋正子)

★水仙の枯れし終わりを折りて捨つ/高橋正子
庭に咲いているのでしょうか、可憐な水仙花、でもいのちあるものには最後があるのです。ありがとうの気持ちでしょうか。(祝恵子)

★水仙の一花二花咲き正月へ/高橋正子

 スイセン属(スイセンぞく、学名:Narcissus)は、ヒガンバナ科(クロンキスト体系ではユリ科)の属のひとつ。この属にはラッパスイセンやニホンズイセンなど色や形の異なる種や品種が多くあるが、この属に含まれるものを総称してスイセンと呼んでいる。多年草で、冬から春にかけて白や黄の花を咲かせるものが多い。狭義には学名Narcissus tazettaや、その変種であるニホンズイセン(Narcissus tazetta var. chinensis)をスイセンということも多い。
 原産地は主にスペイン、ポルトガルを中心に地中海沿岸地域、アフリカ北部まで広がり、原種は30種類ほど知られている。また、園芸用に品種改良されたものが広く栽培されている。日本においては、ニホンズイセンが古くに中国を経由して渡来したといわれている。分布は、本州以南の比較的暖かい海岸近くで野生化し、群生が見られる。越前海岸の群落が有名であり、福井県の県花ともなっている。

◇生活する花たち「アッサムチヤ・グランサム椿・からたちの実」(東京・小石川植物園)
>

1月1日(日)/元日

 賀正 2017年元旦
 あけましておめでとうございます。本年も高橋正子の俳句日記をよろしくご愛読ください。

●高橋正子3句●
元朝となりしばかりの灯が明るい
粉雪と火の粉の中の初詣
ひらがなをていねいに書きお年玉

○初詣○
★海よりの長き石段初詣/多田有花
海の近くの寺社。寺社への長い石段は海から続き、海はいかにも穏やかである。長い石段の上からの眺めも素晴らしいことだろう。よい初詣。(高橋正子)

○若水○
★若水のくらきを汲んで手を清む/高橋正子★

○年頭○
★年頭躍筆墨条のみの白馬の図/中村草田男★
正月の床を飾るに相応しく、健康で、力強い句である。俳句の短い詩形、それに白と黒の単純さを生かした、俳句のよさである。(高橋信之)

○蝋梅(ロウバイ)

[蝋梅/横浜・四季の森公園]

★風往き来しては蝋梅のつやを消す/長谷川双魚
★蝋梅の咲くゆゑ淡海いくたびも/森 澄雄
★蝋梅や樅をはなるる風の音/古館曹人
★文机に蝋梅一朶誕生日/品川鈴子

★蝋梅咲いて森の正午の空の青/高橋信之
★蝋梅のはじめの一花空に透け/高橋正子

 ロウバイ(蝋梅、?梅、臘梅、唐梅、Chimonanthus praecox)は名前に梅がついているためバラ科サクラ属と誤解されやすいが、ロウバイ科ロウバイ属の落葉低木。開花時期は、12/25 ~ 翌 3/15頃。お正月頃から咲き出す。花の少ない季節に咲く、うれしい花です。とてもよい香り。中国原産。日本には17世紀頃に渡来。よく見られるのは蝋梅のうちの「素心蝋梅(そしんろうばい)」。花の外側だけでなく内側も黄色いのが特徴。ふつうの「蝋梅」は内側がちょっと赤っぽい。葉っぱは、ふつう花が咲く前に落葉するが、開花時にまだ残っていて徐々に落葉する場合もあるようだ。表面はザラザラした感触。花のあとでできる実は、なんともユニークな形。花の姿からは想像できない。マンゲツロウバイ(満月蝋梅)、トウロウバイ(唐蝋梅)などの栽培品種がある。1月27日の誕生花。花言葉は「先導、先見」。

◇生活する花たち「冬桜・水仙・万両」(横浜日吉本町)