10月9日(月)

★朝はまだ木犀の香のつめたかり  正子
いよいよ秋の深まってくるころ、木犀は花を開く。先ず気づくのはその香りかもしれない。いつの間にか冷たさの感じられるようになった朝の空気に、清らかに漂ってくる。白く小粒な花の姿が更なる秋を伝えてくれる。(小西 宏 )

○今日の俳句
西空の大きや秋の夕映えて/小西 宏
秋空を染める夕焼けの大きさ、美しさに人は言い知れず感動する。それが「西空の大きや」の率直な感嘆となっているのがよい。(高橋正子)

○野牡丹

[野牡丹/横浜日吉本町]

★紫紺とは野牡丹の色ささやきに/松田ひろむ
★野牡丹を夢見顔して捧げきし/澁谷道
★野牡丹の美(うまし)風湧くひとところ 一葉
★野牡丹の濃ひ紫に惹かれおり 文子

 松山市に女流画家のグループがあって、野牡丹を好んで描いていた。それで、展覧会などでよく目にしたが、女流画家が好むような花である。通りすがりの家庭の庭にも植えてあった。大方は、そこの主婦の好みであろう。横浜に引っ越してからは、鎌倉の円覚寺の野牡丹が記憶に新しい。野牡丹を見ていたら、参禅の僧の一団が行きすぎた。なんだか、不思議な光景だった。

 円覚寺二句
★禅寺に紫紺野牡丹咲きて立つ/高橋正子
★参禅へ僧ら野牡丹過りたる/〃
★野牡丹を画布に留めて女流画家/〃

 ノボタン科 (Melastomataceae) は、双子葉植物に属し、約180属4400種の大きい科であるが、ほとんどが熱帯・亜熱帯にのみ分布する。ブラジル地方原産。 日本ではノボタン(野牡丹)などの4属7種が南西諸島や小笠原諸島に(ヒメノボタンは紀伊半島まで)分布する。中南米原産のシコンノボタン(紫紺野牡丹)は紫色の大輪の花が美しいのでよく栽培される。おもな属にノボタン属 Melastoma・シコンノボタン属 ibouchina・ヒメノボタン属 Bertolonia・ミヤマハシカンボク属 Blastus・ハシカンボク属 Bredia・ メキシコノボタン属 Heterocentron・オオバノボタン属 Miconia・ヒメノボタン属 Osbeckiaがある。
 草本または木本、つる性のものもある。葉は対生。花は子房下位で放射相称、萼片と花弁は普通4または5枚、雄蕊はその2倍ある。果実はさく果または液果。夏から11月頃まで長いあいだ開花。紫色がきれいな花。牡丹のように美しいのでこの名になった。牡丹には似ていない。 紫のものをよく見かけるが、紫の他、赤、白がある。ふつうの「野牡丹は、まんなかのしべの一部が黄色いが、よく栽培される紫紺野牡丹(しこんのぼたん)は、しべは全て紫色である。11月16日の誕生花は紫紺野牡丹で、その花言葉は「平静」。

◇生活する花たち「藻の花・萩・藪蘭」(鎌倉・宝戒寺)

■10月月例ネット句会/入賞発表■


■2017年10月月例ネット句会■
■入賞発表/2017年10月9日

【金賞】
★いのこづち籾殻着けて猫帰る/柳原美知子
飼っている猫が、いのこづち、籾殻をつけて帰ってきた。草むらを踏んだり、田圃で転がったり、一日楽しく遊んだのだろう。猫の楽しい野の一日は作者の楽しさにもなっている。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★月昇り母の背眠る法被の子/藤田洋子
月が昇り、祭りの賑わいの疲れか、法被の子はすやすやと母の背に眠っている。夢見るような母子像だ。(高橋正子)

★輝ける銀杏黄葉の樹下に入る/谷口博望(満天星)
銀杏黄葉の金色の輝きが作る樹下。その輝きに入ると、神々しいような日常とは違う世界だ。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★酔芙蓉二階から鳴るジャズピアノ/古田敬二
酔芙蓉の古風さと色香。二階から聞こえるジャズピアノ。ロマンスグレーの住人か、その息子が弾いているのか、と思ったりする。(高橋正子)

★秋空のなかで建設作業中/多田有花
高層の建物が建てられる昨今は、建設作業は空の中ということが多い。秋晴れの空のなかで、建設作業が見事に進む。これも人間の技。(高橋正子)

★ホームから残業帰りの十三夜/高橋秀之
残業帰り、駅のホームから十三夜の月が見えた。十三夜のまだ満ちぬみずみずしい月にほっとするひととき。よい時間。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★輝ける銀杏黄葉の樹下に入る/谷口博望(満天星)
早くも黄金色に色付く嬉しい秋の彩り。鮮やかに輝く黄葉の樹下に入り、自然との一体感の中、明るく華やいだ気持ちを抱かせてくれます。 (藤田洋子)

★いのこづち籾殻着けて猫帰る/柳原美知子
家猫のあちこちと動き回っている姿が浮かび、楽しい句ですね。 (祝恵子)

★名月がやがて出る空仰ぎけり/多田有花
晴天の十五夜となり、空は紺色を深め、いよいよ雲の中から名月が光を放ってきそうだ。名月を心待ちにする臨場感が表れています。(柳原美知子)

★オランダの孫にメールを十三夜/河野啓一
遠くオランダに住むお孫さんにも十三夜の月は見えるのか、メールでの楽しいやりとりと充実したお暮しぶりが伺えます。(柳原美知子)

★特攻も飛びし空なり赤とんぼ/タイチ
戦争の体験から、特攻と赤とんぼが繋がったと思う。特攻の悲しみ、赤とんぼの郷愁。平和の空があるからこその俳句。(高橋正子)

★秋空のなかで建設作業中/多田有花
★月上り母の背眠る法被の子/藤田洋子
★コスモスに雲がゆたかに寄り集う/高橋正子

【高橋正子特選/8句】
★ホームから残業帰りの十三夜/高橋秀之
残業で疲れて帰りの電車を待つ間、プラットホームから仰ぐ澄み切った十三夜の月に心もなごみ、ほっと一息つくことができたことでしょう。(柳原美知子)

★酔芙蓉二階から鳴るジャズピアノ/古田敬二
夕方の光景と思われますが、美しい秋のたそがれ時に二階よりジャズピアノが聞こえ、通りがかりに聞いている作者自身も酔芙蓉の花も、酔い痴れているようである。 (桑本栄太郎)

★独り居て夜気爽やかに今日終える/高橋信之
過ごしやすいころになりました。何かをやりおえて一日を終え、それをひとり振り返る夜のひとときです。充実した日々を感じる爽やかな句です。(多田有花)

★雲きれて名月すっきり山の端に/多田有花
雲で見えないと思っていたら、切れ間に山の端にすっきりとした月が見えました。何もない時と違いそのひとこまの光景に感動が伺えます。 (高橋秀之)

★秋空のなかで建設作業中/多田有花
★輝ける銀杏黄葉の樹下に入る/谷口博望(満天星)
★月昇り母の背眠る法被の子/藤田洋子
★いのこづち籾殻着けて猫帰る/柳原美知子

【入選/15句】
★木道の野末や尾瀬の秋の雲/小口泰與
尾瀬の湿原に設置されている木道を通り抜けてゆく。すると晴天だろうか、雲がぽっかりと浮かんでいる。たまには、そのような散策に行ってみたいと思う。 (むつ)

★夜明け前ひと雨過ぎて秋祭り/藤田洋子
雨でお祭りが流れるかどうか気を揉んでいたら、夜明け前に一雨通りすぎて楽しみにしていたであろう秋祭りに気を馳せる朝の目覚めを感じます。 (高橋秀之)

★伸ばす手の反りの美しきや風の盆/廣田洋一
富山県八尾町で、9月1日?3日の3日間「越中おわら節」を歌い、踊り明かす踊り手の素敵な手の所作に魅せられている作者。素晴らしい風の盆の景ですね。 (小口泰與)
越中八尾の風の盆。編み笠を深くかぶり、顔を隠して静かな坂の街を踊る。カメラの焦点は女性の踊り手の指に合わせられる。細い白い指がきれいに反る.その情景が浮かぶ句である。 (古田敬二)

★中天に雲伴わず望の月/古田敬二
今年の15夜は、月がでたと思ったら、雲に隠れてしまい、中天に上る頃になって雲から離れて丸い月を観ることができた。それを雲伴わず望の月と表現したのが上手い。 (廣田洋一)

★冬瓜の艶めく色も転がされ/祝恵子
冬瓜のずどんとした形、その形が転がされた面白さ。色も深い緑がいきいきとして艶めいていいる。愛すべき冬瓜である。(高橋正子)

★雲走るままに照らさる月今宵/桑本栄太郎
名月の前をときおり雲が走ります。そこに月光があたり美しく輝きます。月を仰ぎ、雲も月光も楽しんでおられる様子が浮かびます。 (多田有花)

★ビル影の高きにありぬ望の月/桑本栄太郎
ビル影という都会から見える月は、高く見上げる位置にあります。ビル影という響きと望の月に対称を感じました。 (高橋秀之)

★秋晴れやどこかで山羊が鳴いている/柳原美知子
秋晴れのひととき。山羊の声は聞こえるが、どこにいるのか分からない。のどかな秋のひとときです。 (高橋秀之)

★間引菜の土とかがやき抱え来る/柳原美知子
間引菜を手にたずねてくださった方がありました。間引菜そのものもうれしいですし、訪問もうれしい。お互いににこにこ。「かがやき」にそれが見て取れます。 (多田有花)

★通天閣の先に大きく鰯雲/高橋秀之
見上げる通天閣の上に広がる一面の美しい鰯雲、心晴々と広やかな光景です。お暮らしの中で実感された心地よい季節の喜びが伝わります。(藤田洋子)

★握りたる手の暖かき良夜かな/廣田洋一
月の明るい美しい夜をいっそう感じさせてくれる手の温もり。良夜の優しい光に包まれて、ほのぼのとした幸福感が漂います。(藤田洋子)

★流星やメモせぬ俳句消えやすし/小口泰與
メモをしていない俳句は、覚えているつもりでも、消えている。流星のようだと思う。印象深い驚きがあるが、消えてしまえば、何もないように。(高橋正子)

★明け方の枯野の色の散歩道/むつ
散歩道は気づけば枯野の色となっている。いつの間にか、季節が進んで、明け方の冷え込みも増してくる頃だ。(高橋正子)

★秋行くやトランペットの「千の風」/谷口博望(満天星)
「千の風」の歌をトランペットで演奏するとどんな感じか。華やかなはずのトランペットの音色が哀愁を帯びている。(高橋正子)

★秋の夜自販機明るく道しるべ/高橋秀之
暮れるのが早い秋。夜となれば、すっかり暗くて、自動販売機が赤々と灯り、、安心の気持ちが湧く。道しるべなのでだ。(高橋正子)

■選者詠/高橋信之
★独り居て夜気爽やかに今日終える
過ごしやすいころになりました。何かをやりおえて一日を終え、それをひとり振り返る夜のひとときです。充実した日々を感じる爽やかな句です。 (多田有花)

★秋冷の闇の奥から少しの風
★さわやかに朝日射しくるパソコンに

■選者詠/高橋正子
★窓を開け月光少し入らしめぬ/高橋正子
まるで月光がたずねたきた大事なお客様であるかのようです。「いらっしゃいませ」と少し窓を開け、月の光を入れます。名月ならではで、その夜を楽しんでおられます。 (多田有花)

★コスモスに雲がゆたかに寄り集う/高橋正子
青空に色とりどりのコスモスが揺れる中、白雲が次々と湧き、秋の風と光が感じられる美しい情景です。(柳原美知子)

★上りつめ坂の上なる金木犀/高橋正子

■互選高点句
●最高点(5点/同点2句)
★酔芙蓉二階から鳴るジャズピアノ/古田敬二
★独り居て夜気爽やかに今日終える/高橋信之

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)