■9月月例ネット句会清記
2017年9月10日
14名70句
01.山ひとつ影蔽い居り秋の雲
02あきつ飛ぶ風に序列のあるらしき
03鬼の子の独りあそびや風の友
04田水落つ音に熟れゆく稲穂かな
05せせらぎの木洩れ日揺らぎ秋の水
06真つ新な白きエプロン秋茄子
07月白や男が捌く鯉料理
08稲妻の行方や利根川(とね)は永久に利根川(とね)
09水切りの石の行方や秋の蝉
10渓流の岩にた走る初紅葉
11曼殊沙華あの世の臭うグロテスク
12いなびかり雲の形相すさまじく
13ビル影に磯鵯の赤と青
14被爆跡のひずむ九輪や水引草
15新涼や雉鳩水を飲むところ
16さまざまな色艶ありて鶏頭花
17松手入れ風に乗り足る音の良き
18あき雨のカヌー下りや吉野川
19水澄める箕面川原の楓かな
20男の子なら遠く旅せよ椰子の実よ
21秋晴やものみなくっきり影を持つ
22秋晴の山際にあり朝の月
23模擬店に並ぶ週末秋日和
24家々の裏手を流れ秋の水
25焼きし指流るる秋水に浸す
26新涼や木曽の白樺抜けてくる
27甲斐駒ヶ岳(かいこま)が茜に染まる蕎麦の花
28冬瓜の実り確かな重さかな
(紀伊の国文蔵の滝)
29青空と滝壺繋ぐ水太し
30駒ヶ根を白く流れる秋の水
31旅先の城址で見る鰯雲
32秋麗ら二人で巡る武家屋敷
33台風が過ぎて眩しき朝の空
34顔洗う手がひんやりと秋の水
35月映る大雨の後の溜まり水
36威銃当てる気もなく夕日落つ
37神事終え化粧直しの秋祭り
38梨剥くも噛む音聞くも独りかな
39秋の雨町も野原も水浸し
40裏山を根こそぎ崩す秋出水
41秋風を通す入口長屋門
42広縁にお手玉転がし秋うらら
43秋の空合掌造りの屋根高し
44水底に糸を垂らして子らの秋
45数体のかかし今年も水の中
46青芒朝の雨滴に光り出す
47一雨過ぎ子規忌近づく空の青
48朝刊の隅の一句の爽やかに
49?ぎたての秋茄子水にキュッと鳴る
50供花挿して秋の山水溢れしむ
51茹栗の笊にあげられ湯気が立つ
52秋の月丸く浮かぶ薄い雲
53鈴虫の鳴く声近く真暗闇
54秋風がさざ波立たす夜の川
55傘さして銀杏落葉の正門を
56爽やかに今朝の襖の開け閉めよ
57一人起き朝の読書の爽やかに
58天高く雲無き朝の楽しさよ
59爽やかに高きを雲の流れゆく
60朝爽やかに一杯の水を飲む
61虫の音の眠ればそれきり木のベット
62虫の音の研ぎ澄まされて行く真闇
63秋風に絮飛ぶ浮遊する心
64沸きし湯の落ちるに響く虫の声
65秋潮の水の力に打ち返す
66.鰯雲仰ぎつ丘の市場まで
67.青空に色づき初めし柿揺れて
68.一面の田の匂う道月澄める
69.梨をむくナイフに指に水滲む
70.稲穂垂るまだ入りし水黄にそめて
※互選を開始してください。雑詠から一人5句、水の句から1句、計6句選をし、その中の一句にコメントをつけてください。選句は、この下のコメント欄にお書きください。
★赤とんぼいくらでもくる高さなり 正子
秋と云えば赤とんぼ。小さな存在だが、それが手の届きそうな高さに乱舞している。そこに秋たけなわの歓びを感じます。「いくらでもくる」が、作者の驚きの気持ちを含めたユニークな措辞で、印象的です。(河野啓一)
○今日の俳句
海見ゆる牧に草食む秋の馬/河野啓一
海の見える牧場。ゆったりとして草を食む馬との取り合わせに、新鮮味がある。(高橋正子)
●9月月例ネット句会。今回は、俳句αあるふぁに投稿する水の句も同時に投句。
心に残る水の句は、「石投げて心つながる秋の水/木下夕爾」を取り上げることに決めた。
句美子が2時ごろ来て、ネット句会を手伝ってくれた。
昨日現代俳句協会がら「現代俳句」7,8.9月号と領収書が届いた。
俳句界の結社広告11月号用原稿を送信。俳句に関しては、少しずつだが、途切れなく仕事がある。ネット句会をしながら、結社広告と、水の俳句の原稿を考える。暑くて、少しストレス気味で、かき氷を2個続けて食べる。
見るべきは十月桜のみの園 高橋正子
清純な空の青さに小鳥来る 井上治代
初冬のマルシェに求むフランスパン 河野啓一
りんどうの一輪青く陽にあたる 高橋句美子
◇生活する花たち「白むくげ・ひおうぎ・女郎花」(東京・向島百花園)

★つまみ菜を洗えば濁る水の色 正子
小さいつまみ菜には土も付いていない程でしょうが、それでも僅かに濁る水の色。小さく弱いつまみ菜を大切に洗っておられるのでしょう。湯掻けばほんの一握りですが、おいしいお浸しが食卓を賑わします。(黒谷光子)
○今日の俳句
どの道を行くも稲の香漂いて/黒谷光子
どの道を行っても稲の香がしている、静かであかるい村。稲の熟れるころを自然体で詠んでいて、いつまでも残したい日本の風景。(高橋正子)
○過去(2011年) 向島百花園
昨日、墨田区の向島百花園へ花の写真を撮りに出掛ける。午前9時、信之先生と自宅を出て、帰宅は、午後3時であった。東急東横線の日吉駅から日比谷線に乗って終点の南千住、北千住で乗り換え、東武伊勢崎線を乗り継いで東向島駅で降りる。徒歩10分ほどで向島百花園に着いた。園内は、萩、女郎花、藤袴、葛など秋の七草の盛りであったが、樹が茂って、写真撮影には、光が不足していた。 園内には、庭造りに力を合わせた文人墨客たちの足跡もたくさんあり、芭蕉の句碑を含め、合計29の句碑が随所に立っていた。
江戸の町人文化が花開いた文化・文政期に造られた百花園は、花の咲く草花鑑賞を中心とした「民営の花園」であった。当時の一流文化人達の手で造られ、庶民的で、文人趣味豊かな庭として、小石川後楽園や六義園などの大名庭園とは異なった美しさをもっていた。民営としての百花園の歴史は昭和13年まで続いたが、東京市に寄付された。昭和53年10月に文化財保護法により国の名勝及び史跡の指定を受けた。
[過去]
○米国のプロバイダーからのアクセスがあって、ためしに そこの検索に、<masako takahashi>
を入れてみたら、以下のように、私の記事が10番目くらいに出てきた。この記事がインターネット上に残っていることは、大変ありがたい。[POETRY ON THE PEAKS
○キフネツリソウ(尾瀬ヶ原)

◇生活する花たち「白むくげ・ひおうぎ・女郎花」(東京・向島百花園)

★虫籠に風入らせて子ら駈ける 正子
夕べの原っぱを駆ける、子らの虫籠へ真っ先に入るのは、きっと澄んだ秋風でしょう。籠をからからと鳴らし吹き渡る風に、虫の音への想いも募ります。さあ、籠にはどんな虫が入ったのでしょうか。(川名ますみ)
○今日の俳句
秋風に洗濯物のやさしい色/川名ますみ
一読、「やさしい色」に納得した。秋風に吹かれる洗濯物が、やわらく、色もやさしい。秋の日差し、風の具合のせいもあるだろう。(高橋正子)
●久しぶりに鯛ケ崎の丘に信之先生と上る。10時から11時まで。片道30分ということ。鯛ケ崎公園の病葉か、落葉か、急ぐように散っている。丘の上の貸農園は、今年は、いろんなものが育って農園らしくなっている。目立つのはピーナツ。厳重に網をかけてる。オクラの花も涼しそうだ。里芋、さつまいももあり。
木のベンチとテーブルが設えてあったので、一休み。街が見える。
○2012年
8月27日と28日尾瀬に出かけた。暑い日差しにも関わらず、尾瀬は初秋を迎えていた。水芭蕉やゆうすげの季節は過ぎていたが、今思い返すと、咲き残る夏の花や初秋のさわやかな花々に多く出会えたのは随分幸運だった。曙草は、星形の五弁の白い2センチほどの花に、紫いろの斑点と黄緑色の丸い点がある。そういうのが曙草と知っていればすぐに見分けがつく。ところが私が見たのは、花弁が6弁。そのほかは曙草の特徴を持つ。これも、山小屋にある尾瀬の植物図鑑で調べたが、6弁あるものについては記述を見つけることができなかった。曙草の花は白とは言うが、丸い点のせいで、黄緑がかって見える。これを夜明けの星空と見たようだ。曙草は尾瀬ヶ原でも奥のほうにある赤代田へ辿る木道の脇で見つけた。夕方4時までには山小屋に着きたい一心で歩いていたのだが、「私はここよ」という感じで、足を引き留められ写真を撮った。山小屋で寝ながら思った。山の出立は早い。早朝4時に出発する人たちも中にはいる。そんな人たちは夜明けの星空を見るのだが、曙草はその人たちが名づけた名前かもしれないと。
★尾瀬に泊(は)つ曙草を見し日には/高橋正子
★目を落とす湿原帯の曙草/〃
○曙草

[曙草/国立公園尾瀬] [曙草/ネットより]
★曙草日差せば水のほの匂ふ/小松崎爽
★曙草晩秋の虚追憶す/荒川じんぺい
アケボノソウ(曙草、Swertia bimaculata)は、リンドウ科センブリ属の多年草。北海道から九州の、比較的湿潤な山地に生育する。花期は9-10月。湿地や林床などの、比較的湿った場所に生える。2年草であり、発芽後1年目はロゼットのまま過ごす。2年目に抽苔し、高さ80cm程度まで茎を伸ばす。茎の断面は四角形で、葉は10cm程度の卵状で互生する。ロゼットの根生葉は柄があるが、茎生葉は柄がないことが特徴的である。9-10月の花期、分枝した茎の先端に径2cm程度の白い花をつける。花は5弁で星型。花弁には紫色の点と、黄緑色の特徴的な丸い模様がつく。和名アケボノソウの名前は、この模様を夜明けの星空に見立てた名前。別名キツネノササゲ。
◇生活する花たち「女郎花・葛の花・萩」(四季の森公園)

★胡麻の花稲の花咲くその続き 正子
優しく淡い色合いの可憐な胡麻の花と、小さいながらも白く清楚な稲の花。夏から秋へ向かう田の、清々しい季節感あふれる情景です。いずれも収穫の期待を高めてくれる胡麻の花と稲の花に、やがて訪れる実りの秋の喜びを感じさせていただきました。(藤田洋子)
○今日の俳句
新刊の一書机上に秋初め/藤田洋子
秋が来たと思う爽やかさに、さっぱりと片付いた机上に一冊の新刊書が読まれんとして置いてある。生活が新鮮に詠まれている。(高橋正子)
●立秋の朝日がビルの斜めより/正子
朝顔の蕾ゆるみて青見ゆる/正子
○女郎花(おみなえし)

[女郎花/横浜・四季の森公園] [女郎花/横浜・都筑中央公園]
★ひよろひよろと猶露けしや女郎花/松尾芭蕉
★とかくして一把になりぬをみなへし/与謝野蕪村
★女郎花あつけらこんと立てりけり/小林一茶
★裾山や小松が中の女郎花/正岡子規
★遣水の音たのもしや女郎花/夏目漱石
★女郎花の中に休らふ峠かな/高浜虚子
★山蟻の雨にもゐるや女郎花 蛇笏
★女郎花ぬらす雨ふり来りけり 万太郎
★馬育つ日高の国のをみなへし 青邨
★波立てて霧来る湖や女郎花 秋櫻子
★杖となるやがて麓のをみなへし 鷹女
★をみなへし信濃青嶺をまのあたり 林火
★村の岐路又行けば岐路女郎花/網野茂子
★女郎花そこより消えてゐる径/稲畑汀子
★女郎花二の丸跡に群るるあり/阿部ひろし
★とおくからとおくへゆくと女郎花/阿部完市
★夜に入りて瀬音たかまる女郎花/小澤克己
秋の七草のひとつに数えられる女郎花。萩、桔梗、葛、尾花、撫子、藤袴、女郎花とあげてくれば、どれも日本の文化と切り離すわけにはいかない草々だ。どれも風情がいいと思う。藤袴、女郎花については、名前にはよくなじんでいるものの、実物を見るようになったのは、20代を過ぎて、30代になってからと思う。藤袴、女郎花はどのあたりに生えているかも知らなかった。故郷の瀬戸内の低い山裾などでは見ることはなかった。女郎花は、生け花にも使われるが、粟粒状の澄んだ黄色い花が魅力だ。栽培しているものをよく見かけるようになったが、決してしなやかな花ではない。むしろ強靭な花の印象だ。葛だってそうだし。
★おみなえし雲を行かせたあと独り/高橋正子
★女郎花山の葛垂る庭先に/〃
オミナエシ(女郎花 Patrinia scabiosifolia)は、合弁花類オミナエシ科オミナエシ属 の多年生植物。秋の七草の一つ。敗醤(はいしょう)ともいう。沖縄をのぞく日本全土および中国から東シベリアにかけて分布している。夏までは根出葉だけを伸ばし、その後花茎を立てる。葉はやや固くてしわがある。草の丈は60-100 cm程度で、8-10月に黄色い花を咲かせる。日当たりの良い草地に生える。手入れの行き届いたため池の土手などは好適な生育地であったが、現在では放棄された場所が多く、そのために自生地は非常に減少している。 日本では万葉の昔から愛されて、前栽、切花などに用いられてきた。漢方にも用いられる。全草を乾燥させて煎じたもの(敗醤)には、解熱・解毒作用があるとされる。また、花のみを集めたものを黄屈花(おうくつか)という。これらは生薬として単味で利用されることが多く、あまり漢方薬(漢方方剤)としては使われない(漢方薬としてはヨク苡仁、附子と共に調合したヨク苡附子敗醤散が知られる)。花言葉:約束を守る。名前の由来:異説有り。へしは(圧し)であり美女を圧倒するという説、へしは飯であり花が粟粒に見えるのが女の飯であるという説、など。
◇生活する花たち「桔梗・風船かずら・芹の花」(横浜都筑区ふじやとの道)

★娘の秋扇たたまれ青き色の見ゆ 正子
娘さんとご一緒にお出かけの光景でしょうか。何気なく使われていた閉じた扇子の青色が見えたとのこと、見守られている優しさが伺えます。(祝恵子)
○今日の俳句
畑の井戸囲んでおりぬ稲の花/祝恵子
畑の井戸は旱のときの灌漑用であろう。旱の続きの猛暑の夏も終わり、無事稲が花をつけている。いよいよ、稲は実をつけ、熟れよて実りのときを迎えるのだ。(高橋正子)
●九州や松山は30度を超える残暑らしい。東京は23度の予報。10月初めの感じ。
これまで活動してきた資料が部屋に分散。一家に一つ事務的なものを保管管理処理する一室が必要。
○烏瓜の花

[烏瓜の凋んだ花/横浜日吉本町] [烏瓜の花/ネットより]
★ふはふはと泡かと咲けり烏瓜/松本たかし
★烏瓜咲く一穢なき妖しさに/水原春郎
★烏瓜の花におどろく通夜帰り/松崎鉄之介
★烏瓜の花に逢はせむ話など/宮津昭彦
★去るものは去らして烏瓜の花/神蔵器
★雨音の明るし烏瓜の花/下田恭子
★青々と暮れて烏瓜の花/北畠明子
★烏瓜の花咲き誰もゐない駅/藤井英子
★夜の闇の深くてからすうりの花/中村洋子
★蔓切れてはね上りたる烏瓜/高浜虚子
烏瓜の朱色の実を見つけると、手繰り寄せて採りたくなる。蔓は雑木などに絡まっているので、蔓をひっぱっても、易々と手元には来ない。蔓が切れて、引っ張った力の反動で「はね上がる」。「はね上がる」が面白い。はね上がった実が揺れ、悔しがるものが居る。(高橋正子)
★烏瓜映る水あり藪の中/松本たかし
★をどりつつたぐられて来る烏瓜/下村梅子
烏瓜の花はレースのようであるとは、知っていた。朱色の実が思わぬところに熟れているのをよく見けるが、実の生る前に花があることを思うことはなかった。ところが、8月の終わりだったか、信之先生が早朝の散歩で、烏瓜の花の凋んだところを写真に撮ってきた。烏瓜の花とは思うが、確かとは言えないので、ネットで烏瓜の花の写真をいろいろと見て、間違いないだろうと結論づけた。烏瓜の花は夕方6時半ごろから2時間ほどかけて完全に咲くので、咲いたところを見たくなった。レースのような花なので見たくてたまらない。夜なので、一人は危ない。また危ないところに烏瓜がある。翌晩にでも行きたかったが、いろいろ用事があってすぐ行けない。5日ほどたって花があった場所に二人で懐中電灯をもって出かけた。それらしきを写したが、どうも新しい葉のようだった。昼間蕾を確かめておかねばならなかった。ここ日吉本町辺りは、今年は花の時期は過ぎたかもしれない。
★闇暑し烏瓜の花はどこ/高橋正子
★烏瓜の花の凋みしは悔し/〃
カラスウリ(烏瓜、Trichosanthes cucumeroides)はウリ科の植物で、つる性の多年草。朱色の果実と、夜間だけ開く花で知られる。 地下には塊根を有する。原産地は中国・日本で、日本では本州・四国・九州に自生する。林や藪の草木にからみついて成長する。葉はハート型で表面は短い毛で覆われる。雌雄異株で、ひとつの株には雄花か雌花かのいずれかのみがつく。別名:玉章(たまずさ)・ツチウリ・キツネノマクラ・ヤマウリ。
4月~6月にかけて塊根から発芽、あるいは実生する。花期は夏で、7月~9月にかけての日没後から開花する。雄花の花芽は一ヶ所から複数つき、数日間連続して開花する。対して雌花の花芽は、おおむね単独でつくが、固体によっては複数つく場合もある。花弁は白色で主に5弁(4弁、6弁もある)で、やや後部に反り返り、縁部が無数の白く細いひも状になって伸び、直径7~10cm程度の網あるいはレース状に広がる。花は翌朝、日の出前には萎む。 こうした目立つ花になった理由は、受粉のため夜行性のガを引き寄せるためであると考えられており、ポリネーターは大型のスズメガである。カラスウリの花筒は非常に長く、スズメガ級の長い口吻を持ったガでなければ花の奥の蜜には到達することはできず、結果として送粉できないためである。雌花の咲く雌株にのみ果実をつける。
果実は直径5~7cmの卵型形状で、形状は楕円形や丸いものなど様々。熟する前は縦の線が通った緑色をしており光沢がある。10月から11月末に熟し、オレンジ色ないし朱色になり、冬に枯れたつるにぶらさがった姿がポツンと目立つ。鮮やかな色の薄い果皮を破ると、内部には胎座由来の黄色の果肉にくるまれた、カマキリの頭部に似た特異な形状をした黒褐色の種子がある。この果肉はヒトの舌には舐めると一瞬甘みを感じるものの非常に苦く、人間の食用には適さない。鳥がこの果肉を摂食し、同時に種子を飲み込んで運ぶ場合もある。しかし名前と異なり、特にカラスの好物という観察例はほとんどない。地下にはデンプンやタンパク質をふんだんに含んだ芋状の塊根が発達しており、これで越冬する。夏の間に延びた地上の蔓は、秋になると地面に向かって延び、先端が地表に触れるとそこから根を出し、ここにも新しい塊根を形成して栄養繁殖を行う。
開花後落花した雄花にはミバエ科のハエであるミスジミバエ Zeugodacus scutellatus (Hendel, 1912) の雌が飛来し、産卵する。落花した雄花はミバエの幼虫1個体を養うだけの食物量でしかないが、ミスジミバエの1齢幼虫の口鉤(こうこう:ハエの幼虫独特の口器で、大顎の変化した1対の鉤状の器官)は非常に鋭く発達しており、他の雌が産みつけた卵から孵化した1齢幼虫と争って口鉤で刺し殺し、餌を独占する。
種子はその形から打ち出の小槌にも喩えられる。そのため財布に入れて携帯すると富みに通じる縁起物として扱われることもある。かつては、しもやけの薬として実から取れるエキスが使用された。 若い実は漬物にするほか、中身を取り出し穴をあけてランタンにする遊びに使われる。近年ではインテリアなどの用途として栽培もされており、一部ではカラスウリの雌雄両株を出荷する農園も存在する。
◇生活する花たち「葛の花①・葛の花②・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

★娘の秋扇たたまれ青き色の見ゆ 正子
お嬢さまの扇がたたまれてそこにあります。その青さ、それが若さであり、同時に新しい秋の涼しさをも感じさせてくれます。(多田有花)
○今日の俳句
日々すべきことをなしつつ新涼に/多田有花
作者が、モンブランへ発つ直前の句であるから、その準備のための、「日々すべきこと」であろう。用意周到な計画と準備があって、初めて登頂は成功する。日々成し終えていく内に、季節も新涼へと移り変わっていった感慨がおおきい。(高橋正子)
あの年、ヨーロッパは今年の日本のように記録的な猛暑でした。氷河が溶け出して危険になり、モンブランをあきらめて、モンテローザに変更したのを思い出します。(多田有花)
●現代俳句協会への会費と入会金を振り込む。
入会金5千円と後期会費5千円。信之・正子・句美子の3名分。
それぞれ、入会記念作品を2句投句するようにとあった。9月中でよいでしょう。
○射干、檜扇(ヒオウギ)

[射干(ヒオウギ)/東京・向島百花園]
★射干のまはりびつしより水打つて/波多野爽波
★水打つて射干の起ち上がるあり/波多野爽波
★射干の前をときどき笑ひ過ぐ/岡井省二
★射干の咲く川岸に風立ちぬ/當麻幸子
★射干や海に出る道石多し/鈴木多枝子
★満願の朝や射干実をはじく/飯田はるみ
★仏谷出て射干の朱にまみゆ/淵脇護
★射干や人欺かず蔑まず/小澤克己
★射干や薪積む軒の深庇/生田喬也
檜扇の花の印象はとてもクラッシックだということ。朱色の花は貴族階級の女の子のような雰囲気だ。栽培しているものも最近ではめったに見ることがなくなった。向島百花園でかろうじて咲き残るのを見たくらいだ。昭和30年ぐらいまでだろうか。夏休みの八月の庭に植えてあるのを見たことがある。そのずっと後、生け花に活けたのを床の間で拝見することもあった。葉が檜扇のようなのでこの名前がついているのだが、檜扇の連想からいつも古典的な花と思う。手書きの生花の本のような。
★檜扇を活けし鋏がまだそこに/高橋正子
★檜扇の花を揚羽が飛びゆけり/高橋正子
ヒオウギ(檜扇、学名:Iris domestica)はアヤメ科アヤメ属の多年草である。従来はヒオウギ属(Belamcanda)に属するとされ、B. chinensisの学名を与えられていたが、2005年になって分子生物学によるDNA解析の結果からアヤメ属に編入され、現在の学名となった。ヒオウギは山野の草地や海岸に自生する多年草である。高さ60 – 120センチ・メートル程度。名前が示すように葉は長く扇状に広がる。花は8月ごろ咲き、直径5 – 6センチ・メートル程度。花被片はオレンジ色で赤い斑点があり放射状に開く。午前中に咲き夕方にはしぼむ一日花である。種子は5ミリ・メートル程度で黒く艶がある。本州・四国・九州に分布する。花が美しいためしばしば栽培され、生花店でも販売される。特に京都では祇園祭に欠かせない花として愛好されている。黒い種子は俗に「ぬば玉」と呼ばれ、和歌では「黒」や「夜」にかかる枕詞としても知られる。
◇生活する花たち「犬蓼・吾亦紅・チカラシバ」(横浜下田町・松の川緑道)

★朝は深し露草の青が育ち 正子
露草は半日陰のようなところに群れて咲いています。まだ日中は暑さの厳しい頃、あの露草の青さには清涼剤のような清々しさがあります。「朝は深し」がその青さにぴったりです。 (多田有花)
○今日の俳句
日々すべきことをなしつつ新涼に/多田有花
作者が、モンブランへ発つ直前の句であるから、その準備のための、「日々すべきこと」であろう。用意周到な計画と準備があって、初めて登頂は成功する。日々成し終えていく内に、季節も新涼へと移り変わっていった感慨がおおきい。(高橋正子)
○コムラサキ

[コムラサキ/横浜日吉本町]
砥部の庭にコムラサキがあった。隣家との境のブロック塀を隠すようにフランスヒイラギの隣に植えていた。2メートルぐらいに大きく育って、実もよくつけた。ちょうど、リビングから眺められる。リビングからはこの庭に自由に出入りでき、子供たちは学校や外遊びからは玄関ではなく、直接リビングへ帰って来ることが多かった。リビングから見える庭は実のなる木があるので小鳥がいつも来ていた。チャボやウサギも飼っていたし、子供たちには楽しい庭だったと思う。我が家にあったのは園芸種のコムラサキだが、それが紫式部が違う木であるとは、最近まで知らなかった。小さい実を爪で割ってみると、棗のような実である。道理で小鳥が好む分けだ。
★小紫揺れてばかりよ鳥が来て/高橋正子
★子がすり抜けコムラサキの実が落ちる/〃
コムラサキ(小紫)は、クマツヅラ科ムラサキシキブ属の落葉低木。学名:Callicarpa dichotoma、別名:コシキブ(小式部)、分布:日本、朝鮮半島、中国。 樹高は200~300cmで、開花期は6~8月、成実期:9~12月。初夏に薄紫色の花を咲かせ、秋に垂れた枝に紫色の小球形の果実を多数付ける。幹に近いところから枝先に向かって色付く果実は、鳥の好物。緑色の葉は上半分に鋸歯が見られ、葉は対生に付く。 コムラサキと似た花に、同科同属の ムラサキシキブ(紫式部)があるが、通常、家庭の庭で見られムラサキシキブと呼ばれるものは、実際には、コムラサキであることが多い。コムラサキの白色品種に、シロシキブ(白式部)がある。
コムラサキとムラサキシキブの違いは、果実の付き方では、ムラサキシキブは比較的疎らに付くが、コムラサキは果実が固まって付く。葉柄と花柄の付く位置では、ムラサキシキブは近接しているが、コムラサキは少し離れて出る。葉の鋸歯は、ムラサキシキブでは全葉にあるが、コムラサキには上半分にしかない。樹高は、ムラサキシキブの方が高く(3~4m)、コムラサキの方が低い(2~3m)。枝垂れでは、ムラサキシキブは枝垂れるが、コムラサキは枝垂れない。 分布では、ムラサキシキブは山野の林に自生し、コムラサキは家庭の庭先に植栽されている。
◇生活する花たち「藻の花・萩・藪蘭」(鎌倉・宝戒寺)

★草は花を娘の誕生日の空の下 正子
子供が何歳になろうとも、親の自分がいくつになろうとも子供の誕生の時の様子は鮮明に覚えているもの。又今年も季節が巡り来て、九月に入り身ほとりの草は娘の誕生日に併せるかの如く秋の花を咲かせ出した・・。秋の景の到来とともに子の誕生日に思いを馳せる親心が思われて素晴らしい。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
さざめける稲穂の風の中に居る/桑本栄太郎
稲穂の上を風が渡ると、稲穂はさざめくような、快い音を立てる。吹く風も稲穂のさざめく音も、自然体で受け止められている。(高橋正子)
○秋風の路地に出て買うロバのパン 正子
木退院後は、木曜日に車でやってくるローゼンハイムのパン屋さんでときどきパンを買うようになった。バターロールは、子どもが小さいとき家庭で焼いていたパンとそっくり。今日は、バターロールだけを買う。なのに、おまけに食パンが入っていた。これは、ラスクにすることに。(2015)
●句美子の誕生日。栗おこわを持っていく。誕生日ケーキのかわりに、焼きティラミスを持参。10日月例ネット句会の俳句をしっかり作るように言い置く。
黄桃のタルトを作ったといって土産にくれた。昨日は、渋谷の松濤でフレンチを食べたという。
○秋桜(コスモス)

[秋桜/横浜・四季の森公園]
★コスモスの花に蚊帳乾す田家かな 鬼城
★日曜の空とコスモスと晴れにけり 万太郎
★コスモスの相搏つ影や壁の午後 泊雲
★コスモスや二戸相倚れる柿葺 青畝
★コスモスの花咲きしなひ立もどり 虚子
★コスモスや墓名に彫りし愛の文字 風生
★コスモスを離れし蝶に谿深し 秋櫻子
★コスモスの乱れふし居り月の下 石鼎
★コスモスにみんな薄翅を立てし虫 かな女
★コスモスをうまごに折りて我も愉し 亞浪
★コスモスくらし雲の中ゆく月の暈 久女
★コスモスの月夜月光に消ゆる花も 青邨
★コスモスの花のとびとび葭の中 素十
★コスモスに藍濃き衣を好み著る 鷹女
★コスモスや鐵條網に雨が降る 汀女
★望郷や土塀コスモス咲き乱れ 立子
★満月光地上に高きコスモスに/高橋正子
★裏庭にコスモス咲かす自由さあり/〃
コスモス(英語: Cosmos、学名:Cosmos)は、キク科コスモス属の総称。また、種としてのオオハルシャギク Cosmos bipinnatus を指す場合もある。アキザクラ(秋桜)とも言う。秋に桃色・白・赤などの花を咲かせる。花は本来一重咲きだが、舌状花が丸まったものや、八重咲きなどの品種が作り出されている。本来は短日植物だが、6月から咲く早生品種もある。原産地はメキシコの高原地帯。18世紀末にスペインマドリードの植物園に送られ、コスモスと名づけられた。日本には明治20年頃に渡来したと言われる。秋の季語としても用いられる。日当たりと水はけが良ければ、やせた土地でもよく生育する。景観植物としての利用例が多く、河原や休耕田、スキー場などに植えられたコスモスの花畑が観光資源として活用されている。ただし、河川敷の様な野外へ外来種を植栽するのは在来の自然植生の攪乱であり、一種の自然破壊であるとの批判がある。
オオハルシャギク Cosmos bipinnatus Cav. 一般的なコスモスといえばこれを指す。高さ1 – 2m、茎は太く、葉は細かく切れ込む。 キバナコスモス Cosmos sulphureus Cav. 大正時代に渡来。オオハルシャギクに比べて暑さに強い。花は黄色・オレンジが中心。 チョコレートコスモス Cosmos atrosanguineus (Hook.) Voss 大正時代に渡来。黒紫色の花を付け、チョコレートの香りがする。多年草で、耐寒性がある。花言葉は少女の純真、真心。「コスモス」とはラテン語で星座の世界=秩序をもつ完結した世界体系としての宇宙の事である。
◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

●9月月例ネット句会投句案内●
①投句:当季雑詠「秋の句3句」と「水に関係して詠んだ句2句」計5句
(※水に関する秀句は、「毎日俳句α」水特集に寄稿。)
②投句期間:2017年9月4日(月)午後1時~2017年9月10日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。
▼互選・入賞・伝言
①互選期間:9月10日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:9月11日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、9月11日(月)正午~9月13日(水)午後6時
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之