★透き通るバケツにあふる朝の百合 正子
バケツがすきとおっているのではなく、水がすきとおっていると感じました。
その朝のすきとおった水に溢れんばかりの百合の花は、すっきりとした気分にさせてくれたことでしょう。(高橋秀之)
○今日の俳句
百円を握り園児はアイス買う/高橋秀之
暑い日には、アイスが何よりのたのしみな子どもたち。とくに園児は買い物が自分で出来る喜びも加わるので、アイスを手にした満足感はたかい。嬉しそうな園児の顔が浮かぶ。(高橋正子)
○青田

[青田/横浜市緑区北八朔]
★青田中信濃の踏切唄ふごとし/大串 章
★青田風チェンジのときも賑やかに/中田尚子
★千枚の青田 渚になだれ入る/佐藤春夫
★選挙カー連呼せず過ぐ青田道/日下徳一
★川面吹き青田吹き風袖にみつ/平塚らいてう
★石斧出て峡の青田の浮上せり/石井野洲子
一昨年の日記より:
緑区にある田園地帯北八朔町にリュックを背負って、野菜の買い出しに出掛けた。北八朔町は田圃と梨畑が広がる純粋の農村地帯。青田を見るのも楽しみの一つ。電車はグリーンラインの日吉本町から川和町まで乗る。川和町の駅を出て道路沿いに100メートルほど行くと鶴見川に出会うが、鶴見川にかかる橋を渡ると、都筑区から緑区北八朔になる。北八朔は田圃と梨畑がひろがる純粋の農村地帯。田圃はまだ水が筋になって見えるが青田となっていた。田植から1か月ほどになるだろうか。根をしっかり恥初めているようだった。足元に水がごぼごぼ鳴り、梨畑の際までの遠く青田が見渡せる。買い出しの楽しみと、田圃を見る楽しみの両方味わえるのがいい。田圃の中のバス停の角で、野菜を売っているが、そこが目当てとするところ。今日はご主人が売ってくれた。トマトと茄子があればと思ったが、トマトは完熟を売りたいので、もう少し待て、とのことだ。晴れてくれれば、来週は出せるとのこと。路地栽培なのでやむを得ない。買ったのは、9種類。 ごぼう、枝豆、赤ピーマン、赤たまねぎ、たまねぎ、扁平ないんげん、南瓜、胡瓜、すもも。締めて1400円也。リュックは富士山に登ったときのもの。登山の荷物のようにちゃんと腰ベルトでリュックを固定して帰った。李は簡易冷蔵庫に入れて売っていたので、帰ってすぐ食べたが、美味しいものは美味しかった。李を食べたくなったのは、ドイツのマイン河畔でパーティーを開いてもらったおり、庭の李がサラダボールに一杯出され、たまらなく美味しかったことを思い出したからだ。パーティーを開いてくださった俳人で華道家のシュバルムさんは亡くなったが、あの李は実においしかった。
◇生活する花たち「紫陽花」(北鎌倉・東慶寺)

◆今日の秀句◆
[6月10日]
★山桑やまだ濡れている朝の道/小西 宏
「山桑」は、季語では山帽子のこと。梅雨にはいってもまだ咲いている山帽子があるが、まだ雨に濡れている朝の道に白い山桑の花を見つけると、湿りのある中にもすがすがしさを思う。(高橋正子)
[6月9日]
★雨粒を含みしばらをきりにけり/小口泰與
雨のかかった薔薇の花は重くなっている。剪りとるときにその意外な重さを感じたことであろう。その気持ちが「きりにけり」の詠嘆となっている。(高橋正子)
[6月8日]
★田植え終えし田植機を洗い清む/多田有花
田植えが終われば、活躍した田植機の泥をきれいさっぱり洗い流す。これですっかり田植えが終わったという安堵となる。(高橋正子)
[6月7日]
★黄熟の匂い立たせて梅漬ける/佃 康水
梅干しに漬ける梅は青梅ではなく、黄色く熟れてやわらくなった梅を用いる。青梅が黄熟する間に放つ梅の甘くかぐわしい匂いは、「梅仕事」を楽しくしてくれる。(高橋正子)
[6月6日]
★手に触れる近さで逃げるヒメホタル/古田敬二
ヒメホタルの小さなあかりが手に触れるくらいに近づいたと思うと、触れはしないですうっと逃げた。はかなくも美しい一瞬。(高橋正子)
[6月5日]
★ひさびさの雨をたたえし茄子の花/小口泰與
久々の雨に茄子の枝葉もぴんと張りつめ、いきいきとしている。薄紫の花にもたっぷりと雨滴がかかり、目に涼しさをよぶ。(高橋正子)
[6月4日]
★雨宿りする場に大きく夏木立/高橋秀之
雨宿りする場所のすぐそばに夏木立がある。夏木立に盛んに降る雨がよく見える。夏の雨の力強さ詠まれている。(高橋正子)
[6月3日]
★田植する苗の一部は水の中/祝恵子
おそらく、手植えされる苗であろうが、すぐ植えれるように、束ねて田の水に入れてある。田植えの最中はこういったこともなにか嬉しい気持ちになるものだ。(高橋正子)
[6月2日]
★D五一の蒸気たくまし夏木立/小口泰與
日本でもっとも量産され、主に貨物列車として活躍した蒸気機関車のD五一。力強く貨車をひく姿は多くの日本人の目に焼き付いている。蒸気機関車の時代は終わったが、観光用に残された区間があるのだろう。夏木立に蒸気を吐いて進むD五一を目にして、新たにその勇姿に目を奪われた。(高橋正子)
[6月1日]
★早苗田に母屋どっしり映さるる/佃 康水
母屋の傍から田が広がる。田植えが済んだ田には、早苗の影ばかりではなく、母屋のどっしりと建物が映っている。田植えの後の安堵と、秋の実りが約束されている明るさがある。(高橋正子)