11月28日(木)

曇り
ひとつ撞く鐘に目覚めり冬の朝    正子
西空へ枝の柘榴の割れいたり     正子
井戸廻り掃き清めたり冬の朝     正子

●朝、お寺の鐘で目が覚めた。生家の隣の少し小高いところがお寺なので、鐘を撞く音がはっきり聞こえる。散歩の人が、毎朝一つ撞いて帰るそうだ。普段は無住寺になっているが、子どものころは木魚の音や鐘をグァーンと叩く音が聞こえていた。
妹は本堂の花の水を替える当番だというので、一緒にお寺の本堂に入り、先祖の位牌などを見た。妹が本堂の花に水を差しているのを見て、イギリス旅行のとき、バースの教会でやはり女性が花の水を差し終えて階段をおりて来るのを見た。同じことをしている。

●妹の予定に合わせて、市民講座の源氏物語を一緒に受講した。講師の先生は、妹の高校の同級生と言うことで、特別に許可を頂いたと言う。「若紫」の段だった。2時間近い講座で、評判の講師らしく、話が面白かった。

妹のもっている座席表を見ていて、中学、高校の同級生の名前を見つけた。旧姓のままだったのでわかったが、一番前で聞いている。講座の後、私の旧姓を言い声を掛けたが、全然、わからなかったようだ。「ああ、まさこちゃん!」と言ってやっと思い出してくれた。私はすぐに彼女とわかった。私とわかったものだから、才媛の誉れ高い同級生が、癌で10年も苦しんで、2年前に亡くなった話をしてくれた。そして、「残った者勝ちよ、元気で長生きしようね。」などと言う。ここに来て勝ち負けの話。ちょっとかっこよかった男子は脳梗塞で指も動かないし、話もできないという。でも元気な同級生もいるから、私と遭ったことを話すと言っていた。こんな偶然はあり得ない。彼女は活発でしっかりして男子とも平気で話せていた頼もしい人だった。「やっと落ち着けて、こんな講座も受講できるようになった。」と人生を振り返るように言った。

●講座後、福山へ車で行って、県立歴史博物館の「源氏物語の世界展」と隣のふくやま美術館の「ふくやまの仏さま展」を見た。草戸千軒で有名な明王院の秘仏や福山一帯の仏様の展示会。明王院の十一面観音像や、弥勒菩薩像は奈良や京都の仏像に引けを取らないのではと思えるくらいだった。閉館ぎりぎりに見終えた。

自由な投句箱/11月28日

今日の秀句/11月28日(1句)

★京都への旅の支度や芭蕉の忌/廣田洋一
芭蕉忌は旧暦なら、今年は新暦の11月12日にあたる。京都はとくに、時雨の降る情趣ある季節。京都への旅は、聖地のようになっている嵯峨野の落柿舎を訪ねる予定も入っているだろう。芭蕉を偲びながら、芭蕉への敬意や、俳句への思いを新たにされたのだろう。(髙橋正子)

11月28日(5名)
廣田洋一
京都への旅の支度や芭蕉の忌★★★★
時雨忌や虚子生誕150年★★★
奥の細道そっと閉じたり芭蕉の忌★★★

多田有花
冬の夜に寄り添い城を見上げる人★★★
光の輪彼方にありぬ冬の城★★★
冬夜空真白き城の浮かびおり★★★

桑本栄太郎
枯葉舞いつむじ風巻く狭庭かな★★★
遠峰の鉄塔ニ三基冬の空★★★
木枯やビルの切り取る青き空★★★

小口泰與
眼間の稜線長き冬の山★★★
眦に冬翡翠の居りにけり★★★
魚を捕る冬翡翠をまのあたり★★★

弓削和人
茶の染みの忙しかりし古日記
「茶の染み」が「忙し」は主観的な表現で、わかりにくいです。(髙橋正子)

土沈み家庭菜園冬眠中
「冬眠」は、動物に対して用いられますが、菜園に用いたのは、新しい発見とも言えますが、子どもっぽい発想と思います。いろいろ表現を試みるのは良いと思いますが、観察はじっくりと。(髙橋正子)

陽をとらえ舞い散りひらり枯尾花 ★★★
今日の俳句
★枯蔦となり一本を捕縛せり/三橋鷹女(みつはしたかじょ)
一本の幹にからまっている蔦。緑に茂っているときは、「捕縛」の意識よりも緑の濃さに目がいく。枯蔦となると、紅葉した葉や枯れ萎んだ葉がところどころに残るものの、樹にからまっている具合が目に入る。拠っていながらも、その樹を捕縛している。蔦の強靭さを見て取った。人間関係もこういったことがありそうなので、面白い。(髙橋正子ー『現代俳句一日一句鑑賞』より)