6月11日-13日

6月13日

●小口泰與
郭公や水面にぎわす雲と風★★★★
郭公の声があたりに響き、とりどりの形や色の雲が映り、風が起こす漣で水面はにぎやか。そんな静かで明るい景色が素晴らしい。(高橋正子)

白樺とみつばつつじや雨後の池★★★
山つつじ囲む白樺林かな★★★

●祝恵子
茹でながら摘みきし紫蘇を刻みおり★★★
初なりの胡瓜まずは吾手のひら★★★★
挨拶をすれば持たされ花菖蒲★★★

●桑本栄太郎
帰り来て木蔭の風に涼みけり★★★
吹き抜ける風のささやく木下闇★★★
暮れなずむ闇に明るき沙羅の花★★★★

●多田有花
夕立の雲に夕日の当たりけり★★★
梅雨満月雲より出でて光増す★★★★
山々のくっきり青し梅雨晴間★★★

●佃 康水
朝の陽へ白光放つ沙羅の花★★★
舟待たせ鶴亀島の草を刈る★★★★
花田牛角にたっぷり清め塩★★★

●河野啓一
木下闇ゆれ動くものありヒヨの巣か★★★
緑陰に鳥の巣ありて子が二匹★★★★
同病の友に会いたり梅雨晴間★★★

●小西 宏
この叢(むら)に遊びし昨夜(よべ)の蛍かな★★★
夕方の濃き太陽の翠蔭★★★
家壁に夕日の淡し梅雨晴間★★★★

●川名ますみ
高架走り植田に映る空と雲★★★★
高架となっている道路を走っていると植田に出会う。植田には空と雲が映り、晴々とした眺め。高架より一望できる植田の眺めは、遠く見渡せまた格別。(高橋正子)

迷わずに常磐木落葉壕へ散る★★★
夏落葉さらさらさらり壕へ散る★★★

6月12日

●小口泰與
衣ぬぐ浅間や佐久の青田波★★★
万緑や八千穂高原つくも折★★★
谷蟇や浅間は夕日近づけず★★★★

●多田有花
夏の風本のページをすべて繰る★★★★
開いておいた本に一陣の涼風が吹き、ページをぱらぱらとめくった。数ページでなく、すべてのページを繰る風の遊び心が面白い。涼しい句だ。(高橋正子)

はや雲の影に失せたり梅雨の月★★★
夏の蝶無数に乱舞森の道★★★

●桑本栄太郎
のうぜんの花や垣根に今年又★★★
沙羅の花部活帰りの女子高生★★★★
艶めいて深き眠りや合歓の花★★★

●小西 宏
雨止んで頂き照れる椎の花★★★★
雨があがると椎の花の咲く頂が明るく照っている。ことに頂に日があたって、柔らかな椎の花を見せている。「照る」がいい。(高橋正子)

夜の風に車の音す網戸より★★★
谷戸深き己が光や額の花★★★

●川名ますみ
風薫る丘より木々の揺れはじめ★★★
額の花中学校の開校日★★★
鉄線の雨をふくみし濃紫★★★★

6月11日

●小口泰與
雷鳴や小犬扉に爪をたて★★★
十薬や眠りの覚めし浅間山★★★
代掻きや利根本流の滔々と★★★★

●河野啓一
夏潮を一またぎして淡路島★★★
夏草を分けて釣舟こぎ出でぬ★★★★
鮎の宿四万十川の沈下橋★★★

●迫田和代
植田まだ青くて深い空映す★★★★
田植を終えて一か月ほどは、水田に苗の整然とした影と空が映る。美しい水田の景色だが、すぐにも青田となって、水が見えなくなってくる。「まだ」に植田の美しさを惜しみ、青田の緑を待つ心情が読み取れる。(高橋正子)

梅雨晴れに水の溜りに子ら集う★★★
山陰に沿う道のあり菫咲く★★★

●桑本栄太郎
梅雨闇やみどりときめくバス通り★★★★
梅雨闇のほの暗さに、バス通りの街路樹が生き生きと明るい緑を見せている。その思いがけぬ明るさに「みどりときめく」気持ちとなった。梅雨の曇りがちな気持ちが一度に明るくなる緑だ。(高橋正子)

夏蝶のためらい渡る車道かな★★★
朽ち来れば坂を散りばめ山法師★★★

●祝恵子
茄子・トマト地場産売りに群がりぬ★★★★
イベントに集まる市民猛暑なり★★★
ボート待つ救命具付け子の体験★★★

●小西 宏
声もなく烏飛びゆく梅雨曇り★★★★
紫陽花の遠きより照る崖の陰★★★
雨の輪に睡蓮の黄の光りあり★★★

●黒谷光子
紀の国は木の国車窓に緑さす★★★
海の辺の街は湯の街風涼し★★★★
集い来て受講す涼しき大広間★★★

●高橋秀之
夏木立を横目に走る高架線★★★
雲間から差す陽に蒼き夏の海★★★★
夏の日の下に遠くの山がある★★★


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