9月22日(金)

秋の雨そのほかなくて夜をすごす  正子
秋雨の音はっきりと夜の窓     正子
手触れずに葡萄どっしり置かれたり 正子
●めずらしく雨。気温が下がり、クーラーも扇風機も使わないで過ごす。
●「ワルキューレの騎行」を何気なく聞いていると、結構面白い。ワルキューレたちが戦で死んだ者たちを翼のある馬に載せて空を乱舞するように駆けてゆくのを想像する。カラヤンで聞いた。
●ますみさんの俳壇の原稿の相談にのる。ほぼ出来上がる。
●角川の「全国結社マップ」の原稿を書く。「どういう人に向いているか」の質問にはすぐ答えれそうで、書いてみると難しい。仕上げは後日とする。

自由な投句箱/9月21日~9月30日

※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/9月21日~9月30日

9月30日(2句)

★退院の道にひつじの伸びたる田/多田有花
入院するときは、稲穂が黄金に波打っていただろうが、めでたく退院となって、家路をたどる道には、稲刈りは済み、稲株からひつじが伸びているのを見た。それだけ長く入院されて、季節の移り変わりの早さを実感された。(髙橋正子)

★高層の団地を照らす良夜かな/桑本栄太郎
空にそびえる高層団地は、まるで小さい村のようで、その明かりの灯る高層団地は、すっぽりと良夜に包まれている。現代のメルヘンのような景色だと思える。(髙橋正子)

9月29日(2句)

★澄む秋となりたる街へ退院す/多田有花
入院するときは、残暑も酷暑といえるほどの今年の暑さだったが、退院するほちきは、街は「澄む秋」となっていた。感慨深い。(髙橋正子)

★やや寒の湖に影さす辰子像/弓削和人

「やや寒」の季語が効いている。辰子像は、下記に※でご案内したように、日本一の水深を誇る田沢湖の湖畔近くに建てられた伝説の乙女の像。瑠璃色の田沢湖の水に像の影が差して、人に「やや寒」の情緒を一層感じさせる。(髙橋正子)

※田沢湖辰子像:永遠の若さと美貌を願い、湖神となったと伝えられる、伝説の美少女たつこ姫のブロンズ像です。その姿は澄んだ青い湖水を背にして清楚です。水深423.4メートルと日本一を誇る田沢湖の岸近くにあります。製作:舟越保武 昭和43年5月12日建立(仙北市HPより)

9月28日(1句 )

★外つ国へ帰る燕の逞しき/小口泰與
帰っていく燕を見ていると、日本にいる間、一回り大きくなったように見える。羽もつやつや輝いて、集まって鳴きかわす姿に逞しさを感じる。またそうであって欲しいという作者の願いでもある。(髙橋正子)

9月27日(1句)

★秋耕を終えたる畑サイロ立つ/廣田洋一
夏の農作物を取り払い、きれいに耕し、秋の種蒔きや植え付けを待つばかりの畑。その畑にサイロが高く立っている広々とした景色からは、爽秋の空気が感じられる。(髙橋正子)

9月26日(2句)

★湯の街の磴上りけり火の恋し/小口泰與
「湯の街の磴上り」ではすぐに伊香保温泉が目に浮かぶ。風情のある温泉街だが、秋が深まるのも早い。温泉街の旅情がいっそう火を恋う気持ちにさせてくれる。(髙橋正子)

<近大病院>
★病棟の窓より見るや夕月夜/多田有花
入院生活という制約のある生活でも、窓からは夕月夜が眺められる。美しい月夜を心より楽しむと、入院生活に名残惜しささえ生まれるようである。(髙橋正子)

9月25日(1句)

<近大病院>
★満ちてゆく月待つ今宵芋煮付/多田有花
月がテーマの句。満ちていく月を待つ心楽しさに加え、病院食が旬の野菜の芋の煮付けだった。病院の計らいがうれしい。(髙橋正子)

9月24日(1句)

★彼岸花供えて来る旅の空/廣田洋一
私なりに読むと、「旅の空の下、曼殊沙華をみつけ、近くに祀られている石仏に供えて来たのですよ。」と言うことなのかと思う。旅に居るので優しさが沁みて思われる句。(髙橋正子)

9月22日、9月23日
※該当句無し

9月21日(1句)

★夢語る星の夜空や賢治の忌/桑本栄太郎
宮澤賢治の忌日は9月21日。昭和8年、肺炎で37歳で死去した。星の夜空が賢治の遺作である『銀河鉄道の夜』を思い起こさせる。(髙橋正子)

9月21日~9月30日

9月30日(5名)

小口泰與
背びれ見せ沼を横切る秋の鯉★★★
とある日の沼に翔け來る小鳥かな★★★
沼を黄に点じおり黄鶺鴒★★★
※三句とも「沼」がありますが、この「沼」が読み手には漠然とした景色に映るのでそれが残念です。(髙橋正子)

多田有花
帰り道すでにひつじの伸びたる田(原句)
「退院」という言葉を入れたので、「すでに」は、省けると思います。(髙橋正子)
退院の道にひつじの伸びたる田(正子添削)

帰宅してわが裏山に小望月★★★★
名月や斜めに飛行機雲伸びる★★★

桑本栄太郎
名月の手の届かざるあの娘かな★★★
雲の連れなく淋しそう望の月★★★
高層の団地を照らす良夜かな★★★★

廣田洋一
タイガースアレを達成九月尽★★★
一歩ごとに桜紅葉の散りにけり★★★
桜紅葉残り少なき木の有りて★★★

弓削和人
闇深く秋雨ばかり立ち止まり★★★
十六夜は雨に隠れり軒の縁★★★
溝に落つ木の実のいのち息づいて(原句)
「息づく」がやや観念的ですね。(髙橋正子)
溝に落つ/木の実のいのち輝いて(正子添削)

9月29日(5名)

小口泰與
縄張の鳥の定位置枯木かな★★★
参道の木木紅葉や蒼き空★★★★
妄想にどつぷり浸り真夜の秋★★★

廣田洋一
星一つ見えぬ空や今日の月★★★
もう一度外に出てみる良夜かな★★★★
隣人の家を売りたる愁思かな★★★

多田有花
退院す運動会の声聞こゆ★★★
澄む秋となりたる街へ退院す★★★★
彼岸花咲くふるさとへ帰り着く★★★★
※退院おめでとうございます。久しぶりの家ですね。お大事に。(髙橋正子)

桑本栄太郎
風のなくひやりと天に望の月★★★★
名月を撮るため棟の上に待つ★★★
酔うほどに酌めども尽きぬ月見酒★★★

弓削和人
名月の虫の音殊に澄みにけり★★★★
主季語は「虫の音」(髙橋正子)
望の月夜の香を伴いて★★★
やや寒の湖に影さす辰子像 ★★★★

9月28日(5名)

廣田洋一
日差し受け弾け飛びたり椿の実★★★★
色付きたる湘南の田や豊の秋★★★
ビル谷間ゆるゆる登る今日の月★★★

小口泰與
外つ国へ帰る燕の逞しき★★★★
赤城よく嶺までさらし早生蜜柑★★★
夜の風に木犀の香のたたなわる★★★

多田有花
<近大病院三句>
外はもう涼しくなりぬ彼岸過★★★
今日退院街秋涼になるという★★★
秋朝日葛城山の上に出て★★★

桑本栄太郎
桐の実の青空遠く色づきぬ★★★★
コスモスの風に煽られ揺れ止まず★★★
坂下る桜並木やうす紅葉★★★

弓削和人
待宵や梢を離れてゆくばかり★★★★
湖の外輪山や小名月★★★
「小名月」は見たことのない季語ですが、歳時記に例句はありますか。(髙橋正子)
和人さんが次の句を挙げてくれました。
隣へも酒のあまりや小名月 才磨
「才磨」は江戸時代前期の俳人。

待宵やムーンロードをひとり占め★★★
 
9月27日(名)

小口泰與
曙の鵙の鋭声や沼の木木★★★
鋭き出刃を鯉にあてけり秋の暮★★★
母刀自の写真整理や秋の暮★★★

多田有花
<近大病院三句>
病む人に夜はいつでも長き夜★★★
秋の陽が病棟廊下に落ちている★★★
産土を離れ迎える秋社かな★★★

桑本栄太郎
八雲忌の遠くに想う松江城★★★
八雲と桑にはどんな関係があるのでしょうか。日本昔話などに「雷さまと桑の木」があるには、ありますが。(髙橋正子)
この件について、失礼しました。桑本さんの「桑」をひっかけて転記したようです。お詫びし訂正します。(髙橋正子)

ぎんなんの潰れ散らばるバス通り★★★
夕闇を歩き鳴きた居りちちろかな★★★

廣田洋一
半月やくっきり登るビル谷間★★★
秋耕を終へたる畑サイロ白し(原句)
リズムが落ち着かないので、添削しました。「白」を言わなくても、すっきりと耕された畑にサイロがすっと立っている景色に、爽秋の感じは出ると思います。(髙橋正子)
秋耕を終へたる畑サイロ立つ(正子添削)

防災の品々書かれ秋団扇★★★

弓削和人
行く秋を起床の窓より眺めおり★★★
行く秋や瀬の鳴る方へ耳かたぶ(原句)
行く秋や瀬の鳴るほうへ耳かたぶけ(正子添削)
「かたぶ」は「かたぶく」を端折ったものと考えられますが、こういう言い止めかたはありません。字余りになっても、「かたぶく」とします。(髙橋正子)

橋たもと笛吹く人や曼珠沙華★★★

9月26日(4名)

小口泰與
湯の街の磴上りけり火の恋し★★★★
時の火の山の形や秋夕焼★★★
夕暮の谷川岳や身に染みし★★★★
「染みし」の「し」が落ち着かないですね。「き」か「ぬ」がよいと思います。(髙橋正子)

多田有花
<近大病院三句>
病棟の窓より見るや夕月夜★★★★
退院の予定聞くなり秋晴に★★★
彼岸花見ることもなく彼岸明★★★

廣田洋一
蟷螂の斧を引きずる蟻の列★★★
蟷螂や雌の出方を窺へり★★★
柿十個友と分け合ひ子規忌かな★★★

桑本栄太郎
夕闇を歩きちちろの迎えけり★★★★
ぎんなんのつぶれ数多やバス通り★★★
嶺の端に集う茜やいわし雲★★★

9月25日(4名)

小口泰與
長月の砂場熱砂子や子の声よ★★★
飛び鳴きの鵯や三山晴れ渡る★★★
草刈りの音も構わず懸巣かな★★★

多田有花
<近大病院三句>
月の舟太陽風に帆をあげて★★★
満ちてゆく月待つ今宵芋煮付★★★★
秋の朝今朝の採血六本で★★★

桑本栄太郎
朝冷えや君の夢見のひと頻り★★★
やや寒み一枚羽織り又眠る★★★
秋雲の茜となりぬ入日かな★★★

弓削和人
鶏頭のすくと立ちたる茶店寄り★★★
「茶店寄り」は、「茶店に寄り」とすべきところです。(髙橋正子)

乳頭の温泉巡りはな薄★★★
「はな薄」は、中句からのつながりで一見して読みにくいです。
「花すすき」とする方がよいと思います。(髙橋正子)

コスモスを離れぬ蝶や暮小径 ★★★
下五は「暮の径」でよいと思います。(髙橋正子)

9月24日4名)

小口泰與
満月を手水に移す吾子の顔★★★
暁の沼黄を点じたる黄鶺鴒★★★
菊を切ることは手なれや寺の主★★★

多田有花
<近大病院三句>
秋分の夜の病院食はお寿司かな★★★
大阪湾隔て秋晴れ六甲山★★★
金剛山うろこ雲を戴きて★★★

桑本栄太郎
朝冷えや君の夢みてなみだせり★★★
身に入むや朝の静寂の青き空★★★
その後の想うすべなき芙蓉の実★★★

廣田洋一
彼岸花供えて来る旅の空★★★★
道なりに歩む花野や花踏まず★★★★
赤蜻蛉しきりに叩く水面かな★★★
 
9月23日(3名)

小口泰與
銃眼を稲妻抜ける夕間暮★★★
蜻蛉や沼に映つれる樹木の影★★★
暁の沼秋の野鳥の声数多★★★

多田有花
<近大病院三句>
去る人と来る人ありぬ秋彼岸★★★
一週間ぶりの入浴秋彼岸★★★
秋分の雨が隠せり金剛山★★★

桑本栄太郎
父の夢またも見て居り秋彼岸★★★
秋風の音たつるこそ哀しけり★★★
木々の枝の躍る眼下や野分荒れ★★★

9月22日(4名)

小口泰與
ちょんちょんと水輪生み出す蜻蛉かな★★★
柔らかき風に包まる秋の沼★★★
稲妻や書肆に逃げ込む女学生★★★

多田有花
<近大病院三句>
わが足で歩くは嬉し秋の夕暮★★★
夜の雨あがりし秋の金剛山★★★
秋分をはさみ点滴始まりぬ★★★

桑本栄太郎
秋雨やうすく色づく庭の木々★★★
桜木の早も色づくうす紅葉★★★
歩き行く辻に色づく花梨の実★★★

弓削和人
朝がおの蕊しろたえに萌えいづる★★★
アサガオの花びら瑠璃に託したり★★★
露二つ寄りて一つになりたしや★★★
「なりたし」が問題です。写生が大事です。(髙橋正子)


9月21日(4名)

小口泰與
曙につと鳴き出せる鶲かな★★★
水澄むや赤城の裾野つばらなる★★★
ごうごうと蝦蟇の吠えるや秋の沼★★★

廣田洋一
莢隠元細長く垂れ下がりけり★★★
道端の隠元畑や緑濃し★★★
紫の日毎濃くなる式部の実★★★

多田有花
<近大病院三句>
秋彼岸ようやく病名定まるか★★★

点灯が終える病棟の長き夜(原句)
「点灯によって、病棟の長い夜が終わる」という意味だと思いますが、一読してすぐには、わかりにくいです。(髙橋正子)
点灯され病棟の長き夜が終わる(正子添削)

傷の癒え歩行許可おり爽やかに★★★

桑本栄太郎
夢語る星の夜空や賢治の忌★★★★
下冷えや目覚めて想うよべの夢★★★
秋彼岸哀しかりけり父の夢★★★