8月17日(木)


★葛の花匂わすほどの風が起き  正子
秋の七草の一つの葛の花。その旺盛に伸び広がる蔓性の葉が、吹き起こる風に、いっせいに煽られる清々しい光景が浮かびます。風に裏返る白い葉裏も、辺りに漂う紅紫色の花の甘い香りも、嬉しい秋の訪れを感じさせてくれます。(藤田洋子)

○今日の俳句
真珠筏浸し秋の海澄めり/藤田洋子
浸し」が秋海の澄んだ水をよく感じさせてくれる。秋海の澄んだ水に浸され殻を育てている真珠は、美しく輝く珠となることであろう。(高橋正子)

○青柿

[青柿/横浜日吉本町]

8月16日(水)

★いつよりか燕無き空青澄める  正子
ツバメは群れを成したり隊形を整えたりして渡ることをしないようですから、春が来て何羽もが街を飛び交っているのを見つけたり、また秋には、いつの間にか一羽もいなくなってしまっていることにふと気が付くというようなことがよくあります。
「燕無き空青澄める」という表現には、しみじみと秋到来を思う深い詩情が込められており、「いつよりか」にはまた、小さな喪失への感慨が届けられて来ます。(小西 宏)

○今日の俳句
露ころぶキャベツ外葉の濃き緑/小西 宏
キャベツの濃い緑の外葉にころがる露に、力がある。丸く、収れんした露の力と輝きは秋の朝のすがすがしさ。(高橋正子)

●style21の「俳句教室掲示板」の使用料1年分支払う。IDノートに記載済。

○木槿(むくげ)

[木槿/横浜日吉本町]            [木槿/東京・新宿御苑]

★花むくげはだか童のかざし哉 芭蕉
★道のべの木槿は馬にくはれけり 芭蕉
★修理寮の雨にくれゆく木槿哉 蕪村
★花木槿里留主がちに見ゆる哉 一茶
★馬ひとり木槿にそふて曲りけり 子規
★縄簾裏をのぞけば木槿かな 漱石
★墓多き小寺の垣や花木槿 碧梧桐
★いつまでも吠えゐる犬や木槿垣 虚子
★お遍路木槿の花をほめる杖つく 放哉
★みちのくの木槿の花の白かりし 青邨
★路草にむかひて萎む木槿かな 耕衣
★日の出待つや木槿いつせいに吹かる中 林火
★避暑町の少しさびれぬ花木槿 たかし
★道すがらうかぶ木槿や徒労ばかり 波郷
★白木槿ごみを出すにも蝶むすび/片山由美子
★ふっくらと巻きて落花の木槿かな/野村洋子

 木槿は、朝咲いて夕方にはしぼむ。お茶席の花としてよく活けられもする。先日千駄木の骨董屋の女主人が亜浪先生の句について信之先生に聞いて来られた折に、骨董の竹籠に槿と縞萱を活けた写真を送ってこられ、だれかをお茶にお招きしたい気分だと書き添えてあった。お茶の花ともなるが、どこにでも咲いている。
 
★白槿十年たちまち過ぎていし/高橋正子
 
 この句は、砥部の田舎で学生が来たり、ドイツ語の先生が来たり、子どもの友達がわっさわっさと来たり、句会の人たちが出入りしたり、掃除、洗濯、庭の手入れなどなど、雑多なことに明け暮れて、ある朝、白い槿を見て、十年なんてすぐ終わってしまうと思ったとき出来た句だ。
 今朝、自分の以前作ったこの白槿の句を読んで、今はもうこういう句を作る気持ちではないと知った。あれから十年が何回過ぎたことか。
 
★底紅の紅が澄みたる白槿/高橋正子

 ムクゲ(木槿、別名:ハチス、Hibiscus syriacus; 英語: rose of Sharon)はアオイ科の落葉低木。 庭木として広く植栽されるほか、夏の茶花としても欠かせない花である。インドや中国が原産で、中近東にも自生している。日本へは奈良時代に中国から渡来し、和歌山県や山口県に野生のムクゲがあったとされる。 夏から秋にかけて白、紫、赤などの美しい花をつける。薬用のほか、鑑賞用に多くの品種がある。俳句では秋の季語である。根が横に広がらないため、比較的狭い場所に植えることができる。 刈り込みにもよく耐え、新しい枝が次々と分岐する。そのため、庭の垣根に利用されることもある。 自然樹形は箒を逆さにしたようになる(下記の樹形の例参照)。 栽培されているものはよく剪定されてしまうため、高さは3-4mくらいのものが多く、灌木であると誤解されるが、放置すると10m以上の樹高になり、桜の木よりすこし小さいくらいの大きさになる。花期は7-10月。花の大きさは10-18cmほど。花芽はその年の春から秋にかけて伸長した枝に次々と形成される。 白居易(白楽天)の詩の誤訳から一日花との誤解があるが、朝花が開き、夕方にはしぼんで、また翌朝開き、一重のもので2-3日。八重の長く咲くもので2週間くらい、一輪の花を楽しめる。中国名の木槿(もくきん)を音読みし、木槿(むくげ)、木槿花(もくきんか)と呼ばれるようになった。また、「類聚名義抄」には「木波知須(キハチス)」と記載されており、木波知須(キハチス)や、単に波知須(ハチス)とも呼ばれる。白の一重花に中心が赤い底紅種は、千利休の孫である千宗旦(せんそうたん)が好んだことから、「宗丹木槿(ソウタンムクゲ)」とも呼ばれる。中国語では木槿/木槿(ムーチン)、朝鮮語では???(無窮花; ムグンファ)という。英語の慣用名称のrose of Sharonはヘブライ語で書かれた旧約聖書の雅歌にある「シャロンのばら」に相当する英語から取られている。

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月15日(火)

★葛の花匂わすほどの風が起き  正子
縦横に延び広がる葛の野に湧きあがる風。葉裏を白く見せながら音をたてる広葉の間に、美しい紅紫色の葛の花が瑞々しい野趣を漂わせている。葛の花の意外なほどの芳香が胸を満たし、秋の訪れが実感され、嬉しく清々しい野歩きのひとときです。(柳原美知子)

○今日の俳句
雲流る空を降りくる赤とんぼ/柳原美知子
「雲流る」、「空を降りくる」に横と縦の繊細な動きが詠まれています。牧歌的な秋雲と、そこから降りてくる赤とんぼは、なにかを伝えに降りてくるようです。(高橋正子)

●お盆。雨。
お盆に、茄子の牛や胡瓜の馬を供えるのを故郷のどこの家でも見たことはなかった。省略していたのか、もともとなのか。先祖の魂は来るときは、馬に乗って急いでやってきて、帰るときは、牛に乗ってゆっくり帰るのだとか、言われるらしい。

しっとりと細く細くと盆の雨 正子
盆の雨えのころぐさの一面に 正子
えのころ草雀雀の遊び場に  正子

○露草

[露草/横浜日吉本町]             [露草/東京白金台・自然教育園]

★露草や飯噴くまでの門歩き 久女
ご飯が噴くまで家の庭を少し歩く。見れば露草がみずみずしく咲き、早朝の涼しい時間が心地よい。(高橋正子)

★月草の花に離れてうてなかな 虚子
★露草の花みづみづし野分晴 泊雲
★つゆけくも露草の花の 山頭火
★一叢の露草映すや小矢部川 普羅
★千万の露草の眼の礼をうく 風生
★ことごとくつゆくさ咲きてきつねあめ 蛇笏
★露草に祭の玩具落しけり かな女
★朝の日の母を訪はばや蛍草 耕衣
★露草や室の海路を一望に 汀女
★蝶とりし網を伏せおく蛍草 立子

春はおおいぬのふぐり、秋は露草。どちらも小さい青い花だ。野辺に咲くと、春が来たと思い、秋が来たと思う。そして、野辺にごとごとく咲く。露草の青い花が露を宿していると、涼しさそのものに思える。摘み取って花瓶に活けてもほんの朝のうち。俳句の話などで、朝の来客のみを喜ばせた。昼過ぎ、あの青い花はどこへ行ったか。凋んだといっても凋んだ花を見たことがない。耳学問によると、あおの青い花は、昼には苞の中に溶けてしまうのだと。ありそうなことである。

 ツユクサ(露草、Commelina communis)は、ツユクサ科ツユクサ属の一年生植物。日本全土、アジア全域、アメリカ東北部など世界中に広く分布する、畑の隅や道端で見かけることの多い雑草である。高さは15~50cmで直立することはなく、茎は地面を這う。6~9月にかけて1.5~2cmほどの青い花をつける。花弁は3枚あり、上部の2枚は特徴的で青く大きいが、下部の1枚は白くて小さく目立たない。雌しべが1本、雄しべが6本で成り立っている。アサガオなどと同様、早朝に咲いた花は午後にはしぼんでしまう。朝咲いた花が昼しぼむことが朝露を連想させることから「露草」と名付けられたという説がある。英名のDayflowerも「その日のうちにしぼむ花」という意味を持つ。また「鴨跖草(つゆくさ、おうせきそう)」の字があてられることもある。ツユクサは古くはつきくさと呼ばれており、上述した説以外に、この「つきくさ」が転じてツユクサになったという説もある。「つきくさ」は月草とも着草とも表され、元々は花弁の青い色が「着」きやすいことから「着き草」と呼ばれていたものと言われているが、万葉集などの和歌集では「月草」の表記が多い。この他、その特徴的な花の形から、蛍草(ほたるぐさ)や帽子花(ぼうしばな)、花の鮮やかな青色から青花(あおばな)などの別名がある。 また鴨跖草(おうせきそう)という生薬名でも呼ばれる。花の青い色素はアントシアニン系の化合物で、着いても容易に退色するという性質を持つ。この性質を利用して、染め物の下絵を描くための絵具として用いられた。ただしツユクサの花は小さいため、この用途には栽培変種である大型のオオボウシバナ(アオバナ)が用いられた。オオボウシバナは観賞用としても栽培されることがある。花の季節に全草を採って乾燥させたものは鴨跖草(おうせきそう)と呼ばれ、下痢止め、解熱などに用いる。
 万葉集には月草(ツユクサの別名)を詠ったものが9種存在し、古くから日本人に親しまれていた花の一つであると言える。朝咲いた花が昼しぼむことから、儚さの象徴として詠まれたものも多い。また俳句においては、露草、月草、蛍草などの名で、秋の季語とされる。

◇生活する花たち「山萩・鬼灯・蓮の花托」(横浜・四季の森公園)

■8月月例ネット句会/入賞発表■


■2017年8月月例ネット句会■
■入賞発表/2017年8月14日

【金賞】
★稲の花咲いて田水の零れ落つ/柳原美知子
かそかな稲の花。田水が豊かに零れ落ちる。稲の花が咲くまでに育ったこと。零れ落ちる田水のゆたかさに、日の恵みに稲は実りを預けるのだ。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★今生れしつくつくぼうし我がシャツへ/谷口博望(満天星)
愛着あるつくつくぼうしという名前。生まれたばかりのつくつくぼうしが自分のシャツに止まる。少年のようなときめきと、優しさが感じられる。清潔で透明感のある句だ。(高橋正子)

★取りたての枝豆茹でる大鍋/柳原美知子
私の記憶では、枝前は稲の田の畦に植えられていた。畦からごっそり抜いてきて、大鍋で茹でる。大家族の昔が見える気がする。頼もしい句だ。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★魚の斑のきらりと消ゆる水の秋/小口泰與
魚は山女か。その特徴ある斑がきらりと見えたと思うと、きらりと水に消える。魚のすばしこさ、渓流の水の輝きなどを思う。渓流の景色が「水の秋」に象徴された。(髙橋正子)

★噴水のしぶきの向こうに揺れる虹/高橋秀之
虹は、噴水のしぶきでできた虹だろう。噴水のしぶきが風にゆれると虹が揺れる。楽しそうな人たちがいるのが想像できる、明るく爽やかな光景だ。(高橋正子)

★見あぐれば眩しくてひまわりと空/祝恵子
見上げれば、目を射す眩しさ。眩しさのなかに空とひまわりがくっきりと。ひまわりと空と私の夏のひとこま。(高橋正子)、

【高橋信之特選/8句】
★山霧にバス諸共に吸い込まれ/小口泰與
山に登るバスに乗っておられるのか、それとも麓からバスを見上げておられるのか。いずれにしても高山の涼しげな空気が伝わってきます。 (多田有花)

★今生れしつくつくぼうし我がシャツへ/谷口博望(満天星)
長い間地中にいてやっと地上に現れ、殻を破って羽化する様子を眺められたのでしょうか。生まれたばかりの透明な法師蝉のいたいけな姿が目に浮かび、温かい作者の眼差しと感動が伝わってきます。(柳原美知子)

★稲の花咲いて田水の零れ落つ/柳原美知子
去年初めて一枚の田にだけ稲の花が咲いているのを見て感動しました。花の命は短くて2時間ほどといいます。その時は田の水はもうありませんでした。今年ももう一度見たいものです。(満天星)

★萩を吹く風に吹かれて墓地を出づ/柳原美知子
お墓の掃除を丹念にされて終わった時に、風があるのに気付く、近くに咲く萩の花も揺れて見送っているようです。 (祝恵子)

★噴水のしぶきの向こうに揺れる虹/高橋秀之
同じ光景を見ました。噴水に可愛い虹が生まれ、ふと足を止めて見入りました。 (祝恵子)

★つかのまに虹立つころを帰宅せり/髙橋正子
「虹立つころ」の季節感がいい。「帰宅せり」に主婦の生活感がある。(高橋信之)

★台風の過ぎし大空青々と/高橋秀之30.取りたての枝豆茹でる大鍋/柳原美知子

【高橋正子特選/8句】
★虫が鳴くその奥にまた虫が鳴く/髙橋信之
近くの草叢で虫の音が聞こえたかと思うと、それに呼応するかのように奥の方からもかすかに虫音がし、涼風を感じます。いよいよ夏も終わり、新たな季節の到来が実感されます。 (柳原美知子)

★雨止みてじきに始まる虫時雨/廣田洋一
雨が降っている間は静かな原っぱから、雨が止むと同時に虫たちが活動を始めるのか、一斉に鳴き始めます。虫たちの息吹を感じるひとこまです。(高橋秀之)

★魚の斑のきらりと消ゆる水の秋/小口泰與
★今生れしつくつくぼうし我がシャツへ/谷口博望(満天星)
★噴水のしぶきの向こうに揺れる虹/高橋秀之
★見あぐれば眩しくてひまわりと空/祝恵子
★稲の花咲いて田水の零れ落つ/柳原美知子
★取りたての枝豆茹でる大鍋/柳原美知子

【入選/5句】
★仏壇が華やかとなり盂蘭盆会/高橋秀之
お盆になると、お盆菓子やお供えの野菜や花が飾られて仏壇は賑やかに明るくなる。華やかとなると言う表現が良い。(廣田洋一)

★子は登る向日葵木陰をつくる樹に/祝恵子
最近は木登りをする子を見かけることも珍しくなりました。向日葵木陰をつくるに夏休みの元気な子が思い浮かびます。(高橋秀之)

★献水の竹筒ささげ原爆忌/桑本栄太郎
鎮魂の思いと平和への願いを込めて献水する原爆忌。ささやかな日常の生活がいつまでも失われることのないように。 (柳原美知子)

★秋めく空蝉の声いまだ高けれど/多田有花
立秋を過ぎて秋めいてくる空なのに、まだまだ蝉の声は高く聞こえてきます。季節の変わり目を感じさせてくれる光景です。(高橋秀之)

★青空の輝くところ原爆忌/谷口博望(満天星)

■選者詠/高橋信之
★虫が鳴くその奥にまた虫が鳴く
近くの草叢で虫の音が聞こえたかと思うと、それに呼応するかのように奥の方からもかすかに虫音がし、涼風を感じます。いよいよ夏も終わり、新たな季節の到来が実感されます。 (柳原美知子)

★立秋という涼しき言葉を書く
土用が明けて、まだ暑い盛りだが、風の音にももう秋が来たと言う感じがする涼しさを、半紙に立秋と書いて居る作者。素敵な景ですね。(小口泰與)

★初秋や薄明という明るさに

■選者詠/高橋正子
★芋の葉に雲の分量増えやすし
★つかのまに虹立つころを帰宅せり
★初秋の朝日新聞ごく薄し

■互選高点句
●最高点(5点/同点2句)
★稲の花咲いて田水の零れ落つ/柳原美知子
★噴水のしぶきの向こうに揺れる虹/高橋秀之

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

■8月月例ネット句清記


■8月月例ネット句会清記
2017年8月13日
10名30句 

01.山霧にバス諸共に吸い込まれ
02.魚の斑のきらりと消ゆる水の秋
03.山襞の定かや庭へ小鳥来る
04.今生れしつくつくぼうし我がシャツへ
05.子燕のねぐらへと舞ふ夕間暮
06.青空の輝くところ原爆忌
07.水無瀬ちょう石のさざれや旱川
08.献水の竹筒ささげ原爆忌
09.帰省子の手みやげ数え旅用意
10.台風接近風雨しだいに強まりぬ

11.嵐去る初秋の空に朝の虹
12.秋めく空蝉の声いまだ高けれど
13.噴水のしぶきの向こうに揺れる虹
14.台風の過ぎし大空青々と
15.仏壇が華やかとなり盂蘭盆会
16.子は登る向日葵木陰をつくる樹に
17.見あぐれば眩しくてひまわりと空
18.話聞く孫といる居間初スイカ
19.虫が鳴くその奥にまた虫が鳴く
20.立秋という涼しき言葉を書く

21.初秋や薄明という明るさに
22.芋の葉に雲の分量増えやすし
23.つかのまに虹立つころを帰宅せり
24.初秋の朝日新聞ごく薄し
25.雨止みてじきに始まる虫時雨
26.ご婦人の生足伸びる残暑かな
27.苧殻焚く妹よ間違えるなよ
28.稲の花咲いて田水の零れ落つ
29.萩を吹く風に吹かれて墓地を出づ
30.取りたての枝豆茹でる大鍋よ
 
※互選を開始してください。一人5句選をし、その中の一句にコメントをつけてください。選句は、この下のコメント欄にお書きください。

8月13日(日)

★西瓜切ってみなの心に故郷(くに)ありぬ  正子
西瓜には、誰もが大切な夏の記憶を持っています。家族で一玉の西瓜を切り分ける時、みなの心に浮かぶ「故郷」は、どの場面でしょうか。今の家族で過ごした曾ての夏休みを語ったり、或いは、一家を構える前の実家の夏座敷をふと想ったり。時に同じで、時に夫々の故郷を思いながら、切り分けた西瓜を頂く。幸せで趣深いひとときです。(川名ますみ)

○今日の俳句
車椅子とんぼの群へ触れに入る/川名ますみ
「触れに入る」がすばらしくよい。とんぼの群れに、自ら入り、とんぼと同じように交わることに純粋な喜びがある。(高橋正子)

●8月月例ネット句会
正子投句
22.芋の葉に雲の分量増えやすし
23.つかのまに虹立つころを帰宅せり
24.初秋の朝日新聞ごく薄し
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d

○藤袴

[藤袴/東京・向島百花園]

★枯れ果てしものの中なる藤袴 虚子
★藤袴白したそがれ野を出づる/三橋鷹女
★藤袴手に満ちたれど友来ずも/三橋鷹女
★藤ばかま触れてくる眸の容赦なき/稲垣きくの
★たまゆらをつつむ風呂敷藤袴/平井照敏

藤袴について、高校の古文の先生からまつわる話を聞いた。戦のとき、武士が兜の下に入れたという。頭の蒸れた匂いをその芳香で消すためと聞いた。そのときは、野原の藤袴を折り取ってそれを兜の下に入れたのだと思ったが、そのままの藤袴は匂わない。匂うのは、乾燥したものだそうだ。乾燥させると、なにか芳香の成分ができるらしい。乾燥したものを兜の下に入れたのだろう。淡い紫紅色の散房状の花は武士の花といってもいいだろう。花の形がよく似ていて、立秋ころ咲く白い花がある。これを、早合点の私は、もしや藤袴と思うことがある。そして、その花を写真にとったりして、何度も確かめて、やはり、違うようだと結論付ける。まれにしか見ない藤袴見たさのことであろう。伊勢神宮の外宮の観月祭には、きっちりと秋の七草が揃えられているそうだ。秋の七草は、ハギ、キキョウ、クズ、ナデシコ、オバナ(ススキのこと)、オミナエシ、フジバカマの七草で、山上憶良の歌に「萩の花尾花葛花なでしこが花をみなへしまた藤袴朝顔が花」 (万葉集 巻八) がある。

★藤袴山野の空の曇り来し/高橋正子
★清貧の背筋ますぐや藤袴/高橋正子

フジバカマ(藤袴、Eupatorium japonicum)とはキク科ヒヨドリバナ属の多年生植物。秋の七草の1つ。本州・四国・九州、朝鮮、中国に分布している。原産は中国ともいわれるが、万葉の昔から日本人に親しまれてきた。8-10月、散房状に淡い紫紅色の小さな花をつける。また、生草のままでは無香のフジバカマであるが、乾燥するとその茎や葉に含有されている、クマリン配糖体が加水分解されて、オルト・クマリン酸が生じるため、桜餅の葉のような芳香を放つ。中国名は蘭草、香草。英名はJoe-Pye weed;Thoroughwort;Boneset;Agueweed(ヒヨドリバナ属の花)。かつては日本各地の河原などに群生していたが、今は数を減らし、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧(NT)種に指定されている。また「フジバカマ」と称する植物が、観賞用として園芸店で入手でき庭にも好んで植えられる。しかし、ほとんどの場合は本種でなく、同属他種または本種との雑種である。

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月12日(土)

★西瓜切ってみなの心に故郷(くに)ありぬ  正子
私の家では、お盆で親戚が集まった時たいてい西瓜が切られる。伯父や伯母が集まると、今は亡き祖父母のことや、故郷の思い出話がつきない。そうした賑やかなお盆のひとときは、みずみずしい西瓜の色や食感と重なって思い出される。(安藤智久)

○今日の俳句
鬼やんま飛びゆく路地の風軽し/安藤智久
「やんま」は秋の季語。鬼やんまが路地をすいっと飛んで行く路地は、風が軽やかに感じられる。風が軽いのは、路地のある暮らしが穏やかでからっとしているからであろう。(高橋正子)

○撫子

[撫子/横浜日吉本町]           [河原撫子/横浜日吉本町]

★秋霧や河原なでしこりんとして/小林一茶
★撫子や海の夜明の草の原/河東碧梧桐
★航海日誌に我もかきそへた瓶の撫子/河東碧梧桐
★撫子や堤ともなく草の原/高浜虚子
★撫子や濡れて小さき墓の膝/中村草田男
★岬角や撫子は風強ひられて/秋元不死男
★四五本の撫子植ゑてながめかな/原石鼎
★我が摘みて撫子既に無き堤/永田耕衣
★撫子や腹をいためて胤をつぎ/平畑静塔 

 土手を歩いていて、河原撫子を見つけることがる。折り取って帰りたいが、草の中に、ようやく咲いた撫子を摘む気にはならない。我が家に一株の河原撫子がある。日吉商店街の花屋に何気なく立ち寄って、この花を見つけて、すぐに買った。値段も80円でかわいそうなくらい安い値段だったが、花びらが鷺草のように繊細に切れ込んで、淡いピンクの色と姿が素晴らしい。その後その店をときどき覗くが、あくまでも私の感覚においてのことだが、これより素晴らしい撫子を見てはいない。ますます大事に育てている。第一花が終わって今二度目の花がついている。肥料がいるかどうか、思案中である。
 撫子といえば、「なでしこジャパン」である。女子サッカー、ワールドカップで優勝し、ロンドンオリンピックで銀メダル。けなげなほどだ。日本だけでなく世界中がたたえる。「なでしこ」の花をもって称えるのにふさわしい彼女たちではないか。

★台風裡河原撫子折れもせず 高橋正子

 ナデシコ(なでしこ、撫子、瞿麦)はナデシコ科ナデシコ属の植物、カワラナデシコ(学名:Dianthus superbus L. var. longicalycinus)の異名。またナデシコ属の植物の総称。?麦(きょばく)。 秋の七草の一つである。歌などで、「撫でし子」を掛詞にすることが多い。ナデシコ属 (Dianthus) は、北半球の温帯域を中心に約300種が分布する。このうち、ヒメハマナデシコとシナノナデシコは日本固有種(日本にのみ自生)であり、他に日本にはカワラナデシコとハマナデシコが分布する。
 カワラナデシコ (D. superbus L. var. longicalycinus (Maxim.) Williams)には、ナデシコ、ヤマトナデシコの異名もある。これはセキチク (D. chinensis L.) を古くは唐撫子(カラナデシコ)といったことに対する。ナデシコは古くは常夏(とこなつ)ともいった。これは花期が夏から秋に渡ることにちなむ。花の色は紅から淡いピンク色が多いが、園芸品種などでは白色や紅白に咲き分けるものなどもある。ナデシコ属の園芸品種をダイアンサス (Dianthus) ということがあるが、本来はナデシコ属の学名である。また、カーネーション (D. caryophyllus L.) もナデシコ属である。
 「撫でし子」と語意が通じることから、しばしば子どもや女性にたとえられ、和歌などに多く参照される。古く『万葉集』から詠まれる。季の景物としては秋に取り扱う。『枕草子』では、「草の花はなでしこ、唐のはさらなり やまともめでたし」とあり、当時の貴族に愛玩されたことがうかがえる。また異名である常夏は『源氏物語』の巻名のひとつとなっており、前栽に色とりどりのトコナツを彩りよく植えていた様子が描かれている。ナデシコ属は古くから園芸品種として栽培され、また種間交雑による園芸種が多く作られている。中国では早くからセキチクが園芸化され、平安時代の日本に渡来し、四季咲きの性格を持つことから「常夏」と呼ばれた。ナデシコの花言葉は純愛・無邪気・純粋な愛・いつも愛して・思慕・貞節・お見舞・女性の美・など女性的なイメージが強いが、才能・大胆・快活なども。ヤマトナデシコ(カワラナデシコ)の花言葉は、可憐・貞節である。

◇生活する花たち「朝顔・芙蓉・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

8月11日(金)

★ひとつぶのつめたさうましぶどう食ぶ  正子
店頭にぶどうが並んでいます。よく冷えた一粒を口に入れ噛んだ瞬間がとらえられ、美味しさが伝わります。 (祝恵子)

○今日の俳句
樹にもたれ絵描く数人夏帽子/祝恵子
絵を描くのに、必ずしも座って描くとは限らない。木陰を作る木の幹に持たれ、夏帽子を冠り、スケッチをしているグループなのであろう。暑苦しくなく、軽やかな光景だ。(高橋正子)

○桔梗

[桔梗/横浜北八朔町]             [桔梗/横浜日吉本町]

★桔梗の花咲時ポンと言そうな 千代女
★きちかうも見ゆる花屋が持仏堂 蕪村
★きりきりしやんとしてさく桔梗哉 一茶
★桔梗活けてしばらく仮の書斎哉 子規
★佛性は白き桔梗にこそあらめ 漱石
★人遠し明る間早き山桔梗 龍之介
★芝青き中に咲き立つ桔梗かな 碧梧桐
★桔梗の紫めきし思ひかな 虚子
★桔梗や一群過ぎし手長蝦 普羅
★桔梗を咲かしむるまで熔岩老いぬ 風生
★桔梗や雨またかへす峠口 蛇笏
★桔梗や忌日忘れず妹の来る 月二郎
★大江山降り出す雨に桔梗濃し 青邨
★みちのくの雨そそぎゐる桔梗かな 秋櫻子
★桔梗の花の中よりくもの絲 素十
★桔梗の露きびきびとありにけり 茅舎
★旅の子の第一信や花桔梗 汀女
★露晒し日晒しの石桔梗咲く 多佳子
★莟より花の桔梗はさびしけれ 鷹女
★桔梗を引き寄せて体空しけれ 耕衣
★桔梗や褥干すまの日南ぼこ 不器男
★白桔梗売るわらんべの一位笠 林火
★乳の如き白き池あり山桔梗 たかし

桔梗は秋の七草のひとつであるが、私は野山に自生している桔梗をみたことがない。ほどんど庭に植えられたものである。切り花用に6,70センチのものと、矮性と思える鉢植えの桔梗だけれど、一度自生の桔梗を見てみたいと思う。絶滅危惧種とのこと。風船のような蕾が緑色から、徐々に青紫色に染まって、やがて開いてくる。咲きかけの桔梗というのも見たことがない。身近だけれど、そんな具合だ。小さいころに桔梗の形の小鉢があって、それには金時豆を甘く煮たのがいつも入れらえていた。

キキョウ(桔梗、Platycodon grandiflorus)はキキョウ科の多年性草本植物。山野の日当たりの良い所に育つ。日本全土、朝鮮半島、中国、東シベリアに分布する。万葉集のなかで秋の七草と歌われている「朝貌の花」は本種であると言われている。絶滅危惧種である。根は太く、黄白色。高さは40-100cm程度。葉は互生で長卵形、ふちには鋸歯がある。下面はやや白みがかっている。つぼみの状態では花びら同士が風船のようにぴたりとつながっている。そのため “balloon flower” という英名を持つ。つぼみが徐々に緑から青紫にかわり裂けて6-9月に星型の花を咲かせる。雌雄同花だが雄性先熟で、雄しべから花粉が出ているが雌しべの柱頭が閉じた雄花期、花粉が失活して柱頭が開き他の花の花粉を待ち受ける雌花期がある。花冠は広鐘形で五裂、径4-5cm、雄しべ・雌しべ・花びらはそれぞれ5本である。なお、園芸品種には白や桃色の花をつけるものや、鉢植え向きの草丈が低いもの、二重咲きになる品種やつぼみの状態のままほとんど開かないものなどがある。

◇生活する花たち「山萩・鬼灯・蓮の花托」(横浜・四季の森公園)

8月10日(木)

★淀川の上に集まる初秋の雲  正子
川風に誘われきらきらと雲がながれる。水に映る秋の気配に安堵します。立秋を待っていたかのように、高知でも昨日から高く透明な雲が流れています。数日間「よさこい祭」で街は喧騒につつまれますが、今朝の雲間の青はひときわ澄んでいます。日本各地、台風の影響もなく爽やかな秋に向かえたらと念じています。 (宮地祐子)

○今日の俳句
★ピーマンの輝き詰めて朝市に/宮地祐子
ピーマンのぴんと張った緑色の輝きが、朝市でひときわ新鮮な輝きを放って、袋詰めのピーマンのイメージがクリアである。(高橋正子)

※忘れずにすること。
「水に関する俳句」(俳句αの原稿)
結社広告10月号原稿。
月例句会投句。
角川俳句自選5句(信之)

○葛の花

[葛の花/横浜・四季の森公園]

★葛の葉の吹きしづまりて葛の花 子規
★むづかしき禅門でれば葛の花 虚子
★葛の花が落ち出して土掻く箒持つ 碧梧桐
★山桑をきりきり纏きて葛咲けり 風生
★車窓ふと暗きは葛の花垂るる 風生
★葛の花見て深吉野もしのばゆれ 石鼎
★花葛の谿より走る筧かな 久女
★這ひかかる温泉けむり濃さや葛の花 久女
★葛の花こぼれて石にとどまれり 青邨
★奥つ瀬のこだまかよふや葛の花 秋櫻子
★朝霧浄土夕霧浄土葛咲ける 秋櫻子
★わが行けば露とびかかる葛の花 多佳子
★花葛の濃きむらさきも簾をへだつ 多佳子
★いちりんの花葛影を見失ふ 鷹女
★白露にないがしろなり葛の花 青畝
★葛の花流人時忠ただ哀れ 誓子
★今落ちしばかりの葛は赤きかな 立子
★細道は鬼より伝受葛の花 静塔
★葛咲や嬬恋村字いくつ 波郷
★葛咲や父母は見ずて征果てむ 波郷
  
   久万・三坂峠
★わさわさと葛の垂れいる峠越え/高橋正子

 葛の花は秋の七草のひとつ。野にも、河原にも、山にも、葛を見かける。木に覆いかぶさり、崖などに垂れさがり、河原の草を覆う。葛の蔓を一つ引けば、そこら中の木や草が動く。それほどに蔓が長い。葛の葉はよく見るのだが、花を見るのは意識していないと時期を過ごしてしまう。昨日、8月9日に四季の森公園に出かけた。もしや、葛の花が咲いてはいまいかと。その感は的中し、葛の最初の一花が咲いたところだった。葛の花の盛りとなれば、咲き盛る花の下の方にはすでに咲き終わって枯れた花が一つ二つある。枯れ花の一切ない葛を見るのはまれだ。まさに初秋。赤紫の花には芳香がある。根は山芋以上に太く長いそうだが、実際見たことはない。葛といえば葛粉を思うが、これが値段もいい。心配性の私は葛の根が少なくて、葛粉がこの世からなくなるのではないかとふっと思うことがある。本当の葛餅は、さつま芋などのでんぷんでは味わえない、水のようなすっきりとした喉越しがある。これが本もの葛餅を食べるときの幸せなのだ。
 葛については、去年もこの日記に書いたかもしれないが、「葛の葉」物語がある。助けられた白狐の恩返しの話だが、「つるの恩返し」とはまた違って、こちらのほうが日本的文学性があると思う。白狐の化身の名は「葛の葉」。葛の葉をかき分けるような山のどこかでの話である。山の奥では不思議な世界が繰り広げられる。葛にまつわる話ではないが、「山姥」もわが身に代えてみれば共感の話である。葛も葛の花も繁茂しすぎているにも関わらず憎めぬ花である。
  ※葛の葉狐(青空文庫より)

 クズは、マメ科のつる性の多年草。根を用いて食品の葛粉や漢方薬が作られる。万葉の昔から秋の七草の一つに数えられる。漢字は葛を当てる。葉は3出複葉、小葉は草質で幅広く、とても大きい。葉の裏面は白い毛を密生して白色を帯びている。地面を這うつるは他のものに巻きついて10メートル以上にも伸び、全体に褐色の細かい毛が生えている。根もとは木質化し、地下では肥大した長芋状の塊根となり、長さは1.5メートル、径は20センチにも達する。花は8~9月の秋に咲き、穂状花序が立ち上がり、濃紺紫色の甘い芳香を発する花を咲かせる。花後に剛毛に被われた枝豆に似ている扁平な果実を結ぶ。花色には変異がみられ、白いものをシロバナクズ、淡桃色のものをトキイロクズと呼ぶ。和名は、かつて大和国(現:奈良県)の国栖(くず)が葛粉の産地であったことに由来する。温帯および暖帯に分布し、北海道~九州までの日本各地のほか、中国からフィリピン、インドネシア、ニューギニアに分布している。
 クズは、荒れ地に多く、人手の入った薮によく繁茂する。雑草としては、これほどやっかいなものはない。蔓性で草地を這い回り、あちこちで根を下ろす。地上部の蔓を刈り取っても、地下に栄養を蓄えた太い根が残り、すぐに蔓が再生するので、駆除するのはほとんど不可能に近い。世界の侵略的外来種ワースト100選定種の一つである。他方で、その蔓は有用であった。かつての農村では、田畑周辺の薮に育つクズのつるを作業に用いた。そのため、クズは定期的に切り取られ、それほど繁茂しなかった。しかし、刈り取りを行わない場合、クズの生長はすさまじいものがあり、ちょっとした低木林ならば、その上を覆い尽くす。木から新しい枝が上に伸びると、それに巻き付いてねじ曲げてしまうこともある。そのため、人工林に於いては、若木の生長を妨げる有害植物と見なされている。クズは根茎により増殖するため根絶やしにすることが困難である。
 北アメリカでは1876年にフィラデルフィアの独立百年祭博覧会の際に日本から運ばれて飼料作物および庭園装飾用として展示されたのがきっかけとして、東屋やポーチの飾りとして使われるようになった。さらに緑化・土壌流失防止用として政府によって推奨され、20世紀前半は持てはやされたが、原産地の中国や日本以上に北アメリカの南部は生育に適していたためか、あるいは天敵の欠如から想像以上の繁茂・拡散をとげた。そのため有害植物及びに侵略的外来種として指定されたが、駆除ははかどっていない。現在ではクズの成育する面積は3万km2と推定されている。近年ではアメリカ南部の象徴的存在にまでなっている。クズの英語名は日本語からkudzu(「クズー」あるいは「カァズー」と発音される)である。

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月8日(火)

★おみなえし山の葛垂る庭先に  正子
共に万葉の昔から親しまれてきた2つの秋の七草を優美に詠い上げげられた御句かと思います。
山の葛垂る庭先」の措辞がこれらの植物の枕詞を兼ねた、生態描写のように感じられ、実に素晴らしいと思いました。(河野啓一)

○今日の俳句
黒光りして児の掌にかぶと虫/河野啓一
子ども、特に男の子は、虫の中ではかぶと虫がとりわけ好きだ。黒光りする胴体、たくましい角、決して敏速には動かない堂々とした様子。そのかぶと虫を掌に乗せて、王者の気分だ。(高橋正子)

●台風5号が太平洋上に生まれて18日と何時間かになる。観測史上3番目の長寿とのこと。奄美大島など、和歌山北部、滋賀県、など大雨になった。姉川が氾濫。前線と台風の影響で、日本中、あちこち大雨の被害。

横浜で35度。残暑ぎらぎら。エアコンをドライから自動運転に切り替える。

●台風裡えのころ草の流線形/正子

今朝は、大変涼しい。台風5号が近づいているせいかもしれない。ここ数日の炎暑とは打って変わって。
 台風5号は、8日午前11時半現在、新潟・糸魚川市の北の海上を北北東に進んでいる。台風が近づく新潟市から中継で伝える.新潟・上越市では、降り始めから8日午前10時20分までに32.5ミリの雨を観測している。新潟県内の雨は、徐々に東へと移動していて、新潟市も午後には本格的な台風の雨となる見込み。
 新潟地方気象台によると、台風5号の速度はゆっくりで、新潟市へ最も近づくのは8日夜になる。風や雨の強い状態は9日昼過ぎまで続く見込みで、長い間警戒が必要だという。

毎日毎日、ネットの日本語の俳句を読んでいる。小池百合子さんが、都知事になってよかったと思うこともあるせいか、「俳句民主主義」というようなことを感じてしまう。伝統文化と民主主義は矛盾しないか。
英語俳句でいえば、初期の英語俳句は、イマジストの詩人たちが作り始めた。まず、彼らの俳句の「言葉」の質が基本的にいまの英語俳句の言葉違うと感じる。(2016)

○尾花(おばな・すすき)

[薄(すすき)/横浜日吉本町]

★何ごともまねき果たるすすき哉 芭蕉
★おもしろさ急には見えぬ薄かな 鬼貫
★山は暮れて野は黄昏の薄かな 蕪村
★夕闇を静まりかへるすゝき哉 暁台
★猪追ふや芒を走る夜の声 一茶
★古郷や近よる人を切る芒 一茶
★箱根山薄八里と申さばや/正岡子規
★一株の芒動くや鉢の中/夏目漱石
★金芒ひとかたまり銀芒ひとかたまり/高浜虚子
★穂芒のほぐれ初めの艶なりし/能村登四郎
★穂を上げし芒に風の触れはじむ/稲畑汀子
★薄野を来て一山の夕日浴ぶ/小澤克己
★今日を尋めゆく落日の川すすき/千代田葛彦

 薄について書こうと思えばありすぎる。いたるところにあるけれど、夏の青い薄が風になびくのもよい。城ケ島に4年ぐらい前だったか行ったときに、はるか大島の影が見える崖に青薄が靡いていた。月があがればどんなに素敵だろうかと思った。その青薄も真夏の暑さに鍛えられ、青々とした色が幾分か抜けると紅むらさきのつややかな穂が出る。出始めの穂の色、はらりとほどける穂の具合は、初秋の風情としては一品。秋も深くなると穂が白くほおけて、銀色金色に輝く。小諸の花冠フェスに出かけた折、追分のあたりから景色はぐっと高原らしくなるが、薄は金色だった。それから、鎌倉の二階堂の虚子記念館を訪ねたときに、薄原があった。虚子がこの薄原を詠んだのではないかと思わせる雰囲気があった。
薄について風情の良さばかりを言ってはおれないのだ。薄は、別な呼称で萱なのだ。生家には家の前に広い畑がある。両親がいたころは、いろんな農作物がよく育っていた。父が亡くなり40年がたち、母がこの5月に亡くなったが、畑の隅に徐々に萱が生え始めた。畑の手入れが行き届かない。おそらくこの萱が広がって、何年か経つうちに荒れた野に戻るだろうと、寂寥とした思いにもなる。

★追分の芒はみんな金色に/高橋正子

 ススキ(芒、薄)とは、イネ科ススキ属の植物。萱(かや)、尾花ともいう。野原に生息し、ごく普通に見られる多年生草本である。高さは1から2m。地下には短いがしっかりした地下茎がある。そこから多数の花茎を立てる。葉は細長く、根出葉と稈からの葉が多数つく。また、堅く、縁は鋭い鉤状になっているため、皮膚が傷つくことがある。夏から秋にかけて茎の先端に長さ20から30cm程度の十数本に分かれた花穂をつける。花穂は赤っぽい色をしているが、種子(正しくは穎果・えいか)には白い毛が生えて、穂全体が白っぽくなる。種子は風によって飛ぶことができる。日本には全国に分布し、日当たりの良い山野に生息している。夏緑性で、地上部は冬には枯れるのが普通であるが、沖縄などでは常緑になり、高さは5mに達する。その形ゆえに、たまにサトウキビと勘違いする観光客がいる。国外では朝鮮半島・中国・台湾に分布するほか、北米では侵略的外来種として猛威をふるっている(日本にセイタカアワダチソウが侵入したのと逆の経路で伝播)。植物遷移の上から見れば、ススキ草原は草原としてはほぼ最後の段階に当たる。ススキは株が大きくなるには時間がかかるので、初期の草原では姿が見られないが、次第に背が高くなり、全体を覆うようになる。ススキ草原を放置すれば、アカマツなどの先駆者(パイオニア)的な樹木が侵入して、次第に森林へと変化していく。後述の茅場の場合、草刈りや火入れを定期的に行うことで、ススキ草原の状態を維持していたものである。

◇生活する花たち「山萩・鬼灯・蓮の花托」(横浜・四季の森公園)