★娘の秋扇たたまれ青き色の見ゆ 正子
お嬢さまの扇がたたまれてそこにあります。その青さ、それが若さであり、同時に新しい秋の涼しさをも感じさせてくれます。(多田有花)
○今日の俳句
日々すべきことをなしつつ新涼に/多田有花
作者が、モンブランへ発つ直前の句であるから、その準備のための、「日々すべきこと」であろう。用意周到な計画と準備があって、初めて登頂は成功する。日々成し終えていく内に、季節も新涼へと移り変わっていった感慨がおおきい。(高橋正子)
あの年、ヨーロッパは今年の日本のように記録的な猛暑でした。氷河が溶け出して危険になり、モンブランをあきらめて、モンテローザに変更したのを思い出します。(多田有花)
●現代俳句協会への会費と入会金を振り込む。
入会金5千円と後期会費5千円。信之・正子・句美子の3名分。
それぞれ、入会記念作品を2句投句するようにとあった。9月中でよいでしょう。
○射干、檜扇(ヒオウギ)

[射干(ヒオウギ)/東京・向島百花園]
★射干のまはりびつしより水打つて/波多野爽波
★水打つて射干の起ち上がるあり/波多野爽波
★射干の前をときどき笑ひ過ぐ/岡井省二
★射干の咲く川岸に風立ちぬ/當麻幸子
★射干や海に出る道石多し/鈴木多枝子
★満願の朝や射干実をはじく/飯田はるみ
★仏谷出て射干の朱にまみゆ/淵脇護
★射干や人欺かず蔑まず/小澤克己
★射干や薪積む軒の深庇/生田喬也
檜扇の花の印象はとてもクラッシックだということ。朱色の花は貴族階級の女の子のような雰囲気だ。栽培しているものも最近ではめったに見ることがなくなった。向島百花園でかろうじて咲き残るのを見たくらいだ。昭和30年ぐらいまでだろうか。夏休みの八月の庭に植えてあるのを見たことがある。そのずっと後、生け花に活けたのを床の間で拝見することもあった。葉が檜扇のようなのでこの名前がついているのだが、檜扇の連想からいつも古典的な花と思う。手書きの生花の本のような。
★檜扇を活けし鋏がまだそこに/高橋正子
★檜扇の花を揚羽が飛びゆけり/高橋正子
ヒオウギ(檜扇、学名:Iris domestica)はアヤメ科アヤメ属の多年草である。従来はヒオウギ属(Belamcanda)に属するとされ、B. chinensisの学名を与えられていたが、2005年になって分子生物学によるDNA解析の結果からアヤメ属に編入され、現在の学名となった。ヒオウギは山野の草地や海岸に自生する多年草である。高さ60 – 120センチ・メートル程度。名前が示すように葉は長く扇状に広がる。花は8月ごろ咲き、直径5 – 6センチ・メートル程度。花被片はオレンジ色で赤い斑点があり放射状に開く。午前中に咲き夕方にはしぼむ一日花である。種子は5ミリ・メートル程度で黒く艶がある。本州・四国・九州に分布する。花が美しいためしばしば栽培され、生花店でも販売される。特に京都では祇園祭に欠かせない花として愛好されている。黒い種子は俗に「ぬば玉」と呼ばれ、和歌では「黒」や「夜」にかかる枕詞としても知られる。
◇生活する花たち「犬蓼・吾亦紅・チカラシバ」(横浜下田町・松の川緑道)

★朝は深し露草の青が育ち 正子
露草は半日陰のようなところに群れて咲いています。まだ日中は暑さの厳しい頃、あの露草の青さには清涼剤のような清々しさがあります。「朝は深し」がその青さにぴったりです。 (多田有花)
○今日の俳句
日々すべきことをなしつつ新涼に/多田有花
作者が、モンブランへ発つ直前の句であるから、その準備のための、「日々すべきこと」であろう。用意周到な計画と準備があって、初めて登頂は成功する。日々成し終えていく内に、季節も新涼へと移り変わっていった感慨がおおきい。(高橋正子)
○コムラサキ

[コムラサキ/横浜日吉本町]
砥部の庭にコムラサキがあった。隣家との境のブロック塀を隠すようにフランスヒイラギの隣に植えていた。2メートルぐらいに大きく育って、実もよくつけた。ちょうど、リビングから眺められる。リビングからはこの庭に自由に出入りでき、子供たちは学校や外遊びからは玄関ではなく、直接リビングへ帰って来ることが多かった。リビングから見える庭は実のなる木があるので小鳥がいつも来ていた。チャボやウサギも飼っていたし、子供たちには楽しい庭だったと思う。我が家にあったのは園芸種のコムラサキだが、それが紫式部が違う木であるとは、最近まで知らなかった。小さい実を爪で割ってみると、棗のような実である。道理で小鳥が好む分けだ。
★小紫揺れてばかりよ鳥が来て/高橋正子
★子がすり抜けコムラサキの実が落ちる/〃
コムラサキ(小紫)は、クマツヅラ科ムラサキシキブ属の落葉低木。学名:Callicarpa dichotoma、別名:コシキブ(小式部)、分布:日本、朝鮮半島、中国。 樹高は200~300cmで、開花期は6~8月、成実期:9~12月。初夏に薄紫色の花を咲かせ、秋に垂れた枝に紫色の小球形の果実を多数付ける。幹に近いところから枝先に向かって色付く果実は、鳥の好物。緑色の葉は上半分に鋸歯が見られ、葉は対生に付く。 コムラサキと似た花に、同科同属の ムラサキシキブ(紫式部)があるが、通常、家庭の庭で見られムラサキシキブと呼ばれるものは、実際には、コムラサキであることが多い。コムラサキの白色品種に、シロシキブ(白式部)がある。
コムラサキとムラサキシキブの違いは、果実の付き方では、ムラサキシキブは比較的疎らに付くが、コムラサキは果実が固まって付く。葉柄と花柄の付く位置では、ムラサキシキブは近接しているが、コムラサキは少し離れて出る。葉の鋸歯は、ムラサキシキブでは全葉にあるが、コムラサキには上半分にしかない。樹高は、ムラサキシキブの方が高く(3~4m)、コムラサキの方が低い(2~3m)。枝垂れでは、ムラサキシキブは枝垂れるが、コムラサキは枝垂れない。 分布では、ムラサキシキブは山野の林に自生し、コムラサキは家庭の庭先に植栽されている。
◇生活する花たち「藻の花・萩・藪蘭」(鎌倉・宝戒寺)

★草は花を娘の誕生日の空の下 正子
子供が何歳になろうとも、親の自分がいくつになろうとも子供の誕生の時の様子は鮮明に覚えているもの。又今年も季節が巡り来て、九月に入り身ほとりの草は娘の誕生日に併せるかの如く秋の花を咲かせ出した・・。秋の景の到来とともに子の誕生日に思いを馳せる親心が思われて素晴らしい。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
さざめける稲穂の風の中に居る/桑本栄太郎
稲穂の上を風が渡ると、稲穂はさざめくような、快い音を立てる。吹く風も稲穂のさざめく音も、自然体で受け止められている。(高橋正子)
○秋風の路地に出て買うロバのパン 正子
木退院後は、木曜日に車でやってくるローゼンハイムのパン屋さんでときどきパンを買うようになった。バターロールは、子どもが小さいとき家庭で焼いていたパンとそっくり。今日は、バターロールだけを買う。なのに、おまけに食パンが入っていた。これは、ラスクにすることに。(2015)
●句美子の誕生日。栗おこわを持っていく。誕生日ケーキのかわりに、焼きティラミスを持参。10日月例ネット句会の俳句をしっかり作るように言い置く。
黄桃のタルトを作ったといって土産にくれた。昨日は、渋谷の松濤でフレンチを食べたという。
○秋桜(コスモス)

[秋桜/横浜・四季の森公園]
★コスモスの花に蚊帳乾す田家かな 鬼城
★日曜の空とコスモスと晴れにけり 万太郎
★コスモスの相搏つ影や壁の午後 泊雲
★コスモスや二戸相倚れる柿葺 青畝
★コスモスの花咲きしなひ立もどり 虚子
★コスモスや墓名に彫りし愛の文字 風生
★コスモスを離れし蝶に谿深し 秋櫻子
★コスモスの乱れふし居り月の下 石鼎
★コスモスにみんな薄翅を立てし虫 かな女
★コスモスをうまごに折りて我も愉し 亞浪
★コスモスくらし雲の中ゆく月の暈 久女
★コスモスの月夜月光に消ゆる花も 青邨
★コスモスの花のとびとび葭の中 素十
★コスモスに藍濃き衣を好み著る 鷹女
★コスモスや鐵條網に雨が降る 汀女
★望郷や土塀コスモス咲き乱れ 立子
★満月光地上に高きコスモスに/高橋正子
★裏庭にコスモス咲かす自由さあり/〃
コスモス(英語: Cosmos、学名:Cosmos)は、キク科コスモス属の総称。また、種としてのオオハルシャギク Cosmos bipinnatus を指す場合もある。アキザクラ(秋桜)とも言う。秋に桃色・白・赤などの花を咲かせる。花は本来一重咲きだが、舌状花が丸まったものや、八重咲きなどの品種が作り出されている。本来は短日植物だが、6月から咲く早生品種もある。原産地はメキシコの高原地帯。18世紀末にスペインマドリードの植物園に送られ、コスモスと名づけられた。日本には明治20年頃に渡来したと言われる。秋の季語としても用いられる。日当たりと水はけが良ければ、やせた土地でもよく生育する。景観植物としての利用例が多く、河原や休耕田、スキー場などに植えられたコスモスの花畑が観光資源として活用されている。ただし、河川敷の様な野外へ外来種を植栽するのは在来の自然植生の攪乱であり、一種の自然破壊であるとの批判がある。
オオハルシャギク Cosmos bipinnatus Cav. 一般的なコスモスといえばこれを指す。高さ1 – 2m、茎は太く、葉は細かく切れ込む。 キバナコスモス Cosmos sulphureus Cav. 大正時代に渡来。オオハルシャギクに比べて暑さに強い。花は黄色・オレンジが中心。 チョコレートコスモス Cosmos atrosanguineus (Hook.) Voss 大正時代に渡来。黒紫色の花を付け、チョコレートの香りがする。多年草で、耐寒性がある。花言葉は少女の純真、真心。「コスモス」とはラテン語で星座の世界=秩序をもつ完結した世界体系としての宇宙の事である。
◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

●9月月例ネット句会投句案内●
①投句:当季雑詠「秋の句3句」と「水に関係して詠んだ句2句」計5句
(※水に関する秀句は、「毎日俳句α」水特集に寄稿。)
②投句期間:2017年9月4日(月)午後1時~2017年9月10日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。
▼互選・入賞・伝言
①互選期間:9月10日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:9月11日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、9月11日(月)正午~9月13日(水)午後6時
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之
★水に触れ水に映りて蜻蛉飛ぶ 正子
秋の景色が進むにつれ空気が澄み渡り、色々な蜻蛉の飛び交う光景が増えて来ました。どんな蜻蛉でも水辺を好むようですが、時折水に触れ、またその姿が水に映り爽やかな秋のひとこまです。「水に触れ水に映る」との繰り返しが清澄なる効果をあげ、秀逸な一句です。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
新駅の高架工事や稲の花/桑本栄太郎
新駅は田園の中に建てられ、高架工事が進んでいる。おりしも田んぼには稲の花が咲き、暑さのなかにも秋の気配が漂う。開発が自然を押しやって進んでいるのも現代の景色だ。(高橋正子)
●涼しい。近所のマンション3棟が解体され更地になっているので、秋風が見えるよう。
日吉の井口文華堂に絵筆と画用紙を買いにゆく。昨日宅配で届いたシュトックマーの絵の具(3歳から用)に付属した筆が4号ぐらいで細すぎると思う。それで、買いに出かけた。画用紙1400円、水彩筆10号900円とレジ係に値段を言われ、慌てた。値段をよく見ずに買った画用紙が4歳児には高すぎた。
秋風の向こう人が行き交える 正子
蟋蟀の声の懐かし雨上がり 正子
寝につけば傍に鳴き出す秋の虫 正子
梨食めば梨の水気のさわさわと 正子
涼しさにたわいもなくて炊く赤飯 正子
画用紙のラフさが温し秋の風 正子
釣舟草(ツリフネソウ)

[釣舟草/東京白金台・国立自然教育園] [黄釣舟(キツリフネ)/横浜・四季の森公園]
★日おもてに釣船草の帆の静か/上田日差子
★無事祈る小さき岬宮釣舟草 千恵子
★釣舟草琵琶湖の風の吹くままに 善清
★川せせらぐに黄釣舟草の黄がまぶし/高橋信之
★釣船草秋風吹けば走るかに/高橋正子
ツリフネソウ(釣船草、吊舟草、学名: Impatiens textori)は、ツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草である。ムラサキツリフネ(紫釣船)とも呼ばれる[3]。
東アジア(日本、朝鮮半島、中国、ロシア東南部)に分布する。日本では北海道・本州・四国・九州の低山から山地にかけて分布し、水辺などのやや湿った薄暗い場所に自生する。キツリフネとともに群生していることも多い。日本には同属では、ハガクレツリフネも生育している。草丈は、40-80 cmほどに生長する。葉は鋸歯(縁がギザギザになる)で、楕円形から広披針形、キツリフネより広披針形に近い傾向がある。花期は夏から秋(山地では 8月頃から、低地では 9-10月)。茎の先端部から細長い花序が伸び、そこに赤紫色で3-4 cmほどの横長の花が釣り下がるように多数咲く。稀に白い色の花がある。花弁状の3個の萼と唇形の3個の花弁をもち、距が長く筒状になっている。下の花弁の2個が大きく、雄しべが5個。その花が帆掛け船を釣り下げたような形をしていることや花器の釣舟に似ていることが名前の由来と考えられている。花の形はキツリフネに似るが、色が赤紫色であることと、花の後ろに伸びる距の先端が渦巻き状に巻くこと本種の特徴である。なお一般にツリフネソウ属の花は葉の下に咲くが、本種はその例外である。大きく深い花がたくさん咲き距の部分に蜜がたまり、主にマルハナバチなど大型のハナバチや、ツリアブ類などが好んで集まり、花粉を媒介する。
種子が熟すと、ホウセンカなどと同様に弾けて飛び散るように拡がる。
キツリフネ(黄釣船、学名: Impatiens noli-tangere)は、ツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草である。その黄色い花と、後ろに伸びる距の先が巻かずに垂れることが、ツリフネソウとの明確な相違点である。
◇生活する花たち「女郎花・葛の花・萩」(四季の森公園)

★つまみ菜を洗えば濁る水の色 正子
○今日の俳句
秋風に速き流れの雲ひとつ/高橋秀之
空を眺めていると、ひとつだけ速く流れている雲に気づく。そこにだけ風が強く吹いているのだろうか。秋の空を見に行ってみたいものだ。(高橋正子)
○「夏休み」にしていた「デイリー句会」を再開する。1日の投句者は4名。
http://blog.goo.ne.jp/kakan003
○韮の花
[韮の花/ネットより] [韮の花/横浜日吉本町]
★韮の花坂としもなく息あへぐ/石田波郷
★足許にゆふぐれながき韮の花/大野林火
★おもてより裏口親し韮の花/水野節子
★天日を豊かに受けて韮の花/久我達子
★韮の花秩父は土の匂いして/城内明子
★一面に韮の花咲く里暮れし/阿部スミエ
[過去]
昨日、ある家によく咲いていた酔芙蓉も今日は、ちっとも咲いていない。かわりに隣の家の酔芙蓉が咲いていた。花は全く一期一会。歩いていると、なんらかの花に偶然に出会う。一日が言えないし、一時間が言えない。今日は、韮の花がちょうど盛り。韮の花には小さな蝶がいつもせせり寄って蜜を吸っている。球形に小さな花が集まる花は良く見ればかわいらしい。ネットで「韮の花」を検索すると、春に咲く薄紫の「花韮」の画像が混じっている。ネットで気をつけないといけないところである。「花韮」は食用にしないし、咲く季節が違う。
生家の庭先の畑の端に石組みに沿って一列に韮が植えてあった。韮は冬から春がおいしかった。味噌汁に入れるのに、「ちょっと、韮を刈ってきて。」と言われることもあった。春を過ぎると葉が硬くなる。韮の花は、二学期がはじまるころに咲く。韮の花と言えば、「二学期が始まる暑さ」と、体に染みている。二学期が始まると、運動会の練習が始まる。日暮れがだんだん淋しくなり、昼間は汗をかいた簡単服(簡単なワンピース)では涼しすぎるようになる。韮の花が咲くと、九月特有の暑さを思い出す。
★いつ見ても韮の花に蝶せせり/高橋正子
ニラ(韮)は、百合(ゆり)科ネギ属の多年草緑黄色野菜である。学名はAllium tuberosum。Allium:ネギ属、tuberosum:塊茎のある、塊茎状の。Allium(アリウム)は「ニンニク」の古いラテン名で、「匂い」という意味が語源。夏には葉の間から30 – 40cmほどの花茎を伸ばす。花期は8 – 10月頃。花は半球形の散形花序で白い小さな花を20 – 40個もつける。花弁は3枚だが、苞が3枚あり、花弁が6枚あるように見える。雄蕊(おしべ)は6本、子房は3室になっている。子房は熟すると割れて黒色の小さな種を散布する。中国西部が原産。日本では本州から九州に野生し、これを自生とする向きもあるが、疑わしい。株分けまたは種によって増やす。独特の臭気があることから「においきらう」(香嫌)、これが「にら」に変化したともいわれ、また、美味であることから「みら」(美辣)が「にら」に変化したともいわれる。この匂いのため、禅宗などの精進料理では五葷の一つとして忌避される。匂いの原因物質は硫化アリル(アリシン)などの硫黄化合物である。
◇生活する花たち「葛の花①・葛の花②・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

★白萩の奥なる門の半開き 正子
白萩に、その家に住まわれる人の清楚な暮らしぶりが思われます。半開きには住人の動きが見えるようです。(黒谷光子)
○今日の俳句
萩咲くを乱して山に供花を切る/黒谷光子
仏様へお花をお供えするのも作者のお勤め。山に花を取りにでかけることもある。心ならずも美しく咲いている萩の姿をみだすこともある。萩の花を含めて季節の花を用意される暮らしがゆかしい。(高橋正子)
●台風15号が小笠原に居座り、小寒いほど涼しい。最高気温が21度。
角川年鑑2018年版、信之先生自選5句を投稿。
ここ数日、信之先生の紛失メモを探して、大変。全く出てこない。重要メモとしてしまい込んだらしい。
◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)・「キツネノカミソリ」(横浜四季の森公園)

★雲が来て風のそよげる花芙蓉 正子
たおやかな芙蓉の花が風にやさしくそよぐ姿が、やわらかな雲の流れくる背景によく調和し、秋の涼しさを明るく静かに感じさせてくれます。(小西 宏)
○今日の俳句
海近くトンボ集える墓参り/小西 宏
それぞれの家の墓地は、山裾にあったり、市街地を眺める丘にあったりする。宏さんの墓参は海の近くのお墓。見晴らしのよい墓地には、トンボが集い爽やかである。(高橋正子)
○薮蘭(やぶらん)

[薮蘭/鎌倉・宝戒寺] [薮蘭/ネットより]
★藪蘭は大樹の下にのびのびと/高橋信之
★藪蘭や涼しくなると思うころ/高橋正子
薮蘭(やぶらん、学名:Liriope muscari)は、スズラン亜科(Nolinoideae)ヤブラン属(Liriope)のる多年草。Liriope(リリオーペ)は、ギリシャ神話の女神の名前に由来。 東アジアに分布する。開花期は夏から秋。花は紫色の小さいもので、穂状に咲く。葉は細長く、先は垂れる。日陰に生える。日本庭園の木々の根元などにアクセントとして植えられることが多い。葉が斑入り(ふいり)のものもある。実(タネ)は黒い丸形。別名は「山菅」(やますげ)。ちなみに、万葉集で「山菅」として歌われたのは竜の髭(りゅうのひげ)のこと。万葉集では薮蘭は登場しないようだ。10月26日の誕生花。花言葉は「謙遜」。
◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)・「キツネノカミソリ」(横浜四季の森公園)

★朝顔の紺一輪を水に挿し 正子
朝、切り取られた紺の朝顔をすぐに水に挿された。朝顔の紺色の一輪で有るからこその涼やかさと清楚さが美しく浮かび上がって参ります。活けられているお部屋全体まで清々しさを感じます。(佃 康水)
○今日の俳句
潮の香の港にたてば銀河濃し/佃 康水
漁港を詠んで、句材が整っています。潮の香がする夜の港は、港の明かりも家々の明かりも落されて、銀河の限りない星がはっきりと見えます。無窮の空の銀河なのです。(高橋正子)
○葛の花
葛の花は秋の七草のひとつ。野にも、河原にも、山にも、葛を見かける。木に覆いかぶさり、崖などに垂れさがり、河原の草を覆う。葛の蔓を一つ引けば、そこら中の木や草が動く。それほどに蔓が長い。葛の葉はよく見るのだが、花を見るのは意識していないと時期を過ごしてしまう。昨日、8月9日に四季の森公園に出かけた。もしや、葛の花が咲いてはいまいかと。その感は的中し、葛の最初の一花が咲いたところだった。葛の花の盛りとなれば、咲き盛る花の下の方にはすでに咲き終わって枯れた花が一つ二つある。枯れ花の一切ない葛を見るのはまれだ。まさに初秋。赤紫の花には芳香がある。根は山芋以上に太く長いそうだが、実際見たことはない。葛といえば葛粉を思うが、これが値段もいい。心配性の私は葛の根が少なくて、葛粉がこの世からなくなるのではないかとふっと思うことがある。本当の葛餅は、さつま芋などのでんぷんでは味わえない、水のようなすっきりとした喉越しがある。これが本もの葛餅を食べるときの幸せなのだ。
葛については、去年もこの日記に書いたかもしれないが、「葛の葉」物語がある。助けられた白狐の恩返しの話だが、「つるの恩返し」とはまた違って、こちらのほうが日本的文学性があると思う。白狐の化身の名は「葛の葉」。葛の葉をかき分けるような山のどこかでの話である。山の奥では不思議な世界が繰り広げられる。葛にまつわる話ではないが、「山姥」もわが身に代えてみれば共感の話である。葛も葛の花も繁茂しすぎているにも関わらず憎めぬ花である。
※葛の葉狐(青空文庫より)
クズは、マメ科のつる性の多年草。根を用いて食品の葛粉や漢方薬が作られる。万葉の昔から秋の七草の一つに数えられる。漢字は葛を当てる。葉は3出複葉、小葉は草質で幅広く、とても大きい。葉の裏面は白い毛を密生して白色を帯びている。地面を這うつるは他のものに巻きついて10メートル以上にも伸び、全体に褐色の細かい毛が生えている。根もとは木質化し、地下では肥大した長芋状の塊根となり、長さは1.5メートル、径は20センチにも達する。花は8~9月の秋に咲き、穂状花序が立ち上がり、濃紺紫色の甘い芳香を発する花を咲かせる。花後に剛毛に被われた枝豆に似ている扁平な果実を結ぶ。花色には変異がみられ、白いものをシロバナクズ、淡桃色のものをトキイロクズと呼ぶ。和名は、かつて大和国(現:奈良県)の国栖(くず)が葛粉の産地であったことに由来する。温帯および暖帯に分布し、北海道~九州までの日本各地のほか、中国からフィリピン、インドネシア、ニューギニアに分布している。
クズは、荒れ地に多く、人手の入った薮によく繁茂する。雑草としては、これほどやっかいなものはない。蔓性で草地を這い回り、あちこちで根を下ろす。地上部の蔓を刈り取っても、地下に栄養を蓄えた太い根が残り、すぐに蔓が再生するので、駆除するのはほとんど不可能に近い。世界の侵略的外来種ワースト100選定種の一つである。他方で、その蔓は有用であった。かつての農村では、田畑周辺の薮に育つクズのつるを作業に用いた。そのため、クズは定期的に切り取られ、それほど繁茂しなかった。しかし、刈り取りを行わない場合、クズの生長はすさまじいものがあり、ちょっとした低木林ならば、その上を覆い尽くす。木から新しい枝が上に伸びると、それに巻き付いてねじ曲げてしまうこともある。そのため、人工林に於いては、若木の生長を妨げる有害植物と見なされている。クズは根茎により増殖するため根絶やしにすることが困難である。
北アメリカでは1876年にフィラデルフィアの独立百年祭博覧会の際に日本から運ばれて飼料作物および庭園装飾用として展示されたのがきっかけとして、東屋やポーチの飾りとして使われるようになった。さらに緑化・土壌流失防止用として政府によって推奨され、20世紀前半は持てはやされたが、原産地の中国や日本以上に北アメリカの南部は生育に適していたためか、あるいは天敵の欠如から想像以上の繁茂・拡散をとげた。そのため有害植物及びに侵略的外来種として指定されたが、駆除ははかどっていない。現在ではクズの成育する面積は3万km2と推定されている。近年ではアメリカ南部の象徴的存在にまでなっている。クズの英語名は日本語からkudzu(「クズー」あるいは「カァズー」と発音される)である。
葛の葉は、初夏をすぎるころから生い茂る。大きな木を覆いつくし、山を行くバスの窓からは、山肌の崖に垂れ下がる。至るところに茂っているが、花は、と思って見ても花が見つからないことが多い。花がつくものには、たくさん葛の花が咲き、地面に紫の花が落ちこぼれて、道の埃を冠っていることもある。八月二十八日、中山の四季の森公園に出かけた。朝のうちは、公園は新涼の風が吹き抜け、水引草、萩、ヤブランな
どが咲き始めていた。コスモス畑には、準備中の立て札が立っている。四季の森公園の北口から入り、紅葉谷を南口へと抜け、公園を出て、中山中学校へ通日広い道路を下った。この道は街中と違って、野の風情があって好きな道だ。葛の蕾を見つける。花は一週間ぐらい先かと下ると、花盛りの葛に出会った。花房も長く、野生の力を発揮している。芳香がする。写真に撮って歩き始めたが、引き返して句美子へのお土産と、私が匂いを忘れないようにするために一花摘んだ。葛の反対側のガードレールには、芒が穂を開いている。また少し下ると、酔芙蓉がわずかにピンクに変わり始めていた。丘の家に庭におみなえしがある。見上げて、そらの白雲を入れて写真を撮った。葛が咲けば、おみなえしも、芒も、酔芙蓉も咲くのである。
★葛の葉の吹きしづまりて葛の花 子規
★むづかしき禅門でれば葛の花 虚子
★葛の花が落ち出して土掻く箒持つ 碧梧桐
★山桑をきりきり纏きて葛咲けり 風生
★車窓ふと暗きは葛の花垂るる 風生
★葛の花見て深吉野もしのばゆれ 石鼎
★花葛の谿より走る筧かな 久女
★這ひかかる温泉けむり濃さや葛の花 久女
★葛の花こぼれて石にとどまれり 青邨
★奥つ瀬のこだまかよふや葛の花 秋櫻子
★朝霧浄土夕霧浄土葛咲ける 秋櫻子
★わが行けば露とびかかる葛の花 多佳子
★花葛の濃きむらさきも簾をへだつ 多佳子
★いちりんの花葛影を見失ふ 鷹女
★白露にないがしろなり葛の花 青畝
★葛の花流人時忠ただ哀れ 誓子
★今落ちしばかりの葛は赤きかな 立子
★細道は鬼より伝受葛の花 静塔
★葛咲や嬬恋村字いくつ 波郷
★葛咲や父母は見ずて征果てむ 波郷
★葛咲けり一つの花のその奥にも/高橋正子
久万・三坂峠
★わさわさと葛の垂れいる峠越え/高橋正子
◇生活する花たち「百合・女郎花・睡蓮」(横浜・都筑中央公園)

★りんりんと虫音に力のありて闇 正子
残暑厳しい中にも夜に入ると、虫の音が聞こえ、確かな秋を感じるころです。あの小さな身体であれだけ響く音色を出す、「力のありて闇」に共感いたします。 (多田有花)
○今日の俳句
秋茄子の不ぞろいなるも強靭に/多田有花
真夏の暑さが去り、朝夕が涼しくなってくると、茄子が生き生きとして美味しい実をつけるが、皮が傷んだようなのも、曲ったのも様々。「不ぞろいなるも強靭」なのである。(高橋正子)
●元家族がお昼に来る。Nゲージの鉄道模型を持って帰る。元が小学生の時のものだから、20数年経っている。元希はおばあさん、つまり私が大きな口を開けて笑っている絵とお菓子を送ったお礼の手紙を書いて持ってきてくれた。絵もてがみも自分でかくというらしい。
身長は107センチ。柱には、わが家に来た時の身長の印があるが、それより、2センチほど伸びたか。嫁の奈津子さんが岐阜のお菓子の「お初尾」という鮎のお菓子などお土産に。
暑いけど、冷房を入れて、ビーフシチュー(デミグラスソースは買ったけど、赤ワインを入れて3時間ほど煮込んだ。)とエビフライ。サラダは、ポテトとグリーンサラダ。グリーンサラダは、私のレシピで、レタス、キュウリ、カイワレ、茗荷、青じそ、鶏ささみの酒蒸し裂きに昆布ポン酢をかける。このサラダ、中国人やドイツ人、若い人にも好評。パンは、クロワッサン型のシリアルロール。あっさりして食べやすい。当分ははまりそう。
夕方、句美子のところへ、同じものを持ってゆく。夕食なので、パンではなくご飯。グリーンサラダがもっと欲しかったという。
◯尾瀬初秋/高橋正子([過去]8月27日金曜日)
尾瀬行きのバスの秋日のあたたかし
みなかみの稲穂熟れそむ日和なり
胡麻の花山の青さをきわだてり
八月は水芭蕉の葉のおおいなる
ハンゴンソウの黄花真盛り触れもして
木道に沿えば風吹き吾亦紅
イワショウブ
みはるかす湿原白き花が立ち
湿原に日はかたむかず未草
弥太郎清水
差し入れし泉の水に手を切られ
山小屋の湯にいて秋の笹の音
◇生活する花たち「藻の花・萩・藪蘭」(鎌倉・宝戒寺)
