1月4日(金)


★餅を焼く火の色澄むを損なわず  正子
古来より日本の折々の行事、吉事、ことにお正月にはもっとも縁のある食物のお餅。その清らな餅を「火の色澄むを損なわず」、大切に焼かれる行為に、はれの餅への厳かな思いを感じ取れます。澄む火の色に、ふっくらと美しく焼き上がる餅も目に浮かびます。 (藤田洋子)

○今日の俳句
四日はや高々と干す濯ぎもの/藤田洋子
主婦の若々しい生活俳句。四日になると、正月にたまったものの洗濯に精を出し、日に風に高々と掲げて干す。若々しさと清潔感に好感がもてる。(高橋正子)

○侘助

[侘助/横浜日吉本町]

★侘助の莟の先きに止まる雪/松本たかし
★侘助や波郷破顔の大写真/水原春郎
★侘助や茶釜に湯気の立っており/多田有花

★侘助へ寺の障子の真白かり/高橋正子
★日表も葉影も侘助うす紅/高橋正子

 横浜日吉に移って来る前は、愛媛に住んでいたが、松山郊外の砥部の自宅は百坪を少し超えていたので、いろいろ好のみの庭木や草花を植えていた。特に椿は三十本以上もあっただろうか。冬の初めに初嵐が咲き、それから赤い侘助が咲いて、名の知らないものから、肥後や乙女なども順次咲いた。裏の谷川に添って藪椿が茂り、年末からほちほち花を咲かせた。不意に来客があるときは、この枝を一本もらうこともあった。それなりの恰好がついたのである。

 ワビスケ(侘助)   中国産種に由来すると推測される「太郎冠者(たろうかじゃ)」という品種から派生したもの。「太郎冠者」(およびワビスケの複数の品種)では子房に毛があり、これは中国産種から受け継いだ形質と推測される。一般のツバキに比べて花は小型で、猪口咲きになるものが多い。葯が退化変形して花粉を生ぜず、また結実しにくい。なおヤブツバキの系統にも葯が退化変形して花粉を付けないものがあるが、これらは侘芯(わびしん)ツバキとしてワビスケとは区別される。 花色は紅色~濃桃色~淡桃色(およびそれらにウイルス性の白斑が入ったもの)が主であり、ほかの日本のツバキには見られないやや紫がかった色調を呈するものも多い。少数ながら白花や絞り、紅地に白覆輪の品種(湊晨侘助)などもある。 名前の由来としては諸説あり、豊臣秀吉朝鮮出兵の折、持ち帰ってきた人物の名であるとした説。茶人・千利休の下僕で、この花を育てた人の名とする説。「侘数奇(わびすき)」に由来するという説。茶人・笠原侘助が好んだことに由来する説などがある。

◇生活する花たち「冬椿①・冬椿②・山帰来の紅葉」(横浜・綱島)

●添削1月①●


[1月1日~5日]

▼1/5

古田 敬二
凍て土へ備中振り込み採る野菜★★★
竹杯にお神酒あふれる初もうで★★★
初旅や海の白波寄りやまず★★★

●桑本 栄太郎
脈々と空に枝張り寒に入る★★★
小寒の硬き陽射しの光りけり★★★
小寒の窓に羽ばたくすずめどち★★★

●小西 宏
丘の畑日差しよければお正月★★★
兄が揚げ妹が追う走り凧★★★
凍ての夜の暗き木立に星の濃し★★★

●川名ますみ
窓外の富士を気にして初化粧★★★
乗初の窓すこし開け清らかさ★★★
初笑おかげさまでと医師の前★★★

●河野 啓一
デイ初日年賀はことに念入りに★★★
雪舞いて想うや記紀の八咫鴉★★★
鏡割り堅さに孫を呼びに行く★★★

●多田 有花
新しきことを始める寒の入★★★
小寒の空の青さを仰ぎおり★★★★
境内に五日の焚火燃え続け★★★

●下地 鉄
寒風に飛沫の舞いて淑気かな★★★  
冠雪の富士を枕に初夢かな★★★
浴槽の睡魔に悩む3ヵ日★★★

●小口 泰與
笹鳴きや長き裾野の赤城山★★★★
もう、笹鳴きが聞こえたと思うと嬉しくなる。ゆったりと裾を引く赤城の山に、小さく笹鳴く鶯の声がほほえましく思える。(高橋正子)

朝霜の赤城の空の青きかな★★★
空風や茶の子とり合う子供達★★★

●迫田 和代
水仙を青磁に活ける香と共に★★★★
朝寝して起きてびっくり氷柱かな★★★
曇天の雲の流れの低く低く★★★

▼1/4

●高橋 秀之
家族連れ横目に見つつ初仕事★★★ 
四日の朝寝ぼけ眼の妻の顔★★ 
朝食にご飯の香り四日かな★★★

●河野 啓一
薄雪に励まされゆく車椅子★★★
寒林に舞いきて積もる雪の花★★★
冬野駆け入り日追うかなモノレール★★★

●桑本 栄太郎
破魔矢持つ客の数多や珈琲館★★★
青空の中に十字架初礼拝★★★★
うらがえり乾さる重箱四日かな★★★

●多田 有花
ラーメンをすする四日の昼餉かな★★★
干支の絵馬おさめし正月の鞄★★★
門松の本堂初雪に開く★★★

●佃 康水
風花や狭庭へ子らの弾み出る★★★
親子して座敷に選りし吉書かな★★★
佳き知らせ友より受ける初電話★★★ 

●古田 敬二
児が打てば音色やさしき除夜の鐘★★★★
鐘は撞く人によって音色が変わる。幼い児なら、力も弱くやさしい音色になる。人それぞれが、それぞれの音色で鐘を撞き除夜を行かす。(高橋正子)

子の悩み除けと除夜の鐘を打つ★★★
除夜の鐘突けばシリウス震えおり★★★

●小口 泰與
茶の花や赤城は靄の中におり★★★
渓流の岩を彩る散紅葉★★★
ビル谷間木の葉時雨や雲迅し★★★

▼1/3
★枯原を高さ自由に熱気球/小西 宏
広い枯原の上に熱気球が、さまざまに浮いている。「高さ自由に」はのどかな景色で、夢がある。(高橋正子)

★除夜の鐘一戸一戸へ響きゆく/川名ますみ
街に鳴り響く除夜の鐘であるが、一戸一戸、どの家にも、残らず、除夜を確かに知らせて響いている。「一戸一戸」を思いやる心がよい。(高橋正子)

▼1/1
★元日や神樹に守られ遊ぶ子ら/祝恵子
元旦の境内であろうか。周りを森の樹に囲まれ、守られて、子どもたちが楽しそうに、遊んでいる。注連飾りや御幣のある境内なので、「神樹」を余計意識したのであろう。(高橋正子)