今日の秀句/2月11日~2月20日

2月20日(1句)
★陽が差せば騒めき見ゆる銀杏の芽/桑本栄太郎
陰っている時はよく見えなかった銀杏の芽。陽が差すと、陽に輝いたり、陰ったままだったり、にぎやかに騒めいているように見える。「陽が差すと騒めき」の観察がいい。(髙橋正子)
2月19日(2句)
★春雪や運ばれてゆく競走馬/多田有花
運ばれてゆく競争馬が春の雪に降られ、美しい。美しいながらも運ばれてゆくさびしさがあって、深く印象に残る。(髙橋正子)
★梅花を通う人みな麗しき/弓削和人
「梅花」は少し落ち着かない表現に思える。「白梅」にしてはどうかと思うが、一考をお願いしたい。梅の花が咲いているところを通る人はみんな麗しく思えるというのだ。特に咲き初めの梅の花の清らかさが人を麗しくさせている。(髙橋正子)
2月18日(1句)
★奥山の姿を隠し春の雪/多田有花
奥山の姿は、しきりに降る春の雪でかくれてしまった。それほどまでに降る春の雪に、奥行きのある雪景色を見ることとなった。さらりとした詠みぶりが上手。(髙橋正子)
2月17日(1句)
★寄せ太鼓高くひびきて風光る/廣田洋一
寄せ太鼓が高くひびくのを聞くと、面白い事があるのだろうと、気を引かれる。ましてや日光が強くなり、吹く風もきらきらと光ると浮足立ちそうにもなる。「風光る」の季語がよく効いている。(髙橋正子)

2月16日(1句)
★新幹線星の過ぎゆく余寒かな/弓削和人
新幹線の車窓から夜空を見ていると星が次々に過ぎてゆく。車内は暖房されているだろうが、星がゆく空は冬とは違いつややかにも思えるが、「余寒」を感じてしまう。冬と春の間合いを捉えた繊細な感覚。(髙橋正子)
2月15日(2句)
★朝海にわずかな春や照る山辺/弓削和人
朝の海にわずかに春が来ている。山辺が照っていることを見ても春だとわかる。春の兆しがほんのわずかに感じられたときの心の明るさがいい。(髙橋正子)
★雪解水流れ早める街の中/廣田洋一
雪解水を集めてきた川は街中に入ると流れが速まる。「流れ速める街の中」という着眼点は俳句が得意とするところで、面白い。(髙橋正子)
2月14日(1句)
★藪つばきつやつやと葉を従えて/多田有花
つやつやとした葉に赤い藪つばきの花がくっきりと見える句。花をそれほど言っていないのに、花の印象が強い。(髙橋正子)
2月13日(1句)
★山風を身に孕ませて蓬摘む/小口泰與
赤城颪の山風か。「身に孕ませて」は、あまりに風が吹くので着ている衣類が体にぴたっと纏いつき、その身に風を孕ませたと解釈できる。(髙橋正子)
2月12日(1句)
★春ぐもりペンキ塗りたての香る/多田有花
「ペンキ塗りたて」が名詞のように使われている。つまり、「ペンキ塗りたて」という物や事態がある。うすく光がもれるような曇りかたが春ぐもり。そんな日はペンキがよく匂う。(髙橋正子)
2月11日(1句)
★春雪や雁字搦めの裏の門/小口泰與
春の雪が思わぬ時降って、裏の門はとくに人の出入りがないので、「雁字搦め」になっている。それを面白く捉えた。(髙橋正子)

コメント

  1. 小口泰與
    2023年2月14日 19:21

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    2月11日投句「春雪」の句を今日の秀句にお取り上げ頂き、その上、正子先生には素晴らしい句評を頂き有難う御座います。大変嬉しいです。今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。

  2. 小口泰與
    2023年2月14日 19:24

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    2月13日の投句「蓬摘む」の句を今日の秀句にお取り上げ頂き、その上、正子先生には嬉しい句評を頂き有難う御座います。今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。

  3. 多田有花
    2023年2月16日 16:48

    お礼
    信之先生、正子先生
    「春ぐもりペンキ塗りたての香る」を2月12日の
    「藪つばきつやつやと葉を従えて」を2月14日の
    それぞれ秀句にお選びいただきありがとうございます。

    階段の手すりのペンキが塗りなおされ、「ペンキ塗りたて」との表示がありました。
    久しぶりに嗅いだペンキの香りでした。

    近所の山に行くとヤブツバキがあちこちで咲いています。
    照葉樹林を代表する花であり、春の初めから桜が終わるころまで次々と咲きます。

  4. 廣田洋一
    2023年2月20日 12:47

    御礼
    高橋信之先生
      正子先生
    いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
    2月15日の「雪解水流れ早める街の中」及び2が17日の「寄せ太鼓高くひびきて風光る」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難うございます。今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  5. 多田有花
    2023年2月20日 16:07

    お礼
    信之先生、正子先生
    「奥山の姿を隠し春の雪」を2月18日の
    「春雪や運ばれてゆく競走馬」を2月19日の
    それぞれ秀句にお選びいただきありがとうございます。

    一月末の寒波ではこのあたりも積雪がありました。
    先日の寒波では、瀬戸内海側はちらほら雪が舞った程度でした。
    それでも北の兵庫県中部の山の方角を見ると、降る雪の向こうに姿を隠していました。

    近所に姫路競馬場があります。
    信号待ちをしていると、前を競走馬の運搬車が通り抜けて行きました。
    生き物が運ばれているというのは、やはり無生物の荷物とは印象が異なるものですね。

  6. 桑本栄太郎
    2023年2月23日 18:05

    Unknown
    高橋信之先生、正子先生
    2月20日の今日の秀句に「日が差せば騒めき見ゆる銀杏の芽」の句をお選び頂き、嬉しい過分なる御句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
    天候の変化の激しいこの頃ですが、この時は良く晴れ暖かくて青空が
    見えて居りました。近くの幼稚園脇のあの目立つ銀杏の芽が、騒めくように見えました。