11月21日~11月30日

11月23日(3名)
多田 有花
小雪の夕焼け淡きグラデーション★★★
冬紅葉映せる池の輝ける★★★★
働けることに感謝を勤労感謝の日★★★

小口泰與
オルガンの音のゆかしき冬夕べ★★★★
冴ゆる夜の下駄の響きや蔵の街★★★★
消防士達も加わる雪丸げ★★★

廣田洋一
由比ヶ浜沖燦として小六月★★★★
マニ車くるくる回し冬安居★★★★
日の光透き通りたる冬紅葉★★★

11月22日(4名)
多田 有花
そこだけに光を浴びて冬黄葉★★★
短日が皇帝ダリアを咲かせおり★★★
今朝晴れて真冬の服を出しにけり★★★★

廣田洋一
風なくも真冬のコート出しにけり★★★
小春日やお礼参りの三世代★★★
帰り咲く躑躅あでやか紅さして★★★

小口泰與
爺婆ややおら囲炉裏に火を入れて★★★
冬の灯や書物積み上げ星の空★★★
冬月の歪み出でたる山の端★★★

桑本栄太郎
あおぞらをヘリの機影や小春日に★★★
さくさくと落葉踏み行くさくさくと★★★★
葱を買い背負いゆく翁自転車に★★★

11月21日(3名)
多田 有花
冬浅く庭先に咲くゼラニウム★★★
茶の花の大きな蕊を抱き咲けり★★★★
初冬の光のなかに鵙静か★★★

土橋みよ
初霜の朝や狸の庭に来し★★★★
帰り来て沸かす我が家のみかん風呂★★★★
手に掬う湯に目を瞑るみかん風呂★★★
「手に掬う」と「目を瞑る」の二つの動作があります。ひとつにするか、一つにまとめると、句に統一感が生まれます。(髙橋正子)

桑本栄太郎
奈良の地にひらがな歌碑や八一の忌★★★
綿虫の頻りに舞いぬ日差しかな★★★
廃校の校門ざくらや冬もみじ★★★

11月11日~11月20日

11月20日(4名)
多田 有花
白壁の塀の上より実南天★★★
昇りくる朝日が照らす冬紅葉★★★
鴨浮かべ光の波のゆるやかに★★★★

廣田洋一
銀杏落葉今盛りなる並木道★★★
小春日や庭の手入れに余念なし★★★
ぽつぽつと白き躑躅の返り花★★★

小口泰與
日の落ちる速さや鴨は水中へ★★★
子等も来て暖炉の前の紅茶かな★★★★
凍星や闇路の果てのひと明かり★★★★

桑本栄太郎
坂道を下る垣根やお茶の花★★★
ぎんなんも添えて銀杏の落葉かな★★★
冬うらら日当たりながら爪を切る★★★

11月19日(6名)
多田 有花
小春日や庭木手入れの鋏音★★★
冬の柿つるりと光返しおり★★★
前山にいま盛りなり冬紅葉★★★

小口泰與
山の辺の冬鳴く鳥の僅かにて★★★
表札もやや古びたり空っ風★★★
上州や落葉うながす山の風★★★

桑本栄太郎
勇忌の落葉敷く高瀬川★★★
しぐるるや太陽鈍く雲の間に★★★
黄落やバスの過ぎれば舞い上がる★★★

廣田洋一
冬天に咲き残りたる鶏頭花★★★
山茶花の艶やかに咲くひとところ★★★
赤き実と見えし蕾や寒椿★★★

土橋みよ
 東北自動車道3句
落葉跳ね魚影の如く眩しけり★★★

弧を描き紅葉の山に分け行けり
「弧を描き」は、弧を描いている山道を車で分け行ったのだと想像できますが、
分かりにくいです。(髙橋正子)

寒昴街薄くして富士の峰
「寒昴」と「富士の峰」の二つが同じ強さで詠まれています。(髙橋正子)

上島祥子
冬薔薇の巻緩やかに解く朝★★★
冬晴れに飛行機雲のとける朝★★★
一反の苅田となって香豊か(原句)
一反の苅田となって豊かな香(か)(正子添削)
リズムを整えると、落ち着いた句になるので、添削した。(髙橋正子)

11月18日(5名)
多田 有花
鶺鴒の冬青空を背に立ちぬ★★★
冬紅葉薄き日差しを浴びており★★★
冬浅き菜園に柚子黄色なり★★★

小口泰與
冬翡翠の背に朝日射す山の沼★★★
釣人の駄弁になりし冬の宿★★★
花八手少年野球溌溂と★★★

廣田洋一
水底に木の葉光れる小春川★★★
帰り咲く薬局前の躑躅かな★★★
山茶花や笑顔で人を出迎えり★★★

桑本栄太郎
木枯や風の色づき葉の散りぬ★★★
日の射せど風の強きや冬紅葉★★★
あでやかに階(きざわし)埋め落葉かな★★★

土橋みよ
青りんご碓氷峠を越えて来し★★★
初冬や膳に長野の半生蕎麦★★★
落葉風旅荷の隅の力餅★★★★

11月17日(4名)
土橋みよ
朝日浴び白粉薄き吊るし柿(原句)
朝日浴び薄き粉ふく吊し柿(正子添削)
季語としての表記は「吊し柿」が一般的です。(髙橋正子)

風の音悴む手で編む大根束(原句)
風音や悴む手で編む大根束(正子添削①)
風音に悴む手で編む大根束(正子添削②)

冬晴れの富士の見ゆるや50号線★★★

桑本栄太郎
三婆のベンチに座り日向ぼこ★★★
小春日の母の匂いや幼き日★★★
さくさくと音軽ろやかに落葉道★★★

廣田洋一
ぬかづきて神の名唱え神の留守★★★
隣近所声かけ合いて落葉掃き★★★
雪脚の少し伸びたり富士の山★★★

多田 有花
一葉を残し桜の散り果てる★★★
玄関に人を迎える冬紅葉★★★
吊るし柿揺れることなき小六月★★★

11月16日(5名)
多田 有花
きんもくせい残り香のある冬はじめ★★★
冬浅し郵便局で柿もらう★★★
ビデンスや小春日和に咲いており★★★

高橋 秀之
昼下がり園児が落ち葉掃き集め★★★
客船に差し込む陽ざし冬の海★★★
展望台遠くに見ゆる冬の富士★★★

廣田洋一
由比ヶ浜富士を仰ぎて小六月★★★
人影の見えざる街に冬の月★★★
口開けて鯉浮き来たる冬の池★★★

小口泰與
安けくて炬燵の熟寝(うまい)仏の間 ★★★
山祇へ参拝せしやスキー場★★★
鶴啼きて大和島根の空に舞う★★★

桑本栄太郎
讃美歌の声の小窓に冬の朝★★★★
落葉掃く人のあとより落葉かな★★★
あおぞらに冬の紅葉の楓かな★★★

11月15日(5名)
友田修
朝日差す今は明るき枯野かな(原句)
朝日差す今ぞ明るき枯野かな(正子添削)

日差し受け透けて交わる紅葉かな(原句)
日差し受け透けて交わる紅葉の枝(え)(正子添削)

柔らかき日差しもらいて散る紅葉★★★★

多田 有花
ひつじ穂をつけて並べる十一月★★★
冬紅葉煙らせ雨の降りしきる★★★
じょうびたきの鳴き声響く浅き冬★★★★

小口泰與
透き通る空の蒼さや冬の朝★★★
裾長き赤城の嶺や雪催★★★
空っ風風の呼び名の大八洲★★★

桑本栄太郎
綿虫の浮かぶ日差しや風のなく★★★
橡の葉のガサと踏み行く落葉かな(原句)
元の句は、日本語の文法にあわせると、意味が通じません。(髙橋正子)
橡の葉の落葉をガサと踏み行けり(正子添削)

沈み込むような蒼空冬日さす★★★

廣田洋一
切干や一人の酒の進みおり★★★
小春日や半袖着たる異国人★★★
デフリンピック競技始まる小春かな★★★

11月14日(3名)
桑本栄太郎
さくさくと又もくもくと落葉踏む★★★
学校の始業チャイムや小春日に★★★
上枝(ほつえ)より冬の紅葉の楓かな★★★

小口泰與
冬なれど利根の流れのふとぶとし★★★
貰いたる蜜柑に里の日の温み★★★★
赤城嶺の忠治の声の空つ風★★★

多田 有花
陽を受けているばかりなり冬紅葉★★★★
冬の散歩盗人萩を連れ帰る★★★
柿いまだたっぷり初冬の枝にあり★★★

11月13日(5名)

多田 有花
冬の薔薇ポケットパークの一画に★★★
南天の赤さ深まる頃となる★★★
「頃となる」にはやさしい抒情的なひびきがあります。もう少し句をふかくするには、「頃となる」に工夫がいるでしょう。(髙橋正子)
南天の赤さ深まる時が来ぬ(正子添削例)

小春日の畑にぽつぽつ人の影★★★

廣田洋一
真夜覚めて窓越しに見る冬の星(原句)
「見る」を工夫するといいと思います。(髙橋正子)
真夜覚めて窓越しにある冬の星(正子添削)

冬耕の終わるを待ちて群れ雀★★★
風除けの樹の囲みたる大農家★★★

桑本栄太郎
あご髭の堅くとがりぬ冬の朝★★★
時雨れ降る窓の明かりの庭木かな(原句)
「窓の明かりの庭木」がわかりにくいです。(髙橋正子)
時雨降る窓の明かりに庭木かな(正子添削)

冬ざれやテレビ付け食う妻の留守★★★

土橋みよ
 茨城空港3句
降り立てば牛糞の匂い秋の風★★★★
秋夕焼温室群の光りだす★★★
行く秋や乗客の列に機影差し★★★

小口泰與
忽然と地震(ない)の起こるや冬の夜★★★
冬紅葉散るを促す風の中★★★
競走馬の肉は硬しや雪催い★★★★

11月12日(2名)
小口泰與
里の冬もろもろの影躍動す★★★
寒雀もんどり打って樋の中★★★
百とせの利根の流れや寒の声★★★

桑本栄太郎
川べりの色づき来たる草もみじ★★★
穂すすきやパンパグラスと云う白に★★★
金柑の色づき来たる垣根かな★★★

11月11日(1名)
桑本栄太郎
梢より裸となりぬ銀杏黄葉★★★
遠山の日差し明かりや冬紅葉★★★
橡の葉の枯葉踏みゆく散歩かな(原句)
橡の葉の枯葉踏みゆく朝(あした)かな(正子添削)
「踏みゆく」があるので、「散歩」は省くのがいいと思います。(髙橋正子)

今日の秀句/11月1日~11月10日

11月10日(1句)
にわか雨冬の日差しの潤える/川名ますみ
冬の日差しが届いているところへ、にわか雨が降った。雨はすぐあがったが、日差しが潤った感じがしている。繊細な光の感受がが詩を生んだと言えよう。(髙橋正子)

11月9日(1句)
きらきらと光り放ちて銀杏落葉/廣田洋一
「落葉」と言えば、多くは、光を失っている。ところが、銀杏黄葉は落葉となって地面にあっても、きらきらと光りを放って、生き生きしている。「落葉がきらきらと光りを放つ」の静かな観察がいい。(髙橋正子)

11月8日(1句)
★きらきらと光を透かし芒の穂/多田有花
芒の穂が、まだ呆けていない、開いたばかりの状態のようだ。穂のすき間に光がある。それを「透かす」と見た。きらきらと光る芒の穂の美しさ。丁寧な観察がいい。(髙橋正子)

11月7日(1句)
★晩秋の光を浮かべ池の面/多田有花
池の面を見つめていると、しずかな湖面はさざ波が日の光にきらめいている。秋の深まりとともに池の水も秋色を深めてくる。晩秋のさびさびとした湖面の光の静かさが、だたそれだけが、良いのである。(髙橋正子)

11月6日(1句)
★水色の空に日差しや冬隣る/桑本栄太郎
水色というやさしい色の空に、これもやさしい日差しがあふれている。それでも、空気は冷たくなってきて、冬がすぐなのだ。(髙橋正子)

11月5日(1句)
木犀の豊かに香る忌日の夜/上島祥子
この句は17歳の猫の葬儀と前書きがあるが、忌日というのは、まして、しずかな夜となれば、さみしさが増してくる。さみしさを包むような木犀の豊かな匂いに少し、気持ちが和むというものだろうか。(髙橋正子)

11月4日(1句)
★朴落葉空にぽっかり穴を開け/廣田洋一
大きな葉をしている朴は、葉を落とし始めると、そこに「ぽっかり穴」が開いたように空が見える。「ぽっかり穴」が、子どもが驚いたような感じで捉え、面白い。(髙橋正子)

11月3日(1句)
★鶏頭の赤のきわまる今朝の冷え/桑本栄太郎
もともと赤い鶏頭だが、その赤さが、澄んで、極まるのは朝の急な冷え込み。秋の深まりが感覚的に伝わる。(髙橋正子)

11月2日(1句)
★秋鴨の声あたらしや朝の沼/小口泰與
元の句は、「秋鴨の声みずみずし朝の沼/小口泰與」でした。「みずみずし」は、美しい言葉ですが、鴨の声に使うには飛躍がありすぎます。「あたらしや」にしました。
秋に飛来した鴨が朝の沼に鳴いている。飛来したばかりの鴨に、秋の朝に出会うことは感動的なこと。それを「あたらしや」で表現した。(髙橋正子)

11月1日(1句)
★溝川のこぼこぼ流れ秋深し/桑本栄太郎
身近な溝川の流れに耳を澄まし、その音に秋の深まりを感じた。俳句を作る姿勢に作為がなく、自然体であるのが句を深めている。(髙橋正子)

11月1日~11月10日

11月10日(4名)
小口泰與
あたかもや奇岩の妙樹山紅葉落つ★★★
悠然と奇岩の山の青鷹(もろがえり)★★★
上州のだんべい言葉空っ風★★★

廣田洋一
風除の針金光る田舎道★★★
風除を見る楽しみや能登の旅★★★
冬の星探せばありぬビルの上★★★★

桑本栄太郎
白き実をゆさゆさ揺らし冬の風★★★
錦秋となりし在所の庭木かな★★★
カラカラと走る落葉や風の朝★★★

川名ますみ
にわか雨冬の日差しの潤える★★★★
冬の日に優しいリズムの俄雨★★★
にわか雨あがり冬日の尚ひかる★★★

11月9日(4名)
多田 有花
一本の紅葉高し砥峰高原★★★
青空を背に揺れておりすすきの穂★★★
傾く陽芒の原を照らしおり★★★★
欲を言えば、「照らしおり」を具体的に。(髙橋正子)

桑本栄太郎
雨降れど更に色づく冬紅葉★★★
「雨降れど」が、気になります。(髙橋正子)
鳥鴉鳴かぬ朝や冬ざるる★★★
雨雲の峰被い居り冬の雨★★★

廣田洋一
小春日やゲートボールの声高し★★★
切干の日に反り返る軒の下★★★
きらきらと光り放ちて銀杏落葉★★★★

小口泰與
利根川原秋の夕日を背に纏い★★★
霜月の風の物言い赤城山(あかぎ)から★★★
大利根の百千の鮎の落ちにけり★★★

11月8日(5名)
川名ますみ
シチューからスパイス香る今朝の冬★★★
冬夕焼鍋からあげる月桂樹★★★
冬浅しスパイスを振るミルクシチュー★★★

廣田洋一
立冬の神木光る八幡宮★★★
鴨番群より離れて遊びおり★★★
散歩にて気分転換道小春★★★

桑本栄太郎
窓を開け黄葉明かりの目覚めかな★★★
あおぞらの高き梢や銀杏黄葉★★★
想い出をたどる故郷や夕紅葉★★★

多田 有花
きらきらと光を透かし芒の穂★★★★
赤き実を愛でつつ晩秋のランチ★★★
すすきの波彼方は兵庫の山の波★★★

小口泰與
犬の眼に日の燃え尽きる秋の暮★★★

黙の巌止まりし蜻蛉音も無し(原句)
三段切れになっています。(髙橋正子)
黙の巌止まりし蜻蛉に音も無し(正子添削)

利根川の河原に残る芒かな★★★

11月7日(3名)
多田 有花
芒の穂風に従い波となり★★★
晩秋の光を浮かべ池の面★★★★
芒原ところどころに梅鉢草★★★

桑本栄太郎
又一羽着水したり渡り鳥★★★
見上げれば桜紅葉のトンネルに★★★
歩み行く我が影長き今朝の冬★★★★

廣田洋一
立冬や澄み渡りたる空の色★★★
金色の光放てる銀杏黄葉★★★
紅葉せる木の葉浮かべて源氏池★★★

11月6日(2名)
廣田洋一
切干大根ちりちり縮む軒の下★★★
朴落葉子への土産に拾いけり★★★★
冬耕や鴉が後を追いかける★★★

桑本栄太郎
朝の窓開けて明かりの黄葉かな★★★
水色の空に日差しや冬隣る★★★★
いづこより匂い来たるや金木犀★★★

11月5日(4名)
上島祥子
十三夜小雨を払う光かな★★★
回覧板届ける門の夜寒かな★★★★
(17歳の猫の葬式を終えて)
木犀の豊かに香る忌日の夜★★★★

廣田洋一
園児らの駆けまわる声小春かな★★★
酢醬油の切干が好き赤提灯(原句)
酢醤油の切干好み赤提灯(正子添削例)
「好き」を「好み」にかえ俳句的な余白を生むようにしました。どちらがお好きかです。(髙橋正子)
模造品の生垣並べ風除に★★★

桑本栄太郎
黄葉の窓の明かりの朝かな★★★★
生り年と云えど我が家の柿ならず★★★
ながめつつ推敲したり庭紅葉★★★

小口泰與
寄り添いて二羽の雀や秋の夕★★★★
目覚めれば秋翡翠の鋭声かな★★★
眼路の先秋翡翠の羽の色★★★

11月4日(3名)
小口泰與
見つめいる秋翡翠の羽の色★★★
水底に魚影走る暮の秋★★★
忽然と浮かぶ俳句や秋うらら★★★

廣田洋一
板塀の傾ぎたる家朱欒熟る★★★
剣先を揃えたるごと葱畑(原句)
葉の剣を揃えあおあお葱畑(正子添削)
朴落葉空にぽっかり穴を開け★★★★

桑本栄太郎
あおぞらの錦秋なりぬ在所かな★★★
校門のさくら紅葉の枝垂れ居り★★★
枝先に小花ありたる萩は実に★★★

11月3日(4名)
小口泰與
大利根へ瀬瀬の入り込む下り鮎★★★
やれはすや爺婆遠出諦めし★★★
青空へ秋夕焼の雲の色★★★

桑本栄太郎
青き実のままに転がる木の実かな★★★
鶏頭の赤のきわまる今朝の冷え★★★★
朝日差す銀杏黄葉やバス通り★★★

廣田洋一
文化の日小豆飯を炊きにけり★★★
焼芋の香りこうばし駅の前★★★
切干や日毎縮まる軒の下★★★

11月2日(4名)
小口泰與
秋鴨の澄みし鋭声や飛び立ちし★★★
秋鴨の声みずみずし朝の沼(原句)
秋鴨の声あたらしや朝の沼(正子添削)
鴨の声を「みずみずし」とするには、すこし飛躍がありすぎるように思いますので、添削しました。

みどり子の桃のほっぺへ日の当たり
「桃のほっぺ」の「桃」は比喩なので、これをを季語とするには、無理があります。(髙橋正子)

桑本栄太郎
秋澄むやテニスボールの音弾む★★★★
日を透くやさくら紅葉の儚さよ★★★
幼子の我を見つめる秋うらら★★★

廣田洋一
休耕地占拠背高泡立草★★★
色付きて鈴なりの柿ここかしこ★★★
初鴨や番で来たり街の川★★★

多田 有花
ワイパーの動き確かめ秋の雨★★★
雨上がり帚木紅葉鮮やかに★★★
南天の色づき初めて冬近し★★★

11月1日(4名)
小口泰與
肌寒や丸寝の我を起こしける(原句)
肌寒や丸寝の我の起こされし(正子添削)
「肌寒」を感じたのは、自分(我)なので、「起こし」の主語(自分以外の人)とねじれています。
添削は、主語を自分(我)に統一しました。(髙橋正子)

水際より逃げ去る魚や石たたき(原句)
「石たたき」と「水際より逃げ去る魚」の関係がわかりませんので、添削しました。(髙橋正子)
石たたき水際の魚を散らしけり(正子添削)
 
みすずかる信濃の湖の夕月夜★★★

桑本栄太郎
谷あいの彫の深さや山彩る★★★
溝川のこぼこぼ流れ秋深し★★★★
白壁の土塀崩れり秋の里★★★

廣田洋一
大枯野匂い立ちたる日の光★★★★
湿原に舞い下り来たる鶴の群★★★
落穂拾い去りたる後に群れ雀★★★

土橋みよ
仰ぎ見て雲間に垂れる青橙★★★★
蕾持ち寺を見下ろす白椿★★★
冬座敷源氏講話聴く古典の日★★★

自由な投句箱/10月21日~10月31日

投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)

※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/10月21日~10月31日

10月31日(1句)
★牧草の丈の長きや馬肥ゆる/小口泰與
牧草がすくすく育ち、丈が長くなり、放牧の馬や牛の餌としてたっぷりである。「馬肥ゆる」季節の牧草に目を留めた丁寧な作品。(髙橋正子)

10月30日(2句)
★上りくれば柚子豊年の大中寺/土橋みよ
大中寺についてよく知らないので、調べたところによると、栃木市にある上杉謙信ゆかりの古刹。七不思議と言われる話が伝わるなど、静寂な中にも幻想的な雰囲気があるという。そのお寺に柚子が「豊年」と思うほど、たわわに実を付け境内を明るくしている。明るい柚子に驚いた様子。(髙橋正子)

★街の川眺めておれば色鳥来/廣田洋一
日々暮らす街の川を眺めていると、いろんな鳥が来ている。思わぬ楽しい発見である。周囲の木の葉が色づき、それから枯れてゆくなか、色鳥の到来は生活を楽しくしてくれる。(髙橋正子)

10月29日(1句)
★柚子の実の日毎色濃く通り道/廣田洋一
いつもの通り道に、柚子の木がある。通りすがら見あげる柚子の実は、日毎に色が濃くなっている。日々熟れ色が濃くなり、秋の深まりが実感できる。(髙橋正子)

10月28日(1句)
★天高し二羽の黄蝶の縺れあう/川名ますみ
天高く澄む空へ、黄蝶が二つ、縺れあいながら上っていく。空の青と、蝶の黄色の対比も美しいが、広く大きな空と、小さな命の黄蝶の対比も印象深い。蝶の数えかたは、「頭」を使うが、俳句では、「頭」は感覚的に使いにくい。必ずしも「頭」を使う必要はない。(髙橋正子)

10月27日(2句)
★こんこんと木を打つ鳥や秋の朝/小口泰與
「こんこん」の音が、山の静けさ、秋の朝の澄んだ空気を象徴的にあらわして、「木を打つ」も丁寧な人のような仕草を彷彿させている。「啄木鳥」とう言葉を使わず、対象に迫ったのは素晴らしい。(髙橋正子)

★山一つ越えて広がる秋の空/上島祥子
山に遮られて向こうがよく見えない。それでも山の向こうを想像して見ることがある。それでも山を一つ越えたところに広がる、晴れやかな秋の空の素晴らしさに、感嘆する。(髙橋正子)

10月26日(1句)
★秋澄むや煙草のかおり香ばしく/桑本栄太郎
最近は、健康上煙草を吸わない人が多くなったが、煙草を嗜む人は、煙草の成分もあるが、つまりは煙を吸い、香りを吸っている。秋澄む空気のなかで、旨そうな香りをさせる煙草が美意識として注目される。(髙橋正子)

10月25日(1句)
★霜降の朝のからりと晴れわたり/多田有花
霜降は晩秋の季語。空気が澄み、霜が降りるほどの冷え込みの朝に、「からりと晴れわたり」という表現が、冷たさではなく清々しさを強調している。言ってみれば、潔い捉え方だ。(髙橋正子)

10月24日(1句)
★穭田のひつじ穂みのる大原野/桑本栄太郎
大原野の穭田のひつじにも穂がでて、しかも稔っている。時間が圧縮されて、いよいよ秋も終わりの感が強まる大原野である。(髙橋正子)

10月23日(2句)
★夕日差し鈴なりの柚子の棘光る/土橋みよ
鈴なりの柚子に夕日が差すことで、棘までもくっきり見えるようになる。柚子の実も棘も明らかになって知る、秋の深さ。(髙橋正子)

★孫来るとメールありけり花野径/小口泰與
花野径を歩いている、メールの着信があり、孫が来るからと言う。花野径は、電波がよく届きそうである。見えないものの交感がある場所と思える。(髙橋正子)

10月22日(1句)
★雨音の細きや秋の祭の灯/小口泰與
元の句は、「雨の音細きや秋の祭にて」。
「雨の音細きや」に続く「秋の祭にて」は、やや場面の説明にとどまっているので、「秋の祭の灯」とすることで、秋霖の中に灯る祭の灯りとした。秋の祭りの奥ゆかしい情感が、しっとりと伝わってくる。(髙橋正子)

10月21日(1句)
★学校の始業のチャイムや秋澄めり/上島祥子
学校の始業を知らせるチャイムは、しずまった朝の音として、遠くまで聞こえる。始業という朝の緊張感と、秋の澄んだ空気感が、よく響き合っている。(髙橋正子)

10月21日~10月31日

10月31日(句)
作業中
小口泰與

まなかいにかかるものなき秋の夢★★★
朝露を踏みて野鳥の眼間に(原句)
朝露を踏みて野鳥を眼間に(正子添削)

牧草の丈の長きや馬肥ゆる★★★★

廣田洋一
道端の勝手気ままな白粉花★★★
見る度に熟れ行く柿や鳥の声★★★
青空や桜紅葉の並木道★★★

桑本栄太郎
橡の実の誰が採るやら既に無し★★★
雨雲の集い今にも十月尽★★★
想い出を辿る故郷や夕紅葉★★★

10月30日(4名)
土橋みよ
上りくれば柚子豊年の大中寺★★★★
日記見て背布団下す旧節句★★★
荒れ庭やオナモミの実の膝に着き★★★

桑本栄太郎
気温差の日向と日蔭秋の昼★★★
鵯の金切り声や木から木へ★★★
吊るし柿軒端に映える団地かな★★★

廣田洋一
街の川眺めておれば色鳥来★★★★
みはるかす釧路湿原草紅葉★★★
秋晴や草食む牛の放たれし★★★

小口泰與
あけぼのや霧のまつわる山の沼★★★
暮れまどう秋翡翠や沼の端★★★
まどろみて秋のあの日を夢に見し★★★

10月29日(2名)
小口泰與
手をかざし秋の妙義山の巨石かな★★★  
草原に続く馬棚あり秋の空★★★
大利根の流れまどやか秋翡翠★★★

廣田洋一
つやつやと色良き柿を買いにけり★★★
秋の果の入れ代わりたる売場かな★★★
柚子の実の日毎色濃く通り道★★★★

10月28日(5名)
小口泰與
紅葉かつ散りて帽子を賑やかに★★★
秋翡翠まことしやかに魚を捕る★★★
山風に立ち向かいたる初紅葉★★★

廣田洋一
炉端焼き友と酌み合う夜寒かな★★★
新築の家に灯りや暮の秋★★★★
行く秋の余白無くなる俳句手帳★★★

桑本栄太郎
陽を透いてアメリカ楓の紅葉かな★★★
あおぞらの彼方や秋の雨雲に★★★
こんもりと桜並木やうす紅葉★★★

川名ますみ
薫るほど車窓に満ちる金木犀★★★
天高し二羽の黄蝶の縺れあう★★★★
空もとめ秋の黄蝶の縺れつつ★★★

土橋みよ
宵の灯やおろし生姜の香の立ちぬ★★★
秋空に雀さざめく園遊会★★★★
広やかに国歌流るる秋の苑★★★★

10月27日(3名)
上島祥子

曙の空賑わせて小鳥来る
山一つ越えて広がる秋の空
夕暮れの色付く雲は月に添い

桑本栄太郎
水滴のきらめく野路や秋の朝
胡乱なる人の歩きや秋寒し
ぷちぷちと足裏(あうら)に音の木の実かな

小口泰與
こんこんと木を打つ鳥や秋の朝
啄木鳥や庭の古木を打ちにける
夕闇の犬の遠吠え秋の風

10月26日(4名)
目陰して花野見渡す老夫婦★★★
古酒提げてまかり来たりし老教師★★★
十月や暮れる間際の空の色★★★

多田 有花
風少し紅葉かつ散る桜かな★★★
玄関の小菊鉢植え日差し受け★★★
午後からは雨となるべし秋深し★★★

桑本栄太郎
秋澄むや煙草のかおり香ばしく★★★★
秋雨やフィリリフィリリと道すがら★★★
ひざ痛を覚える朝や秋しぐれ★★★

川名ますみ
お土産に両手に余る酔芙蓉★★★
賜りし芙蓉を両のてのひらに★★★
酔芙蓉花三輪を皿に載す★★★

10月25日(3名)
桑本栄太郎
見上げれば天の蒼さや銀杏黄葉★★★
他所(よそ)の庭覗き見したる杜鵑草★★★
どの家も斎藤姓や柿の村★★★

小口泰與
大利根の波の微笑む秋の雲★★★
若き日の焔も消えて暮の秋★★★
ほろほろと銀杏散りけり沼の端★★★

多田 有花
霜降の朝のからりと晴れわたり★★★★
古き家いずこの庭も柿たわわ★★★
モノクロの刑事映画を見る秋夜★★★

10月24日(2名)
小口泰與
沼よりのほのお立ちけり渡り鳥
「沼よりのほのお」の意味がよくわかりません。(髙橋正子)

霧多き谷間に鳴ける鳥の声(原句)
霧深き谷間に鳴ける鳥の声(正子添削)

秋の田や古びし寺の焔にて
「寺の焔にて」の「にて」に意味がよくわかりません。(髙橋正子)

桑本栄太郎
雲つどい降るや降らずや秋寒し★★★
穭田のひつじ穂みのる大原野★★★★
馬の背となりて日差しや秋の雨★★★

10月23日(4名)
土橋みよ
風に匂う届かぬ先の熟れ林檎★★補遺s
西日差し鈴なりの柚子の棘光る(原句)
「西日」は夏の季語となっています。「夕日」に変えるとよいと思います。
夕日差し鈴なりの柚子の棘光る(正子添削)
蛍光灯替えれば厨の柚子かおる★★★★

廣田洋一
我知らず急ぎ足なる夜寒かな★★★
もう一本熱燗つける夜寒かな★★★
街灯の灯りを揺らし柳散る★★★★

小口泰與
風も無き沼に水輪や蜻蛉舞う★★★
大利根の流れ気ままや下り鮎★★★
孫来るとメールありけり花野径★★★★

多田 有花
扇風機ようやく仕舞うそぞろ寒★★★
秋茄子と柿とゴーヤをいただきぬ★★★
貴船菊親鸞像の傍らに★★★★

10月22日(2名)
多田 有花
ゆっくりと秋を歩める亀二匹★★★
なつかしき人と再会秋深し★★★
コスモスは風に親しき花なりき★★★

小口泰與
大ふくべ酒一升満たしたる★★★
雨の音細きや秋の祭にて(原句)
雨音の細きや秋の祭の灯(正子添削)

しんしんと冷えこむ沼や秋翡翠★★★

10月21日(3名)

小口泰與
片雲の秋風に乗り消えにけり★★★
山の秀へ朝日差しけり運動会★★★
山風や秀つ枝下枝に青蜜柑★★★

桑本栄太郎
秋薔薇の真紅咲きたる狭庭かな★★★
川べりに沿いて明るき泡立草★★★
青柚子と云えどこぼれる塀の外★★★

上島祥子
学校の始業のチャイムや秋澄めり★★★★
積み上がる母の着物や秋の暮★★★
秋麗入れての声は元気よく★★★

自由な投句箱/10月11日~10月20日

※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

自由な投句箱/10月1日~10月10日

※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/10月1日~10月10日

10月10日(1句)
★蒼天の高き梢や銀杏黄葉/桑本栄太郎
空の青と銀杏の黄色が対比され、秋の空気の澄んだ感じがよく伝わる。「高き梢」が天の高さ、深さを想起させてくれる。(髙橋正子)

10月9日(1句)
★青空の鳩吹く風やちぎれ雲/桑本栄太郎
「鳩吹く」は、狩の合図のために鳩の鳴く声を手で作る事を言うが、ここでは、それに似た青空が吹き起こす風の意味。その風が雲を千切れさせている。「鳩吹く」の情趣を活かした句。(髙橋正子)

10月8日(1句)
★秋夕焼富士を映せしビルの窓/川名ますみ

都市のビルの窓に、夕焼けと一緒に富士山が映るのは、奇跡的と思える。澄んだ秋夕焼けの美しい景色が詠まれている。(髙橋正子)

10月7日(3句)
友の来て利平栗剥けば日の暮れる/土橋みよ
栗を剥きながらの友との語らいに、一日が暮れてしまった。季節の稔に触れながらの楽しい語らいに秋の日の楽しさが読み取れる。(髙橋正子)

★何処までも天の高きをバスの窓/桑本栄太郎(正子添削)
何処までも天の高きやバスの窓(原句)
原句は、「バスの窓」が取って付けられていますが、俳句は一章です。バスの限られた窓から見る天が、「何処までも高い」。限られた中にこそ見つけた天の高さに、実感がある。(髙橋正子)

★道はさみ稔り田刈田隣り合い/廣田洋一
道をはさんで、まだ刈られていない黄金色の稔田と、稲が刈られてしまった刈田とが並んでいる。それが同時にあることで、稔りの季節の時間の層が、それぞれ違って重なっているのが面白い。(髙橋正子)

10月6日(1句)
★朝焼けの刈田へ猫の出で行けり/柳原美知子
「朝焼け」の現象は夏うつくしく現れるので、夏の季語となっている。この句では「朝焼け」を季語として詠んでいるのではなく、刈田の実景としての扱いである。季語は「刈田」。朝焼けの空の下にひろがる刈田。その刈田へ猫が出て行った。猫の一瞬の出発で、その後の朝焼けの刈田の実景が想像できる。(髙橋正子)

10月5日(1句)
★特急の加速に流るる曼珠沙華/上島祥子
特急の加速によって、視界に入る曼殊沙華が目を掠めるように流れ去る。時間の速さに抗えない曼殊沙華のあやうさは、生きているものすべてに言えることである。(髙橋正子)

10月4日(1句)
★仲秋の夜空へ花火大輪を/多田有花
元の句は、「仲秋の夜空へ大輪の花火」でした。見た通りですが、
読み手の感動が伝わってこないのが難点。仲秋と言えば、空気が澄んでくるとき。夏の花火と違って、色も澄み、鮮やかさが増す。それも大輪の花火を咲かせる。印象の強い花火となった。(髙橋正子) 

10月3日(1句)
★秋空に里遠く見せ琴平山/土橋みよ
琴平山から見た眺めがすっきり詠まれている。秋空が広がる下に、遠く人里が見える。なつかしいような広がりに、心が晴れやかになってくる。(髙橋正子)

10月2日(1句)
★川縁や刈田の匂い立ちにけり/廣田洋一
川のほとりの流れの音が聞こえる空間の広がりに、稲を刈った田んぼから立ちのぼる、土と稲のまじった匂いが秋の深まりを感じさせている。 その気づきを「立ちにけり」とほのかに詠嘆している。(髙橋正子)

10月1日(1句)
★曼殊沙華日を跳ね返す赤さかな/小口泰與
曼殊沙華は、花に近寄って見ると、花弁はつややかで、力強く、「日を跳ね返す」という表現そのままだ。曼殊沙華の持つ生命力や異界性を一瞬で切り取っているところがすばらしい。(髙橋正子)