12月29日(月)

 横浜日吉本町金蔵寺
★侘助へ寺の障子の白き張り  正子
お寺参りをされたのでしょう。張り詰めた寒さの部屋に、只一つの侘助が挿されている。障子の白さが花を引き立てているようです。(祝 恵子)

○今日の俳句
庭師らは寺に冬苗運び入れ/祝恵子
何の苗か。正月を迎える葉牡丹などであろうか、あるいは苗木か。庭師が入って寺の庭が年末新たになる。(高橋正子)

○さるとりいばらの実

[さるとりいばらの実/東京白金台・自然教育園]

★炉なごりの小柴にまじる山帰来/石原八束
★やすらひてさるとりの花杖にあぐ/中村若沙
★何の実といふこともなく実を結び/山下由理子
★赤い実に猿近づきて山の秋 芝滋
★色染めて路傍の秋やサンキライ/夢夢ばあさん

★さるとりの実があかあかと平和なる/高橋信之
★さるとりいばら実は幼き日とおなじ/高橋正子

 西日本ではサルトリイバラ(猿捕茨)の若葉で餡餅(あんもち)を包み、端午の節句の柏餅のカシワの代わりに用いられます。関東では一般的な柏の葉だが、柏の葉が手に入り難い関西で、いばらの葉を代用した事が始まりとの事でした。俳人の私には「いばら」と云うと野茨を思いますが、「いばら餅」に使う葉はサルトリイバラ(猿捕茨)の葉だそうです。サルトリイバラ(猿捕茨)を図鑑で引いてみると『西日本では柏餅のカシワの代用とする』とやはり書いてあります。またこの葉をサンキラ葉と言うらしく、「いばら餅」をサンキラ餅とも呼ぶとの事です。サンキラ? 聞きなれない言葉なのでこれも調べてみました。正確にはサンキライと言い、山帰来と書くそうです。 サルトルイバラの別称でした。山帰来の名の由来について 『昔は毒消しの実として使われていた。 山野に多く自生しているため栽培をおこなうことはせず、毒消しの必要がある時に山に入り実を食べて帰ってくるという利用をされていた事から』と環境gooの植物図鑑に載っていました。中部地方も柏の葉が入手し難かったようで、昔は専ら「いばら餅」だったとの記事も散見しました。 三重県も同様ですが、三重県在住の方々のブログには「いばら餅」が三重県独自のお餅のように思っておられる記述が幾つか見られました。確かにネットで「いばら餅・いばら饅頭」を検索してみるとブログや和菓子店のHPは三重県発信のものが殆どでしたから、現今でいまだ一般的に親しまれているのは三重県だけなのかも知れませんね。(「≪‘のぶ`のフォト俳句≫~from伊勢」より)

 サルトリイバラ(猿捕茨、学名 Smilax china)は、サルトリイバラ科(またはユリ科)に分類される多年生植物(半低木)。漢語で菝葜と書く。東アジア(中国、朝鮮半島、日本)に分布する。日本では北海道から九州までの山野や丘陵の林縁などに自生し、日が当たり水はけのよい場所を好む。草丈 70〜350cm ほどで這うように伸び、茎は硬く緑色で棘が所々に生える。葉は互生し、円形または広楕円形で先端が尖り、基部は円く、硬く表面には光沢があり、3〜5 本の葉脈がある。雌雄異株で、4〜5月になると葉腋より散形花序を伸ばし多数の花を付ける。 花は淡黄で、6枚の花被片は先端が反り返る。雄花には雄蘂が 6本、雌花には子房が 3室・柱頭が 3本ある。果実は直径 7mm 程度の球形の液果で、秋に熟すと赤くなる。ルリタテハの幼虫が食草とする。
 根茎は薬用に使われる。四国地方などの関西圏以南では、葉を柏餅を包むのに用いる。園芸用では、庭園の添景木や、赤く熟す果実は生花にも用いられる。繁殖は 3月頃に播種する。サルトリイバラの別称はサンキライ、がめの木、かから、がんだちいばら、からたちいばら、等

 サンキライはサルトリイバラ(学名 Smilax china)の俗称だが、正確には別種(学名 S. glabra) で、本来、サンキライ(山帰来)は日本に自生しない。俳句ではサルトリイバラをサンキライと呼ぶ事が多い。 
 山帰来(サンキライ)は中国に産するユリ科のつる性木本である土伏苓(ドブクリョウ)を指す俗称とされてきたが、これによく似た同じくユリ科のつる性木本であるサルトリイバラの俗称ともなっている。しかし、山帰来の名前の由来に関するさまざまなパターンのストーリーを見かけるが、山帰来の名前の起源がどこにあるのかわからない。

◇生活する花たち「アッサムチヤ・グランサム椿・からたちの実」(東京・小石川植物園)
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12月21日-31日

12月31日(3名)

●古田敬二
土深く根伸ばす冬草引き抜けり★★★
山茶花へ朝陽明るし今日が来る★★★★
山茶花の花へ朝日が射すと、今日が明るく、溌剌とやって来たと思う。山茶花の花の明るさがよい。(高橋正子)

長靴の底から冷える鍬を振る★★★

●小口泰與
行く年や星を小出しに赤城山★★★★
晦日蕎麦犬の遠吠え聞こえける★★★
校庭に雀群れおり年の暮★★★

●高橋秀之
大晦日は妻に連れられ商店街★★★
年越しのそばを食べつつ裏番組★★★
仏前の供花を新たに大晦日★★★★

12月30日(3名)

●小口泰與
注連かざる江戸よりつづく太柱★★★★
代々続く家の太柱に注連が飾られ、風格のある注連飾りとなった。新年のめでたさも一層である。(高橋正子)

冬休み鴨居隠しをこゆる孫★★★
初暦公民館の正面に★★★

●桑本栄太郎
た耕や白き稲株見え隠れ★★★★
ワイパーのとき折り振るるしぐれバス★★★
玄関戸磨き拭き上げ注連飾る★★★

●小西 宏
晩歳の届かぬ汚れそのままに★★★
年の瀬の空あたたかや親子凧★★★★
若き二人アルミのドアの松飾★★★

12月29日(7名)

●小口泰與
鍋割山(なべわり)も榛名山(はるな)も雪を賜りし★★★★
よみがえる空の蒼さやよべの雪★★★
手袋の指じんじんと暁の道★★★

●福田ひろし
冬麗の光纏いて書を開く★★★★
数え日をあえて数えず一人旅★★★
ヒタヒタと老犬歩む冬の夜★★★

●内山富佐子
年の瀬や仏具を磨く母の背★★★★
雪晴れやシャキッと白き雲一つ★★★
手袋は主の指の形かな★★★

●祝 恵子
寒柝や高き子の声まぎれ居り★★★★
凍てつく寒い夜に打ち鳴らされる寒柝の音は、もの寂しさを感じさせる。その拍子木の音に、子どもの高い声で「火の用心」と元気に叫んでいるのがまぎれている。微笑ましく、ほっと心和むのだ。(高橋正子)

聞けばバイト大きくなりて冬休み★★★
大根の青菜生きいきしだれたる★★★

●桑本栄太郎
<四条大橋~建仁寺>
鴨川の風に平らやゆりかもめ★★★
冬椿松にかこまれ建仁寺★★★
せせらぎにさくら冬芽や高瀬川★★★★

●小西 宏
冬日透く雑木の丘に遠い船★★★★
冬の芽にきらめき残し雨あがる★★★
とりたてて残すものなし年の暮★★★

●川名ますみ
 祖母葬儀
冬灯ろうそくの火の直立す★★★★
手をふりて笑うて別れ冬の雨★★★
いろ紙を折る子と隣り年の暮★★★

12月28日(5名)

●小口泰與
あかあかと朝日昇るや畑は霜★★★★
冬の月父の齢を越えにけり★★★
酔うことを知らぬや今宵虎落笛★★★

●多田有花
松積んで軽トラがゆく年の暮★★★★
歳晩の風景としてめでたい。軽トラックに乗るほどの松の枝。常盤の緑がいきいきとして弾んでいるようだ。(高橋正子)

降り積もる落葉踏み分け下りけり★★★
上る道下る道あり年惜しむ★★★

●桑本栄太郎
理髪終え寒風に出す頬と耳★★★
木枯や家路の空の青きこと★★★★
何処より吹かれ積もるや落葉松散る★★★

●小西 宏
固く暗く尖る冬芽の空青し★★★★
野良猫の餌待つ崖に青木の実★★★
ジムの窓に歳末の灯を見て息す★★★

●高橋秀之
山茶花が咲く庭を見て立ち止まる★★★
会館に歳末警戒の提灯並ぶ★★★
ネクタイのごとくマフラーを強く締め★★★★

12月27日(4名)

●小口泰與
貝独楽の揺らぎや夕日あかあかと★★★★
屋根を葺く木槌の音や冬木の芽★★★
生きるとは史記をよすがや虎落笛★★★

●桑本栄太郎
借換えの図書館行きも年用意★★★★
数へ日の分担残る掃除かな★★★
年の瀬や段取り考えひと眠り★★★

●多田有花
クリスマス赤き三日月山の端に★★★
数え日の朝日が山を照らしおり★★★

雪山を間近く仰ぐ頂に★★★★
山に登り頂に立つと、雪山は、頂よりもさらに高く聳え間近に見える。山に登りさらなる雪山が身近に迫り、すばらしい。(高橋正子)

●小西 宏
年の瀬の空青々と窓磨く★★★★
青空に部屋開け放つ煤払い★★★
園庭に子供背丈の冬もみじ★★★

12月26日(4名)

●小口泰與
冬山の襞ひと所へ夕日差す★★★★
凛とした冬山の襞のひと所を浮かびあがらせ、今日の日を終える夕日が力強い。(高橋正子)

水仙のほのと夕影ふくみける★★★
夕影の梢にふくら雀かな★★★

●桑本栄太郎
もくれんの曰くありそな冬芽かな★★★
一言のお詫びも添えて賀状書く★★★
煤逃げや図書館人のあふれ居り★★★★

●小西 宏
オーバーのポケットに手をつなぐ岸辺★★★★
木の葉少し残れる欅大通り★★★
犬抱いて寄せ鍋つつく妻の酔い★★★

●高橋正子
牡蠣洗う水のついには凍ててきし★★★★
牡蠣焼けば火の色赤く目に刺さる★★★
洗わられて地御前牡蠣のミルク色★★★

12月25日(7名)

●小口泰與
露天湯へ枯葉舞い込む刹那かな★★★★
山風の行く手や岸辺枯柳★★★
ゆくりなく時雨や畦の猫車★★★

●迫田和代
山に向き末枯れた野菊道端に★★★★
枯草のそれでも芽吹く力見る★★★
橋近く牡蠣舟いずれか去るらしい★★★

●小川和子
  キャンドルサービス
戦禍にある子等へと祈る降誕祭★★★★
はらからと燭火に讃美する聖夜★★★
聖誕の星空想うクリスマス★★★

●多田有花
母と墓参り万両の実の紅し★★★★
真っ赤な夕陽のクリスマスイブ★★★
リフォームのベスト仕上がるクリスマス★★★

●桑本栄太郎
落葉松の散り積もりたるベンチかな★★★
山茱萸の朱き実空へ冬ざるる★★★
一人づつキャンドル胸に降誕祭★★★★

●河野啓一
菜を刻むその音すらも歳の暮★★★★
冬至を過ぎ、ほんのわずかに日は長くなってきているが、暮れ方はやはり歳晩の感じが強まる。夕餉の仕度の菜を刻む音にも「年の暮」が感じ取れる。(高橋正子)

白菜の巨きを割りて塩で漬け★★★
空暗く遠き山の辺雪模様★★★

●小西 宏
園児らの畑駆けゆくクリスマス★★★
枝に明るき蜜柑をカラス咥え去る★★★
冬の陽に赤く丘の家照り昏れる★★★★

12月24日(7名)

●福田ひろし
掘りたての人参や陽を集めおり★★★★
長期予報裏切る今日の寒さかな★★★
寒波来る川面の鳥の高き声★★★

●古田敬二
さんざめく冬のオリオン家路行く★★★★
しっかりと歩く家路へ冬の大三角形★★★
大股に家路を冬の大三角形★★★

●小口泰與
青空や目路に溢れし雪浅間山(あさま)★★★★
利根の水行く末定か室の花★★★
行きずりの山あいの宿枯尾花★★★

●河野啓一
クリスマスイブとて子ら笑顔★★★
枯落葉集めて妻の思案顔★★★
蔓バラのアーチきらきら冬至の朝★★★★

●桑本栄太郎
極月の忙中閑や遊歩道★★★
立枯れのようなまんさく冬の葉に★★★
枯蘆の穂絮なびくや吾を迎え★★★★

●小西 宏
木の葉閉じ池に氷の大広間★★★
泥靴の深さも楽し霜柱★★★★
葉牡丹を植えて公園完成す★★★

●川名ますみ
今着きしカードも飾るクリスマス★★★★
クリスマスの楽しさは、クリスマスに纏わるいろいろなものを飾る楽しみにもある。クリスマスに合わせて届いたカードも早速飾ると、楽しさがまた加わる。(高橋正子)

りんごジャム炊き純白のヨーグルト★★★
窓際に置いた林檎の朝匂う★★★

12月23日(8名)

●古田敬二
木枯らしにあいつもこいつも先に逝き★★★
木枯らしや友の訃報のメール鳴る★★★★
木枯らしが吹き、寒さが募る日、携帯電話のメール着信音が鳴る。予期せぬ着信音に何か予感を感じてメールを開けたのでは。着信音は、自然の深くから鳴って来たように思われる。(高橋正子)

ミシミシと冬の園舎を象歩く★★★

●小口泰與
冬ばらの開かんとして朝日受く★★★★
冬の湖電飾映す波の上★★★
短冊の文字ととのわず師走かな★★★

●小川和子
括られし白菜畑の畝真直ぐ★★★★
白菜がしっかりと玉を巻いた畝がまっすぐに続く。冬の清潔さを思わせる風景だ。(高橋正子)

下校児らに冬至の日差し実にやさし★★★
母の炊く冬至南瓜よ遠き日よ★★★

●下地鉄
行く歳の水脈引く如く過ぎ去りて★★★
ポインセチア神父の愛に染められて★★★
吹かれれば八つ手の花のこぼれ散り★★★★

●佃 康水
今日冬至根菜入れて南瓜汁★★★
風花や子ら帰る日の近付きて★★★★
曲がりゆく列車の煽る枯尾花★★★

●桑本栄太郎
括られてなお凜と起つ冬の菊★★★★
橡の木の冬芽ぬめりの尖りけり★★★
天皇誕生日大御心の天地に★★★

●小西 宏
枯芝に犬と睦みて胡坐かく★★★
二つ三つ昏々と星冬の街★★★
冬至の夜静かに止まる山手線★★★★

●高橋秀之
富士山と青き冬空だけがある★★★★
冬の夜の寒さはどこへ初ライブ★★★
冬林檎居間からシャリシャリ齧る音★★★

12月22日(6名)

●小口泰與
木の葉雨高層ビルヘ朝日かな★★★
一色の銀杏落葉や子等の顔★★★
ひと筋の枯木の影の移りけり★★★★

●河野啓一
旬日を残すのみかな年用意★★★
鳥声も一陽来復快晴に★★★★
水草の掃除や湖の年の暮れ★★★

●多田有花
トンネルを抜ければ雪の積む町に★★★
おだやかによく晴れ今朝の冬至かな★★★

冬至真昼海の輝きの極む★★★★
一年で一番昼が短い冬至だが、真昼に海を見れば、海は力強く輝いている。太陽はその力を真昼に集中させている。冬至を詠んだ句では珍しい。(高橋正子)

●桑本栄太郎
花八手食器の触れあう厨窓★★★★
八手は、厨の窓の下あたりによく植えられている。厨の窓からは、食器の触れ合う音が聞こえる。食器の音から湧くイメージは白い磁器だが、花八つ手の白い花と静かに響きあっている。(高橋正子)

いつまでも冬至の入日見て居りぬ★★★
掻き分けて湯舟に浸かる柚子湯かな★★★

●小西 宏
学び舎の遠き空なる冬木立★★★★

冬ざれの小楢の山や空の澄む★★★
冬薔薇のハート膨らむ蕾かな★★★

●下地鉄
障子貼る夕陽の映える仏間かな★★★
里山の灯し暮れいく年の暮れ★★★
孫育ち背丈の同じ冬至かな★★★★

12月21日(5名)

●小口泰與
暮れ方の山ふところの霜畳★★★★
冬の虹やおら流るる利根支流★★★
霜畳青菜に朝日差しにける★★★

●福田ひろし
乗り換えの国ざかい駅雪深し★★★★
乗り換えで立ち降りた駅は国ざかい。思わぬ雪の深さに、国を境に、こんなにも雪の降りようが違うものかと感慨も深む。(高橋正子)

山茶花や雅さ漂う京の道★★★
鈍色の近江の冬野北へ行く★★★

●河野啓一
冬帝や柿の実ついに全て落ち★★★
実万両今年も鳥の恵みにて★★★★
餌なくて地面ついばむ冬鴉★★★

●桑本栄太郎
部活子の寒風ついてランニング★★★
初雪の三日経つても嶺に筋★★★
雨に起つ辛夷冬芽の光りけり★★★★

●小西 宏
きりきりと雪輝かせ朝の富士★★★

コンクリの坂に冬樹の影を踏む★★★★
コンクリートの坂道は冬の日にからりとして、木の影がくっきりと映っている。ありありとした木の影を踏み上る坂道がなにか面白い。(高橋正子)

鳩集い日向の落葉突いており★★★