晴れ
●四季の森公園へ行く。おにぎり二つ、卵焼きと少々のお菜を詰めた弁当と冷たいお茶の水筒、それに句集『星辰』を持って12時を回って出かけた。2時ごろにお昼にすればいいかという予定。花を期待したわけではなく、今日は行くべきと思った。日差しは強いが、からっとしていて、並木の日陰があるので助かる。入口の森ではガビチョウが全山を響かせて啼くせいか、烏も恐れをなして、おとなしく木に潜んでいる。
入ってすぐの蓮池は泥色ながら水は澄んで亀があちこちに浮いている。例の翡翠のいるところに今日もカメラマンがいる。棒杭に黒い鳥が止まっているので、翡翠だろうと思うが聞いてみた。翡翠の雛だという。羽が黒いのは雛は大体黒いが、光が強いと羽が黒くなり、いつもきれいな羽ではないという。めずらしく今日は親子で来ているとのこと。それに番が二組いる。親鳥四羽一緒にいるところをこれまで見たことがない。誰もそうらしい。
小さい橋を渡り、林縁の道に沿うと、山百合に支柱が立てられている。奥へ行くと、一目見て明るい世界が目の前に開けた。花菖蒲が咲き始めている。思っても見なかった。今日来るべきと思ったのは正しかった。花菖蒲園の続きの藤棚の下でお昼にした。おにぎりは一個でよかった。それで十分だったのだ。まだ歩くから身は軽い方がいい。
お昼のあと持ってきた句集『星辰』を読み、今日はこれが仕事なので、好きな句に付箋を貼った。句が内省的になればなるほど、著者は孤独になっている。この十年間は厳しかったのだろうと思った。藤棚の下に座って読んでいるとこの天気なのに山の冷気のせいか体が冷えきた。それでも最後の新年まで付箋をつけた。この中からさらに選ばないといけない。
句集を読んだあと公園をぶらぶら回った。睡蓮が野生化したように、葉がびっしり育ち、その隙間にピンクの花が開き始めているのがなんとかわかる。沼は青葦が風に鳴っているが、まだ丈が伸びそう。そう、入口のところの草苺も熟れていた。四季の森の池沿いの畑は、今年は菜の花ではなく、矢車菊が植えられている。矢車菊は花を残して枯れはじめ、斜めに倒れている。どの畑もピンクとブルーの二色。
矢車菊の青い色が好きで、いつも熟れ麦の景色と一緒に思いだす。私には矢車菊は麦秋の花なのだ。矢車菊の青い色は帝国のブルー(Reichsblau)とか、矢車菊の青(Kornblumenblau)、言ってみれば「麦秋の青」なのだ。矢車菊(Kornblume)はドイツの国花なのだ。もともと麦畑の雑草として咲いてたのが改良されてきたとのこと。どおりで、昭和の昔、麦刈のころ、わが家に矢車菊が咲いていた。おそらく父が植えたものだろう。父と麦秋と矢車菊は合わせて思い出す。
コメント