11月19日(日)

★咳こぼし青年ふたり歩み去る  正子
すれ違ったのでしょうか。青年が二人咳を残して去っていく姿に、風邪が流行り出したこの寒さと、何だか優しさを思います。(祝恵子)

○今日の俳句
初採りの冬菜根を持ち土落とす/祝 恵子
秋に蒔いた菜が寒さの中にようやく育った。引き抜いた菜の根を持ち土をほろほろ落とす。寒そうな土と丈夫な根に冬菜の元気が見える。

正子は、夕刻前に目黒の句美子の家に夕食を届けに出掛け、信之は留守番役。

○枸杞(くこ)

[枸杞の実/横浜市都筑区東山田]       [枸杞の花/横浜市都筑区東山田]

 クコ(枸杞、学名:Lycium chinense)は、中国原産のナス科の落葉低木。食用や薬用に利用される。日本や朝鮮半島、台湾、北アメリカなどにも移入され、分布を広げている外来種でもある。枝は長さ1m以上、太さは数mm-1cmほどで、細くしなやかである。地上部は束状で、上向きに多くの枝が伸びる。枝には2-5cm程度の葉と1-2cm程度の棘が互生するが、枝分かれは少ない。垂直方向以外に地上にも匍匐茎を伸ばし、同様の株を次々と作って繁茂する。海岸、河原、田畑の畦、空き地の周囲など、人の手が加わりやすく、高木が生えきれない環境によく生える。ある程度湿り気のある水辺の砂地を好む。
 性質は丈夫であり、しばしばハムシの一種トホシクビボソハムシ(Lema decempunctata)の成虫や幼虫が葉を強く食害したり、何種類かのフシダニが寄生して虫?だらけになったりするが、それでもよく耐えて成長し、乾燥にも比較的強い。一旦定着すると匍匐茎を伸ばして増え続け、数年後にはまとまった群落となることが多い。開花期は夏-初秋で、直径1cmほどの小さな薄紫色の花が咲く。果実は長径1-1.5cmほどの楕円形で、赤く熟す。
 果実は酒に漬けこんでクコ酒にする他、生食やドライフルーツでも利用される。薬膳として粥の具にもされる。また、柔らかい若葉も食用にされる。クコの果実、根皮、葉は、それぞれ枸杞子(くこし)、地骨皮(じこっぴ)、枸杞葉(くこよう)という生薬である。ナガバクコ(学名: Lycium barbarum)も同様に生薬にされる。月経促進や人工中絶薬の作用をする成分(ベタイン)が含有されているため、「妊婦あるいは授乳中の摂取は避けたほうがよい」[1]との情報がある。 ワルファリンとの相互作用が報告されている[2]。食品素材として利用する場合のヒトでの安全性・有効性については、信頼できるデータが見当たらない。

◇生活する花たち「皇帝ダリア・柚子・檸檬(れもん」(川崎市高津区子母口)

11月18日(土)

★落葉ふる空の青さのどこまでも  正子
落葉がことごとく散るこの季節は、空の青さも果てしなく広やかで、ぬけるような大空が思われます。(小川和子)

○今日の俳句
小春日の芝生へ児ら吹くシャボン玉/小川和子
芝生で遊ぶ児がしきりにシャボン玉を吹いている。小春日のうららかさが、シャボン玉を吹く児を通してよく詠まれている。(高橋正子)

○レモン

[レモン/川崎市高津区子母口]

 レモン(檸檬、英語: lemon、学名: Citrus limon)は、ミカン科ミカン属の常緑低木、またはその果実のこと。柑橘類のひとつである。レモンの近縁種の一つ、シトロンの別名がクエン(枸櫞)で、クエン酸の名はこれに由来する。
 原産地はインド北部(ヒマラヤ)。樹高は3mほどになる。枝には棘がある。葉には厚みがあり菱形、もしくは楕円形で縁は鋸歯状。紫色の蕾を付け、白ないしピンクで強い香りのする5花弁の花を咲かせる。果実は紡錘形(ラグビーボール形)で、先端に乳頭と呼ばれる突起がある。最初は緑色をしているが、熟すと黄色になり、ライムにもよく似ている。ただし、レモンと名は付いていても他の柑橘類と交雑した品種(マイヤーレモンやサイパンレモンなど)では栽培環境で果実の形が変わり易く球形に近いものや、熟すとオレンジ色になるものもある。
 レモンを題材とした作品:梶井基次郎 『檸檬』、主人公が檸檬を爆弾にみたて、丸善を爆破する幻想に駆られる物語。さだまさし 『檸檬』、梶井の小説をヒントにしつつ、舞台を御茶ノ水に置換え、青春時代の恋愛の無常さを描いた楽曲。ヨハン・シュトラウス2世 『レモンの花咲くところ』 (シトロンと訳す場合もあり)。高村光太郎 『レモン哀歌』、妻智恵子との死別を書いた詩。

◇生活する花たち「鶏頭・皇帝ダリア・鈴懸黄葉」(横浜市港北区高田町・早淵川土手)

11月17日(金)

★くぬぎ黄葉一本ありて燃え立ちぬ  正子
晩秋から初冬へと季節は移り、紅葉・黄葉する者はすべて色づきました。しかも真っ青な空に向かってそびえ立つくぬぎの大木とあれば、燃え立つようであり心の中まで洗われる清々しさです。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
玉砂利を踏みつつ待つや後の月/桑本栄太郎
御所の観月は、さながら平安絵巻のようであろうと思う。さびしくも美しい後の月を玉砂利を踏む音とともに楽しまれた。(高橋正子)

○皇帝ダリア

[皇帝ダリア/川崎市高津区子母口]      [皇帝ダリア/横浜日吉本町]

★植ゑかへてダリヤ垂れをり雲の峰 秋櫻子
★ダリア燃え浅寝の眼にはゆらぐなり 悌二郎
★うちあげしあはれ形代と黄ダリヤ 青邨
★千万年後の恋人へダリヤ剪る 鷹女

★皇帝ダリア咲かせて空のあやふさに/高橋信之

 皇帝ダリア(ダリア・インペリアリス)は、ダリアの原種でメキシコ原産で、木立ちダリア、帝王ダリア等の別名がある。草丈が3~4メートルにもなり、花はピンク色で直径約20センチメートルの大輪の花を茎の頂上につける。晩秋の頃、空にそびえて立つ姿は圧巻。
 ダリア(英語: dahlia、学名:Dahlia hybrida)は、キク科ダリア属の多年生草本植物の総称。観賞用に栽培。根は塊根で紡錘形に肥厚。高さ1~2メートル。葉は羽状複葉。夏から秋にかけ、頂に径5~15センチメートルの頭花をつける。花は一重または八重で、紅・白・黄・紫など、花色も花形も種類が多い。球根は非耐寒性であり、サツマイモに似た塊根。メキシコおよびグアテマラが原産地で、ヨーロッパに初めてもたらされたのは18世紀、スウェーデンの植物学者アンドレアス・ダール(Andreas Dahl)に因んで名づけられた。ナポレオンの皇后ジョセフィーヌの庭園で育てられたという。日本には1842年(天保13年)にオランダ人によってもたらされた。和名では「てんじくぼたん(天竺牡丹)」と呼ばれる。[季]夏。
 

◇生活する花たち「茶の花・花八つ手・木瓜」(横浜下田町・松の川緑道)

11月16日(木)

★たて笛の音色幼し冬初め   正子
小学校低学年の児童でしょうか。新学期から学び始めたリコーダーも半年を過ぎ、ずいぶん様になってきました。まだまだ音色に幼いところがあるとはいえ、大きな進歩が見えます。「冬初め」に子供にとっての時間の積み重ね、家族の感慨が感じとれます。あるいはお子様方の幼い頃の思い出かもしれませんね。(小西 宏)

○今日の俳句
欅立つ落葉きらめく陽の中に/小西 宏
情景がよく整理されている。陽を受けてきらめきながら散る落葉。その中心に黄葉した大きな欅の存在が示されている。(高橋正子)

○欅黄葉(けやきもみじ)

[欅黄葉/横浜日吉本町]

★色付や豆腐に落て薄紅葉 芭蕉
★小原女の足の早さよ夕もみぢ 蕪村
★日の暮れの背中淋しき紅葉哉 一茶
★山に倚つて家まばらなりむら紅葉 子規
★瀑五段一段毎の紅葉かな 漱石
★阿賀川も紅葉も下に見ゆるなり 碧梧桐
★たかあしの膳に菓子盛り紅葉寺 虚子
★紅葉してしばし日の照る谷間かな 鬼城
★山門に赫と日浮ぶ紅葉かな 蛇笏
★岩畳をながるゝ水に紅葉かな 石鼎
★黄葉一樹輝きたてり紅葉山 泊雲

★仰ぎ見る欅黄葉と青空を/高橋信之
★欅黄葉いま北国の空が欲し/高橋正子

 千葉公園には、イロハモミジ、イチョウ、トウカエデ、ケヤキ、カツラ、ニワウルシ、シマサルスベリ、トチノキ、ハナミヅキ、ヒメシャラ、ドウダンツツジなどの紅葉・黄葉する樹木があります。10月中~下旬からケヤキ、サクラ、カツラなどが色づきはじめ、11月上旬から中旬にイロハモミジ、トウカエデ、トチノキが見ごろになり、11月下旬から12月上旬にはボタン園の大イチョウが見事な黄葉を見せます。
 今年の紅葉の見ごろ時期は、(社)日本観光振興協会の予想によれば「例年よりやや遅くなる見込み」だそうです。因みに東京(明治神宮外苑)の見ごろ時期は、12月上旬~中旬(例年11月下旬~12月上旬)の予想です。
 紅葉は最低気温が8度になると始まり、5~6度以下になると色づきが進むといわれます。前記の予想は、9月の平均気温から予想する気象庁作成の予測式を用いており、今年は9月の平均気温が例年より高かったため、紅葉の見ごろが「やや遅れる」予想結果となっています。
 紅葉・黄葉の色は樹種によって概ね同じですが、ケヤキの場合は、黄~橙~赤と樹木によって紅葉の色が異なります。同一の樹木が年によって紅葉色が変わることはなく、樹木の個体ごとに紅葉する色が遺伝的に決まっていることが分かっています。千葉公園でも、黄色のものから赤色のものまで色とりどりのケヤキが見られます。(千葉市のホームページより)

◇生活する花たち「十両(やぶこうじ)・万両・白文字(しろもじ)」(東京白金台・国立自然教育園)

11月15日(水)

★追分の芒はみんな金色に/高橋正子
追分は街道の分かれ道で、右へ行けば江戸、左へ行けば京というような碑をよく見かける。そんな碑を囲むように茂る芒。金色というからには芒も開花している。その穂芒の向こうへ今日の陽が落ちる、そんなとき芒の穂はすべてが金色になる。(古田敬二)

○今日の俳句
信濃路へ入るコスモスを揺らしつつ/古田敬二
信濃は今の長野県のことであるから、けいじさんの住んでいる名古屋から信濃へ車で向かっているとき、コスモスも咲いて、ここからは「信濃路」だと思うと、目的地への期待が膨らむ。レベルの高い句。(高橋正子)

●今日は、鬼も出歩かぬ良い日。運転免許を返納。返納した免許証はパンチ入れて、記念にと返してくれた。運転免許経歴書をもらうよう手続き。2週間かかるとのこと。
帰り大倉山駅すぐの青柳菓子店で「丹後路」と「栗羊羹」を買う。二つは似たようなものだった。

「俳壇12月号」に平成の女性主宰30名PARTⅡにその一人として4分の1頁に掲載される。あとで自分が読んで嫌にならない句を出したつもりだ。

11月月例ネット句会の入賞発表の最終整理。

○桜落葉

[桜落葉/横浜日吉本町]

★踏みてゆく桜ばかりの落葉かな/野村喜舟
★桜落葉嵩なしてゐる兵舎跡/皆川盤水
★納骨へ桜落葉の坂くだる/宮津昭彦
★いつの間に桜紅葉の落葉して/稲畑汀子

★すれ違う彼も桜の落葉踏む/高橋信之
★桜落葉が靴をうずめるほどの道/高橋正子
★桜紅葉水平線のけむりたる/高橋正子

 新宿御苑の桜落葉:今日も朝から雨模様。とはいえ、雨が雪に変わりそうなほどの寒さも今日はいく分か和らぎました。昨日から続く雨に、しっとりと舞い落ちたサクラの葉。イギリス風景式庭園では、地面に色とりどりの落ち葉のじゅうたんが敷き詰められました。おなじみの場所でも、落ち葉が積もると、ずいぶん雰囲気が変わるものですね。武蔵野の雑木林を思わせる母と子の森は、さまざまな種類の紅葉が楽しめる自然観察フィールド。野山の木々の色づきのような、素朴な味わいが魅力です。
 じつは、ここ母と子の森も、落ち葉のじゅうたんを楽しめるスポットのひとつ。地面にきれいな色模様を描いているのはサクラの落ち葉。しっとりと水分を含み、踏みしめると足に柔らかな感触が伝わります。木の枝についていた時はピンと張りつめていた葉も、落葉するとくるくると丸まり、何とも可愛らしい印象に。春に芽吹き、夏の太陽をめいっぱい浴びた葉が、いま役割を終えて、最後の彩りをのせて散り落ちていく。季節とともに巡る、自然の息づかいを身近に感じ、落ち葉の一枚一枚もいとおしく思えてきます。コンクリートの多い都会では落ち葉を掃除してしまうことがほとんどですが、新宿御苑では、園路など安全への配慮が必要な場所と、葉を残す場所を分けて管理を行っているため、自然のままに降り積もる落ち葉も楽しめます。(新宿御苑のホームページより)

◇生活する花たち「薬師草・山茶花・桂黄葉」(横浜四季の森公園)

11月14日(火)

★眩しかり渚に並ぶゆりかもめ  正子
京都の鴨川などでもよく見かけました。ゆりかもめは色が白く群れで見ることが多い冬の鳥です。
冬の渚に群れるゆりかもめ、晴れの日の渚の波のきらめきの中では眩しさが一層強くなります。(古田敬二)

○今日の俳句
木の実あまた落ちたばかりの輝きに/古田敬二
落ちたばかりの木の実は、驚くほどつやつやしている。それが「あまた」なので、あたりの森や、その木のゆたかさが思われるできる。(高橋正子)

○石蕗の花(つわのはな)

[石蕗の花/横浜日吉本町]         [石蕗の花/横浜いずみ野]

★せせらぎの水音止まず石蕗の花/高橋正子
★葉の強さよりも明るき石蕗の花/高橋正子

 ツワブキ(石蕗、艶蕗、学名:Farfugium japonicum)とはキク科ツワブキ属の多年草。イシブキ、ツワともいう。ツワブキの名は、艶葉蕗(つやばぶき)、つまり「艶のある葉のフキ」から転じたと考えられている。沖縄方言では「ちぃぱっぱ」という。日本では本州の福島県・石川県以西から四国、九州、琉球諸島(大東諸島と魚釣島を除く)に、日本国外では朝鮮半島、中国、台湾に分布する。低地から山地の日陰や海岸に多い。有毒物質のピロリジジンアルカロイドを含有している。
 多年草で、草丈は50cm程度。地下に短い茎があり、地上には葉だけが出る。葉は根生葉で葉身は基部が大きく左右に張り出し全体で円形に近くなる。長い葉柄を持ち、葉柄は大きく切れ込んだ葉身の中心につく。これらの点はフキによく似ている。その葉は厚くて表面につやがあり、緑色が濃く、若いときには綿毛が多い。花期は10-11月。葉の間を抜けて花茎を伸ばし、その先端に散房花序をつけ、直径5cm程度の黄色い花を数輪咲かせる。フキが夏緑性であるのに対して、ツワブキは常緑性である。
 日陰でもよく育ち、園芸植物として、日本庭園の石組みや木の根元などに好まれる。斑入りの葉を持つものもある。民間薬(生薬名たくご)として、茎と葉を打撲や火傷に用いる。フキと同じように茎を食用とすることもあり、フキを原料にした煮物と同様に「キャラブキ」と呼ばれることもある。津和野町の名前の由来は「石蕗の野」であるという。
 俳句歳時記では「石蕗の花」が冬の季語となっている。

◇生活する花たち「椿・野葡萄・くこ」(横浜市都筑区東山田)

11月13日(月)

★落葉ふる空の青さのどこまでも  正子

○今日の俳句
冬鵙に雲一片もなかりけり/井上治代
一片の雲もなく晴れ渡った空に、けたたましいはずの冬鵙の声が、のびやかに聞こえる。(高橋正子)

11月月例ネット句会の入

http://blog.goo.ne.jp/kakan02d

■11月月例ネット句会/入賞発表■

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2017-11-12 19:36:47 | 日記

■2017年11月月例ネット句会■
■入賞発表/2017年11月13日

○帰り花(りんごの花)

[帰り花(つつじ)/横浜港北区日吉本町_2012年10月25日]  [帰り花(りんごの花)/横浜・四季の森公園_2011年11月3日]

★凩に匂ひやつけし帰花 芭蕉
★かへり花暁の月にちりつくす 蕪村
★春雨と思ふ日もあり帰り花 蓼太
★ニ三日ちうでゐにけりかへり花– 太祗
★茗荷畑ありしあたりか忘れ花 也有
★帰り咲く八重の桜や法隆寺 子規
★一輪は命短し帰花 漱石
★ひとり磨く靴のくもりや返り花 龍之介
★日に消えて又現れぬ帰り花 虚子
★藁積んで門の広さや帰花 鬼城
★返り咲く園遅々とゆく広さかな 蛇笏
★返り花その日その日の来ては去る 万太郎
★梨棚や潰えんとして返り花 秋櫻子
★真青な葉も二三枚返り花 素十
★梨棚のところに来たり帰花 青畝
★ひと枝にうすく真白く返り花 草田男
★返り花三年教へし書をはさむ 草田男
★帰り花日かげりぬればさやかなる 草城
★返り花俳人兵のことぎれし 静塔
★人の世に花を絶やさず帰り花/鷹羽狩行
★帰り花鶴折るうちに折り殺す/赤尾兜子
★礼服をしばらく吊りぬ返り花/山下知津子
★返り咲く花は盛りもなく散りぬ/下村梅子
★太陽のとほれる道に返り花 長谷川櫂
★寂庵の仏に捧ぐ返り花 高田正子

 十月も終わりごろだったと思うが、横浜四季の森公園近くの民家に林檎の帰り花を見たのは、はじめてのこと。桜と紛れてしまうような林檎の花も小春日和の空に咲いているのを見ると、皐月などと違って、なにがしかの風情がある。
 帰り花(かえりばな)とは、11月頃の小春日和に、桜、梅、桃・梨・山吹・つつじなどに多く見られる現象で、本来の季節とは異なって咲かせた花のこと。ひとが忘れた頃に咲くので、「忘れ花」といった言い方もされる。「返り花」とも書き、「二度咲」「狂い咲」ともいい、俳句では冬の季語の一つとなっている。

★歳月は還らず返り咲く花よ/高橋正子

◇生活する花たち「たいわんつばき・石蕗の花・小菊」(神奈川・大船植物園)

11月12日(日)

★水菜洗う長い時間を水流し  正子
関西では嘗ては鯨のはりはり鍋に使用され、最近では鍋物の野菜全般に使用され、良く食べています。又最近では、柔らかくて美味しいサラダの生食用に栽培された水菜が出回っております。長い時間水を流しながらの野菜洗いは、如何にも新鮮で美味しそうです。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
青空のあおに木魂す鵙の声/桑本栄太郎
「キチキチキチ」と鋭い鵙が声がするが、その正体はどこかと思うことがある。青空のあおに抜けて行く声であるが、よく聞けば「木魂」している。その声がはね返って、また耳に入るような。(高橋正子)

○八つ手の花

[八つ手の花/横浜市下田町・松の川緑道]  [八つ手の花/横浜日吉本町]

★花八つ手鶏下へ潜り入る/高橋正子
★裏庭を掃きて清まる花八つ手/高橋正子

 八つ手は、手をぱっと開いたような形をして、新しい葉はつやつやとして、梅雨どきには、蝸牛を乗せたり、雨だれを受けたりする。夏が過ぎ秋が来て冬至のころになると、球状に花火が弾けたような白い花を咲かせる。八つ手の花を見ると、冬が来たと思うのだ。瀬戸内の温暖な気候のなかで長く暮らした私は確かに冬が来たと感じてしまうのだ。
 高村光太郎の詩に「冬が来た」がある。厳しくきりもみするような冬だ。そんな冬は、八つ手の花が消えたとき来る。冬をどう感じとるかが、その人の力そのものであるような気がする。

「冬が来た」
      高村光太郎

きっぱりと冬が来た
八つ手の白い花も消え
公孫樹の木も箒(ほうき)になった
 
きりきりともみ込むような冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬が来た
 
冬よ
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
 
しみ透れ、つきぬけ
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のような冬が来た

◇生活する花たち「秋ばら・山茶花・楓紅葉」(東京調布・神代植物園)

ご挨拶/11月例ネット句会


ご挨拶

11月月例ネット句会にご参加ありがとうございました。月一回の月例句会を楽しみに投句いただきている方もおられます。花冠のネット句会も11月27日で満21年となりました。ネット上の句会がこれほど続いたのは例がないのではないでしょうか。皆様のご支援に感謝するほかはありません。来月の月例ネット句会は<漱石忌ネット句会>といたします。こちらに奮ってご参加ください。これで11月月例ネット句会を終わります。(主宰/高橋正子)

■11月月例ネット句会/入賞発表■

■2017年11月月例ネット句会■
■入賞発表/2017年11月13日

【金賞】
★立冬の長き影伸び畝造る/古田敬二
立冬ともなれば、寒さも増し、物の影も長くなる。畑の畝に自分の影が映るのを見つつ、精魂込めて畝を造る。実のある力強い句だ。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★猫呼びに出れば全き冬銀河/柳原美知子
わが家の猫はいったいいつまで遊んでいるのか。呼びにでて見れば、冬銀河が全き形に横たわっている。猫を呼びに出たお陰で、すばらしい銀河に出会えた。猫との関係も微笑ましいが、「全き」に銀河の煌めきが素晴らしい。(高橋正子)

★風連れて赤城を越ゆる冬の鳥/小口泰與
赤城颪で知られる赤城山。上空はいつも風がふいているのだろう。赤城山を越える冬の鳥は、風を連れて、風に流れるように飛んでゆく。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★冬めくやぽん菓子音の響きくる/祝恵子
冬めくころ、米の収穫が終わったころに、ぽん菓子屋がやって来る。米を持っていけば、ぽん菓子を作ってくれる。米を弾かせる驚くほどの大きな音を聞けば、楽しくも、また懐かしくもなる。(高橋正子)

★ふるさとを遠くに想いむかご飯/桑本栄太郎
都会ではむかごも買うものだが、ふるさとでは、近くでむかごが採れた。素朴な味わいのむかご飯に遠いふるさとが思われるのだ。(高橋正子)

★冬空に流れていくよ鳥の群れ/高橋秀之
冬空に流れていくように鳥の群れが飛んでいく。鳥の群れは上昇気流に吹かれていくのだろうか。壮大な景色だ。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★立冬の長き影伸び畝造る/古田敬二
耕す自分の影も長くなり、立冬を実感しつつ精魂込めて畝造りされる姿が目に浮かび、地に足を着けて季節と共にあるお暮しが伺えます。(柳原美知子)
「立冬」という季節の節目をあきらかに感じながら、これからの新たな土壌に育まれる作物、その収穫の期待をも思われます。 (藤田洋子)

★荷に詰めて蜜柑あかるき色発す/高橋正子
いくつもの蜜柑が重なりながら箱に詰められ、きれいな色に照り輝いている。蜜柑の送り主からのやさしい気持ちも詰まっているようだ。 (高橋句美子)

★草紅葉はやも空には青き星/高橋正子
田の畦や土手の上など靴で踏みにじるのが惜しいほど美しくなる草紅葉。空には冬間近の大気が澄み青い星が数多輝いています。素晴らしい暮の秋の景です。(小口泰與)

★猫呼びに出れば全き冬銀河/柳原美知子
小と大の対比が面白い。「全き冬銀河」が鮮烈な印象です。(河野啓一)

★塩チョイと利かせ夕べはむかご飯/古田敬二
「むかご飯」の句を栄太郎さんも作っておられるが、「むかご飯」には懐かしい思う出がある。横浜に移り住んで、近くの山裾にあった「むかご」を採っきて「むかご飯」を作った。四国の田舎に住んでいた頃には、近くの川土手の藪に生えていた「ハチクの筍(タケノコ)」を好んで食した。(高橋信之)

★風連れて赤城を越ゆる冬の鳥/小口泰與
★ふるさとを遠くに想いむかご飯/桑本栄太郎
★冬めくやぽん菓子音の響きくる/祝恵子

【高橋正子特選/8句】
★晴れてきて山の紅葉の照り出せる/藤田洋子
紅葉してきた樹々、晴れてきたら、ぱっと明るくなり山並みが見えてきました。 (祝恵子)

★わが頭上高くあかるき冬黄葉/高橋信之
冬晴れの黄葉した大樹の下を通ると、心も晴れ晴れとあかるく、透けて見える青空も美しく、新たな季節を軽やかに楽しんでおられる様子が伝わってきます。(柳原美知子)

★猫呼びに出れば全き冬銀河/柳原美知子
ちょっと家を出て猫を呼びに出ると、寒さの中にくっきりと天の川が見えたという。私が住んでいる広島市内では家の近くで天の川を見たことがないので羨ましいかぎりだ。 (満天星)

★風連れて赤城を越ゆる冬の鳥/小口泰與
★ふるさとを遠くに想いむかご飯/桑本栄太郎
★冬空に流れていくよ鳥の群れ/高橋秀之
★立冬の長き影伸び畝造る/古田敬二
★冬めくやぽん菓子音の響きくる/祝恵子

【入選/10句】
★澄み渡る冬空を飛ぶヘリコプター/多田有花
下五に置いた「ヘリコプター」がいい。中七の「冬空」が季題なのだが、下五の「ヘリコプター」を主題と見てもよい。(高橋信之)

★農業祭菊の展示を見て飽かず/祝恵子
「農業祭」であれば、「菊」も身近で優しい花となる。下五の「見て飽かず」に作者の姿がありありと浮かび、リアルだ。(高橋信之)

★すすり食ぶ故郷みやげの熟柿かな/桑本栄太郎
「すすり食ぶ」がリアルで、「故郷みやげ」に甘さがないのがいい。(高橋信之)

★ゴンドラの伸びる先へと山紅葉/藤田洋子
日毎に寒さが募り、山の紅葉が美しくなり始めました。ロープウェーに乗って紅葉狩りを行えば、山紅葉が迫ってくるように綺麗です。ゴンドラという動きのある美しい景色が広がって良い。(桑本栄太郎)

★冬林檎煮込んで甘い香台所/高橋句美子
日常生活を素直に詠んだ句だ。その素直なところがいい。(高橋信之)

★たんぽぽのすつくと立ちし帰り花/廣田洋一
中七の「すつくと立ちし」がいい。「帰り花」を詠んで見事な句だ。(高橋信之)

★菊日和狭庭の香り慎しく/河野啓一
天気のよい秋晴れ庭に咲く菊でしょうか。慎ましく香りを感じる穏やかなひとときが感じられます。 (高橋秀之)

★小道行き紅葉少しずつ色変わる/高橋句美子
小道を進むにつれて、紅葉の色が少しずつ変わると感じていく。実際に変わっているのか、見慣れて変わっていると感じるのか、いずれにしても作者の感じる秋がそこにあります。 (高橋秀之)

★母恋し青空を飛ぶ百合鴎/谷口博望 (満天星)
今年もまた北方から飛来する百合鴎。冬の澄んだ青空に映える、白い百合の花のような清楚な姿に、ふと「母恋し」作者の心情がしみじみと伝わります。 (藤田洋子)
今年もまた北方から飛来する百合鴎。冬の澄んだ青空に映える、白い百合の花のような清楚な姿に、ふと「母恋し」作者の心情がしみじみと伝わります。(高橋秀之)

★一面に落葉の積もる雨あがり/高橋秀之
雨あがり、地に一面に広がる落葉の光景。雨あとの清々しさに、様々な落葉が明るく鮮やかに目に浮かびます。 (藤田洋子)
雨あがり、地に一面に広がる落葉の光景。雨あとの清々しさに、様々な落葉が明るく鮮やかに目に浮かびます。(高橋秀之)

■選者詠/高橋信之
★わが頭上高くあかるき冬黄葉
冬晴れの黄葉した大樹の下を通ると、心も晴れ晴れとあかるく、透けて見える青空も美しく、新たな季節を軽やかに楽しんでおられる様子が伝わってきます。(柳原美知子)

★冬椿白に開放感があり
★赤き実の多し万両その他も

■選者詠/高橋正子
★冬の蝶花屋の花にはばからず
蝶がやってくれば、花屋の花もいきいきと自然に帰る。下五の「はばからず」がいい。(高橋信之)

★荷に詰めて蜜柑あかるき色発す
親しき人に送るのであろうか。「あかるき色」とした言葉の表現が的確であり、かつ斬新だ。(高橋信之)

★草紅葉はやも空には青き星
田の畦や土手の上など靴で踏みにじるのが惜しいほど美しくなる草紅葉。空には冬間近の大気が澄み青い星が数多輝いています。素晴らしい暮の秋の景です。(小口泰與)

■互選高点句/同点2句
●最高点(6点)
★立冬の長き影伸び畝造る/古田敬二
農作業を詠んだ佳句だ。「畝造る」行為が俳句となった。農作業を詩に取り上げるのは難しい。(高橋信之)

★冬めくやぽん菓子音の響きくる/祝恵子
冬めくころ、米の収穫が終わったころに、ぽん菓子屋がやって来る。米を持っていけば、ぽん菓子を作ってくれる。米を弾かせる驚くほどの大きな音を聞けば、楽しくも、また懐かしくもなる。(高橋正子)

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)