2月24日(木)

★梅の花遠くに白き昼の月   正子

○今日の俳句
池をめぐる樹々それぞれの木の芽張る/矢野文彦
早春の池の水の色と芽木の枝の張りに早春の淡さ、また、緊張感や芽ぐむものの希望が感じられる。(高橋正子)

○修善寺梅林と河津桜(2月22日~2月23日)

野に飛べる春鶺鴒や修善寺へ
修善寺の街のこぞって雛飾る
蕎麦に摺る山葵のみどり春浅し
春浅し川に突き出す足湯なり
紅梅がかすみ白梅がかすみ
梅林の丘をのぼりて伊豆連山
鮎を焼く炉火に手を寄せ暖をとり
梢より富士の雪嶺に風光る
わさび田の田毎に春水こぼれ落つ
天城越ゆ春の夕日の杉間より
山々の春は名ばかり天城越ゆ

梅と桜を一度に見る旅に句美子が連れて行くというので、誘いにのる。桜は河津桜。宿は、西伊豆の今井浜東急リゾートという。梅林は、熱海か修善寺かと聞くので、修善寺がよさそうだと二人旅に出かけた。新横浜から新幹線こだまに乗り、三島近くに残雪の富士を大きく見て、三島で下車。三島から伊豆箱根鉄道で修善寺にかう。修善寺までは、先頭車両の最前席で、揺れながらも、まっすぐな線路を見ながらの旅。後ろを振返ると、いつも富士山がある。

修善寺駅に到着してから、修善寺梅林へすぐ向かう。修善寺駅から東海バスの「もみじ林行」に乗る。この終点となっているもみじ林に梅林がある。梅見に行く老婦人たちが乗っているが、途中、梅林ではないところで、なんども降りようとする。運転手は、観光案内も兼ねて、そのたび、ここは違う、終点で降りると案内する。立てば、よろけないように注意する。もみじ林で下車。入り口の蕎麦屋と、四十八ヶ所の札所の小さい菩薩の石碑を一つを過ぎて山道を梅林へ。三ヘクタールあるという梅林。歩くと落葉樹が葉を落として、日がよく降り注いでいる。もみじ林の名の由来がわかる。若楓のころは、美しいことだろうと思いながら歩く。ほどなく、右手に西梅林の入り口がある。数歩入れば、漂う梅の花の香り。ここの梅の木はどれも古木。幹はウメノキゴケが覆っている。百年の古木もある。樹のかたちも写真家が喜びそうな形が多くある。梅林の中の竹林は竹の秋。紅白の梅の花の後ろの竹の秋は色がつやつやとしている。梅林は丘となったりしている。丘に登れば、何か見えそうだ。登って見る。伊豆の高い山々が見える。

丘を降りて谷を下ると東梅林へ。こちらは、修善寺温泉へ通じる道らしい。文人の句碑もある。石の鳥居を潜ってさらに下り、温泉への分かれ道のところから、また登る。すると、戸外に太い薪を組んで、大きな炉をつくり、鮎を串刺しにして焼いている。一匹が六百円。一本ずつ食べる。腸までがおいしく食べれる。寒いので炉のほとりに近寄りたいが、火の粉が散って服に穴が開くのでいけないという。食べ終われば、ポリタンクのお湯で手が洗える。鮎を食べて、また梅林を。今度は、雪どけのあと、ますます葉の色が青くなった水仙の小道がある。ここを辿り、もとの西梅林へ。だれか少し上から不意に現れ驚くが、写真を撮っていたらしい。気づくと富士山の山頂が見えている。ちょうどその人がいた場所が富士見には一番良いところだ。写真はもっぱら句美子が撮っているが、富士を収めて来た道をバス停まで下る。バスが来るまで二十分ほど。山すそにパンジーや菜の花の花壇があって、三椏の花が咲いている。咲いているものは、黄色い花簪のようで、かわいらしi。

来たバスに乗り、修善寺温泉まで。みゆき橋で下車。それから温泉街へ入る。句美子が目当とする蕎麦屋が見つからず、店に寄りながら歩く。修善寺に来たからには、修善寺に参らねば。御手洗は、温泉のお湯。賽銭をあげ、本堂を見る。きれいな本堂で、天井には花の絵がある。消えそうな絵もあって、つつましい。弘法大師の立像が庭にある。ちょうど年に二回のお寺の庭の公開期間中にあたっていた。旅館のおかみが持ち寄った雛人形が飾ってある。吊るし雛も部屋ごとに飾られている。吊るし雛はなにか強すぎる縮緬の色に情念あるようで、敬遠して、廊下から庭を見る。こじんまりとした鶴や亀、龍に見立てたもの石や滝を配している。滝の落ちるあたりに菖蒲らしき芽が見える。花が咲くときれいでしょう、と言うと、「いいえ、この庭は花を咲かせません。さつきでも花芽を摘んでしまいます。庭の形が崩れますから。」ということであった。住職の部屋からが正面となっている。写真で外から見るよりは、よい寺であった。

寺を出て温泉街を歩く。からからと落葉が舞う。源氏にまつわる建物、墓がある。温泉街も終わりかというところに、目当ての屋台の蕎麦屋があった。よしずで囲った蕎麦屋である。二人ほど待って中に入る。寒いので暖かい蕎麦にしたいところだが、生わさびを摺ってくれるので、わさび食べたさにざるを頼む。ちょうど私たちの前で蕎麦が無くなたのでこれから捏ねるという。ずいぶんお腹をすかせてきたのに、捏ねて、切って、ゆでるとは。塗りの捏ね鉢にそば粉を入れて数分押しながら捏ね、それを秤ではかり筒へ入れ、ゆで釜の上の機械に入れた。すると、するすると蕎麦が出てきて、それをすぱっと包丁で切って、釜の湯へ落とす。わさびを客に摺らせたり、店自慢をしている間に出来上がる。地のりをかけてくれて出された。蕎麦つゆに柚子のかけらを入れてくれた。椿山荘の蕎麦と同じくらいおいしいといっておいた。一律500円。

屋台を出て、竹林へ。桂川が流れ、渡月橋がある。京都をまねているようだ。橋を渡り、独鈷(とっこ)の湯へ。弘法大師が独鈷を突き刺してお湯が出たところで、川に突き出していて、今は足湯処。川を眺めながら足湯につかる。四十五度以上はありそうなお湯。長く、ずっと浸かっていた。独鈷の湯を出て、温泉街へ。温泉饅頭は売り切れ。大杉で有名な日枝神社前の店で、「えびぽん」という桜海老のはいったぽんせんべい買う。伊豆には、千年の大木が多いらしい。その土産をもって、修善寺駅へ戻り、河津行きのバスに乗る。天城峠を越えて、1時間半ほどのバスの旅である。

バスは、若い句友の智久さんの住む湯ヶ島を通り、浄蓮の滝などを通り天城峠を越えて行く。天城峠近くに山葵田を見た。あまりに急峻なところにある小さな田に驚く。沢に作られたようで、水が零れ落ちている。天城峠を越えるころは、私たち二人以外に一人お客がいるだけになった。ループ橋という、奈落に底に落ちそうな橋をぐるぐると下っていって、河津七滝(かわづななだる)などを通り、川沿いに続く河津桜を見ながら河津駅に到着。四時半ごろだったろう。それから、海はどちらか方向を確かめ、少々街中を歩き、海沿いの遊歩道を伝って、今井浜のホテルへ。風が荒く、どおっと寄せて、白い飛沫散らす波が恐ろしい。山側は、河津桜がよく咲いて、椿も咲いている。これだけの風があっても暖かいのだろう。二十分ほど歩いてホテルに着く。送迎バスでなく、遊歩道を歩いたのは正しかった。
(続く)

◇生活する花たち「伊豆修善寺梅林」

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